- 1 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 更新日:2010/4/14 調査部:本村真澄 公開可
ロシア:東シベリアはガス田開発もスタート
-チャヤンダ・ガス田とヤクーチャ・ガス田地帯で開発に着手-
・長年開発がストップしていた東シベリアのチャヤンダ(Chayanda)油ガス田について、ガスプロムは 2010 年から掘削を開始し、石油生産を 2014 年に、ガス生産を 2016 年に開始する計画である。こ れは、東シベリアという新規天然ガス・ソースの始動を意味するもので画期的な動きと言える。 ・石油は近隣のESPO パイプライン経由で、天然ガスは 2012 年から工事開始となるヤクーチャ・ ハバロフスク・ウラジオストック(YKV)パイプライン経由で出荷する。 ・ガスプロムはチャヤンダ近隣の 4 ガス田開発の為にライセンスの申請を行った。内2ガス田は中生界の レナ=ビリュイ堆積盆地(ヤクーチャ・ガス田地帯)のもので、東シベリアのもう一つの新規地域である。 ・チャヤンダは東シベリアでも0.58%と最も多量のヘリウムを生産ガスの中に含んでおり、その処理施設の 建設が今後の技術的課題となる。 ・一方、コビクタ・ガス田は、2007 年に TNK-BP がガスプロムへ$7~9 億で売却の方向で検討したが、実 現せず、現在、国有企業ロスネフチガス(Rosneftgaz)に売却の方向で調整中。当初言われた 2017 年 生産開始に関しては不透明感がある。 ・欧州の天然ガス市場は石油製品連動ガス価格の維持が困難になったが、北東アジア市場は依然とし て石油と連動している。ガスプロムはシュトックマン、ボワネンコフ等の欧州向けプロジェクトは遅延させ る一方で、北東アジア向けは計画通り進めており、現状はアジア市場重視の姿勢をとっている。 1. サハ共和国チャヤンダ (Chayanda) 油ガス田の開発決定 (1) 開発決定までの動き ガスプロムのミレル社長は、サハ共和国(ヤクーチャ)のShtyrov 大統領と 3 月 12 日会談し、 2010 年からチャヤンダ油ガス田の試掘を開始し、石油生産を 2014 年に、ガス生産を 2016 年に開 始することを確認した。生産ガスをウラジオストックまで輸送するヤクーチャ-ハバロフスク-ウラ ジオストック(YKV)天然ガスパイプラインは、2011 年第3四半期に稼働開始予定のサハリン-ハバロ フスク-ウラジオストック(SKV)天然ガスパイプラインの第1期完成直後の 2012 年から工事に入る。最 終的に、両パイプラインを合計した能力は472 億 m3/年まで引き上げる。サハリンからは 300 億 m3 の生産を見込んでおり、ヤクーチャからは当面年間 172 億 m3 が期待される(図1)。- 2 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 チャヤンダ油ガス田は、天然ガスが1.24 兆 m3(43.8 兆立方フィート)、石油及びガスコンデ ンセートが6,840 万トン(5 億バレル)の埋蔵量を有し1、2008 年 9 月 2 日にガスプロムがテンダ ーなしで取得した。この地域の中の巨大ガス田の中でも例外的に石油分が多いという特徴がある。 報道によれば、ガスプロムは先にガス田開発及びガス加工施設への資金援助等について三井物産と 協議を行っているという2。 図1 東シベリアの石油及び天然ガス・パイプラインとチャヤンダ油ガス田他の位置(JOGMEC 作成) チャヤンダ油ガス田での試掘は、2010 年 4 坑掘削、2011 年に 5 坑、2012 年に 6 坑掘削の予定 で、第1井(43 号井)は本年 4 月開坑の予定である。掘削深度は平均で約 2,000m となる。従来、 チャヤンダ・ガス田のガス層深度は 1,600m~1,800m と言われていたので、今回はより深い層ま での探鉱する計画と思われる。
ガス田開発を請け負うガスプロムの子会社Gazprom Dobycha Noyabrsk は、Chayanda 鉱床に
1 Prime-Tass, 2010/2/24 2 IOD, 2010/3/15
- 3 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 おけるガス生産量を170-250 億 m3/年とする計画である3。これは、後述するように、極東ロシア の地域的な需要を遥かに上回るもので、当然ながら輸出を志向した開発計画である。 ガスプロムはチャヤンダ油ガス田に加え、その北東に位置するタス・ユリアフ(Tas-Yuryakh)ガ ス田, ベルフネヴィリュイチャン(Verkhnevilyuchan)ガス田、及び隣接するレナ=ビリュイ堆 積盆地のソボロフ・ネジェリン(Sobolokh-Nedzhelin)ガス田とスレドネトゥング(Srednetyung) ガス田の計4 ガス鉱床のライセンスを申請した4。これらで一体開発を志向している(図1)。 (2)「2030 年までのエネルギー戦略」におけるロシア極東地域の天然ガス生産予測 ロシアの「2030 年までのエネルギー戦略」における天然ガスの生産予測を図2に示す。ここでは、 チャヤンダ油ガス田のあるサハ共和国はロシア極東地域に分類され、ガス生産量の表示ではサハリ ンとサハリンを除く地域とに区分される。サハリンを除く地域とは、殆どがサハ共和国であり、そ れ以外に小規模ガス田のあるカムチャッカ半島やチュクチ半島のアナディール(Anadir)盆地等が あるが、生産量ではサハ共和国が圧倒的である。 このほぼサハ共和国に相当する極東地域(サハリンを除く)の生産量予測は、第1期(2013-2015 年)に 30~40 億 m3、第2期(2020-2022 年)に 290~300 億 m3、第3期(2030 年)に 350~360 億 m3 とされてい る(図2)。チャヤンダ油ガス田は計画通り 2016 年からの生産開始となっており、追って、200 億 m3 弱程 度まで増産することになっている。「東方ガスプログラム」によれば、2020 年にパイプラインによる中国・ 韓国向けの輸出量が 250 億~500 億 m3 となっていることに照らせば、その時期は 2020 年頃、図2では 第2期(2020-2022 年)の 290~300 億m3 程度の生産量に相当するものと思われる。チャヤンダ及び他の 周辺ガス田開発により、基本的にはこの計画に概ね沿って、ガス開発が推進されて行くものと思われる。 この「2030 年までのエネルギー戦略」は、2009 年に採択されたものであるが、あくまで概略的 な見通しであり、米国のシェールガス革命に端を発する欧州市場でのLNG 過剰と先行きガス価格 の低落傾向を見越した買い控えによるこの年の需要減の影響は反映されていない。このため、欧州 市場ではガスプロムは従来の石油製品連動のガス価格を若干手直しして、スポットLNG 価格も一 部取り込んだ価格とせざるを得なくなった。LNG の供給過剰感は当面続くと予想されることから、 この「戦略」における天然ガスの予測は楽観的なものと思われる。特に欧州市場を対象としている バレンツ海のシュトックマン・ガス田は計画を3年後倒しにしているし、ヤマル半島のボワネンコ 3 Prime-Tass, 210/2/24
- 4 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 フ・ガス田も1年後倒しとなっている。これに対して、チャヤンダ油ガス田が計画通りの生産開始 となっていることは、アジア市場が依然として石油連動価格方式が有効であることを踏まえている ものと思われる。 図2 「2030 年までのエネルギー戦略」における天然ガス生産予測 (3)チャヤンダ 油ガス田開発の歴史 チャヤンダ油ガス田は1990 年代、Sakhaneftegaz がライセンスを保有しており、その後、同社 の株式の 50%は Yukos が取得した。同ガス田については 1999 年から 2001 年にかけて、 Sakhaneftegaz と中国石油天然気集団公司(CNPC)が共同で商業化スタディを行っている。この 時は可採埋蔵量として1.24 兆 m3 (43.8 兆立方フィート)と試算し、中国へ年間 200 億 m3のガス を輸出する総延長3,500km のパイプラインを建設する計画を立案した。これを含む総開発コスト 4 IOD, 2010/3/15
- 5 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 は200 億ドルである5。但し、サハ共和国側はパイプラインのルートについて、中国東北地方の瀋 陽へ向ける案を提唱し、中国側とは意見の一致を見なかったという(中国側の提唱するルートはこ の時点で不明)。また、ガス価格においても、サハ側が国際価格にほぼ近い$123-$132/1,000m3 を主張しているのに対し、中国側が基本的に石炭連動価格である$57/1,000m3と、深刻な隔たりが あると報じられた。 チャヤンダ油ガス田のライセンスは、2002 年 12 月に失効した。サハ共和国の Vyacheslav Shtyrov 大統領はロシア天然資源省に対して、同省が計画している 2003 年の入札に本鉱区を組み 入れることを要請した。その一方で、Gazprom とサハ共和国政府は、チャヤンダ油ガス田の入札 に共同で参加すること、及び中国へのガス輸出を行うことで合意した。両者が設立する合弁企業に は、Gazprom が 51%、サハ側が 49%で参加を予定していたと報じられたが、その後の動きはなか ったが、前記の通り2008 年 9 月 2 日にガスプロムがテンダーなしで取得した。 2.ヤクーチャ-ハバロフスク-ウラジオストック(YKV)天然ガスパイプライン (1)天然ガス・パイプライン建設 サハリン-ハバロフスク-ウラジオストック(SKV)天然ガス・パイプライン(図 1、図3)の建設は着実に 進められている。これは、2009 年 7 月 31 日にハバロフスク市近郊においてプーチン首相による初溶接 セレモニーで工事が開始されたが、本年 3 月末の時点で、既に第1期の全区間 1,350km の 1/3 強にあ たる 500km の溶接が既に完了している6。2012 年秋にウラジオストックで開催予定の APEC 前に、同市で の発電を石炭から天然ガスに切り替えるなどの「ガス化(gasification)」を完了させることは、ロシアにとっ て威信の問題であり、このためパイプラインクルーの一部をボワネンコフ・ガス田から沿海地方に振り替 えるなどの措置を行ってきた。第1期の完工は 2011 年第3四半期を目指しているが、工事期間 26 ヶ月中 8 カ月で 1/3 という進捗状態にまで漕ぎ着けており、十分に予定通り達成できる。 ガスプロムの Ananenkov 副社長によれば、ヤクーチャを天然ガス生産の中心の一つとすることは、『東 方ガスプログラム』(図4、表2)における重要な柱であり、サハリン-ハバロフスク-ウラジオストック (SKV)天然ガス・パイプラインの第1段階完成直後の2012年には、引き続きヤクーチャ-ハバロフスク- ウラジオストック(YKV)天然ガスパイプラインの工事を開始したいとしている7。 5 Interfax, 2003/12/04/
6 East & West Report, 2010/4/08 7 Interfax, 2009/9/08
- 6 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 (2)天然ガスの市場はどこを見込むか? サハリンと東シベリア併せて最大年間 472 億m3 となる天然ガスの生産量見込みについては、この地域 の地質ポテンシャルに照らして特段の懸念はないと思われる。問題は、このガスの販売先が依然として 明確でないことである。現状では、ハバロフスク、ウラジオストック等の極東での天然ガス需要は年間 60 億 m3 という前提でパイプライン建設が進められている。2020 年には沿海地方で工業化が進展した場合 の需要が 250 億 m3 とされ、最大 472 億 m3 となる同パイプラインからの供給量には依然として余剰があ ることになる。 この余剰分は、「東方ガスプログラム」のVostok-50計画によれば、ウスリースク-綏芬河経由でパイプ ラインにより中国へ年間 380 億 m3、更に韓国に対して年間 120 億m3輸出される。両者合計して 500 億 m3 となるが、「Vostok-50 計画」とは、東側から、つまり西(ザバイカルスク)や中央(ブラゴベシシェンス ク)からではなく東のウスリースク-綏芬河経由で、年間 50 Billion m3 のガスを供給するという意味であ る。 対中国年間380億 m3 という量は、2006 年のプーチン大統領(当時)の訪中で既に合意しているレベ ルである。韓国に関しては、2008 年 9 月に李明博大統領が訪ロした際に、Kogas-Gazprom 間の覚書とし て、2015 年から 30 年間、パイプラインならば 100 億 m3/年、 LNG ならば 750 万トン/年を供給すること で合意したが、東方ガス・プログラムを若干下回る規模となった。パイプラインの場合には北朝鮮経由或 いは水深3,000m はあるという日本海経由のパイプラインを敷設することとなり、実現は困難視されていた。 2009 年 8 月 7 日、Shamtko エネルギー相と韓国の知識経済部李長官が会談した際に、李長官は「CNG または LNG での韓国輸出を希望」すると発言しており、パイプラインによる輸出の可能性は大きく低下し ている。 2009 年 5 月 12 日、日本を訪問したプーチン首相は「日露経済フォーラム」の席上で、日本側に対して、 ウラジオストック LNG、ウラジオストックガス化学プラント、そしてサハリン-ハバロフスク-ウラジオストッ ク(SKV)パイプラインに関して日本の参加について提案し、その後、日本企業が検討を行うこととなった。 但し、図3に示すようにアジア太平洋地域では、既に FID(最終投資決定)のなされたものが3件、計画中 のLNG案件が 12 件ある。即ち、ウラジオストック LNGはサハリンや東シベリアからの長距離パイプライン を経ての LNG 事業ということになり、東南アジア・大洋州で検討中の他の数多くの LNG プロジェクトと操 業の安定性と経済性の上で厳しい競争状態に置かれている。
- 7 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 図3 サハリン-ハバロフスク-ウラジオストック(SKV)天然ガスパイプラインとヤクーチャ-ハバロフス ク-ウラジオストック(YKV)天然ガスパイプライン及び太平洋地域のLNG計画
- 8 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 表1 サハリン-ハバロフスク-ウラジオストック(SKV)・パイプライン(1期、2 期)とヤクーチャ-ハバロフ スク-ウラジオストック(YKV)・パイプラインの緒元比較 3. 天然ガス輸出に関するガスプロムと CNPC の協議 (1)これまでの経緯 これまでの、ロシアから中国向け天然ガス輸出に関する協議を時系列に見ると以下の通りである。 2006 年3 月21 日:プーチン大統領がトルクメニスタンのニヤゾフ大統領に2週間先行して中国を訪問し、 西ルートのアルタイ経由(300 億 m3/年)と東ルートのコビクタ・サハリンからのパイプライン (380 億m3/年)の建設で合意した。直ちにワーキンググループが設立され、ロ中で詳細作 業に入ったものの、アルタイ・パイプラインに関して天然ガス価格の合意できず、2007 年 6 月には合意が破棄された。 2009 年 6 月 17 日:胡錦濤主席訪ロ、中断していた天然ガス交渉が再開。ガスプロムとCNPCが「天然ガ ス部門における協力関係の覚書」締結。 2009 年 10 月 13 日:プーチン首相訪中。ミレルと CNPC 蒋潔敏総経理とで「枠組み合意」に調印。 この 10 月の合意に関するロシア側要人の発言は、以下の通り。 [Gazprom ミレル社長発言]8 ・西シベリアからアルタイ超えの西ルート、極東・東シベリア、サハリン大陸棚から東ルートを想定し、供給 量は年間約 700 億 m3 とする(注:2006 年合意の 680 億 m3 と基本的に同じ) 8 Interfax, 2009/10/13 パイプライン
SKV (Sakhalin-
Khabarovsk-
Vladivostok)-I
SKV (Sakhalin-
Khabarovsk-
Vladivostok)-II
YKV (Yakutia-
Khabarovsk-
Vladivostok)
操業開始 2011 年 9 月 - 2016 年 事業者 Gazprom Gazprom Gazprom供給ガス田 Sakhalin-1(?) Sakahlin 1 Chayanda
埋蔵量 4,850 億m3(17.1 兆cf) 同左 1.24 兆 m3(43.8 兆 cf)
積出し地点 Komsomolsk Sakahlin 1 Chayanda ターミナル Vladivostok Vladivostok Vladivostok
総延長 1,300km 1,800km 3,000km
容量 60 億 m3 300 億 m3 SKV と併せて 472 億 m3
- 9 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ・価格については欧州向けの輸出価格と連動した価格フォーミュラが契約書内に記載されることになる。 [Sechin 副首相発言] ・価格条件は 2010 年初めに合意し、契約締結は 2010 年の 6 月を、ガス供給 2014-2015 年開始というロ ードマップを提示。 ・西ルートのアルタイ経由が先行するだろう。東ルートによるガス供給には、チャヤンダ油ガス田等の包 括的なガス開発が必要で、ヘリウムが含まれていることによる処理施設の建設等で時間がかかる。 [プーチン首相 14 日記者会見]9 ・中国向けガス価格はアジアの石油バスケット価格と連動する方式とし、概ね算出式が決められた。 ・西ルートは 2015 年より前、まず年間 100-150 億 m3 で始動、東ルートは 2015 年から始動する。 (2)天然ガス価格交渉は中国側が有利に 2010 年 3 月 3 日、張国宝(Zhang Guobao)能源局長がロシアとのガス供給の方針と価格決めが 予備的合意(initial agreement)に達したと発言した。一方、ガスプロムは「基本線では相互理解 (mutual understanding)に達した。調印は 2011 年」との発言で、微妙な開きを見せている。 なお、2010 年に中国はトルクメニスタンのガス価格を$160~200/1,000m3 で輸入ている10。 天然ガス価格に関しては、昨年10 月時点でのセーチン副首相発言で 2010 年年初には合意できるとし たが、2010 年 3 月時点でのガスプロム発言では 2011 年へとずれ込んでおり、合意の困難さが改めて印 象付けられた。 しかし、2009 年に欧州市場でスポット LNG の大量流入からロシア産天然ガス消費量の激減と価格の下 落があり、2010 年に入って一部では石油製品連動価格の 10%ないし 15%までスポット価格を参照するよう に価格決め方式の改訂が進んだ11。即ち、ロシア側の主張する西側水準の天然ガス価格は、欧州で既 に瓦解が始まっている。北東アジア地域は依然として石油連動価格が維持されてはいるものの、国際的 な天然ガスの価格低下傾向の前に、ガスプロム側の主張が弱含みとなる展開と思われる。 天然ガス価格は、2010 年は回復基調にあると言えるが、調印時期の予測が1年もずれている理 由は、ロシア側としては時間が経つほど天然ガス市況が回復して供給側がより有利になると見てい るためと思われる。 9 Interfax, 2009/10/14
10 The Moscow Times, Nezavisimaya Gazeta(独立新聞), 2010/3/04 11 Vedomosti,2010/2/24, FT, 20102/26, Interfax, 2010/2/27
- 10 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 4. レナ=ビリュイ堆積盆地の探鉱に関して (1)Vilyuy 盆地の中生界ガス田群 今回の新方針で注目すべきは、開発対象としてヤクーツク市の北西のレナ河沿いの、レナ=ビリュイ (Lena-Vilyuy)堆積堆積盆地の Srednetyung ガス田及び Sobolokh-Nedzhelin ガス田が含まれてい ることである。この地域は、かつてヤクーチャ・ガス地帯と呼ばれ、1970 年代に日ソ経済委員会において、 開発が検討されたものの、埋蔵量が不十分ということで、開発が断念された経緯がある。 レナ=ビリュイ堆積盆地は、東シベリア地域の北東部に L 字形をなして広がり、面積は 30 万km2 である。 従来の東シベリアの主要部を構成するRiphean-Vendian-Cambrian 紀層からなるレナ=ツングースカ (Lena-Tunguska)堆積盆地の北東部が、白亜紀前期に活動した Verkhoyansk 褶曲帯の前地盆地 として形成されたと解釈されている(図4)。主たる貯留岩は上部二畳系からジュラ系の砂岩で、 堆積物の厚さは8-10km になる。ここには、約 10 のガス田があり、その総埋蔵量は、約 30 兆 cf である。これは、上記のネパ=ボツオビン背斜上に分布する油ガス田に比較して、更に開発条件の 悪い位置にある。現状は、ヤクーツク市を主たる消費地にローカルな生産が行われているのみであ る。 図4 レナ=ビリュイ(Lena-Vilyuy)堆積盆地は東シベリアの北東部を形成する
- 11 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 (2)ヤクーチャの探鉱史 ヤクーチャの天然ガス探鉱・開発・輸入プロジェクトが、シベリア天然ガス(日本)、エルパソ(米国)、ソ 連外交国易省の3者の間で調印されたのは1974年、即ちサハリン大陸棚開発と同時期であった。これは、 ガス田開発とパイプライン、液化設備・機械を日本と米国から輸入し、見返りに日米両国がそれぞれ年間 100 億 m3 の LNG(750 万トン)を 25 年間にわたり引き取るというものであった。 1980 年時点で、この堆積盆地での最大のガス田は、Sredne-Vilyuy(5 兆cf)及び Mastakh(5 兆cf)であ り、全体で 30 兆 cf であった。一方、当時太平洋までパイプラインを敷設してLNGにするには 35 兆 cf が 必要と言われており、更に探鉱を推進し追加埋蔵量を確認する必要があったが、やがてソ連の崩壊を経 て、殆どの活動が停止した。 今回、開発の対象とされたSrednetyung ガス田及び Sobolokh-Nedzhelin ガス田に関しては、1980 年時点で新規発見ガス田とされていたもので、既往ガス田群より優先して生産への道が開かれた。但し、 既発見の他の主要ガス田もいずれもハプチャガイ(Khapchagay)隆起帯上に並んでおり、 引き続き開発がなされ、先行して出来たパイプラインに繋ぎ込まれるものと思われる 5. チャヤンダ・ガス田のヘリウム問題に関して (1)ヘリウムの持つ特徴 ヘリウムは原子番号 2 で、水素についで密度が低く、化学的に不活性で他の原子と安定的な化合物 を生成しない。また元素の中で最も沸点(液化温度)が低く、加圧下でしか固体にならない。8 種あると されるヘリウム同位体の内、殆どを占める He-4 は戦略物資ではなく、取引に制限はない。ヘリウムは不 活性の単原子ガスとして存在し、無色、無臭、無味、無毒、最も軽い希ガス元素である。これらの 特徴から、さまざまの産業分野で利用されている。一番多いのが超伝導分野で MRI(磁気共鳴) の粒子加速器等に28%、次いで浮遊用に 16%、溶接時の遮断ガスに 12%、計測器、光ファイバー 牽引製造時の冷却用、半導体、液体燃料冷却用などの宇宙開発等がある。 世界のヘリウム埋蔵量は、主にカタール、ロシア、米国、アルジェリアの4カ国に集中している (表2)。生産量では米国が圧倒的に高い比率を有するが、米国のヘリウム生産量は減退傾向にあり、 米政府は2007 年からそれまで供給調整のため大量に備蓄していた液体ヘリウムを市場へ販売する ように方針転換した。
- 12 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 一方、世界のヘリウム消費量は年率 2.5%~3.5%で増加すると見られており12、米国が約 6 割を消費す る。米国スポット市場における高純度ヘリウムの価格は、2001 年の$1.62~$1.87/m3 から 2006 年には $2.88~$3.06/m3 と、5 年間で2倍に上昇しており、現状では、2010 年代に後半に国際市場でのヘリウ ムが不足すると予測されている。これは、天然ガスの約10 倍の価格であり、無駄にはできない水 準である。ガスプロムもこれを踏まえ、ヘリウムを含む巨大ガス田の内、チャヤンダは 2016 年、 コビクタは2017 年に生産開始という計画を 2000 年代初頭から立てている。 国 埋蔵量(億 m3) 生産量(2006 年) カタール 100 0.07 アルジェリア 84 0.22 米国 83 0.76 ロシア 67 0.07 カナダ 20 中国 11 オランダ 6 ポーランド 3 0.03 世界合計 250~280 表2 世界のヘリウム埋蔵量(BLM による)(単位:億 m3) (2)東シベリアのヘリウムに関して 東シベリアの主要なガス田のヘリウム含有量を表3に示す。この中でチャヤンダ・ガス田は 0.58%で最も 高く、コビクタ・ガス田の2倍の含有量となっている。 チャヤンダ・ガス田が約 200 億 m3 を生産する場合、ヘリウムの生産量は年間 1.2 億 m3 の生産が可能 になる。2006 年の米国のヘリウム生産量が 7,600 万 m3 であるから、その 1.6 倍となる。これは、将来的な 需要増を睨んだ生産計画である。 問題はヘリウムの回収方法である。ヘリウムは天然ガスの約 10 倍と言う比較的高価な資源であり、これ を含んだまま例えば中国へパイプラインで輸出することは許されない。ガス・パイプライン終着点での LNG 液化設備において、「LNG オフガス」を回収するのは最も効率が良く、ウラジオ LNG にロシアが固 執する理由の一つがこれであろう。LNG が困難な場合には、内陸部で圧力差吸着プロセス(PSA: Pressure Swing Adsorption)に深冷分離を加えた作業により回収することになる。これは、APCI(Air Products and Chemicals Inc.), Air Liquids, Linde 社等が施行できるが、具体的な動きはまだない。
- 13 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ガス田 地域 メタン 窒素 ヘリウム Sobin-Paygin Evenki 65.20 25.2 0.58 Chayanda Yakutia 84.45 7.67 0.58 Nizhne-Khakaki Yakutia 89.57 4.00 0.50 Srednebotuobin Yakutia 86.36 4.18 0.41 Tas-Yuryakh Yakutia 85.87 5.66 0.39 Dulismin Irkutsk 78.03 3.74 0.26 Kovykta Irkutsk 90.34 1.55 0.26 Verkhnevilyuchan Yakutia 85.33 8.50 0.17 表3 東シベリアガス田の組成(出典:ガスプロム) 6.コビクタ(Kovykta)ガス田の動向 (1)コビクタ・ガス田の概要 コビクタ・ガス田は、東シベリアではチャヤンダ油ガス田と並ぶ主力ガス田であり、その開発を 巡っては常に議論が続けられて来たが、チャヤンダがいよいよ生産を前提に掘削に入る一方で、コ ビクタはその所有をめぐって依然として迷走を続けており、更にガス田の地理的位置が輸出用ガ ス・パイプラインの敷設を困難にしている事情もあり、向かうべき市場すらも確定していない。 コビクタ・ガス田は、東シベリアの主要油ガス田の分布するNepa-Botuobin 地背斜の南西延長 部にあり、バイカル湖北部の西方 約 200km に位置する。同ガス田は、1993 年に RUSIA Petroleum がライセンスを取得した。RUSIA Petroleum というのは、イルクーツク州の5都市、即ち Raduzhny、Usolje、Sibirskoe、Irkutsk、Angarsk の頭文字から採ったもので、イルクーツク州 における油ガス田開発を目的に結成されたコンソーシアムの名称である。この前年には、ベルフネ チョン油田のライセンスも取得している。 東シベリアのイルクーツク州にある Kovykta ガス田の開発と北東アジアへの輸出に関して、 1995 年から中国、ロシア、翌 96 年からは、韓国なども参加して、商業化スタディの実施が合意さ れた。その最終的な結果は2003 年 11 月にようやく報告され、大連から北朝鮮を迂回して黄海に 入り、韓国の平沢に陸上げし、中国が200 億 m3、韓国が100 億 m3を引き取るという内容である が、その後協議は進捗していない。 現時点での株主はTNK-BP (62.89%), OGK-3(25%), Irukutsk 地方政府 (10.78%) である。 埋蔵量は、C1 カテゴリーで 1.6 兆 m3 (56.4 兆立法フィート) 、C2 カテゴリーで 0.62 兆 m3
- 14 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 (21.9Tcf) である。また、埋蔵量は最終的には 2~2.5 兆 m3まで達すると見られている13。最近で は3 兆 m3という報道もある14。生産量としては、年間380 億 m3まで可能と言われている。 (2)コビクタ・ガス田の売却の動き 2007 年 6 月 22 日、TNK-BP は Kovykta ガス田権益 62.89%とガス輸送・販売会社「東シベリ
アガス会社(East Siberian Gas Company)」の 50%をガスプロムに 7~9 億ドルで売却することで
合意した15。当時のEC のエネルギー・コミッショナーAndris Piebalgs は、コビクタの売却はロ シア側がTNK-BP による既往投資を適切に評価したものであり、エネルギー分野での長期の投資 計画で合意していることから、ロシアの投資環境にとって良い影響をもたらすとコメントした16。 7~9 億ドルという売却価格については、ガスプロムによれば 90 日以内に市場の動向を踏まえて 決定されると言われていたが17、その後の経済危機により2 年以上、動きは止まっていた。 2010 年 2 月、連邦自然利用分野監督局(Rosprirodnadzor)がコビクタ・ガス田のライセンス上の 義務の執行状況に関して新たな査察を開始した18。この結果、天然ガスの義務生産量の未達を理由 にライセンスの取り消しを地下資源利用庁(Rosnedra)に提案した19。権益が譲渡されれば、既往 投資は譲渡先が負担することになるが、ライセンスが取り消された場合には、既往投資の回収が困 難になる。結局、ライセンスの剥奪は検討されず、権益の譲渡先に関心が移った。 3 月 23 日に、TNK-BP のオーナーの一人 Victor Vekselberg は、コビクタの権益を 2010 年末 までに、かつてガスプロムと交渉していた時とほぼ同様の7~9 億ドルで国有企業 Rosneftgaz に 売却する方針を明らかにした20。 Rosneftgaz とは、2005 年 9 月にガスプロム株 10.74%とロスネフチ株 100%を保有することを 目的に設立された国有の持ち株企業である(図5)。その後、ロスネフチのIPO 等で株式の約 25% を売却して、現在はその75.16%を保有している。実態はペーパーカンパニーで、役員のみの会社 である。これらは政府株の管理を目的として設立されたものであるが、元はと言えば2004 年 9 月 13 Interfax, 2003/10/24 14 IOD, 2010/3/12 15 各紙, 2007/6/23 16 Interfax, 2007/6/25 17 PON, 2007./6/25 18 IOD, 2010/2010/2/09 19 Interfax, 20102/17 20 Interfax, 2010/3/23
- 15 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 のガスプロム、ロスネフチ合併構想(抗争?)に端を発している。ロスネフチ側がユガンスクネフ チ株を買い取って政府の合併構想を破棄させたため、政府が銀行融資で調達した75 億ドルで民間 保有のガスプロム10.74%、そしてロスネフチ株を管理するために設立したものである。 何故Rosneftgaz にコビクタ・ガス田を保有させるのかについては、TNK-BP のこれまでの投資 額を補償するためと見られている21。当初、天然資源環境相のトルトネフは、コビクタに関しては ライセンス上では年間90 億 m3 で生産するべきところ、現状は年間 4,000 万 m3 以下であり、要 件が満たされていないため、$6.64 億の既往投資額を政府が補償する必要はないとしていたが、セ ーチン副首相が急遽補償に関して発言した22。これは、ガスプロムが依然として財政的な苦境にあ って、コビクタを買い取る余裕がないか、開発のしにくさから、コビクタ取得の意欲を持たなくな ったためと考えられる。それに替る国有企業として、Rosneftgaz が指名されている訳であるが、 オペレーションができる訳ではなく、いずれ他社に再譲渡されるであろう。
GazpromとRosneftの動き
Gazprom Rosneft 5月17日 9月 バイカルファイナンスグループ 合併断念 39% 政府株 50%弱 一般株 10.7% 100%政府株 株式交換 による合併 9月14日 12月 政府株50%超 12月19日93.5億ドルで落札 12月23日買収 CNPCから60億ドル先払い CNPCへ2010年までに原油 3.55億バレルを提供 ABN Amro, DrKW, JP Morgan, Morgan Stanleyか らの75億ドル融資でガスプ ロム株10.7%買付け 政府保有企業(ホールディン グカンパニー)Rosneftegazを 設立Gazprom 10.7%と Rosneft 100%を傘下に 39% 政府株 50%弱 一般株 10.7% 130.91億ドルで75%超の株式取得 1月 9月 政府75億ドルで買付け 2004年 2005年 Sibneft Rosneftegaz 1月 7月 2006年 株式自由化 IPO Yugansk-neftegaz Yukos Slavneftの50% 図5 2004 年 9 月のガスプロムとロスネフチの統合案がロスネフチのユコス傘下ユガンスクネフチの取 得で頓挫した後、2005 年9 月に当時のロスネフチの全株式とガスプロムの 10.74%を所有する政府のホー ルディング・カンパニーとして Rosneftegaz が設立された。 21 IOD, 2010/3/19- 16 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
その後報道では、Novatek の株式の 20.77%を保有する原油トレーダーGennady Timichenko が
コビクタに関心を有していると言われている23。 (4)コビクタ・ガス田のガス輸送先に関する論争 2007年、統一エネルギーシステム(UES)社長のアナトリー・チュバイス(当時)は、電力という需要側の 立場から「東方ガス・プログラム」(図6)に関して、特に電力分野の需要予測を厳密に行う必要性を強調 し、この地域の天然ガスは西方に向かうべきだとしている24。同年7月の政府委員会でも、チュバイスはコ ビクタのガスはケメロヴォに近いProskokovoへ向け、そこから統一ガス供給システム(UGSS)に繋ぎ込む べきと改めて発言した。フラトコフ首相(当時)もこれに賛意を表した。これは、多くの専門家も主張してい ることでもある。 「東方ガス・プログラム」においては、Zabaikalsk-満州里、Blagoveshchensk-黒河からの中国輸出が 退けられているが、TNK-BPにおけるプロジェクト・スタディでも同様の結果となっている。 この場合、太 平洋市場から見てバイカル湖の背面に位置するコビクタ・ガス田は、中国向け輸出が大変にしにくい場 所にある。このため、コビクタから更にチャヤンダに繋ぎ込んで、太平洋市場を目指すというのは、かなり 実現性に疑問がある。 コビクタのガスを西方のケメロヴォに向け搬出し、ロシアの統一ガス供給システム(UGSS)に 連続させるという計画は、「東方ガスプログラム」で謳われているところである(図6、表4)。 この経済性は、他計画より劣後すると一般に言われているが、これについては留保すべき点がある。 事業主体がTNK-BP の場合には、当初の計画ではロシアの国内価格での供給というが前提であっ た。確かに、国内ガス価格では高い経済性は見込めない。しかし、権益がガスプロム或いはガスプ ロムが20%の株式を保有する Novatek に移った場合、コビクタ・ガス田からケメロヴォ州(プロ スココヴォ)へ供給するということは、従来の西シベリアからの供給負担が軽減されることを意味 する。即ち、西シベリアは、ケメロヴォ州にガスを輸送しなくて良くなった分、国際価格で販売可 能な欧州へ供給へ振り向けることができる。即ち、輸出量を拡大できる。いわば、ケメロヴォ州へ の供給は、ロシア総体としては輸出代替となり、その経済性は国際価格を前提に評価されるべきも のである。 22 Vedomosti, 2010/3/12 23 RBK Daily, 2010/4/12
- 17 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 図6 「東方ガスプログラム」に記された主要な天然ガス生産センターとパイプライン計画(2008 年版) 天然ガス生産センター 主要ガス田 事業内容