平成 30 年 2 月 2 日(金)
太田市議会議長 町田 正行 様
創政クラブ代表 大川 陽一
会派行政視察報告書
1 期 間:平成 30 年 1 月 24 日(水)~ 1 月 26 日(金)
2 視察先:和歌山県和歌山市議会・京都府京都市会・大阪府大阪市会
3 参加者:大川 陽一・今井 俊哉・中村 和正・高木 勝章・八木田 恭之
高藤 幸偉・大島 正芳
(公務のため 1 月 25 日~26 日参加)
高田 靖 ・矢部 伸幸・久保田 俊・石倉 稔
4 視察事項
① 和歌山市 ○ プラスチックごみの発電利用について
② 京都市 ○ 京都市こころの健康センターについて
③ 大阪市 ○ 小中一貫教育について
◎ 和歌山県和歌山市視察報告
和歌山市概要 面積 208.84 ㎢ 人口 359,876 人
(H.29 年 10 月1日)
議員数 38 人 政務活動費 年額 1,200,000 円/人
和歌山市 プラスチックごみの発電利用について
目的: 和歌山市は、ごみ焼却施設の長寿命化のための改修に合わせ、資源ごみの分別回収 を見直し、プラごみは焼却し発電利用、事業系の紙類は収集停止しリサイクルとして いる。本市では、ごみ処理を広域化とし、平成 33 年度新焼却施設稼働の計画で新施 設を建設中であり、今後のごみ処理とリサイクル推進の参考とするため、プラごみの 焼却による発電利用について和歌山市の事例を視察した。 所感: 和歌山市の廃棄物処理は、紀ノ川河口の中州に集約され、焼却施設の青岸クリーン センターと青岸エネルギーセンター、し尿・浄化槽汚泥処理の青岸汚泥再生センター が隣接している。ごみの焼却施設である青岸クリーンセンターと青岸エネルギーセン ターは、建設年度や燃焼炉の方式の違いがあり、エネルギーセンターには粗大ごみの 破砕処理施設が併設されている。 青岸クリーンセンターの概要は、平成 10 年竣工、2基の焼却炉で処理能力320 t/日(廃熱ボイラ付き焼却炉 2 基)、資源化は、蒸気発電(3,500kW)、温水利用 (場内暖房、給湯)、焼却残さから磁性物回収となっている。青岸エネルギーセンタ ーの概要は、昭和 61 年竣工、平成 11 年~14 年ダイオキシン類低減対策工事、平 成 24~27 年基幹改良工事、処理能力は、焼却処理 400t/日(廃熱ボイラ付き焼 却炉 2 基)、粗大ごみ処理 75t/5H1基、余熱利用は蒸気発電(4,300kW)、場 内暖房、給湯となっている。 和歌山市では、平成 16 年 4 月から 12 年間 9 種分別回収を行っていたが、プラご みは、リサイクルするために「汚れを落として」「洗った後は水を切って」、「プラス チックなのに分類されないものがある」など、手間がかかる、分かりづらいとの理由 で、なかなか正しい分別が徹底されずにいる状況であったという。 平成 28 年度、青岸エネルギーセンター老朽化による期間改良工事完成を機に、一 般ごみの焼却に必要な燃料を補うためプラごみを活用することとし、焼却熱によるエ ネルギー利用としての発電も施設改修で能力がアップし、年間で 200 万キロワット 時となり、約 600 世帯分の電力を生み出している。また、燃料削減のほか、改修や 分別の手間と処理再生費用の削減もあり、年間約 1 億円のごみ処理費用削減効果があ るとしている。さらに、発電能力の向上で電力会社からの買電量が減り、温室効果ガ ス排出量の抑制と処理施設の運転コストの減にもなっている。 容器包装リサイクル法では、熱回収は、再使用、再生利用とともに規定されており、 さらに分別回収コストの低減も努力義務ではあるが示されている。置かれている状況 は異なるが、本市のごみ処理施設においても検討すべき手法と感じた。青岸エネルギーセンター
ごみピット
◎ 京都府京都市視察報告
京都市概要 面積 827.83 ㎢
人口 1,472,027 人(H.29 年 10 月1日)
議員数 67 人 政務活動費(会派)年額 1,680,000 円/人
京都市 こころの健康増進センターについて
目的: 社会的な課題である、自殺予防や大人の引きこもり対策に取り組んでいる京都市「こ ころの健康増進センター」を視察し、京都市の状況とセンターの機能・取り組みを本 市の参考とする。 所感: 京都市では、市民のこころの健康増進、精神疾患の予防、適切な精神医療の推進、 精神障害のある人の自立と社会参加の促進のため、保健所とは別に市立のリハビリテ ーションセンターを改修した「こころの健康増進センター」を設置し、次の5つの事 業を行っていた。 「電話相談」は、心の悩みやアルコール・薬物・ギャンブル等の依存、精神障害の ある方の社会参加など、こころの健康に関する様々な相談を受けている。 「きょう・こころ・ほっとでんわ」は、自死遺族・自殺予防こころの電話相談とし て、自死遺族孤立を防ぎ、相談者の不安を軽減するための相談を受けている。 「来所相談、精神科医による診察」は、相談内容により、予約制で来所相談、精神 科医委による診察(保険適用)等を行っている。 「法律相談」は、予約制で精神障害を持つ人とその家族を対象に、京都弁護士会の 協力で月 2 回開催している。 「デイ・ケア」は、様々なプログラムや職場実習を通じ、就労に向けて一定期間準 備をしていくリハビリテーションで、費用は保険適用となっている。精神科に通院し ている統合失調症の人のための就労準備デイ・ケア及びうつ病で療養中の人のための 症状改善と就職・復職準備性を高めるデイ・ケアを行っている。 人口 147 万人を超える政令市ならではの充実した施設と運営といえるが、本市に おいてもこれから必要となる取り組みと思われる。自殺要望に関しては、要因はさま ざま事が重なることが多く、行政内部での理解と協力体制が必要との意見を受けた。 大人の引きこもりに対する取り組みは、要支援者の 40 歳到達前に相談の継続・引継 ぎをすべきであり、医師の対応も必要とのことであった。本市では、行政が相談を受 け、社会福祉法人や NPO に対応は委ねられているが、今後は行政の支援充実が課題 と考える。こころの健康増進センター
◎大阪府大阪市視察報告
大阪市概要 面積 225.21 ㎢ 人口 2,713,157 人(H.29 年 10 月 1 日)
議員数 86 人 政務活動費(会派)年額 6,840,000 円/人
大阪市 小中一貫教育について
目的: 大阪市において、既に3校が開校し、平成 30 年度新たに 1 校が開校予定の施設 一体型小中一貫校による小中一貫教育について、導入経緯と現状、今後の課題につい て視察し、本市がめざす施設一体型義務教育学校開設に向けての参考とする。 所感: 大阪市の小中一貫教育の取り組みは、大都市内での居住人口の偏差を背景とした児 童生徒数の減少による学校規模の適正化確保の検討から始まったもので、当初方針は、 平成 22 年 8 月決定されている。内容は、設置基準は、校区は現行の学校区内の就 学とし、中学校区に小学校が 1 校の学校 9 校のうち、施設一体型で適正規模を超え ず、既存の校舎に小中学生を収容可能な学校 2 校を対象に実施とされた。教育課程 は、同一敷地内に小学校と中学校を併置し、小学校と中学校の教育課程をそれぞれ実 施し、学習指導要領の範囲内での取り組みとされた。施設整備は、既存の校舎を最大 限に活用とし不足する教室等を整備とされていた。 その後、「当面設置予定の 2 校は将来的に 1 学年 1 学級になる見込みで、教育活動 に適した規模としては課題が残る。」、「現行校区からの就学前提により、学習指導要 領の小学校と中学校の枠を超えた取り組みはできない。」、「当初案 2 校以外への展開 について施設整備を含めて新たな検討必要。」との理由から、平成 23 年 8 月から方 針の見直しが行われ、平成 24 年 5 月、今後の施設一体型小中一貫校設置方針が決定 された。見直しされた方針は、「広く校区を超えて児童生徒を受け入れ、施設一体型 小中一貫校の適正規模を確保する。」、「学校の特色化を図り、児童生徒保護者のニー ズに応える小中一貫校を目指す。」ことを目標とされている。 具体的には、校区は全市から募集、現行の学校所在校区の児童生徒は優先とし、定 員を超えた場合は抽選としている。なお、通学時の課題と思われる、登下校の所要時 間や方法・費用などについては、保護者の判断と責任とされている。 設置の基準は、市内の地域バランスを考慮し統廃合などの機会をとらえ設置、当面、 平成 25 年度予定の新たな行政区割りにつき 1 校設置を目指すとしている。平成 30 年度開校で 4 校となった後、新たに 1 校開校した段階で検証を行い、計画を再検討 するとのことである。また、適正規模確保として各学年 2 クラスを想定、安全の観点 から、小学校低学年と中学生との活動領域を分けられる一定の校地面積があることを 考慮としている。 教育課程は、現行の学習指導要領の内容に加えた特色ある教育のため、週当たり時 数の増加により授業時間を確保し、小学校 1 年生から英語学習、習熟度別学年縦断で の反復・発展的学習、9 年間通じた ICT 活用教育活動、異学年交流活動、9 年間通じた始業前後のモジュール学習、土曜授業実施による教育活動公開などが取り組み内容 とされている。 施設整備の考え方は、既存校舎を最大限活用の上で、必要な増築は行うとしながら、 近隣施設の活用など効率的な設置を行うとしている。一方、学年縦断や異学年交流な ど、新たな教育内容に応じた教室の整備を行うとされた。実際に開校している学校の 児童生徒数は 250 人~450 人規模で、施設の設置基準に合わせ必要な増改築が行わ れ、社会教育施設の校舎転用や特別教室の小中共用化、プールの整備や校庭の拡張な ども行われている。小中学生が共用するため、階段蹴上げや手洗い水栓の高さの調整 なども必要であり費用負担も大きいとのことで、5 校で計画の再検討につながる面も あるものと考えられる。 大阪市の施設一体型小中一貫校による教育は、小学校と中学校が存在する点で本市 のめざす施設一体型義務教育学校による小中一貫教育とは異なるものである。しかし、 人口減少による学校の再編は共通した課題であり、市街地再開発計画に学校を含めて 一体で整備する手法や隣接する公共施設の再利用、地域住民と学校との連携、学校区 の在り方への考え方などは参考となるものと感じた。また、学校施設を一体型とする 上での実際の課題と解決策は、すでに実践され検証されており、今後の本市の義務教 育学校施設整備の中に生かせるものと考える。 大阪市役所