LCAを考慮した食料と競合しない地域バイオマス資 源の調査と利用
著者 村田 曜啓
発行年 2008‑01‑01
URL http://hdl.handle.net/10076/10793
LCAを考慮した食料と競合しない地域 バイオマス資源の調査と利用
平成20年度
三重大学大学院生物資源学研究科 博士前期課程 資源循環学専攻
村 田 曜 啓
平成20年度 修士論文
LCAを考慮した食料と競合しない地域 バイオマス資源の調査と利用
三重大学大学院 生物資源学研究科 資源循環学専攻
循環生物工学 食品資源工学教育研究分野
村田 曜啓
1.目次
1.目次‥‥‥‥.‥‥‥.‥‥.‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥.‥.‥‥‥.‥‥.‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥1 2.背景と目的...‥‥...‥‥‥.‥.‥‥‥.‥....‥‥.‥....‥...‥‥.‥‥.‥...‥.2 3.手法‥‥.‥.‥.‥‥.‥.‥‥.‥‥‥.‥.‥.‥‥.‥‥‥‥.‥..‥‥.‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥4
3.1.三重県のバイオマスの調査範囲‥‥‥‥‥‥..‥.‥‥..‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥.‖‥‥.‥.‥4 3.1.1.三重県の地勢と農林水産業の位置付け‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥.‥‥‥‥.‥.‥‥‥‥‥‥.4 3.1.2.三重県のバイオマス資源の検討‥‥.‥‥‥‥‥‥‥.‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥..7 3.2.バイオエタノール製造工程‥.‥‥‥‥‥.‥.‥‥‥‥.‥‥.‥.‥‥.‥.‥‥.‥‥.‥.‥.‥.9 3.2.1.糖化工程‥‥‥‥.‥.‥‥‥‥‥‥‥.‥.‥‥‥.‥‥‥‥‥.‥‥‥.‥‥.‥‥‥‥.‥‥9 3.2.2.エタノール発酵工程‥‥‥‥‥‥.‥‥‥.‥‥‥‥‥‥.‥‥.‥‥‥‥.‖‥‥.‥‥‥‥10
3.2.3.エタノール濃縮工程.‥.‖‥‥.‥‥.‥‥‥.‥‥..‥‥.‥‥‥‥‥‥.‥‥.‥‥.‥‥.10 3.3.ライフサイクル評価にあたっての調査範囲‥...‥‥‥‥.‥‥‥‥‥.‥‥‥‥..‥‥.10 4.結果‥‥‥‥‥.‥‥.‥.‥‥.‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥…..‥.‥‥‥‥‥‥.‥‥‥.12
4.1.三重県の食料と競合しないバイオマス資源の量‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‖‥‥.‥.‥‥12 4.2.三重県のバイオマスから期待できるエタノールの量‥‥‥‥.‥‥..‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.13 4.3.バイオエタノールのライフサイクルアセスメント‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥.‥‥‥‥‥.‥‥.14
4.3.1.デンプン系バイオマスからのエタノール製造.‥.‥.‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥14 4.3.2.セルロース系バイオマスからのエタノール製造‥‥‥‥..‥‥‥‥‥.‥‥‥.‥‥.‥‥.15 5.考察‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥.‥‥..‥‥.‥‥‥‥‥‥‥.‥‥.‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥18 5.1.三重県内のバイオエタノール期待可算量とその利用.‥.‥‥.‥.‥‥‥‥.‥‥.‥‥‥‥….18 5.2.ライフサイクル影響評価‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥..‥‥.‥‥‥‥‥‥..‥‥‥‥.‥‥.18 6.結論‥‥‥‥‥‥.‥.‥‥.‥‥‥‥..‥‥‥.‥‥‥.‥‥.‥‥.‥.‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.20 7.まとめ‥‥‥‥‥.‥‥‥.‥‥‥‥‥.‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥.‥‥‥21
8.参考文献‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥.‥.‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥.‥‥‥‥..22
1
2.背景と目的
一人当たりのGDPが増加するにつれ,全体のGDPに占める農業生産の割合が低下するというぺ ティの法則が知られている.農業部門一人当たりの生産額の低下は,農業部門と非農業部門の所得格 差をもたらした.先進国では農民の所得は補助金によって補われ,生産過剰分が国際市場に投売りさ れた.結果として食料価格は歴史的低水準にとどまった.発展途上国では,生産にかかるコストより
も安い価格で食料を輸入できるようになった反面,十分な農業‑の投資が行われず,世界の食料供給 量が減少したときに,不足を補うことができないという状態も生まれた.
ブラジルは第1次石油ショックで経済的打撃を受けたことをきっかけとして, PROALCOOL(国家アル コール燃料計画)と呼ばれる,サトウキビ由来のバイオエタノール生産を中心としたエネルギー転換
政策に踏み切った.結果, 80年代半ばには,ブラジル国内で販売される車はほぼすべてアルコールだ けで走るようになった.商品作物の生産量向上は「豊作貧乏」のことわざにもあるように,産品の価 格下落をもたらすが,ブラジルのサトウキビ栽培は,そのジレンマからの脱却に成功したようにみえ る. 1970年代以降,ブラジルのサトウキビ栽培面積は拡大し続けているが,砂糖自体の生産量はあま
り変わらず,エタノール需要がサトウキビの供給過剰を吸収している. 2008年では,バイオ燃料は世 界の食料価格を15%上昇させたとされている. 2003年における世界の一次エネルギー総供給量は105 億石油換箕tであり、そのうち再生可能エネルギーの割合は13.3%で、その8割近く(全体の約1
割)がバイオマス・廃棄物が占めている。・EUを例にとってバイオマスエネルギー生産の内訳を見ると、
木質バイオマスなど固体バイオマスが9割近くを占めている。バイオ燃料の割合は小さいが、
2006
年には生産量が約1.8倍増加と、突出した伸びを示している1。わが国では, OECD諸国の中でも際立って食料自給率農業部門の生産性が低い. 2007年より,日本 は「品目横断的経営所得安定対策」を本格導入し,現在日本に存在する約300万戸の農家を2010年
を目処に約40万の大規模農業経営体に集約することを意図している.しかし,農家一戸あたりの平
均農地面積では,わが国が1.8ha(北海道17.5ha)2であるのに対し,アメリカ合衆国の178.9ha (日 本の99倍), EU平均が15.8ha(同9倍)3,わが国とのFTA交渉が開始されたオーストラリアに至っ
ては3240.9 ha(同1800倍)4である.山岳国であり狭い農地面積しかもたないわが国にとって,農業
1 EU(2005) "Agriculture in
the
European UnionStatistical
and Economic lnformation 2004"2農林水産省(2006) 「2005年農林業センサス」
3 EU(2005)
"Agriculture
inthe
European Union Statistical and Economic lnformation 2004''4 Australia(2007)
"AUSTRALIA 2006 Agricultural Census''
2部門の規模拡大のみに頼った国際競争力向上には無理がある.
再生可能資源の燃焼による炭素放出は,全体での炭素収支を0とするというカーボンニュートラル の定義からすると,バイオ燃料を化石燃料の代替として用いた場合,温室効果ガスの発生を削減する ことになっている.しかし,原料となる作物を栽培し燃料に加工する過程,輸送する過程まで考慮す るなら,バイオ燃料の種類によっては温室効果ガスの削減効果が低いことが分かっている5.今後は, 製品やサービスに対して,対象となる資源の採掘から製造工程,使用・廃棄工程まで,ライフサイク ル全体を包括的に考慮して行う環境評価(ライフサイクルアセスメント;LCA)が必要となってくる.
2008年に行われたFAO専門家会合では,サトウキビ/パームオイル/トウモロコシなどを原料に作 られるバイオ燃料は,大規模なモノカルチャーのための土地開拓,車の燃料のために食料作物を人間 と家畜から取り上げること‑の懸念があげられた一方,化石代替エネルギーとしての温室効果ガス排 出削減と,農村地域における新たな職とインフラストラクチャー創出につながる利点があるとしてい る.そして食料生産を大規模農場に依存する現状からすると,エネルギー生産は小規模農家が地域資 源を用いて生産するかたちが望ましいという勧告が出された6.
日本は,二酸化炭素排出量の削減目標を定めた京都議定書の批准をきっかけに,地球温暖化対策を おこなっている.その中には,二酸化炭素排出量を1990年比で6%削減することを目標に,自動車用
のガソリンに3 %のアルコールを添加する取り組みがあり, 2006年から始めている7.これは,
2000
年実績のガソリン使用量で換算した場合,全てのガソリンに添加したとすれば約180万kLのアルコール需要となる.
そこで,環境と食料に配慮した地域単位でのバイオ燃料製造を検討する.環境対策だけでなく農村 の活性化という視点からも,バイオ燃料の製造には利点が多い.農家は,通常の農作物からだけでな
く,バイオエタノール生産分の収入も得ることができる.従来は破棄していた,商品価値の低い端物 や非可食部を利用することで,労働生産性を高め,農業経営の安定につなげることができる可能性が ある.
5
scharlemann
and Laurance, Science 4 January 2008: 43‑446 Bioenergy
could
driverural development,
FÅo, 07. 4.237農林水産省(2006) 「平成19年度農林水産予算概箕要求の概要」
3
3.手法
3. 1.三重県のバイオマスの調査範囲
3.
1.1.三重県の地勢と農林水産業の位置付け三重県は,ケッペンの気候区分ではCfa (温暖湿潤気候)に属する,南北に180km,東西に30km, 総面積5,780km2の日本の紀伊半島東岸の県である.表1に三重県の表草地域区分を示した.津市 の気候は年平均気温15.5℃ (平年値:1971年‑2000年の30年間の平均値,以下同じ)で,日本列島
における典型的な太平洋側の気候である.対して,内帯地域である伊賀市の年平均気温は13.8 ℃で 夏冬や朝夕の温度較差が大きい.また,熊野灘に面した尾鷲市は暖流である日本海流の影響をうけて,
年平均気温15.
9
℃と比較的暖かく,年平均降水量は3922. 4mmと日本有数の多雨地帯となっている.県内表草地域 包括都市
北勢 四日市市,桑名市,鈴鹿市,亀山市,いなべ市,桑名郡,員弁郡,三重郡 中勢 津市,松阪市,多気郡
南勢 伊勢市,鳥羽市,志摩市,度会郡 伊賀 名張市,伊賀市
東紀州 尾鷲市,熊野市,北牟婁郡,南牟婁郡
表1 県内表草地域 市町村の区域以上都道府県の区域以下の範囲で,統計表章として最も利用 度の高い地域単位を設定したもの.
三重県の土地利用は森林が総面積の95・1 %を占め,農用地12・3%,宅地6・3%となっている・表に三 重県の森林および農業利用面積を示す8.現在,三重県の県内総生産は実質で9兆2,701億円,うち第 一次産業(農業,林業,水産業)は1,286億円となり,全体に占めるウェイトは1.4%足らずである(辛 成18年度)が,三重県全体の就業者数の91万8千人に対して第一次産業従事者4万6千人と雇用 では5.0 %を占めている.
8東海農政局(2008) 「第54次 三重農林水産統計年報」
4
総面積 林野面積
農作物作付け延べ面積 水稲
麦 豆類 野菜 果樹 茶
100
910
184160 114 860 68 790 99 170
40 440 124
67083 460 41 020 84 770
20 000 19 200
10 400
11600
2 390
2330
1 110
1310
1
530
1510
6
650
7070 2 580
4
440
4960
181 479
44 390
700 494
362 782 545 192
2 179 801 305 29
830
4
6
188
1 430
3
表2 三重県の農林業利用面積(単位:ha)東海農政局(2008) 「第54次 重農林水産統計年報」に基づいて作成.
塞 港 度 会 港 区
図1県内表草地域専区分固(行政区面・県内表草地域および海区)平成19年4月現在
3. 1.2.三重県のバイオマス資源の検討
廃棄物バイオマスの利用
度倉潜のノイオデt‑I‑ゼル/ (bDF).材屠:わが国において,食用油の廃油発生量は年間約40万t , うち14万tが一般家庭から発生したとされる9.三重県の人口は187万人で日本の総人口の1.5別こ相
当するので,三重県全体で0.6万トンの廃油が発生していると考えた.同様に,県内表草地域別人口 を考慮して廃油発生量を推定した.
廃港を」齢<食品廃棄衛: 日本の食品産業全体で発生した食品廃棄物は1,135万t10であり,ここか ら40万tの廃油とリサイクルされた48 %分を除いた.日本の食品製造業における製造品出荷額等は 23兆円で,その2%である4175億円が三重県の食品製造業となる.よって三重県の食品製造廃棄物は 2%の9.6万tと推定できる.人口比で割り振ると三重県全体で8.6万tの廃油を除いた食品廃棄物が 発生していると考えた.
鰍ど:木材は成長するのに時間がかかるため一年間の素材生産に用いられる森林面積はわず
か33
ha,うち9割以上がスギ・ヒノキである.三重県はスギとヒノキの栽培面積はほぼ等しい.林 地残差/間伐材/未利用材の量は,地域の森林面積に比例していると思われる.自然林ではこれらの 資源が回収されることは少ないので,人工林から発生しているとする.林地残差と間伐材・未利用材 は,全国の人工林で,毎年383万t発生しており,全国の人工林面積は10万4千km2なので,年間o.37
t/haの間伐材が発生していると考える11.廃棄野菜/;廃案巣窟夢:収穫量と出荷量の差を廃棄量と考えた.たとえば,三重県全体の平成18
年度のみかん収穫量は22,500 t,出荷量は19,800 tであった.出荷されているのは88%である.自 家消費で2,700 t消費するとは考えにくいので,全量を被棄されているものと考えた.
茎など非可食部分の利用といった食糧と同時に生産する方法
アブロブオレスjly一彦どの虚盾:アグロフォレストリーとは,樹木と家畜・農作物を組み合わせ る栽培方法である.しかし,日本は農作物の機械化率が非常に高く,収穫に困難をきたすため,混植 は困難と判断した.
9環境省(2008) 「産業廃棄物の排出及び処理状況等(平成18年度実績)」
10農林水産省(2008) 「平成19年食品循環資源の再生利用等実態調査」
11環境省(2008) 「日本の廃棄物処理(平成18年度実績)」
7
貞1倍/′齢伊:一般的に二毛作を行うと地力の低下がおきるが,湛水状態にある水田では土壌が還元 状態におかれ,連作障害が発生しにくい.水田での裏作には一年生草本であるイタリアンライグラス (ネズミムギ)が使われることが多い.本論文でもネズミムギを水田の裏作に用いた場合を考える.
ネズミムギはイネ科草本で身長がコシヒカリとほぼ同じ80cmなので,水田から発生する稲わらと同
程度の収量であると考えた.なお,三重県の肉牛・乳牛の飼育頭数は13,032頭である12. 1頭あたり
30
kgの飼料を消費すると考えるなら,ネズミムギを飼料用とした場合,今回の試算では牛158,000 頭分に相当することから,食料と競合しないバイオマスという条件に合致すると考えた.#可倉部分(%などノ棚:わが国において稲わらは905万t生産されている8.わが国の水稲
作付け面積は164万haであるから,年間5.4t/haの稲わらが発生することになる.現在,稲わらの
12
%は飼料用途,7
%は堆肥に使われており,食料に競合しないバイオ燃料として活用できるのは, すき込みや燃焼によって処理している80%である(農林水産省, 2005).また,全国平均の10a当たり未調整乾燥もみ重677 kgと10a当たり収量507kg (農林水産省, 2006)の差をとって,
0.17
t/ha のもみ穀・くず米が発生していると考えた.また,子実:非可食部の比はダイズが1 : 2,トマトで1
: 1,キュウリで1 :1.
113ので,豆類1 : 2と考え,野菜類は廃棄部分の少ない葉物・根菜を 除いた作物(キュウリ・トマト・ナス・ピーマン・カボチャ・イチゴ・タマネギ・サトイモ・バレイショ)の収穫量をもとに,
1
: 1で考えた.余剰地を利用したバイオマス資源の生産
休耕留・腰微棄薗での原料生産:現在,耕地利用率は北勢と中勢が90%,南勢・伊賀・東紀州が
80%程度である(東海農政局, 2008).これら未利用農地が輪作体系のなかの休耕となっているのか, ただ耕作されていないだけなのかは判断できないが,水稲栽培は基本的に休耕が不要な栽培方法であ るため,これらの農地に資源作物として水稲を植えたと考えて,得られるであろうバイオマス資源を 計算した.
舶府カ〕凌い土轡での卓彦: FAOでは,食糧生産に向かない土地として砂漠やツンドラ,草 原や山岳地帯を分類している.わが国においては,砂漠やツンドラはほとんど存在せず,山岳地帯は
ほぼ森林として利用されているうえ,草地となる平野部が限られるため,考慮しないことにした.一 方で,海洋でのバイオマス生産も考えた.三重県南部はリアス式海岸が発達し,海苔の養殖が盛んで
12東海農政局(2008) 「第54次 三重農林水産統計年報」
13小川和夫,竹内豊,片山雅弘(1988) 「北海道の耕草地におけるバイオマス生産量及び(3)作物に よる無機成分吸収量」北海道農試研報149,
pp57‑91
8
ある. 2006年現在,志摩度会海区において海苔の生産量は乾物重で513 t14であるが,生産のピーク は昭和15年(1940年)の紫菜115万貫(4,315 t)であった15.ここでは,生産ピークと現在の生産 量の差を,食料と競合しないバイオマスとして考えたうえ,南勢地域に含めた.
3.2.バイオエタノール製造工程
3.2.1.糖化工程
主に高濃度硫酸による加水分解で,バイオマスの糖化を行う.
##/ヾイオマスの磨据:果実バイオマスは硫酸加水分解による糖化の工程が不要である.そのまま
10
%のグルコース溶液として考えた.デンプン昇ノVノオマスの磨把:廃パン,洋菓子などは脂質を含有量が高く,そのままエタノール発 酵工程に供すると,酵母の生育(細胞増殖)阻害がおこり,エタノール発酵がなされないか,または, 酵母の生育がなされても,エタノール発酵の効率が極めて低くなる.そこで,エタノール溶媒による 脂質抽出工程を行ってから,発生した抽残分離物である脱脂澱粉に対して,加水分解を行う.加水分 解工程は,アミラーゼやプロテアーゼによる酵素加水分解と,硫酸による酸加水分解の二段階工程で
ある.食パン1 kgに対して0.48 kgのグルコースが得られる.
脚ノ,ll/ノオマスの磨倍:草本類はセルロース繊維と‑ミセルロースで構成されている.硫酸加水
分解によって,稲わら1 kgに対してマンノースとグルコースが385 g得られる(タラガラ, 2008).
豆類非可食部・野菜類非可食部も同様に考えた.廃棄野菜については,重量比5%のグルコース溶液 と5%の食物繊維が入っているとし,食物繊維の部については稲わらと同じマンノース量とグルコー ス量を考えた.
東男打ヾイオマスの磨倍: 草本系バイオマスに準ずると考えた.
木質系ノVオマスの雛:木材はセルロース繊維の結晶構造がリグニンと複合体を形成して物理的 及び化学的に強い構造を有する.その他の構成多糖が‑ミセルロースで,キシロース,アラピノース,
マンノース等の種々の単糖で構成されている.化学的に見ると木材はセルロースが約50%,
‑ミセル
ロースが約20 %‑30 %,リグニンが約20 %‑30 %の主要成分と,数%の副成分で構成されている.上記バイオマス原料を粉砕後, 60質量%の硫酸で処理することにより, ‑ミセルロース系オリゴ糖を 14東海農政局(2008) 「第54次 三重農林水産統計年報」
15三重県(1989) 「三重県史 別編 統計」
9
溶出させる.次に,不溶画分について同様に質量%の酸で処理することにより,セルロース系オリゴ
糖を溶解させることができる. MF‑121が資化可能なマンノースとグルコースが,スギ木材1 kgに対
して554.6 g,ヒノキ1
kgについて609.Og得られる.3.2.2.エタノール発酵工程
エタノール発酵工程にはZssatcheDk1'a or1'eDtall'sのアルコール発酵性酵母MF‑121株を用いる.
MF‑121は耐酸/耐塩酵母なので,糖化液の希釈を抑えながらの培養ができる.培養はヤシマットを担 体としたバイオリアクタを用いる16.バイオリアクタは振とう培養と比べてエタノール生産の開始時 間が早いという利点がある.
pH調節用のアルカリ性溶液として, NaOH。。を使用する条件で考える.アルカリ性溶熟ま酸加水分解 で使用した酸と反応して沈殿を生成させないものなら特に限定されず,例えばアンモニア水を使用す れば,アンモニアと硫酸の反応生成物である硫安が,エタノール発酵の窒素補助源として使用可能と なり,ポリペプトンや酵母エキスの使用量を大幅に減じることができるが,十分な結果が分かってい ないので,本論文では考慮しない.
10
%の糖化液から,25
℃で1週間程度培養をすることで,5
%のエタノール溶液を得ることができ る.3.2.3.エタノール濃縮工程
フラッシュ蒸発器により減圧下に噴射蒸発させたものを凝縮する.
8
%エタノールが段階的に95%程度まで濃縮される.
3.3.ライフサイクル評価にあたっての調査範囲
ノ,ll/オユタノーソレの祢おijaH/珍:地域のバイオ資源から製造されるバイオエタノールが環境
16Makoto Hisamatsu
etal, Isolation and identification of
anovel
yeastfermenting
ethanol under acidic condition.
Journalof Applied Glucoscience.
,53, 11卜113
(2006).10
に与える影響を物質の出入りとエネルギー面から把握すること.
ノ,'14オヱクノー「ル.の鰍お/fる牌:農作物を収穫してから利用するまでのバイオエタノー ルのライフサイクルを示した.ただし,今回検討したバイオマス資源は,食料と競合しないという条 件をつけたことで,廃棄物の利用が主になるか,粗放的な栽培が前提となるため,過程1から過程3 の影響が非常に小さくなっている.また,バイオマスプラントの規模が明確ではなく,輸送過程の値 が非常に窓意的なものになってしまう.まずは年産である一定のエタノールを生産するプラントを想 定してからではないと評価ができない.そこで,今回はそれらは調査の対象から外している.なお, ここでは,製品を製造するときに使用されるプラントの建設は考慮していない.したがって,エタノ ールの製造・使用・廃棄での物質とエネルギーのフローに関係するプロセスだけを対象とし,それを 支える農地や工場等のストックを考慮しないというカットオフ基準を適用した.
‑ (過程1バイオマスの栽培)
‑ (過程2農薬や肥料の投入)
‑ (過程3バイオマスの収穫) 一過程4バイオマス資源の糖化 一過程5バイオマス資源の発酵 一過程6副産物
‑ (過程7エタノールの貯蔵と輸送)
一過程8燃料としての利用
バイオエタノールの機能単位はガソリンに3%添加した燃料としての使用を前提にしている.よって, 比較対象は100 %のガソリンとなる.
卿t脚:環境影響を包括的にみるには,地球温暖化,オゾン層の破壊,酸性化,富栄
養化,光化学オキシダントの生成,廃棄物の発生量の影響領域についてデータ収集をすることが望ま
しい.今回は,日本版被害箕定方環境影響評価手法(life
cycle impact
assessmentmethod based
onendopoint modeling
: LIME)を採用し,特性化係数を温暖化について用いた17.ノ解野の方潜: LCAにおいては,影響評価をする/しないを決定することができる18.今回は,エネ ルギー収支と,地球温暖化に対する影響について考察で述べる.
17伊坪ら「LCA概論」
,社団法人産業環境管理協会
18 http://necps. co. jp/kankyo/column̲3̲3.
html
l1
4.結果
4. 1.三重県の食料と競合しないバイオマス資渡の量
表3に,三重県における食料需要と競合しないバイオマスを示した.
廃食油 2
610
1600 830 570 260
果実バイオマス
廃棄果実
690 2 490
1130 330 1 630
デンプン系バイオマス 食品廃棄物(家庭由来) 食品廃棄物(産業由来)
玄米(休耕地活用)
3 530 2 160
1
760 1 080
4
800 5 060
1
130 780 360
570 390 180
3 940 5 000 630
草本系バイオマス 稲わら・もみ穀・くず米
麦わら・もみ穀・不良腔乳 豆類非可食部分
野菜類非可食部分 廃棄野菜
ネズミムギ(裏作した場合) 稲わら・もみ穀(休耕地活用)
46
480
51 84010 680 10 370
320 440
19 840 22 170 3 710
810 2 140 20
20 90 0
13 370 8 160 5 430 2 890
1260
4 450 3 610 2 070 1 530 620
56 160 62 640 23 980 26 780 4 480
4
650
4880 4 210 5 510 650
藻類バイオマス
海苔の余剰生産
3 800
木質系バイオマス
間伐材
14 960 46 130 30 880 15 180 31 370
表3 三重県における食料需要と競合しないバイオマス(単位:t)東海農政局(2008)
「第54次 三重農林水産統計年報」に基づいて作成.
12
4.2.三重県のバイオマスから期待できるエタノールの量
三重県全体におけるバイオエタノール期待可産量を求めた結果を表4に示す.三重県全体で13万
4980
t, 22万4770 kLのエタノールを生産する事ができる.束紀州 果実バイオマス
廃棄果実
40 120 30 20
80デンプン系バイオマス 食品廃棄物(家庭由来) 食品廃棄物(産業由来)
玄米(休耕地活用)
1690 1040
840
520
2300 2430
540 370
170270 190 90
1890 2400 300
草本系バイオマス 稲わら・もみ穀・くず米 麦わら・もみ穀・不良腔乳 豆類非可食部分
野菜類非可食部分 廃棄野菜
ネズミムギ(裏作した場合)
9
110 10 160
2 090 2 030
60 90
2630 1600
160 130
ll
010 12 280
稲わら・もみ穀(休耕地活用)
910 960
3 890 4 350 730
160
0
1070
70
420 4
20 0
570 250
50 20
4 700 5 250 880
830
1080 130
藻類バイオマス
海苔の余剰生産
750
木質系バイオマス
間伐材 4
440 13 690 9 160 4 500 9 310
合計エタノール量(t)
35 280 45 050 23 360
19220 11 960
合計エタノール量(kl) 58 800 75 080 38 930 32 030 19 930 表4 三重県各地域におけるバイオエタノール期待可産量(単位: t)
13
4.3.バイオエタノールのライフサイクルアセスメント
4.3.1.デンプン系バイオマスからのエタノール製造
図2に廃パンを例としたエタノール生産における物質とエネルギーの流れを,表5に廃パン由来のバ イオエタノール1 kgのライフサイクルを示した.
図2 廃パンを例としたエタノール生産における物質とエネルギーの流れ
14
4.3.2.セルロース系バイオマスからのエタノール製造
図3に木材を例としたエタノール生産における物質とエネルギーの流れを,表6に木材由来のバイオ
エタノール1
kgのライフサイクルを示した.図3 木材を例としたエタノール生産における物質とエネルギーの流れ
15
単位
製造
物流 使用 廃棄 合計
糖化 発酵 蒸留
消費エネルギー MJ
2.0 5.2 ‑30.1 ‑23.9
イ
ン
E5
ン
ト リ 分 析
消 費 負 荷
枯 渇 餐 港
エネルギ
‑資源
原油
kg 0.13E‑3 0.35E‑3 0.48E‑35
鉱産資源
H2SO4 kg 0.2 81.6
NaOH kg N.D. N.D.
再生可能資源
廃パン
kg 5.7 5.7
水
kg 5.7 15.4 N.D 21.1
排 出 負 荷
大気‑
CO2 kg
1.10.8 1.9 2.8
水域‑
BOD kg N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
COD kg N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
土壌‑ 発酵残漆
kg N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
表5 廃パン由来のバイオエタノール1 kgのライフサイクル 伊坪ら「LCA概論」
,社団法人産業環境管理協 会 を参考に作成.なお,製造工程で投入するエネルギーは石油を使用するものとした.
16
単位
製造
物流 使用 廃棄 合計 糖化 発酵 蒸留
消費エネルギー MJ
5.2 ‑30.1 ‑25.9
イ
ン′
E5
ン′
ト リ 分 析
潤 費 負 荷
枯 渇 餐 蘇
エネルギ
‑資源
原油
kg 0.35E‑3 0.35E‑35
鉱産資源
H2SO4 kg 56.2 15.6
NaOH kg N.D. N.D.
再生可能資源
木材
kg 3.6 3.6
水
kg 33.5 0 N.D 33.5
排 出 負 荷
大気‑ CO2 kg 1.1 0.8
1.9 2.8
水域‑
BOD kg N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
COD kg N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
土壌‑ 発酵残漆
kg N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
表6 木材由来のバイオエタノール1kgのライフサイクル 伊坪ら「LCA概論」
,社団法人産業環境管理協 会 を参考に作成.糖化後に濃縮したものとして考えているが、他の原料の希釈過程で混合することを前提
にしているので、糖化と発酵の間の濃縮にかかるエネルギーは考えないものとした。
17
5.考察
5. 1.三重県内のバイオエタノール期待可算量とその利用
現在(2008年1月),シカゴ先物市場においてエタノールは1ガロン当たり1.5ドル強で取引され ている19.これをそのままあてはめると,三重県全体で80億円程度の値段でエタノールを販売するこ
とができる.また, EU並みの補助金(170円/L)を考えるなら, 380億円程度の財政支出が必要とな る.原油価格が120S/barrelの場合, 2007年米国エタノール生産のトウモロコシ採算価格は,エタノ ール補助金なしで5.20S/bushel,補助金ありで6.81‡/bushelである20.したがって,現在は補助金 なしのエタノール生産は採算割れとなる.
日本は二酸化炭素排出量を1990年比で6 %削減することを目標に,自動車用のガソリンに3 %のア ルコールを添加する取り組みを2006年から始めている.これは, 2000年実績のガソリン使用量で換 算した場合,全てのガソリンに添加したとすれば約180万kLのアルコール需要であり,積極的な取
り組みと経済的なインセンティブさえ満たせば,食料と競合しない地域バイオマスで十分満たせる目 標値である.
三重県の県内総生産は実質で9兆2,701億円,うち第一次産業(農業,林業,水産業)は1,286億 円である。仮に、バイオエタノールを製造し始めた場合、三重県全体で80億円程度、補助金まで含 めれば460億円程度を、新たに加えることができる。さらに設備投資や雇用分の上昇も期待できる。
5.2.ライフサイクル影響評価
LCA調査は継続して繰り返し行うことを前提にしており,外部からのクリティカルレヴューを行う ことで信頼性を高めていく.今後の検討が必要である.
表7にエタノールを1 kg製造してから使用するまでのライフサイクル影響評価を示した。被害係 数としてLIMEの社会資産もしくは資源に関する被害係数を用いた.バイオエタノールのCO2はカーボ ンニュートラルであるから、温暖化の評価対象としては蒸留などの過程で用いられた熱エネルギーを
原油換算し,日本の火力発電を想定して,発生するであろうCO2で評価した。また,エタノール1
kg
を原油o.6 kgと仮定して原油を燃焼させた場合との比較も試みた。実際は、原油に関しても掘削過
19Bloomberg:
www.bloomberg.
com/20 "soaring Food
Prices:Facts,Perspectives,
Impacts and Action Required'', FÅo, 200718
程、輸送過程、蒸留過程などライフサイクルを考慮しなければならないが、想定されているエタノー ルの使用方法が、ガソリンと混合することのため,単純に置き換える想定とした。
評価範囲 物質名 インベントリ 被害係数 統合化結果
(kg) (円/kg) (円) 廃パン由来 温暖化
CO2 CO2 6.19E‑1 0.50E‑1
酸性化
H2SO4 SO2 9.78E+0 7.98E+2
富栄養化 発酵残娃
COD 6.40E‑1 N.D.
木材由来 温暖化
CO2 CO2 6.19E‑1 0.50E‑1
酸性化
H2SO4 SO2 9.78E+0 5.496E+2
富栄養化 発酵残液
COD 6.40E‑1 N.D.
エタノール1 kg換算した
原油
温暖化
CO2 CO2 6,19E‑1 1.37E+2
酸性化
SO2 SO2 9.78E+0 1.76E‑1
富栄養化
COD 6.40E‑1
表7 エタノール1kgあたりのライフサイクル影響評価 H2SO4からSO2‑の換算はHejungs et
al(1992)を参考にした.
純粋に燃焼させた場合の、社会資産もしくは資源に関する被害係数を比較した場合、温暖化に関し ては原油よりもバイオエタノールが優位である。しかし、発生する硫酸による土壌などの酸性化、お よび検証はできていないものの、発酵残漆による富栄養化や土壌の汚染などを考慮すると,必ずしも、
バイオエタノールは環境に優しいとはいえない。ただし、硫酸を4回程度リサイクルした場合は,酸 回収に必要なエネルギーを考慮する必要もあるが、原油とバイオエタノールで酸性化の被害については 差がなくなる。発酵残漆のCODの測定と、有効な処理方法の開発が必要である。
製造工程が異なるために単純な比較はできないが、表5より,廃パン由来の日本のバイオ燃料のエ
ネルギー収支は19. 1 MJ/L,表6より,木材由来の日本のバイオ燃料のエネルギー収支は20.7 MJ/L なので,ブラジルのサトウキビ由来のバイオエタノールの41.3 MJ/Lには劣る21ものの,日本の農地
21
Thu Lan Thi Nguyen
et.al, Energy balance and GHG‑abatement
costof
cassavautilization for fuel ethanol in Thailand, Enez・gy Pol1'cy 35
(2007)4585‑4596
19
の多くが小規模農場であることを考えると,十分な効率が得られていると考えてよい。これは,アメ リカやブラジルでのバイオエタノール生産が,得られた農作物をバイオ燃料の製造のみに振り分けて いるのに対して,本論文で検討した地域資源は,いずれも従来バイオマスの生産過程で発生する廃棄 物を利用するか,従来バイオマスに上乗せする形で生産を行うため,製造にかかるエネルギーを大幅 に縮′トできるためである。
6.結論
結論
農村活性化の観点から地域資源を活用した食料と競合しないバイオエタノールの製造を検討した ところ、裏作と森林の利用によって、従来考えられていたよりも多くのバイオマス資源を活用できる ことが分かった。例えば森林で発生した間伐材は、かつては割り箸や燃料に使われていたのだが、東 南アジアなどから安価な木材が輸入されるにいたって下火となり、ついに間伐そのものも行わわれな
いような人工林が出現するに到った。また、わが国では伝統的に稲作後の水田に裏作として麦やイグ サを植えていたのだが、戦後、土地あたりの労働集積が高まるにつれ、採算が合わなくなっていった。
バイオエタノールを製造し、補助金や税優遇などで適切に政府がインセンティブをあたえることで、
これらの活用されなくなったバイオマス資源に再び脚光が当たるかもしれない。 2008年、急速に景気 が悪化し、過疎化が極端に進んだ「限界集落」という言葉も登場している中で、地域の資源を生かし
た産業振興策として取り上げても良いかもしれない。
バイオエタノールの製造にあたっては、今後、さらに厳密なライフサイクル調査が必要となってく るだろう。環境と経済の両立と言われて久しいがこれを成立させるには,やはり制度・政策として資源や 生態系サービスといわれる生命システムの消耗に伴うコスト、自然資本を適正に評価して反映させる経済
システムの構築が不可欠で、そのための手段の一つとしてLCAは有効である。政策・制度がコストを支え ることで技術革新を促し、それが人材の育成につながる、バイオマスの産業化‑の課題は少なからず互い
にリンクしている。
今後の課麿
今回の論文では、輸送過程や発酵残漆の処理などを考慮していないが、元々、バイオ燃料が環境負 荷を軽減させることを目標に製造されている以上、厳密な検証が必要になってくる。例えば、木材チ
20
ップは石油と比べると、エネルギー密度は5分の1 (単位重量あたり)であり、このエネルギーを使って トラック22輸送した場合、木材チップでは2400 kmを超えると、輸送エネルギーが木材の持っエネルギー を上回る。集積的なエタノールプラントを建造するのなら大規模農場が少ない日本においては各地域から 少量のバイオマス資源を調達しなくてはならないために難しく、小口ツトでの地域レベルのプラントがエ ネルギー的に優位になり得る一方, ̀̀地域レベルのバイオマス''の̀̀地域''の定義域をどこにとるのか、
基礎実験としてCODの測定、仮想のプラントを想定したシミュレーションなどを今後の検討課題とし てあげておく。
エタノールの使用方法も、今回はガソリン‑の添加を前提として考えたが、現在自動車に使われて いるエンジンはカルノーサイクルであるため廃熱によるエネルギーのロスが大きい。水素電池‑の転 換まで考慮したとき、原油よりも、さらにバイオエタノールは優位となり得る。
また、今回のバイオエタノール製造工程は、筆者の所属していた三重大学大学院生物資源学研究科 食品資源工学研究室の久松異教授のものであるが、 LCAを用いて他の製造工程と比較することで、よ
り客観的にバイオエタノールの製造プロセスを検証することができる。これも、今後の検討課題に付 け加える。
7.まとめ
現在,バイオエタノール生産と食料供給との競合が問題となっているが,一方で農村の振興と産業 創出につながる可能性もある.大規模農場によるエネルギー生産ではなく,地域ロットでの生産と消 費を念頭に入れたバイオエタノール生産を考える.そこで,稲わらなどの非可食部分や出荷されず破
棄された農産物,木質系バイオマスといった,食料と競合しない地域バイオマス資源を調査し,バイ
オエタノールに換算した場合の期待可産量を推定する.
エタノール製造は,糖質系バイオマス資源を硫酸加水分解によって糖化する工程,耐酸耐塩性酵母 MF121によってpH調整による希釈を最小限に抑えてバイオリアクタによるエタノール発酵を行う工
梶,そして製造したエタノールを蒸留する工程がある.このバイオエタノール製造プロセスをLCA(ラ イフサイクルアセスメント)的手法によって評価し,バイオ燃料生産がもたらす環境‑の影響も考慮
して,持続可能なバイオマスエネルギー生産を目指す.
22三菱ふそう Super Great Limited Wingの燃費から計算
21
8.参考文献
統計資料
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農林水産省(2006) 「平成19年度農林水産予算概算要求の概要」
農林水産省(2008) 「平成19年食品循環資源の再生利用等実態調査」
環境省(2008) 「日本の廃棄物処理(平成18年度実績)」
環境省(2008) 「産業廃棄物の排出及び処理状況等(平成18年度実績)」
東海農政局(2008) 「第54次 三重農林水産統計年報」
EU(2005)
"Agriculture in the European Union Statistical and Economic information 2004"
Australia(2007)
"AUSTRALIA 2006 Agricultural
Census''Bioenergy could drive rural development, FÅo, 07. 4. 23
学術論文
Schar1emann and Laurance, Science
4 January2008: 43‑44
小川和夫,竹内豊,片山雅弘(1988) 「北海道の耕草地におけるバイオマス生産量及び(3)作物によ る無機成分吸収量」北海道農試研報149,
pp57‑91
三重県(1989) 「三重県史 別編 統計」
Makoto Hisamatsu
etal, Isolation and identification of
anovel
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ethanol under acidic condition.
Journalof Applied Glucoscience.
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(2006)以soaring Food Prices:Facts,Perspectives, Impacts and Action Required'', FÅo, 2007
Thu Lan Thi Nguyen et.al, Energy balance and GHG‑abatement
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fuel etbanol in Thailand, Energy Policy 35
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その他
伊坪ら「LCA概論」
,社団法人産業環境管理協会
http
://necps. co. jp/kankyo/column̲3̲3.html
Bloomberg:
www.bloomberg.
com/22