景 気 循 環 と 利 子 論
阪 口 伸 六 郎
1.は し が き
公 定 歩 合 の 引 き上 げや 引 き下 げ を行 な うこ とに よって,景 気 調 整 の手 段 を '実施 して きたわ が 国 の金 利 政 策 に対 して
,一 応 の 整理 と反 省 をす る こ とに よ って景 気 対 策 の金 利 理 論 とで もい うべ き もの を考 え るのが 本稿 の 目的 で あ る が,併 せ て利 子 論 の金 融経 済 論 に おけ る地 位 と役 割 を探 究 してみ たい の で あ
る。
そ もそ も金 利 とは 理 論 的 に い え ば,資 金 の 需給 関 係 に よっ て決 定 せ られ, 資 金 の 需 給 を調 節 す る作 用 を もつべ き もので あ る。 しか し戦後 の 日本 経 済 の 現 実 は,慢 性 的 に 資金 の 需要 が 供 給 を 上 回つ て い る状 況 で あ った か ら,金 利 本来 の 調 節機 能 を 期 待す る こ とが 難 し く,金 利 の 資金 の動 きに対 す る効 果 や 企業 に対 す る影 響 を検 討 してみ る ときに,そ こに は問 題 と して 意 識す るな ん
らか の 矛盾 が 存在 しな い で もな い。
最近 日本 経 済 が 当面 す る問題 の なか で重 要 な事 柄 は 自由化 とい うこ とであ ろ うが,自 由化 と金利 との 間 には 密接 な関 係が あ る。 金利 問題 は 一 国 の経済 政 策 と して,ま た銀 行 経 営 上 よ りみ て極 め て重 要 な意 味 を もって い る こ とは 今 更 い うまで もない。 わ が 国 の金 利 は従 来 主 と して経 済 政 策 的 見地 か ら規 制 せ られ て きた ので あ って,こ の よ うな政 策 的見 地 は 人 為 的 に行 なわ れ て き た 傾 向が 強 い ので あ るが,最 近 の 自由化 と経 済 の正 常化 の進 展 と と もに,金 利
の正 しい あ り方 と もい うべ き金 利 政 策 の あ るべ き姿 に つ い て,理 論 的 に も検 討 を改 めて なす べ き段 階 に 達 した とい うべ きで あ る。
各 国 の金 利 水 準 は,そ の 国 の経 済 発 展 の程 度 ・資本 蓄 積 の多 少 ・利 潤 率 の
高 低 な どに よ って違 うの で あ る。 わが 国 の現 在 の 金利 水準 は 欧 米 諸 国に 比 し てか な り高 い といわ れ て い るが,こ れ は敗 戦 に よっ て 国富 が急 減 したた めで あ り,日 本 銀 行 の貸 し出 しの形 で 経済 発 展 に伴 な う必 要通 貨 を供 給 した こ と や,銀 行 の高 い 経費 率 が 資金 コス トを 引 き上 げ てい るた め で あ る。
今 日では 世 界 各 国 は金 利 政 策 に よ って経 済 の安定 的成 長 を達 成 せ ん と試 み て い るので あ るが,在 来 の わ が 国 の 金利 政策 を 基 本 的 に 検 討す る 必 要 が あ る。 重 ね て い うが,金 利 は根 本 的 には 資金 の需 給 関 係 に よっ て 自然 に決 定 せ らるべ き性 質 の もの で あ る。 現在 わが 国 の金 融機 関 の金 利 に 関 しては,臨 時 金 利 調 整i法に よ って法 的 に規制 され て い るが(昭 和22年12月13日 法 律181号
に よ る),そ れ 以前 は 明治 以来 利 息制 限 法(明 治10年9月11日 太 政 官 布 告66 号,明 治31年 法律11号,昭 和29年5月15日 廃 止)が 存 した の み で,そ れ 以外 は 全 く法 的 規 制 を 受 け て い なか っ た。
と ころで 景 気対 策 と して の利 子 政策 とい うこ とで あれ ぽ,そ れ は 動 態 分析 に た よ って行 なわ れ ね ぽ な らな い。 な ん となれ ば,現 実 の経済 現 象 は 常 に 動 態 的 で あ るか らで あ る。 殊 に利 子率 とい うものは社 会 的 ・法制 的 ・制 度 的 な
もの で あ る。 終 戦後 経 済 統 制 が後 退 して,自 由経 済 が復 活 す るにつ れ て,金 利 の機 能 と金 利政 策 の重 要 性 とが再 認 識 され,1950年 頃 か ら各 国 に お い ては
「通 貨 政 策 の復 活」 が 見 られ るに 至 った。 す なわ ち,金 利 政 策 を 中心 に した 通 貨 政 策 が 再 登 場 して きたわ け で あ る。 わ が 国で は 昭 和28年 秋 以来 景気 調 整
の た め に金 利 政策 を本 格 的 に用 い る よ うに な っ た ので あ る。
わ が 国 の金 融 構造 の特 色 は,周 知 の如 く金 利 が 資金 需 給 の実 勢 に 応 じて 自
由 に変 動 す る とい うメ カ ニズ ムが 非常 に制 約 され て い て,金 利 の 資金 需 給 調
節 機 能 が著 し く弱 め られ て い る こ とで あ る。 金 利 が 本 来 の機 能 を発 揮す る た
め に は,自 由 な金 融 市場 ・資本 市 場 の発 達 が前 提 とな るので あ るが,そ の よ
うな市 場 は発 達 してい な い ため に,金 利 体 系は 著 しい ア ソバ ラ ソス を呈 して
い るの で あ る。 この金 利 体 系 のゆ が み は,逆 に 資金 の流れ を ゆ が め て市 場 の
発 展 を阻 害 して い るの で あ る。 さ らに金 利 に対 して種 々 の人 為 的 な規制 が市
場 の発 達 を妨 げ,金 利 体 系 の ゆが み を深 め てい る。 自由化 とい うこ とは 経 済 統 制 の後 退 を意 味 す る もの で あ るな らぽ,市 場 法 則 に の っ と って 資金 の需 給 調 節 を行 な うこ とが必 要 とされ て くる。
そ れ では,通 貨 や 資金 の需 要 とか い うものは如 何 な る もので あ ろ うか 。 資 金 は 資本 と企 業 者 に よっ て動 か され る もので あ り,通 貨 需 給 は 金 融 と景 気 の 結 び 目を な して い るので あ る。 日本 経 済 の現 実 とそ の形態 とを 日本 的特 色 と して意 識 す る こ と と,そ して 近代 通 貨 理 論 とか近 代 金 融 理 論 とか いわ れ る理 論 の手 法 に よ って,わ が 国 の通 貨需 給 の現 実 と理 論 とを追 って み る必 要 を痛 感 す る次第 で あ る。
2.景 気 循 環 の 問 題
わ が 国 の経 済 の推 移 を振 り返 ってみ る と,景 気 論 争 が対 立 した議 論 を生 ん で常 にそ の繰 り返 しを続 け て きた が,必 ず し も 日本 経済 に即 した理 論 で は な か っ た 点を 注意 しなけ れ ぽ な らな い。 景 気 の動 き方 は,国 に よ り,時 代 に よ
ヒ
って異 っ てい る。 日本 経 済 の景 気 の動 き方 を,海 外 の 景気 理 論 で もってそ の ま ま当 ては め る こ とは よ くない し,そ の予 測 に おい て も然 りで あ る。 問 題 は 現 段 階 の 日本 経済 の特 色 が,如 何 な る理 論 に妥 当す るか を 見極 め る こ とに あ
るので あ る。
欧 米 の先 進 国 に 比 較 して,近 代化 合理 化 しなけれ ぽ な らな い分 野 が 沢 山残 って い るわ け で あ り,投 資 の機 会 が多 い し,社 会 資本 の充 実 を計 画 しなけ れ ば な らな い。 日本 経 済 の成 長率 が世 界 に 誇 るべ き所 以 の一 端 も,投 資 の機 会 が多 い た め だ と い って よい。 技 術 革 新 に お い て も 欧 米 なみ に 接 近 せ ん と し て,企 業 心 が 旺盛 で あ る点 がそ の原 因 の一 つ で あ ろ う。 更 に一 方 に おい て, 長 い間 貿 易 の管理 と統 制 に よっ て,封 鎖 的 な経 済 に よって高 度 の成 長 が 行 な わ れ た こ とも理 由 と して挙 げ るべ きで あ ろ う。景 気 循 環 を 消極 的悲 観 的 に 受 取 るマ ル クス 的恐 慌 論 もケ イ ンズ的停 滞 論 も,現 段 階 の 日本経 済 を説 明す る
り
に は 到 底 当 て は ま らな い 。 シ ュム ペ ー タ ー の 発 展 理 論 が 顧 み られ るべ きで は
なか ろ うか と思 われ る。 最近 の世 界 経済 の動 き と して,欧 州 共 同市 場 の如 き 地 域が あ る。 交 通 ・運 輸 ・通 信 の非常 な発 達 と技 術革 新 に よ り,国 際 経 済 の 問 題 も非 常 に深刻 に な って きてい る。 第 二 次 大 戦後 の世 界 経 済 は一 本 調 子 の 発 展 を とげ て きた が,昭 和37年 春 以来,世 界 経 済 の 曲 り角 とか 停 滞 とか が論 議 され 始 め た の で あ る。 国 際 金 融 の面 か らは 金 融 協力 が要 請 せ られ,国 際 収 支 の均 衡 を 図 るた めに 緊 縮 政策 を採 用 す る結 果,自 国 の経 済成 長 を圧 迫せ ざ るをえ ない。1950年 代 に 比 して,世 界 経 済 は 一 つ の調 整 期 にあ る とい って よ い で あ ろ う。 第 二 次 大 戦後 の世 界 経 済 の特 色 は,第 一 に 経済 の構 造変 化 とそ れ に伴 う技 術 革 新 の進 展 で あ る。19世 紀 の 古典 的 資本 主義 の時 代 は 国 内消費 を 犠 牲 に して投 資 を強 行 した が,現 在 で は国 内 の消 費 水準 の上 昇 が投 資 の 拡 大 を可 能 に してい るか ら,窮 乏化 理 論 は現 在 で は妥 当 しな い。 従 っ て,生 産 性 の 向上 は 失業 を もた らす もので は な く,完 全雇 用 を持 続 しつ Σ経 済成 長 が 可 能 で あ る。第 二 に,企 業 に おけ る経 営 と所 有 との分化 の進 展 で あ る。 こ こ
に 各 企 業 の経 営 計 画 も,全 産業 のそ れ と調 整 して行 われ る こ とに な り,19世 紀 の 自動調 整 作 用 に 代 って,均 衡 破壊 か ら均 衡 回復 作 用 の 活 動 が 働 く所 以 で あ る。
今 日の経 済 停 滞 には 国際 流 動 性 の 不足 が原 因 で あ る といわれ て い るが,ア メ リカ や イギ リス は ドル とポ ソ ドが 国際 通 貨 であ るた め に両 国 の経 済 負 担 は 大 き く,自 由諸 国 に おい ては バ ーゼ ル協 定 に よっ て協 力 してそ の 負担 を 除 去 せ ん とす る 申合せ が で きた ので あ る。 更 に今 後 の世 界 経済 は経 済 援 助 を通 じ
て低 開発 国 経済 の発 展 に 向け られ るで あ ろ うか ら,60年 代 の経 済 そ の もの は 新 しい 展 開が 考 え られ て然 るべ きで あ ろ う。
1958年 欧 州経 済 共 同体 が 結成 され て,6ケ 国 の相 互 間 の関 税 の引 下 げ ・域
内 貿 易 依存 度 の高 揚 ・域 内技 術 交 流 ・資本提 携 の高 度化 ・植 民地 後 進 国 の共
同 開発 を行 って,経 済 の 統合 と政 治 の統 合 を 目的 とす るに 至 り,他 方 で は英
国 を 中心 に7ケ 国 は貿 易連 合 体 が 計 画 され て い る。 一 言 に して い え ば,西 欧
資 本 主 義 は 変貌 しつ 瓦あ る とい って よい で あ ろ う。 西 欧 の経 済 社 会 は マ ル ク
ス のい う19世 紀的 資本 主 義 か ら脱 却 して しま った の で あ る。 マル クス死 後80 年 資本 主義 社 会 は変 りつ エあ る。変 質 した 資本 主 義 に お い ては,マ ル クス が 予 想 した よ うな労 働 者 の絶 対 的 窮 乏化 理 論 は再 検 討 さ るべ きで あ る。 中 産 階 級 は 増 大 してい る し,福 祉 国家 は実 現 され つ 玉あ り,国 有 化 企 業 の再 吟味 も 必 要 で あ る。恐 慌 の防 止 と完 全 雇用 の実 現 や独 占 と階 級 国家 観 の脱 皮 な どを 認 識 す る こ とが大 事 で あ る。 最 近 の世 界 経 済 は岐 路 に立 っ て い る とい わ れ て い るが,1958年 の世界 景 気 は戦 後 最 大 の後退 に 見舞 わ れ た。 そ れ は1957年 か ら58年 に か け て ア メ リカは リセ ヅシ 。 ンのた め鉱 工 業 生 産 指 数 は前 年 よ り7
%も 減 少 し,ヨ ー ロ ッパ に お い ては 一 般 的 に経 済 活 動 が 低下 した こ とに よ る ので あ る。59年 に な る とア メ リカ ・イ ギ リス ・西 ドイ ッ ・イ タ リア な ど も好 況 に恵 まれ,自 由世 界 の鉱 工 業 生産 は 驚 異 的 な伸 びを 示 した。60年 には ヨ ー
ロ ッパは 未 曾 有 の好 況 に恵 まれ るに 至 った が,ア メ リカは60年 後 半か ら61年 の始 めに か け リセ ッシ ョ ソに見舞 わ れ てい る。 問題 は ア メ リカ ・イギ リス 。 西 ドイ ツの経 済成 長 の停 滞 で あ り,フ ラ ンス ・イ タ リア も近 い将 来停 滞 が お
こ る と憂 慮 され て きた こ とで あ る。 この先 進 工 業 国 の経 済 停 滞 に二 つ の型 が あ る。 英 米型 では 巨額 の対 外 短 期債 務 の重 圧 に お され て,積 極 的 な経 済 刺 戟 策 を と りえ ない状 態 で あ り,西 独型 は高 成 長 に伴 う労 働 力 不 足 が 原 因 とな っ
て経 済成 長 の 鈍化 が お き て い る こ とで あ る。
ア メ リカ の経済 成 長 の鈍 化 した 要 因 は設 備投 資 の上 昇 の弱化 ・企 業 利 潤 の
縮 少 傾 向 ・株 価 の 低迷 状 態 に よ る企 業 の投 資増 勢 の抑 制 ・在 庫投 資 増勢 の鈍
化 ・消 費 者 支 出 の頭 打 ち傾 向 な どに よ るの で あ る。 この よ うに 国民 総 生 産 の
構 成 要 素 の動 きが上 昇 率 を鈍 化 せ しめ た の で あ るが,た だ政 府 支 出 のみ が 活
発 な増 勢 を続 け たけ れ ど も暗 い 要 因 を相 殺 す る程 の 力 を 出す に至 らなか った
ので あ る。 国 際 収 支 に お い ては,政 府 の輸 出信 用 保 険制 度 の創 設 や バ イ ・ア
メ リカ ソ政 策 の強 化 に通 商 拡 大 法 の成 立 な ど と,種 々 の輸 出促進 措 置 や 最近
の西 欧 の コス ト ・イ ンフ レ傾 向に よるア メ リカ の相 対 的 有利 さに よ って今 後
の見 通 しは 明 るい ので あ るか ら,物 価 も雇 用 も金 融 事 情 も余 裕 あ る設 備 と労
働 力 か ら判 断 す る と,ア メ リカ経 済 に は 現状 に お い て需 要 ・イ ソフ レもコス ト ・イ ソフ レも起 らな いで あ ろ うと判 断 され るで あ ろ う。
イギ リス 経 済 の 回復 上 昇 に おい て,戦 略 的役 割 を果 た してい るのは 輸 出 の 増 大 で あ る。 世界 の貿 易 の動 きに は,イ ギ リス の輸 出は 非 常 に敏 感 で あ るか ら,戦 後 幾 度 か ス トップ 。ア ソ ド ・ゴ ー政 策 を採 りつ づ け て きた。 景気 回復 の ペ ース は 輸 出 の伸 びに 規 定 され て い て,景 気 を 動 か す 構 造要 因は 輸 出 と在 庫 投 資 と消費 者 支 出 に あ っ た。
西 ドイ ツ経 済 の発 展 は,60年 を ピ ー ク と して 以来 低 下傾 向 に あ る。 賃 金 ・ 物 価 の 上昇 は 著 し くて 国民 に 不安 を与 え て い るの で,政 府 当 局は 成 長 よ りも 安 定 に 重 点 を おい た経 済 政 策 を とろ うと して い る。 過 剰需 要 と労 働 力 の不 足 が 賃金 ・物 価 の上 昇 の 原 因 で あ るか ら,政 府 は 需 給 の均 衡 を 図 り価 格 の安 定
を 目指 す ので あ る。
ソ聯 の政 策 の 目標 は,軍 事 的 に東 西 の均 衡 を 保 ち つx経 済 的 に資 本 主 義諸 国 を追 い こす こ とに あ る。1947〜50年 間 には 鉱工 業 生産 は 大 き な伸 びを 示 し
た が,以 来 か な り著 しい 鈍化 傾 向が み られ て い る。 経 済 規 模 が 年 々大 き く膨 張 して い るか ら,生 産 の絶 対 量 は年 々増 加 して い るが,上 昇率 の増 加 を阻 む 要 因は 軍 事 費 の膨 張 と,後 進 諸 国援 助 費 の増 大 に あ る。 重工 業 重 点政 策 は膨 大 な シベ リア開 発 計 画 を推 進 しつ 玉あ り,予 算 に お い て膨 大 な投 資 計 画 が 計 上 され て い る。企 業 の合 理 的 利 潤 や価 格 体 系 の再 編 成 の必 要 は,経 済 政策 の 大 きな転換 期 に際 会 して い る こ とを 示す もの とい っ て よい。
以上 の如 く,世 界 経 済 は現 在 停 滞 期 に あ る も,1930年 代 の よ うな深刻 な段
階 に あ るので は ない。 東 西対 立 の融 和 に よ って東 西 貿 易 の拡 大 が み られ,軍
備 縮 少 が 可 能 となれ ぽ 低 開 発 国援 助 に 自国経 済 の繁 栄 に,そ して世 界 経 済 の
停 滞 の打 開 に と努 力す る こ とに専 念 し うるで あ ろ う。 景 気 循 環 の 中心 は 国 内
に しろ世 界 に しろ,投 資 に あ る とい え る。 景気 の動 因 と して も,波 及過 程 に
お い て も,そ の転 換 に して も,重 要 な の は投 資 で あ るか らで あ る。
く の
3.景 気 循 環 の 金 融 的 メ カ ニ ズ ム
マ ネ ーフ ロー分 析 よ りみ た る 日本 経 済 の 構 造 的 な問 題 と して,法 人 企 業 部 門 の 資金 不 足 ・個 人 部 門 の 資金 余 剰 が あ げ られ て い るが,こ の両 者 は景 気 の 局面 に応 じて独特 の動 きを して い る。 景気 の上 昇 期 で は,な に よ りも法 人 企 業 の投 資活動 に よ って循 環 の動 きが もた らされ た の で あ り,法 人 企 業 の 資 金 不 足 は比 較 的 循環 的 に表 わ れ て い るが,個 人 の 資金余 剰 は 比較 的 なだ らか な 足 ど りを示 してい るの であ る。 景 気上 昇 の初 期 と景 気 の後 退 期 で は,個 人 の 資金 の余 剰 の方 が 法 人 企 業 の 資 金 不 足を 上 回 っ て大 き く,景 気 上昇 が 本 格化 した時 期 は反 対 に法 人 企 業 の 資金 不 足 の方 が 大 きい 。政 府 部 門 にあ って は, 景気 上 昇 の初 期 と景気 の後退 期 に は税 収 の相 対 的減 少 のた めに 資金余 剰 は減 少 し,海 外部 門 で は 国際 収 支 の好 転 のた め に 資金 不 足 を示 す 。 景 気 の上 昇期 殊 にそ の後期 に は,税 収 の増 大 と国際 収 支 の悪 化 に よっ て政 府海 外 両 部 門 で は そ の 資金 余 剰 は増 大す るの で あ る。 要 す るに 景 気 の 回復 は 輸 出の増 大(海 外 部 門 の資金 不 足)に よ って 促 され,上 昇 す る と ともに法 人 企業 の投 資活 動 が 次 第 に活 発 化 し,過 熱化 の段 階 に進 む に つれ て,法 人企 業 の資金 不 足 は 個 人 の 資 金余 剰 を上 回 り,税 収 の増 大 の た め財 政 は 引 き揚 げ 超 過,輸 入 増 大 の た め国 際 収 支 は支 払 い超 過 に な る。 そ して景 気 の調 整 期 後 退 期 に 至 って 法人 企業 の投 資活動 は鈍 化 して い るので あ る。
景 気 循 環 に 伴 な って 各 部 門 の 流 動性 の 増 減 の メ ヵ ニズ ムは ど うで あ ろ う
か 。 景 気 の上 昇 期 に は,取 り引 き量 の拡 大 に従 って,法 人 企 業 部 門 の流 動 性
は 銀 行 か らの借 入 金 に よ って増 加 す る。 法 人企 業 の運 転 資金 が増 加 す るにつ
れ て,給 与 の支 払 い が 個 人部 門 に流 出 し,法 人税 や輸 入 代 金 の 支払 い を通 じ
て政 府 部 門や海 外 部 門 に流 出す る。 景 気 上昇 過 程 が あ る時 点 に至 る と,法 人
企業 部 門 の流 動性 増 加 テ ソポは 低 くな りそ の 資金 繰 りは 窮 屈 に な る。 一 方,
銀 行 は 信 用 創 造 機 能 を活 用 しなが ら法 人 企業 部 門 に通 貨 を供 給す る結 果,景
気 の上 昇 テ ソポが 進行 す るに つ れ て,銀 行部 門 の流 動 性 は減 少 し始 め て金 融
市 場 は 窮屈 に な り,金 利 の上 昇 や 日銀 貸 出金 の増 大 とな っ て,こ のた め に 法 人企 業 部 門 の資 金 繰 りが 悪 くな るの で あ る。 こ うして 法 人部 門 の投 資活動 は 圧 縮 され,所 得 の減 少 ・輸入 削 減 ・輸 出振 興 へ と向い,国 際 収 支 の黒 字 転 と 法 人 部 門 の流 動 性 の 回復 とな って均 衡 破 壊 の 依復 へ と調 整 され るに至 るの で あ る。在 庫 投 資 の 回復 を経 て や が て景 気 回復 を み る。流 動 性 の 回復 が 景 気後 退 よ り上昇 へ と進 み,法 人 へ の銀 行 貸 し出 しの 増 加 とな る。
日本経 済 に お い て経 済 の動 向に対 して積 極 的 に 銀 行 の流 動 性 が 働 くの は, 何 故 で あ ろ うか 。 銀 行 の流 動 性 の大 き さは,個 人 部 門 の現 金 需 要 や 財 政 と海 外 部 門 の 動 向 に 左 右 され る。 これ らの 動 向 は物 の 経 済 の 動 きの 反 映 で あ っ
て,そ の動 きは景 気 変 動 の波 を 循 環 的 に起 す もの で あ る。 銀 行 の流 動 性 は 法 人 の投 資活 動 を 規制 す る と同時 に,物 の経 済 の動 きに 規制 を 受 け るか らで あ る。 銀 行 の流 動 性 の作 用 は,モ ノか らカ ネへ の受 動 的 とカ ネか らモ ノへ の能 動 的 の 二 側 面 を 媒 介 と して 変 動 す るの で あ る。 銀 行 の 流 動 性 が 基 準 とな っ て,カ ネ の経 済 とモ ノの経 済 とが 相 互 に規 制 しあ う関 係 がみ られ る とい い得 るの で あ る。そ れ 故 に 日本 銀 行 の金 融 政 策は,銀 行 の流動 性(現 金 準 備)を 規制 して,も っ て銀 行 の貸 し出 し能 力 や 通 貨供 給 力 を調 節 して き たの で あ っ た。 そ してそ の結 果 各 部 門 間 の流 動 性 の動 きは調 整 され て,景 気 波動 の波 も あ る程 度 な だ らか な姿 を 呈す るに至 っ て きた の で あ る。 つ ま り景 気 循環 と金 融 の繁 閑 とは,絶 えず 繰 り返 され て信 用 経 済 の現 実 の姿 を 示 して い る。
以上 の マ ネ ー フ ロ ー分析 は金 融経 済 の 巨視 的 観 察 法 で あ るが,金 融 市場 の バ ロメ ータ ー と もい うべ き金利 の動 きを と らえ る必 要 が あ る。 金 融 取 り引 き は 個 々 の経済 主体 の貸 借 関 係 が 基礎 で あ るか ら,そ の貸 借 関 係 に おけ る価 格 で あ る金 利 の 動 きを と らえ て,各 経 済主 体 の ビヘ イ ヴ ィア ーで あ る微 視 的 な 観 察 もあ わ せ て重 要 で あ る。
今 日 欧 米 各 国 の 金 利 政 策 は 景 気 対 策 と して 予 防 的 に 運 営 され て い る こ と
が,金 利 政 策 の 基 本 的 な特 徴 と して挙 げ なけ れ ば な らない。 さ らに 自由化 に
即 応 して,国 際 間 の金 利 差 をね らって移 動 す る資 本 移動 を調 整 す る こ とが,.
根 本 的 な色 彩 と して国 際協 力 を強 調 して おか ね ぽ な らない 。
金利 政 策 は19世 紀 の金 本位 制 の も とに おい ては,中 央 銀 行 の唯 一 の信 用 調 整 手 段 で あ った。 第 一 次大 戦 後,自 動 的 調 節作 用 を もって い た金 本 位制 の機 能 が 円滑 を 欠 いた た め,金 利 政 策 の作 用 は 弱 体化 し,そ の後 ケイ シジ ィア ソ に よって専 ら財 政 政 策 が 力説 され た。 第二 次大 戦 後,諸 国 に おい て財政 政 策 に 失敗 す るにつ れ 「貨 幣 の再 発 見」 が 主 張 され た の で あ った。 金利 政策 に よ る景 気 変 動 の緩 和 は,好 況 の初 期 に予 防 的 に調 整 す る こ とが 根 本 で あ り,中 央 銀行 の公 定 歩 合 の変 更政 策 の発 動 に 侯 つ こ と大 で あ る。
景 気政 策 の二 大 支 柱 を なす ものは,金 融 政策 と財 政 政 策 で あ る。金 融政 策 は 景 気 上昇 期 に弾 力 的 に 信用 制 限 を行 な う点 で効 力 を有 す るが,下 降 期 には
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