研究調査報告
変分法による過渡現象の一解釈*
富田信昭**金子一宗**矢野健三**
(昭和45年9月30日受理)
One interpretation of the transient phenomena by the variation
Nobuaki ToMiTA, Kazumune KANEKo and Kenzow YANo
(Received September 30, 1970)
The fundamentals of the present day s automatic control are the system indications by the state variable form.
In this research, by the use of these state functions the authors investigated for that what behaviors they take.
In chapter 2, we stated for the networks that consist of resistances.
In chapter 3, we showed the treatment on general networks which is more devoloped than that in chap−
ter 2.
In conclusion, then, we find that the transient phenomena behave as they minimize the circuit energy.
1 序 論
受動回路網における状態方程式のみちびきかたはには,
種々の方法がある〔1〕一〔4〕。ここでは,そのようにしてみ ちびかれた状態方程式により過渡現象をながめたとき,過 渡現象が回路のエネルギーを最小にするごとく,状態空間 におけるトラジェクトリをとることを述べる。ただし,回 路のエネルギーとしては,従来考えられたものよりは,よ
り広義のものをとる必要がある。
2 簡単な状態関数の解釈例 2・1単純なR回路の解釈
Fig・1におい.て,電流源より供給されるエネルギーは t
i・e,抵抗で消費されるエネルギーはGe2/2である。そこ で両者の差g(e)を考えると
q(e)=Ge2/2−ise (1)
である。そして,g(e)の最小値は
dg!de=Ge−is=O (2)
から求めることができる。
十
令
S
七 e R・毒
Fig.1
9
̀6
佛e),
ue}=Ge
︐
=し8
鴨 ⁝5
i e
⁝
* 昭和45年度電気四学会中国支部連合大会受付 料 電気工学科
Fig.2
一方,(1)式の関数g(e)を図示するとFig・2のごとく であり,このg(e)を極小にするeを求めると,(2)式よ
一75一
津山高専紀要 第3巻 第1号(1970)
りe=・i・/Gで,これはFig.1の回路のeを示している。し たがって,Fig・1の回路を解くことは,、(1)式の極小値を 求あることと等価である。すなわち,Fig・1の回路は(1)
式のg(e)を最小にするごとく動作する。
2・2 2・1の一般的議論 Fig・3に示す回路において
Ge==ls (3)
が成立する。ここで,Gはn×nの接続マト ijックス,1・=col(i・1,
i・2,……, i・n),e=co1(e・, e2,……,en)である。
Fig.3
ただし,i・・, i』2,……, i・nは節点1,2,……,nに流入す る電流で,e1,e2,・…・・,enは基準点と節点1, 2,……tnと の間の電位差である。
そこで,次め関数を定義する。
F(e)== eT Ge−2eTls
ここで,この関数を表現を変えて表わせば
ロ コ ロ
F(e)=ΣΣGki ek ei−2Σek i・k
k..1i==1 k=1
となる。ただし,Gki = Gikである。
(4 )式をekにて偏微分すれば ロ
∂F(e)/∂ek=2ΣGki ei−2i、k i=三
となり,(5)式を零に等しいとおけば ロ ΣGki ei・=i・k
i=1
が得られる。ただし,k=1,2,……, nである。
(6)式をもとの表現形式で表わせば
Ge=Is
となる。
よって,(3)式の解は(4)式を極小とするものである。
さらに,双対の理を用いると,以上の議論は F(1)一1 RI−21TEs
め場合についても,そのまts成立するものである。
3 状態方程式による一般的取扱い ここでは,状態方程式を導入し,2章における議論をさ らに拡張させる。
状態方程式を
x(t)=Ax(t)十Bu(t)
とする。ここで,Aはn×nのマトリックス Bはn×rのマトリックス x(t)はn次元の状態ベクトル u(t)はr次元の入力ベクトル
x(t)はx(t)の時間微分 である。
この場合,次の変分
・∫:・・(・)(A・(・)+B・(・))・t・ =・
を考える。
対角行列である。つまり
x・(t)0……一・・0 0 x2(t) i
xk(t) == i \、、 … i Xn−1(t)0
0…………Ox・(t)
である。
(8)
(9)
ここでxk(t)はX(t)を対角要素にもってきた
今,F全xk(t)(Ax(t)+Bu(t))とすれば,(8)式が成 立する場合には,
F = xk(t) x(t) (10)
(4) となり,(9)と(10)よりオイ.ラーの方程式は
蓋( δF/δx)一・F/・xk ・・ . (・・)
(4 ) .
が得られる。(11)式はx(t)x(t)のいかんにかかわらず成 立するものである。
したが6て,(8)のトラジェク.トリはいかなる場合に も,Fが極値をとるごとく動いてゆくことになる。
(5)
4 Fの例について
4・1L−R直列直流回路
(6)
・の回路の微分耀式は・辞…一Eである・
この場合
F=ii=(一Ri2十iE)/L (12)
(6)
が得られ,(12)式は(7)式と同様なことを表わしているこ とがわかる。また,(12)式の物理的な意味は明らかであ る。
すなわち,電源Eから与えられるエネルギーと,抵抗で
(7) 消費されるエネルギーとの差を最小にするごとく,電流の 過渡現象が生じることになる。
一76一
変分法による過渡現象の一解釈 富田・金子・矢野
4・2LRCを含む交流回路 Fig.4において
欄
とし,コイルL1, L2に流れる電流i1, i2,コンデンサー も, も2
十
t磨j e i
R L
c
v
L, 聾
Fig.4
Cの両端の電圧vを状態変数とすれば,このときの状態方 程式は
一R/Ll O 一1/Ll)
A一=1 O O 一1/L2 (1/C 1/C O
画1囲轡・全〔二
を用いて表わされる。
したがって
Fi=(一R i? 一 ii v十 ei ii)ILi (13)
F2=(一i2 v十 e2 ii)IL2 (14)
F3=(il v+ i2 v)IC (15)
が得られる。
(13),(14),(15)式も(7)式に対して(ユ2)式と同様な対 応関係を示していることがわかる。
5 結 論
従来,受動回路網のエネルギーとしては 磁気エネルギーとして
l n T=一1}一j!1 Ljk ij ik k=1 位置エネルギーとして l n
U=tj ;, Sjk qj qk k=1 t消費関数として l n Z] Rjk ij ik
F=
2 j==1 k=1
が考えられているが,(13),(14),(15)式に示す諸量は,
もっと直接的な意味があり,ここで述べたことは,単に回 路の解析的見かたから表言したものではなく,回路のエネ ルギーが極値をとるごとく過渡現象が発生することに焦点 をおいている。したがって,それぞれの回路は個々に状態 変数を含む情報系モデルとして発展され得る可能性に注目 されるところがある。
参 考 文 献
(1) P.R Bryant, The explicit form of Bashkow s A matrix , Trans. IRE Circuit theory, vol. CT−9,
Sept. 1962
〔2〕L.Chua and R. A. Rohrer, One the dyna皿ic equations of a class of nonlinear RLC networks , IEEE Trans. Circuit theory, Vol. CT−12, December 1965
(3) Balabarian, Bickart, ・Seshu, Electrical Network Theory John Wiley & Sous lnc,, 1969
(4) J. Meisel, State Equations of Electrical Networks from a Lagrangian Formulation, Trans. IEEE Circuit Theory, Vol. CT−16 May 1969
〔5〕電気学会,電気回路論,123−125,1970
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