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基・安藤正昭・大冨京子・高橋恒雄

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(1)

−−−一−−−−

−53−

学生相談に対する高等専門学校学生の意識

渡部 基・安藤正昭・大冨京子・高橋恒雄

Students'ConsciousnessofCounselingforStudentina CollegeofTechnology

MotoiWATANABE MasaakiANDo KyokoOuToMI TuneoTAKAHAsHI

(平成2年10月31日受理)

Emotionalhealthhasbeenfocusedoninthecourseofhealtheducationinschool inrecentyears,andthefacultyincollegesoftechnologyhavegraduallyrealizedthene̲

cessityofcounselingforstudentsinthecolleges.

Thepurposeofthisstudyistoclearstudents'consciousnessofthecounseling.An

inquirysurveywasmadebyquestioning771studentsinanationalcollegeoftechnology

inAkitaprefecture,Japan・Themainresultsareasfollows:

1)Morethanhalfofthestudentshavesomeanxiety,e.9.,theirfutures,economicalpr̲

oblems, studyandsoforth. Itisoftenthecase, however, thatstudentsleavetheirpro̲

blemsastheyareanddonottrytosolvethem.

2)Morethanseventypercentofthestudentswhohavenotbeensatisfiedwiththeplace ofthecounselingroomgivethereasonthattheyareafraidthatothersmaynoticethem goingtoseeacounselor.

3)Studentswhohavewantedtogotothecounselingroomhavethoughtmorestrongly thanstudentswhohavenotthatthedatewhenaprofessionalcounselorcomes (mainly Wednesday3:00pm.‑5:00pm.)shouldbechanged,andthatteachersmustbemoresuit̲

ableforthecounselingthanprofessionalcounselors.

4)Commutingstudentshave thoughtmore stronglythandormitorystudentsthatthe counselingroomshouldbeopeneveninalongvacation.

ながら,その保健室で学校保健活動の中核となるべ き養護教諭は,高専では設置することになっていな

い。代わって,高専の保健室には「学校教育法」に

より,その他必要な職員として看護婦の資格をもっ

者を置いているのが通常である。このことは,高専

における学校保健活動が保健室担当者の意志とは別 に,救急処置などの医学的機能に偏り,教育的機能 が希薄にならざるを得ない可能性を含んでいる2)。

こうした中で,新学習指導要領が公示され,小学 校(保健領域) ,中学校(保健分野) ,高等学校 (保健科)で心の健康が大きく組み入れられるなど,

学校における心の教育が重視されてきている。

高専においても例外ではなく,高専学生における

心の健康問題が徐々に注目されつつある3)4)。例え

I.はじめに

学校保健活動の中で,子どもの養護をつかさどる 役割を担う者として最も重要と考えられるのが,養 護教諭である。養護教諭は「学校教育法」によって,

小学校から中学校・高等学校・特殊教育諸学校に設 置しなければならない,あるいはすることができる とされている。また, 「学校教育法施行規則」及び

「学校保健法」によって,養護教諭がその専門的職 務を遂行するための本拠となる場所として,保健室 の設置が義務づけられている')。

一方,高等専門学校(以下,高専と称す)におい ては,「高等専門学校設置基準」及び「学校保健法」に よって,保健室設置が義務づけられている。しかし

平成3年2月

(2)

−54−

渡部基・安藤正昭・大冨京子・高橋恒雄

ぱ,門秀信は高専の5年間一貫教育による功罪, 15 才〜20才までという少年期から青年期への移行期で の問題などを挙げ,高専における心の健康管理の重 要性を指摘している5)。

そうした問題に対応しつつ,先に述べた高専にお ける学校保健活動の教育的機能を補うべく,中でも 心の健康に大きく関わる学生相談を行うところとし て,学生相談室(以下,相談室と称す)を開設して いる高専が多い6)。

例えば,筆者らの勤務する秋田高専においても,

1983年6月より相談室を開設、1990年度には相談室 規則を正式に設け,室長以下4名の常勤教職員と2 名の学外カウンセラーが配置されている。

こうした相談室を適正かつ効果的に運営するため には,対象となる学生が相談室及びその活動に対し て,どのような意識をもっているのかが重要なかぎ となる。言い替えれば,学生ができるだけ利用しや すい形で運営されてこそ,初めて相談室及びその活 動の意義が生まれるものと考えるのである。

しかし,各高専紀要や『高専教育』等を見る限り においては,高専学生を対象として従来の調査は,

その一部として悩みごとの有無,相談相手,解決法 を扱った研究7)8)9)10)11)12)がみられるのみで,相談 室及びその活動を中心に取り上げた研究が見あたら ないのが現状である。

そこで,本研究においては,相談室の適正かつ効 果的な運営を目指し,高専学生が相談室及びその活 動に対して, どのような意識をもっているのかを明

らかにすることを目的とした。

2)校内相談室への利用経験 3)学外の相談機関への利用経験 4)相談室の場所に対する意見 5)相談室の開室時間に対する意見 6)相談室の開室曜日に対する意見 7)長期休業中の相談室の開室希望 8)相談室のカウンセリングの適任者 9)相談室への今後の利用意志

なお,データ処理にはNECPC‑9801RXを使用 し,有意差検定にはX2検定を用いた。

Ⅲ、結果並びに考察

(1)悩みごとの有無とその対応

全校のうち, 2人に1人以上の者が何らかの悩み を抱えている。その内容について見ると,最も多い のが「進路」 ,次いで「経済」 「学習」である(表 1 :悩みごとの内容については複数回答)。さらに,

その対応について見ると, 「誰にも相談しない」が 最も多くみられ,次いで「同じ学校の友人に相談す る」 「担任の先生に相談する」 「相談室のカウンセ ラーに相談する」である(表2)。

その中で,特に「相談室のカウンセラー」を相談

悩みごとがある

と答えた者 1位

1年 学習

、二83 50.8

2年 学習

N=103 45.6

3年 経済

%=84 32. 1 4年 遭路経済 剤=48 33.3

5年 迫路

N=1 11 65.8

全体 道路

V=338 84.8

表1

2位 ゞ3位

異性 経済

34.9 27.7

通路 経済

32 31.1

進路具性 20.2

学習具性 16.7

具性 経済

27.9 25.2

経済 学習

48.8 20.4

学年別悩みごと

4位 同性友人 26.5 具性 29. 1

スタイル 17.9

5位 進路 25.3 性格 23.3 身体クラフー 性幡15.3 身体 14.8 性格 12,6 性格身体 18.3

Ⅱ、方

身体 18 具性 19.2

(%)

本研究は1990年5月下旬秋田県内国立A工業高等 専門学校学生を対象に,多肢選択質問紙法を用いて,

体育の時間(於:体育館)で各クラス毎(5学年4 学科,欠席者を除く)に,回答の信頼性を高めるた めの無記名,各々2rn以上の間隔を開けて記入させ るなど種々配慮をして実施した。対象者数,回収数,

有効回答数,有効回収率は以下の通りである。

調査項目については,次の9項目を設定した。

1)悩みごとの有無とその対応

悩みごと

の延べ散 1位 2位 3位 4位 5位

寮同学校友人 担任 カウンセラー 同学科先生

相麟しない

、=387 20.9 9 8.5 7.2

自宅相麟しない同学校友人中学校友人 担任 カウンセラー

N=488 28.2 15.5 7. 1 6.9 6.7

下宿・ アハ ート 相麟しない岡学校友人中学校友人 担任 堕形外科医

N二46 34.8 26.1 8.7 4.3

全体相麟しない同学校友人 担任 6ウンセラー 中学校友人

N=899 24.3 18.4 7.7 7.2 6.9

( 『相膜しないj以外は相膜相手を示す)

表2 学年別悩みごと対応の方法(%)

ロ収 有効回答数 | 有効回収率

718 93.0

53 100.0

−−−−.一指一一‑.‑....‑.・−−−−−−.−.−..−

771 93.5

対象者数 男子 772

女子 53

736 53

秋田高専研究紀要第26号

一℃』

(3)

一●==−一一−一 −一一▲一 一一一−一一 L一

−55−

学生相談に対する高等専門学校学生の意識

相手として選んだ者について学年別に見ると, 、1年 生及び3年生で多く見られ, これらの学年では相談 室のカウンセラーが相談相手としての信頼性が高い

ことを示している。

さらに,悩みごとの有無について学年別に見た場 合 5年生が他学年に比して悩みごとを持つ割合が 有意に高い(図1)。そこで,特に5年生に注目す ると,悩みごとの内容で最も多いのが「進路」で,

次いで「異性」 「経済」と続いている。また, その 対応については「誰にも相談しない」ことが最も多 く, 「同じ学校の友人に相談する」 「担任に相談す

田卵配氾函麺妃麺記旧8

慨みごとの有題

住居

圀ある園ない園NA

住居別悩みごとの有無

P<0. 05

図2

悩みごとがある と答えた看

X=185 自宅 N=246 下宿 アパート N= 18 全体 X=338

表3

田知的油田麺妃郵調旧8

1位 2位 3位

逸路 異性 学習経済

43 32.7 32.1

逸路 経済 学晋

32.9 27.6 24

道路 性格 スタイル

44.4 38.9 33.3

造路 経演 学習

64.8 48.8 20,4

住居別悩みごと(%)

4位 5位

性格 19.4 身体 13.9 学習具性 22.2 性格身体 18.3

悩みごとの有無

異性 23.2 経済 27.8 具性

19.2

図ある因ない園NA P<o・ oo1

図1 学年悩みごとの有無

悩みごと

の廷ぺ敵 1位 2位 3位 4位 5位

1年同学校友人相陵しない カウンセラー 中学校友人 担任 11 10.2

N=210 20.5 17.1 9.5

2年相麟しない同学校友人中学校友人同学科先生 担任 ンセラー

22.4 9.3

N=248 25 7.7 6

3年相陵しない同学校友人 担任 カウンセラー 異学校友人 N言158 39.1 13.5 6.4 5.8 更形外科医4.5

4年相麟しない同学校友人同学科先生その他友人中学校友人

N訂79 27.8 12.7 、 7.6 6.3 5.1

5年相腰しない同学校友人 担任同学科先生 一力 セラー

N=206 18.2 17.3 ;0.7 9.2 8.3

全体相膜しない同学校友人 担任 ンセラー 中学校友人 N=899 24.3 . ‑ ‑=TM '‑7.7 7.2 6.9

( 「相麟しない」以外は相麟相手を示す)

表4住居別悩みごとの対応方法(%)

る」が続いている。 5年生は最終学年であると同時 に就職あるいは進学の意志決定をしなければならず,

進路に対する関心が大きく高まっているときだけに,

それを反映した結果になったと言えよう。

また,悩みごとの有無について住居(寮・自宅・

下宿.アパート)別に見た場合,寮生が他に比して悩 みごとを持つ割合が有意に高い(図2) 。そこで,

寮生に着目すると,悩みごとの内容で最も多いのが

「進路」で, 「異性」 「学習」 「経済」が続いている (表3)。また,その対応については,最も多いの が「同じ学校の友人に相談する」及び「誰にも相談 しない」で,次いで「担任」 「カウンセラー」が続 いている(表4)。さらに相談相手として「同じ学 校の友人」を選んだ者だけで見ると,寮生が全体の

半分近くを占めている(47.9%)。

今回の調査では,寮生の相談相手として,どのよ うな種類の「同じ学校の友人」であるか,例えば,

自宅生なのか,同じ寮生なのかについては明らかで ないが,おそらく同じ寮生である場合が多いものと 思われる。つまり,寮生同士が互いの相談相手とな り,寮生活での交友関係が強く結びついていること

を示すものであろう。

さらに,高専学生と高校生との差,及び地域の差

について見るために,同様の調査が行われた第2学

年で比較すると,悩みごとの内容については同県内 の高校生13)及び他県内国立T工業高専学生14)のど ちらもほぼ同様の傾向を示していた。しかし,その 対応については,高校生及びT工業高専学生がどち

らも「同じ年齢の友だち」及び「今の学校の友だち」

に相談するというものが最も多かったが,A工業高 専学生は「相談しない」というものが最も多く,A 工業高専学生と高校生及びT工業高専学生との間に 若干の違いがみられた。こうした結果は,本研究の 対象学生が自らの力で悩みを解決したいという気持 ちが強いのか, 自分の悩みを話せるほど信頼の置け る人がいないのか,あるいは自分の悩みを他人に話

すことが恥ずかしいのかは明確ではない。いずれに

平成3年2月

Lム

(4)

一一一一一

−56−

渡部基・安藤正昭・大冨京子・高橋恒雄

せよ,A工業高専学生が自分の悩みに対しては内向

的なようである。

遠すぎる

(2)校内相談室及び学外の相談機関の利用経験 校内相談室及び学外の相談機関の利用経験につい ては,校内相談室へは14名,学外の相談機関(電話 相談を含む)へは11名が利用経験があるとしている。

その時の相談内容は「性格」 「進路」などがあげら れている。さらに,その学年構成を見ると,校内相 談室へは1年生及び3年生が最も多く (28.6%) , 一方,学外相談機関へは4年生が最も多く見られる (45.5%)。また,相談室への利用意志別に見ると,

利用したいと思う者が校内相談室の利用経験者の中 で3割にも満たない(28.6%)。

校内相談室にまた行きたいと思っている者が3人 に1人にも満たないという結果は,注目すべき事で あろう。それらの者がもう行く必要を感じなくなっ たのか,あるいは,誰かに相談はしたいが校内相談 室へは行きたくないのかは今回の調査からは明らか でない。しかし,校内相談室利用経験者にその時の 相談室の雰囲気を尋ねたところ, 「利用しづらい」

「はいりにくい」などの回答があり,校内相談室利 用経験者に対して好印象を与えていないことは確か なようにある。今後,そのような好ましくない印象 を与える原因の究明が必要である。

ぐわかる(84.詮)

図3相談室利用希望者の相談室の場所を 不満に思う理由 N=19

ろ学生相談であると他人に知られたくないという学 生の気持ち,すなわち学生相談を差別する気持ちが あるということである。少年期から青年期へ移行す るこの時期の学生は, 自己を確立するための発達課 題に対する挑戦と挫折の繰り返しである。そして,

その結果として,様々な悩みが学生の中に生まれて くるはずである。つまり,悩みを持つことは当然の 結果であり,そうした挑戦と挫折の繰り返しを支援 するものとして,学生相談室が存在しているわけで,

そうした差別意識は学生相談にとって大きな障害に なるとも考えられる。

したがって,学生相談を差別する学生の意識を改 革して行くことも,今後の学生相談室活動における 重要な課題の一つとなるだろう。

2) 「開室曜日」については,全校のほとんどの 者(92.2%)が「いつでもよい」あるいは「今のま まがよい」と回答している(現在の開室曜日は原則 として水曜日)。しかし,相談室への利用意志別に 見ると,今後利用したいと思う者の方が利用しない

と思う者に比して,開室曜日を変えてほしいと有意 に考えている(図4)。その変更の仕方は, 「開室 曜日を増やす」というものが9割近くを占めている (89.3%)。また,その理由としては,相談室利用希 望者の3人に1人が「クラブ活動と重なることが多 い」を挙げている。また,その他の理由として代表

的なものを挙げると次のようなものである。

「相談のある人の気持ちがまとまったとき(決心 がついたとき)に行くのだから,特定の日であると

少しふんぎりがつかないと思う」

開室してほしい曜日については,相談室利用希望 者の7割以上(70.6%:対希望する曜日を回答した 者のみ)が「土曜日」を希望している。

一方, 「開室時間」については, ほとんどの者 (91.6%)が現在の開室時間(15:00〜17:00)がよ

(3)相談室の場所・開室曜日と時間・長期休業中 の開室に対する意見

1) 「場所」については,全校の9割近くの者が 満足している(87.4%)。一方,不満に思う者につ いて見ると,その理由として挙げているのが, 7割 以上の者(72.2%)が, さらに今後相談室を利用し たいと思う者に限定すると, 8割以上の者(84.2%)

が「学生相談だと,他人にすぐわかるから」である (図3)。

国立A工業高専の相談室は校地南西に位置する厚 生会館の2階保健室隣にある。三品克彦らの調査で も,学生相談室及びそれに準ずるものを開設してい る高専のうち, 8割近くが福利厚生施設等の校舎と 離れた別棟に置いているとしており15), 高専の学 生相談室は福利厚生施設の中に位置する場合が多い わけである。確かに,福利厚生施設は必然的に人の 出入りが多くなる所であるため,学生相談に行くの ではないかと他人が気づく可能性が高い。しかしな がら, ここで考えるべき事は,人の出入りの激しい ところに学生相談室を置くことの是非よりも,むし

秋田高専研究紀要第26号

凸一

(5)

−57−

学生相談に対する高等専門学校学生の意識

田閉配氾聞鋤姻刃都旧8 四月

"f:"

0−0今

■■︾IハーロⅡ且酉0 Ⅱ L

15:00

擁二鱸 7:001 13:001 1

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相承室への利用意志%

醒医…

群細蝉

謬溺"ゞ 燃

いつでもよい 今のままがよい 変えてほしい

N= 183 N=228 N=54

問塞9日に対する意見

回利用したいと思う函どちらでもない園利用しないと思う圃NA

P<0. じ0 1

図4 開室曜日に対する意見別 相談室への利用意志

=========

=========

1年: 。 ‑ ‐ ・ 2年:−3年: −−.−. 4年:肥入者なし 5年:−

表5 開室希望時間(記入者22名)

いと回答している。 しかし,相談室への利用意志別 に見ると,今後利用したいと思う者の方が利用しな いと思う者に比して,開室時間を変えてほしいと有 意に考えている(図5) 。その理由について見ると,

最も多いのが「短すぎる」 (32.0%)で,次いで

「クラブ活動と重なることが多い」 (28.0%)が続 いている。また,希望する時間帯として集中してい るのは, 「15:00〜19:00」である(表5) 。

たものの, クラブ所属者の方が無所属者に比して,

相談室を利用したいと考える割合が比較的高い傾向 にあることも注目すべきことであろう(X2=5.7234 df=2)。

いずれにせよ,相談室の今後の運営に際して, ラブ活動と相談室の運営が互いに障害とならないよ うに, さらに利用者の意見も尊重しながら, 日程や 時間を調整していくことが大切であろう。

3) 「長期休業中の開室」については, 「開室し てほしい」と回答した者が全校の2割に満たない (14.7%) 。しかし,相談室への利用意志別に見て も,今後利用したいと思う者の方が利用しないと思 う者に比して,開室してほしいと有意に考えている (図6) 。さらに,住居別に見ても, 自宅生の方が 寮生に比して,開室してほしいと有意に考えている

(図7) 。その理由としては, 「休み中に悩みがあ

ると困る」 「人目を気にしなくてよい」が上位を占 めている。また,開室してほしい長期休業について

は,希望する長期休業を回答した者の中で相談室利 用希望者の6割以上(65.7%)が「夏休み」を希望

している。

国立A工業高専の学生寮は長期休業中に閉寮とな

り,調査対象の3割以上を占める寮生は全県各地の 自宅へと帰ることになる。したがって,休み中でも

学校に行ける可能性の高い自宅生の方が, その可能

性の少ない寮生よりも長期休業中の開室を強く望ん でいるという結果であろう。そして,休みの中でも,

最も長く時間的に余裕がある「夏休み」を希望する 者が多かったものと思われる。しかしながら, その

理由の中で「人目を気にしなくてよい」が多く挙げ られており,前述の相談室の場所を不満に思う理由 と同様に学生相談に対する差別意識がここにも見る

囲配的氾函即姻麺鋤佃9

一ず弓.冒孟

同室時間に対する音筧%

81

J=144 N=420

相談室への利用意志 因変えてほしい閣今のままでよい

N=200

鬮NA

P<(). 00

図5 相談室への利用意志別

開室時間に対する意見

開室曜日や時間を変えてほしいと考えている相談 室利用希望者が共通してかつ多く挙げている理由が,

「クラブ活動と重なることが多い」である。今回の 調査時点では,対象者の半数以上の者(58.2%)が 体育系あるいは文科系クラブに所属しており,相談 室に行きたくてもクラブ活動が忙しくて行けないと いう現状が浮き彫りにされている。このことは,開 室希望曜日や時間を見ても, クラブ活動に比較的影 響が少ない曜日や時間帯を選んでいることからも裏 付けられている。さらに, クラブ所属の有無別に相 談室への利用意志を見ても,有意差は認められなかつ

平成3年2月

禺馴巴

←的n曲

(6)

−58−

渡部基・安藤正昭。 大冨京子・高橋恒雄

8.2

F

訂.6

四卵銅花翰郭姻調記旧日

相談室への利剖用音王野%

配銅記氾配弱姻麺記旧8

砺二

最期休砦釆中の閲壹牽扣望%

『49.4燕 『抑

l5.…

〃12麹………

N=434専門家 職鱗『J=8鞍宮1 FJ=学外者1 90

カウンセラーとして適任と思う人

圀利用したいと思う團とちらてもないC利用しないと思う園NA

I〉<0 05

8 カウンセラーとして適任だと思う人別 相談室への利用意志

利 用したいと思う どちらでもない利用したいと思わない

N=144 N=420 N=ZOO

ネ鐵室への利用意志

因同室してほしい函同室する必要はない圖NA

P<O・ OOl

図8

図6 相談室への利用意志別

長期休業中の開室希望

いない。工業高専教官は普通高校の教諭とは異なり,

理・工学系の高専,大学及び大学院出身者が大半で,

カウンセリングなどの相談活動に関する内容につい て学ぶ機会は過去にほとんどない。 したがって, ウンセリングを専門に養成された者と比べると,教 官による相談室でのカウンセラーとしての活動は不 十分なものになってしまう可能性は否定できない。

1 1

囲銅的氾銘記妃麺麺焔日

開室茶望の有無%

1

また,学生の意見(自由記述) として,相談室は

「学校組織への組入れはよろしくない(秘密のもれ る事もある) 」というものも見られ, あくまで相談 室を学校と切り離してほしいという学生の意見もみ られる。とはいえ,前述のように,学校に関連した 悩みについては「教官」に相談したいという学生の 意識力〕あることも事実で,相談室のカウンセラーと して教官を任用するかどうかは,慎重かつ十分な論 議が必要であろう16)。

謬諺;鰯;諺

一 室

自宅 下宿・アパート

N=264 N=475 臆=32

1王居

圀開室してほしい囲同室する必要ばない園NA

P<O

図7 住居別長期休業中の開室希望

ことができる。

<対専門家>

<対教官>

(4)相談室のカウンセラーの適任者

「相談室のカウンセラーの適任者」については,

全校の半分以上の者が「カウンセリングの専門家」

(以下,専門家と称す)が適任であると考えている (56.4%) 。しかし,相談室への利用意志別に見る と,今後利用したいと思う者の方が利用しないと思 う者に比して, 「教官」が「専門家」や「学外者 (非専門家)」よりもカウンセラーとして適任であ ると有意に考えている(図8)。そこで, カウンセ ラーとして「教官」が適任だと思う者が「教官」に 対して相談したい悩みごとについて, 「専門家」の 場合のそれと比較して見ると,対「教官」が「進路」

「学習」 「寮」 ,対「専門家」が「性格」 「友人 (同性)」 「経済」である(表6) 。

現在,国立A工業高専の学生相談室のカウンセラー には,同県教育庁在学青少年教育指導員と精神科医 師の二人が交代であたっており,教官は任用されて

進路 10 性格 8

学習 8 友人(同性) 4

2 経済 4

性格 1 容姿 2

経済 1 2

クラブ活動 1 先生との人間関係 2

友人(同性) 1 家庭 2

先生との人間関係 l 学習 l

(K=83) 異性 l

(N=74)

表6 カウンセラーとして「教官」及び「専門家」が

適任だと思う者が各々に相談したい悩みごと(%)

秋田高専研究紀要第26号

(7)

−59−

学生相談に対する高等専門学校学生の意識

は保健主事と同様の役割を担っていると考えるこ とができる(宮地貫一: 「第1章第7節学生 の厚生補導等」 ,改訂新版大学事務職員必携,

pp、104‑105, 1985.)。

3)門秀信: 「高専における心の健康管理と学生相 談」 ,大学と学生,No.244, pp.30‑34,1986.

4)和歌山工業高等専門学校・厚生補導委員会プロ ジェクトチーム: 「昭和63年度教育方法改善研 究プロジェクト・工業高等専門学校における特別 教育活動の改善一学生生活の実態調査による課外 活動と生活指導」 ,p、 83,1989.

5)前掲3) ,pp. 31‑32

6)三品らの調査によれば, 1986年2月現在で国公 私立62高専のうち,回答があった53校中51校に学 生相談室あるいはそれに相当するものが開設され ていることが明らかとなっている。 (三品克彦,

他: 「高専における学生相談室の現状一学生相談 室に関するアンケート調査報告一」 ,高専教育,

No.10,pp.115‑122, 1987.

7)学生指導部: 「アンケート調査報告一高専生の 悩み・教師像を中心として−」 ,都城工業高等専 門学校研究報告,No.7,pp.192‑202, 1973年 8)竹屋哲弘,他: 「高専学生の学校生活への適応

について−とくに,高専学校,普通校生,工業校生 の比較を通して−」 ,鶴岡工業高等専門学校研究 紀要,No.17, pp.45‑75, 1982.

9)竹屋哲弘,他: 「高専学生の学校生活への適応 について一とくに,発達差,世代差を手がかりに して−」 ,鶴岡工業高等専門学校研究紀要,No.18, pp.95‑120, 1983.

10)有広圭司,他: 「呉高専学生相談室の沿革と活 動」 ,呉工業高等専門学校研究報告,Vol.22,No.

1,pp、 1‑12, 1986.

11)鳴海寛,他: 「本校学生の日常生活の実態の一 面」 ,学生相談室報,No.6,八戸工業高等専門学校,

pp. 25‑30, 1989.

12)鳴海寛他: 「本校学生の日常生活の実態の一 面」 ,学生相談室報,No.7,八戸工業高等専門学校,

pp. 34‑40, 1990.

13)秋田県養護教員研究会: 「心の健康に関するア ンケート調査報告」,養護,研究収録第21号, pp.

19−20,昭和60年度 14)前掲7) ,pp. 65‑66 15)前掲6) ,p. 116

16)高等専門学校の中には, カウンセリングを教官

1

に担当させている所もある。例えば,鶴岡工業高

Ⅳ.まとめ

学生相談室の適正かつ効果的な運営を目指し,国 立A工業高専学生が相談室及びその活動に対して,

どのような意識をもっているのかを明らかにするこ とを目的とし,多肢選択質問紙法を用いて実施した 結果,以下のことが明らかになった。

1)全校の2人に1人以上の者が何らかの悩みを抱 えており, その内容は「進路」 「経済」 「学習」

等が挙げられたが,そうした悩みごとは「誰にも 相談しない」という者が多い。

2)学生相談室の場所を不満に思っている者のうち,

7割以上の者が「学生相談だと,他人にすぐわか るから」を理由として挙げている。

3)今後学生相談室を利用したいと思う者の方がそ う思わない者に比して,開室曜日(主に水曜日)

及び開室時間(15:00〜17:00)を変えてほしい と有意に考えており,その理由としてどちらも,

「クラブ活動と重なることが多い」を挙げている。

4)今後学生相談室を利用したいと思う者の方がそ う思わない者に比して, また, 自宅生の方が寮生 に比して,長期休業中に開室してほしいと有意に 考えており, その理由として「休み中に悩みがあ ると困る」 「人目を気にしなくてよい」を挙げて いる。

5)今後学生相談室を利用したいと思う者の方がそ う思わない者に比して, 「教官」が「専門家」及 び「学外者(非専門家)」よりも相談室のカウン セラーとして適任であると有意に考えている。

脚注

1)通常,学校保健活動の中核となるべき常勤教員 としては,養護教諭と保健主事が考えられる。 かし,保健主事には一般教諭をあて, しかも学校 保健活動の調整役としての役割を期待されている

(「学校教育法施行規則」)こと等から,学校保 健の専門に携わる唯一の常勤職員は養護教諭であ ると考えられる(文部省体育局学校健康教育課編:

「第1章第6節学校保健関係職員」,遂条解説 学校保健法規集, p.5301)。

2)国立高専では,学生主事及び寮務主事が各々置 かれ,学生の厚生補導に関することを掌理するこ とになっている(「学校教育法施行規則」) 。ま た,一般の教官(教授あるいは助教授)がそれに あたることになっており,学校保健活動について

平成3年2月

(8)

一一句

ロ■■■■■■■■喝

−60−

渡部基・安藤正昭・大冨京子・高橋恒雄

等専門学校の場合,担任教官や指導教官との連携 の中での相談活動を目指し,昭和63年度では,学 年クラス担当制で1 .2年生は一般科目教官が,

3.4.5年生は専門学科教官がカウンセリング

を担当している(伊藤正之: 「本校学生相談活動 の概況」,学生相談室報告書,No.2,鎚岡工業高等

専門学校,pp. 52‑53, 1990.)。

秋田高専研究紀要第26号

.一一二唯一 一一一 一一

参照

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