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インサイダー取引規制のあり方について―制裁シス テムを中心に―

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インサイダー取引規制のあり方について―制裁シス テムを中心に―

著者 長井 長信

雑誌名 明治学院大学法律科学研究所年報 = Annual Report of Institute for Legal Research

巻 29

ページ 21‑23

発行年 2013‑07‑31

URL http://hdl.handle.net/10723/2040

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21 インサイダー取引規制のあり方について―制裁システムを中心に―

インサイダー取引規制のあり方について

―制裁システムを中心に―

 長 井 長 信

報告の概要

 標記の研究会において、別紙のレジュメに従って、概要、次のような趣旨の報告を行った。

 平成16年(2004年)の金融商品取引法(以下「金商法」という)改正により課徴金制度が導入 され、金商法の制裁体系が大きく変わった。金融庁・証券取引等監視委員会による行政規制の実 効性が増大する一方で、刑罰の果たす役割は相対的に縮小したかのようにも見える。インサイダー 取引行為の当罰性自体は疑うべくもないとしても、近時、インサイダー取引罪の構成要件のあり 方について種々の議論がある中で、インサイダー取引規制における刑事罰の役割も含めて、改め て検討すべき時機に来ているように思われる。

 まず、インサイダー取引罪の構成要件については、現行の具体的・形式的な規定形式を改め、

重要事実を包括条項(バスケット条項)一本で規定すべし、との提案がなされている。アメリカ やEUのインサイダー取引規制のあり方に相応するものであり、また、日本商事事件、日本織物 加工事件さらには村上ファンド事件などで示された実質主義的な法解釈を立法によっても推し進 めるものともいえる。独占禁止法上の不当な取引制限の罪が必ずしもインサイダー取引罪のよう な形式主義的な構成要件の形式をとっていないことも考え合わせると、将来は、より実質主義的 な条文形式に向かうのかもしれない。しかしながら、少なくとも「犯罪」としてのインサイダー 取引を規制するについては、規制の明確性や予測可能性を確保するという観点や、検察側の立証 の容易性という観点も考えると、なお現行の条文形式を維持することに意味があると考える。

 次に、例えば、内部情報の漏示や、売買の推奨行為についても規制対象とし、あるいは、情報 受領者の範囲を拡大するなど、規制対象となる行為類型や行為者類型についても処罰範囲を拡大 する方向での立法提案もなされている。しかし、これらの行為については、共犯理論を駆使する ことによって、十分対応可能である。少なくとも解釈論上の難点は見当たらないのである。新た な犯罪類型ないし構成要件を作ることの積極的理由が問われなければならないだろう。

 現行法での喫緊の課題は、インサイダー取引行為をいかに未然に防止するか、という点である。

インサイダー取引はこれまで、たまたま内部情報を知った者が「濡れ手で粟をつかむ」といった 偶発的なイメージが強かったようにも思われるが、最近では、企業や監督官庁の一員として業務 を遂行する過程で日常的に内部情報に接近しうる者がこれを行う事例が頻発している。その意味 で、企業や組織体において、構造的な問題を抱えているともいえる。インサイダー取引に限らず、

使用者・従業員の逸脱行動を防止するために、企業の多くはコンプライアンス・プログラムを策 定・実践しているようであるが、インサイダー取引を防止するについても、より具体的で実効的

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な防止策をその構成員に示す必要があろう。

 規制当局にとって使いやすい課徴金納付命令が多用され、行政規制の実効性がますます強まる 一方で、果たして刑事罰でなおも対応する必要性は残っているのであろうか。仮に、課徴金や罰 金・没収制度によって不法収益を剥奪しただけではインサイダー取引を抑止し切れないのだとす れば、その先に残っている「刑罰」とは何か、この点をさらに検討する必要があるように思われ る。

Ⅰ はじめに

・①会社関係者の禁止行為(金融商品取引法〔以下「金商法」〕166条)、②公開買付買付者等関 係者の禁止行為(同167条)

・罰則:自然人(同197条の2第13号)、法人(同207条)

Ⅱ 立法の経緯と裁判実務

1 立法の経緯

⑴ 処罰化前の「インサイダー取引」

 ・「外圧」(日米構造協議など)、タテホ化学工業事件の発覚(1987〔昭和62〕年)

⑵ 処罰化(法改正)に向けて

 ・1988(昭和63)年3月、証券取引法の一部を改正する法律案、5月可決、1989(平成元)年 4月施行。

2 法規定の特色

 ・具体的・技術的規定としてのインサイダー取引罪 ←罪刑法定主義の要請(構成要件の明確 性)

 ・不公正取引罪(157条1号)との関係

3 裁判実務における構成要件解釈の実際

⑴ 日本商事事件

 ・証取法166条2項4号の「重要事実」(包括規定・バスケット条項)の該当性判断

⑵ 日本織物加工事件

 ・証取法166条2項1号にいう「株式の発行」を行うことについての「決定」の意義

⑶ 村上ファンド事件

 ・証取法167条2項にいう「業務執行を決定する機関」及び「公開買付け等を行うについての 決定」の意義

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Ⅲ 課徴金制度導入と刑罰のあり方

 ・平成16年の法改正により、金商法に課徴金制度導入 インサイダー取引については175条1 項

 ・刑罰法規の役割は終わったか?

Ⅳ おわりに(今後の検討課題)

 ・条文形式の簡略化・抽象化 ⇒ 包括規定化

 ・行為類型の拡大 内部情報の漏示行為、売買等の推奨行為、さらには、これらの未遂行為の 処罰

 ・行為者類型の拡大 情報受領者の拡大(第一次情報受領者に限定しない)

 ・企業コンプライアンス

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参照

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