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特集 肝臓の EOB プリモビスト造影 MRI 本検査を有効に活用するための理解すべき課題 3.EOB プリモビスト造影 MRI T2 強調像, 拡散強調像への影響 齋藤和博 1), 荒木洋一 2), 吉村宜高 1), 赤田壮市 1), 勝山宏章 2), 佐々木一良 2), 徳植公一 1) 東京医科

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はじめに

 Gadolinium ethoxybenzyl diethylenetriaminepentaacetic acid(Gd-EOB-DTPA)は肝腫瘍の検出に優れ、近年、 その有用性の報告がみられる。本造影剤は投与直後、非 特異性細胞外液性造影剤と同様な動態を示し、ダイナ ミックスタディが可能である1)。1.5分後程度から徐々 に肝細胞に取り込まれ、20分後で肝細胞の造影効果が 最高となる2)。この時相を肝細胞造影相といい、本造影 剤の特徴的な時相である。しかし、ルーチン検査で造影 剤投与後に20分間待つということは、検査効率を不良 にする。そこで、その待ち時間に比較的撮像時間の長い T2強調像、拡散強調像が撮像できれば、検査効率の低 下を免れることができる。そのためには、どの程度Gd-EOB-DTPAがT2強調像、拡散強調像に影響を与えるか を知る必要がある。これまで、非特異性細胞外液性造影 剤による検討がされているが、これらシークエンスに対 する影響は少なく、造影後も撮像可能とされている3、4)

3.EOB・プリモビスト造影MRI

−T2強調像,拡散強調像への影響−

齋藤 和博

1)

,荒木 洋一

2)

,吉村 宜高

1)

,赤田 壮市

1)

勝山 宏章

2)

,佐々木一良

2)

,徳植 公一

1) 東京医科大学 放射線医学講座1),同 放射線部2)

Primovist-Enhanced MRI

:Effect of T2-Weighted Image and

Diffusion-Weighted Image

Kazuhiro Saito, M.D., Yoichi Araki, R.T., Nobutaka Yoshimura, M.D., Soichi Akata, M.D., Hiroaki Katsuyama, R.T., Kazuyoshi Sasaki, R.T., Koichi Tokuuye, M.D. Summary

 Gadolinium-ethoxybenzyl diethylenetriaminepentaacetic acid(Gd-EOB-DTPA, Primovist,Bayer-Schering,Osaka,Japan)is a liver-specific contrast medium.It is necessary to wait for 20 minutes after starting contrast medium injection for liver parenchymal enhancement,but this causes throughput decline.If it were acceptable to perform T2-weighted images(T2WI)and diffusion-weighted images(DWI) after injection of Gd-EOB-DTPA,the examination time would be shortened,and therefore throughput would be improved.

 The signal to noise ratio(SNR) of liver parenchyma in T2WI tended to increase during the early phase and decrease during the late phase after injection of contrast medium.SNR increase in liver parenchyma is caused by rapid recovery from the magnetization transfer effect and is a direct result of reduced T1 due to the presence of Gd-EOB-DTPA in hepatocytes.On the other hand,SNR reduction in liver parenchyma is caused by the T2-shortening effect of Gd-EOB-DTPA because of its highly specific accumulation in hepatocytes.On enhanced-T2WI,detection of hepatic lesions is comparable to plain T2WI and some lesions become clearer.  SNR,CNR and ADC of liver parenchyma in DWI are comparable to those of enhanced-DWI. On enhanced-DWI,the visibility and ADC of the lesions are also comparable to plain DWI.

 It is therefore acceptable to perform T2WI and DWI after injection of Gd-EOB-DTPA. Department of Radiology,

Tokyo Medical University

NICHIDOKU-IHO Vol.55 No.2 27-34 (2010)

(2)

日獨医報 第55巻 第2号 2010 しかし、Gd-EOB-DTPAは約50%が肝臓に取り込まれ、 また、T1緩和度も非特異性細胞外液性造影剤と比較し て約2倍であり5)、造影剤の影響が高い可能性がある。 そこで、Gd-EOB-DTPAのT2強調像、拡散強調像への 影響について述べていきたい。

T2強調像への影響

 T2強調像は充実性腫瘍と非充実性腫瘍との鑑別に有 用である。また、慢性肝疾患病変では、肝細胞癌の悪性 度の評価に有用であり6)、造影剤のT2強調像への影響は 重要である。また、heavy T2強調像であるMRCPへの 影響も考慮する必要がある。 1.造影剤のT2短縮効果  理論的には、造影剤濃度が低いときには、T1短縮効 果によりT2強調像での信号は上昇し、造影剤濃度が高 くなったときにはT2短縮効果がT1短縮効果を上回る7) 図1はGd-EOB-DTPAのファントム実験の結果を示した ものであり、このことを裏付ける結果となっている8) 非特異性細胞外液性造影剤での経験では、尿中に排泄さ れた高濃度造影剤がT2短縮を示すことはよく知られて おり、Gd-EOB-DTPAでも同様である(図2)。また、T1 強調像で強い高信号を示す胆汁中に排泄された造影剤が T2強調像で高信号を示したり、低信号を示したりする ことに遭遇する機会もある(図2)。これは、かなり造影 剤濃度が高くならないと視覚的に認識可能な程度のT2 短縮が起こらないことを示唆するものと思われる。 2.造影剤投与によるT2強調像の肝実質、腫瘍の信号変化  信号強度の変化に関する臨床報告では相反する報告が されている。Brodyらは、肝実質、血管腫の軽度の信号 強度の上昇を報告している9)。その原因の一つとして、

T1短縮に伴うmagnetization transfer effect(MT効果)の 軽減をあげている。近年ではT2強調像はfast spin echo 法で撮像されることがほとんどであり、multiple echoes によるMT効果が画像に反映され、信号強度の低下が認 められている10、11)。非特異性細胞外液性造影剤では、 腫瘤内の細胞外液腔に貯留した造影剤によりT1短縮を きたし、MT効果が早く回復し信号の上昇を引き起こす 一方、肝実質などの細胞外液腔の狭い領域では、造影剤 の残留が少なく、MT効果により信号の低下を生じると されている3)。Gd-EOB-DTPAでは、肝細胞に取り込ま れた造影剤によるT1短縮によりMT効果が減弱し、肝実 質の信号強度の軽度上昇が認められる9)。一方で、肝実 質の信号強度の低下、血管腫、充実性肝腫瘍の信号低下 をきたしたというKimらの報告もみられる12)。このよう に結果に違いが生じた原因として、撮像開始時間そし て、echo train lengthが考えられる。撮像時間の差異に より、肝実質、病変への造影剤の集積程度に違いが生 じる。また、echo train lengthが短いほどMT効果は少な くなる。われわれは4分後、20分後に呼吸停止下でecho train length 29でT2強調像の撮像を行ったが、4分後で は肝実質の信号強度は軽度上昇し、20分後では信号強 度は低下していた8)(図3)。肝細胞癌では軽度の信号強 度の上昇が認められた。Tamadaらは、造影剤投与4分 後と35分後に撮像し、肝実質の信号強度を評価してい る13)。彼らの報告もわれわれと同様な傾向である。すな わち、造影剤投与後、時間が充分経っていない場合は、 肝実質の造影剤濃度は低く、T1短縮が優位である。一方、 肝細胞造影相が撮像される時間では、造影剤が肝細胞に 充分取り込まれ、T2短縮を生じているものと考えられ る。当然、肝機能の程度により肝細胞への造影剤の集積 の程度は変化するので、肝機能の程度も、T2強調像へ の影響を及ぼす可能性がある。 3.造影剤投与によるT2強調像の腫瘍検出能、鑑別能  病変の検出能に関しては、劣ることはなく、明瞭とな 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 0 0.5

Concentration of contrast medium(mmol/L)

S ig na l i nt en si ty 1 1.5 2 2.5 図1 ファントム実験による造影剤濃度とT 2 強調像の信号強度の 関係 低濃度領域ではT2強調像ではT2緩和が生じるが,高濃度領域では T2短縮を生じる.

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る結節、新たな病変の検出が報告されており12)、造影後 にT2強調像を撮像することに関しては、病変の存在診 断、質的診断への影響はおおよそ乏しいものと考えられ る(図4)。しかし、 T2強調像で低信号を示す、dysplastic nodule、高分化型肝細胞癌などの検出は、造影剤による 肝実質のT2短縮効果のため、影響を受ける可能性があ る13)(図5)。 4.造影剤のMRCPへの影響  Gd-EOB-DTPAは約40%が胆汁排泄されるため、肝 細胞造影相では胆道内の造影剤排泄が観察されること が、通常である。胆道内の高濃度の造影剤は、T2短縮 を示す。そのため、造影後のMRCPは、胆道の描出が不 良である14)(図6)。

拡散強調像への影響

 近年、拡散強調像の肝腫瘤性病変の診断に対する有 用性が報告されるに従い、その重要性が認識され、ルー チンのシークエンスとなっている施設も多いものと思わ れる15)。拡散強調像はT2強調像のコントラストをベー スとしているため、T2強調像への影響の項で述べたよ うに、肝細胞造影相のタイミングで撮像された場合T2 短縮効果による影響を受ける可能性がある。また、拡 散強調像のコントラストから算出される見かけの拡散 値(apparent diffusion coefficient value:ADC値)も 影 響を受ける可能性がある。非特異性細胞外液性造影剤 の検討では、造影剤が血管内の信号強度を低下させ、 perfusion effectの低下をもたらし、ADC値を低下させ る可能性も指摘されている16) 図2 造影剤濃度とT2短縮効果 A, C 造影剤投与20分後のT2強調像 B, D 造影剤投与20分後の3D-VIBE 胆嚢内に排泄された造影剤はAでは,T2強調像で胆汁より高信号を示してい るが,CではT2短縮が認められる.いずれも3D-VIBEでは高信号である.腎 から排泄された造影剤はT2短縮を示している(A太矢印). C D A B

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日獨医報 第55巻 第2号 2010 図3 肝細胞癌と血管腫 A 造影前T2強調像 B 造影剤投与4分後のT2強調像 C 造影剤投与20分後のT2強調像 矢印:血管腫,太矢印:肝細胞癌 血管腫は造影後に明瞭となっている.しかし,肝細胞癌に関しては明瞭度に変化は認められない.肝実質の信号強度の 変化も,認識困難である. A B C 図4 中分化型肝細胞癌 A 造影前T2強調像 B 造影剤投与4分後のT2強調像 C 造影剤投与20分後のT2強調像 D 肝細胞造影相 肝細胞造影相で,造影剤の取り込みが認められるタイプの肝細胞癌である.T2 強調像で腫瘍は明瞭になってきている. C D A B

(5)

図5 高分化型肝細胞癌 A 造影前T2強調像 B 造影剤投与4分後のT2強調像 C 造影剤投与20分後のT2強調像 D 肝細胞造影相 矢印:肝細胞癌 肝細胞造影相では明瞭な低信号病変として描出されている.病変は,造影前T2強調像で低信号を示す. 腫瘍は4分後の画像で幾分明瞭である.造影剤投与により若干,明瞭度に変化が生じている. C D A B 図6 MRCPへの影響 A 造影剤投与前 B 造影剤投与20分後 造影剤投与前は上部胆管から肝内胆管まで描出が良好であるが,造影剤投与後は上部胆管から肝内 胆管の描出は不良である.主膵管の描出には変化は認められない. 矢印:intraductal papillary mucinous neoplasm A B

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日獨医報 第55巻 第2号 2010 1.造影剤による拡散強調像の肝実質、腫瘍の信号変化  非特異性細胞外液性造影剤によるChiuらの検討では、 肝実質、肝腫瘤性病変の拡散強調像のコントラスト、 ADC値に有意差は認められなかったとされている4)。そ のなかで、有意差はないものの血管腫の信号強度の低 下、ADC値の低下が、他の腫瘤よりも強い傾向が認め られている。これは、前述したように、造影剤の貯留に よるT2短縮の影響が高いものと考えられる。  Gd-EOB-DTPAの拡散強調像への影響については、 Choiらの3T、MRIでの報告がある17)。その報告のなかで、 肝実質のSNR、 ADC値は、造影後、有意に低下が認め られている。SNRの低下の理由として、造影剤投与7分 後に撮像しているため、肝細胞に造影剤が充分取り込 まれ、T2短縮を生じたためとしている。また、ADC値 の低下の理由として、Gd-EOB-DTPAのT2緩和度がGd-DTPAの2倍程度と大きく、3T装置では1.5T装置と比較 して、緩和度が大きくなることをあげている18)。すなわ ち、磁化率効果は静磁場の2乗に比例するので、3T装置 では造影剤による影響を受けやすいものと考えられる。 Choiらの検討では、腫瘍に関しては、低いb値において 悪性病変と良性病変の間にCNRで有意差が認められて いるが、高いb値では有意差は認められていない。また、 図7 肝細胞癌 A 造影前,拡散強調像(b=800 s/mm2 B 造影剤投与4分後の拡散強調像 C 造影剤投与20分後の拡散強調像 各時相において腫瘍,肝臓の信号の変化は軽度であり,診断に支障をきたす程度の変化はみられない. A B C 図8 肝細胞癌(図4と同一結節) A 造影前,拡散強調像(b=800 s/mm2 B 造影剤投与4分後の拡散強調像 C 造影剤投与20分後の拡散強調像 肝細胞造影相で造影剤の取り込みが認められるタイプの肝細胞癌である.造影後,腫瘍−肝コントラストは明瞭となっている. A B C

(7)

ADC値には有意差が認められていない。われわれの1.5T での検討では、造影剤投与4分後、20分後ともに、肝実質、 腫瘍のSNR、CNR、ADC値に有意な変化は認められな かった8)(図7)。したがって、1.5Tの装置では、肝実質 に造影剤が取り込まれてT2短縮が生じても、有意な低 下はなく、影響が少ないものと考えられるが、3Tでは、 磁化率効果の影響を受ける可能性を十分認識したうえで 使用するのが望ましいと考えられる。 2.造影剤による拡散強調像の腫瘍の検出能、鑑別能 への影響  病変の検出能に関しては、これまで報告はみられな い。低いb値では、コントラストの影響を受けるようで あるが17)、検出にまで影響を与えるかの評価はまだされ ていない。一方、鑑別能に関しては、悪性病変と良性病 変の鑑別に有効である高いb値において19)、CNRに有意 差は認められていないこと、各腫瘍におけるADC値も 有意差が認められないことから、造影剤による影響は乏 しいものと推測される17)。肝細胞癌に関しての自験例で は、SNR、CNR、 ADC値に有意差は認められていない8) (図8)。以上から、拡散強調像に関しては造影剤を投与 しても、診断能への影響は乏しいものと予想される。

まとめ

 Gd-EOB-DTPAのT2強調像、拡散強調像に対する影 響は、診断を損ねるほどの影響はなく許容範囲内であ り、検査効率の向上からも、造影後に、これらシークエ ンスを撮像することは可能と思われる。 【参考文献】

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