スポー ツ運動学 研 究2 0 : 69〜81,2007
フィギュア•スケー トの新しい採点システムの問題性
一
2006
年度グランプリシリー ズ•男女シングル
フリー •スケー ティングを例として一
竹 内 洋 輔
法 政 大 学 (非 常 勤 講 師 )Problems in the ISU Judging System oi figure skating
— Studying the Free Skating of Men/Ladies Single
at Grand Prix of Figure Skating 2006 —
Yohsuke TAKEUCHI
Abstract
The purpose of this study was to refer to the problems in the ISU Judging System by considering effects of the technical and artistic marks over total scores, studying the whole tendency found in the Singles evaluated through ISU Juagmg System.
I studied the performances and scores of top six skaters of Singles Free Skating at each Grand Prix competitions 2006 (n=72). The ofncial scores, “Judges details” were found on ISU website.
The point of this study is below;(1 )this study found that Technical Score accounts for higher percent of Total Segment Score than Program Component Score does, in top- ranked skaters for both Men and Ladies at Grand Prix 2006, (2) considering about the virtual best score and the possible highest score expected from scores of Grand Prix 2006, it is suggested that the percentage of Technical Score will rise extremely if skaters will execute more and more difficult elements, (3) by classirymg the 7 marks of the virtual best score into 2 categories (technical marks and artistic marks), it became clear that the technical marks account for about 80% of the virtual best score, and (4) by comparing the performances of two skaters who have similar Program Component Score and signiticantly different Technical Score, it became clear that the difference between their Total Segment Score came from the difference in the base value of jumps, which means that the evaluation of jumps greatly affects the Total Segment Score. It should be concluded, from what has been said above, that in ISU Juagmg System, Total Segment Score is mainly affected by technical marks.
On these grounds, to make the ISU Judging System artistically and technically well- balanced, I believe that the ISU Judging System needs to be changed as below;(1 )delete the technical marks of elements from Program Component Score, (2) reexamine the upper limit of Program Component Score or reexamine the evaluation standards, (3) upgrade the factor for artistic marks or set additional artistic mark (s) in Program Component Score, and (4 )lower the base value of jumps.
By taking these steps, the effects of evaluation of jumps on Total Segment Score will become less and the percentage of artistic marks in Total Segment Score will rise, thus the artistic evaluation will have more effect on Total Segment Score.
I
. 序論
1
. はじめに フイキュア•スケー トは抹点競技である。 2004 年のルー ル変 更以前はオリンピック大会 と世界選 手権 大会 では9名の審判員で各演技の採点が行わ れ,次のような手順で順位が決定されていた。競 技では,出場者が30名を超える場合には, ひとつ の班が30名以下になるように全体 を複数 の班に分 けて予選が行われる。審判員は,班ごとの出場者 全員に 順 位 を つ け る た め に ,国 際スケー ト連盟(International Skating Union :以下 ISU という)が 示した採点基準を考慮して各演技を技術点最大 6.0,芸術点最大6.0の範囲 内 で相対 評価 し,各選 手の技術点と芸術点を決定する。 さらに各審判員 は自らが決定した技術点と芸術点の点数 を合計 し,選手ごとの合計点を同一班内 の他のすべての 選手の合計点と比較を行い,それぞれ組み合わせ について勝敗を確認する。その際に,勝った選手 に は2ポイントが,同点の場合には1ポイントが 与 えられる。 こうして審判員ごとに各競技者の勝 敗のポイントが合計され, さらに9名の審判員の 勝敗ポイントが合計される。 この合計ポイントの 多い順に,競 技 部 分 (たとえはシングル競技にお けるショー ト■プログラムやフリー ■スケー テイ ング) ごとの順位が決定される。 さらに, こうし て決定された9名の審判員による順位に,ショー ト. プログラムの場合には0.5, フ リ ー .ス ケ ー テイングの場合には1.0が乗 じられて, こ の2つ の順位点の合計が少ない者の順に順位が決定され る。 また,2つの順位点の合計が同点になった場 合には, フリー ■スケー ティングの順位点が少な い者を上位とする。 しかし, この採点方法を採用した2002年のソル トレー クシティ一■オリンピック大会 ペア競技に おいて,優勝したペアの採点に対 して一人の審判 員が自分の意思ではない採点を行ったという発 言 が大きな問題となった。 この不正採点事件に対 し て,I S Uと国 際オリンピック委員会 (International Olympic Committee:以 下IO Cという) は優勝と2 位のペアを2組とも優勝とすることよって事態の 収 拾を図 った。その際に問題となったペア競技の 採点は, 9人の審判員の採点が4対 5で1位 と2 位を分けるような判定の難しい状 況にあった。 こ のために,たった一人の審判員が自分の採点を恣 意的に操作することによって順位が入れ替わって しまうという事態が発 生した。 しかしこの問題 は,吉岡(5)が述べているように,各審判員が公正 な採点を行いさえすれば防げる。それにもかかわ らず, この事態を重く見たIS Uは,仮 に不正採点 が行われた場合にもそれを確実 に順位の決定から 排除できる採点方法と,従 来 のOne by O neシス テム法よりもより勝敗を明確にできる採点方法を 確立するために,2004年の国 際競技会 から新しい 採点方式,すなわちISUジャッジングシステムを 導入した。
2
. 問題の所在 2004年から導入されたISUジャッジングシステ ムは,従 来 のフイキュアスケー ト競技には見られ なかった新たな問題を引き起こしている。 フイ ギュアスケー トでは数 十年もの間,技術点と芸術 — 70 —点6. 0満 点ずつ,すなわち演技におけるジャンプ, ステップ,スピンといった技術的項目と,音楽 に 対 する表現といった芸術的項目の割合が,50%ず つの割合で総 合評価 されてきた。 このことは歴 史 的にフィキュアスケー トは,その競技における技 術性と芸術性を,同等の割合で評価 ,採点してき た と い う こ と を 示 し て い る 。 しかし,現 在ISU ジャッジングシステムを用いた競技会 の男女シン グル競技では,エレメント(ジャンプ,ステップ, スピン)の出来 ,不出来 によって得点が大きく変 動し,最終得点すなわち順位が決定されてしまう という傾向が強 く見られる。 このようにエレメン トの出来 不出来 が最終得点に大きく影響を及ぼし てしまうことは, フィギュアスケー トにおける技 術的項目の採点が最終得点に影響する割合が高く なっているということを意味しており,結果とし てフィギュアスケー トの本質のひとつである芸術 性が顧みられなくなってしまっているという事態 が推測される。 そこで本研 究では,IS Uジャッジングシステム を用いて行われた男女シングル競技について得点 の全体 傾向を調査し,技術的項目と芸術的項目が 得点全体 に与 える影響について考察を行い,現在 のISUジャッジングシステムの問題点を明らかに することが目指された。
I . ISU
ジャッジングシステムおよび,分析
の方法
1
. I SU
ジャッジングシステム ( 1) 審判団 の構成 IS Uジャッジングシステムでは,審判団 はテク ニ カ ル■パネルとジャッジ■パ ネ ル の2つから構 成される。テ ク ニ カ ル•パネルは,テ ク ニ カ ル -スペシャリストを中心とし,その補助を行うアシ スタント•テクニカル•ス ペ シ ャ リ ス ト と ,テク ニ カ ル.パネル全体 の監督を行うテクニカル.コ ントロー ラー の3名で構成される。 これに対 して ジ ャ ッ ジ•パ ネ ル は 最 大12名 の ジ ャ ッ ジ と , ジャッジ•パネル全体 の監督を行うレフェリー に よって構成される。 (図 1参 照) ( 2) 演技の採点 このISUジャッジングシステムでは,採点項目 の細分化という原則に従 って,選手が行った演技 内 容 は 「エレメント」 (要素) と,「プログ ラ ム. コンポー ネンツ」(演技構成) という2つの観 点に 分けて採点される。 「エレメント」 は「ジ ャ ン プ 丄 「ス テ ッ プ 丄 「ス ピン」 に 分 け ら れ ,ISU規 程 第310条 第1項に よって,競技部分ごとに,演技中に行うことが出 来 る各エレメンツの最大数 は以下のよつに決めら れている。その際に, 2つあるいは3つのジャン プを組み合わせたコンビネー ション•ジャンプは 1つのエレメントとして扱われる。 ジュニア競技とシニア競技のショー ト■プログ ラムでは,最大でジャンプは合計3,そのうちコ ンビネー ション■ジャンプは1回まで,ステップ は合計2回,スピンは合計3回まで。 また,ジュ ニア競技のフリー •スケー ティングでは,ジャン プは合計7回,そのうちコンビネー ション.ジャ ンプは3回まで, コンビネー ション■ジャンプの う ち1回 は3連続 ジャンプを行って良い,ステッ プは合計2回,スピンは合計3回まで◦シニア競 技のフリー •スケー ティングではジャンプは合計 8回 (女子の場合は合計7回まで),そのうちコン ビネー ション•ジャンプは男女共に3回まで, コ ン ビ ネ ー シ ョ ン•ジ ャ ン プ の う ち1回 は3連続 ジャンプを行って良い,ステップは2回,スピン は4回まで行うことができる。 これに対 して,「プ ログラム•コンポー ネンツ」 は選手の演技全体 について以下に示す5つの項目 に分けて採点が行われる。 ① 「スケー ティングスキル」 (スケー ティングの全 体 の質を見る) ② 「トランジション/つなぎのフットワー クと動 作」(要素の開始および終了の仕方,要素と要素 のつなぎ方の複雑 さを見る) ③ 「パ フオ ー マ ン ス / エ ク セキ ュ ー シ ョ ン 」 (演 技 の実 施の質を見る) ④ 「コレオグラフイー Z コンポジション」 (演技全 体 の構成とオリジナリティを見る) ⑤ 「音楽 のインター プリテー シヨン」 (演技におけ る音楽 的な表現力を見る) — 7 1 —( 3
)
テクニカル*パネルの役割 選手が行ったエレメントにして,エレメント の認定作業を行うのがテクニカル,パネルである0 まずテクニカル,スペシャリストは,選手が行っ たジャンプについては,その種類と回転 数 を判別 し,スピンとステップについては,:ISUが提示し
た難度の指揉 に沿って4段階の難易度の認定を行 い, さらに転 倒の認定を行う。認定された各エレ メントにはエレメントごとにそれぞれ基礎点(表1
参 照} が定められており,この点数 が後に述べ るテクニカル,スコアー の基翠となる0 テ ク ニ カ ル ,コントロー ラー はテクニカル,ス ペシャリストが認定した内 容について躲 瞀 をし, 必要であれば訂正を行うが,この訂正に対 してテ ク ニ カ ル ,スペシャリストとアシス夕ント,テク ニ カ ル ,スペシャリストが反対 した場合には,最 初の決定かこ維持される。( 4
) ジャッジ*パネルの役割
ジャッジ,パネルをf異成する12名のジャッジは, 選手の演技に対 して次の2つの採点を行う。1
つ目は,選手によってエレメントが演じら れ,それがテクニカル,ノ《ネルによってエレメン トとして認定される毎 に行われる「各エレメンツ の実M
の出来 泶 え」 (Grade of Execution:以 下GOEと言う} の採点である。その際に,各ジャッジは テ ク ニ カ ル•パネルが認定した各要素にっいて,
GOE採点の為 のガイドラインに従 って
- 3
〜 十3 までの7段階で評イ面を行う0
2
っ目は,演技全体 に対' して行うブログラム,
コンポ一ネンツの採点である。このブログラム, コンポ一ネンツの採点では,先に述べた5つの項 目について,1SUが提示しているI钶 面基翠に従 っ て,項目ごとに0.25刻みで10点満 点の採点が行わ れる。 春判面の構成全体 とそれぞれの採点項目を示し たのが回1である。( 5
)
テクニカル‘スコア一とプログラム‘ コン
ポ一ネンツ*
スコア一の算出法
各演技のテクニカル,スコアー とブログラム, コンポ一ネンツ,ス コ ア ー の算出は以下の手jl度に よってコ ンピュー 夕一によって算出される。 はじめに,實竞 技部分(ショー ト,ブログラムと フ リ ー ス ケ ー テ イ ン グ}
ごとに,非 公 開 で , ジャッジ,パネルをf異成する12名のジャッジの中 から9
名のジャッジがコンピュー 夕一による無作 為 抽選によって抽出され,この9名が実 働 ジヤッ ジとして確定される0 テ ク ニ カ ル ,スコアー は,まずテ ク ニ カ ル ,パ審利団
ぐテラニ力7レ♦ノネ7レ;
• TC ♦ TS ATS ジャッジ♦パネル ♦ ♦ ♦ _ _ _ U 2J 3J♦
12J
•要素の認定
♦要素の難易度
レベルを利定
(ステップ♦スピン)
•転 倒の認定
♦GOEの採点
♦5つの
プログラムコンポ一ネンツの採点、f lj
〜12J:1香〜12香ジャッジTC:テクニカルコントロー プ一
、
R:レフエリ—
TS:テクニカルスペシャリスト
ATS:アシスタントテクニカルスペシャリスト
\________________________________________________________ノ図 1 ISUジャッジングシステムにおける審判団 の構成と採点項目
— 72 —ネルによって認定されたエレメントに対 して9名 の実 働 ジャッジが行った- 3 〜+ 3 のG O Eの評 価 か ら (エレメンツごとに)最も高い評価 と最も 低い評価 が削除される。次に残 った7名のジャッ ジ のG O E評価 を,規程第3 2 2条 第1項に記されて いるエレメントの基礎点とGOEの得点一覧 表に 基づいて得点化し,その平均値を求める。 この得 点表のジャンプのみを抜 粋 したのが表1である。 こうして得られたGOE評価 値の平均とエレメン トごとの基礎点を加算した合計点を,すべてのエ レメントについて算出し,それを合計したものが テ ク ニ カ ル•スコアー となる。 プ ロ グ ラ ム • コ ン ポ 一 ネ ン ツ • ス コ ア ー は , テ ク ニ カ ル . ス コ ア ー と同様 に,9名 の実 働 ジ ャ ッ ジ の中からコ ン ポ ー ネ ン トごとに最も高 い得点と 最も低 い得点が削除される。次 にコ ン ポ ー ネ ン ト ごとに残 りの得点が平均され, この平均された得 点に,男 女 シ ン グ ル の シ ョ ー ト • プ ロ グ ラ ム , フ リ ー • ス ケ ー テ ィ ン グごとにあらかじめ決められ た 係 数 (シ ョ ー ト ■ プ ロ グ ラ ム は 女 子 0 . 8 , 男 子 1 . 0, フ リ ー • ス ケ ー テ ィ ン グ は 女 子 1 . 6 , 男 子 2 . 0 )を乗 じ, こうして得られた5 項目の得点を 合計したものがプログラム•コンポ一ネンツ■ス コ T 一 ( P r o g r a m c o m p o n e n t S c o r e )となる0 以上の手続 きをまとめたものが図 2である。
( 6
) 順位の決定 テ ク ニ カ ル• コントロー ラー は,算出されたテ ク ニ カ ル. スコアー とプログラム.コンポー ネン ツ ■スコアー に違反要素や転 倒に対 する減点,革 新的な要素に対 する加点を行う。 こうして得られ た 得 点 が 「競技部分ごとの総 得点」 となり,最終 的な順位はショー ト■プ ロ グ ラ ム の 総 得 点 と フ リ ー ■ス ケ ー テ ィ ン グ 総 得 点 の 合 計 「最終得点」 によって決定される。2
. 考察対 象の選定 本論では,実 施されたエレメントの内 容が得点 全体 に与 える影響を明らかにするために,2 0 0 6年 のグランプリシリー ズ(全6 大会 ,以下2 0 0 6年G P シリー ズという) における男女シングル競技フ リ ー ■スケー ティングの上位6名の演技内 容とそ 表 1 ジ ャ ン プ に お け る 基 礎 点 と G O E における加減点 名称 略称 +++ | ++ | GOE + * 碓 点 - | —GOE— | ---Jumps i'oelooD IT 1.0 0.6 0.3 0.4 -0.1 -0.2 -0.3 salchow IS 1.0 0.6 0.3 0.4 -0.1 -0.2 -0.3 Lo od ILo 1.0 0.6 0.3 0.5 -0.1 -0.2 -0.3 Flip IF 1.0 0.6 0.3 0.5 -0.1 -0.2 -0.3 Lutz ILz 1.0 0.6 0.3 0.6 -0.1 -0.2 -0.3 Axel 1A 1.5 1.0 0.5 0.8 -0.2 -0.4 -0.5 Double-Toeloop 2T 1.5 1.0 0.5 1.3 -0.3 -0.6 -1.0 Double-Salchow 2S 1.5 1.0 0.5 1.3 -0.3 -0.6 -1.0 Double-し o o d 2Lo 1.5 1.0 0.5 1.5 -0.3 -0.6 -1.0 Double-Flip 2F 1.5 1.0 0.5 1.7 -0.3 -0.6 -1.0 Double-し utz 2しz 1.5 1.0 0.5 1.9 -0.3 -0.6 -1.0 Double-Axel 2A 3.0 2.0 1.0 3.3 -0.7 -1.4 -2.1 TriDle - ToelooD 3T 3.0 2.0 1.0 4.0 -1.0 -2.0 -3.0 Triple-Salchow 3S 3.0 2.0 1.0 4.5 -1.0 -2.0 -3.0 TriDle-し o od 3Lo 3.0 2.0 1.0 5.0 -1.0 -2.0 -3.0 Triple-Flip 3F 3.0 2.0 1.0 5.5 -1.0 -2.0 -3.0 Triole-し utz 3しz 3.0 2.0 1.0 6.0 -1.0 -2.0 -3.0 TriDle - Axel 3A 3.0 2.0 1.0 7.5 -1.0 -2.0 -3.0 Quad.-ToelooD 4T 3.0 2.0 1.0 9.0 -1.0 -2.0 -3.0 Quad. - Salchow 4S 3.0 2.0 1.0 9.5 -1.0 -2.0 -3.0 Quad■-し 0od 4Lo 3.0 2.0 1.0 10.0 -1.0 -2.0 -3.0 Quad-Flip 4F 3.0 2.0 1.0 10.5 -1.0 -2.0 -3.0 Quad - Lutz 4Lz 3.0 2.0 1.0 11.0 -1.0 -2.0 -3.0 Quad-Axel 4A 3.0 2.0 1.0 13.0 -1.0 -2.0 +,-は、GOEを指す。++は+2の 評 価 --- は- 3の評価 — 73 —の採点結果(フリー ,スケー ティング延べ72演技} を考察の対 象とした。ショー ト,ブログラムを対 象としなかったのは,ショー ト,ブログラムでは, 実 で き るエレメントがあらかじめ決められてい るために,テ ク ニ カ ル ,スコアー が得点全体 に与 える影響を推測することが難しいと考えられたか らである。
3
. 分析の方法( 1
) 原資料の入手 考察対 象とした2006和 !1
シリー ズ,男女シン グル實竞 技のフリー ,スケー ティング上位6名の演 技内 容と採点結果の詳細を知るために,1SUの ホ ー ム ペ ー ジ<1
>に公表されて い る上記大会 の"Judgesdetaüs"を原資料として用いた。この資
料には,各選手が演技した内 容,総 得点およびテ ク ニ カ ル ,スコアー とブログ ラ ム ,コンポー ネン ツ,スコアー ,各エレメントの基礎点,減点,そ して各ジャッジ毎 のGOEと各ブログ ラ ム ,コン ポー ネントの得点が記載されている。( 2
) 演技内 容と得点の分析 ①2006年S P
シリー ズにおける総 得点の上位と下 位の抽出2006年
S P
シリー ズ6 大会 の男女シングルフ リ ー ,スケー ティングにおける,上位と下位のテ ク ニ カ ル ,スコアー とブログ ラ ム ,コンポー ネン ツ,スコアー の得点彳 頃向を豳 査するために,対 '象 とした男子シングル,女子シングル各36演技につ いて, "Judges detaÜs"に記載されている総 得点 の高い順から並 べ,その上位と下位の3名を抽出 し,比較を行った。抽出された3つの演技の中に 同一の選手が含まれていた場合には,上位に関 し ては総 得点の低い方を排除し,下位に関 しては総 得点の高い方を排除し,次に総 得点が近い演技を 抽出した。 反想、最高点の算出 巧U
ジャッジングシステムにおいて可能な最高 得点を算出するために,男女シングルのフリー , スケー ティングについて,始めにテクニカル,ス コア一における得点可能な最高点を求めた。ここ では,女子のフリー ,スケー ティングの例でこの テクニカル,スコアー の仮 想最高点の算出法を説 明しておきたい0審莉面
" テクニカル•ハ"
ネ ル>
#:
TC
全TS
ATS
要!
^雌度の炫定を行う
GOEの得点
全ての要檗の基理点+GOEの得点
を加算した得成ジャッジ•パネル
RU 2J 3J
♦
12J
9人のジャッジをランタムに袖出
^
纖離
7
ぬ縱
点の、
4
:
プログラム•コンポ一ネンツの採点に、
ショー ト•プログラム
^
フリ… スケー ティング それぞれ決められた係数 を乘じるテクニカル•スコアー
グラム
•コンボし#ンツ
•スコアー )
図 2 審判団 と得点m 理の関 #
— 74 —女子フリー .スケー ティングで行うことの出来 る最大のエレメント数 (1 3)のうちで,規程第320 条 に規程されているジャンプ,ステップ,スピン という3つのエレメントの種類ごとに最も基礎点 の高いものを組み合わせた。 フリー •スケー ティ ングでは,規定で定められた演技時間の半分より 後にジャンプを行うと基礎点が1.1倍されるため, ジャンプはすべて後半に行われたものと仮 定し て,ジャンプの基礎点は全て1.1倍した。各エレ メントを記載した部分の右側には,GOEの評価 が+ 3であった場合のエレメントごとの得点が, 右下にはその際のテクニカル■スコアー の仮 想最 高 点 (167. 50点)が示されている。 これに対 して プログラム. コンポ一ネンツ.スコアー の仮 想最 高点は,5つ の 項 目 の 最 高 点 (10点)の合計に係 数 (女子は1.6) を乗 じることによって求められる (80. 00点)。 ③採点全体 における技術的項目と芸術的項目の比率 採点全体 における技術的項目と芸術的項目の比 率を明らかにするために,ISUが提示している採 点基準に基づいて,テクニカル.スコアー とプロ グラム.コンポ一ネンツ.スコアー の各採点項目 の内 容を精査し,それぞれの項目が技術的項目と 芸術的項目のいずれに重点を置いているのかに基 づいて各採点項目をあらためて分類し直した。 さらに, こうして分類された技術的項目と芸術 的項目について,それぞれの仮 想最高点を加算 し,男女シングルの各競技部分ごとにこの2つの 項目が総 得点に占める比率を求めた。
I[.結 果 お よ び 考 察
1
. 2006年
G P
シリー ズにおける得点傾向 男女シングルのフリー •スケー ティングの総 得 点 の 上 位3名 と 下 位3名における,選手名, フ リ ー ■スケー ティングの順位,総 得点,テクニ力 ル. スコアー , プ ログラム. コンポ一ネンツ.ス コア一と試合名を示したものが表2である。総 得 点の上位と下位の得点を比較すると,男女共に上 位の選手は共通して, プログラム.コンポー ネン ツ■スコアー の得点よりも,テクニカル•スコアー の得点のほうが突出している傾向が見られる。下 位の選手は,両 得点の差があまり無いか,テクニ カ ル. スコアー よりもプログラム.コンポー ネン ツ. スコアー のほうが高い傾向がみられる。 この ことから上位選手においては,テクニカル•スコ ア一はプログラム. コンポ一ネンツ.スコアー よ りも総 得点に与 える影響が大きいことが分かる。 表3 は,2006年G Pシ リ ー ズ (6試 合 )のフ 表 2 2006年S P シ リ ー ズ に お け る 総 得 点 の 上 位 と 下 位 の 得 点 女子シングルフリー ■スケー ティング 男子シングルフリー スケー ティング FSの 順适 名前 総 得点 TES PCS 試合名 FS|曙运の 名前 総 得点 TES PCS 試合名 上位 3名1 Mao ASADA 130.02 70.18 59.84 NHK杯 1 Daisuke TAKAHASHI 163.49 86.19 77.30 NHK杯
1 Miki ANDO 125.85 70.73 55.12 NHK杯 2 Nobunari ODA 161.01 85.01 76.00 NHK杯
1 Yu-na KIM 119.32 63.04 57.28 エリックボンパ一ド杯 1 Brian JOUBERT 160.13 82.73 77.40 カップ才ブロシア
下位
3名
4 Christine ZUKOWSKI 83.62 41.54 42.08 NHK杯 5 Kevin VAN DER PERREN 115.09 53.99 61.10 スケー トアメリカ 5 Dan FANG 80.07 37.75 42.32 NHK杯 6 Scott SMITH 114.83 59.03 56.80 スケー トアメリカ 6 Lesley HAWKER 79.85 42.45 40.40 NHK杯 6 Patrick CHAN 113.54 59.24 57.30 NHK杯
1等による滅点は記載U Cい:Ö:い※ FS=フリー ■スケー ティングTES=テクニカル■スコフし PCS:プ ラ ム■コンポニネンツ■スコア一
表3 2006年G Pシ リ ー ズ 男 女 フ リ ー • ス ケ ー テ ィ ン グ に お け る 最 高 点
女子 男子
得点 試合名 得点 選手名 試合名
TES最高点 70.73 2006スケ一卜アメリカFS 86.19 Daisuke TAKAHASHI 2006NHK杯 FS SS最高点 7.60■謂■ ■ 2006 NHK杯FS 8.00 Brian JOUBERT 2006カップオブロシアFS T R »高点 7.35 2006 NHK杯FS 7.35 Daisuke TAKAHASHI, Nobunari ODA 2006NHK杯 FS PE最高点 7.40 2006 NHK杯FS 7.95 Brian JOUBERT 2006カップ才ブロシアFS CH最高点 7.55 2006 NHK杯FS 7.70 Daisuke TAKAHASHI, Brian JOUBERT 2006NHK杯FS,カップオブロシアFS
IN最高点 7.50 iMaoASADA 12006 NHK杯FS 7.85 Brian JOUBERT 2006カップオブロシアFS
FS=フリー ■スケ一テインタTES=^クニカル■スコア一SS=スケ一テインゲ■スキルTR=卜ラン夕シヨン/つのフットワー クと動作
PE=パフオー マンス/ェクセキュー シヨンCH==Iレオグラフイー /コンポジションIN=音楽 のインター プリテ一シヨン
リ ー ■スケー ティングにおいて,テクニカル•ス コア一とプログラム. コンポ一ネンツの5つの項 目について最も高い得点を獲得したときの得点, 選手名,試 合 を ま と め た も の で あ る 。 ここから は,テクニカル■スコアー では女子が70.73点,男 子が8 6.19点, プログラム.コンポ一ネンツでは女 子が7. 60から7. 35点,男子は8. 00から7. 35までの 得点であることがわかる。 この場合に,一人の選 手 が テクニカル. スコアー でもプログラム.コン ポー ネンツ.スコアー でもこの表に示された各項 目の最高点を獲得したと仮 定すれば,女子の場合 にはテクニカル•スコアー が70. 73点であるのに対 して, プログ ラ ム. コンポ一ネンツ.スコアー は 59.84 点 ((7. 6 0 + 7. 3 5 + 7. 4 0 + 7. 5 5 + 7.50) X 1. 6 )となり,男子の場合は,テ ク ニ カ ル .ス コ ア一が8 6.19点であるのに対 して, プログラム■コ ンポー ネンツ. スコアー は77.70点 ((8.00 + 7.35 + 7.95 + 7.70 + 7.85) x2. 0 0 )となる◦このこと は,2006年G Pシリー ズの6試合において,仮 に プ ロ グ ラ ム .コ ン ポ一 ネンツ.スコアー の最高点 を出したとしても,テクニカル•スコアー の最高 表 4 女 子 シ ン グ ル フ リ ー .ス ケ ー テ ィ ン グ に お ける仮 想最高点 エレメントの種類 基礎点GOE評価 GOE エレメン卜 の 榑 点 4A 13.0 +3 3.00 16.00 4A+4Lo+4T 32.0 +3 3.00 35.00 4Lz 11.0 +3 3.00 14.00 Jump 4Lz+3Lo 16.0 +3 3.00 19.00 4F 10.5 +3 3.00 13.50 4S+3T 13.5 +3 3.00 16.50 3A 7.5 +3 3.00 10.5( Jump 計 1 103.5 1 21.00 1 124.5( Element Jumpが全て後半※ 11 113.9 | // 1 134.9( Step Spsq4 3.4 +3 3.00 6.4( SISt4 3.4 +3 3.00 6.40 St印 計 6.8 1 6.00 12.8( CLSp4 3.3 +3 1.50 4.8( Spin FCCosp4 3.5 +3 1.50 5.00 CCoSp4 3.5 +3 1.50 5.00 C CoSd4 3.5 +3 1.50 5.0G Spin 計 1 13.8 1 6.00 19.8( I F ~ 1 134.5 1 33.00 167.5( Technical Score 167.50 Skating Skills 10.0( Transition / Linking Footwork 10.00 Program Performance / Execution 10.00 Compornent Choreography / Composition 10.00 Interpretation 10.00
係数 (Factor) 1.6G Program Compornent Score 80.00
減点(Deductions/ 0.00
総 合得点(Total Segment Score) 247.50
※ 1 :演 技 後 半 以 降 (規 定 演 技 時 間 + 2以 降 )の ジ ャ ン プ は 1.1倍 に な る た め 、す べ て の ジ ャ ン プ が 演 技 後 半 に 行 わ れ た 場 合 の ジ ャ ン プ の 基 礎 点 は 103.5点 X 1.1=113.9(113.85)点となる ※ボ ー ナ ス 点 は 無 い も の と 仮 定
※コンビネ一シヨンジャンプは、現 時 点 で 現 実 的 な ト ウ ル 一 プ orル 一 プ ジ ャ ン プ に 限 定 ※ス ピ ン の 略 式 記 号 の 前 の Fはフライングによる入りを表している(FCCoSp等 )
CLSp4: Change Foot Layback Spin Level4
C C oS p4: Spin combination with change of position and change of root Level4 SpS q4: Spairal Sequence Level4 S lS t4 : Straight しine Step Sequence I_evel4
点を上回ることはできないということを示してい る0
2
. 演技内 容の改善による総 得点の上昇の可能性 表4は女子シングル,表5は男子シングルの仮 想最高点をまとめたものである。 この男女シング ルフリー ■スケー ティングのテクニカル■スコアー と プ ロ グ ラ ム .コ ン ポ一 ネンツ.スコアー の仮 想 最高点から,2006年G Pシリー ズのそれぞれの最 高点を引くことにより,今 後ISUジャッジングシ ステムで行われる試合のフリー •スケー ティング において,それぞれの得点がどの程度得点を伸ば せる可能性があるかを算出した(表6)。 表6からは, プログ ラ ム•コンポ一ネンツ■ス コア一に関 しては男女ともに20点程度伸ばせる可 能性があるのに対 して,テクニカル•スコアー は 女子シングルが96. 77点,男子においては90. 91点 も得点を上昇させる可能性があることが分かる。 これは,今後選手がより高い難度のエレメントを 実 施できるようになっていった場合,総 得点に対 するテクニカル•スコアー の割合がきわめて高く 表 5 男 子 シ ン グ ル フ リ ー .ス ケ ー テ ィ ン グ に お ける仮 想最高点 エレメントの種類 基礎点GOE評価 GOE エレメン卜 の « 点 Element Jump 4A 13.0 +3 3.00 16.00 4A+4Lo+4T 32.0 +3 3.00 35.00 4Lz 11.0 +3 3.00 14.00 4Lz+3Lo 16.0 +3 3.00 19.00 4F 10.5 +3 3.00 13.50 4S+3T 13.5 +3 3.00 16.50 3A 7.5 +3 3.00 10.50 3Lz 6.0 +3 3.00 9.0G Jump 計 109.5 24.00 133.5( Jumpが全て後半※ 1 120.5 // 144.5( Step CiSt4 3.4 +3 3.00 6.4( SISt4 3.4 +3 3.00 6.4( Step 計 6.8 6.00 12.8( Spin CLSp4 3.3 +3 1.50 4.8( FCCosp4 3.5 +3 1.50 5.00 CCoSp4 3.5 +3 1.50 5.00 CCoSd4 3.5 +3 1.50 5.0( SDin 計 13.8 6.00 19.8( 計 141.1 36.00 177.1( Technical Score 177.10 Program Compornent Skat ng Skills 10.0( Transition / unking Footwork 10.00 Performance / Execution 10.00 Choreography / Composition 10.00 Interpretation 10.00係数 (Factor) 2.0G Program Compornent Score 100.00
減点(Deductions) 0.0G
総 合得点(Total Segment Score) 277.10
※ 1 :演 技 後 半 以 降 (規 定 演 技 時 間 + 2以 降 ) の ジ ャ ン プ は 1.1倍 に な る た め 、す べ て の ジ ャ ン プ が 演 技 後 半 に 行 わ れ た 場 合 の ジ ャ ン プ の 基 礎 点 は 109.5点 X 1.1=120.5(120.45)点となる ※ボ ー ナ ス 点 は 無 い も の と 仮 定
※コンビネー ションジャンプは、現 時 点 で 現 実 的 な 卜 ゥ ル ー プ orル ー プ ジ ャ ン プ に 限 定 ※ス ピ ン の 略 式 記 号 の 前 の Fはフライングによる入リを表している(FCCoSp等 )
CLSp4: Change Foot Layback Spin Level4
G CoSp4: Spin commnation with change of position and change of foot Level4 SISt4: Straight しme Step Sequence I_evel4 C iS t4: Circular Step Sequence Level4
なり,エレメントの出来 ,不出来 によって順位が 決まってしまうという可能性を示唆している。 この原因として,テクニカル•スコアー はエレ メント数 による制限があっても,基礎点が高いエ レメントを行えばその分得点が高くなるのに対 し て, プログ ラ ム. コ ン ポ 一 ネ ン ツの採点には10点 という上限が定められていることが考えられる。 また2006年G Pシリー ズの得点傾向から見て,現 在においてもテクニカル■スコアー がプログラム. コ ン ポ 一 ネ ン ツ•スコアー よりも総 得点に与 える 影響が大きいことから, プログ ラ ム. コ ン ポー ネ ン ツ•スコアー の係数 , もしくは採点基準の見直 しが必要であると思われる。
3
. 採点全体 における技術的項目と芸術的項目の 比率 IS Uジ ヤ ツ ジ ン グシステムでは,テ ク ニ カ ル - パ ネ ル が エ レ メ ン ト の 認 定 (エ レ メ ン ト の 基 礎 点 の 算 出 )を行 い , ジ ャ ッ ジ • パ ネ ル が エ レ メ ン ト に対 す るGOEの 評 価 と5つのプログラム•コン ポ ー ネ ン ツの採点を行うという形で,合 計7つの 項 目 の 採 点 が 行 わ れ て い る 。以下では, はじめ に, こ の7つ の 採 点 項 目 の そ れ ぞ れ につ い て , IS Uに よ る 各 採 点 項 目 の 評 価 基 準 に基 づ い て , 各々 の項目が主として技術に関 わる採点を行うの か,表現や音楽 との調和とい っ た ような芸術に関 す る採点を行うのかにつ い て考察を行うことに よ っ て7つの採点項目の分類を行 い た い 。 テ ク ニ カ ル•パネルはエ レ メ ン ト の認定,革新 的な要素に対 するボー ナス点の認定,転 倒の際の 減点を行う◦これらのテ ク ニ カ ル•パネルの行う 採点業務はすべてが演技の技術的な内 容に関 わっ ている。 また,ジ ャ ッ ジ. パネルが行う,エレメントの 出来 映えを評価 するGOEの採点では,各エレメ ントの開始の仕方や終わり方,動きの正確さなど を総 合評価 して,- 3 〜+ 3の7段階で評価 し, この評価 に基づいて基礎点に対 応 した加減点が行 われる(表1参 照)。 このGOEの評価 の基準では, エレメントを行う際の表現や音楽 との調和に関 し ては触 れられていないので, こ のG O Eも演技の 技術的な内 容を採点する項目とみなすことができ る。 表7には, プログ ラ ム•コンポ一ネンツの5つ の採点項目について,項目ごとに評価 すべき特性 と採点の基準が示されている。 この5つの項目の 中で,スケー ティング. スキルは,その名の通り 滑走する技術を採点する項目である。 この項目で は足の置き方の正確さ,スケー ティングのパワー / エネルギー および加速,多方向へのスケー ティ ングの習熟といった,技術的な内 容が採点され る。 また, トランジションZつなぎのフットワー クと動作という項目では,エレメントの開始の仕 方 や 終 わ り 方 を 含 め て ,多様 な, または複雑 な フットワー ク,ポジション,動作でエレメントが 組み合わされていることを採点する項目であり, ここでも技術的な内 容が採点対 象となっている。 これに対 して,パフォー マンスZエクセキュー シヨンの項目では,身のこなしやスタイル,個性 など,表現に関 することが採点内 容となってい る。 さらに, コレオグラフイー /コンポジション の項目では,音楽 と表現内 容との一致などが採点 表 6 男 女 シ ン グ ル 仮 想 最 高 点 と G P シリ ー ズ最 高 点 の 差 女子フリー ■ スケー ティング TES SS プログラム■コンポ一ネンツ■スコアーTR PE CH IN 係软 合計 仮 想最高点 167.5 10.0 10.0 10.0 10.0 10.0 1.6 80.00 2006GPシリ一ズ最高点 70.73 7.60 7.35 7.40 7.55 7.50 1.6 59.84 差 96.77 2.40 2.65 2.60 2.45 2.50 — 20.16 男子フリー スケー ティング TES SS プログラム■コンポ一ネンツ■スコアーTR PE CH IN 係数 合計 仮 想最高点 177.1 10.0 10.0 10.0 10.0 10.0 2.0 100.00 2006GPシリー ズ最高点 86.19 8.00 7.35 7.95 7.70 7.85 2.0 77.70 差 90.91 2.00 2.65 2.05 2.30 2.15 22.30 T E S #クニカル■スコアー SS=スケ^ 1イング■スキルTR=卜ランジシヨン/つなぎのフットワー クと動作 PE=パフオー マンス/ ェクセキュー シヨンCH=コレオグラフイー/ コンポジションIN=音楽 のインター プリテー シヨン — 77 —される。最後に,音楽 のインター プリテー シヨン という項目では,演技の実 施と音楽 との調和が採 点される。 したがって, ここに挙 げた3つの項目 は演技の芸術面を採点しているとみなすことがで きる。 以上の考察に基づいて7つの採点項目を技術的 項目と芸術的項目に分類したものが表8である。 この表をみると,7つの採点項目のうち4つが技 術的な内 容を採点している項目であり,残 り の3 つの採点項目が芸術的な内 容を採点している項目 であることがわかる。 この7つの採点項目の各々 にすでに述べた仮 想最高点を与 え,上の分類に基 づいて総 得点に対 する技術的項目と芸術的項目の 得点比率を男女別に求めたものが表9である。 こ の表からは男女共に, フリー •スケー ティングの 採点においては,技術的項目が約80%の比率を占 めることが分かる。
4 . エレメントの基礎点の差が総 得点に与 える影響
こ れ ま で の考 察 によ っ て ,2006年G Pシ リ ー ズ の得点結 果 で は , プ ロ グ ラ ム • コ ン ポ 一 ネ ン ツ ■ ス コ ア ー よ り も テ ク ニ カ ル . ス コ ア ー の ほ う が 総 得点に占める比率が高いこ と が明らかになった。 こ こ で はさらに,選手間 の テ ク ニ カ ル . ス コ ア ー の差が主 と し て ど の よ う な 要 因 に 基 づ い て い る の かを明らかにするために,同 一 の試合にお い て , プ ロ グ ラ ム . コ ン ポ 一 ネ ン ツ . ス コ ア ー が ほ ぼ 同 じ で , テ ク ニ カ ル • ス コ ア ー が 大 き く 異 な る演技 の演技内 容を比較する こ と と し た 。 このために, ここでは2006年G Pシリー ズNHK 杯フリー ■スケー ティングにおける浅 田真 央選手 と村主章枝選手の演技が考察対 象として選ばれ 表 7 プ ロ グ ラ ム .コ ン ポ 一 ネ ン ツ に お け る 評 価 基 準 点数 スケー ティングスキルの特性 (SS) 卜ランジシヨン/つなぎのフッ 卜ワー クと動作の特性(TR) パフオー マンス/エクセ キュー シヨンの特性(PE) コレ才グラフイー / コンポジションの特性(CH) テー シヨンの特性音楽 のインター プリ (IN) ■パランス、リズミカルな膝の 曲げ伸ばし、足の置き方の正 確太 ■流れ、楽 々 とした滑り ■深いエッジやステップやター ンの明確さ、確実 さ ■パワ一/エネルギ一および加 速 ■多方向へのスケー ティング の習熟 ■片足での滑走の習熟 •多様 さ ■難しさ ■複雑 さ ■質 ※ シングル、ペア競技にお いては、技術要素の入り方 と出方を含む ■肉体 的、情緒 的、知的 かかわり ■身のこなし ■スタイルと個性 ■動作の明確さ ■多様 さと対 照性 ■投射 ■目的(アイデア、コンセプ 卜、ビジョン) ■比率(部分部分の重みの 均衡) ■統一性(意図 のある縫合) ■個人的、公的な空間利用 ■パター ンと表面利用 ■フレー ジングとフォー ム(動 作、部分が音楽 のフレー ズ に調和して構成されている こと) ■目的や動作やデザインの 独 創性 ■音楽 に合った楽 々 と した動作(タイミング) ■音楽 のスタイル、特 徴 、リズムの表現 ■音楽 のニュアンスを 反映したフイネスの使 用 傑出 10 卓越 9 非常によい 8 約7 5%を満 たす 良い 7 普通より良い 6 普通 5 約5 0%を満 たす まあまあ 4 弱 劣る 約2 5〇/〇を満 たす 非常に劣る 1 表8 技 術 的 項 目 と 芸 術 的 項 目 の分類 採点項目と詳細 エレメントの得点テクニカル■スコア一 プログラム■コンポ一ネンツ■スコア一 GOE SS T R PE CH IN 採点する審判団 テクニカル■パネル ジャッジ■パネル ジャッジ■パネル ジャッジ■パネル ジャッジ■パネル ジャッジ■パネル ジャッジ■パネル 技術または芸術 的項目の分類 技術的項目 技術的項目 技術的項目 技術的項目 芸術的項目 芸術的項目 芸術的項目 SS=スケー ティング■スキルTR=卜ランジション/つなぎのフットワ一クと動作PE=パフォ一マンス/エクセキュ一ション CH=コレ才グラフィ一/コンポジションIN=音楽 のインタ一プリテ一ションた 。 2 つ の 対 象 演 技 の テ ク ニ カ ル • ス コ ア ー と プ ロ グ ラ ム . コ ン ポ 一 ネ ン ツ . ス コ ア ー , 総 得 点 に 対 する比率をま と め た も の が表10で あ る 。 こ こ か ら は , こ の 2 つ の 演 技 の プ ロ グ ラ ム . コ ン ポ ー ネ ン ツ • ス コ ア ー が 1 点 未 満 の 差 で あ っ た こ と が 分 か る 。 こ の 2 つ の 対 象 演 技 の テ ク ニ カ ル • ス コ ア ー に 関 し て , そ れ ぞ れ ジ ャ ン プ , ス テ ッ プ , ス ピ ン と そ の G O E の 得 点 を 抽 出 し , 各 々 の テ ク ニ カ ル ■ ス コア一に対 する得点比率を比較したものが表11で ある。 この表をみると,ステップ,スピンの基礎 点 お よ びGOEの得点はほとんど差がないことが 分かる。 しかし,ジャンプに関 しては,村主章枝 選 手 の ほ う がGOEの得点は高いのに,ジャンプ の基礎点で浅 田真 央選手に大きな差をつけられて いることが分かる。 そこで,それぞれの対 象演技で実 施されたジヤ ンプを種類ごとに分類し,その内 容と基礎点を比 表 9 技 術 的 項 目 と 芸 術 的 項 目 に お け る 得 点 比 率 女子シングルフリー ■スケー ティング 男子シングルフリー ■スケー ティング
技術的項目の仮 想最高
^1芸術的
:^罠 目の仮 想最高点
技術的項目の仮 想最高
灰1芸術的
;匾 目の仮 想最高点
採点項目
エレメント合計
点 GOE SS TR PE CH IN エレメント合計
点 GOE SS TR PE CH IN仮 想最高点
134.50 33.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00 141.10 36.00 10.00 10.00 10.00 10.00 10.00係数 を反映した
点数
\
16.00 16.00 16.00 16.00 16.00\
20.00 20.00 20.00 20.00 20.00項目ごとの合計
199.50 48.00 217.10 60.00 比率 80.61% 19.39% 78.35% 21.65% SS=スケー ティング■スキルTR=卜ランジシヨン/つなぎのフットワー クと動作 PE=パフオー マンス/ ェクセキュ一シヨンGH=コレ才グラフイ一/ コンポジションIN=音楽 のインタ一プリテー シヨン 表 1 0 対 象 演 技 の テ ク ニ カ ル . ス コ ア ー と プ ロ グ ラ ム . コ ン ポ 一 ネ ン ツ .ス コ ア ー a!田 真 央 ネ■ 主 早 枝 得点 総 得点に対 する% 得点 総 得点に対 する% テクニカル ■スコア一 70.18 53.98% 58.03 49.43% プログラム■コン ポー ネンツ■スコ ア一 59.84 46.02% 59.36 50.57% 表 1 1 テ ク ニ カ ル . ス コ ア ー に 対 す る 各 エ レ メ ン ト と G O E の比率 テクニカノレ-スコアー 基礎点 %JumpGOE % 基礎点 %StepGOE % 基礎点 %SpinGOE % 浅 田真 央 70.18 49.28 70.22% 0.40 0.57% 6.50 9.26% 1.50 2.14% 10.80 15.39% 1.70 2.42% 村主章枝 58.03 34.35 59.19% 3.08 5.31% 6.50 11.20% 1.30 2.24% 11.30 19.47% 1.50 2.58%
表1 2 対 象 間 の ジ ャ ン プ と 基 礎 点 の 比 率
Jumpの種類 実 施したJump 基礎点 実 施したJump 基礎点
3A 7.50 2Ax 3.63 アクセル 2A+3T 7.30 ---2Ax 3.63 ^
---ルッツ 3Lz+2Lo<+2Lo< x3Lzx 6.607.70 3Lz+2T3Lz 7.306.00 フリップ 3F+3Lo3Fx 10.506.05 3F+2T 3F X 7.485.50 サルコウ IS x 0.44 卜ウル一プ ※ :X印は演4支の後半に行われたジャンべプのため、基;礎点が1 . 13T倍されてL 4.00 ,、る ※ : 2Loくは回転 不足と認定され、1回転 のルー プジャンプの基礎点がつけられている較したものが表12である。 この表をみると,2つ の対 象演技はルッツとフリップ■ジャンプを2回 ずつ実 施しているという構成は同じであるが,浅 田真 央選手の場合には,3回転 のアクセルジャン プ実 施していること,2つのコンビネー ション■ ジャンプで3回転 ジャンプを実 施していることに よって,村主章枝選手の基礎点に対 する大きな差 を生じていることが分かる。 また,村主章枝選手 が 明 ら か に 失 敗 し た と 思 わ れ る1回転 のサルコ ゥ■ジャンプを仮 に3回転 で成功させたとしても, 対 象者間の15点の基礎点差は11点程度にしか縮ま らない。女子のフリー •スケー ティングの総 得点 が80点から130点の間で推移していることから考 えると,11点という得点差は非常に大きい点数 で ある。 これらのことから,テクニカル•スコアー で発 生している得点差はほとんどがジャンプの基 礎点 に よ る 差 で あ り ,ジャンプの出来 不出来 に よって総 得点が大きく左右されていることが明ら かである。
[ 結 論
本研 究では,2006年G Pシリー ズにおける男女 フリー •スケー ティングの総 得点の傾向と抹点の 内 容, また各採点項目の総 得点に対 する比率か ら,IS Uジャッジングシステムの問題点について 考察してきた。その結果以下の4つが明らかなっ た。 ① 2006年G Pシ リ ー ズ の得点傾向では,男 女シン グ ル共に上位選手は,テ ク ニ カ ル ■ ス コ ア ー の 方がプ ロ グ ラ ム . コ ン ポ 一 ネ ン ツ . ス コ ア ー よ りも総 得点に占める比率が高い状 況にあること が明らかになった。 ② 仮 想最高点,および2006年G Pシリー ズにおけ る最高点から予想される今後の総 得点の上昇可 能性から考えると,今後選手のエレメントの難 度が向上していくと, プログラム•コンポー ネ ン ツ.スコアー よりもテ ク ニ カ ル . スコアー の ほうが総 得点に占める比率が遥 かに高くなって しまうという可能性が示唆された。 ③ 審判団 によって採点が行われている7つの採点 項目につ い て ,各々 を技術的項目と芸術的項目 に分類し,仮 想最高点におけるこの2つの項目 のを比率を求めたところ,仮 想最高点の約8割 が技術的項目の得点であることが明らかになっ た。 ④プ ロ グ ラ ム . コ ン ポ 一 ネ ン ツ . ス コ ア ー に差が なく,テ ク ニ カ ル • ス コ ア ー に大きな差の認め られる代表的な2人の選手の演技内 容を比較し たところ,テ ク ニ カ ル . ス コ ア ー における得点 差のほとんどはジャンプの基礎点の違いによる ものであり,ジャンプの出来 ,不出来 によって 総 得点が大きく左右されていることが明らかに なった。 以上の結果から,現 在 のISUジャッジングシス テムでは芸術性に関 する採点の比率が低く,技術 的項目に関 する採点によって主として総 得点の順 位が左右されてしまっていることが明らかになっ た。 この結果をふまえて,現 在 のISUジャッジング システムを技術性と芸術性のバランスのとれた採 点システムにしていくためには,以下のような変 更が必要であると考えられる。 ① プ ロ グ ラ ム • コ ン ポ 一 ネ ン ツ の 項 目 か ら , エ レ メントの技術的内 容に関 わる評価 項目を排除す る。 ② プ ロ グ ラ ム . コ ン ポ 一 ネ ン ツ . ス コ ア ー の 1 0 点 という上限値の見直しを行う, もしくは,評価 基準の見直しを行う。 ③ プ ロ グ ラ ム . コ ン ポ 一 ネ ン ツ に お い て ,芸術的 項目に対 する係数 を現在の係数 よりも上げる, もしくは芸術的項目をさらに追加する。 ④ ジャンプにおける基礎点の引き下げを行う。 以上の措置によって,ジャンプの出来 ,不出来 によって生じるテ ク ニ カ ル • ス コ ア ー の差が小 さ くなり,芸術的項目の総 得点に対 する比率も高く なって,採点に芸術的項目に該当 する内 容が大き く反映されるようになると考えられる。 現 在 のISUジャッジングシステムでは,選手の 演 技 に 対 し て 技 術 性 の 評 価 が 高 す ぎ る た め に , フ ィ ギ ュ アスケー トの本質の一 つ である芸術性の 評価 が低くなってしまっている傾向にある。 この 芸 術 性 の 評 価 を 引 き 上 げ る こ と に よ り, ISU ジヤツジングシステムはフ ィ ギ ュ アスケー トの技 — 80 —術性と芸術性をバランスよく採点することができ るだろう。