独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
次世代審査等推進室/スペシャリスト(生物統計担当)
安藤 友紀
PMDAの取り組みと
日本におけるCDISCの利用について
CDISC概説コース
健康・医療戦略
(平成25年6月14日内閣官房長官・厚生労働大臣・関係大臣申合せ)
健康長寿社会の実現
経済成長への寄与
世界への貢献
基本理念(3つの理念)
薬事戦略相談室の体制強化
創薬支援ネットワークと緊密に連携する相談事業の整備・強化
PMDA自らが臨床データ等を活用した解析や研究を推進
大規模医療情報データベースを量・質ともに拡充して早期に1,000万人規模
のデータ蓄積を達成
PMDAの役割にふさわしい財政基盤の検討と必要な措置
PMDAの強化
そのため
の戦略
※日本再興戦略よりもさらに踏み込んだ提言や日本再興戦略では取り上げられていない項目が
電子データ利用体制構築プロセス(案)
年度 おもな実施事項 目的
H25年度 次世代審査・相談体制準備室設置
調査(FDA実態、業界意向等)
データストレージ機材調達
データ標準規格評価、バリデーション仕様決定
閲覧・解析用ソフトの選定・調達、教育・研修
臨床電子データ試行的入手、閲覧・内部解析の試行
基本的なシステムの構築
システムのフィージビリティー確認
問題点の抽出と対応確認
H26年度 次世代審査等推進室設置
電子データ利用の基本的考え方 通知発出
電子データ受付方法の決定
個別品目の電子データ閲覧・内部解析の試行
申請電子データ提出計画相談(仮称)試行
システム運用体制整備
審査プロセスの検討
H27年度 電子データ利用の実務的内容 通知発出
データ整理システムの構築
審査実務を想定した電子データ閲覧・内部解析の試行
申請電子データ提出計画相談(仮称)開始
審査プロセスの確立
H28年度 新薬申請で臨床電子データ提出義務化 新薬審査で電子データ閲覧・解析を実施
H29年度 非臨床試験等、適用範囲の拡大検討
助言品目への内部解析による対応検討
品目横断的解析の試行
助言品目での内部解析利用検討
品目横断的解析の利用検討
データ標準の利用
•
臨床電子データ提出を義務化した場合多くの
申請品目の臨床試験のデータがPMDAに提
出される
–
もしも各申請各様の規格でまとめられたデータが
提出された場合、申請ごとに必要なデータの所
在、各変数の意味を調べる必要がある
• しかしながら、審査にかけられる時間は限られている
–
将来的な横断的解析を実施する際、一般的に共
通する項目(性別、年齢等)すら統一された記載
方法に変換する必要があるかもしれない
データ標準の重要性
•
各臨床試験データが標準的な形式に従っていれ
ば、
PMDAにおいては、
– データの種類(被験者背景、有害事象、臨床検査値
等)によって格納されているデータセットや変数が定
められていれば、必要な情報を探すのが容易
– 臨床試験において共通する項目について、データ
セットで用いられる変数、変数に格納される数値や文
字の規格が統一されていることを利用したツールの
利用が可能
– 横断的解析の際に、基本的な情報については統合
が比較的容易となる
CDISC標準の利用
•
CDISC:Clinical Data Interchange Standards
Consortium
•
PMDAでは、申請時に提出を求める臨床電子
データの標準として、CDISCによる標準を採用す
ることとした
– 臨床試験データセットの標準:SDTM(Study Data
Tabulation Model)
– 解析用データセットの標準:ADaM(Analysis Data
Model)
電子データの提出方法とその種類(案)
• 提出時のデータ標準
– 対象となる臨床試験のデータはCDISC標準に準拠している必要がある
• 提出すべき電子データの種類
– 個別の試験データはSDTMを用い、定義ファイル(Define.XML等)とともに提出
– ADaMに基づく解析データセットとその定義ファイル(Define.XML等)、ADaM
作成用のプログラムを提出
– CDISC標準で推奨されるControlled Terminology、コードリストが設定されてい
る項目は、英語のみで記載されることを前提
• 解析用プログラムの提出
– 検証的試験の主要評価項目に対する主要解析のプログラムの提出が必須
• 電子データの作成と使用するコード
– CDISC標準やMedDRAについては、受け入れ可能な複数のバージョンを今後
の検討を踏まえて決定し、改めて通知する予定
– CDISCが推奨するControlled Terminology、コードリスト、単位についてはSI単
今後、変更の可能性もあります
平成25年度パイロット
•
目的
– 新医薬品の承認申請時に提出される臨床試験デー
タを、機構内のシステムにおいて適切に保管、管理し、
担当者による導入ソフトウエアを使用した解析が実
施可能であることを確認する、機構における臨床試
験データ利用のフィージビリティ確認
•
実施対象
– 日本で承認申請中又は申請予定の品目について、
米国FDAにも承認申請されている(申請見込みも含
む)こと等から、
CDISC標準を用いて集積・取り纏めら
れた、日本人データを含む臨床試験
平成25年度パイロット実施結果
• 臨床試験データの提供
– 協力企業を募集し、応募のあった5社から各社1品目、計5品目の臨床試験
データが提出された
• 実施内容
– 計約100名の審査員及び次世代審査・相談体制準備室関係者により、平成
26年1月から2月にかけて実施
– CDISC準拠の臨床試験データに対応したソフトウエアを含む複数のソフトウエ
アを利用
• 実施結果
– PMDA内でデータの保管、管理等は問題なく実施
– データセットに関する理解度、ソフトウエアへの習熟度等に関して一定の水
準を満たす審査員においては、実際の解析等が可能であることを確認
– 今後の課題
• 審査員のための各種研修の充実
• データ提出義務化後の審査プロセスの検討
• 基本通知及び技術的通知の整備や、業界との調整による、データ標準への高い準拠
状況の維持が重要
CDISC標準に準拠した臨床試験データの検討
• 提出された臨床試験データのCDISC準拠状況を確認する。
• データ閲覧/探索的解析用ソフトウエアを利用して、一般的
に申請資料に記載のある内容に関連した、一定の試験結果
の表示(背景因子の分布、有効性の主要及び副次評価項目
の結果、有害事象の発現状況等)を得ることが可能であるこ
とを確認する。
• 統計解析用ソフトウエアを利用して解析を行うことにより、主
要評価項目に関する主要な解析結果及び審査時に有用とな
ると考えられるその他の解析結果が得られることを確認する。
解析プログラムが提出されている場合には、内容の確認及
び内容に沿った解析を実施し、結果を確認する。
• 審査プロセスにおいて一般的に実施可能であると考えられ
る解析の範囲、想定される作業量、及び将来的な審査プロ
提出を依頼する臨床電子データ等の
内容の詳細(CDISC準拠データ)
• 使用するデータ標準
– Clinical Data Interchange Standards Consortiumの規格(CDISC標
準)に準拠する
– データのコード化については、CDISCが推奨している統制用語
(Controlled Terminology)及びコードリストを使用すること、単位
についてはSI単位を使用することを原則とする
• 対象となる臨床試験データ等
– Study Data Tabulation Model (SDTM) を用いてまとめられた臨
床試験データ及びDefine.XML等の定義ファイル
– Analysis Data Model (ADaM)を用いてまとめられた解析データ
セット及びDefine.XML等の定義ファイル
– 基本的にはADaMデータセットに対する解析用プログラム
– SDTMデータセットからADaMデータセットを作成している場合、
作成用のプログラム
平成25年パイロットでの経験と対応
• CDISC標準への準拠状況
の違い
– 変数の構成や日本語使
用の有無
• メタデータの内容の違い
– Define.xml等の定義ファイ
ルの形式や情報量
• 臨床試験計画との関連
– 有効性データの所在
– CRF記載内容との対応
標準への準拠状況や、各社間で生じ得る差異の把握が
PMDA内で多くの申請品目のデータを取り扱う上で
• CDISC標準への準拠状況の
改善
– 各種通知等による標準化
– 日本語の取り扱いの検討
• データに関する情報の整備
– 定義ファイルの形式と内容
– 「申請電子データ提出計画
相談(仮称)」で事前提出し
てもらう情報の整備
「標準化」と各社間の差異
•
CDISCの利用に際して各社間で何らかの差異が
出てくることはやむを得ない
– 多くの臨床試験への適用のため、標準自体にも曖昧
な部分はあると思われる
– 標準の理解度、経験の違いもある
– 適用される試験の特徴にも依存する可能性がある
•
知識の共有により、一般化できる部分はないだ
ろうか
– 標準自体のさらなる理解
– 実は推奨できる方法
– ばらつきが生じやすい部分についてのいくつかのパ
ターン
申請電子データ利用体制構築に向けた
業界との話し合い
(新たにテーマを追加
申請電子データの利用体制構築
に向け、主に制度的課題を検討。)
審査・相談関係の目標達成に向けた
新薬定期意見交換会 (7月、12月)
承認審査の技術的事項に関する
WG(審査WG)
成果報告
検討事項の附議
(実務レベル打ち合わせ)
申請電子データ利用体制構築に
向けたSWG
(主にデータの取扱い等、技術的課題
を検討。)
(臨床薬理・ADME領域の申請時電子
データの標準化について、FDAが提示す
る形式を踏まえて検討する。)
報告 報告
臨床薬理・ADMEチーム(新設)
CDISC技術チーム(新設)
( CDISC標準の誤解や誤用を避け
るため、間違いやすい事項を取り
上げ解説するとともに、CDISC標
J3C、CJUG関係者にも
ご協力をいただき構成
今後の展望
•
日本における臨床試験データの標準化の推進
=CDISCの普及
– 申請電子データに関する技術的通知等による詳細
の説明
– CDISC技術チームにおける検討結果の公表やそれに
基づくサポート
•
SDTM、ADaM以外の標準に関する検討
– CDASH(Clinical Data Acquisition Standard
Harmonization)
– SEND(Standard of Exchange of Nonclinical Data)
– Therapeutic Area Standards
おわりに
• 本邦において、承認申請に関連してCDISC標準を利用する
のは初めてのこと
– 今回の申請電子データ提出の計画をきっかけに、「今後CDISC
標準の利用を始める」、という企業もある
– 本格的に利用を検討するAROも増加する可能性がある
• PMDAでも、CDISC標準に関する経験は浅いことから、今後、
多くの点をパイロット実施やCDISCとの協力、技術チームで
の検討を踏まえて検討していきたい
• PMDAにおける電子データの利用、蓄積は、審査・相談を
通じて、将来的には医薬品のより科学的な評価、より効率
的な開発等に役立つものであり、CDISCの利用、普及はそ
のために非常に重要であると考えている
今後も皆様のご意見も取り入れながら進めていきたいと考
えていますので、ご協力をよろしくお願い申し上げます
次世代審査・相談体制HP
今後も、本HPに
通知、説明会資料等
H26パイロット実施結果
その後も
パイロット実施計画
パイロットへの協力依頼、等
を、掲載していく予定です