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2.4 非臨床試験の概括評価 Bayer Yakuhin, Ltd. Page 1 of 非臨床試験の概括評価の目次 非臨床試験計画概略 薬理試験計画 効力を裏付ける試験 安全性薬理試験.

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2.4 非臨床試験の概括評価の目次 2.4.1 非臨床試験計画概略 ... 3 2.4.1.1 薬理試験計画 ... 4 2.4.1.1.1 効力を裏付ける試験 ... 4 2.4.1.1.2 安全性薬理試験 ... 4 2.4.1.2 薬物動態試験計画 ... 4 2.4.1.3 毒性試験計画 ... 5 2.4.2 薬理試験 ... 6 2.4.2.1 効力を裏付ける試験 ... 6 2.4.2.1.1 緩和時間短縮作用 ... 6 2.4.2.1.2 脳障害モデルにおける造影効果 ... 6 2.4.2.1.3 肝臓腫瘍モデル及び筋肉内腫瘍モデルにおける造影効果 ... 6 2.4.2.1.4 造影効果の用量依存性 ... 7 2.4.2.1.5 種々の器官及び体内領域における造影効果、動態及び分 布 ... 7 2.4.2.1.6 肝臓腫瘍モデルラットにおける 0.5mmol/mL 及び 1.0mmol/mL 製剤の造影効果... 7 2.4.2.2 安全性薬理試験 ... 7 2.4.3 薬物動態試験 ... 9 2.4.3.1 分析法 ... 9 2.4.3.2 吸収(血中濃度) ... 9 2.4.3.3 分布 ... 10 2.4.3.4 代謝 ... 11 2.4.3.5 排泄 ... 11 2.4.4 毒性試験 ... 12 2.4.4.1 単回投与毒性 ... 12 2.4.4.2 反復投与毒性 ... 12 2.4.4.2.1 ラットにおける反復投与毒性試験 ... 12 2.4.4.2.2 イヌにおける反復投与毒性試験 ... 13 2.4.4.3 遺伝毒性 ... 14 2.4.4.4 がん原性 ... 14 2.4.4.5 生殖発生毒性 ... 14 2.4.4.5.1 ラット受胎能及び着床までの初期胚発生に関する試験 ... 14 2.4.4.5.2 胚・胎児発生に関する試験 ... 15

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2.4.4.5.3 ラット出生前及び出生後の発育並びに母体の機能に関す る試験 ... 16 2.4.4.6 新生児を用いた試験 ... 17 2.4.4.7 局所刺激性 ... 17 2.4.4.8 その他の毒性試験 ... 17 2.4.5 総括及び結論 ... 20 2.4.6 参考文献一覧 ... 23

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2.4 非臨床試験の概括評価

2.4.1 非臨床試験計画概略

SH L562BB(申請製剤、以下、本剤とする)はガドブトロール(本剤中の濃度;1.0mmol/mL)を 有効成分とし、静脈内投与後には血漿及び細胞外液(細胞間液)に分布する、細胞外液性の磁気 共鳴コンピューター断層撮影(Magnetic Resonance Imaging:MRI)用造影剤である。ガドブトロ ールはその物理化学的性質により、既上市の細胞外液性 MRI 造影剤の 2 倍のガドリニウム濃度で ある 1.0mmol/mL 製剤として処方することが可能である。 ガドブトロールは当初 0.5mmol/mL 製剤として開発予定であったことから、ガドブトロール製剤 の毒性試験は主として 0.5mmol/mL の臨床製剤(表 2.4.1- 1)を用いて一連の評価を実施した。 1.0mmol/mL 製剤の開発に際しては、全身毒性は投与液濃度(ガドブトロール濃度)によらず、概 してガドブトロールの総投与量に依存すると考えられたことから、0.5mmol/mL 製剤で得られた安 全性プロファイルは 1.0mmol/mL 製剤(本剤)のリスク評価にも外挿可能と判断した。その後、さ らに高用量での毒性評価を目的とし、1.0mmol/mL 製剤(本剤)を用いて単回及び反復投与毒性試 験、生殖発生毒性試験を追加実施し、本剤の毒性及び安全性プロファイルを確認した。結果的に、 一連の毒性試験では軽微な処方変更も含めた 4 種類の臨床製剤(表 2.4.1- 1)を使用した。なお、 その他の非臨床試験では、研究用製剤a)又は上述の臨床製剤をそのまま、あるいは希釈して使用 した。 表 2.4.1- 1 ガドブトロール臨床製剤一覧 Formulation Compositions

1.0 mmol/mL formulation 0.5 mmol/mL formulation SH L562BB* SH L562B SH L562AA SH L562A Gadobutrol (active ingredient) 604.720 mg

Calcobutrol sodium (excess ligand)b) 0.513 mg

Trometamol (buffer) 1.211 mg

(pH adjustment) q.s. q.s. q.s. q.s.

Water for injection (solvent) mg

*: Currently submitted formulation, , q.s.: Quantum sufficit

以下、薬理試験、薬物動態試験及び毒性試験の計画につき概略を示す。

a) 0.5mmol/mL 又は 1.0mmol/mL ガドブトロール水溶液、あるいは 0.5mg/mL DTPA 又は CaNa3DTPA 含有 0.5mmol/mL

ガドブトロール水溶液

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2.4.1.1 薬理試験計画 2.4.1.1.1 効力を裏付ける試験 ガドブトロールの緩和時間短縮作用をin vitroで検討し、ガドペンテト酸メグルミンの緩和時 間短縮作用と比較した。ガドペンテト酸メグルミンの成績については、一部、ガドキセト酸ナト リウムの申請時提出資料の成績も再掲した。また、本承認申請の「効能・効果」である「磁気共 鳴コンピューター断層撮影における脳・脊髄造影及び躯幹部・四肢造影」に係わる in vivo試験 として、脳腫瘍、脳梗塞、肝臓腫瘍及び筋肉内腫瘍の各モデルラットを用い、T1強調画像におけ る病変部位の信号強度上昇作用及び病変部位と正常部位のコントラスト増強効果を検討した。ま た、病変部位におけるガドブトロールの造影効果の用量依存性について、筋肉内腫瘍モデルラッ トを用いて検討した。更に、正常ウサギを用い、ガドブトロールの造影効果、動態及び体内分布 について、全身(脳・脊髄領域及び躯幹部・四肢領域)での適応を有する細胞外液性 MRI 造影剤 ガドペンテト酸メグルミン及びガドテル酸メグルミンと比較検討した。加えて、ガドブトロール 0.5mmol/mL 製剤及び 1.0mmol/mL 製剤の造影効果について、肝臓腫瘍モデルラットにおけるダイ ナミック MRI 撮像により比較検討した。 2.4.1.1.2 安全性薬理試験 生命維持に重要な器官(中枢神経系、心電図所見を含む心血管系、呼吸器系)並びに腎機能、 血液及びヒスタミン遊離に及ぼすガドブトロールの影響を、in vitro及びin vivo試験で検討し た。

In vitro試験〔hERG(human ether-a-go-go-related gene)カリウム電流及びモルモット摘出 乳頭筋における活動電位〕は ICH S7B ガイドライン施行前に実施されたため、GLP 適用下では行 わなかった。In vivo 試験では、特に記載のない限り、単回静脈内投与により実施し、そのほと んどを 2001 年の ICH S7A ガイドラインの施行前に一般薬理試験として GLP 非適用下で実施した。 これらの試験は、実施時において技術的に確立された試験方法及び当時の指針(一般薬理試験ガ イドライン、1991 年)に従って実施された。心血管系における覚醒イヌを用いた試験、呼吸器系 における麻酔ウサギを用いた試験、並びに中枢神経系におけるマウスを用いた 2 試験(電撃痙攣 に対する影響を確認した試験)の計 4 試験は ICH S7A ガイドラインに従い、GLP に準拠して実施 した。

安全性薬理試験では、開発初期には研究用製剤(0.5mg/mL DTPA 又は CaNa3DTPA 含有 0.5mmol/mL

ガドブトロール水溶液)、0.5mmol/mL 製剤(SH L562A)、及び 1.0mmol/mL 製剤(SH L562B)を、 その後は新たに開発された 1.0mmol/mL 製剤(SH L562BB、本剤)を使用した(表 2.4.1- 1)。

2.4.1.2 薬物動態試験計画

非臨床薬物動態試験においては、ラット、ウサギ、イヌ及びサルを用い、非標識ガドブトロー ル又は放射性153Gd で標識したガドブトロール(以下、153Gd-ガドブトロール)を静脈内投与した。

ガドブトロール投与後の生体試料中のガドリニウム濃度は、誘導結合プラズマ質量分析計 (Inductively-coupled plasma mass spectrometry:ICP-MS)又は誘導結合プラズマ発光分光計 (Inductively-coupled plasma atomic emission spectrometry:ICP-AES)を用いて測定した。

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体のいずれを投与した場合にも、ガドリニウム元素を測定対象としてモル濃度を表示した。ガド ブトロールは生体内では代謝されない(2.4.3.4 代謝)ので、モル濃度表示したガドリニウム濃 度は、そのままガドブトロール濃度を表すことになる。 2.4.1.3 毒性試験計画 ガドブトロールの毒性試験プログラムとして、単回投与毒性試験(マウス、ラット及びイヌ)、 反復投与毒性試験(ラット及びイヌ)、遺伝毒性試験(in vitro及びin vivoマウス)、生殖発 生毒性試験(ラット、ウサギ及びサル)、局所刺激性試験(ウサギ、ラット及びイヌ)及び抗原 性その他の毒性試験(モルモット、ラット-マウス系、マウス、ラット及びイヌ)を含む一連の 試験を実施した。これらの主要な毒性試験は GLP に従って実施したが、用量設定試験、種々の臨 床試験相の開始に特に関連せずに実施した血中ホルモン濃度検討試験(類薬ガドペンテト酸メグ ルミン製剤でホルモン濃度変動の可能性が示唆されたために実施)、並びにガドリニウム含有 MRI 造影剤の臨床使用時に、稀に報告されている腎性全身性線維症(Nephrogenic Systemic Fibrosis: NSF)の病理発生に関する動物実験(ラット)は非 GLP 下に実施した。

毒性試験では 4 種のガドブトロール臨床製剤を使用した(表 2.4.1- 1)。初期の毒性試験は主 として 0.5mmol/mL 製剤(主に SH L562A、一部 SH L562AA)を使用して実施された。1.0mmol/mL 製剤(SH L562BB、本剤)の開発に際しては、その詳細な毒性プロファイルを評価・確認する目的 で、1.0mmol/mL 製剤(本剤)を用いた単回及び反復投与毒性試験、及び生殖発生毒性試験を追加 実施した。本剤を用いた単回投与毒性試験及び反復投与毒性試験(ラット及びイヌ)に関しては、 0.5mmol/mL 製剤の毒性試験中では実施されなかった全身曝露の評価も加えて、本剤による毒性及 び安全性を確認した。さらに、1.0mmol/mL 製剤は 0.5mmol/mL 製剤に比し、同一容量でより高用 量の投与が可能であることから、生殖発生毒性試験(ラット受胎能及び着床までの初期胚発生に 関する試験、ラット及びウサギの胚・胎児発生に関する試験、並びにラット出生前及び出生後の 発育並びに母体の機能に関する試験)に関しても、より高用量の本剤を投与した際の毒性所見を 確認するとともに、全身曝露の評価も追加した。また、本剤を 1 歳未満の乳児へ投与した際の安 全性情報を得る目的で、SH L562BB を用いた新生児ラットにおける拡張型単回投与毒性試験及び 短期反復投与毒性試験を実施した。局所刺激性については、主にガドリニウム濃度が本剤と同じ 1.0mmol/mL 製剤(SH L562B)を用いた試験成績より評価した。 さらに、NSF とガドリニウム含有 MRI 造影剤との関連性、特にこの稀ではあるが重篤な疾患で ある NSF の病理発生に及ぼす影響に、MRI 造影剤の種類による差異があるか否かについて、詳細 に検討・評価する目的で、ラットを用いた一連の探索的比較実験を実施した。

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2.4.2 薬理試験 2.4.2.1 効力を裏付ける試験 2.4.2.1.1 緩和時間短縮作用 ガドブトロールの水及び血漿中における緩和時間(T1及び T2)をin vitroで測定した結果、ガ ドブトロールの T1及び T2緩和度は、水中ではガドペンテト酸メグルミンとほぼ同等であり、血漿 中ではやや高値を示したことから、ガドブトロールは顕著な T1短縮作用を有することが示唆され た。 本剤は 1.0mmol/mL 製剤であることから、本剤の T1短縮作用を単位量(mL)あたりで比較する と、国内で既上市の他の細胞外液性 MRI 造影剤(0.5mmol/mL 製剤)に比し高いと考えられる。 2.4.2.1.2 脳障害モデルにおける造影効果 脳腫瘍及び脳梗塞の T1強調画像におけるガドブトロールの造影効果について、各モデルラット を用いて検討した。 ガドブトロール 0.1 及び 0.3mmol/kg の静脈内投与により腫瘍部位の信号強度は顕著に上昇し、 腫瘍部位と正常部位(脳実質)のコントラストが増強したことから、ガドブトロールが移植脳腫 瘍の検出及び描出に優れた造影効果を発揮することが確認された。同様に、ガドブトロール 0.1 及び 0.3mmol/kg の静脈内投与により梗塞部位の信号強度の上昇及び梗塞部位と脳実質のコント ラストの増強が認められたことから、ガドブトロールが脳梗塞巣の検出及び描出に優れた有効性 を示すことが確認された。ガドブトロールは、血液脳関門を有する正常な脳実質へは移行し難い が、脳腫瘍及び梗塞部位では血液脳関門の損傷部位より腫瘍内及び梗塞巣辺縁にガドブトロール が移行することで、病変部位が描出されるものと考えられる。 2.4.2.1.3 肝臓腫瘍モデル及び筋肉内腫瘍モデルにおける造影効果 肝臓腫瘍及び筋肉内腫瘍の各モデルラットを用い、ガドブトロール 0.1 及び 0.3mmol/kg の静脈 内投与後の T1強調画像における造影効果について検討した。 肝臓腫瘍モデルラット及び筋肉内腫瘍モデルラットにおいて、ガドブトロールを静脈内投与後、 腫瘍部位の信号強度の上昇及び腫瘍部位と正常部位のコントラスト増強効果が認められ、移植さ れた肝臓腫瘍及び筋肉内腫瘍に対して造影効果を有することが確認された。肝臓腫瘍及び筋肉内 腫瘍では、高信号領域と低信号領域が混在した画像として描出されたが、高信号領域は腫瘍血管 領域に、低信号領域は乏血性の壊死領域にそれぞれ相当すると考えられた。脳以外の組織ではガ ドブトロールは正常部位にも分布し得るものの、正常部位と病変部位の間に生じるガドブトロー ルの灌流量の差により、病変部位を明瞭に描出できると考えられる。

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2.4.2.1.4 造影効果の用量依存性 脳腫瘍、脳梗塞、肝臓腫瘍及び筋肉内腫瘍の各モデルにおける造影効果は、0.1mmol/kg の静脈 内投与時に比し、0.3mmol/kg 静脈内投与時に高く、用量依存性が示唆されたことから、ガドブト ロールの造影効果の用量依存性について、筋肉内腫瘍モデルラットを用いてより詳細に検討した。 ガドブトロール 0.1mmol/kg、0.3mmol/kg(分割投与;0.1+0.2mmol/kg)、0.5mmol/kg(分割 投与;0.1+0.2+0.2mmol/kg)投与後の腫瘍部位の信号強度は、総投与量に依存して上昇したこ とから、ガドブトロールによる信号強度上昇作用に用量依存性が確認された。 2.4.2.1.5 種々の器官及び体内領域における造影効果、動態及び分布 正常ウサギを用いて、ガドブトロール 0.1mmol/kg 静脈内投与後の頭頸部、腹部及び骨盤部領域 における造影効果、動態及び分布を、ガドペンテト酸メグルミン及びガドテル酸メグルミン(い ずれも 0.1mmol/kg 静脈内投与)と比較検討した。 種々の組織及び器官における信号強度変化の時間的推移及びガドリニウム濃度を測定した試験 成績より、ガドブトロールは、ガドペンテト酸メグルミン及びガドテル酸メグルミンと同様の体 内動態及び分布を示すことが明らかとなり、いずれの体内領域においても、造影効果を発揮する ことが確認された。 2.4.2.1.6 肝臓腫瘍モデルラットにおける 0.5mmol/mL 及び 1.0mmol/mL 製剤の造影効果 肝臓腫瘍モデルラットにおけるガドブトロール 0.5mmol/mL 製剤(SH L562A)及び 1.0mmol/mL 製剤(SH L562B)それぞれ 0.1mmol/kg の静脈内投与時の造影効果を、ダイナミック MRI 撮像によ り比較検討した。 腫瘍周辺の正常部位(肝実質)における信号強度の増強率には両製剤で差は認められなかった が、肝臓腫瘍における信号強度の増強率は SH L562A に比し SH L562B で大きく、1.0mmol/mL 製剤 の造影効果は 0.5mmol/mL 製剤より高かった。 2.4.2.2 安全性薬理試験 生命維持に重要な器官(中枢神経系、心電図所見を含む心血管系、呼吸器系)並びに腎機能、 血液及びヒスタミン遊離に及ぼすガドブトロールの影響をin vitro及びin vivo試験で検討した。 中枢神経系に対する検討では、ガドブトロール 2.5mmol/kg をマウスに単回静脈内投与したとき、 行動及び一般症状に影響は認められず、10mmol/kg の単回静脈内投与まで痙攣誘発作用は認めら れなかった。ガドブトロール 1.2~10.8μmol/動物(8~72μmol/kg に相当)をラット脳槽内に投 与したとき、1.2μmol/動物の投与により、運動機能の障害(握力の低下、正向反射の消失、運動 協調性の低下)が認められ、3.6μmol/動物以上の投与により、痙攣、死亡のような重篤な影響が 認められた。

心血管系に対するin vitro試験では、30mmol/L において hERG カリウム電流のごく軽度(20%) の抑制が認められ、高濃度のガドブトロール(100mmol/L)において hERG カリウム電流の 45%の 抑制が認められた。しかしながら、他の細胞外液性 MRI 造影剤(ガドジアミド水和物及びガドテ リドール)及び X 線造影剤(イオメプロール)においても、同程度のカリウム電流の抑制が認め

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られ、本所見には極めて高濃度の溶液を適用したことによる非特異的な影響が考えられた。一方、 摘出乳頭筋の活動電位に対して 50mmol/L まで影響は認められなかった。また、hERG カリウム電 流のごく軽度の抑制がみられたガドブトロール濃度(30mmol/L)及び摘出乳頭筋の活動電位に影 響を及ぼさなかったガドブトロール濃度(50mmol/L)は、ガドブトロールの予定臨床用量 (0.1mmol/kg)をヒトに投与したときに得られる最高血漿中濃度約 1.2mmol/L(2.7.2.2.2.1 表 2.7.2.2.2.1-1 参照)の 25 倍以上に相当した。 ガドブトロールは、2.5mmol/kg の用量まで、テレメーターを装着した覚醒イヌの血圧、心電図 PR 間隔、QRS 持続時間、並びに心電図波形及びリズムに影響を及ぼさなかった。しかし、0.5mmol/kg 及び 2.5mmol/kg の投与後、心拍数の一過性増加及びそれに伴った QTcF 及び QTcQ 間隔(心拍数の 変動で補正した値)の延長が軽度ながら一過性に認められた。QT 間隔補正に QT/RR hysteresis (履歴現象)を適用し、再解析した結果1)、ガドブトロールは 2.5mmol/kg の用量まで、QTc 間隔 には対照群との間に統計学的有意差は見出されず、QT 延長を誘発しないものと考えられた。以上 のin vitro及びin vivo試験成績から、ヒトにガドブトロールの予定臨床用量を投与後、QT 延 長が生じる可能性は低いと考えられた。また、米国で実施された臨床試験(Thorough QT/QTc study) においても、ガドブトロール(0.5mmol/kg)の投与に起因した QT 延長は認められなかった (2.7.2.4.1、5.3.3.1.3 A21381 参照)ことからも支持される。 呼吸器系に対する検討では、麻酔ウサギへの高用量(2.5mmol/kg)投与時に、軽微かつ一過性 の肺換気量の増加及び呼吸抵抗の減少が認められた。 腎機能に対する検討では、ラットへの 2.5mmol/kg 投与時に浸透圧クリアランスの増加、ウサギ への 2mmol/kg 投与時に尿量の増加が認められた。血液凝固系に対して、0.5mmol/kg までラット の出血時間に影響は認められなかった。赤血球形態及び肥満細胞からのヒスタミン遊離に対する in vitroでの検討では、高濃度溶液の適用時に軽微な影響が認められた。

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2.4.3 薬物動態試験 2.4.3.1 分析法 ガドブトロール投与後の生体試料中のガドリニウム濃度は、ICP-MS 又は ICP-AES を用いて測定 した。153Gd-ガドブトロール投与後の放射能は、ガンマカウンターを用いて測定した。非標識体及 び標識体のいずれを投与した場合にもガドリニウム元素を測定対象とし、モル濃度で表示した。 ガドブトロールは生体内では代謝されないため、モル濃度表示したガドリニウム濃度は、そのま まガドブトロール濃度を示す。 2.4.3.2 吸収(血中濃度) 153Gd-ガドブトロール又は ガドブトロールをラット、ウサギ、イヌ及びサルに単回静脈内投与 したときの血液又は血漿中ガドブトロール濃度推移の薬物動態パラメータを表 2.4.3.2- 1 に示す。 表 2.4.3.2- 1 各動物種における単回静脈内投与後の薬物動態パラメータ Species/ gender Rat/M Pregnant

rabbit/F Dog/F Monkey/F

Dose

(mmol/kg) 0.1 0.5 0.25 2.5 0.5 0.05 0.25 0.5

No. of animals 4 4 5 5 4 5 5 5

Matrix Plasma Blood Plasma Plasma Plasma

Report No. 9585 9669 9586 9615 A31073

PK model One-compartment Two-compartment compartmentOne- Model independent compartment Two-t1/2(min) ± 2.813.4 ± 3.113.0 ± 2.916.21) ± 1.618.31) ± 7.437.2 ± 4.237.2 ± 3.645.0 ± 4.659.22) AUC (μmol・min/mL) ± 0.746.49 ± 6.631.0 ± 1.314.4 ± 17.4153.6 ± 11.5120 ± 1.411.6 ± 5.467.2 ± 44.0378.8 CL (mL/min/kg) 13.1 ± 1.6 15.6 ± 2.8 17.4 ± 1.57 16.20 ± 1.71 4.11 ± 0.42 4.36 ± 0.58 3.75 ± 0.30 1.33 ± 0.158 V (L/kg) ± 0.040.253) ± 0.030.283) ± 0.0490.4024) ± 0.0280.4274) ± 0.040.223) ± 0.030.235) ± 0.020.235) ± 0.01450.1245)

Data represent a mean  S.D. M: male, F: female

AUC: Area under the concentration vs time curve from zero to infinity CL: Total body clearance of drug

V: distribution volume

1) t1/2: elimination half-life during  phase in 2-compartment model analysis

2) t1/2: elimination half-life during  phase in 1-compartment model analysis

3) Vc: distribution volume in central compartment

4) Vβ: distribution volume in terminal phase

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ラットにおける試験(報告書 9585 及び 9669)では、0.25、0.1、0.5 及び 2.5mmol/kg の 4 用量 をラットに静脈内投与した。報告書 9585 では血漿中濃度基準(0.1 及び 0.5mmol/kg)、報告書 9669 では全血中濃度基準(0.25 及び 2.5mmol/kg)の薬物動態パラメータを算出していることか ら、消失半減期以外は、両者の薬物動態パラメータを直接比較することはできない。しかし、そ れぞれの試験内の 2 用量間における比較を行った結果、最高用量の 2.5mmol/kg までの範囲で薬物 動態に線形性が認められた。 イヌにおける薬物動態も 0.25mmol/kg までの範囲で線形性を示した。イヌではさらにガドブト ロールの腎クリアランスとイヌリン・クリアランスがほぼ一致し、これらはガドブトロールの全 身クリアランスとも近似したことから、ガドブトロールは静脈内投与後主に糸球体ろ過によって 尿中排泄されることが示唆された。 排泄試験において、ラット及びイヌでは投与したガドブトロールがほぼすべて尿中に排泄され ており、ガドブトロールは動物種によらず糸球体ろ過によって尿中排泄されると考えられる。 血漿中濃度基準で算出したガドブトロールの分布容積に動物種間で大きな差はなかった。ラッ ト、ウサギ、イヌ、サル及びヒトにおける体重あたりの細胞外液量は 0.21~0.30L/kg2)と報告さ れており、これはガドブトロールの分布容積とほぼ一致することから、静脈内投与後、ガドブト ロールは主に血漿及び細胞外液に分布すると考えられる。 2.4.3.3 分布 153Gd-ガドブトロールをラットに静脈内投与後、放射能は全身に速やかに分布した。投与 0.25 時間後における放射能濃度は腎臓で最も高く、次いで血漿及び血液で高かった。脳における放射 能濃度は低かった。血液、血漿中放射能濃度は速やかに減少し、投与 3 又は 6 時間後には定量下 限未満となった。一方、臓器・組織中放射能濃度の減少は、血液・血漿中放射能濃度の減少と比 較すると緩慢であり、投与 24 時間後においても多くの臓器・組織で放射能が検出された。しかし ながら、投与 30 日後における放射能濃度は、腎臓及び骨を除くすべての臓器・組織で定量下限未 満となり、腎臓及び骨における残存放射能量もそれぞれ投与量の 0.1%未満にまで減少した。 153Gd-ガドブトロールをラットに単回静脈内投与後の全身オートラジオグラムを作製し、放射能 の臓器・組織分布を検討した。その結果は、組織採取法で得られた結果と同様であった。投与 3 分後には放射能は全身に分布し、腎臓に最も高濃度に分布した。脳及び脊髄には放射能はほとん ど分布しなかった。投与 24 時間後には腎臓を除く臓器・組織中放射能はほぼ完全に消失した。腎 臓の放射能は投与 7 日後にも認められ、腎皮質に高濃度の放射能が分布した。 153Gd-ガドブトロールをラットに 0.1、0.5 又は 2.5mmol/kg の用量で反復投与し、臓器・組織中 放射能濃度を測定した。5 日間反復投与 48 時間後に最も高い放射能を示した臓器・組織は腎臓で あり、単回投与時と同じであった。このとき、血液及び血漿中の放射能濃度は定量下限未満、そ の他の臓器・組織中放射能濃度は腎臓の 20 分の 1 未満と低かった。腎臓の放射能濃度は投与量の 増加に比例して増加しており、線形性が認められた。したがって、反復投与時における腎臓中濃 度の蓄積は単回投与時から予測可能な範囲内であった。 153Gd-ガドブトロールを妊娠 18 日のウサギに 0.5mmol/kg の用量で単回静脈内投与したとき、ご くわずかの放射能が胎児に移行した。妊娠 18 日のラットに153Gd-ガドブトロール 0.5mmol/kg を 単回静脈内投与後のオートラジオグラムでは、胎児に放射能は認められなかった。

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ガドブトロールをヒト血漿に 1μmol/mL の濃度で添加して、たん白結合率を測定した。血漿た ん白との結合率は極めて小さく、非結合率は 94.6~97.3%であり、血漿中のガドブトロールはほ とんどが非結合型として存在することが明らかとなった。 ラットの臓器・組織分布試験において血漿中/血液中放射能濃度比は 1.46~1.57 を示したこと から、ガドブトロールは血球にほとんど移行しないと考えられた。 2.4.3.4 代謝 ガドブトロールの代謝物の有無を確認するため、ガドブトロール単回静脈内投与後 3 時間まで のラット尿を UV-HPLC に注入した。HPLC 溶出液中のガドリニウム濃度を ICP-AES で測定したとこ ろ、ガドブトロールの分画以外にガドリニウムは検出されなかった。同様に、153Gd-ガドブトロー ル単回静脈内投与後 24 時間までのイヌ血漿及び尿を放射能検出器つき UV-HPLC に注入したところ、 ガドブトロールに相当するピークのみに放射能が認められた。両動物種においてガドブトロール は代謝されないことが明らかとなった。 2.4.3.5 排泄 153Gd-ガドブトロールを雄性ラットに 0.1 又は 0.5mmol/kg の用量で単回静脈内投与したとき、 投与 24 時間までにほとんどの放射能が尿中へ排泄された。尿中には、低用量及び高用量投与後 3 日間でそれぞれ投与量の 87.7%及び 100.4%、糞中には 9.1%及び 3.5%が排泄され、回収率はほ ぼ完全であった。 ガドブトロールを雌性ラットに 0.25 又は 2.5mmol/kg の用量で単回静脈内投与したとき、ガド リニウムは速やかに排泄された。ガドリニウムは低用量及び高用量投与後 7 日間で尿中にそれぞ れ投与量の 96.1%及び 91.9%が、糞中に 1.6%及び 2.1%が排泄された。回収率は低用量で 97.8%、 高用量で 94.0%であった。 153Gd-ガドブトロールを胆管カニューレ挿入ラットに 0.5mmol/kg の用量で単回静脈内投与した とき、放射能のほとんどすべてが尿中に排泄され、投与後 48 時間までに胆汁中に排泄された放射 能は投与量の 0.10%に過ぎなかった。 153Gd-ガドブトロールを哺乳中のラットに 0.5mmol/kg の用量で単回静脈内投与した。投与後 3 ~24 時間哺乳させた新生児ラットの胃内の乳汁中に放射能(投与量の 0.02%未満)が検出された。 したがって、ガドブトロールは乳汁中へ移行することが示された。 153Gd-ガドブトロールを雌性イヌに 0.05 又は 0.25mmol/kg の用量で単回静脈内投与したとき、 放射能は速やかに排泄された。投与後 7 日間に、尿中にそれぞれ投与量の 92.7%及び 98.0%、糞 中には 0.36%及び 0.28%の放射能が排泄された。回収率は低用量で 93.1%、高用量で 98.3%で あった。 153Gd-ガドブトロールを雄性ラットに 0.1、0.5 又は 2.5mmol/kg の用量で、1 日 1 回 5 日間反復 静脈内投与したとき、最終投与後 1 日までにそれぞれ放射能の 91.5、86.5 及び 89.1%が尿中に 排泄された。糞中への排泄は少なく、7.1~11.2%であった。最終投与後 1 日までに投与した放射 能の 96.2%以上が回収され、体内に残存する放射能はわずかである(3.8%未満)と考えられた。 反復投与時の放射能の排泄は単回投与時と差異はみられなかった。

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2.4.4 毒性試験 ガドブトロール臨床製剤(0.5 及び 1.0mmol/mL 製剤)を用いた一連の毒性試験を実施し、本剤 の予定臨床用法(通常単回静脈内投与)及び予定臨床用量 0.1mmol/kg と比較して安全性を評価し た。 ガドブトロールの毒性試験では表 2.4.1- 1 に示した 4 種類の臨床製剤を用いた(表 2.4.1- 1)。 2.4.4.1 単回投与毒性 ガドブトロールの単回静脈内投与毒性を、雌雄マウス、雌雄ラット、幼若雄ラット及び雌雄イ ヌで評価した。ラット及びイヌにおいては 0.5mmol/mL 製剤(主として SH L562A)による試験に 加えて、本剤を用いた試験を実施し、マウスにおいては 0.5mmol/mL 製剤(SH L562A)による試験 を実施した。 ガドブトロール投与に起因した主な所見は、一般症状ではマウス又はラットの自発運動低下又 はアパシー、呼吸促拍又は呼吸不整、腹臥又は横臥、失調性歩行、間代性又は強直性痙攣及び振 戦、イヌの嘔吐、アパシー、粘膜発赤、一過性の血圧低下及び心拍数増加であった。病理組織学 的検査ではラット及びイヌの腎尿細管上皮細胞の空胞化であり、ラットへの致死量付近の高用量 投与では一部肝細胞にも空胞化が観察された。これら腎尿細管上皮細胞及び肝細胞の空胞化は、 時間経過とともに軽減又は消失する可逆的変化であった。単回静脈内投与時の概略の致死量は、 マウスで 25mmol/kg、ラットで 20mmol/kg、イヌでは 10mmol/kg より大きかった。体表面積に換算 3

すると、ラットでの 20mmol/kg は 120mmol/m2に、イヌの 10mmol/kg は 200mmol/m2に相当した。す

なわち、予定臨床用量(0.1mmol/kg、3.7mmol/m2cと比較して十分高かった。トキシコキネティ クス(TK)では、ラット(2、6 及び 20mmol/kg)及びイヌ(0.3、1.7 及び 10mmol/kg)への単回 静脈内投与後の Cmax 及び AUC は、いずれの場合も投与量にほぼ比例して増加し、曝露に性差は認 められなかった。 2.4.4.2 反復投与毒性 ガドブトロール製剤の臨床適用は原則単回静脈内投与であり、連日反復投与されないことから、 げっ歯類としてラットを、また非げっ歯類としてはイヌを用いて 4 週間までの反復静脈内投与試 験を実施した。 2.4.4.2.1 ラットにおける反復投与毒性試験 ラットにガドブトロール 0.6、1.2 又は 3.0mmol/kg(本剤)を 1 日 1 回 4 週間反復静脈内投与 した試験では、0.6mmol/kg 以上に腎重量の増加ないし増加傾向及び腎尿細管上皮、膀胱上皮及び 尿管上皮の空胞化が用量依存的に観察された。さらに、3.0mmol/kg 群の雄少数例(10 匹中 3 匹) に尿細管上皮細胞の単細胞壊死が観察された。雄 3.0mmol/kg 群の腎尿細管上皮の単細胞壊死を軽 c 体表面積換算係数として、ラット:6、イヌ:20、ヒト:37 を用いた(参考文献 3 参照)。

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微な毒性兆候と判断し、無毒性量は雄では 1.2mmol/kg/日、雌では 3.0mmol/kg/日と算定された。 TK では、ガドブトロールの曝露に性差は認められず、全身曝露量は投与量にほぼ比例して増加し た。反復投与による曝露の増加は認められなかった。

ラットにガドブトロール 1.0、2.5 及び 5.0mmol/kg(SH L562A)を 5 回/週、計 16~18 回反復 静脈内投与した試験では、5.0mmol/kg 群で雌 2 匹の死亡が観察された。また、5.0mmol/kg 群の雄 において、MCH(Mean Corpuscular Hemoglobin)の軽度な上昇、赤血球数及びヘマトクリット値 の低下が認められた。当該赤血球系パラメータの低下は、これらに関連する骨髄及び病理組織学 的所見は認められなかったものの、軽微な毒性兆候と考えられた。また、雄では 1.0mmol/kg 以上、 雌では 2.5mmol/kg 以上に腎重量の増加が観察され、病理組織学的検査では 1.0mmol/kg 以上のす べての群に腎臓の尿細管上皮の空胞化が用量依存的に観察されたが、腎機能への影響は認められ なかった。したがって、5.0mmol/kg 群雌での死亡、同群雄での赤血球系パラメータの変化を毒性 所見と判断し、無毒性量は雌雄共に 2.5mmol/kg/日と算定された。 ラットにガドブトロール 0.1、0.25、0.75 及び 2.5mmol/kg(SH L562A)を 1 日 1 回 4 週間反復 静脈内投与した試験では、雄 2.5mmol/kg 群で 4 週目に PSP(phenolsulfonphthalein)排泄率の 低下傾向が観察され、軽度ながらも毒性兆候と考えられた。雌雄 2.5mmol/kg 群では腎重量の増加 が観察され、病理組織学的検査では 0.25mmol/kg 以上から、腎臓近位尿細管上皮の空胞化が全例 に用量依存的に観察された。また、膀胱上皮の軽度空胞化が 0.25mmol/kg 以上で用量依存的に観 察された。雄 0.75mmol/kg 以下及び雌の全ての投与群では、PSP 検査も含めて腎臓及び膀胱の機 能障害を示唆する変化は認められなかった。以上の成績から、雄 2.5mmol/kg 群の PSP 排泄遅延傾 向を軽微ながらも毒性兆候と判断し、無毒性量は雄で 0.75mmol/kg/日、雌で 2.5mmol/kg/日と算定 された。 2.4.4.2.2 イヌにおける反復投与毒性試験 イヌにガドブトロール 0.3、1.0 及び 3.0mmol/kg(本剤)を 1 日 1 回 4 週間反復静脈内投与し た試験では、1.0mmol/kg 以上の群で投与直後の嘔吐又はリッキング、可視粘膜の赤色化が散発的 に、3.0mmol/kg 群では一過性軽度のアパシー、閉眼又は内耳表面の発赤が観察された。さらに 3.0mmol/kg 群では投与後に心拍数の一過性かつ軽度な増加が認められたが、投与翌日及び休薬時 にかかる変化は認められなかった。3.0mmol/kg 群の一般症状変化及び心拍数の一過性増加は、軽 度ながらも毒性兆候と考えられた。雌の 1.0mmol/kg 以上で、尿中 NAG(N-acetyl-β-D -glucosaminidase)及びγ-GT(gamma-glutamyl transferase)の軽度増加が観察されたが、休薬 期間終了時の検査では影響を認めなかった。投与終了時、0.3mmol/kg 以上で腎尿細管上皮の用量 依存的な空胞化が観察された。しかしながら、血清クレアチニンや尿素窒素などの腎機能検査値 に影響は認められず、これらは毒性所見とは考えられなかった。また、8 週間の休薬後に検査し た 1.0mmol/kg に上記変化は認められず、いずれも可逆性変化であった。以上の成績から、 3.0mmol/kg 群の一般症状及び心拍数増加を毒性所見と判断したため、無毒性量は雌雄共に 1.0mmol/kg/日と算定された。全身曝露量に性差は認められず、また投与量に比例して増加した。 反復投与による曝露の増加は認められなかった。 イヌにガドブトロール 0.25、1.0 及び 2.5mmol/kg(SH L562A)を週 5 回 4 週間(計 16~18 回) 反復静脈内投与した試験では、雌 1.0mmol/kg 以上及び雄 2.5mmol/kg 群で尿中γ-GT の増加が観 察されたが、前述のイヌ 4 週間投与試験と同様毒性所見とは考えられなかった。1.0mmol/kg 以上 で腎尿細管上皮細胞に用量依存性の空胞化が観察されたが、腎機能検査値への影響は認められな かった。以上のように、最高用量まで毒性所見は認められなかったことから、無毒性量は雌雄共 に 2.5mmol/kg/日と算定された。

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イヌにガドブトロール 0.1、0.5 及び 2.5mmol/kg(SH L562AA)を 1 日 1 回 4 週間反復静脈内投 与した試験では、雌雄 2.5mmol/kg 群に尿中γ-GT の増加、同群雄に尿中 NAG の増加が観察された が、4 週間の休薬後にはかかる変化は認められなかった。腎尿細管上皮に 0.5mmol/kg 以上で空胞 化及び硝子滴が観察された。しかしながら、他の一般的な腎機能パラメータ(血清尿素窒素、ク レアチニン値及び尿中たん白)に影響は認められず、毒性所見とは考えられなかった。4 週間の 休薬後、雌ではいずれの所見も認められず、雄では軽度な空胞化と硝子滴が少数例に観察され、 回復傾向が確認された。以上の成績から、無毒性量は雌雄共に 2.5mmol/kg/日と算定された。 2.4.4.3 遺伝毒性

ガドブトロールの遺伝毒性試験では、in vitro試験として細菌(S. typhinurium及びE. coli) を用いる復帰変異原性試験、ヒトリンパ球を用いる染色体異常試験、チャイニーズハムスターV79 培養細胞を用いる HPRT(Hypoxanthine Phosphoribosyl Transferase)試験を、in vivo試験とし てマウス骨髄小核試験を実施した。いずれの試験においても被験物質として 0.5mmol/mL 製剤(SH L562A)を用いた。その結果、いずれの試験においても陰性結果が得られ、ガドブトロールに遺伝 毒性は認められなかった。 2.4.4.4 がん原性 本剤は造影剤であり、臨床上長期にわたって連続投与されることがない。ラット及びイヌを用 いた反復投与毒性試験において、前腫瘍性及び慢性炎症性変化は観察されなかった。また、ガド ブトロールは静脈内投与後に速やかに尿中排泄され、蓄積性は認められていない。さらに、遺伝 毒性も認められなかった。これらのことから、がん原性は懸念されず、がん原性試験は実施しな かった。 2.4.4.5 生殖発生毒性 2.4.4.5.1 ラット受胎能及び着床までの初期胚発生に関する試験 雌雄ラットにガドブトロール 0.6、2.2 及び 7.5mmol/kg(本剤)を、雄では交配前 4 週間及び 交配期間中と剖検前日まで、雌では交配前 2 週間及び交配期間中並びに妊娠 7 日目まで反復静脈 内投与した。その結果、雄では 2.2mmol/kg 以上で、投与部位の局所障害、剖検時の用量依存的な 腎腫脹と腎重量の増加が観察され、雌でも 7.5mmol/kg 群で同様の腎臓の変化が観察されたものの、 いずれも毒性所見とは考えられなかった。雌 7.5mmol/kg 群ではさらに、投与初日に重度の一般症 状を伴う急性死亡、投与直後の発作性呼吸困難と腹臥又は横臥が少数例で観察され、これらは全 身性の毒性所見と考えられた。一方、交配成績、妊娠及び生殖パラメータに薬剤投与の影響は認 められなかった。以上の成績から、雄動物の一般毒性学的及び生殖能に対する無毒性量はいずれ も 7.5mmol/kg/日、雌動物の一般毒性学的無毒性量は 2.2mmol/kg/日、生殖能に対する無毒性量は 7.5mmol/kg/日と算定された。TK 測定を実施した雄ラットにおいて、初回投与後及び 43 日間反復 投与後の AUC 及び Cmax は投与量にほぼ比例して増加した。投与初日の AUC 及び Cmax と比較して、 投与 43 日目の 0.6 及び 7.5mmol/kg 群の AUC 及び Cmax 値に大きな変動は認められなかったが、 2.2mmol/kg 群の AUC 及び Cmax はやや高かった。

雌雄ラットにガドブトロール 0.25、0.75 及び 2.5mmol/kg(SH L562A)を、雄では交配前 60 日 間及び交配期間終了まで、雌では交配前 2 週間及び交配期間並びに妊娠 7 日目まで静脈内に反復

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投与した。その結果、いずれのパラメータに関しても、最高用量 2.5mmol/kg まで薬剤投与の影響 は認められなかった。したがって無毒性量は、雌雄親動物(一般毒性学的及び生殖能)及び初期 胚発生に対して、いずれも 2.5mmol/kg/日と算定された。 2.4.4.5.2 胚・胎児発生に関する試験 ラットにおける胚・胎児発生に関する試験 交尾の成立した雌ラットにガドブトロール 5.0、7.5 及び 10.0mmol/kg(本剤)を、妊娠 6~17 日目に反復静脈内投与した。その結果、母動物では 7.5mmol/kg 群で重度の一般症状が 1 匹に、 10.0mmol/kg 群で 2 匹の死亡、4 匹に重度の一般症状(振戦、呼吸不整及び腹臥)が観察された。 10.0mmol/kg 群に体重増加抑制及び摂餌量の減少が、7.5mmol/kg 群には投与初期摂餌量の軽度減 少が観察された。妊娠及び生殖パラメータに関しては、10.0mol/kg 群で早産発生頻度が対照群と 比較してわずかに増加した。胎児に関しては、10.0mmol/kg 群で平均胎児体重の減少が観察され た。胎児の外表及び内臓検査において、薬剤投与の影響は認められなかった。骨検査においては、 7.5mmol/kg 以上の群で骨変異の発生頻度の増加が観察された。しかしながら、奇形の発現頻度に 薬剤投与の影響は認められなかった。以上の成績から、母動物の一般毒性学的無毒性量は 5.0mmol/kg/日、その生殖毒性に対する無毒性量は 7.5mmol/kg/日、胎児に対する無毒性量は 5.0mmol/kg/日と算定された。初回投与後(妊娠 6 日)及び 12 日間反復投与後(妊娠 17 日目)の Cmax 及び AUC は投与量にほぼ比例して増加した。投与初日と投与 12 日目を比較したとき、7.5 及 び 10.0mmol/kg 投与群では反復投与後に AUC が増大した。 交尾の成立した雌ラットを帝王切開及び自然分娩群に分け、ガドブトロール 0.5、1.5 及び 5.0mmol/kg(SH L562A)を妊娠 6~15 日目まで反復静脈内投与した。帝王切開群では妊娠末期に 帝王切開し、自然分娩群では出生児を身体、機能及び行動検査に供した。その結果、5.0mmol/kg 群では着床後死亡の軽度増加、母動物あたりの生存胎児数の軽度な減少及び骨化の軽度遅延が観 察された。1.5mmol/kg 以下の群に薬剤投与の影響は認められず、また、出生児の生後発達には影 響は認められなかった。以上の成績から、母動物の一般毒性学的無毒性量は 5.0mmol/kg/日、そ の生殖能に対する無毒性量は 1.5mmol/kg/日、胎児に対する無毒性量は 1.5mmol/kg/日、出生児に 対する無毒性量は 5.0mmol/kg/日と算定された。 ウサギにおける胚・胎児発生に関する試験 交尾の成立した雌ウサギにガドブトロール 2.5、5.0 及び 10.0mmol/kg(本剤)を、妊娠 6~18 日目に反復静脈内投与し、妊娠末期に帝王切開した。さらに、TK 評価用サテライト動物を割り付 けて同様に処置した。その結果、母動物では 10mmol/kg 群で妊娠 15~20 日に 3 匹が死亡し、1 匹 が重度の一般症状を呈したため、切迫屠殺した。さらに同群では、2 匹に流産と、別の 2 匹に早 期分娩が観察され、母動物の体重及び摂餌量減少による全身毒性の二次的影響と考えられた。生 存例の一般症状として、10.0mmol/kg 群では排便の減少又は消失が対照群に比して増加した。ま た、10.0mmol/kg 群では、体重増加抑制又は体重減少及び摂餌量の減少が観察された。胎児にお いては 2.5mmol/kg 以上のすべての投与群において、骨変異(主として未骨化及び不完全骨化骨) の増加が観察され、軽度な発育遅延性変化と考えられた。一方、奇形の出現率に薬剤投与の影響 は認められなかった。以上の成績から、母動物の一般毒性学的無毒性量は 5.0mmol/kg/日、その 生殖能に対する無毒性量は 5.0mmol/kg/日、胎児に対する無毒性量は 2.5mmol/kg/日未満と算定さ れた。なお、ウサギ器官形成期に連続投与可能な最大用量(10.0mmol/kg)を反復静脈内投与した 場合においても、奇形発生を含めた重度な次世代への影響は認められなかった。初回投与後(妊 娠 6 日目)及び 13 日間反復投与後(妊娠 18 日目)の曝露には、用量依存的な全身曝露の増加が

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みられ、死亡例が出現した高用量(10.0mmol/kg)群では、初回投与時と比較して反復投与時には AUC の増加が観察された。 交尾の成立した雌ウサギにガドブトロール 0.5、1.5 及び 5.0mmol/kg(SH L562A)を、妊娠 6 ~18 日目まで反復静脈内投与し、妊娠 28 日目に帝王切開した。その結果、5.0mmol/kg 群では流 産頻度の軽度増加が観察され、薬剤投与の影響と考えられた。着床数、生存胎児数、着床後死亡 数、性比及び胎児体重に薬剤投与の影響は認められなかった。外表、内臓及び骨奇形の種類及び 発生頻度に薬剤投与の影響は認められなかった。以上の成績から、母動物の一般毒性学的無毒性 量は 5.0mmol/kg/日、その生殖能に対する無毒性量は 1.5mmol/kg/日、胎児に対する無毒性量は 1.5mmol/kg/日と算定された。 サルにおける胚・胎児発生に関する試験 超音波検査にて妊娠が確認された雌カニクイザルの妊娠 20~50 日目までの期間に、ガドブトロ ール 0.75 又は 2.5mmol/kg(SH L562A)を反復静脈内投与し、妊娠末期に帝王切開した結果、 2.5mmol/kg 群では流産頻度の増加が観察された。胎児体重、胎盤重量、胎児臓器重量及び胎児体 長に薬剤投与の影響は認められなかった。外表、内臓及び骨奇形の種類及び発生頻度に薬剤投与 の影響は認められなかった。以上の成績から、母動物の一般毒性学的無毒性量は 2.5mmol/kg/日、 その生殖能に対する無毒性量は 0.75mmol/kg/日、胎児に対する無毒性量は 0.75mmol/kg/日と算定 された。 2.4.4.5.3 ラット出生前及び出生後の発育並びに母体の機能に関する試験 雌ラットの妊娠 6 日目から分娩後 21 日目までにガドブトロール 0.6、2.2 又は 7.5mmol/kg(本 剤)を、反復静脈内投与した結果、2.2mmol/kg 群 1 例に振戦が、7.5mmol/kg 群に重度一般症状(痙 攣、運動性低下、横臥、呼吸不整)が散発的に観察された。妊娠期間、出産経過、平均周産期死 亡数、平均胎児数、授乳指数及び F1出生児性比に薬剤投与の影響は認められなかった。一方、 7.5mmol/kg 群では F1出生児の生存指数、出生時体重及び F1出生児の初期生存率の軽微な低下が観 察されたが、奇形及び肉眼的異常所見は認められなかった。F1出生児の身体発達にも薬剤投与の 影響は認められなかった。さらに、7.5mmol/kg 群 F1出生児では運動性の減少、反射及び行動試験 で軽度な薬剤投与の影響が観察されたが、F1出生児の交配前、交配及び妊娠期間の一般症状、体 重増加及び摂餌量並びに剖検所見に薬剤投与の影響は認められなかった。F1世代の受胎能検査に おいても、授精期間、妊娠期間、着床数、周産期死亡数、F2胎児数及び性比、F2出生児の一般症 状、外表奇形及び体重に薬剤投与の影響は認められなかった。TK において、分娩後 21 日目の AUC 及び Cmax は用量にほぼ比例して増加し、すべての群で妊娠 6 日目の結果と同様であった。以上の 成績から、母動物の一般毒性学的無毒性量は 0.6mmol/kg/日、生殖能に対する無毒性量は 2.2mmol/kg/日、出生児に対する無毒性量は 2.2mmol/kg/日(出生前及び生後発育に対しては 2.2mmol/kg/日、F1世代の生殖能を含む後期発育に対しては 7.5mmol/kg/日)と算定された。 雌ラットの妊娠 15 日目から分娩後 21 日目までにガドブトロール 0.5、1.5 又は 4.5mmol/kg(SH L562A)を、反復静脈内投与した結果、一般症状、体重及び摂餌量に薬剤投与の影響は認められな かった。妊娠期間、着床痕数、出産生児数、性比、周産期死亡数、出産率及び出生率にも薬剤投 与の影響は認められなかった。出生児の外表奇形、骨異常、骨変異及び骨化進行度、4 日生存率、 離乳率、成育率にも薬剤投与の影響は認められなかった。出生児の外表分化及び体重推移のみな らず、機能検査、水迷路検査、情動性及び探索行動検査においても薬剤投与の影響は認められな かった。一方、条件回避反応検査において、雌出生児 4.5mmol/kg 群では条件回避数の軽度な減少

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が観察された。以上の成績から、無毒性量は母動物(一般毒性学的及び生殖能)に対して 4.5mmol/kg/日、出生児に対しては 1.5mmol/kg/日と算定された。 2.4.4.6 新生児を用いた試験 Bayer Pharma 社は、1 歳未満の乳児に対する本剤(SH L562BB)の安全性情報を収集する目的で、 新生児ラットを用いた拡張型単回投与毒性試験及び短期反復投与毒性試験を実施した。単回投与 試験では生後 4 日齢のラットに、SH L562BB の 0.6、2.0 又は 6.0mmol/kg を単回静脈内投与し、 投与翌日及び 28 日後に安楽殺して、一般症状、体重、血液生化学的検査、尿検査及び病理学的検 査の成績より本剤投与の影響を評価した。短期反復投与試験では生後 10、17 及び 24 日目に本剤 の 0.3、1.0 又は 3.0mmol/kg を 3 日間反復静脈内投与し、最終投与 8 及び 64 日後に安楽殺して、 同様に本剤投与の影響を評価した。その結果、本剤投与による明らかな又はヒト(乳幼児)での 安全性評価上意義のある毒性所見は認められなかった。 2.4.4.7 局所刺激性 予定臨床投与経路が静脈内投与であるため、ガドブトロール製剤の単回静脈内投与による局所 刺激性試験を実施した。造影剤投与が想定される成人血管に比してより細い血管としてウサギ耳 介周縁静脈を選択し、うっ血下及び非うっ血下に薬剤を投与し、局所刺激性を評価した。また、 成人血管に近い血管径と考えられるイヌ前腕静脈を用いての、単回静脈内投与時の局所刺激性を 評価した。その結果、ガドブトロール 1.0mol/mL 製剤(SH L562B)は、細い血管径の静脈への投 与時には軽度な刺激性(一過性の発赤及び腫脹)を発現したが、通常の成人前腕部静脈と同様の 血管径である静脈内への投与では、生理食塩液投与時と同程度の一過性の発赤及び腫脹が観察さ れたのみであったことから、臨床で問題となる刺激性は発現しないと考えられた。 また、誤投与により接触する可能性のある組織に対する影響を検討する目的で、動脈内投与、 静脈周囲投与及び筋肉内投与による局所刺激性試験を実施した。その結果、1.0mmol/mL 製剤(SH L562B)は径の細いウサギ耳介中心動脈内投与時には生理食塩液よりやや強い局所刺激性が観察さ れたが、やや太いラット大腿動脈内投与時には明らかな刺激性は認められなかった。一方、ウサ ギ伏在静脈周囲投与時には炎症細胞浸潤を伴う中等度の刺激性が観察され、臨床で造影剤が静脈 周囲に漏れた場合には局所刺激性が発現する可能性が示唆された。ウサギ仙棘筋内単回投与によ る局所刺激性試験においても、軽度の局所刺激性所見が観察されたものの、その影響は生理食塩 液投与時と同程度であった。さらに、肝腫瘍のレーザー治療や超音波治療の治療前後に造影検査 が想定され、その場合に障害部位から漏れた造影剤が健康な肝組織と接触する可能性が考えられ たことから、ラット肝実質に対する局所刺激性も検討した。その結果、ガドブトロール 1.0mmol/mL 製剤(本剤)に肝実質に対する局所刺激性は認められなかった。 2.4.4.8 その他の毒性試験 抗原性及び皮膚感作性試験

モルモット全身性アナフィラキシー(Active Systemic Anaphylaxis:ASA)試験、モルモット 同種受身皮膚アナフィラキシー(Passive Cutaneous Anaphylaxis:PCA)試験、マウス-ラット 系 PCA 試験及びイヌを用いた抗原性試験を、また、接触感作性試験としてモルモットを用いたオ プティマイゼーション試験を実施した。被験物質として、イヌを用いた抗原性試験ではガドブト ロール 1.0mmol/mL 製剤(SH L562BB)を、その他の試験では 0.5mmol/mL 製剤(SH L562A)を使用

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した。その結果、いずれの試験においても陽性所見は認められず、抗原性及び皮膚感作性は陰性 であった。

添加剤の毒性試験

CaNa-butrol はガドブトロール 1.0mmol/mL 製剤及び 0.5mmol/mL の両製剤中に、0.001mmol/mL の濃度で含有されている添加剤(安定剤)である。本添加剤の単回静脈内投与時の急性毒性を、 0.5mmol/mL 製剤(SH L562AA、主成分/有効成分ガドブトロール)と比較する目的で、マウスに おける単回静脈内投与毒性試験を実施した。雌雄マウスに、CaNa-butrol 5 及び 25mmol/kg、ガド ブトロール(0.5mmol/mL 製剤)の 25mmol/kg を静脈内単回投与した。その結果、CaNa-butrol 5mmol/kg 群では死亡例は認められず、25mmol/kg 群では雌雄全例が投与直後に死亡した。比較対 照ガドブトロール 25mmol/kg 群では、雌雄共に 1/5 例が投与直後に死亡した。CaNa-butrol 投与 後の主な一般症状として排尿が、死亡例ではさらに眼球突出、腹臥及び呼吸困難が観察され、剖 検で急性循環障害を示唆する肺の暗赤色化と腎皮質の退色が観察された。以上のように、 CaNa-butrol のマウス単回静脈内投与時の概略の致死量は、雌雄共に 5mmol/kg と 25mmol/kg の間 にあり、死亡が認められない最大用量(5mmol/kg)は、体重換算で当該添加剤の推定臨床用量(1 μmol/kg)の 50,000 倍に相当した。なお、ガドブトロール製剤単回投与時の概略の致死量は、ガ ドブトロールとして 25mmol/kg であった。

ホルモン濃度への影響に関する試験

類薬の動物実験で造影剤投与後に血中ホルモン濃度が変動する可能性が示唆されたために、雄 ラットにガドブトロール 0.5mmol/mL 製剤(SH L562A)、数種類のガドリニウム含有 MRI 造影剤(い ずれも 0.5mmol/mL 濃度)の 5.0mmol/kg を静脈内に 2 日間反復投与し、血清中のホルモン濃度(テ ストステロン、FSH 及び LH)を経時的に測定・評価した。その結果、いずれの場合にも薬剤投与 に関連したホルモン濃度への影響は認められなかった。 腎性全身性線維症(NSF)に関する試験 主として重度腎障害患者において、ガドリニウム含有 MRI 造影剤の適用と関連する可能性が報 告されている「腎性全身性線維症(NSF)」に関連して、動物実験における類似皮膚病変の発生可 能性の検討、並びにガドリニウム含有 MRI 造影剤投与後のラットの皮膚、加えて肝臓及び大腿骨 中のガドリニウム、亜鉛及び銅濃度の変動について、ガドブトロール 1.0mmol/mL 製剤(本剤)及 び 5 種のガドリニウム含有 MRI 造影剤(ガドジアミド水和物を含む;いずれも 0.5mmol/mL 市販製 剤)を用いた探索的実験(非 GLP)において比較検討した。ラットに各造影剤の 2.5mmol/kg を、 週 5 回 4 週間反復静脈内投与した。最終投与の 5 日後に、皮膚(背部)、肝臓及び大腿骨を採取 し、上記の重金属濃度を測定した。その結果、本剤投与群のラット皮膚に病理組織学的異常は認 められなかった。また、皮膚、肝臓及び大腿骨中の亜鉛及び銅濃度に薬剤投与による変動は認め られなかった。一方、ガドジアミド水和物群では NSF 類似の皮膚変化(肉眼的に潰瘍及び痂疲形 成、組織学的に真皮肥厚、線維化及びコラーゲン沈着など)が認められ、皮膚、肝臓及び大腿骨 中に高濃度のガドリニウムが検出された。皮膚のガドリニウム濃度は、本剤を含むマクロ環構造 の造影剤群において最も低く、ガドジアミド水和物(非イオン性直鎖構造)群で最も高かった。 本剤を含むマクロ環構造の造影剤投与後の皮膚のガドリニウム濃度は、投与から長期間経過後に も生理食塩液投与対照群と同様に低濃度で推移した。 同様に、片側腎摘出ラット(重度腎障害モデル)に、ガドブトロール 1.0mmol/mL 製剤(本剤) 又は 3 種のガドリニウム含有 MRI 造影剤(ガドジアミド水和物及びガドペンテト酸メグルミンを 含む;いずれも 0.5mmol/mL 市販製剤)2.5mmol/kg を 1 日 1 回 5 日間反復静脈内投与し、皮膚の

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組織学的検索とガドリニウム濃度測定を実施したところ、前述の正常ラットにおける結果と同様 に、ガドジアミド水和物群に NSF 類似の皮膚病変の発生と最も高いガドリニウム濃度が認められ た。本剤を含む他の群に皮膚病変は認められず、皮膚のガドリニウム濃度は、上記ガドジアミド 水和物群(非イオン性直鎖構造)に比してガドペンテト酸メグルミン群(イオン性直鎖構造)で はより低く、本剤(マクロ環構造)群では最も低かった。前述の無処置ラットでの成績と同様に、 マクロ環構造を有する本剤投与後の皮膚のガドリニウム濃度は、投与から長期経過後にも変わら ずに低かった。 さらに、ガドブトロール 1.0mmol/mL 製剤(本剤)を 4 週間反復静脈内投与したラット及びイヌ の皮膚、並びに同 0.5mmol/mL 製剤(SH L562A)を 16~18 回反復静脈内投与したラット及びイヌ の皮膚を病理組織学的に追加検索した結果、いずれの試験群においても、NSF に類似する変化は 認められなかった。

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2.4.5 総括及び結論 本剤の有効成分であるガドブトロールにつき一連の非臨床試験を実施し、以下の結果及び結論 を得た。 ガドブトロールは顕著な T1短縮作用を有し、脳腫瘍、脳梗塞、肝臓腫瘍及び筋肉内腫瘍の各モ デルラットを用いた T1強調画像において、病変部位の描出に優れた造影効果を発揮することが明 らかとなった。まず、脳腫瘍モデルラット及び脳梗塞モデルラットにおいて、ガドブトロールは 正常な脳実質には移行し難いが、脳腫瘍及び脳梗塞においては血液脳関門の損傷部位より病変内 に移行するため、病変部位が描出されると考えられる。ガドブトロールが正常な血液脳関門を有 する脳実質へは移行し難いことは、153Gd-ガドブトロールを正常ラットに単回静脈内投与後、脳及 び脊髄における放射能分布が極めて低かったこと(2.6.4.4.1.1 単回静脈内投与 参照)からも 支持される。次に、肝臓腫瘍モデルラット及び筋肉内腫瘍モデルラットにおいて、腫瘍は高信号 領域(腫瘍血管領域)と低信号領域(壊死領域)が混在した画像として描出され、脳以外の組織 ではガドブトロールは正常部位にも分布し得るものの、正常部位と病変部位の間に生じるガドブ トロールの灌流量の差により、病変部位を描出できると考えられる。 また、ガドブトロールは、正常ウサギの頭頸部、腹部及び骨盤部領域のいずれにおいても、全 身での適応を有する細胞外液性 MRI 造影剤ガドペンテト酸メグルミン及びガドテル酸メグルミン と同様の体内動態及び分布を示し、造影効果を発揮することが確認された。 以上の薬理試験成績より、ガドブトロールは臨床における脳・脊髄領域及び躯幹部・四肢領域 における病変部位の検出及び描出に優れた造影効果を発揮すると考えられる。 安全性薬理試験において、生命維持に重要な器官(中枢神経系、心電図所見を含む心血管系、 呼吸器系)並びに腎機能、血液及びヒスタミン遊離に及ぼすガドブトロールの影響をin vitro及 びin vivo試験で検討した。 覚醒イヌを用いた心血管系に対する検討において、ガドブトロール 2.5mmol/kg で心拍数の一過 性増加及びそれに伴う QTcF 及び QTcQ 間隔の延長が軽度かつ一過性に観察されたが、QT/RR hysteresis による解析の結果、ガドブトロールは 2.5mmol/kg の用量まで QT 延長を誘発しない ものと考えられた。また、米国で実施された臨床試験(Thorough QT/QTc study)においても、ガ ドブトロール(0.5mmol/kg)の投与に起因した QT 延長は認められなかった(2.7.2.4.1、5.3.3.1.3 A21381 参照)ことから、ガドブトロールの臨床使用において心血管系への有害作用が発現する 可能性は低いと考えられた。 以上、ガドブトロールの中枢神経系、心血管系、呼吸器系及び腎機能に加え、血液及びヒスタ ミン遊離に及ぼす影響を検討した結果、認められた所見はいずれも軽微かつ一過性、又は予定臨 床用量と比較して高用量投与あるいは高濃度溶液の適用によるものであったことから、臨床使用 において有害作用が発現することは考え難いものと結論された。 非臨床薬物動態試験成績より、静脈内投与されたガドブトロールは、血漿及び細胞外液に速や かに分布した後、代謝を受けることなく、ほとんどすべてが糸球体ろ過によって速やかに尿中へ 排泄されることが明らかとなった。血液中では主に非結合型として存在し、血球には移行しなか った。

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ラットに153Gd-ガドブトロールを単回静脈内投与した後、放射能は全身に速やかに分布した。投 与 0.25 時間において放射能濃度が最も高かったのは腎臓で、次いで血漿が高かった。腎臓を除く 臓器・組織の放射能濃度は血漿中濃度よりも低かった。臓器・組織中放射能の消失は血漿と比較 して緩慢であったが、投与 30 日後までに腎臓及び骨を除くほとんどの臓器・組織で定量下限未満 となった。腎臓及び骨の放射能は投与 30 日後においても検出されたものの、残存率は極めてわず かで、いずれも投与量の 0.1%未満であった。腎臓及び骨における放射能は長期残留したが、そ の濃度は時間とともに減少した。 ガドブトロール反復投与時の臓器・組織中濃度の蓄積は予想される範囲内でありかつ時間とと もに消失した。さらにガドブトロールは単回投与される診断薬であり、長期間の反復投与は行わ れない。したがって、腎臓や骨における反復投与による蓄積やそれに伴う消失の遅延は、臨床上 特に重要な問題を引き起こすことはないと考える。 脳及び脊髄への放射能の分布は極めて低く、ガドブトロールは正常な血液脳関門をほとんど通 過しなかった。妊娠ウサギに153Gd-ガドブトロールを静脈内投与したとき、ごくわずかの放射能が 胎児中に認められた。哺乳中ラットにおいては、乳汁への放射能の排泄が認められた。 マウス、ラット、幼若雄ラット及びイヌを用いてガドブトロールの静脈内単回投与毒性試験を 実施したところ、これらの動物における概略の致死量及び最大非致死量は、本剤の予定臨床用量 (0.1mmol/kg、2.5mmol/m2)と比較して十分高かった。 ラット及びイヌへのガドブトロールの反復静脈内投与後に共通して観察された最も顕著な所見 は、類薬(ガドリニウム含有細胞外液性 MRI 造影剤)4,5,6,7,8,9)及びヨード X 線造影剤10,11,12,13,14,15) の毒性試験、また高張溶液の大量投与16,17,18,19)においても報告されている可逆性の腎尿細管上皮 の空胞化であった(毒性所見とは判断されていない)。この所見は 1.0mmol/mL 製剤(本剤)又は 0.5mmol/mL 製剤のいずれの投与においても観察された。また、同一の総負荷量であれば、 1.0mmol/mL と 0.5mmol/mL 濃度液間で当該所見の程度及び頻度に差異は認められなかった。 腎尿細管上皮の空胞化以外の所見として、ラットにおいては、本剤 3.0mmol/kg を 4 週間反復静 脈内投与した場合、尿細管上皮に単細胞壊死が雄少数例に観察された。1)休薬により完全に消失 した変化であること、2)イヌ 4 週間反復静脈内投与試験では 3.0mmol/kg の投与時にも観察され なかったこと、3)投与量 3.0mmol/kg は予定臨床用量(0.1mmol/kg)と比較して十分高い用量で あることを考慮すると、単回投与の臨床使用において問題となる所見とは考えられなかった。 イヌにおいては、投与直後に一過性の嘔吐又はリッキング、可視粘膜の赤色化、一過性軽度の アパシー、閉眼又は耳介内面の発赤が 1.0mmol/mL 製剤の投与後にのみ観察されたが、0.5mmol/mL 製剤より高い浸透圧の寄与が考えられた。これらの症状は、1)主として 1.0mmol/kg(予定臨床 用量 0.1mmol/kg の体重換算で 10 倍)以上をイヌに投与した場合に観察され、2)一過性でかつ散 発的な発生であったこと、3)同様の所見は臨床で汎用されている類薬ガドペンテト酸メグルミン 製剤においても、ガドブトロール製剤の毒性試験と同一の施設で行われたイヌにおける 16~18 回 反復静脈内投与試験20)、あるいはイヌ単回静脈内投与試験21)において同様の投与量で観察されて いることを考慮すると、臨床使用において問題となる可能性は低いと考えられた。 一連の遺伝毒性試験の結果、ガドブトロールに遺伝毒性は認められなかった。 生殖発生毒性試験において、ラット胚・胎児発生に関する試験では母動物に死亡を含む重度の 全身毒性が発現する用量を、器官形成期に反復静脈内投与した場合においても、胎児に軽度な骨 変異の増加が観察されたのみで、次世代に奇形を含む重度な影響は及ぼさないことが確認された。 ウサギ胚・胎児発生に関する試験では、死亡を含む重度の全身毒性を発現する用量を、器官形成

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期に反復静脈内投与した場合においても、流産、早産の増加傾向、胎児には軽度な骨変異の増加 が観察されたものの、次世代に奇形を含む重度な影響は及ぼさないことが確認された。また、受 胎能及び着床までの初期胚発生に関する試験、出生前及び出生後の発育並びに母体の機能に関す る試験を含む一連の生殖発生毒性試験で得られた各無毒性量及び毒性発現用量と予定臨床用量 (0.1mmol/kg の単回投与)及び検査頻度/投与間隔(通常数週間以上)を考慮すると、臨床使用 上問題となる所見は観察されなかった。 本剤の単回及び 4 週間反復投与毒性試験並びに生殖発生毒性試験における曝露量は投与量にほ ぼ比例して増大し、概して排泄は速やかで性差も認められなかった。 局所刺激性試験、抗原性及び皮膚感作性の各試験、その他の毒性試験においても、特に問題と なる所見は見出せなかった。 ガドリニウム含有 MRI 造影剤の臨床使用と関連する可能性が報告されている NSF に関し、高用 量の造影剤を反復投与した動物実験において類似皮膚病変の発生可能性を検討したが、本剤投与 群の皮膚に病理組織学的異常は認められなかった。また、皮膚、肝臓及び大腿骨中の亜鉛及び銅 濃度に薬剤投与による変動は認められなかった。加えて、本剤及び 0.5mmol/mL 製剤の反復静脈内 投与毒性試験で採取されたラット及びイヌの皮膚を病理組織学的に追加検索したが、NSF 類似の 皮膚変化(病理組織学的に線維化、コラーゲン沈着、細胞外間隙の欠失、真皮肥厚及び細胞密度 の増加)は認められなかった。一方、類薬であるガドジアミド水和物の正常又は片側腎摘出ラッ ト(重度腎障害モデル)への高用量反復静脈内投与時には、NSF 類似の皮膚変化とともに皮膚、 肝臓及び大腿骨に高濃度のガドリニウムが検出された。各種ガドリニウム含有 MRI 造影剤の反復 静脈内投与後の皮膚におけるガドリニウム濃度は、ガドジアミド水和物(非イオン性直鎖構造) 群に比してガドペンテト酸メグルミン(イオン性直鎖構造)群で低く、ガドブトロール(マクロ 環構造)群では最も低かった。ガドブトロールはマクロ環構造を有し、キレート安定度が高いこ と22)から、遊離ガドリニウムに起因する可能性が指摘されている NSF の発生リスクは低いことが 期待される。 ガドブトロール製剤を用いて実施した一連の毒性試験成績から、予定臨床用量(0.1mmol/kg の 単回投与)を用いる診断目的での臨床使用にあたっては、問題となる毒性所見が発現する可能性 は低いと考えられた。 以上、一連の非臨床試験成績より、今回申請する用法・用量(0.1mmol/kg の単回静脈内投与) について、臨床上特に懸念される安全性上の問題はないと考えられる。また、本剤は臨床におい て「磁気共鳴コンピューター断層撮影における脳・脊髄造影及び躯幹部・四肢造影」に有用性を 示すことが期待される。

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