1 はじめに
バロック舞曲と呼ばれる 17 ∼ 18 世紀に隆盛した舞曲には様々な種類が存在する。1960 年代に ボーシャン=フイエ式記譜法の解読がなされてから、舞踏伴奏としての舞曲にも注目がなされるよ うになってきたものの、そのパラダイムはいまだに、踊りかたが解読される以前において有名な器 楽舞曲を念頭に置きながらの描写が引き継がれているといえる。
ここで、舞曲の種類(以下舞踏種)のうち同じような特徴を持ったものに関しては、その区別が 曖昧になされていたり、殆ど同一の舞曲として論じられていたりする。中でも 2 拍子系でのブレ bourrée とリゴドン rigaudon は、常に類似する舞曲として論じられ、ひとまとめにして論じられる 傾向にあった。名称が異なる以上、両者の特徴には何らかの違いが存在すると考えられるが、これ について明確な相違点は知られていないのが現状である1)。本論では統計という手段を用い、この 2 つの舞踏種の相違点を検証するものである。調査前の段階では、この両者には音楽的観点からの区 別がつかないという可能性も予想されたが、分析の結果は両者に差異が存在することを示すのに十 分なものであった2)。
2 ブレとリゴドンの理解
バロック舞曲はその踊り方を記したボーシャン=フイエ式の舞踏譜の解読により、その踊り方が 明らかになってきた。ブレとリゴドンも現存する舞踏譜についての研究が進められているが、一方 で音楽の面、特に用いられるリズムやアウフタクトといった形態的側面を体系的に扱った研究は不 十分である。現在の研究はおおむね、再現された踊り方を踏まえて舞曲を如何に解釈し演奏するか
1) 舞踊の観点からの両者の区別については本論の論じるところではないが、現存する舞踏譜からも両者の明確な区別は見出 されていない(FLC: XXXIX-XLII 参照)。
2) 本論の分析結果は、執筆者の武蔵野音楽大学 2014 年度博士論文『ルイ 14 世治世下の王立音楽アカデミー(1671―1715)
で上演された劇場作品における舞曲―印刷資料に基づく統計的観点による考察』(音楽学)に基づくものである。本論の 内容も多くをこれに依拠している。
ルイ 14 世治世下の劇場作品におけるブレとリゴドンの区別
―特徴的リズム型を通じて―
中 村 良
という文脈で論じられているに過ぎず、ブレやリゴドンの音楽的特徴については、現代における主 要な音楽事典の項目の記述以上の描写が存在しない。メレディス・エリス・リトル Meredith Ellis Little の博士論文 The dance of Jean-Baptiste Lully (1632―1687)(1967)、および彼女とナタリー・ジェ ンヌ Natalie Jenne との共著による Dance and the music of J. S. Bach.(1991/2001: 以下 LJ 2001 と表記)、
そしてベティ=バン・マザー Betty Bang Mather の Dance rhythms of the French Baroque.(1987)が先 行研究として重要だが、これらは演奏論を主眼に置いたものであり、舞踏種の形態的特徴に関して は事典項目と大きな差は無い。したがって本論では事典項目の記述を主な検証の対象として設定し た。Oxford Music Online のコンテンツ Grove Music Online(以下 GMO)3)、および Musik in Geschichte und Gegenwart 第 2 版(以下 MGG2)、International Encyclopedia of Dance の記述等、主要な大事典 項目はいずれも内容にほぼ差が無く、その執筆者たちの数人は共同で著作を発表している。おおむ ね、GMO の執筆者であるリトルを中心とした研究が現代の大まかなコンセンサスを形成している といえる。これに加え、舞踏譜カタログであるフランシーヌ・ランスロ Francine Lancelot の La belle danse(以下 FLC)の序文が、現存する舞踏譜資料を基にした舞踏種の統計的調査を行っている。
ここでのラファエレ・ルグラン Raphaëlle Legrand の協力による(FLC: XXXII)音楽の分析は本論 での研究手段の先駆けといえるものだが、音楽の分析についてはその対象が舞踏譜資料に付された 楽譜に基づくものに限定されており、分析内容は既存の言説によって補われているため(FLC:
XXXVII-XXXVIII)、本論で採用する統計的調査はいまだ行われていないといえる。
分析にあたり、本論では拍子、アウフタクト、テンポ、リズムの 4 つの要素を主要に取り扱う。
これはランスロが個々の舞踏種の特徴を論じるに当たって拍子記号 measure marking、上拍 upbeat、
ムーヴマン(テンポに相当)movement、作曲上の特徴 features of compositional form として特徴的 なリズムを例示した(FLC: XXXVII-XXXIX)ものに倣ったものである。この他に先行研究では特 に作曲形式とフレーズ構造についての記述が詳細になされており、ブレ、リゴドンの双方ともに、
二部形式かつ 4 の倍数の小節数で作曲されることが指摘されている。実際、18 世紀の辞典の記述 でもこの傾向は共通しており、当時からこれらに関心が寄せられてきていたことが伺えるが、実際 には他の舞踏種の記述でもこれは共通している4)。本論の研究対象以外の舞踏種の分析からも、舞 曲の殆どは二部形式かロンドーのいずれかで、4 の倍数のフレーズ構造を持つものが多いという統 計結果が出ている(中村 2015)。したがって形式とフレーズ構造については、複数の舞曲について 横断的に分析した上で改めて論じるべきであると判断し、本論では詳細に取り扱うことを避ける。
3) GMO の内容は The New Grove Dictionary of Music and Musicians 初版(以下 NG1)の記述に僅かな変更がなされているに過 ぎないため、記事への参照注は(GMO s. v. “記事名”)とする。引用はその日本語版である『ニューグローヴ世界音楽大事典』
(以下 NG1j)の記述に適宜加筆し、出典注を(GMO=NG1j s. v.「NG1j の記事名」)とする。
4) ル ソ ー Jean-Jacques Rousseau(1712―1778) や ヴ ァ ル タ ー Johann Gottfried Walther(1684―1748) の 事 典 項 目(Rousseau 1768; Walther 1732, s. v. “Bourée”, “Menuet”, “Gavotte”)参照。
2―1 ブレ
ブレは 2 拍子(拍子記号は 2 または c¦ )で、四分音符 1 つ分のアウフタクトを持ち、単純なテク スチュアで快活な性格と速いテンポを特徴としているという意見で一致している。テンポについて は 18 世紀の言説が殆どの場合速いテンポとしており(LJ 2001: 35―37)、二分音符が MM. 112 ∼ 120 程度という同時代の振り子による計測記録が残っていることも指摘される(GMO, MGG2 s. v.
“Bourrée”)。
2―2 リゴドン
リゴドンは 2/2 ないし 2/4 で記譜される陽気(gay)な舞曲で、四分音符 1 つ分のアウフタクトを 持ち、速いテンポ(Mather 1987: 288―290)という特徴が指摘されている。GMO の「2 つあるいは それ以上の旋律から成っている。」という記述は後述するとおり、二部形式以上の複合的形式で作 曲されることを示していると思われる。旋律は 4 ないし 4 の倍数の小節で構成されることが指摘さ れている(GMO, MGG2 s. v. “Rigaudon”)。
2―3 類似性
以上のように、どちらも 2 拍子系の舞曲であり、四分音符 1 つ分のアウフタクトを持つ快活な舞 曲であるという点では、両者の舞踏種で指摘されている特徴はブレとリゴドンでほぼ変わらない。
それ以上に、ブレとリゴドンは常に類似する舞曲として取り上げられていることは特筆すべきであ る。GMO は具体的なリゴドンの形態についてのパラグラフを「リゴドンはしばしばブレと比較さ れる(マッテゾン、クヴァンツ、ルソーの著作)。」(GMO=NG1j s. v.「リゴドン」)という一文で 開始しており、他にも随所にブレとリゴドンの類似を指摘している。一方ブレの記事のほうでも、「こ れらの特徴はすべてリゴドンにも当てはまるものである。事実、クヴァンツはこれらの舞曲をほと んど同じものと見なしていた。」(GMO=NG1j s. v.「ブレ」)という一文があり、相互に似通った舞 曲であることを示している。
18 世紀の文献でも両者はしばしば関連付けられている。GMO で指摘されているクヴァンツ Johann Joachim Quantz(1697―1773)の『フルート奏法試論』は両者を一つの文脈で同時に取り上 げ(Quantz 1752: 271)、マッテゾン Johann Mattheson(1681―1764)の Der vollkommene Capellmeister では、両者の関係について直接的に「リゴドンは、まさしくガヴォットとブレからできた混血」5)
(Mattheson 1739: 226[§. 94])と言及している。
5) [...]ist der Rigaudon ein rechter Zwitter, aus der Gavot und Bourree zusammengesetzet.
2―4 問題点
以上のように、既に 17―18 世紀当時の時点で、この両者を区別できるような書き方がなされてお らず、現代の事典項目の記述は、これらの 18 世紀当時の文献の内容から殆ど変化していない。問 題は、引用した文献の記述がどの時期・地域・曲種を念頭に置いたものなのかが考慮されないまま 単純に列挙され、記述内容についての検証が全く行われていないという点である。舞踏種のブレと リゴドンが類似するという文脈は、あくまでもこのような前提に基づいた理解であることを念頭に 置かねばならない。
3 先行研究における両者の相違
極めて類似した舞曲として描写される両者だが、それぞれに独自の特徴も指摘されてはいる。ブ レのシンコペーション、リゴドンの和声的加速と長い音符、アウフタクトの音符の形状は、具体的 に検証が可能な両者の特徴として挙げられる6)。
3―1 ブレのシンコペーション
シンコペーションは、ブレの特徴としてたびたび取り上げられている。具体的には 2 拍子の 1 拍 目裏に四分音符より長い音価が配置される形をとり、1 小節内で生じる(LJ 2001: 40―41)。ランス ロも舞踏譜の音楽の分析を行い、同じ特徴を指摘している(FLC: XL)。このシンコペーションの 存在は 18 世紀の時点で既に指摘されており、ルソーは「このエールの性格として頻繁に最初のタ ンの後半と 2 番目の前半が、シンコペーションの二分音符で結び付けられる。」7)(Rousseau 1768:
57)という言葉でこのシンコペーションを説明している。特にリトルはこれをブレの際立った特徴 とみなしているようで、「この性質によってもブレをリゴドンからたやすく区別できる。」(GMO=
NG1j s. v.「ブレ」)と述べ、さらにこれをブレの「4 小節単位を基本とする、はっきりしたフレー ズ構造」(GMO: ibid.)と結びつけ、フレーズの 3、7 拍目、すなわち 2、4 小節目でこれが現れる と論じている。
ただし、リトルはこのシンコペーションが必ずしも全てのブレにおいて現れるものではないとも 述べている(GMO=NG1j s. v.「ブレ」)。さらにこれがリゴドンでも用いられることを指摘してお り(GMO=NGj s. v.「リゴドン」)、これがブレとリゴドンを区別する要素とはならないとしている
6) この他に、リゴドンがブレに比べて「やや活発 slightly more vigorous であり、ブレよりも角張ったメロディ more angular melodies を持つ」(GMO s. v. “Bourrée”)などという記述もあるが、これらは主観的で具体性に欠けるといえる。
7) Dans ce caractère d’Air on lie assez frequemment la seconde moitié du premier Tems & la premiere du second, par une Blanche syncope.
のである。シンコペーションの有無がブレの決定的な特徴とならない以上、先行研究ではこれが両 者を区別する要素になっていないのが現状である。
3―2 リゴドンの「和声リズムの加速」
リゴドンの固有の特徴に関しては、リトルによって「和声リズムの加速」が指摘されている。こ れは 4 小節単位のフレーズが「やや静的」な和声で開始され、フレーズの終わりに向かって和声の 上でもリズムの動きの上でも加速していくというもので(GMO=NG1j s. v. “Rigaudon”)、アンドレ・
カンプラ André Campra の《優雅なヨーロッパ L Europe galante》のリゴドン(資料の 1697.04/Rg1b に相当)が例示されている。この記述は MGG2 にも引用され8)、マザーはこれを受けて同曲に対し てより詳細な分析を行っている(Mather 1987: 287―288)。一方でランスロらは 1 小節に二分音符 2 つが含まれる型( )がフレーズの冒頭または最後に現れると、譜例を挙げて指摘している(FLC:
XLI)。これは本論の後半で考察を行うとおり、「和声リズムの加速」と同等の特徴を指していると 判断できるが、いずれにせよ全てのリゴドンがこの特徴を持っていると論じられているわけではな く、両者を区別する要素としてはみなされていない。
3―3 アウフタクトの形状
最後にあまり注目されてはいないが、マールプルク Friedrich Marpurg(1718―1795)がアウフタ クトの形状について、ブレは八分音符 2 つに置き換えられることがあるのに対し、リゴドンは四分 音符 1 つの型しかありえないと指摘している(Marpurg 1762, II: 23; LJ 2001: 311 参照)。しかしこの 指摘は根拠が不明確であり、実際の楽曲での検証はなされていない。
3―4 問題点
以上のように、ブレではシンコペーションの型が、リゴドンでは和声リズムの加速を生み出す二 分音符 2 つが、それぞれを特徴付ける要素であることが指摘されているものの、同時にそのような 特徴を持たない楽曲の存在も指摘されており、記述の内容が極めて明確性に欠けている。これらの 要素が用いられる頻度は「多くは」という言葉で示されており、その舞踏種全てが持つ特徴である かについては、その結論が留保されている。この曖昧な用語の多用が、両者の区別までをも曖昧な ものにしてきているといえる。
8) MGG2 で説明されている「リズムの加速の手法 eine Art rhythmische Beschleunigung」(MGG2 Sachteil 8: 335)は、恐らくこ の記述を参照したと思われる。
本論はこの現状に統計的な裏づけを与え、より確実なリゴドンとブレの区別を探ろうとするもの である。一定の条件下で舞曲のタイトルがつけられた楽曲を大量に収集し、特定の要素についての 統計の結果を比較すれば、両者の特徴および差異が浮かび上がってくることが予想される。「多い」
という曖昧な表現に数値的な裏づけを持たせると同時に、本当にこれらがそれぞれを特徴付ける性 質を持っているといえるのかを検証することが、ブレとリゴドンの「違い」を明確化する上で必要 な作業であるといえよう。
4 研究対象楽曲の抽出方法および分析の手法
本論での研究対象楽曲は、執筆者の博士論文『ルイ 14 世治世下の王立音楽アカデミー(1671―
1715)で上演された劇場作品における舞曲―印刷資料に基づく統計的観点による考察』(2014 年 度提出)での手法にしたがって抽出する。これはルイ 14 世治世下の王立音楽アカデミー(王立音 楽アカデミーが創立された 1681 年からルイ 14 世が没した 1715 年まで)で上演された劇場作品全 88 作品を対象とし、同期間内に出版されたフルスコアおよびスケルトンスコアの出版譜 126 件から、
舞踏種の名称、すなわち Bourée および Rigaudon という語句を含むタイトルがつけられた楽曲を分 析対象とする。重版や増補により複数の資料が存在する作品に関して、資料間で同一の楽曲のタイ トルが異なる場合は、いずれかの資料で上記の条件を満たせば研究対象に含める。分析対象として の楽譜は、楽曲が同一とみなせる範囲で内容に差異が観察される場合には、条件を満たす資料のう ちで最も早く出版された資料に準拠する9)。
本論で取り扱うブレとリゴドンは、18 人の作曲家による 42 作品(ブレは 27 作品、リゴドンは 25 作品)に含まれていた。研究対象楽曲の総数は、ブレが 40、リゴドンが 48 であった。このうち ブレの 1 曲は、資料に楽曲の冒頭のみしか記載されていないため、分析の対象に含めない。また、
研究対象となった楽曲に隣接する、同じ拍子と拍節構造を持つと判断できる楽曲がブレで 3、リゴ ドンで 4 観察されたが、これも本論では取り扱わない。結果、ブレ 39 曲、リゴドン 48 曲が研究対 象となる。
尚、ブレは現代フランス語では Bourrée と綴るが、本論での研究対象資料には全て Bourée とい う綴りが用いられていた。この r の数のことはしばしば 18 世紀のドイツ語圏の著者による文献で も指摘されていたことで(Mattheson 1739 など)、現代の一部の研究者も bourée と r を 1 つで綴っ ているが10)、この統計結果は綴り字の用法について興味深い。
9) 誌面の都合で、研究対象楽曲一覧の詳細は掲載しない。武蔵野音楽大学学術リポジトリに掲載予定の博士論文の「別表 1 研究対象資料と楽曲一覧」を参照されたい(http://id.nii.ac.jp/1276/00000010/)。
10) LJ 2001 等。GMO “Bourrée” の記事も参照。
5 分析結果
収集したブレとリゴドンに対して、拍子、アウフタクトの形状、テンポ、リズム型に関する統計 の結果を示す。拍子は記譜された拍子記号と小節線の間隔から割り出した実質的な拍子、テンポは 速度標語が記入されている楽曲に関して、その記述内容を調査している。さらに旋律リズムの傾向 を分析するために、二分音符 1 つを 1 拍節として楽曲を区切り、そのリズム型の統計をとった。こ の主要拍の長さの単位を、執筆者の博士論文(中村 2015)にしたがってスキーマと称す。
各舞踏種を論じるにあたり、それぞれの統計結果で多数派であった特徴を多く備えている楽曲を それぞれ例示する。全ての研究対象楽曲と本論で分析した項目については、末尾に研究対象楽曲一 覧として掲載した。
5―1 ブレ
ブレでは 1701.03/Br2 を取り上げる〔譜例 1〕。この楽曲は拍子記号として 2 が用いられ、実質的 に 2/2 拍子相当で記譜され、八分音符 2 つのアウフタクトで開始される。ブレに特徴的とされるシ ンコペーションは 4 箇所で確認される(〔譜例 1〕囲み)11)。20 小節で構成され、用いられるリズム 型はシンコペーションとアウフタクトの部分を除き、四分音符 2 の型( )が 18、四分音符 1 + 八分音符 2 の型( )が 6、八分音符 4 の型( )が 2、付点の型( )が 2 観察される。
11) 尚、シンコペーションのパターンを表すのに本論で参照した資料(1701.03/1701)では 2 つの四分音符がタイで結ばれて 記譜されており、〔譜例 1〕でもこの表記を踏襲したが、本論の研究対象中ではこのような記譜は珍しく、多くが四分音 符−二分音符の組み合わせで記譜されている。
12) 音部記号は原典ではフレンチ・ヴァイオリン記号(以降の譜例も同様)。最終小節の全音符は原典のママ。
〔譜例 1〕1701.03/Br2 の旋律声部(1701.03OMP/1701, pp. 158―159)12)
1701.03/Br2 と同じように、拍子は全ての楽曲が 2/2 に相当する記譜で書かれていた。速度標語 は譜例に示した 1701.03/Br2 を含む 2 曲に「Gay」と書き込まれていた。
研究対象全ての楽曲内で使用されるリズム型の総数を観察すると、四分音符 2 の型( )が 566 箇所(38%)と最も多く、付点の型( )が 193 箇所(13%)、四分音符 1+八分音符 2 の型( ) が 195 箇所(13%)、八分音符 4 の型( )が 93 箇所(6%)であった。
5―2 リゴドン
リゴドンでは 1708.01/Rg1a および Rg1b を挙げる〔譜例 2〕。この 2 つは、Rg1b の末尾に Rg1a に戻るように指示がなされている。どちらも拍子記号 2、2/2 に相当する拍子で記譜され、四分音 符 1 つ分の長さのアウフタクトを持っている。Rg1a, 1b ともに 16 小節、計 32 小節で構成され、用 いられるリズム型はアウフタクトの部分を除き、二分音符の型( )が 13(6+7)、四分音符 2 の 型( )が 27(14+13)、四分音符 1 +八分音符 2 の型( )が 6(3+3)八分音符 4 の型(
)が 2(0+2)、付点の型( )が 4(1+3)観察される。後に詳述する二分音符 2 つの型は、
Rg1a, 1b ともに 3 箇所ずつ、計 6 箇所(〔譜例 2〕囲み)確認される。
譜例に示した 2 曲を含め、拍子は全ての楽曲が 2/2 に相当する記譜で書かれていた。ただし、い くつかのリゴドンは拍節と音価の関係が若干異なる。1688.01/Rg1a および 1b と、1706.03/Rg1a お よび 1b の 2 組 4 曲は、拍子記号 c¦ が用いられているが、八分音符と十六分音符が中心に楽曲が構 成されている。このタイプは一見、リゴドンのまったく別の型を示しているように見えるが、内容 に着目するとこの違いは記譜方法によるもので、音楽的な本質は同一ではないかという仮説を立て
〔譜例 2〕1708.01/Rg1a および 1708.01/Rg1b(旋律声部のみ)
ることができる。1688.01/Rg1a の音価を倍にして記譜すると、後述の二分音符 2 つの型(ここでは 2 つ目の二分音符の末尾に装飾的な十六分音符が付加されることになる)や繰り返されるモティー フによって 4 小節フレーズに区切られる形式が、これ以外の多くのリゴドンとほぼ同じ形になると みなせる〔譜例 3〕。
これらの状況から、少なくともリゴドンの記譜方法が 2 種類存在したとみなすことができる。両者 の記譜が演奏上の違いを示すものなのかは楽譜資料上から明らかになることではないが、本論では この両者の区別はつけず、該当する 4 曲は「音価を倍にした」(スキーマを 4 分音符の単位に設定 した)状態で分析を行う。
研究対象全ての楽曲内で使用されるリズム型の総数を観察すると、四分音符 2 の型( )の使用 が 837 箇所(44%)と多く、付点の型( )が 72 箇所(4%)、四分音符 1 +八分音符 2 の型( ) が 158 箇所(8%)、八分音符 4 の型( )が 154 箇所(8%)であった13)。
5―3 共通点
両者を比較すると、先行研究どおり共通点が非常に多いことが明らかになる。対象楽曲は全てが 1 小節に二分音符が 2 つ、もしくは四分音符が 4 つ入る、2/2 拍子またはアッラ・ブレーヴェ( c¦ ) と同じ記譜法で書かれていた。
速度標語については記述がなされていた例が少ないため、統計によって傾向を明らかにすること
13) 尚、アウフタクトやシンコペーションを構成するリズム型はここでは統計に含めていない。
〔譜例 3〕1688.01/Rg1a の書き換え(冒頭 T0―4 を例に)
はできない。ただしブレの「Gay」という記述は速いテンポを要求する語句であり、先行研究の言 説と矛盾はなかったといえる〔表 1〕。
リズム型はいずれにおいても、四分音符 2 つの型( )の使用率が他のリズム型より際立って多 い。付点型が用いられる割合は、リゴドンはブレと比較して低い。リゴドンにおける二分音符 1 つ の型( )の優位は、後述の二分音符 2 つの型が多用されていることの反映といえる〔表 2〕。
この統計結果から、四分音符などの細かい音価が主体の旋律の中で、以下で検証するシンコペーショ ンや二分音符 2 つのリズム型は、その長い音価が目立つということが指摘できる。
5―4 相違点についての検証
シンコペーション、および和声の加速に関連する二分音符 2 つの型は、いずれも旋律の一部分に 関わる要素である。これらはいずれもジーグで特徴的とされる付点リズムのように楽曲を通じて支 配的な型ではなく、要所で用いられることによって舞踏種を特徴付ける性質を持つものといえる。
5―4―1 シンコペーション
まずブレのシンコペーションに着目する。研究対象ではこれに該当するものとして 4 種類( ;
; ; )が観察された。39 曲のブレでシンコペーションの型は 23 曲 55 箇所で観察さ れた。これは研究対象全体の 58%に相当する。本論の結果は、シンコペーションが用いられるも のが「多い」という従来の曖昧な理解に対して、17 世紀後半から 18 世紀初頭のフランス劇場作品 のブレがシンコペーションを用いる割合が約半数である、という一つの数値的な裏づけを持たせる
〔表 1〕研究対象楽曲の拍子、速度標語の比較
ブレ リゴドン
拍子(表記 / 実質)が 2 39/39(100%) 48/48(100%)
速度標語 Gay: 2 曲 (表記曲なし)
〔表 2〕研究対象楽曲で用いられるリズム型の総数の比較
ブレ 50(3%) 587(38%) 195(13%) 93(6%) 193(13%)
リゴドン 352(18%) 837(44%) 158(8%) 154(8%) 72(4%)
ものとなった。
なお、ブレのシンコペーションが、リトルが論じたようにフレーズ内で定位置を持つものであっ たかに関しても議論の余地がある。本論の研究対象では 18 曲において全て偶数小節で現れている ものの、これに該当しない楽曲も存在した。全体を見通す限り、フレーズ中で現れる位置の定まっ た図式と呼べるようなものは見出せなかった。少なくとも本論の取り扱う範囲においては、シンコ ペーションとフレーズとの関係は比較的自由であるとみなすべきであろう。
一方で、この型はリゴドンでは一切用いられない。リゴドンでシンコペーションを用いるという GMO での指摘は、本論の分析対象では当てはまらないこととなった。シンコペーションが用いら れないブレがあること考慮すると、むしろリゴドンでシンコペーションが観察されなかったことの ほうが重要といえよう。
5―4―2 二分音符 2 つの型:和声の加速と併せた考察
一方、リゴドンでは主要拍 2 つを打拍する特徴的なリズム型が頻繁に観察された。2/2 に相当す る記譜の場合、これは二分音符 2 つに相当し、1 小節が二分音符 2 つで埋められる型になる。48 曲 中、この型は 42 曲 158 箇所で観察された。これはブレにおけるシンコペーションの使用率の倍以 上である。さらに、用いられない 6 曲は全て 2 つ以上が組になった曲の一部であり、組になるもう 一方のリゴドンではこの型は必ず観察される。したがって実質的には全てのリゴドンが必ずこの二 分音符 2 つの型を含んでいることになる。これはリゴドンを特徴付けるリズム型として必須の条件 とみなすことができる。
シンコペーションを含まないブレも存在したのに対し、リゴドンは例外なく二分音符 2 つの型を 含んでいた。二分音符 2 つの型は、リゴドンとブレを明確に差異化する重要な要素であることが明 らかになったといえる。なお、この型はブレでも 5 曲 12 箇所で観察された。中でも 1709.02/Br1 で は楽曲中にこれが 6 箇所出現し、付点系およびシンコペーションは一切現れない。この楽曲は見か け上はリゴドンの特徴を多く備えているといえる。
ここで、二分音符 2 つの型の位置によって、先行研究で言及された旋律および和声リズムの加速 の説明を試みることとする。先に指摘したとおり、リゴドンが総じて四分音符の連続で構成される ことが多いことを考慮すれば、二分音符 2 つの型がある箇所は他に比較して音価の長い音符がその 位置を占めることになる14)。この時代の舞踏種がおおむねホモフォニックな和声付けがなされてい ることを考慮すれば、旋律のリズムにバスおよび和声のリズムも従い、その部分の和声リズムは遅 くなるといえる。ここで、この型がフレーズの冒頭に来る場合は、冒頭の和声リズムが遅くなり、
結果として相対的に和声リズムが加速していくようになる。事実リトルは 4 小節単位の和声の加速
14) ここで GMO の「角ばった旋律」という表現を考慮するならば、四分音符が連続して用いられる旋律の中に挿入される 二分音符 2 つのパターンが、それまでの細かい音価の流れを断ち切るように見えたことを、リトルが「角ばった」と形容し たのかもしれない。
を論じる際、「最初の 2 つの下拍を長い音符で強調しながら」と述べているが(GMO s. v. “Rigaudon”)、
この「最初の 2 つの下拍」がまさにこの二分音符 2 つのパターンに相当するとみなすことができる だろう。一方ランスロは和声的分析を行わなかったため15)、この状態を旋律のリズムだけを通じて 捉え、結果二分音符 2 つの旋律リズムという、異なる視点からの特徴を指摘することになったといえる。
逆にいえば、この型がフレーズの最後に来る場合は、音価の長い和声リズムが最後に来ることに よって、あたかも和声リズムの変化にブレーキがかかるように聞こえるはずである。実際、
1697.05/Rg1a は 3 小節目にこの型が現れ、結果として和声リズムが遅くなっていっている。この場 合は GMO での言及とは矛盾することとなる。実際、ランスロも、この二分音符 2 つの型は「フレー ズの冒頭か最後に現れる」と指摘しており、必ずしも和声リズムの加速が起こるわけではないこと が指摘されている。
GMO の記事で取り上げられていた楽曲例は、偶然か恣意的かいずれも二分音符 2 つのリズムが フレーズの前方に位置しているものであった。これを分析すれば和声リズムが加速するようにみな せるが、実際には二分音符 2 つの型の出現位置によって和声リズムは変化する。本論の分析結果か らは、和声リズムの加速が全てのリゴドンを特徴付ける一般的特徴と断言することはできず、あく までもいくつかの曲例においてこのような手法が観察されるという指摘にとどまるものとみなすべ きであろう。したがって和声リズムの加速と表現するよりも、二分音符 2 つの型が用いられること をリゴドンの特徴とみなした方が、より客観的なリゴドンの記述といえるのではないかと考えられ る。
5―4―3 アウフタクト
楽曲冒頭のアウフタクトの長さは、どちらも殆どがスキーマの半分の長さのアウフタクトを持っ ていた〔表 3〕。ブレは 39 曲中 37 曲、リゴドンは 48 曲中 42 曲で、四分音符 1 つ分の長さであっ た16)。ただし 1688.01/Rg1a, 1b、1706.03/Rg1a, 1b の 4 曲は音価を 2 倍にした場合、四分音符 1 つ分 のアウフタクトと同型になるため、実質的にリゴドンは 48 曲中 46 曲がこのアウフタクトの形状と みなせる。これは、四分音符 1 つ分、および八分音符 2 つ分という表現で言及していた先行研究(Ellis 1967: 47)、ひいてはそれの根拠となっている 18 世紀の複数の文献で指摘されていたことを裏付け ることとなる。
15) ボーシャン=フイエ式記譜法の舞踏譜には旋律しか音楽が掲載されない。
16) 例外的存在についての詳細は研究対象楽曲一覧、および中村 2015 参照。
〔表 3〕研究対象楽曲の楽曲冒頭のアウフタクトの長さ
なし 四分音符 1 つ分 ( ) ( ) その他
ブレ 0 37(95%) (23) (14) 2
リゴドン 2 42(88%)[実質 46(96%)] (38) (4) 0
マールプルクの言説を検証するために、これらのアウフタクトの音形が具体的にどのような音符 で構成されているかを観察すると、ブレでは 37 曲中 23 曲が四分音符 1 つ、14 曲が八分音符 2 つ のアウフタクトで開始されている。一方リゴドンは 46 曲中 38 曲が四分音符 1 つ(ないしそれ相当)
であったが、4 曲は八分音符 2 つで構成されていた(〔表 3〕( )、( )列参照)。確かにブレと比 較してもリゴドンのアウフタクトは四分音符 1 つで開始される例が非常に多いという点ではマール プルクの指摘は当たっているが、必ずというわけではない点で正確とはいえない。
6 まとめ
以上のように、用いられる特徴的リズムに関しては、ブレのシンコペーションが実際には用いら れない楽曲も多かったのに対し、二分音符 2 つのリズム型は殆どのリゴドンで観察された。とりわ け二分音符 2 つ型は、リゴドンのうち単独で構成された楽曲には例外なく含まれ、組になった曲で は構成楽曲のいずれかで必ず観察された。組になった曲全体を 1 曲と捉えた場合、これはリゴドン が必ず持っている必須の要素となり、リゴドンを明確に特徴付けるリズム型とみなすことができる。
一方でブレのシンコペーションは必ずしも全てで用いられるものではないことも確認された。先行 研究ではブレのシンコペーションばかりが注目されていた中で、この事実は重要な発見である〔表 4〕。
さらに、特にリトルによって展開されてきた、これらのリズム型のフレーズ構造と結びつきも再 度捉えなおされるべきであろう。ブレでもリゴドンでもこれらの用いられる位置は、必ずフレーズ 構造と結び付けられるものではない。偶数小節にシンコペーション、フレーズ冒頭か末尾に二分音 符 2 つの型が用いられる例は確かに目に付くものの、それらは舞曲の作曲技法上必ずしも守られる べき法則とはいえなかった。フレーズとの結びつきは個別の楽曲分析の中で考察されるべき様式研 究の領域に属するものといえよう。
先述の 1709.02/Br1 など、いずれの場合においても例外的存在はあるが17)、いずれも研究対象全体 から見てこれらの楽曲が少数派であったことは明らかである。しかしながら、またこの範囲以外に
17) 本論での研究範囲内でのそのような存在については中村 2015 参照。
〔表 4〕舞踏種を特徴付けるリズム型の比較
ブレ(全 39 曲) リゴドン(全 48 曲)
シンコペーション 23 曲(55 箇所) 0 曲
二分音符 2 つ 5 曲(12 箇所) 42 曲(158 箇所)
目を向けると、必ずしも全てのブレやリゴドンに当てはまるわけではない。既に GMO の記事は、
シンコペーションが用いられているリゴドンの存在を指摘した上で、「シンコペーションを含まな いことがリゴドンの特徴とはならない」と述べている。また、ランブランツィ Gregorio Lambranzi(生 没 年 不 詳 ) の Neue und curieuse theatralische Tantz-Schul.(1716) に 掲 載 さ れ た 2 曲 の ブ レ(p. 5:
Bourre; p. 12: Bourre)と 4 曲のリゴドン(p. 6: Rigaudon, pp. 32―33: Rigaudon, p. 49: Riguadon; Part II: p.
31: rigadon)は、本研究で明らかになったものとは真逆の特徴を備えている。p. 12 のブレは全 16 小節中、二分音符 2 つのパターンが 3 箇所で出現する一方で、シンコペーションは現れない。他方 p. 6 のリゴドンは、12、13 小節の 4 つ並んだ四分音符の 2、3 個目がタイでつながれており、シン コペーションのリズムを形成しているのである。
ただし、これらは時期・場所・楽曲の用途が本論で取り扱ったものとは異なっていることを考慮 すべきである。GMO が指摘したリゴドンはゴットリープ・ムッファト Gottlieb Muffat(1690―
1770)の《音楽作品 Componimento musicale》(1739ca.)のものであり、本論で取り扱った時代範囲 よりも後にドイツ語圏のアウグスブルクで、鍵盤楽器のために作曲されたものである。ランブラン ツィの資料は図版の下に説明書きがなされるという体裁をとるが、そこで舞踏種の名称に触れられ ることは無く、したがって舞曲自体のタイトルに関しての関心は薄いと考えられるため、楽曲に付 された舞踏種名が間違っている可能性も十分に考えられる。
これらの矛盾は地域・時代・曲種によって様式が異なる可能性についての示唆を与えるものであ るが、本論では舞踏が最も隆盛を極めた時期・場所において、実際の踊りの伴奏として作曲された リゴドンがシンコペーションを持たない、という点を分析の成果として着目することとする。
■参考文献■
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資料:研究対象楽曲一覧
楽曲番号:「研究対象資料および楽曲一覧」に定める研究対象楽曲の番号
S:記譜上の拍子記号 T:実質的な拍子 A:アウフタクト F:形式(b:二部形式 r:ロン ドー) E:速度標語 SG:総スキーマ数(総小節数の 2 倍:1 小節=二分音符 2 つ分のため)
・空欄は記載なし、または該当なし。
・拍子にアステリスクの付いた 4 曲は、音価パターンの分析に際しては記譜上の音価を 2 倍にして 統計をとっている。
・本文で集計した以外のリズム型と、アウフタクト、終始の小節、シンコペーションなど、スキー マより短い/長い音価を含むリズム型の統計結果は表に現れない。
・装飾音符や装飾的と解釈できる十六分音符は無視し、それが無いものとした場合のリズム型に含 めて統計をとっている。例(いずれも中央の十六分音符が両端の同度の音の 2 度下の場合):
→ ; → 。
ブレ
楽曲番号 S T A F E SG syn
1683.01/Br1a 2 2/2 b 44 0 19 2 4 9 2
1683.01/Br2 2 2/2 b 36 0 20 0 0 8
1687.01/Br1 2 2/2 b 24 0 3 0 2 7 1
1688.01/Br1 2 2/2 r 35 4 20 0 0 6
1688.01/Br2 2 2/2 r 31 4 12 3 0 4 2
1689.02/Br1 2/2 b 40 1 4 16 3 14 1
1694.01/Br1 2 2/2 r 54 0 26 0 13 5 1
1694.02/Br1a c¦ 2/2 b 40 0 10 5 8 3 3
1694.02/Br1b c¦ 2/2 b 40 0 9 7 6 4 2
1695.03/Br1a c¦ 2/2 b 40 0 13 1 0 5 7
1695.03/Br1b c¦ 2/2 b 32 0 7 1 3 11
1696.02/Br1 c¦ 2/2 b 34 0 10 1 10 7 1
1696.02/Br2 c¦ 2/2 b 32 2 14 1 5 2 2 1
1697.03/Br1 2 2/2 b 28 0 6 4 2 8 1
1697.03/Br2 2/2 b 32 0 4 1 8 3 5
1697.03/Br3 2/2 b 32 0 13 0 3 4 3
1698.01/Br1a c¦ 2/2 r 50 2 12 6 16 6 1
1698.01/Br1b c¦ 2/2 b 30 0 15 4 4 3
1698.01/Br1c c¦ 2/2 b 24 1 12 0 1 5
1699.01/Br1 2 2/2 b 24 0 14 1 2 3
1699.01/Br2 2 2/2 b 48 0 24 0 8 4 3
1699.02/Br1ac 2 2/2 r 48 2 25 2 7 2 2
楽曲番号 S T A F E SG syn
1700.01/Br1 2 2/2 b 36 1 8 4 4 7 3
1701.03/Br1 2 2/2 b 40 2 27 1 3 1
1701.03/Br2 2/2 b Gay. 40 0 18 2 6 2 4
1702.02/Br1 c¦ 2/2 b 32 1 6 0 1 10 2
1703.01/Br1a 2 2/2 b 36 7 20 0 3 0 2
1703.02/Br1 2 2/2 r Gay. 48 0 30 2 10 0
1704.01/Br1 c¦ 2/2 b 24 4 6 0 4 2 1 1
1705.01/Br1 2 2/2 r 48 0 15 3 6 12 3
1706.03/Br1 2 2/2 b 54 3 8 4 2 19 3
1709.02/Br1 2 2/2 b 48 12 11 5 9 3 6
1710.01/Br1 2 2/2 b 48 1 34 0 2 5
1710.02/Br1 2 2/2 b 40 1 29 3 3 2
1710.02/Br2 c¦ 2/2 b 32 0 19 1 7 1
1712.04/Br1 2/2 b 28 0 10 3 7 0 2
1713.01/Br1 2 2/2 b 40 0 13 4 11 2 2
1714.03/Br1 2 2/2 r 48 2 18 4 9 4
1714.03/Br2 2 2/2 b 32 0 23 2 3 0
リゴドン
楽曲番号 S T A F E SG syn
1688.01/Rg1a c¦ *2/2 b 40 11 8 0 4 3 5
1688.01/Rg1b *2/2 b 24 1 12 2 0 3
1688.01/Rg2 2 2/2 b 32 5 17 3 0 2 2
1693.02/Rg1a c¦ 2/2 b 32 13 11 4 2 0 7
1693.02/Rg1b c¦ 2/2 b 32 5 24 3 2 0
1694.02/Rg1a c¦ 2/2 b 48 14 8 6 0 0 6
1694.02/Rg1b c¦ 2/2 b 48 0 16 6 2 2 2
1695.02/Rg1a c¦ 2/2 b 40 13 19 6 4 0 6
1695.02/Rg1b c¦ 2/2 b 42 5 25 7 3 0 2
1697.02/Rg1a c¦ 2/2 b 48 12 25 3 2 0 6
1697.02/Rg1b c¦ 2/2 b 48 3 33 3 3 0 1
1697.03/Rg1a 2 2/2 b 40 4 17 8 3 2 2
1697.03/Rg1b 2/2 b 32 4 14 4 5 1 1
1697.04/Rg1b 2 2/2 b 48 14 19 3 0 6 7
1697.04/Rg1c 2 2/2 b 48 4 22 3 0 1 2
1697.05/Rg1a 2 2/2 b 32 8 14 2 4 0 4
1697.05/Rg1b 2 2/2 b 48 0 19 3 18 2
楽曲番号 S T A F E SG syn
1698.01/Rg1a c¦ 2/2 b 40 6 23 3 2 0 2
1698.01/Rg1c c¦ 2/2 b 32 8 14 6 0 0 4
1698.01/Rg1d c¦ 2/2 b 48 13 18 8 3 0 6
1699.01/Rg1a 2 2/2 b 32 0 24 2 0 0
1699.01/Rg1b 2 2/2 b 48 17 19 0 0 6 7
1699.02/Rg1a 2 2/2 b 32 6 13 1 6 0 3
1699.02/Rg1b 2 2/2 b 32 9 12 1 4 0 4
1700.01/Rg1a 2 2/2 b 48 14 14 0 10 4 5
1700.01/Rg1b 2 2/2 r 44 8 19 2 3 4 4
1701.02/Rg1a 2 2/2 b 48 14 16 0 0 0 6
1701.02/Rg1b 2 2/2 b 32 8 14 0 2 0 4
1702.01/Rg1a 2 2/2 b 32 2 17 2 2 1 1
1702.01/Rg1b 2 2/2 b 48 4 35 0 1 2 1
1704.02/Rg1a 2 2/2 b 32 0 14 4 6 2
1704.02/Rg1b 2 2/2 b 44 14 15 8 1 0 7
1705.03/Rg1a 2 2/2 b 48 5 26 1 7 4 1
1705.03/Rg1b 2 2/2 b 38 8 19 3 4 0 4
1706.02/Rg1 2 2/2 b 32 6 11 3 4 4 3
1706.03/Rg1a c¦ *2/2 b 36 3 6 5 3 11
1706.03/Rg1b c¦ *2/2 b 40 9 10 5 0 4 4
1708.01/Rg1a 2 2/2 b 32 6 14 0 3 1 3
1708.01/Rg1b 2 2/2 b 32 7 13 2 3 3 3
1710.01/Rg1a 2 2/2 b 48 12 9 9 10 2 7
1710.01/Rg1b 2 2/2 b 32 8 7 6 6 1 5
1712.01/Rg1a 2 2/2 − b 48 13 25 1 5 0 3
1712.01/Rg1b 2 2/2 − b 32 2 20 2 4 0 1
1713.01/Rg1 c¦ 2/2 b 32 6 12 2 7 0 3
1713.02/Rg1 2 2/2 b 40 2 22 2 4 0 1
1714.02/Rg1a c¦ 2/2 b 52 16 20 5 2 1 8
1714.02/Rg1b 2 2/2 b 40 3 23 5 4 0 1
1715.01/Rg1 2 2/2 b 48 8 30 0 0 0 4
The distinction between bourrée and rigaudon in theatrical works performed during the reign of Louis XIV: through the characteristic rhythmic figure
Ryo NAKAMURA
Bourrée and rigaudon, French dance music in the seventeenth and eighteenth centuries, have been understood as similar dance types. Even according to the contemporary dictionaries and treatises, they are both simply described as having a duple time, fast tempo and a crotchet-length up-beat. The distinction between these dance music types are unknown, except for the rhythmic figure: bourrée often has syncopated rhythm, and the harmonic and rhythmic activity of rigaudon accelerate to the end of phrases. Moreover these distinctions are not necessarily in common: bourrée without syncopation is known, and the acceleration of rigaudon has not fully been studied. This paper investigates the bourrée and rigaudon in theatrical works performed by Académie Royale de Musique between 1671 and 1715, during the reign of Louis XIV, and verifies the distinctions of these two dance types through statistical research.
39 bourrées and 48 rigaudons are studied in this paper. Almost all of these pieces, apart from only a few exceptions in each type, are characterized by double time and crotchet-length up-beat: these elements cannot discriminate the two dance types. The syncopation figure is observed in 23 bourrées: this figure is considered certainly as a feature of bourrée, but it is not an indispensable one. On the contrary, rigaudon has a distinctive feature, “two-minim figure”, which is a group of two minim note in a bar. This figure appears in all of independent rigaudons, and either of all paired or sequence-composed rigaudons: this figure is an indispensable feature of rigaudon. Two-minim figure also explains the above-mentioned acceleration: when this figure appears at the beginning of a phrase in a context of smaller notes, the rhythm and its homophonic harmony seems to be accelerated.
These rhythmic figures are nearly incompatible features of these two dance-types: in only five bourrées the two-minim figure is observed, and no rigaudon has the syncopation figure. Though it is only the result in the French theatrical works between the end of the seventeenth and beginning of the eighteenth centuries, these figures seem distinctive elements of bourrée and rigaudon.
ルイ 14 世治世下の劇場作品におけるブレとリゴドンの区別
―特徴的リズム型を通じて―
中村 良
フランスのいわゆるバロック・ダンスとして知られるブレとリゴドンは、類似するダンスの種類
(以下舞踏種)として理解されてきた。17 世紀後半から 18 世紀前半の当時の事典項目や文献を参 照しても、両者は 2 拍子の速いテンポで、四分音符 1 つ分のアウフタクトを持つという点が指摘さ れているにとどまる。これらの舞曲の区別は、ブレがしばしばシンコペーションを持ち、リゴドン がフレーズ内での和声とリズムの加速を特徴としている、というリズム型に関する事項を除いて知 られていない。その上、シンコペーションを持たないブレの存在が既に指摘され、リゴドンの和声 的加速については十分な考察がなされておらず、これらが双方を特徴付ける必須の要素というわけ ではない。本論ではルイ 14 世の王立音楽アカデミー(1671―1715)で上演された劇場作品から、出 版譜でタイトルがつけられたブレ及びリゴドンを取り扱い、統計的調査によってこれらの 2 つの舞 踏種の区別を検証する。
調査範囲には 39 曲のブレと 48 曲のリゴドンが含まれる。全ての楽曲が 2 拍子で、僅かな例外を 除き殆どが四分音符 1 つ分の長さのアウフタクトを持っているため、これらの要素によって 2 つの 舞踏種が区別されないことが確認された。シンコペーションのリズム型は 23 曲のブレで確認され、
確かにこれがブレを特徴付けるものであることが明らかになったが、これが必須のものではないこ とも確認された。一方で、リゴドンは 1 小節に二分音符が 2 つで構成される二分音符 2 つの型を、
特徴的な要素として持っていた。このリズム型は単独のリゴドン全てと、複数組で作曲されたリゴ ドンの少なくともどちらかで必ず観察され、これが本論での研究範囲の中ではリゴドンを特徴付け る必須の要素であることが明らかになった。この二分音符 2 つの型は先述の和声リズムの加速も説 明するものであり、小さな音価で構成されているフレーズ中で冒頭にこのリズム型が表れる場合、
旋律のリズムとそれにホモフォニックに付けられた和声は加速していくようにみなしうる。
これらのリズム型は、2 種の舞踏種をそれぞれに特徴付ける要素であることは明らかである。二 分音符 2 つの型はブレでは僅か 5 曲でしか現れず、シンコペーションの型はリゴドンには一切表れ ない。17 世紀後半から 18 世紀前半のフランスの劇場作品の範囲内での結果ではあるが、これらが ブレとリゴドンを区別する要素であるとみなせる。