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梅 田 甲 子 郎

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Academic year: 2021

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

奈良市付近における花こう岩類周辺の地下水および 新生代層中のウランについて

著者 梅田 甲子郎

雑誌名 奈良学芸大学紀要. 自然科学

10

2

ページ 121‑128

発行年 1962‑03‑26

その他のタイトル On the Geochemistry of Uranium in Groundwater and the Cenozoic Strata around Granite

Batholith at Nara City

URL http://hdl.handle.net/10105/4776

(2)

Journ. Nara Gakugei Univ., Nat. Sci., Vol.10, No.2, Mar., 1962

奈良市付近における花こう岩類周辺の 地下水および新生代層中のウランについて

梅 田 甲 子 郎 (地  学  教  室) (昭和36年11月10日受理)

On the Geochemistry of Uranium in Groundwater and the Cenozoic Strata around Granite Batholith at Nara City

by Koshiro ITMEDA

Abstract

This paper is to describe about the geochemical cycle of uranium in the bed rock, the Cenozoic strata and groundwater.

Uraium contained in granite i岩easily oxided and dissolved into circulating water. There‑

fore, groundwater contains uranium of 1 to 2 ppb at Jigokudani and Tawara basins, the eastern part of Nara City where the Pliocene rests on granite. Then, at the southern alluvial plain of the city, the uranium contents of groundwater being almost 2 ppb at the east granite zone gradually decrease to be less than 1 ppb as groundwater moves to west downstream.

The Cenozoic strata around granite such as Jigokudani and Saho formations contain ur‑

aniutn of less than 2 ppm by absorption from circulating water. The capturing behaviors of clay, humus and limonite which construct every stratum seem to be concordant with those examined in laboratory.

ま え が き

ウラン鉱床には各種の型が知られているが、そのうちでいわゆる堆積状ウラン鉱床は、近年と くに多く発見され、ウランの最も主要な資源となっている。本邦においては堆積状鉱床のほとん どが花こう岩類周辺の新生代層中に存在する。これらの地域の花こう岩類・地下水・堆積層中の ウランの地球化学的研究はすでに数多く発表されているが、鉱床の成因に関しては未だ定説がな く、なお各方面よりの調査研究を必要としている。従来までの調査は、当然のことながら、ウラ ン含有量の多い地区のみに重点がおかれ、ウランの少ない地域は顧みられなかった。筆者はここ に極く平凡な花こう岩地帯におけるウランの分布を調べることにより、花こう岩地帯一般に通じ

るウランの地球化学的輪廻、ひいては堆積状ウラン鉱床の諸現象の解訳に役立つような資料が得 られるかもしれないという希望のもとに、調査対象として奈艮市東部を選んだ。調査結果は残念 ながら筆者の期待する所までにはとうてい達し得られなかったOとくに地層中のウラン量はいづ

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れも予期に反して微量であり、筆者の分析の精度ではその移動を正確に把握することが困難であ った。本調査は失敗であったかもしれない。しかし、一応、花こう岩地域のウラン分布の一例を 知ることはできたので、必ずしもすべてが無駄ではないと信じ、とりまとめかんたんに報告す る。

本調査について種々御指導賜った京都大学理学部地質学鉱物学教室鵜飼保郎助教授・同上田健 夫講師・同川上隆也氏・奈良学芸大学島倉巳三郎教授・名古屋地質調査所大塚寅雄所長・名古屋 工業技術試験所森田清課長・同梶谷敬技官ならびに調査に御援助願った東北無煙炭鉱株式会社木 村一郎社長・堺市月州中学校吉田勝志教官に対し厚く細礼申し上げる。なお、地下水・岩石中の ウランの定量は螢光法を採用したが、岩石試料の大半は大塚寅雄所長の御厚意で地質調査所分析 課で分析して頂いた。また、分光分析は名古屋工業技術試験所で森田清課長にやって頂いき、地 質につい・ては粉川昭平氏の資料を利用させて頂いた。付記して謝意を表す。

奈良市の地質概要

奈良付近の地質はすでに粉川昭平氏(1)らによって調査されている。奈良市は奈良盆地・大和高 原にまたがり、領家式岩類を基盤としている。領家式岩類は大和高原に広く露出し、大部分は両 雲母片麻岩であるが、一部に両雲母花こう岩.・岩脈状の細粒黒雲母石英閃緑岩が存在する。奈良 盆地東縁部の奈良・天理問に南北に細長い帯状分布を示す藤原層群は層厚約300mと推定され、

岩相上かられき岩を主とする下位の岩淵累層と凝灰質砂岩ないし泥岩を主とする上位の豊田累層 に大別される。藤原層群は各種の植物化石・海棲貝化石を産し、新第三紀中新世中期(F2−Fs)

の海成層とされている。地獄谷・田原盆地・水谷川などに分布する地獄谷累層は層厚約250mで ある。最下部は径1m以上の基盤岩類のれきを含む巨れき岩で、上位の花こう質砂岩に漸移する。

花こう質砂岩層は岩相の変化が激しく、しばしばチャ.−トを含むれき岩層を混え、泥岩および粗 悪な亜炭を挟む。最上部は灰白色の斜長流紋岩質凝灰岩であって、所々に植物化石を含む亜炭・

泥炭を挟んでいる。地獄谷累層はその含有化石および岩相より第一瀬戸内海消滅後の淡水湖に堆 積した鮮新統(Hl)であって、鳥取県の人形峠層とその生成の時代・環境がほぼ同一であろう と考えられる。奈良盆地一帯で基盤・藤原層群・地獄谷累層を不整合に被う佐保・白川池累層は れき・砂・粘土の互層よりなり、層厚約100m、多くの植物化石を含む。それらの化石より大阪 層群・古琵琶湖層群に対比される鮮新最新統(Il〜Iヱ)と推定される。本累層は三笠山・春日山 に露出する両輝石安山岩を岩床状に挟んでいる。また、上記の地層を被う新らしいれき層があ り、奈良市北部のものは奈良坂れき層、南部のものは鹿野園れき層などと呼ばれている。いづれ も三笠山安山岩れきを含む淘汰不充分なれき・砂・粘土よりなるが、化石を産せず、岩相もまち まちで、生成時代・相互関係は判然としない。奈良市付近は領家式岩類を被って上記の新生代層 が分布するが、大局的にみて、大和高原では大体水平であり、高原・盆地の境界部ではすべて西 方に単傾斜し、盆地内でふたたび水平となっている。

地下水のウラン濃度

一 地下水のウラン濃度は諸条件のうち、母岩のウラン含有量に最もよく支配される。したがっ て、花こう岩類は他の岩類に比してウラン含有量が大であるから、一般に花こう岩地域の地下水 はウラン濃度が大である。花こう岩類中のウランは主として造岩鉱物の結晶粒間のfilm中に、四

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価の状態で生成され、空気にふれて可溶性の六価に酸化されたのち、COS・HC03を含む地下 水に接してウラニール炭酸イオンの形で地下水中へ溶出するものと考えられている。大和高原の 儀家式花こう岩類のウラン含有量は3〜7ppmであって、本邦各地の花こう岩類のものと大差はな い。そゆれえ、奈良市東部の花こう岩地域の地下水のウラン濃度は他の地域に比べて多少大であ ろうことは予期し得る。

第1図に、奈良市東部の地獄谷・田原盆地および奈艮市街南方において採取した地下水のウラ ン含有量を示す。地獄谷・田原盆地には片麻状両雲母花こう岩が露出し、それを地獄谷累層がう すく被っている。それらの花こう岩・地獄谷累層巾の地下水のウラン濃度は最高2.4ppb、最低

\・売

声 モ姜壬二∴二二主 ̄一二一字

閻 健保累眉    ①柁下水採取臭

地獄谷累層

()内はワラン濃度

≡∃ 藤原層居羊   、、、等ウラン含有曲線

監ヨ 領家式岩頬

第1図 地獄谷・田原盆地および奈良市街南方における地下水のウラン濃度

1.Oppbであって、予期したように全般的にやや大である。ただし、地下水系の複嘩さに対して試 料採取点が少なく、吸着などによるウラン濃度の変化の一般的傾向を認めることはできなかっ た。

奈良市街南方は、東に大和高原を控えた沖積平野である。平野の東方の花こう岩地帯では地下 水は2ppb近くのウランを含むが、西方の平地に移るに従い、漸次ウラン濃度が小となっている。

採水点のウラン濃度のみに着目すると図上のような等ウラン含有曲線が得られる。地下水の流速 の大きい河川の周辺はウラン濃度がやや高いが、一般に通過する沖積層の距離に応じて、濃度が 小となり、ついには1.Oppb以下となっている。

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第1表 大和高原・奈良各地の地下水の分光分析の結果 大和高原・(地獄谷・田原盆地)

4  5  6  7  8  9 10 1112 13 14 15 16 17

奈良盆地

18 19 20

B a   S n   F e   N a   S

⁝ P b   M g B   P   M n   C a   C u   Z n

一 一 一 一 一 一 一 士 士 士 士 一 一 一 一 一 一

 ̄  一  一 ・ ̄   ̄   ̄  −  1・・  ̄   ̄  l・ 一一  一・・ 一  十  一  一

+ + + + 十 十 + 十 十 十 + + + 十 + + 十

十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 + 十 十 + + + + + + + + 十 十 十 士 一 一 一 一 一 士 一 一 一 士 ± 一 士 ± 士 十 十 + 十 十 十 + + + + + + 十 十 十 十 士 士 士 士 士 士 士 土 + 士 士 士 + 士 士 十 一 一 一 一 一 一 十 一 一 + 一 一 十 十 十 一

十 一 一 十 一 十 十 十 一 十 十 一 十 十 十 十

十 ≠ 士

十 十 十 十 十 十 一汁 十 十 十卜 十  十 十 十 十 十 十 十 十 +

一 一 一 一 一 ± − 土 一  一

÷ 「l T 一 士  †

+  十  十 士 ± 士 十  +  十

十 一廿 一汁 士 士 十

十ト 十 十 十 十 十

参考のため、花こう岩地域の大和高原と奈良沖積平野の地下水の分光分析の結果を第1表に示 す。いづれにもAl・Fe・Si・Ca・Cuなどの元素は存在するが、平野の地下水は高原のものに 比して、Mgが多くなり、Naが減少し、またPb・Mn・Zn・Sn・Pが消失している。両者にお けるこれらの元素の消長はそれぞれ興味ある問題である。

新生代層中のウラン

奈良付近の新生代層のうち、地下水のあまり移動しない藤原層群および岩相の変化の激しい最 新統・現世統を除外して、鮮新統および鮮新最新統の地獄谷累層および佐保累層中のウランを測 定した。

a)地獄谷累層

地獄谷累層の模式地、地獄谷における各単層のウラン量を第2表に示す。全般的に含有量は少 なく、2ppm以下である。砂岩が0〜1ppm、花こう質砂岩・凝灰岩・泥岩などが1pprn、裾鉄鉱・

炭質泥岩が2ppmという値を示している。

第2表 地獄谷における地獄谷累層中のウラン

岩 層 名

岩    相 層厚(m)I 各単層のウラン含有率 %

佐 保 累 層】れ   き   層l   50

地獄谷累層

(6)

(れき・泥岩・炭 質物を含む)

細粒砂 岩  0・0000 褐 鉄 鉱  0・0002 泥    岩  0・0001 細 粒 砂 岩!_ 0.0001 花こう質砂岩  0・0000 褐 鉄 鉱  0.0002 岩質砂岩  0.0001 粒粒 砂 岩  0.0000 炭 質泥岩  0.0002 泥    岩  0・0000 鉄質粘 土  0.0001 青色 粘 土  0.0001 亜    炭  0・0001 炭 質 泥岩  0.0002

Loc.5

Loc.6

Loc.3

Loc.14

莞昌㌶言昔嵩1こ:::;。

領家式岩類[片麻状花こう岩l   】 0.0002−0.0005 1Loc.1,2,4,12

第3表   水谷川における各岩層中のウラン 岩 層 名】層厚 m

崖錐堆積物

岩     相

ウラン含有

量%

砂 質 粘 土l o.0000

第4表 市営球場横の佐保累層の露頭 における各単層のウラン含有量

竺__⊥旦__j」厚さcmは孟ン禽

含れき花こ う質砂 粘         土 花 ′こ う 質 砂 褐   鉄   鉱 炭質粘土ないし細粒砂 粘  土  質  砂

400lO・0000

10l

140lO 0000

:黒:::::

.0.0 0 01

春日山・三笠山間を酉流する水谷 川に露出する地獄谷累層を中心とし た各岩層のウラン量は第3表の通り である。斜長流紋岩質凝灰岩層中の 炭質泥岩が最高の2ppmを示し、他 はそれよりも低い。

上記の二つの場合、いづれも炭質 泥岩と褐鉄鉱のウラン含有量が比較 的大である。

b)佐保累層

佐保累層は既述のごとく、奈良盆 第5表 佐保累層の岩淵川蝉の一露頭にお

ける各単層のウラン含有量

岩 石

地一帯に堆積した湖成層で、れき・砂・粘土の互層よりなり、三笠山安山岩を挟んでいる。三笠 山安山岩は第3表に示すように溶岩はOppm、凝灰岩は1ppmのウランを含んでいるのみであ

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る。

佐保累層の代表的な二露頭における各単層のウラン含有量を第4、5表に示す。奈良市営球場横 の露頭は主としてチャートの小円れきを含む花こう質砂よりなり、砂質粘土・炭質粘土などを挟 んでいる。砂層にはほとんどウランは含まれず、挟在する褐鉄鉱・炭質粘土に1ppmのウラン が伴われている。

また、岩淵川畔の露頭もれき質砂・粘土の互層であって、いづれもウラン含有量は1ppm以下 である。

全体として佐保累層は地獄谷累層に比して、僅かながらウラン含有量が小である。

ウランの吸着について

地下水中のウランは地層中の物質により置換・吸着・付着されて固定される。堆積層中のウラ ン鉱床には泥炭層・粘土層・褐鉄鉱層に伴い、この過程の累積により生じたと推定されるものが 多い。吸着の主体としての粘土・炭質物・水酸化物などに関する研究はすでに若干報告されてい る。

腐植の吸着についてのA.Szalay(2)の研究によれば、腐植は充分希薄なウラニール溶液からpH があまり低くなければ、その濃度の10,000倍に近いウランを吸着し得る。彼の実験値ではウラニ

,ルが5meq/eの濃度以上では、腐植1gがウラン24mgを吸着している。鉄・アルミニウムの 水酸化物沈殿がウランと共沈することも古くから知られているが、梶谷敬氏(3)(4)はそれらの吸着 力とpHとの関係を明らかにした。彼は水酸化鉄の吸着はpHが6.8付近では最大となり、1g中 にFe:200mg、U:2.5〜10mgという条件では、溶液中のウランの90−100%が吸着されるが、pH が少し前後すると急激に吸着量が減少し、水酸化アルミニウムはpHが6〜7で吸着が最大となり、

14中にAl:165mg、U:2.5〜10mgでは100%近くのウランが吸着されるが、鉄の場合ほどpHの変 化に敏感ではないことを報告している。

ここに具体的に鉄・アルミニウムの水酸化物沈殿がどの程度の吸着力を有するかを知るため に、A.SzalayにならってpH:6.8における吸着量の等pH曲線を作製してみた。吸着は溶液のpH

・ウラニール濃度・共存元素の質と量などに左右され、とくに水酸化鉄の吸着はpHに極めて敏 感に支配されるので、実験値が不正確となり、等pH曲線作製は困難を極めたが、吸着力の大体 の目安を知るために、不完全を承知の上であえて作製した。その結果を第2図に示す。この曲線 からほ水酸化鉄と水酸化アルミニウムの吸着力はpH6.8においてはほぼ同程度であろうと推定さ れる。また、Szalayの実験値による腐植の単位量に対する飽和吸着量と比較すると、その数倍の 値を示し、自らの質量の10%またはそれ以上の多量のウランを吸着しうる。

粘土の吸着については鵜飼保郎氏ら(5)(6)によってその重要性が強調されているが、吸着力その ものはそれほど大ではない。第3図はpH5−9で炭酸ウラニールの形で10mgのウランを含む溶液 100cc中における10grのMontmorilloniteおよびKaoliniteの吸着量を図示したものである。それ ぞれ溶液中のウランを約20%および5%前後吸着しているが、この条件下で各粘土鉱物の質量の 僅か0.2および0.05%程度を吸着するに過ぎず、吸着力は微弱である。なおこれらの粘土鉱物の 吸着がイオン交換であるかどうかを調べたが、筆者の実験ではイオン交換と認められる量は測定 不能なはど僅かで、大部分は単なる吸着もしくは付着であると推論せざるを得なかった。

要するに、地層中においてウランの吸着に関係のある腐植・水酸化鉄・粘土の三者の吸着を比

(8)

唄暮されたウラン旦貿

1  2   3   4 m8んcc

溶液中の ウ ラ ン 濃度

×=……・37mgの水酸化鉄が100cc中より吸着した量

0………21・5mgの水酸化アルミニウムが100cc中より吸着した量 第2図 鉄・アルミニウムの水酸化物沈殿の吸着の等pH曲線(pH:6.8)

→頓着率

0 0 0 5 4 3

20

10

 ̄、 ̄0 ̄  ̄k・−・h・_M

一一く一一車 ̄t、−メ一一璃__K

5  6  7  8  9F 用

PH→

M:M8ntmOrillonite K:Kaoljnitc

第3区l 粘土鉱物のウラン吸着率

較すると、単位量についての吸着容量は水酸化 鉄が最大であり、腐植がこれにつぎ、粘土はは るかに小である。しかし水酸化鉄の吸着はpH に徽妙に影響されるため、腐植の方が安定した 吸着を有する。粘土は吸着力は弱いが、地層中 には量的に卓越して存在し、やはりウランの固 定には最も主要な役割を果している。勿論、ウ ラン元素は環境により複雑な挙動をとるため、

以上の不充分な資料では推定の域を出ないこと が多く、とうてい完全とはいえないので、後日 の充分な検討を期したい。

このような簡単な条件のもとで行われた実験 室内での結果を、大自然の現象にそのままあて はめることも、当地域のような微量のウランし か含んでいない地層で吸着を云々することも甚 だ危険ではあるが、当地域においては、大体、褐鉄鉱と炭質層にウランが多く濃集し、粘土層は

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それよりも少ないという結果になっており、上記の結論を裏付けしているように思える。

また、花こう岩類を主要な素材として堆積した地獄谷累層のような地層においては、地下水か ら吸着する以前に、堆積の当初からすでに若干のウランを含有していたかも知れない。しかしこ れに類した問題は、地層は何時でも吸着可能な状態にあるし、吸着されたウランは絶えず移動す るため、それを立証する資料はなかなか得られない。各地の堆積状ウラン鉱床が大量のウランを 平凡な花こう岩地域の地下水中のみより濃築されたと考え得るかどうか、したがって鉱床生成に はウランを含む熱水の上昇、ウランを多量に含む岩脈の存在を前提に考えなくてはなら、ないかと いう堆積状鉱床の根本問題が未解決である以所もここにある。これらの解決にはまた別な方向よ

りの研究も望ましい。

む   す   び 以上を要約すると

(1)奈良市東部の地獄谷・田原盆地における地下水のウラン濃度は 2.4′−1.Oppb でやや高 い。奈良市街南方では山ろくの花こう岩地帯では1.8ppbであるが、西方の平地に行くに従い次 第に低くなって1ppb以下となる。

(2)地獄谷累層のウラン含有量は概して少なく、2ppm以下であり、佐保累層はさらに少な くて1ppm以下である。いづれも褐鉄鉱・炭質物の部分が比較的多い。

(3)堆積層中の各単層中のウランの多少は、大体、それぞれの単層を構成している物質の実 験室内でのウラン吸着量の大小に一致している傾向が認められる。

最初にのべたように、当地域のウランは分析値をもってその輪廻・消長を論じ得るほど多くは ない。結果も甚だ不本意であって、ウランの乏しい地域でウランを調査する困難さをつくづくと 感じた次第である。しかし、本稿の目的とするような問題は多くの地域で多方面より考究すべき 問題である。その意味でこのささやかな報文がせめてその九牛の一毛たりせば幸甚の至りである。

(1)粉川 昭平

(2)Szalay A.

(3)梶谷  敬

引 用 文 献

(1954)奈良市三笠LLlおよびその周辺の火山層序学的様相 養徳社

(1958)The Significance of Humusinthe Gechemical Enrichment of Uranium PeacefulUses ofAtomic Energy vol・2.

(1960)希薄水溶液からのウランの濃縮(第1報)鉄水酸物沈デンによる吸着(その1)

名古屋工業投術試験所報告9巻7号

(4) 〝 〝 (〝) 〝  〝    (第2報) 水酸化アルミニウム沈ヂンによる吸着(その 1)  〝  〝  9巻8号

(5)鵜飼保郎・横井俊堆(1961)粘土鉱物のウラン置換 朝倉書店「ウラン」

(6)鵜飼保郎・川上隆也・木村安宏・梅田甲子郎(1961)花こう岩地域に近接する地下水および堆積層中 におけるウランの地球化学的研究 鉱山地質11巻45・46号

参照

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