可変周波電源装置の改良(第1報)
一抵抗負荷時一
佐 藤 信
広*
(昭和48年11月30日受理)
Improvement of Variable Frequency Power Sources (lst Report)
Resistive Load
Nobuhiro SAT6
(Received November 30, 1973)
可変周波電源装置の代表的なものとしてMc Murray回路があげられるが,
で,その改良回路の一方式を考案し検討したところ,よい結果が得られた。
これには転流限界範囲がある。そこ
1 ま え が き
最近,SCRならびにその回路技術のめざましい進歩によ って,すでに可変周波電源装置が実用段階に入っている。
可変周波電源の代表的なものとして,Mc Murray回路(1)
があげられるが,この回路には転流限界範囲がある。転流 限界範囲は,転流コンデンサの容量を増せば広くできる が,転流時の損失が増すし,だからといって,限界範囲が せまいと負荷が限定される。そこで,改良回路(2)(3)が若干 みうけられる。しかし,それらはモータ駆動用に開発され たものであり,転流を確実にしても,回路の設計が複雑で あったり,回路要素が,かなり多く必要であったりする。
そこで,筆者は,Mc Murray回路の転流限界範囲の改良 を,それら改良回路とは別に行なっていこケという見地か ら検討してみた。その要旨をここに報告する。
順序としては,まず,Mc Muエray回路の動作理論およ び転流時の解析を行ない,次にその回路各部の波形を示
し,最後に,改良回路の一方式について述べることにす る。ただし,はん雑になるといけないので,ここでは,抵 抗負荷時のみについて述べることとし,誘導負荷時につい ては,別に発表することにする。
2 Mc Murray回路
2−1動 作 解 析
2−1−1動作理論 Fig.1の回路を用いて動作理論を進 める。理論解析を簡単にするために,次のような理想化し た仮定を設ける。
F→
3−1 E≡ P一ユ c1
メー
乙乳
σ → 江乙ユ
E… ρ,2
cユ Y
1 S曜ユ
Q
*鑑気工学科
Fig .1
(1)可変周波電源の交流出力の周期は,制御整流素子の ターンオフ時間よりはるかに長い。
(2)可変周波電源の要素の損失は無視できる。
(3)転流リアクトルの巻線は互いに密に結合していて,
漏れリアクタンスは無視できるものとする。
(4)制御整流素子のターンオン時間およびターンオフ時 の逆電流は,無視できるものとする。
(5)直流電源は完全な直流電源,すなわち,理想蓄電池 の電圧とみなせる。
期間A 制御整流素子S−1が通電していて,P側から電 力を負荷に供給している。転流リアクトルの抵抗は 無視しているので,点Zの電位は点Pの電位にな り,コンデンサC2は2Eに充電されている。
期間B 転流のため,制御整流素子S−2がゲートされ,
オン状態 になり,点Yが直流電源の負母線Qの 電位になる。転流リアクトルの抵抗は無視している ので,点Zと点Yおよび負母線Qの電位が同じにな るはずであるが,コンデンサC2の電圧は瞬間的に 変化できないので,リアクトルL2すなわち巻線zy に2Eの電圧が加わり,この電圧が巻線XZlビ誘起 するので,S−1は2Eの電圧で逆バイアスされ,
ターンオフする。
期間Aの終わりに流れていた負荷電流1。はS−2 に転流される。
期聞C 負荷の端子Zが負母線Qと同電位になった時にリ アクトルL2の電圧はゼロとなり,ここで,整流素 子D−2が通電を始め,S−2を流れる電流はS−2 D−2および巻線zyを循環して流れる。
期間A〆整流器がオフとなり1回路状態が定常的になった 時が門門Atの始まりである。
以下同様の順序でS−2からS−1に下流が行な われる。
2−1−2転流時の解析 Fig.2の回路で転貸状態の解析 を行なうにあたり,電流i1, i2, i3,∬0の方向は,図の矢印 の方向を正方向にとるものとする。ただし,1。は転流時の 初期電流である。
↑二==二二了… 丁
し£ 1 ⊥1
E
.____ゥ一一一一1
@ 尺
C 11巳1
小IlE
一一@一一 一一←一一一一
@ し2
ll 瀬縄 , 乙
IC 一 乙51
1 ___________」
;
▽ 一 一 一 一 一 r r 一 一 一 一 一 ___ __ _1
Fig.2解析を行なうにあたり,y(0+)=・ 2 Eとしている。
そうすると次式がなりたつ。
E一(1/C)fildt+(1/C)fi3dt+Ri1+Ri2………(1)
一E=(1/C)fi2dt+Ril+Ri2 ・・・・…一・・・・・…ny・… (2)
2E=(1/C)fiidt十(1/C)fi3dt十Ldi3/dt ・一・… ny・・ (3)
ラプラス変換して整理すると,
E/S一{(1/CS)十R}Ii十R12十(1/CS)T3・… 一一・一・… (4)
E/S−Rli十{(1/CS)十R}12 ・・・・・・・… s・・・・・・・… (5)
(2E/S) 十LI, 一= (1/CS)li十 {(1/CS) 十LS}13 ・・…一 (6)
ここで,一流期間に,転流リアクトルを流れる電流の式
.を求める。
13一(E/R)((1/TL)/{S2十(2/Tc)S十・(1/TLTc)}
+1/S) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・… (7)
ただし,
2C ・・Cノ,2R・=R!,1〜℃ノ=Tc, L/Rノ=TL,∫o=E/R
ラプラス逆変換すると,
(1).TL>Tcの時,すなわち, L>8R2Cの時 i3=(E/R)((Tcexp(一t/Tc)sinh((t/Tc)
{(TL−Tc)/TL} i/2)/{TL(TL−Tc)} i/2十1))一・・… (8)
(2)TL=Tcの時,すなわち, L==SR2Cの時
i3=(E/R)〔(t/TL)eXP{一t/(TL×Tc)1/2}十1〕 … (9)
(3)TL<Tcの時,すなわち, L<8R2Cの時 i3=(EIR)(〈Tcexp(一t/Tc)sin((t/Tc)
{(:Tc−TL)/TL}1/2〕/{TL(Tc−TL)}1/2+1))…(10)
転流期聞での転流リアクトルしの端子電圧を求める。
(1)TL>Tcの時
eL = Ldi3/dt= 2Eexp (一t/Tc) ・ ((cosh ( (t/Tc)
{(TL−Tc)/TL} 1/2) 一 {TL/(TL−Tc)}if2
sinh {(t/Tc) {(TL−Tc)/T L} i/2))) ・・…1・・・・・・・・・…(11)
(2)TL=Tcの時
eL=2Eexp[一t/(TLTc)1/2}
×{1−t/(TLTc)i/2} ・・・・・・・・・・・…一・・一…一・・(12)
(3)TL<Tcの時
eL==2Eexp(一t/Tc) ((cos((t/Tc) , × {(Tc−TL)/TL} i/2) 一 {TLI (Tc−TL)}i/2 xsin ((t/Tc) ・ {(Tc−TL) IT L} i/2) )) ・・・… 一一・・・・… (13)
さて,ここまでの解析からS−1の逆バイアス時間が求 められる。すなわち
Ldi3/dt−E ......・b・・・… 一t・t… (14)
可変周波電源装置の改良(第1報) 佐 藤
より,逆バイアス時間toは,次のように:求められる。
(1)TL>Tcの時
(1/2)exp(to/Tc) = cosh((to/Tc) {〈TL−Tc)/TL} i/2)
一 {TL/(TL−Tc)} 1/2 xsinh ((to/Tc) ・
{(TL−Tc)ITL}i/2) ny・・・・・・・・・・・・・・・・・… (15)
(2)TL=Tcの時
(1/2)exp{to/(TLTc)i/2}=1−to/(TLTc)1/2… 一・・(16)
(3)TL<Tcの時
(1/2)exp (to/Tc) == cos((to/Tc) ・ {(Tc−TL)/TL} 1!2)
一 {TL/(Tc−TL)}1/2 sin((to/Tc)
× {(Tc−TL) /TL} i/2) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・… (17)
3 転流限界範囲の改良
前章で考察したFig.1の回路は,実験的検討の結果電 源電圧が低い場合,堺流リアクトルL=100(μ正∫)とする
と,墨流コンデンサの容量を相当大きくしないと上流失敗 してしまうことがわかった。コンデンサの容量を大きくす ると,転出損失が増して好ましくない。転流失敗の原因の
1つとして,転流時に転流コンデンサから放電される電流 が,コンデンサ〜転流リアクトル〜SCRの閉回路のみな らず,コンデンサ〜負荷〜電源の閉回路にも流れ,コンデ ンサ電圧が,早く放電されてしまい,それによって,十分 なターンオフ時間(逆バイアス時間)が得られなくなり,
負荷の値によっては転流失敗を生じてしまうということが 考えられる。
Pl拓 P4 i
P−3
@ C1
s−i
@X
ウ1
0 『戸% ρ一ユ
pl C2o−4・
3@乙2
@¥
r−2
Fig. 3
そこで,筆者は,Fig.3のように1補助整流器D−3,
D−4をどりつけた。この回路のことを以下,補助整流器 形回路と呼ぶことにする。電源電圧をFig,3のようにとっ て説明すると,補助整流器があるために,いったんコンデ ンサに充電された電圧はE以下にはならない。そして,転
流時にも補助整流器があるために,コンデンサ〜負荷〜電 源という閉回路に放電電流は流れなくなり,コンデンサ〜
転流リアクトル〜SCRの閉回路にのみ流れるということ になって,コンデンサに充電された電圧は,転流リアクト ルにのみ加わるということになる。
いしはオフのどちらかに決めつける手段として,
ターンオフさせる時に,直接関係ないものを省略すること にした。具体的には,P側電圧源〜コンデンサ〜負荷〜中 間タップ電源の閉回路に流れる電流は,直接ターンオフに は関係ないので,大胆に負荷をとり去った。そうすると期 間Bの等価回路は,Fig. 4のようになる。ここで, Fig.4 においてS−2の点弧によりS−1が消賦した時刻を時運 の原点にとると,次式がなりたつ。
3−1 補助整流器形回路の動作解析
3−1−1動作理論 理論解析を簡単にするための理想化 した仮定は,Mc Murray回路の場合に準ずるものとす
る。
期閥A 制御整流素子S−1,補助整流器D−3が通電 していて,P側から電力を負荷に供給している。
転流リアクトルの 抵抗 は無視しているので,
点Zの電位は,点Pの電位になる。コンデンサは Eに充電されている。
期聞B 今流のため,制御整流素子S−2がゲートさ れ, オン状態 になり,点Yが直流電源の負母 線Qの電位になる。転流コンデンサC2の電圧は,
急に変化できないため,転流リアクトルL2の端子 ZYに加わり,それが, XZに誘起するので, S −1を逆バイアスし,ターンオフする。ターンオ フ直前にS−1に流れていた電流Ieは転流リアク トルのエネルギーを保存するため,S−2に等流 される。
前述のMc Murray回路では,コンデンサ〜負 荷〜0(?間電源の閉回路にも,放電電流が流れた が,この補助整流器形回路では,補助整流器D−
4があるため,放電電流は流れない。
期問C 帰還整流器が導通状態になった時から始まる。
コンデンサ端子電圧がゼロとなった瞬間に,転学 リアクトルに誘導電圧が生じ,補助整流器1)一4,
帰還整流器D−2を通して,循環電流が流れる。
期間Aノそして,D−2がオフとなり,回路状態が定常 的になった時が,期間Atの始まりであり, S−1 のゲートにトリガが入るまでこの状態が続く。
3−1−2転流時の解析 期間Bが転回期間である。しか し,このままでは,補助整流器D−4の取扱いに困難を生 じ,方程式をたてにくいので,この補助整流器を,オンな S−1を
ただし,図において,転流直前のコンデンサ端子電圧を Eとし,転流直後に,S一一1を流れていた電流が転流リア クトルに誘導される初期電流をloとした。
T
E
一一一 鼈鼈黶f一一t
こ・ lc
i E
一.一一一.一..一1 C
とおくと,
一(1/x)sine+cose=1/2
となる。
一←▼ム丸一ll▼II一 謹 ミコし一 ︶一桝﹁+評−
............・・・・・・・…@一(28)
4 実験結果と考察
4−1 回路各部の波形
(a) (b)
Fig.4解析を行なうにあたり, V(〇+)=Eとしている。
一E一=(1/C)fiidt十(1/C)fiidt十(1/C)fi2dt一・・(18)
O一(1/C)fiidt十(1/C)fi2dt十Ldi2/dt・・・・・・・・・… (19)
ラプラス変換して整理すると,
O一 {2/(CS)} li十 {1/(CS)} 12 ・・・・…一…一・一…一一・・ (20)
(E/S)十LI,一 (1/(CS)} li十 (LS十 {1/(CS)} )12…(21)
ここで,転流期間に,転流リアクトルを流れる電流の式 を求める。
12−lo(((S+ {E/(Llo)} )/(S2+ {1/(2LC)} ))〉…一一・(22)
2C=C ,1/(LC )1/2・=wとおくと,
12 一lo( {S/(S2十w2)} 十 (E/lo)
X(Cノ/L)1/2{w/(S2十w2)}〕 ・。・・。・・・・・・・・・・・… 一(23)
ラプラス逆変換すると,
i2=Io {coswt十 (E/lo) × (C /L)!/2 ×sinwt} ・・・… 一・・(24)
転流期間での転流りアクトルしの端子電圧を求める。
eL=Ldi2/dt=一E{(∬o/E)〉く(L/C )1/2}sinwt 十Ecoswt ・・・・・… ■ny・・・・・・・・… (25)
さて,ここまでの解析から,S−1の逆バイアス時間が 求められる。すなわち,
Ldi2/dt==E/2 ・・一・・…@。… 。・鱒・… (26)
より,逆バイアス時間toは,次のように求められる。
一(lo/E)×(L/C )1/2sinwtc+coswto=1/2 ・・・・・・…(27)
ここで,
(E/lo)×(C /L)1/2==x, wto=e
(c) (d)
Fig.5(a)Mc Murray回路のコンデンサ端子電圧波形 (Fig.1でE=7(v))
(b)Mc Murray回路の負荷端子電圧波形 (Fig.1でE=7(v))
(c)補助整流器形回路のコンデンサ端子電圧波 形(Fig.3でE/2=7(v))
(d) 補助整流器形回路の負荷端子電圧波形 (Fig.3でE/2=7(v))
ただし,(a),(b),(c)および(d)いずれの場合にも 負荷は4.77(Ω),」L1=L2=100(μH), C1=C2=40(μF)
垂直軸10v/cm,水平軸5msec/cmである。
4−2 回路定数の変化
実験は,電源周波数/=60(H2),直流電源電圧PO=7
(V),転流リアクトルL=100(μH)という条件で行なっ た。その他の転流コンデンサCとか,負荷Rは,下記の如
くである。(ただし,この値はFig。6のみ。)
転流コンデンサCは,10(μF),20(μF),30(μF),40
(μF)そして50(μF),負荷Rとしては,2(Ω),3(Ω),4
(Ω),6(Ω),8(Ω)そして10(Ω)を用いた。
また,転流リアクトルの設計条件として,使用周波数領 域は,10(Hz)から500(Hz),可変電圧範囲は,0(V)から 50(V),電流容量10(A)があげられる。
Fig.6は,転流失三時の抵抗負荷の最小値と,転流コン デンサCとの関係を示したものである。この結果からわか ることは,いくぶん補助整流器形回路の方が,Mc Murray 回路よりも,転流限界範囲が広くなるということである。
また,コンデンサC=10(μF)の場合には,どちらの回路 の時にも,同じ負荷で,転流失敗しており,C=30(f)の 場合には,負荷にして1(Ω)の差しかない。それであるの
可変周波電源装置の改良(第1報) 佐 藤
to
s
6
一 カ︵ド︶
4
3
2
1
風
Fig.7は,回路定数を変化させた場合の転流時の測定値 および,式(28)による理論値を示している。実測値と計算 値との差は,本論文の動作理論のところで提示した仮定を 設けたこと,また,等価回路を設定する際,大胆に負荷を 除去したことなどによるものと考えられる。
.
\
ぺ べ
\
70L−t 一一一〇203040 so . c弘ρ
Fig.6−x一:McMurray回路の時の実験結果 一・一:補助整流器形回路の時の実験結果
5 む す び
以上,Mc Murray回路の転流限界範囲の改良という見 地から,その改良の一方式について述べた。
今後の問題点として,
(1) 改良回路を使用することにより,転流コンデンサ による転流損失は減ると思われるが,低電圧時に は,補助整流器の内部抵抗による損失の影響が予想 されること。
(2) 今回は,転流リアクトルの設計内容のため,かな り低い電源電圧でのみ実験を行なったが,100(v)
程度にまで電源電圧を上げて検討してみる必要があ る。
(3)等流時の解析は,非常に大胆にとりあつかってい るので,精密な解析を行なってみる必要がある。
この他に,まだ検討しなければならないことがあるが,
とりあえず,以上の事があげられる。
に,C=20(μF)の場合には,2(Ω)の差がある。これ は,負荷の測定間隔を2(Ω)と1(Ω)との両方で行なった ためと考えられる。転流コンデンサC=50(paF)の時,
Mc Murray回路は3(Ω)で転流失敗しているにもかかわら ず,補助整流器形回路では,使用負荷最大の2(Ω)でも転 流失敗しなかった。しかし,Fig.6の結果だけからいえる
ことは,あまり限界範囲の差はないようである。
最後になりましたが,本研究において,Mc Murray回 路のうちの転子時の解析の部分は,筆者が,岐阜大学在学 中に行なったものであり,その際ご指導いただき,また 本論文を読んでいただきました同大学工学部梶田晋作助教 授,ならびに,常日頃よりお世話になっている大阪工業高 等専門学校小寺正暁校長に深謝の意を表します。また,終 始激励していただきました本校福井佐市,富田信昭両教授 に感謝致します。
司?匙︶ 畢 文 献
。.t
/2
/づ::フ拷
(1) W. Mc Murray & D. P. Shattuck : Commun. and Electronics, No. 57, 509 (1961−11)
(2)宮入,常広:電気学会誌86,931(昭41)
(3) 大野,赤松=三菱電機技報38No.6(昭39)
10 /ρo
岳拝
Fig.7 −x一:実測値 一・一:計算値