A study of urinary immunoglobulins excretion after forced lordosis MASAKO MIHATA Department of Pediatrics, Hyogo College of Medicine, Hyogo, Japan (Di

体 位 性 蛋 白 尿 に 関 す る 研 究

第 一篇

尿 中 免 疫 グ ロ ブ リ ンの 定 量

御幡

正子

A study

of urinary

immunoglobulins

excretion

after

forced

lordosis

MASAKO MIHATA

Department

of Pediatrics,

Hyogo College of Medicine, Hyogo, Japan

(Director : Prof. Hiroyoshi Wada)

Key word : orthostatic proteinuria, lordosis, urinary immunoglobulins excretion, low/non selective proteinurria

Changes in the urinary excretion of immunoglobulins

(IgG and IgA) before and after

forced lordosis were studied in 26 children with orthostatic

proteinuria

(group OA, where

proteinuria

disappeared

within 120 min after lordosis was referred

to as group OAA and

where

if disappeared

after

more than

120 min was group

OAB) and 9 children with

chronic glomerulonephritis

in the clinically stable state (group GN).

Urinary immunoglobulins

were

measured

by ELISA

(enzymelinked

immunosorbent

assay).

In resting

urine,

the urinary

excretion

rates

(total protein, IgG, and IgA) and the

urinary protein ratio (IgG/protein,

IgA/protein,

and IgA/IgG)

did not significantly

differ

between groups OA and GN.

When forced lordosis was carried out, at maximum

protein

excretion,

the urinary

IgA/IgG ratio in groups

OAA and OAB were significantly

decreased

(from 198+44% to

17.3+12.9%

and from 147+88% to 18.7+16.9%,

respectively).

The ratio of IgA/IgG in

groups OAA and OAB was significantly

lowerr than that in group GN (88.9+53.9%,

pC

0.01).

The urinary IgA/IgG ratio after lordosis in group OA was similar to the serum

IgA/IgG ratio.

These findings suggest that transient low or non-selective proteinuria after lordosis is a characteristic of orthostatic proteinuria.

Analysis of the urine after forced lordosis, especially using the urinary IgA/IgG ratio at maximum protein excretion, may be an useful examination for differentiating OA from other glomerulonephritides. 緒 言  体 位 性 蛋 白 尿(以 下OA)が 小 児 期 に 発見 され る蛋 白 尿 に 占 め る割 合 は 少 な くな い。 しか し,そ の病 態 につ い て は不 明な 点 が 多 く,予 後 良好 とされ て は い る1)も の の, きわ め て 稀 で に あ るがOAの 経 過 中 に 巣状 糸 球 体 硬 化 症 が発 見 さ れた と の報 告 もあ る2)。また 同時 に 慢 性 腎炎 の臨 床 的 治 癒期 や ネ フ ロー ゼ の寛 解 期 に もOAと 同様 の状 態 を 示 す3)こ と も知 られ て い る。 日常 の診 療 に お い て も,OA児 が 腎炎 と して過 度 の 運動 制 限 を受 けて い た り,ま た 逆 に 腎 炎 がOAと して 放 置 され て いた りす る 例 に遭 遇 す る こ と も少 なか らず 存 在 す る と思 われ る4)。  以上 の こ とか らOAで は 腎障 害例 との鑑 別 が重 要 で あ り診 断 の正 確 さが要 求 され る。 本 症 の 診 断 に はWatson

兵庫 医科大学小児科

(平成3年8月30日 受 理)

が発 表 した 診 断 基 準5)に 加え て,腰 椎 前 弯 負 荷 を 行 い 蛋 白尿 を 認 め た 場 合 に これ を 前 弯負 荷 後 蛋 白尿 と 呼 び, OAの 診 断 の参 考 に す る と言 う考 えが あ る。  しか し,前 弯 負 荷 後 の蛋 白 尿 の増 加 は腎 障 害例 に お い て も認 め られ る事 か ら6)臨 床 症状 だ けで は 腎 障害 例 との 鑑 別 は難 しい 上 に 全 例 に 腎生 検 を行 うべ きで もな い。 腎 生 検 を施 行 せ ず にOAか ら腎 障害 例 を発 見 で き る方法 の 開発 が 望 まれ る所 以 で あ る。  このた め,OA児 の 前 弯負 荷 後尿 の 構 成 成 分 を 分 析 し,腎 炎 例 のそ れ と比 較 す る こ とに よ って,OAか ら腎 障害 例 を発 見 す る と共 に そ の 成 因 に迫 ろ うとす る試 み が 諸家 に よ りな され6)一9),これ までOA患 者 の尿 蛋 白構 成 成 分 の うち 高 分 子 蛋 白 で あ るIgGが 増 加 して い る こ と が判 明 して い る。  今 回 著 者 は,そ の 点 に 注 目 し,OA児,腎 炎 患 者 の前 弯 負 荷 前 後 の 尿 中IgG,IgAを 定 量 し,両 者 各 々の推 移 につ い ての 比 較 検 討 を 行 った 。 対 象  対 象 は 兵 庫 医 科大 学 小児 科 を受 診 した9才 か ら18才 の 34名 で 男 女比 は 男子17名,女 子17名 で あ った 。   OAの 定義 は,一 般 身体 状 態 が 正常 で あ り腎 疾 患,心 血 管 疾 患 の 前歴 が な く,臥 位 にて 尿蛋 白 陰性 で立 位 あ る い は 前 弯 負 荷 に て 出 現す る蛋 白尿 と し,そ の診 断 基 準 は 早 朝 第 一 尿 も し くは早 朝 第 一 尿 排 泄 後 の2時 間安 静 時 尿 が 陰 性 で あ り,15度5分 間 の前 弯 負 荷 に よ り蛋 白尿 が 出 現 す るが 仰 臥位 安 静 に て蛋 白 が陰 性 化す る もの と した 。  この 診 断 基準 に合 致 す る26例 をOA群 と した 。 男 女 比 は15:11,年 齢 は9才 か ら17才 で あ った。 さ らに,前 弯負 荷 後 仰 臥位 安 静 に て120分 以 内 に蛋 白陰 性 化 す る も の17名 をOAA群,蛋 白陰 性 化 に150分 以上 要 す る もの 9名 をOAB群 と した 。 また,OAA群,OAB群 で は 来 院 時尿 に て蛋 白陽 性 の も のをOAA1群,OAB1群,陰 性 の もの をOAA2群OAB2群 と した 。  次 に慢 性 腎炎 例6例 と過 去 に 肉 眼的 血尿 が あ るな ど腎 炎 を疑 わ せ る症 例2例 を 併 せ て 腎炎 群(GN群)と した 。 男 女比 は2:6,年 齢 は7才 か ら18才 で あ った 。 慢性 腎 炎 例 の 腎 生 検結 果 は微 少 変 化 群2例,増 殖 性 腎 炎4例 で あ った 。GN群 も蛋 白尿 だ けを 見 れ ば前 述 の 診 断 基 準 を 満 た し,ま た こ の 内 の4例 は 過 去6ヵ 月間 の 経 過 だ け を 見 る と,ど の任 意 尿 で も血 尿 は 認 め られ ず,早 朝 尿 も し くは2時 間安 静 時 尿 で は 蛋 白 陰性,前 弯 負 荷 後 で蛋 白尿 が 認 め られ る症例 で あ った。 な お,全 例 に お い て測 定 前6ヵ 月 間 に は 尿 路感 染症 の 既 往 は 認 め てい な か つた 。 方 法 1)検 体(Fig.1)  そ れ ぞ れ早 朝 尿 また は 早 朝2時 間安 静 後 尿(U0),来 院 時尿,15度5分 間 の前 弯 負 荷 直 後尿(UM1),前 弯 負 荷 後仰 臥位 安 静30分 後 尿(UM2),引 続 き 仰 臥 位安 静 30分 毎 に尿 を 採 取 して 尿蛋 白 が 陰 性 に な った 時 点 の尿 (UN)に つ い て 検 討 した 。 尿 は遠 沈 後 の 上 清 を 分子 量 cut off:6000∼8000の 透 析 膜(spectra/por)を 用 い て 透 析 した 後,マ イ ナ ス20度 で分 注 保 存 した。 な お,UM1,

UM2の うち,分 時蛋 白排 泄 量 の多 い 方 を 負荷 後尿(UM) と して 検 討 した。

2)測 定 法

 尿 中IgG,IgAそ れ ぞ れpolyclonal抗 体 を一 次抗 体 と しELISA法 のsand witch法 で測 定 した 。 基 本 的 に は藤 原 ら10)の 方法 に準 じた が 宮 田 ら11)や富 沢 ら12)の記 載 も参 考 に して 若 干 の 改 良 を加 えた 。

第 一 次 抗 体 に はanti-human IgGF(ab)2Fragment goat血 清(CapPe1社)並 び にanti-human IgAF(ab)2

Fragment goat血 清(CapPe1社)を 用 い,IgGは ×2000,IgAは ×4000に そ れ ぞれ 希 釈 し,Immuron

Fig.1 Lordosis Protocol and Sampling.

(2)

Plate(Dynatech社)の96穴 セこ0.1mlず つ 分 注 後,室 温 で 一 晩 静 置 し た 。 次 に,Plateの 内 容 物 を 捨 て5% BSA(bovine serum albumin)-PBS(phosphate-buf-fered saline),も し くは5%ス キ ン ミル ク(明 治FKT)-PBSを0.2mlず つ 分 注 し室 温 で2時 間 静 置 し 抗 体 被 覆 部 分 を プ ロ ック キ ン グ した 。 そ の 後,Plateの 内 容 物 を 捨 て,蒸 留 水 で1回,PBST(phosphate-buffeyed saline tween20)で1回 洗 浄 後,標 準 血 清 な ら び に サ ン プ ル を1%BSA-PBSも し くは1%ス キ ン ミル ク-PBSで 希 釈 し0.1mlず つ 分 注 し た 。  標 準 血 清 と し て は,IgG,IgA,IgM混 合 標 準1血 清 (Behring社)を 用 い た 。 ま た,サ ン プ ル と な る 尿 は PBSに て 希 釈 して 測 定 し た 。

  Plateを2時 間 室 温 に て 静 置 反 応 さ せ た 後,Bio Rad 社 のMicroplate washer(MODEL1550)を 用 い,PBST で4回 洗 浄 後,2次 抗 体 を0.1mlず つ 分 注 し た 。2次 抗 体 に はHRPO-antihuman IgGF(ab)2Fragment goat血 清(EY社),HRPO-antihuman IgAF(ab)2 Fragmentgoat並1清(Cappel社)を そ れ ぞ れ2500倍 にPBSTで 希 釈 し て 用 い た 。 室 温 に て1時 間 静 置 後 PBSTで4回 洗 浄 し,o-phenylendiaminを 加 え て15分 反 応 発 色 させ,Bio Rad社 のEIA reader(MODEL 2550)でOD492で 測 定 し た 。

 尿 中 総 蛋 白 はBio Rad社 のPROTEIN ASSAYKIT を 用 い た 。  な お,統 計 的 検 定 に はt検 定 を 用 い た 。 結 果 1)測 定 方 法 の 基 礎 的 検 討 IgGは10ng∼2000ngま で,IgAで は20ng∼200 ngま で 良 好 な 直 線 性 が あ り,IgGに 対 す るIgA,IgM, IgAに 対 す るIgG,IgMの 交 差 反 応 は ほ と ん ど 認 め な か っ た(Fig。2)。  ま た,変 動 係 数 は 測 定 数 が そ れ ぞ れ8で,intraassay で

はIgGは7.3∼11.4%,IgAは8.2∼10.1%sbe-tween assayで はIgGが8.8∼12.3%,IgAが7.9∼ 14.0%で あ っ た(Table1)。

Fig, 2a Standard curve and cross reaction of IgG.

Fig, 2b Standard curce and cross reaction of IgA. Table 1 %CV of assay. 2)尿 蛋 白排 泄 量  腰椎 前 弯 負荷 試 験 をGN群,OAA群,OAB群 の3 群 に 行 いUM及 びUNの 各 蛋 白 の 尿 中排 泄 量 の変 動 に つ き比 較 検 討 した 。   Fig.3は 総 蛋 白,IgG,IgAの 単位 時 間 当 りの 尿 中 排 泄 量 を3群 につ い て示 した もの で あ る。   UMの 分 時 尿 中総 蛋 白排 泄 量 はOAA群 では3984± 5232(μg/min)(12.32∼20460),OAB群 では7009± 6358(μg/min)(662∼19060)と 両OA群 と もGN群 793±777(μg/min)(66∼8282)に 比 べ て有 意 に高 値 を

Fig. 3 Change of Protein, IgG, IgA excretion of lordosis.

Protein : Total Protein excretion IgG : IgG excretion

IgA : IgA excretion * P<0 _.05

Fig. 4 Changes of IgG/Protein, and IgA/Protein by lordosis. 示 し て い た 。  ま た,尿 中IgGの 分 時 排 泄 量 に お い て もOAA群 411±525(μg/min)(2∼1363),OAB群613±658(μg/ min)(2.5∼2204)とGN群 の68.4±59.8(μg/min) (6.5∼828)よ り有 意 に 高 値 を 示 し て い た 。 し か し,IgA の 分 時 排 泄 量 に つ い て は3群 間 に 有 意 差 を 認 め な か っ た 。  ま た,UNで は 総 蛋 白,IgG,IgAの 分 時 尿 中 排 泄 量 は い ず れ に お い て も3群 に 有 意 な 差 を 認 め な か っ た 。  次 に,UMとUNと を 比 べ て み る と,GN群 で は 総

蛋 白,IgG,IgAの 分 時 蛋 白 排 泄 量 がUMに お い てUN の そ れ ぞ れ 約7倍,約15倍,約10倍 で あ る の に 対 し, OAA群 で は 約60倍,約70倍,約12倍,OAB群 で は 約 70倍,約70倍,約35倍 で あ り,総 蛋 白,IgGに お い て は 両OA群 で はGN群 よ り,約6∼7倍 の 著 明 な 増 加 度 を 示 し て い た 。 しか し,IgAの 増 加 度 の 差 は 約3倍 で あ っ た 。  こ の よ う に,平 均 値 の 比 較 か ら み る と,GN群 とOA 群 と の 鑑 別 は 可 能 で あ った が,個 人 差 の 大 き い 結 果 を 反 映 し 標 準 偏 差 が 大 で あ る こ とか ら,個 々 の 症 例 で み る 場 合 に は 両 者 の 鑑 別 は 困 難 と思 わ れ た 。 3)尿 中 蛋 白 比  次 に,尿 中 総 蛋 白 に 対 す るIgG,IgAの 比(IgG/ protein,IgA/protein)とIgA/IgG値 の 腰 椎 前 弯 負 荷 試 験 に よ る 変 動 に つ い てGN群,OAA群,OAB群 に つ い て 比 較 検 討 し た 。   Fig.4はIgG/protein,IgA/proteinの 腰 椎 前 弯 負 荷 試 験 前 後 の 変 動 を3群 に つ い て 示 した も の で あ る 。 IgG/protein比 はU0で はGN群 で は12.5±11.0 (%)とOAA群 の3.87±3.78(%),OAB群 の4.47± 5.47(%)よ り も 有 意 に 高 値 を 示 し た(p<0.05)。UM に お い て はGN群 で は11.0±12.8(%),OAA群 で は 14.4±9.26(%)OAB群 で は12.8±8.8(%)と 両OA 群 に お い て や や 高 値 を 示 す も の の 有 意 な 差 を 認 め な か っ た 。UNで も3群 に 差 を 認 め な か っ た 。  し か し,GN群 で は,U0とUMの あ い だ で は,IgG/ Proteinの 増 加 は 認 め ら れ ずUMか らUNお い て も 有

意 な 変 化 は み られ な か っ た の に 対 し,OAA群,OAB群

で はU0に 比 べ てUMに お い てIgG/Protein比 が 有 意 に 増 加 し(p<0.01)UMか らUNで は そ の 比 が 減 少 しUNで は や や 高 値 を 示 す も の の ほ ぼU0の 値 に 戻 っ て い た 。 IgA/protein比 はU0とUNに お い て はGN群, OAA群,OAB群 に 差 は な く約5%で あ っ た が,UMに お い て は,GN群 が4.56±4.36(%)な の に 対 し,OAA 群 で は2.36±2.3(%),OAB群 で は1.20±0.8(%)と 両OA群 に お い てGN群 よ り は 低 い 傾 向 が 見 ら れ た 。  ま た,GN群 で はU0,UM,UNの 問 でIgA/Protein 比 の 変 動 は 認 め ら れ な か っ た が,OAA群,OAB群 で はU0に 比 べ てUMに お い てIgA/Protein比 が 有 意 に 低 下 し(p<0.01)UNで は ほ ぼU0の 値 に 戻 っ て い

Fig. 5 Change of IgA/IgG by lordosis.

Table 2 Comparison of IgA/IgG ratio between UM and serum.

た 。

  Fig.5にIgA/IgG比 を 示 す 。IgA/IgG比 はU0と

UNに お い て はGN群,OAA群,OAB群 で は60% か ら200%と 開 き は あ る も の の 有 意 な 差 は な か っ た 。  しか し,UNに お い て は.GN群 が88.9±53.9(%) な の に 対 し,OAA群 で は17。3±12.9(%)OAB群 で は18。7±16.9(%)と 両OA群 に お い てGN群 よ り も 有 意 に 低 値 で あ っ た(P<0。01)。  また,GN群 で は,U0,UM,UNの 間 でIgA/IgG 比 の変 動 は 認 め られ なか った が,OAA群,OAB群 で はU0に 比 べ てUMに お い てIgA/IgG比 が有 意 に低 下 し(p<0.01)UNで は ほ ぼU0の 値 に 戻 って いた 。  この よ うにUMに お け るIgA/IgG比 はGN群 と OA群 間 で 際だ った 差 を 見 せ る。 こ の差 はOA群 でUM のIgA/IgG比 が低 下 す るた め に 生 じた も ので あ る。  また そ の値 はTable2に 示 す よ うに 血 清 の平 均 値 に 近 似 の 値 を示 して いた 。

4)OA群 内の 比較

  OA群 に つ い て は2)3)に も述 べ てき た よ うに蛋 白

陰性 化 時 まで に 要 した 時 間 でOAA,OAB両 群 に 分 け て検 討 した が,有 意 な 差 は 認 め られ なか った 。

 また,来 院 時 尿 の 蛋 白 陽性 者(OAA1+OAB1)と 陰 性者(OAA2+OAB2)に 分 け て 比 較 検 討 した 結果 も Fig.6に 示 す よ うにU0,UM,UNで の総 蛋 白,IgG, IgAの 分 時蛋 白排 泄 量,IgG/Protein,IgA/Protein IgA/IgGの どれ に も 有 意 な 差 は 認 め られ ず,両 者 を 同 等 に扱 っ て差 し支 えな い もの と考 え られ た(Fig.6)。 考 案   OAの 診 断 基 準 に は,一 日を6時 間 毎 に4分 割 し交 互 に起 立,歩 行,安 静 横 位 を 繰 り返 し,立 位 で は 蛋 白陽 性,横 臥位 で 蛋 白 消 失 の 確 認 の 診 断を 基 礎 と して い る1) ものか ら,腰 椎 前 弯 負 荷 試 験 を 行 い蛋 白尿 を 認 め た場 合 に これ を 前 弯 負 荷 尿 と呼 び,OAの 蛋 白尿 の診 断 の 参考 にす る6)と い うもの まで 研 究者 に よ り様 々で あ る。 しか し,本 質 的 に は 安 静 仰 臥 位 で尿 蛋 白陰 性,立 位 ・歩 行 時 に尿 中蛋 白陽 性 とな る こ とで あ り,腎 炎 な どの蛋 白 尿 の 原 因疾 患 とな る もの が 除 外 で きる と言 う条 件 を満 たす も のをOAと 診 断 して い る こ とに 変わ りはな い 。  こ こで,慢 性 腎 炎 の 臨 床 的 治癒 期 や ネ フ ロ ーゼ の寛 解 期 の症 例 が 尿 所 見 だ け を 取 り上 げ てみ れ ば 安 静横 臥位 で 尿 蛋 白陰 性,立 位 歩 行 時 に 尿蛋 白陽 性 で あ る と言 うOA と同様 の尿 所 見 を示 す こ とが 問題 とな る。 つ ま り,慢 性 腎炎 の 治 癒 期 の もの や 基 礎 に 進 行 性 腎 炎 を 有す る もの で,蛋 白尿 発 見 時 にOA様 の 尿所 見 を示 す こ とが あ る。 言 い替 えれ ばOA患 者 の 中 に潜 在 性 の腎 炎 患 者 が包 含 さ れ て い る可 能 性 が あ る。  このた め に,OAか ら腎 炎 を 識別 し,な お か つOAの 成 因 に迫 るた め に,尿 中 蛋 白 の 組成 を分 析 し他 の 腎疾 患 と比 較 検 討 し よ うと言 う 試 み が 諸家 に よ りな され て い る。Freyら13)はOAは 腎 炎 と比 較 してselectivityが 高 く運 動 時 に は 安 静 時 に比 べ てSelectivityが さ らに増 加 し,一 方 腎 炎 で はselectivityは 変 化 しな い と述 べ て い る。 宮 田 ら9)は 前 弯 負 荷 後 の β2-microglobulin, lyzozymeの%transferrin clearanceの 結 果 は,OA 例 で は正 常 者 に 類似 したhigh selective proteinuria

を 呈 して お り,OA患 者 で は正 常 者 に 類 似 した 蛋 白変 動 動 態 が見 られ る と して い る。 一 方,鈴 木 ら7)はOA例 で は 前 弯 負荷 前 に比 べ て 負 荷 後 は比 較 的大 き な分 子 量 の 蛋 白が 増 加 して お り,負 荷 後 のIgG/transferrin比 は 1.47で 選 択 性 の悪 い尿 で あ った と報 告 して い る。 また, 石 本 ら6)はOA例 に お い ては 負 荷 前 の 尿蛋 白構 成 成 分 は 正 常 例 や 潜在 性 腎炎 例 と 同様 で あ るに もかか わ らず,負 荷 後30分 で 低 分 子 よ り 高 分 子 まで 幅広 い 排 泄 を 示 し low/non selective proteinuriaと な っ て い る と報 告 し

てい る。

 著 者 らは,OAで は尿 中に 高 分 子 蛋 白 の増 加 が見 られ る こ とに 注 目 し,前 弯 負 荷 後 の 尿 中IgG,IgAの 測 定 を 行 った 。

 尿 中 のIgG,IgAの 測 定 はsandwitch法 に よるELISA 法 を 用 い た。 そ の 基 礎 的 検討 に おい て 測 定感 度 はIgG で は10ng,IgAで は20ngと 良好 で あ り,そ の変 動 係 数 もintra,between共 に 約10%と 他 の 報告14)15)と ほ ぼ 等 しい結 果 を得 た 。 変 動 係 数 は10%前 後 で あれ ば 臨 床 的 に は 大 き な 問 題 に な らな い と され て お り,著 者 ら の測 定 系 は 満 足 い くも の と 考 え られ て い る。 しか し, ELISAは 時 として 非 特 異 的 反 応 に よ る と 思わ れ る異 常 な 値 を示 す こ とが あ り,ま た尿 中 に はenzyme activity を 阻 害 す る物 質 の存 在 を 考 慮 す る必 要 が あ る と推 測 され る こ とか ら,繰 り返 し 測 定 す る こ とや 尿 をbufferで 充 分 希 釈 す る こ とが必 要 と考 え られ た。  尿 中 免疫 グ ロブ リン の 定量16)に 関 し ては これ まで に IgA腎 症 や 尿路 感 染 症 な どの 報 告 が み られ17)-19),そ れ らの 報 告 に よれ ば 正 常 成 人 で は はIgG,IgAと もに 約 0.2μg∼1.0μg/ml程 度 の尿 中排 泄 濃 度 を 示 しIgA/IgG 比 は 平 均 して100%∼150%と な って い る19)。一 方 腎 炎 で は,IgA腎 症 で尿 中IgG,IgAの 排泄 濃 度 は 正 常 群 に 比 べ て高 値 を示 す もの のIgA/IgG比 は正 常 群 と有 意 な 差 は な か った とされ て い る18)。  今 回,著 者 らはOA群 とGN施 で前 弯負 荷 を行 い, そ の前 後 で 尿 中蛋 白IgG,IgAの 変動 を 調 べ た ご そ の 結 果 で はOA群 とGN群 のUO尿 やUN尿,GN群

OA群 のUM尿 のIgA/IgG比 は約17%と 今 まで の 報 告 よ り も低 値 を 示 し,な おか つ この値 は 血 清 のIgA/IgG 比 に近 い値 で あ った。  IgAは,尿 細 管 か ら分 泌 され るの で蛋 白尿 の程 度 が 少 量 で あ る場 合 は そ の 影 響 もあ る と 考 え られ るが,IgG, IgAは 両 者 と も分 子量 が約150KDだ がIgGの 等 電 点 が4∼9で あ る のに 対 し,IgAの 等 電 点 は不 定 で あ り, そ の ク リア ラン ス は両 者 で微 妙 に違 って お り諸 家 らの 報 告 に あ る値 を 示 す と思 わ れ た 。  著 者 らはOA児 で は前 弯 負 荷前 後 に尿 蛋 白の 高 分 子蛋 白 の 占め る割 合 が増 加 す るば か りでは な く,高 分 子蛋 白 で あ るIgG,IgAが 血 清 の 比 そ の ま まに 尿 中 に排 泄 さ れ る とい う 今 回 の 結 果 か ら,OAで は 一 時 的 にsize barrierの 破 綻 が起 こ り,血 清蛋 白が 選 択 を 受 け ず に尿 中 に排 泄 され るた め に尿 中IgA/IgG比 が 血 中 に近 い値 を 示 す と推 測 した 。  腎疾 患 で は尿 中 のIgG,IgAはfragmentの 形 で 検 出 さ れ る のに 対 してOAの 場 合 はholeの 形 で 検 出 さ れ る とい う報 告20)は 著 者 らの考 えを 裏 付 け るで あ ろ う。  しか し,負 荷 後 尿 以外 の随 意 尿 で はOA群 とGN群 と の間 に 有 意 な 差 は 認 め られず,石 本 らの 言 う よ うに一 過 性 に10w/non selective proteinuriaを 呈 す と言 う尿 中 蛋 白構 成 成 分 の 変化 は,OAに 特 有 な 変化 で あ り,本 症 の確 定 診 断 の み な らず,慢 性 腎 炎 な どの鑑 別 に も充 分 役 立 つ も の と考 え られた 。 また,同 時 に 一過 性 の変 化 で あ る こ とか らOAは 予 後 良好 と考 えて 差 し支え な い もの と思 わ れ る。  現 在,前 弯 負 荷前 後 の尿 蛋 白分 析 に はSDSPAGEや セ ル ロ ース ア セ テ ー ト膜(CA膜)に よ る電 気泳 動 法 や HPLC(高 速 液 体 ク ロマ トグ ラ フ ィ)の 他 に 免疫 学 的手 法 を 用 い たWestern blottingに よ る蛋 白 分 析 も用 い ら れ る よ うに な って きて い る21)∼23)。しか し,こ れ らは い ず れ も視 覚 的 判 断 に よる パ タ ー ン分 類 に 頼 って い る の が 実 状 で あ り,こ れ だ けで はOAか ど うか の判 断 に苦 しむ こ と も多 い。  また,尿 中 各種 蛋 白 の 定量 に はRIA法,ELISA法 やIZ-SKID(Reversed Single Radial Immunodiffusion)

等 が 用 い られ る よ うに な り微 量 な蛋 白 まで 検 出 が可 能 と な った が,多 数 の 蛋 白 の定 量 を行 いselectivityを 判 断 す る こ とは非 常 な手 問 と時 間 を労 し,日 常 診療 の上 で は 不 可 能か つ 不 適 当 で あ る。  この こ とか ら,数 種 の 蛋 白 の定 量 を 行 い,そ の比 を 用 い てselectivityを 表 す 何 らか の定 量 的 な 指標 とな る も のが あ れ ば,比 較 的 容 易 にOAを 診 断 す る こ とが で き る と思 わ れ る。  この こ とか ら も,前 弯 負 荷 後尿 のIgA/IgG比 はselec-tivityを 表 す 一 つ の指 標 と して 他 の蛋 白分 析 と併せ て 用 い る こ とでOAの 診 断 や 慢 性 腎 炎 との鑑 別 に 役立 つ と考 え られ る。 結 論   OA患 者,腎 炎 患 者 の腰 椎 前 弯負 荷試 験 を 行 い そ の 前 後 に お け る尿 中 の総 蛋 白及 び,IgG,IgAの 定 量 を行 い 次 の よ うな結 果 を得 た 。  1)OA群 で は前 弯 負 荷 後 尿 で尿 中総 蛋 白,IgGの 排 泄量 の増 加 がGN群 よ り顕 著 で あ った 。  また,そ の蛋 白比 を 比 べ る とOA群 でIgG/Protein が 高 く,IgA/proteinが 低 い 傾 向が あ り,こ の結 果IgA/ IgG比 は 血 清 の そ れ に近 似 の値 を示 して お り,OA群 で 負 荷 後 に 尿 中IgA/IgG比 が 血 清 の そ れ を よ く反 映 して い る こ とはす なわ ち 負 荷 後 尿 で はlow/non selective proteinuriaで あ る と考 え られ,尿 中IgA/IgG比 は,

low/non selective proteinuriaを 表 す 一 つ の指 標 と してOAの 診 断 や慢 性 腎炎 との鑑 別 に 役立 つ と考 え られ た。   2)負 荷 後 尿 以 外 の随 意 尿 で はOA群 とGN群 との 間 に有 意 な差 は認 め られ ず,一 過性 に10w/non selective proteintxriaを 呈す る尿 中蛋 白構 成 成 分 の 変 化 はOAに 特有 な変 化 とお もわ れ,一 過 性 の変 化 に留 ま る とい うこ とは,す な わ ちOAほ 予 後 に 良 好 で あ る と考 え られ た 。 4)OA群 につ い て は蛋 白陰 性 化 ま で に要 した 時 間 で OAA,OAB両 群 に分 け て 検 討 した が,有 意 な差 は 認 め な か った 。 さ らに,来 院 時 尿 の蛋 白 陽 性者(OAA1+OAB1)と

陰 性者(OAA2+OAB2)に 分 け て 比 較 検 討 した 結果 も 有 意 な 差 は認 め られ ず,両 者 は 同質 な群 と考 え られた 。 謝 辞 稿 を 終 え るに臨 み,御 指 導 と御校 閲 を賜 った 兵 庫 医 科 大 学 小 児 科和 田博 義 教 授 に 深 謝 致 します 。 また,終 始 適 切 な御 指 導 は御 助 力 を頂 い た 谷 澤 邦 助教 授 な ら びに 教 室 の諸 姉 兄 に感 謝 致 し ます 。 (本論 文 の要 旨 は,第23回 日本 小 児 腎臓 病 学 会,XIth international congress of nephrology(1990,Tokyo,

Japan)に おい て 発 表 した 。)

文

献

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