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Academic year: 2021

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厚生年金基金の代行返上と株式市場への影響

○足元では株価の下落が一服し、持ち直してきているが、水準は依然として低い。株価低迷の原因とし ては、内外景気の先行き不透明感、為替円高、銀行と企業との株式持ち合いの解消による需給の悪化 などが挙げられているが、加えて最近時において大きな要因になっていたと考えられるのが厚生年金 基金の代行返上に伴う保有株式の売却である。 ○2002年4月に確定給付企業年金法が施行され、厚生年金基金は確定給付企業年金に移行することによ り代行給付義務を国に返上できるようになった。代行返上すれば基金の母体企業は、運用不振で生じ る負担の拡大を防ぐことができるといった理由から、代行返上を行う基金が相次いだ。 ○代行返上によって、基金は厚生年金代行給付に相当する資産を国に納付することになる。納付は原則 として現金で行わなければならないが、国内債券、国内株式については一定の要件を満たせば有価証 券で物納することも認められている。しかし、多くの基金ではコストや株価下落リスクなどの観点か ら現金での納付を選択し、納付資金確保のために資産の現金化をすすめているとみられる。 ○厚生年金基金全体の運用資産残高は2002年3月末時点でおよそ51.6兆円となっていた。このうち代行返 上を主として検討している単独型、連合型基金の運用資産残高はおよそ36兆円程度とみられ、さらに そのおよそ半分の18兆円が代行給付分に相当するとみられる。単独型、連合型基金の8割が代行返上を 実施する場合、最大で約4.6兆円の国内株式が納付資金確保のための売却対象となる可能性がある。す でに代行返上を検討していた基金の6割は株式を売却していると推測され、売却のピークは過ぎたと考 えられるが、今後、さらに1.8兆円程度の株式が売却される可能性がある。 ○代行返上により国に納付された資産のうち、株式や債券といった現物で納付された部分は積立金とし て運用されるが、現金で納付された部分はすぐに積立金にはならず、国の厚生年金の歳入となる。そ して年金勘定の資金繰りを経た上で残余となれば新規に積立金となり、翌年度の市場運用などの原資 となる。現金で国に納付される資金のうち、ある程度は公的年金の積立金となり来年度に再び株式市 場にも還流しよう。 【お問い合わせ先】調査部(東京)池田 E-Mail:[email protected]

調 査 レ ポ ー ト 0 3 / 4 4

2 0 0 3 年 7 月 2 2 日

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2階 1階 3階 職域年金 相当部分 適格退職 年金など 厚生年金基金 第2号被保険者 (サラリーマン本人) (約3,700万人) 第1号被保険者 (自営業者など) (約2,200万人) 第3号被保険者 (サラリーマンの 被扶養配偶者) (約1,200万人) この部分を、各企業 の厚生年金基金が代 行して運用・給付。 国民年金(基礎年金) 厚生年金 (民間サラリーマン) 共済年金 (公務員など) 国 民 年 金 基 金 はじめに ○足元では株価の下落が一服し、持ち直してきているが、水準は依然として低い。株価低 迷の原因としては、内外景気の先行き不透明感、為替円高、銀行と企業との株式持ち合 いの解消による需給の悪化などが挙げられているが、加えて最近時において大きな要因 になっていたと考えられるのが厚生年金基金の代行返上に伴う保有株式の売却である。 なぜ、年金基金の動きが株式市場に大きな影響を与えるのか。年金問題は国民全員に関 係する問題でありながら、制度が複雑なこともあって、広く十分な理解が得られている とは言えない。 ○そこで本レポートでは、まず代行返上の経緯と仕組みを整理した上で株式市場に与える 影響を考察し、次に日本銀行の作成している資金循環表をもとに最近の株式市場におけ る年金資金の位置づけを整理した。 1.厚生年金基金の代行返上 ○わが国の年金制度は、全員(注1)が加入する国民年金(基礎年金、建物にたとえれば1階 部分)と民間サラリーマンが加入する厚生年金、公務員などが加入する共済年金(2階 部分)を中心に構成されている(図表1)。これに加え、民間の多くの企業では厚生年金 基金を設立して国の厚生年金の一部を代行して給付するとともに、独自の上乗せ給付(企 業年金)を行っている(3階部分)。 (図表1)年金制度の概要 ○厚生年金基金制度は、従業員の老後所得をより充実させることを目的として、1966 年に 創設された。基金は、国の厚生年金の一部を国に代わって給付するが、保険料について も代行給付に相当する部分は国への納付を免除され、基金の収入となる(免除保険料)。 基金は免除保険料と独自の上乗せ部分の保険料を収入として年金の給付を行うとともに、 将来の給付に備えて積立金を積み立てて運用を行っている。なお、現在の免除保険料率 は 2.4∼3.0%となっている(図表2)。 (注1)20 歳以上 60 歳未満の日本在住者。日本国籍を有さない者も含む。

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《基金に加入していない人》 《基金に加入している人》 【保険料】 (基金へ納付) 厚生年金の代行部分 2.4∼3.0% 厚生年金 【保険料】 (免除保険料) 13.58% (国へ納付) 厚生年金 10.58∼11.18% 国民年金 国民年金  (国へ納付)       ・・・国から年金を給付       ・・・基金から年金を給付 (注)保険料の数字は、年収に対する保険料率。 基金独自の上乗せ部分 上乗せ給付に 必要な保険料 13.09 10.27 0.74 -9.83 -4.16 1.98 3.39 5.21 5.21 3.65 5.65 2.56 -10 -5 0 5 10 15 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 -30 -15 0 15 30 45 運用収益率(左) TOPIX騰落率(配当金含む)(右) (前年比、%) (年度) (注)数字は運用収益率。運用収益率は修正総合利回り。修正総合利回りは、   評価損益を加算して元本や収益を時価ベースにして計算した利回り。 (資料)厚生年金基金連合会 (前年比、%) (図表2)厚生年金基金の概要 ○基金が代行部分に相当する積立金の運用で予定利率(5.5%)を上回る収益を上げた場合 には、企業は超過分の運用益を使って社員向け福利厚生施設を充実させるなどのメリッ トを享受することができた。このため、かつて運用環境が良好であった時期には多くの 企業が基金を設立して代行を行った。しかし、バブル崩壊後、運用利回りが予定利率を 下回るようになると、将来の給付に要する積立金に不足が生じるようになった(図表3)。 企業は追加拠出などによって不足分を穴埋めしなければならず、収益が圧迫されるよう になっていた。 (図表3)厚生年金基金の運用収益率の推移

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【確定給付企業年金】 企業年金 【厚生年金基金の資産】 【国】  現金納付   物納 代行給付相当部分 上乗せ部分に 相当する資産 厚生保険特別会計 年金資金運用基金 移行 ※(図表1)における厚生年金、 国民年金の積立金を運用。 37 7 22 27 68 104 39 10 6 13 31 35 34 12 48 56 0 20 40 60 80 100 120 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 2002 2003 0 100 200 300 400 500 600 月別認可数(左) 累積数(右) (件) (件) (注)数字は2003年7月1日まで (資料)厚生労働省 (年、月) ○2002 年4月に確定給付企業年金法が施行され、厚生年金基金は上乗せ部分の支給義務を 確定給付企業年金(注2)に移行することにより代行給付義務を国に返上できるようになっ た。代行返上すれば基金の母体企業は、運用不振で生じる負担の拡大を防ぐことができ る。また、代行返上に伴って企業会計上の退職給付債務額が減少するが、この減少額が 国に返す資産額よりも大きい場合には、差額が負債の減少として母体企業の特別利益に 計上される。こうした理由から代行返上を行う基金が増加し、返上を認可された基金数 は 2003 年 7 月 1 日時点で 549 社にのぼっている(図表4)。 (図表4)代行返上を認可された厚生年金基金の数 ○代行返上によって、基金は厚生年金代行給付に相当する資産(最低責任準備金相当額) を国に納付することになる。納付は原則として現金で行わなければならないが、国内債券、 国内株式については一定の要件を満たせば有価証券で物納することも認められている(図 表5)。 (図表5)代行返上に伴う資産の移転 (注2)規約型、基金型の 2 つがある。規約型企業年金では労使合意の年金規約に基づいて企業と外部機関(信託会社、 生保など)が契約を結び、企業外で年金を運営する。基金型企業年金では企業とは独立した基金を設立し、基金で 年金を運営する。

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【国内株式】  ・TOPIXの構成銘柄の80%以上の銘柄で構成されていること。  ・推定トラッキングエラー(インデックスとの乖離率)が0.2%以内であること。 【国内債券】  ・NOMURA−BPIを構成する銘柄で構成されていること。  ・事業債、円建外債、MBSはA格以上、金融債はBBB格以上の格付けを取得   していること。  ・推定トラッキングエラー(インデックスとの乖離率)が0.2%以内であること。 0.66 0.68 0.70 0.72 0.74 0.76 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 02 03 0 20 40 60 80 100 120 TOPIX Core30/TOPIX比率(左) 代行返上認可基金数(右、逆目盛) (注1)株価は月中平均値を使用、2003年7月は14日までの平均 (注2)2003年7月の代行返上認可基金数は1日時点のもの (資料)厚生労働省、東京証券取引所 (倍) (件) ○物納には、納付する株式や債券について、銘柄の構成などいくつかの要件が設定されてい る(図表6)。規模の大きくない基金にとってはこの要件を満たすのは困難であり、要件 を満たそうとすれば銘柄の入れ替えコストもかかってしまう。このため、物納を選択する 基金はわずかとなっている。また、現金で納付する場合、実際に納付するのは 2003 年の 9 月以降となるため、それまでに株価が下落してしまうリスクを回避したいという思惑か ら、多くの基金が代行返上を認可されるとすぐに株式の現金化を進めていったとみられる。 (図表6)物納の要件 ○2003 年年初から年度末にかけては、単月の認可基金数が 3 月に 100 を越えるなど、代行 返上の認可が集中した。2003 年 3 月以降、日経平均が 7,000 円台となるなど株価の下落 がみられたが、代行返上の認可を受けた基金による株式売却が要因となっていた可能性 がある。年金基金が株式運用を行う場合、企業規模の大きい優良銘柄が中心となるが、 大規模企業の銘柄で構成されるTOPIX Core30 と東証一部全体の動きを表すT OPIXの比率の推移を見ると 2003 年度末ごろに大きく低下しており(東証一部全体に 比べ大規模企業銘柄の下落幅が大きい)、基金による売りが出ていた可能性を示唆してい る(図表7)。なお、5 月以降の代行返上認可基金数は少なくなっており、株式市場での 売り圧力は後退していると推察される。 (図表7)代行返上認可基金数と大型株指数

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純資産額 /最低責任準備金 計 単独・連合型 総合型 ∼ 0.5 0 0 0 0.5 ∼ 0.6 1 0 1 0.6 ∼ 0.7 0 0 0 0.7 ∼ 0.8 12 3 9 0.8 ∼ 0.9 50 5 45 0.9 ∼ 1.0 201 38 163 264 46 218 1.0 ∼ 1.1 242 46 196 1.1 ∼ 1.2 193 65 128 1.2 ∼ 1.3 108 59 49 1.3 ∼ 1.4 82 63 19 1.4 ∼ 1.5 60 54 6 1.5 ∼ 1.6 43 38 5 1.6 ∼ 1.7 58 58 0 1.7 ∼ 1.8 59 58 1 1.8 ∼ 1.9 48 48 0 1.9 ∼ 2.0 57 57 0 2.0 ∼ 522 518 4 1,736 1,110 626 15.2% 4.1% 34.8% (注)2002年3月末現在 (資料)厚生労働省 1.0未満計 計 1.0未満の基金数 /全基金数 ○それでは代行部分の返上に伴って、どの程度の株式が売却対象となるのだろうか。厚生 年金基金は、大企業、大企業グループが設立する単独型、連合型と、中小企業が合同で 設立する総合型の2つに大別される。このうち総合型基金については、近年の運用環境 の悪化により、多くの基金で資産内容が悪化している。総合型基金では、およそ3分の 1の基金で、積立金の額が代行給付相当額(最低責任準備金)を下回っている。このよ うな基金では、代行返上は積立不足の補填という損失を伴うため実施が困難な状態とな っている(図表8)。また、積立金の額が代行給付相当額を上回っている基金でも、多く は上乗せ給付に相当する積立金が少なくなっている。こうした基金では、返上を実施す ると資産規模が大幅に縮小してしまうため、代行返上後に上乗せ部分が移行する確定給 付企業年金の運営が困難となる。このため、代行返上を実施するのは、ほとんどが単独 型、連合型の基金で占められるとみられる。 (図表8)厚生年金基金の財政状況

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うち総合型基金分 16兆円 代行給付相当部分 約 18兆円 上乗せ部分 約 18兆円 厚生年金基金の総資産額 51.6兆円 うち単独・連合型基金分 約 36兆円  約7割  約5割 32.0% 21.3% 46.7% 国内株式 4.6兆円 国内債券 3.1兆円 その他 6.7兆円 売却対象に 代行返上をすでに実施あるいは検討中 約 14.4兆円 単独・連合型基金の代行給付相当分 約 18兆円 うち8割 ○厚生年金基金全体の資産残高は 2002 年 3 月末時点でおよそ 51.6 兆円となっていた(図 表9)。単独型、連合型基金の資産残高は全体の約 7 割を占めており、その額はおよそ 36 兆円程度とみられる。単独型、連合型基金では資産残高のおよそ半分の 18 兆円が代行給 付分に相当するとみられる。 (図表9)厚生年金基金の資産残高と代行部分 ○厚生年金基金連合会のアンケートでは、単独型、連合型基金のうちおよそ8割が代行返 上をすでに実施しているか、あるいは検討中と回答している(2002 年 10 月の調査)。単 独型、連合型基金の8割が代行返上を実施する場合、約 14.4 兆円の資産が国に納付され ることになる(図表 10)。厚生年金基金の資産は、国内株式、国内債券、転換社債、外国 株式、外国債券、生保の一般勘定などで運用されているが、そのうち国内株式の組み入 れ比率は 32.0%程度になっていた(2002 年 3 月末時点)(図表 11)。この比率を用いると、 納付対象となる資産のうち、約 4.6 兆円が株式で運用されていたことになる(図表 10)。 代行返上を実施する基金が国への資産納付を全額現金で行うと仮定する場合(注3)、最大 で約 4.6 兆円の国内株式が納付資金確保のための売却対象となる可能性がある。 (図表 10)売却対象となる株式総額の試算 (注3)現金で納付を行うとしても、その資金確保の方法はさまざまである。積立金(運用資産)を取り崩す以外にも、 新規資金を市場運用に投入せず、現金のまま保有して納付資金に充てるケースもありうる。また、運用資産を売却 する場合でも、全ての資産を組入れ比率に沿って売却するのではなく、パフォーマンスの悪い資産を集中的に売却 するケースも考えられる。ここでは、基金は運用資産を組入れ比率どおりに売却して納付用の現金確保を行うもの と仮定した。

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2.8兆円 1.8兆円 約6割 残り約4割 549基金が返上認可済み 約341基金 (代行返上候補) 4.6兆円(売却対象となる可能性のある株式総額) 単独型、連合型基金の8割(約890基金に相当)が 代行返上をすでに実施あるいは検討中 13.0 10.1 10.0 11.8 11.1 13.6 15.7 21.5 28.3 36.5 34.0 32.0 21.7 23.1 24.1 22.2 21.2 22.4 25.0 24.1 22.2 21.5 21.3 21.3 10.3 15.6 16.6 18.0 18.1 19.6 8.5 10.3 10.2 36.9 39.2 40.3 42.2 42.2 39.9 30.6 24.4 17.7 11.1 11.3 12.1 7.4 0% 20% 40% 60% 80% 100% 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 国内株式 国内債券 外国株式 外国債券 生保一般勘定 その他 (年度) (注)各年度末ベース (資料)厚生年金基金連合会 (図表 11)厚生年金基金の資産構成割合 ○今後、代行返上基金の増加によって売却される株式の規模はどれくらいになるだろうか。 7 月 1 日時点で 549 の基金が代行返上を認可されているが、これは単独型、連合型基金の うち代行返上をすでに実施、あるいは検討しているとみられる基金数(約 890 基金、前 述のアンケートでの回答割合を適用)の約 6 割に達している。認可を受けた基金が認可 後すぐに資産売却を実施していると仮定(注4)すると、代行返上によって売却対象となる 株式総額 4.6 兆円のうち、すでに 2.8 兆円が売却されていることになる(図表 12)。今後 は、代行返上基金の増加により、さらに 1.8 兆円程度の株式(注5)が売却される可能性が ある。 (図表 12)今後、売却対象となる株式額の試算 (注4)基金によっては市場動向を見ながら資産売却のタイミングを計っている基金もあろうが、ここではすべての基金 は資産価額の変動リスクを嫌って、速やかに現金化をすすめていると仮定した。 (注5)売却株式額の試算は 2002 年 3 月末時点を基準としており、株式価額はその後の時価の変動によって変わってい ると考えられるが、ここでは単純化のため、時価の変動を織り込まずに試算をしている。

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-2 0 2 4 6 8 10 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 -5 0 5 10 15 20 25 収支(左) 保険料収入(右) 運用収入(右) (年度) (兆円) (資料)社会保険庁「事業年報」、厚生労働省資料 (兆円) ○代行返上により国に納付された資産はどうなるのだろうか。まず、物納により現物のま ま納付された債券、株式は、厚生年金本体の積立金となり、公的年金積立金の管理・運 用を行う年金資金運用基金の運用資産に組み込まれる。一方、現金化されて納付された 部分については、すぐに積立金として運用に充てられるのではなく、まず厚生保険特別 会計年金勘定の歳入となる。そして年金保険料などと同じように年金勘定の資金繰りに 組み込まれることになる。年金勘定の運営の結果、年度の収支に剰余が生じれば新規に 積立金となり、翌年度に年金資金運用基金へ寄託されて市場運用などの原資となる。 ○厚生年金の財政状況は、保険料収入の伸び悩みと運用収入の減少によって 2001 年度に初 の赤字(注6)となるなど厳しさを増している(図表 13)。代行返上によって国に納付され る資金のうち一部は、収入の不足を補うために年金支払いなど年金勘定の支出に充当さ れる可能性がある。この場合、納付資金のうち公的年金の積立金となる額は当初の納付 額よりも小さくなる。 (図表 13)厚生年金の財政状況 ○2003 年度の予算では、代行返上に伴う現金納付額を約 3.2 兆円と見込んでおり、この歳 入増加を含めて年金勘定の収支に約 0.4 兆円の残余が出る予定になっている。つまり、 代行返上によって国に納付される現金のうち、約 2.8 兆円程度は国の年金勘定の支出に 充当される予定になっている。 ○単独型、連合型基金の積立資産のうち代行部分は 18 兆円程度である。このうち 8 割の基 金(約 890 基金)が代行返上を実施する場合、約 14.4 兆円が国に納付される。これがす べて現金で納付されると、年金勘定の歳入は同額増加する(注7)。しかし、このうち約 2.8 兆円は支出への充当が予定されており、収支の剰余として翌年度に新規積立金となるの は 11.6 兆円程度になると予想される(注8)。また、2003 年 7 月 1 日までに代行返上を認可 された基金数(549 基金)を用いて同様の試算をすると、国への納付金額は約 8.9 兆円、 新規積立金となるのは 6.1 兆円となる。 (注6)旧年金福祉事業団からの承継資産の運用損益を含めて評価した場合。 (注7)代行返上にともない、基金が代行していた保険料の収受と年金の支給がともに国に戻るため、国の厚生年金の収 入と支出もその分増えることになる。返上される代行部分の収支構造によっては厚生年金の収支が変わってくるこ とになるが、ここでは均衡しているものと仮定した。 (注8)このほか国民年金の収支の残余は 2003 年度予算では約 300 億円となっている(小額のため試算結果には影響し ない)。

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(兆円) 2001年度 2002年度 2003年度 ケース(Ⅰ) ケース(Ⅱ) (返上基金数 が549) (返上基金数 が890) ①代行返上に伴う現金納付額(前年度) − − − 8.9 14.4 ②年金勘定の支出への充当額(前年度) − − − 2.8 2.8 ③新規積立金(前年度の年金勘定の残余など) 2.4 0.6 1.0 6.1 11.6 ④財政融資資金預託金からの償還額 15.5 18.1 21.3 17.1 17.1 ⑤年金資金運用基金への新規寄託額 (③と④が原資) 17.0 18.3 19.5 23.2 28.7 ⑥財投債の引受け 11.9 6.7 5.7 5.7 5.7 ⑦財投からの借入金の返済 3.1 3.5 3.7 3.7 3.7 ⑧新規寄託額のうちの市場投入額 (⑤−⑥−⑦) 2.0 8.1 10.2 13.8 19.3 ⑨過去に引き受けた財投債の満期償還額 − − 2.0 1.1 1.1 ⑩新規市場投入額(⑧+⑨) 2.0 8.1 12.1 14.9 20.4 (注1)2002年度は実績見込み。 (注2)2003年度は見込みであり、今後の変動がありうる。 (注3)単位未満の端数処理のため合計において必ずしも一致しない。 (資料)厚生労働省、財務省資料より作成 2004年度(試算) ○新規積立金は既存の積立金のうち財政融資資金から償還される預託金(2004 年度は厚生 年金、国民年金合計で 17.1 兆円が償還される予定)とともに年金資金運用基金に寄託さ れる(注9)。この寄託金は、すべてが市場運用に投入されるわけではなく、財投債の引受 けや財投からの既存の借入金の返済にも充当される。このため、新規寄託額のうちどれ だけが市場運用に投入されるかは、財投債の引受け計画や財投借入金(注10)の返済額な どによって変わってくる。 ○2003 年度については、財投債引受けは約 5.7 兆円、財投借入金の返済は約 3.7 兆円が予 定されている。これらが 2004 年度も同水準で推移すると仮定する場合、2004 年度の新規 寄託額のうち市場運用に投入されるのは、返上基金数が 7 月 1 日時点の基金数のケース (図表 14 のケース(Ⅰ))では 13.8 兆円、単独型、連合型基金の 8 割にのぼるケース(図 表 14 のケース(Ⅱ))では 19.3 兆円となる。また、2004 年度には 2002 年度に年金積立 金で引き受けた財投債のうち 2 年債(約 1.1 兆円)が満期を迎える。この償還金は市場 投入されることが予想され、これを合わせた 2004 年度の新規市場投入額は、ケース(Ⅰ) で 14.9 兆円、ケース(Ⅱ)で 20.4 兆円となると試算される。 (図表 14)年金積立金の新規市場投入額 (注9)年金資金運用基金は、厚生労働大臣から年金資金の寄託を受けてその管理、運用を行う全額政府出資の特殊法人。 新規積立金や財政融資資金からの償還金はすべてが自動的に年金資金運用基金に寄託されるわけではないが、図表 14 における試算では全額が寄託されるものとして計算した。 (注10)旧年金福祉事業団は旧資金運用部から財投資金を借り入れ、資金運用事業を行っていた。年金資金運用基金は その資産及び負債を引き継いでおり、財投借入金を順次返済している。

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0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 98 99 2000 2001 2002 2003 海外 家計 一般政府 非金融法人企業 金融機関 年金(別分類) (兆円) (注)年金は金融機関(年金基金)と一般政府(公的年金)に含まれる (資料)日本銀行「金融経済統計月報」 (年、四半期) 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 98 99 2000 2001 2002 2003 金融機関 非金融法人企業 一般政府 家計 海外 年金(別分類) 国内銀行 (%) (年、四半期) (注)年金は金融機関(年金基金)と一般政府(公的年金)に含まれる (資料)日本銀行「金融経済統計月報」 株式保有者別シェア

2.資金循環表から見た年金基金の資産運用状況

○日本銀行の作成している資金循環表で見ると、わが国の株式の時価総額は 2003 年 3 月末 現在約 243 兆円である(図表 15、16)。最大のシェアを占めるのが金融機関であり約 85 兆 円(シェアは 35%)にのぼり、54 兆円の非金融法人部門(同 22%)、49 兆円の家計(同 20%)、44 兆円の海外(同 18%)と続く。 ○年金は、厚生年金基金(含む代行部分)、税制適格退職年金、国民年金基金などが金融機 関に含まれ、厚生年金、国民年金、共済年金などが一般政府に含まれている。これら年金 の合計では 2002 年 3 月末現在約 30 兆円、シェアでは 12%と他の保有主体と較べると、 金額はそれほど大きくない。 (図表 15)株式の保有者別内訳 (図表 16)株式の保有者シェア

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15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 98 99 2000 2001 2002 2003 国内銀行 年金 (兆円) (資料)日本銀行「金融経済統計月報」 (年、四半期) 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 98 99 2000 2001 2002 2003 企業年金 その他年金 公的年金 (兆円) (注1)企業年金は厚生年金基金(含む代行部分)、適格退職年金の合計 (注2)その他年金は国民年金基金など (注3)公的年金は厚生年金、国民年金、共済年金の合計 (資料)日本銀行「金融経済統計月報」 (年、四半期) ○ただし、金融機関に含まれる国内銀行と比較すると、2001 年を境に年金が国内銀行の株 式保有額を上回っている(図表 17)。国内銀行の保有額が減少しているのは、株式の持ち 合い解消を進めてきたためであり、年金の投資動向が株式市場に与える影響度合いが相 対的に増している(株価下落によって減少している側面もあるが、下落の影響は両者と も受けるはずである)。 (図表 17)国内銀行と年金の株式保有額推移 ○年金の株式保有額の内訳を見ると、代行返上を検討している企業年金(厚生年金基金+ 税制適格退職年金)の保有額が最も大きく、代行返上後の物納資産の受け入れ先となる 公的年金では保有額が少ない(図表 18)。運用資産に占める株式の比率を見ても、その差 は大きい(図表 19)。 (図表 18)年金の株式保有額内訳

(13)

0 5 10 15 20 25 30 35 40 98 99 2000 2001 2002 2003 企業年金 公的年金 年金全体 (%) (年、四半期) (資料)日本銀行「金融経済統計月報」 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 98 99 2000 2001 2002 2003 債券 株式 外貨建て資産 その他 (兆円) (年、四半期) (注)その他は現預金、貸出など (資料)日本銀行「金融経済統計月報」 (図表 19)運用資産に占める株式の割合 ○企業年金と公的年金の運用資産の内訳を比較してみると、両者の違いは鮮明である。ま ず企業年金では、足元では株価下落により株式の組み入れ比率が低下しているが、債券、 株式、外貨建て資産を偏りなく組入れてポートフォリオをバランスさせている(図表 20)。 (図表 20)企業年金の資産内訳

(14)

0 50 100 150 200 250 98 99 2000 2001 2002 2003 債券 株式 外貨建て資産 その他 財政融資資金預託金 (兆円) (年、四半期) (注)その他は現預金、貸出など (資料)日本銀行「金融経済統計月報」 ○一方、公的年金では財政融資資金預託金(いわゆる財投資金)の多さが突出している(図 表 21)。最近は預託金が減少し代わって債券が増加しているが、これは財政投融資改革に ともなって、年金積立金を資金運用部に預託する方式から、財投債を引き受ける方式に 変更となったためである(2001 年4月に資金運用部が廃止され、年金積立金の資金運用 部への全額預託義務も廃止された)。預託金は 2001 年度から 2008 年度にかけて順次償還 される(毎年平均 20 兆円弱程度)こととなったが、経過措置として 7 年間は財投債の一 部を年金資金で毎年引き受けることが決められている。 (図表 21)公的年金の資産内訳 ○公的年金の積立金は運用の基本方針として定められた比率に沿って各資産に配分されて いる。年金資金運用基金が旧年金福祉事業団から承継した運用資産と公的年金の積立金 を合わせた運用資産全体(図表 22 中の①)の 2003 年度の資産構成比率は、国内債券(財 政融資資金預託金、引受財投債を含む)83%、国内株式 6%、外国債券 2%、外国株式 4%、 短期資産 5%となっている。また、年金資金運用基金の資産のうち市場で運用されている 部分(図表 22 中の②)の資産構成比率は、国内債券 55%、国内株式 21%、外国債券 9%、 外国株式 13%、短期資産 2%となっている。2003 年度においては年度末の資産構成が上 記の比率に近づくように新規資金の投入や既存資産の組み替えが実施される。なお、年 金資金運用基金の市場運用資産について 2001 年度における資産配分変更の状況をみると 図表 23 のようになっている。各種運用資産における配分額から回収額を差し引いた差額 の合計が、図表 14 における新規市場投入額に相当する。

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(億円) (億円) 配分額 回収額 配分-回収 配分額 回収額 配分-回収 債券 0 831 -831 国内債券 0 4105 -4105 転換社債 0 0 0 国内株式 12988 326 12662 国内株式 0 43 -43 外国債券 6700 2135 4565 外国株式 0 588 -588 外国株式 4548 1681 2867 短期資産 3115 1599 1516 短期資産 11474 7608 3866 合計 3115 3061 54 合計 35710 15856 19854 (注)単位未満の端数処理のため、合計において必ずしも一致しない。 (資料)年金資金運用基金資料より作成 年度上期 年度下期 財政融資資金預託金 83% 引受財投債 国内債券 (市場運用分) 6% 国内株式 21% 2% 外国債券 9% 4% 外国株式 13% 5% 短期資産 2% (注)運用資産全体における短期資産には市場運用分のほか特別会計の流動性補完のために  一時的に使用されている資金なども含む。 (資料)年金資金運用基金資料などより作成 55% 年 金 資 金 運 用 基 金 の 運 用 資 産 ② 市 場 運 用 資 産 ① 運 用 資 産 全 体 (図表 22)公的年金運用資産の構成(2003 年度) (図表 23)年金資金運用基金・市場運用資産の配分変更状況(2001 年度) ○年金積立金は将来には図表 24 の下段のグラフのような構成比率で運用されることになっ ている。この配分は財政融資資金預託金の償還が終了する 2008 年度末に達成される予定 である。それまでは移行期として年度ごとに目標とする資産構成比率が策定され、少し ずつ資産配分が変更されていくことになる。

(16)

6% 7% 8% 5% 5% 68% 83% 12% 2% 4% 国内債券 国内株式 外国債券 外国株式 短期資産 (注)国内債券は財政融資資金預託金、引受財投債を含む(ただし、財政融資資金   預託金は2008年度末までに全て償還される予定) (資料)厚生労働省 運用資産全体  現状 (2003年度末  の目標) 2008年度末 の目標 (図表 24)公的年金の資産構成比率(現状と目標)

おわりに

○代行返上に伴う株式の売却は大型優良銘柄を中心に株価を下落させる要因となったとみ られる。今後も代行返上に伴う株式売却の動きは続こうが、すでに代行返上を検討して いた基金の 6 割は株式を売却していると推測され、売却のピークは過ぎたと考えられる。 ○現金で国に納付される資金のうち、ある程度は公的年金の積立金となり来年度に再び株 式市場にも還流しよう。

参照

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