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競泳トレーニング後の筋振動が乳酸代謝に与える影響

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Academic year: 2021

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競泳トレーニング後の筋振動が乳酸代謝に与える影響

The Muscle Vibration after a Competitive Swimming Training Reduces the Post-Exercise Blood Lactate Accumulation

松 本 高 明*,内 藤 祐 子*,青 葉 貴 明*

高 橋 雄 介**,阿 部 太 輔***,浅 井 泰 詞***

和 田 壮 生***,和 田 匡 史****,井 上 大 輔*****

Takaaki MATSUMOTO*,Yuko NAITO*,Takaaki AOBA*

Yusuke TAKAHASHI**,Daisuke ABE***,Taishi ASAI***

Masaki WADA***,Tadashi WADA****,Daisuke INOUE*****

ABSTRACT

【Purpose】The purpose of the research is to clear whether or not to vibrate the muscle immediately after competitive swimming training can decrease the accumulation of lactic acid.【Method】The 16 Japanese collagiate student championship participants were evaluated. These students were divided into two groups randomly. One day, for the one group (VG) the blood lactates were taken from finger and foot tip at pre-exercise, post immediately, after 5, 10, 30 minutes.

After training (main swim training: Free style swim, 50m×20 times all out), immediately the muscle vibration was given to the upper limb by the gripping muscle vibrating equipment (elk corporation, Tokyo Japan). The amplitudes of vibration were 20Hz. The duration was three minute, and the vibration times were one time. For the other group (NVG), without muscle vibration, the same measurements were performed. Another day, it replaced a group and the same measurement was done.【Results and Conclusions】The lactic acid values of VG at post exercise, 5, 10, 30 minutes after exercise were 13.7±2.4, 11.2±2.6, 9.8±2.9, 4.7

± 1.9 mmol/l, and NVG were 13.6 ± 1.7, 11.9 ± 3.1, 9.5 ± 3.6, 5.1 ± 2 mmol/l. The significance differences of the lactate values were not recognized between VG and NVG in all periods. From this result, only the time which was giving vibration to the muscle had the possibility that the metabolism of lactic acid was forwarded.

Key words; competitive swimming training, lactic acid, portable gripping muscle vibrating equipment

* 国士舘大学体育学部(Faculty of Physical Education, Kokushikan UNIV.)

** 中央大学理工学部(Faculty of Science and Engineering, CHUO UNIV.)

*** 国士舘大学大学院スポーツ・システム研究科(Graduate school sports system family, Kokushikan UNIV.)

**** 東京慈恵会医科大学(The Jikei University School of Medicine)

***** 国士舘大学理工学部(School of Science and Engineering, Kokushikan UNIV.)

AND SPORT SCIENCE VOL.27, 25-30, 2008

原  著

(2)

は じ め に

競泳における選手一人の一日当たりの試合出場 数は、通常日本学生選手権の場合、予選、B決勝、

リレー予選、リレーB決勝と4回を数える。さら に、同日に異なった種目にエントリーした場合に は、さらに泳ぐ回数が増える。選手は、1つのレー スが終わるごとに、疲労を取り除くために、ダウ ンスイムを行い、更にマッサージを受けてコンデ ィショニングを整える。選手の過密な試合当日の タイムスケジュールを考えたときに、いかに早く 疲労をとるかは競技力を向上させるためには重要 な要素の一つとなると考えられる。筋疲労の程度 を評価するために乳酸を指標にすることは、競泳 では日常的に行われ、ダウンスイムに関する乳酸 除去の研究では、水泳の場合、競技後のクーリン グダウンの至運動強度は70%V

4

O 2max 程度と報告さ れている 1) 。しかしながら、deviceを用いて、レ ース後の乳酸の代謝に与える影響について検討し た論文は検索した限り見当たらない。マッサージ には、筋を揉捏する、指圧する、撫でる、震顫す るなど様々な手法があるが、技術的な熟練性を必 要とするため、必ずしも均一な刺激を与えるもの ではない。また、マッサージを施行するトレーナ ーは必ずしも複数ではなく、選手の希望の時間に 手技を受けられる機会も少ない。一方、筋振動装 置は、振動の周波数や時間を設定できるため、均 一な刺激を与えやすい。従来の筋振動装置は、大 きな据え付け型のものがほとんどで、練習場や試 合場に持っていくことが不可能であった。これら 筋振動装置は、トレーニング機器として用いられ てその種々の効果が報告されている 2)3)4)5) 。こ の振動によるトレーニング効果を狙って、近年携 帯できる筋振動装置が市販された。

そのため、この携帯型の装置が疲労 回復に有効であれば、トレーニング 機器としてばかりではなく、選手の 試合当日のコンディショニングにも 役立つ可能性があると考えられる。

そこで、競泳のレースを想定した練習直後に、

握り形式の携帯型筋振動装置を用いて、上肢の筋 を振動させ、蓄積された血液中の乳酸にどのよう な影響を与えるかを検討することを目的とした。

方  法

Ⅰ.被験者

被験者は、日本学生選手権に出場経験のある男 子大学生 16 名とした。これら被験者に対し、ヘ ルシンキ宣言に基づき、研究の目的、方法、手順 について十分に説明し、書面にて同意を得た。選 手には、研究の参加は自由で、途中で中止するこ とも可能であることも説明した。研究の成果につ いては、個人が特定されない方法で公表すること にも同意を得た。

被験者の、身体的な特徴を表1に示す。

Ⅱ.実験手順と測定項目

被験者を、ランダムに振動を与える群(VG)、

と振動を与えない群(NVG) に分けた。 3日の 間隔をあけて、朝7時から以下のプロトコールに て同じ実験を行った(図1)。最初に選手は、練 習を開始する前に乳酸を測定した。各自、ウオー ミングアップを行い、全力泳にて、50 mを 20 回 自由形で泳いだ。その直後に乳酸を測定し、全力 泳後3分間、筋振動装置にて、筋振動を与え、以 後全力泳直後、 5分、10 分、30 分後に乳酸の測 定を行った。

乳酸の測定は、手指の先をアルコール綿にて消 毒し、十分に清潔なガーゼで拭き取ったのち、穿 刺針にて血液を採取して、CDD 酵素電極法にて ラクテートプロ (アークレー社 京都)を用い て測定した。(図2)

表1 Physical characteristics

(3)

測定時は、座位にて肘を屈曲させ、楽な位置で、

両手で握って保持させた。筋振動の振幅は 20Hz とした。

筋振動装置は、 上肢握り様式の筋振動装置 Galileo Up-X Dumbell (Novotec Medical GmbH, Pforzheim, Germany)を用いた(図3)。

図2 Lactate Measurement

図1 protocol

図3 muscle vibration device

(Galileo Up-X Dumbell, Novotec Medical GmbH, Pforzheim, Germany)

(4)

す影響を検討した。その結果、振動群、非振動群 ともに、有意に経時的に乳酸値は減少した。しか しながら、振動装置を用いた群と、用いなかった 群との有意差は認めなかった。ただ、筋振動を3 分間与えた後の血中乳酸値は振動群のほうが低下 する傾向を認めた。その後、有意差はなかったも のの 10 分後では、 振動群のほうが乳酸値の低下 は鈍くむしろ非振動群のほうが低下し、30 分後 では振動群が非振動群よりも乳酸値が減少する傾 向を示した。

先行研究によれば、激運動後の乳酸の変動につ いては、クーリングダウンとして軽い運動強度で 運動を持続することが安静状態よりも速やかに乳 酸を除去できると報告されている 6)7) 。この理由 として、安静よりも運動により筋血流量が増し、

非振動群も筋振動の期間は同様に安静 座位を取らせた。2回目の乳酸測定後は、

全員床上で座位を取らせ安静にさせた。

Ⅲ.統計処理

結果は、 平均値と標準偏差で示した。

統計処理は、repeated measure ANOVA を用いたのち、多重比較検定を行い、有 意率を 0.05 とした。 統計ソフトは Stat View Ver.5 を使用した。

結  果

安 静 時 の VG 群、

NVG 群の乳酸値は 1.22±0.1mmol/ml,

1.32 ± 0.1mmol/ml と 差 を 認 め な か っ た。

系時的な乳酸値の 変 動 は 、 V G 群 、 NVG 群ともに、 有 意に減少した。しか しながら、運動直後、

5 分 後、10 分 後 の

VG群、NVG群間の乳酸値の平均値の差は認めな かった(表2)。ただ、図4で示すように、運動直 後のVG群とNVG群の乳酸値の平均値は、13.7±

2.4、は13.6±1.7mmol/mlとほぼ同一の値を示し た一方で、振動後の VG群の運動5分後の乳酸値 は11.2±2.6mmol/ml、NVG群は11.9±3.1mmol/

ml と低い傾向にあり、10 分後では、VG 群が 9.8

± 2.9mmol/ml、NVG群が 9.5± 3.6 mmol/mlと なり、30分後の平均値は VG群が 4.7± 1.9mmol/

ml,NVG群が5.1±2mmol/mlとなった。

考  察

本実験では、携帯型上肢握り様式の筋振動装置 を用いて、競泳トレーニングの乳酸の代謝に及ぼ

表2 The concentrations of lactic acids by time course (mmol/l) 図4 The concentrations of lactic acids

(5)

ンプ力が変化すると報告していて、一回短時間の 筋振動によるトレーニング効果に乳酸が関与して いるかは懐疑的である。クーリングダウンが、乳 酸を除去するのは有効であっても、その事が、運 動のパフォーマンスを向上させるのかについては 議論が多い。しかしながら、筋振動装置をクーリ ングダウンとして使用することで、神経筋協応性 に効果をもたらし、さらにパフォーマンスを向上 させるかについては興味深く、今後の研究の課題 である。また、本研究結果では 30 分後の血中乳 酸値では筋振動群のほうが、非筋振動群に比べ血 液中の乳酸濃度が低くなる傾向を示している。こ のことは、筋振動によって、筋の乳酸の産生を促 すよりも、筋や動脈の血流の増加が維持され、乳 酸の代謝を促進した可能性が示唆される。

今回の研究によって、筋振動装置が激運動後の 末梢血の乳酸値の変化に影響を与えることが示唆 されたが、クーリングダウンとして効果のある装 置かどうか判定するには、筋振動の振幅数、時間、

また、コントロール群として従来のダウンスイミ ングとの比較を検討していくことが必要であると 考えられた。また、今後、筋振動による筋血流量 の変化、運動後ではなく安静時から筋振動を与え ることで、筋振動が乳酸の産生に如何にかかわっ ているのかを検討していきたい。

なお、この研究は、平成 20 年度国士舘大学体 育研究所の助成金によって行われた。

引用・参考文献

1) 岩原 文彦、松本 高明、浅見 俊雄:4mMOBLA を基準としたクーリングダウン泳について、トレ ーニング科学,12 (1), 1-8, 2000

2) Darryl J Cochrane, Emma J Hawke : EFFECTS OF ACUTE UPPER-BODY VIBRATION ON STRENGTH AND POWER VARIABLES IN CLIMBER.J Strength Cond Res 21, 527-531, 2007 3) D J Cochrane, S R Stannard.: Acute whole body

vibration training increases vertical jump and flexibility performance in elite female field hockey players. J Strength Cond Res 21, 527-531, 2007

筋からの乳酸の放出が促されるということ、また、

心筋、骨格筋の遅筋での酸化基質として乳酸の酸 化が促されるということが報告されている。軽い 運動がよいという根拠として、運動強度が高くな ると、新たな乳酸が産生され、肝臓、腎臓の臓器 血流量が低下し、乳酸の肝臓内への取り込みや、

排泄が阻害されるということが挙げられている。

また、運動強度が低すぎると、筋血流量が低下し、

また、エネルギー源としての筋の乳酸の利用が低 下するからと報告されている 1)

本研究では、安静による乳酸の減少と、筋振動 による乳酸の減少を比較したモデルと考えられ る。筋振動が、筋血流量に対する影響に関しては、

Kernchan-Shindl Kら 8) によれば、全身の筋振動 を 26Hz で9分間全身に与えると、膝窩動脈の血 流が有意に上昇し、大腿四頭筋と下腿三頭筋の筋 血流が上昇傾向を認め、この時には、血圧と心拍 動数には影響を与えなかったという。

また、上肢に与える筋の振動が、内臓臓器の血 流量を変化しているかどうかは検索した範囲内で は、報告はなく、推測の域を出ないが、腎血流量 を減少させるとは、考えにくい。

以上のことから考えると、今回、筋振動直後の 乳酸の低下傾向は、動脈血の血流が増加し、筋血 流量が増加したことにより、筋からの乳酸の放出 が促されたことによると考えられる。一方、運動 10 分後の乳酸の値が、 5分後に比べて筋振動を 加えた群が高い傾向を示したのは、筋振動により、

筋収縮が行われ、乳酸が産生された可能性がある。

実際、J.Rittwergerら 9) の報告によると、6分間 の立位による 28Hz の全身の筋振動装置での筋振 動により、1.69mmolから3.5mmolまで、血中乳酸 値が上昇したとの報告があり、筋振動そのものが、

乳酸を上昇させる可能性を示唆している。D J

Cochrane 3)9) らは、数分だけ一回のみ短期間で

筋振動を与え、ジャンプ力があがったとの報告を

しているが、握力といった静的な筋力の変化はな

く、筋の柔軟性が改善していることから、筋振動

は、筋伸長にかかわるレセプターに作用し、ジャ

(6)

8) Kerchan-Shindl K, Granpo S, Henk C, et al. : Whole-body vibration exercise leads to alterations in muscle blood volume. Clin Physiol 21, 377-82 : 2001

9) J, Rittweger, Marcus Mutschelknauss, Dieter Felsenberg : Acute changes in neuromuscular excitability after exhaustive whole body vibration exercise as compared to exhaustion by squatting exercise. Clin Physiol & Func Im, 23, 81-86 : 2003

10) D J Cochrane, S R Stannard : Acute whole body vibration training increases vertical jump and flexibility performance in elite female field hockey players. Br J Sports Med 39, 860-865 : 2005

4) C.Bosco et al.: Adaptive responses of human skeletal muscle to vibration exposure. Clin Physiol, 19 (2), 1999

5) Carmelo Bosco, et. al. Influence of vibration on mechanical power and electromyogram activity in human arm flexor muscles. Eur J Appl Physiol 79, 306-311 : 1999

6) 水上健一、藤枝賢晴:一両日に渡る反復短時間高 強度運動負荷モデルにおけるクーリングダウン強 度の違いが感情・気分と脳波に及ぼす影響、東京 学芸大学紀要芸術・ スポーツ科学系、58、129- 136、2006

7) 岩原文彦、伊藤雅充、浅見俊雄:自転車駆動によ

る無酸素性運動後の効果的なクーリングダウン強

度について、体力科学、52、499-512、2003

参照

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