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光注入により帯域拡大された半導体レーザにおけるカオス同期実験

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Academic year: 2021

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研究成果報告

(原稿受付日:平成 22 年 5 月 31 日)

光注入により帯域拡大された半導体レーザにおけるカオス同期実験

Experiment on synchronization of bandwidth-enhanced chaos in semiconductor lasers with optical injection

奥村 悠*、 会田 裕貴*、 内田 淳史*

Haruka Okumura

*

, Hiroki Aida

*

, and Atsushi Uchida

*

We experimentally investigate the synchronization of bandwidth-enhanced chaos in a semiconductor laser (drive laser) that is subject to optical injection from another chaotic semiconductor laser (injection laser) with optical feedback. Effective bandwidth enhancement is achieved over 12 GHz outside the injection locking range. The bandwidth-enhanced chaotic signal of the drive laser is injected into a third semiconductor laser (response laser) for synchronization. Synchronization of chaos with a bandwidth greater than 12 GHz is observed between the drive and response lasers, under the injection locking condition. High-quality chaos synchronization is observed within the injection locking range between the drive and response lasers.

Keywords: Chaos, Laser, Synchronization, Bandwidth enhancement, Security, Information technology

1.

はじめに

近年、半導体レーザの特徴である数

GHz

オーダでの 超高速不規則振動を利用した光カオス秘匿通信の研究 が盛んに行われている1) 。光カオス秘匿通信は送信者 側でカオス波形にメッセージを埋め込み、受信者側で はカオス波形を差し引くことでメッセージの送受信を 行う方法である。この時、送受信間でカオス波形を共 有するカオス同期法がメッセージの符号化に必要不可 欠となる。代表的な光カオス秘匿通信方式として

chaos masking, chaos modulation, chaos shift

keying

等が挙げられ、これらは既に実証実験が達成さ

れている 2)。近年の研究では、市街地へ敷設された光 ファイバ回線において高速光カオス長距離通信が実験 的に実証されている1)

光カオス秘匿通信において送受信できるメッセージ

の伝送速度はカオス振動の周波数によって決まるため、

より高速な通信を実現させるためには広帯域なカオス キャリアを発生させる必要がある。近年の研究では、

外部レーザからの光注入により帯域拡大されたカオス 同期が数値計算により達成されている 3)。しかしなが ら、光注入により

10GHz

以上に帯域拡大されたカオ ス同期の実験的観測は報告されていない。

10GHz

を超 える広いスペクトル帯域を持つカオス光はレーザ装置 と検出機器の両方に高周波雑音成分を含むため、数

GHz

付近の遅いカオス振動よりも同期を得ることが 困難と予測される。

そこで本研究では、光注入により帯域拡大された半 導体レーザにおけるカオス同期を実験的に観測するこ とを目的とする。2 つの半導体レーザを一方向に結合 することで、カオスの帯域拡大を実験的に達成する。

また、帯域拡大された半導体レーザカオスをさらに別 の半導体レーザに一方向に注入することで、カオス同 期を実験的に観測する4)

*

埼玉大学 大学院理工学研究科 数理電子情報部門

Department of Information and Computer Sciences, Saitama University, 255 Shimo-Okubo, Sakura-ku, Saitama City, Saitama, 338-8570, Japan

埼玉大学 工学部紀要 第43号 2010年度

29

(2)

2.

実験装置図

3

つの半導体レーザを用いたカオスの帯域拡大と同 期の実験装置図を

Fig. 1

に示す。本実験では

3

つの分 布帰還型(DFB)半導体レーザ(波長

1547 nm)を使用し

た。3 つの半導体レーザは同一の基板から作られてお り、それらは類似したレーザパラメータ値を有してい る。ここでは外部注入用レーザを

Injection laser

と呼 び、Injection laserの光注入により帯域拡大されるレ

ーザを

Drive laser

と呼ぶ。さらに帯域拡大された

Drive laser

を 光 注 入 す る た め の 同 期 用 レ ー ザ を

Response laser

と呼ぶことにする。半導体レーザの注

入電流と温度は専用コントローラを用いて制御してお り、半導体レーザの波長は温度制御により

0.097 nm/K

の割合で精密に設定可能である。ここで温度調節分解

能は

0.01 K

である。各々のレーザの注入電流のしきい

I

th

8.7 mA (Injection laser)、 7.6 mA (Drive laser)、

9.2 mA (Response laser)である。

Injection laser

に外部鏡(M)を用い、戻り光を付加す ることでカオスを発生させた。外部鏡と

Injection

laser

との距離は

1.4 m

であるため、往復遅延時間は

9.3 ns

である。また戻り光量は可変減光フィルタ

(NDF)を用いることで調節した。一方 Drive laser

Response laser

には外部鏡を用いていない。Injection

laser

から発生されたカオス光はビームスプリッタ

(BS)によって分割され、一方は Drive laser

に注入され

る。このとき

2

つの光アイソレータ(ISO)と

2

つのλ / 2 板を用いることで一方向結合を達成させている。光注

入により

Drive laser

が帯域拡大カオスを発生するよ

うに、

Injection laser

Drive laser

の波長は調節され る。

次にカオス同期を実現するために、

Drive laser

から の帯域拡大カオス光は、アイソレータとレンズを通し

Response laser

へと一方向に注入される。各々のレ ーザ出力はビームスプリッタにより分割され、光アイ ソレータを通り、ファイバーコリメータ(FC)に注入さ れる。その後、光ファイバを通り光検出器(PD)によっ て電気信号に変換される。電気信号増幅器(Amp)によ って増幅された信号をディジタルオシロスコープ

(OSC)と RF

スペクトルアナライザ(SA)に送り、各々

のレーザの時間波形と

RF

スペクトルが観測される。

またレーザの光波長は光スペクトルアナライザにより 計測される。

3.

帯域拡大カオスの発生

初 め に レ ー ザ の 注 入 電 流 を 調 節 す る こ と で

Injection laser

Drive laser

の緩和発振周波数を共に

8.0 GHz

に設定した。この時の各レーザの注入電流は

Injection laser

44.39 mA (5.1 I

th

)、Drive laser

43.50 mA (5.7 I

th

)となった。Injection laser

に戻り光 を付加してカオスを発生させ、そのカオス光を

Drive

laser

に一方向に注入した。帯域拡大カオスを発生させ

るために、2 つのレーザ温度を調整することで光波長 の制御を行った。

Injection laser

の光波長は

1547.333 nm

に設定し、

Drive laser

の光波長を

1547.418 nm

設定した。この時

Injection laser

Drive laser

の光 波長差をインジェクションロッキングの範囲外の

+0.073 nm

に設定した。インジェクションロッキング

とは

2

つの半導体レーザの光波長が近い場合、長波長 の光の一部が短波長の光に注入されると、引き込みが 生じて

2

つのレーザの光波長が一致する現象である5) つまり本実験では

Injection laser

Drive laser

の光 波長が一致しない条件に設定してある。

M FC λ/2

ISO

ISO Amp

FC

BS BS

BS

M L

BS

Response laser

PD L

Amp PD L

M ISO

ISO Amp

FC PD

BS ISO

L

Digital Phosphor Oscilloscpe

Spectrum Analyzer

M

Injection laser

Drive laser

NDF

λ/2 L

M FC λ/2

ISO

ISO Amp

FC

BS BS

BS

M L

BS

Response laser

PD L

Amp PD L

M ISO

ISO Amp

FC PD

BS ISO

L

Digital Phosphor Oscilloscpe

Spectrum Analyzer

M

Injection laser

Drive laser

NDF

λ/2 L

Fig. 1 Experimental setup for the synchronization of bandwidth-enhanced chaos in three semiconductor lasers.

光注入により帯域拡大された半導体レーザにおけるカオス同期実験

30

(3)

Fig. 2(a)は Injection laser

の時間波形と、Injection

laser

を注入後の

Drive laser

の時間波形を示した図で ある。

Drive laser

のカオス振動が

Injection laser

より 速く振動していることが分かる。この時の

RF

スペク トルを

Fig. 2(b)に示す。中心周波数を見ると Injection laser

8.66 GHz

に対して注入後の

Drive laser

12.64 GHz

と高くなっていることが分かる。また、カ

オスの帯域幅についても調査を行った。本研究では

RF

スペクトル全体の強度の

80 %を含む周波数帯域を帯

域幅と定義している 4)。帯域幅を調査したところ、

Injection laser

では

9.48 GHz

であるのに対して、注 入後の

Drive laser

12.96 GHz

と帯域拡大している ことが観測された。以上より、

Injection laser

Drive

laser

の光波長を一致させない(インジェクションロッ

キングの範囲外)の場合に、

Drive laser

の帯域を拡大 することに成功した。

4.

帯域拡大カオス同期

次に

Drive laser

の帯域拡大カオスを

Response

laser

に一方向に光注入し、帯域拡大カオス同期実験を

行った。まず

Drive laser

Injection laser

からの光 注入によって帯域拡大され、その光波長は

1547.418 nm

から

1547.476 nm

に変化している。次に

Response laser

の注入電流を

13.84 mA (1.5 I

th

)

に調節し、緩和 発振周波数を

3.0 GHz

に設定した。

Drive laser

で発生 させた帯域拡大カオス光を一方向に

Response laser

注入し、カオス同期を達成させた。帯域拡大の場合と 対照的に、Response laserの光波長は

Drive laser

対してインジェクションロッキングの範囲内に設定し ている。この時、光注入前の

Response laser

の光波長

1547.264 nm

であり、

Injection laser

からの光注入 により帯域拡大された

Drive laser

との光波長差は

-0.212 nm

であった。

Fig. 3(a)は Injection laser, Drive laser, Response laser

の光スペクトル(光波長)である。

Injection laser

の光波長は帯域拡大させるために

Drive laser

と一致 していない事が分かる。一方、

Drive laser

Response

laser

の光波長はインジェクションロッキングによっ

て一致していることが分かる。これより、帯域拡大カ オス同期はインジェクションロッキング範囲内で達成 されている。この時の

Drive laser

Response laser

の時間波形を

Fig. 3(b)に示す。

時間波形を見ると

Drive laser

Response laser

はほぼ同一の出力振動をして おり、カオス同期していることが分かる。さらに

Fig.

3(c)に 2

つの時間波形の相関図を示す。この時の相互

相関関数を求めたところ、0.954 となり高い同期精度 を示した。またこの時の

RF

スペクトルを

Fig. 3(d)に

示 す 。

Drive laser

の 中 心 周 波 数 は

12.22 GHz、

Response laser

12.12 GHz

となった。また帯域幅を 求めると

Drive laser

12.28 GHz、Response laser

12.16 GHz

となり、ほぼ等しいことが分かる。

以上の結果により、12 GHz 周波数帯域における帯 域拡大カオスの高精度な同期を実験的に観測すること ができた。

-4.8 -4 -3.2 -2.4 -1.6 -0.8 0 0.8 1.6

-1.6 -0.8 0 0.8 1.6 2.4 3.2 4 4.8

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 Injection laser

Drive laser

In te ns it y [ a rb. u nits ] In te ns it y [ ar b. uni ts ]

Time [ns]

(a)

-60 -50 -40 -30 -20 -10

0 5 10 15 20

Po we r [d B m]

Frequency [GHz]

BW:12.96 GHz BW:9.48 GHz

f

peak

= 12.64 GHz f

peak

= 8.66 GHz

(b)

Fig. 2 Experimental results of bandwidth enhancement of chaos. (a) Temporal waveforms of the Injection and Drive lasers, and (b) their corresponding RF spectra. (b) f

peak

, peak frequency of the RF spectrum; BW, bandwidth of the RF spectrum.

埼玉大学 工学部紀要 第43号 2010年度

31

(4)

(a)

(b)

(c)

(d)

5.

おわりに

本研究では半導体レーザにおける帯域拡大カオス同 期の実験的観測を行った。はじめに

Injection laser

戻り光を付加することでカオスを発生させた。そのカ オス光を

Drive laser

に注入し、

2

つのレーザの光波長 を一致させない場合に、12 GHz を超える帯域拡大カ オスの発生を実験的に実現した。

ま た 帯 域 拡 大 さ れ た

Drive laser

の カ オ ス 光 を

Response laser

に注入し、12 GHzを越える帯域拡大 カオスの同期を実験的に観測した。Drive laser

Response laser

間でインジェクションロッキングを達

成させて光波長を一致させたところ、相互相関関数が

0.954

という高精度なカオス同期を達成した。

本研究で得られた知見は、10 GHz を超える高速光 カオス秘匿通信や高速物理乱数生成器における要素技 術として非常に重要である。

参考文献

1) A. Argyris, D. Syvridis, L.Larger, V. Annovazzi- Lodi, P. Colet, I. Fischer, J. Garcia-Ojalvo, C. R.

Mirasso, L. Pesquera, and K. A. Shore, Nature, vol.438, pp.343-346 (2005).

2) A. Uchida, F. Rogister, J. García-Ojalvo, and R.

Roy, Progress in Optics, edited by E. Wolf, vol.48, chap.5, pp.203-341, Elsevier, The Netherlands (2005).

3) Y. Takiguchi, K. Ohyagi, and J. Ohtsubo, Optics Letters, vol.28, pp.319-321 (2003).

4) H. Someya, I. Oowada, H. Okumura, T. Kida, and A. Uchida, Optics Express, vol. 17, no. 22, pp. 19536- 19543 (2009).

5) J. Ohtsubo “Semiconductor Lasers -Stability, Instability and Chaos-,” Second Edition, Springer-Verlag, Berlin (2008).

-90 -80 -70 -60 -50 -40 -30 -20 -10

1547 1547.3 1547.5 1547.8 1548

Injection Drive Response

Po w e r [ d B m ]

Wavelength [nm]

-6 -4 -2 0 2

-0.5 0 0.5 1 1.5

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4

D ri v e la se r [a rb . un it s ] R esp on se la se r [a rb . un its]

Time [ns]

Drive laser

Response laser

-0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8

-3 -2 -1 0 1 2 3

Drive laser [arb. units]

Re sp on se l a se r [a rb. uni ts ]

Cross correlation 0.954

-90 -80 -70 -60 -50 -40 -30 -20 -10

-80 -60 -40 -20 0 20

0 5 10 15 20

Respo n se pow er [dBm ]

Dr iv e po we r [d B m ]

fpeak= 12.22 GHz

BW:12.28 GHz

fpeak= 12.12 GHz BW:12.16 GHz

Frequency [GHz]

Response laser Drive laser

Fig. 3 Experimental results of synchronization of bandwidth-enhanced chaos. (a) Optical spectra, (b) temporal waveforms, (c) cross correlation, and (d) RF spectra of the Drive and Response lasers.

光注入により帯域拡大された半導体レーザにおけるカオス同期実験

32

Fig. 1 Experimental setup for the synchronization of  bandwidth-enhanced chaos in three  semiconductor lasers
Fig. 2 Experimental results of bandwidth enhancement  of chaos. (a) Temporal waveforms of the  Injection and Drive lasers, and (b) their  corresponding RF spectra
Fig. 3 Experimental results of synchronization of  bandwidth-enhanced chaos. (a) Optical spectra,  (b) temporal waveforms, (c) cross correlation,  and (d) RF spectra of the Drive and Response  lasers

参照

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