発達障害のプラクシス⑤ 発 達 障 害 支 援 にお け る連 携 の課 題
‑2つ の事例の検討を通 して一
鹿児 島純心女子大学大学院 鹿児 島純心女子大学大学院 鹿 児島純心女子大学大学院
は じめに
昨今 ,学 校や施設等 ,子 どものフィール ドにお ける支援 では ,発 達障害 に対 していかに支援す る かが重要な課題 となってい る。 この よ うな問題意 識 はあ らゆる援助職 に共有 され てい るに もかかわ らず ,実 際の支援 では連携 と協働 に困難 が生 じる ことが少 な くない。
『 発達障害のプ ラクシス』 では ,発 達 障害支援
にお ける焦点 について さま ざまな角度 か ら論 じて きた (若 本 ・吉 田 ,2011;若 本・ 吉 田・ 古 野 ・ 徳 永 ,2012;吉 田 。若本
,2011,2012)。シ リー ズ最終回 となる今回は ,行 政お よび児童養護施設 で心理 士 と して働 く2名 の臨床心理士の支援事例 に基づ き ,連 携 の状況 と課題
,さらな る改善の可 能性 は どこにあったのか等 ,発 達障害支援 にお け
る連携 に関 して実践的な観 点か ら考察 したい
cなお ,事 例 の記載 にあたっては ,個 人情報保護 のため一部変更 を加 えてい ることをお断 りしてお く。
純 子 み どり
1)真理奈
2)事例 1.自 閉症スペク トラムの 中学生男子への支援
―家庭・学校・複数の専門機関の連携 一
1.事 例 の概 要
筆 者 は ,X市 が 設 置 す る支 援 セ ン ター (以 下 セ ン ター と表 記 )の カ ウンセ ラー で あ る。 この セ ンター は ,市 の教育 ,福 祉 ,保 健 の部 署 が連携
し ,子 育 て支援推 進 の た めに設 置 され た。
中学
3年男子 で あ る本 児 (以 下 Aと 表 記 )は
,児 童 相 談 所 にて 3歳 の とき に 自開症 スペ ク トラム (Autism Spectrum Disorders i以 下 ASDと 表記
)と診 断 され た。 そ の後 ,療 育 ク ラブ に通 い ,小 学
校 は特別 支援 学級 に在籍 し何 事 もな く登校 して い た。 しか し ,小 学
3年時 登校 しぶ りが で て きた。
そ の た め ,幼 い ころ よ りか か わ って きた保 健 師 か らセ ン ター に小学校 との連携 につ い て相 談 が あ り 支援 が始 ま った。 セ ン ター は ,Aの 困 り感 を母 親
(以 下 Mo.と 表 記 )か ら聴 き ,学 校 の環 境 調 整 を 本
下 永 若 山 福
和文要 旨
本稿 では ,2つ の発達障害支援 の事例 に基づ き ,連 携 をめ ぐる課題 に関 して考察 した。学校お よ び児童養護施設 で行 われ た支援事例 において ,支 援者 間の障害特性 に対す る理解 の相違 と ,異 な
る専門性 をもつ相手 を尊重す るがゆえの遠慮 が連携 を困難 に してい ることが見 出 された。
さらに ,発 達障害支援 をよ り有効化す るた めに連携 において求 め られ るもの として ,支 援全体 を調整す るコーデ ィネー ターや キーパー ソンの機 能 と ,生 涯発達的な見通 しに基づ く長期 的な支 援構築が挙げ られた。
キー ワー ド
:発達障害支援
連携 コ ミュニ テ ィ 心理 学
生涯発 達
1)大 学院心理 臨床相 談セ ンター研修相談員・鹿 児島県 スタール カ ウンセ ラー ・臨床 心理 上
2)大 学院心理 臨床相談セ ンター研修相 談員・ 児童養護施設 心理担 当職 員・ 臨床 心理士
行 った。 筆者 はセ ンター のカ ウンセ ラー (以 下 Co.と 表 記 )と して ,Aが 小 学
6年時 に前 任者 か ら引 き継 いだ。 Aは 小 学
5年3月 に ,県 専 門機 関 の医師 よ り告知 を受 けていた。 Aは 知的 に問題 が な く療育手帳の発行 が認 め られなかった。特性 と して ,対 人面 での困難 さ ,コ ミュニケー シ ョンの 苦手 さ ,予 想外 の こ とへ の対処の難 しさ ,感 覚 の
偏 りや敏感 さ ,協 調運動 の苦手 さな どがあった。
これ らの特性の理解 を
Mo.は学校 に求 めていたが
,学校 はわかって くれ ない と感 じていた。それ は
,Aは 学校 では嫌 な様子 を見せ ないが ,家 では 「本
当はつ らか った,I嫌 だった」 と泣 いて強 く
Mo.に訴 えていたためであらた。
2.支 援 の経 過
Aへ の支援 は ,小 学
3年(セ ン ター設 置 時 )か
ら始 ま り 7年 目で あ る。 Co.が 引 き継 い で か らは 4 年 目 (現 在 面 談 ・ コ ンサ ル テ ー シ ョン等 通 算 67 回 )で 今 も継 続 中の事例 で あ る。 Co.は 小 学
6年4 月 〜 中学
2年10月 まで は ,MO.や 学校 の要請 に よ り面談や コンサ ル テ ー シ ョンを行 って きた。 しか
学校や 家庭 での Aの 様 子や
Mo.からの間 き と り 等か ら得た見立てを踏 まえ ,Aへ の支援 の方針 は
,Aの 特性 を理解 した上での環境調整 をお願 いす る
,Mo.の
心 の支 え とな る ,学 校 へ Aの 特性 理解 を求 め る ,Aが で きることを増や してい くかかわ りを 学校やMo.に お願 い してい くこととしてきた。 Co.
だけでな く ,セ ンターのスクール ソーシャル ワー カー (以 下 SSWと 表記 )や 保健 師 ,学 校 の先生
,県専 門機 関 とチー ム を組 み支援 して きた。 Aは 県 専 門機 関のすす めで ,2週 に 1回 作業療法士 (以
下 OTと 表記 )と 過 ごす こ とで気持 ちを落 ちつ け ていた。 Aの 支援 関係者 を図 1に 示す。
し ,Aや 学校 の 困 り感 の深 刻 さを受 け ,中 学
2年11月 か らは毎 月 1回 A,Mo.と の面 談 ,学 校 との
面 談・ コ ンサル テ ー シ ョンヘ と変 更 した。 Mo.と の 面 談 に は SSWが 同席 した。 県 専 門機 関 か らセ ンターや 学校 へ の窓 口は地域担 当ケー ス ワー カー (以 下 CWと 表 記 )で ,セ ン ター の 窓 口は学 校 を 訪 問す る機 会 の多 い SSWで あ った。
図 l Aへ の支援者関係 と問題点 (問 題点 は二重線 囲みで表示
)注
)大きな実線枠 は
,市の関係機 関
(その中の楕 円内がセ ンター関係者 ),破 線枠 は
,県の関係機 関である。
0丁 :作 業療法 2週 に 1回 CWi地 域担当者
育 園
(所)アドバ イザ ー
:連
絡棚 整Co.(
SSur:家 庭学校の連携
所 長
福 祉 担 当
学 校 教 育 担 当
教 育 専 門 員
:就学相談
家 庭 相 談 員
̀福祉面のサポート
ケース会議・研修会 ク ラ ブ・
交 流 学 級 特 別 支 援 学 級
巨褻璽コ
障害 への
助 言 指 導
二蟹ヽ豊
1門機関…
││││■1■│││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││1111■:│
交 流 学 級
支援 開始 よ り学校 へCo.や SSW,保 健 師 が訪 問 し ,Aの 学校 での環境調整 を行 って きた。 学校 の 対応 は悪 い もので はなか ったが ,Aは 学校 で起 こ
るこ とを どの よ うに理解 していいかわか らないの で気持 ちがいつ も揺れ動いていた。学校側 には
Aの言動が一貫性 のあるもの として見 えなかったた め ,学 校 も とて も苦 労 してい た。 また ,MO.は
Aの こ とを学校へ どう伝 えれ ばいいのか途方 に暮れ ていた。 Aへ の支援の共通理解 を図るために ,ケ ー
ス会議 は毎年数 回行 われた。特 に小学
6年時は
,Aに
かかわ る支援学級担任 ,交 流学級担任 ,校 長
,Co.と 多 くが代 わった ことと
Mo.からの [学 校 が
Aに無理 を させ る ]と の訴 えがあった こと ,中 学校 へ の移行準備 が必要 なことを踏 まえて早い時期 に もたれた cケ ース会議 のメンバーは ,MOゥ 校長
,教頭 ,支 援学級担任 ,交 流学級担任 ,県 専門機 関
OToCW,保
健 師 ,学 校 教育担 当者 ,セ ンター
ア ドバイザー ,SSW o Co.を 中心 に ,県 専 門機 関
医師や教育相 談員 ,学 習支援員等 が加 わ ることも あった (図 1参 照
)。会議 で はそれ ぞれ の立場 か ら ,現 状や対応 が語 られ たが ,学 校現場 での今後 のかかわ りを『 いつ どこでだれが どの よ うにす る のか』の具体的な検討 をす る時間がなかなか とれ なか った。 そのため ,Co.や SSWが 学校 を訪 問 し た り Aや Mo.と 面談 した りす るこ とで Aの 現状 を 把握 し ,支 援学級担任 と具体的な対応 を検討 し実 行 してい った。 Aは 登校 を渋 った り休 んだ りす る こともあったが ,そ の都度セ ンターが Aの 不安や つ らさを聴 き学校 との橋渡 しを行 って きた。 Aの つ らさの多 くは ,「 なんで って言 われ て も急 に答 え られない」 ,「 何 を していいかわか らない」といっ た交流学級担任 を始 め とした先生方 との コ ミュニ ケー シ ョンの苦手 さによるものであつた。合わせ て ,交 流学級級友 との関係 も同様 であった ことが つ らさを倍増 していた。 Co.は 面談 の 中でつ らい と話すAと とも
│こ先生や級友 との会話等シ ミュ レー シ ョン し対 t方 法 を考 えた。 同時に教師側 の困 り 感への対応 を行ったこ交流学級担任 の立場 に立 ち Aの 特性 と具 体的 な授業 での対応 を示 した。 それ
らを教 科担任 と級 友 に伝 えて も らった こ とで対応 が変化 し ,Aの 授 業等 へ の参加 が しやす くな った。
MO.は
Aが 家 で泣 く こ とを学校 へ な ん とか して ほ しい と常 にお願 い し続 けてい た。 Co.と SSWは
, Mo.のど うしよ うもな い思 い を受 け止 め支 え る こ
とを し ,学 校 との饂齢 を解 消 してい った。
Aと
MO.は,Co.や SSWに 学 校 へ の不満 を訴 え
,また県専 門機 関 で も同 じよ うに訴 えて い た。 そ の た め ,CWか ら 《対 応 が な って い な い》 と学 校 ヘ 強 い 指 導 が た び た び行 われ た。 OTと 過 ごす 時 間 は Aに とって リラ ック スで き る心 地 い い もの だ つ たが
,国にす ることは学校 のいや な点ばか りで あっ た。 それ は Mo.も 同様 で あ った。 県 専 門機 関 か ら 繰 り返 され る指 導 が学校 へ の負 担 とな って い る こ とを鑑 み ,セ ンター が外 部 の支援 窓 口 とな る よ う 県 専 門機 関 と調整 した。
中学
3年にな り [特 技 を伸 ばせ る高校 に行 くた め に ]と い う
Mo.の願 い も あ り ,Aは Mo.と 約 束
した こ とをがん ば って い た。 そ の がん ば りを認 め つ つ も Aに 合 った進 路 選 択 を望 ん だ Co.。 SSWと
県専 門機 関 は ,Aの 今 後 を考 え話 し合 い を持 ち
,で き る こ とを積 み 上 げて い くこ とが大切 と共通理 解 を図 り ,学 校 と Mo.に も理解 を求 めた。 しか し
,将 来 へ の不 安 が親 子 で募 り,「 どこの 学校 に行 け
るの か」 との発 言 と ともに Aに 身 体症 状 が 出始 め た。 そ ん な 中 ,学 校 や セ ンター か らの情 報提 供 も あ り ,特 別 支援 学校 を含 めい くつ か の学校 を見学 し通信 制 高校 に決 めた。 進 路 が決 ま った こ とで落 ちつ き を 見せ た Aで あ っ た が ,県 専 門機 関 か ら
《 Aは 過 剰 適 応 で 心身 は とて も危 機 的 ))と 1月 緊 急 の ケ ー ス会 議 開催 要 請 が あ り ,OToCW。 医
師 が学校 へ今 まで にな く強 く学校 の対応 の改善 を 求 めて きた。 学校 は対応 の実 際 を伝 え ,セ ンター
は学校 で の対応 を説 明 しつ つ理解 を求 めた。 そ の 後 ,Aが 県 専 門機 関 で初 め て学校 で の楽 しか った こ とを話 した こ とで 県専 門機 関 も学校 がいや な場 で あ るだ けで は ない と真 に理 解 した。 現 在 Aは
,いや な こ とは あ る と言 いつ つ も好 きな授 業 を楽 し
み に登校 してい る。
3.考
察
本事例 は ,Aに 乳幼児健診 時か らかかわ って き た保健師か らの連携要請 によ リセ ンターの支援 が 始 まった。小学校 には保健 師の介入 をよ しとしな い学校風 土 がみ られ ,そ れ を懸念 した保健 師 が セ ンターか ら学校への環境調整 を期待 した。セ ン ター は ,Aや Mo.と 学校 との離離 を解 消 した り学 校へ の環境調整 のお願 いを した りしてきた。 それ に加 え ,学 校へ の県専門機 関の介入 も頻繁であっ た。セ ンター は ,Aの 学校適応 と成長 を求 め る支 援 が学校 の負担 にな らない よ うに したい と考 えて いた。 しか し ,環 境調整へ の要望 を学校現場 に伝 え ,そ れ に対応 して も ら うには ,学 校 現場 に
Aの障害や 困 り感 を理解 して もら うことが必須条件 に な る。そのため ,支 援 の要請 と学校現場 の実 清の 落 とし所 を見つ けるこ とに心 を砕いた。 また ,県
専門機 関の学校 に対す る厳 しい指導は学校現場 の 対応 を知 らない こ とで起 こってい る と考 え対処 し た。 この よ うに支援者 。機 関の支援 のバ ランスを いかに とるかに迷 った事例である。
本事例 か らい えるこ とは ,支 援者 はそれぞれ の 専門性 をいか し ,子 どもの最善の利益 を保証す る ために連携す る とい うことを忘れてはな らない と い うことである c発 達障害支援 において ,家 庭
,学校 ,そ して複数 の専門機 関の連携 について本事 例の経過 を踏 まえ考 えたい
c(1)学 校現場の発達障害の理解 と対応
文部科学省 (2007)は ,『 特別 支援教育は ,こ
れ までの特殊教育の対象の障害だけでな く ,知 的 な遅れ のない発達障害 も含 めて ,特 別 な支援 を必 要 とす る幼児児童生徒 が在籍す る全ての学校 にお いて実施 され るものである』 としてい る。本事例 の Aを 支援す るために ,図 1に 示す よ うに多 くの
1、
がかかわってきた。
しか し、
Aの学校 では障害
持性 が理解 されていない現状があった。交流学級 担 任や■ 1友 ,そ して教科担任 に ,Aの 表 晴の乏 し
さ
│ゝF普 通
iこしてい る』 と受 け取 られた り ,成 績 の よ≦ 「
:」F頭 「 ミ ヽ いか らわか る』 と思われた りし ていた =そ
.■,■■、支援学級 に在籍 しているに も
かかわらず『配慮が必要な子』と意識 されづらかっ た と思われ る。だか らといってそれを支援できな い理由にするのは ,教 師 とい う教育の専門家であ る以上言い訳で しかない。教師にとつて ,児 童生
徒を理解す ることは教育の大前提である。保護者 は教師に『 うまく指導 して くれなくてもいい ,子
どものことをわかってほ しい』 と望んでいる (杉 山 ,2002)。 この こ とば か ら伝 わ る こ とは ,や は
りまず 児 童 生徒 理解 が あ り ,そ の うえで ,そ の子 に何 が どの よ うに必 要 なの か を考 え る とい うこ と で あ る。 学校 現 場 で は ,発 達 障害 を もつ児 童 生徒 につ い て理解 す るた め に ,県 や 市 町村 単位 で特別 支援教 育 の研修 会 が毎年数 回行 われ てい る。 ただ
,す べ て の教 師 が参加 す るわ けで は ない の で ,セ ン
ター の よ うな市 の機 関 を活用 して ほ しい と考 える。
学校 で の職員研 修 で ,『 特別支援教 育 ,特 別 な支
援 の必要 な児童生徒理解』等 をテーマ として ,実
際 にかかわってい るCo.や SSWと 事例検討等 を行 い ,そ の児童生徒 の特性 を知 り具体的な対応 を学 ぶ機会 を設定す る必要があると考 える。その研修 会 で得 た知識や対応 は ,発 達 障害 をもつ子への対 応 だ けでな く保護者対応や学級づ くりにもいかす ことができる。 この よ うに学校 は ,専 門機 関 と話
し合 いつつお互いに連携 してい くことができると よい。本事例 で Co.は ,先 生方 の授業等へ の困 り 感へ具体的な対処 を伝 えた c授 業 をみせ て も らっ た り困 り感 を聴 いた りす る中で学校 を支援 した。
先生方 を応援す る立場 を とった ことで学校 の理解 や 対応 が進 ん だ と考 え る。 坂本 ・阿蘇 (2007) のあげてい る教師の専門機 関への要望 として ,定
期的な訪問 ,具 体的な支援 ,学 校 と保護者 とのコー デ ィネー ター役 も期待す ることとも一致す る。
(2)縦 の連携
発達障害児へ の支援 は ,子 どもの ライ フステー ジに応 じた一貫 した支援 を行 うとい う視点が必要 である。
しか し ,乳 幼 児期 ,学 齢期 ,青 年期 と成 長 してい くにつれ ,育 ちの場 も支援者 も変わって い き ,支 援 の一貫性 が途切れて しま うことがある。
最終的に ,就 労 。自立に向けた支援 を 目指す には
,その子 の生涯 を通 じた支援 の一貫性 が途切れ ない よ うに縦の連携 とい う視点が欠かせ ない。
ではその縦 の連携 は どうあればいいのか。本事 例 で は ,Aは 市 の乳幼児健診 か ら児童相談所へつ なが り ASDの 診 断 を受 け ,早 期療育へ とつ ながっ た。そ して ,健 診 時か らかかわっていた保健師 と 療育 クラブが小学校への移行支援 に向けて心を配 っ た。そのため ,小 学校入学へ の移行支援 はスムー ズに行 われた。 その後 ,登 校 しぶ りを受 けて小学 3年 よ リセ ンター Co.が ,小 学
4年よ り県専門機 関 OTが かかわ り支援 を行 った。 中学校 へ の移行支 援 はセ ンターが 中心 を担 い ,現 在 も支援継続 中で
あ る。今後の高等学校へ向けての移行支援 は県専 口 号隻 雷 ヒ打 ち合 わせ て進 めてい くこ とにな る。一
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'貴=一 ヽ ̲ や そ れ を フ ァイ リン グ した
FI三
=t更 姜
マ´ アウ」 がある (1999)。
しか し作
預
fこ │・百三■I各 園や学校 に任 され てお り ,実 際 3移 行こ もうま く
i舌か されていない現状がある。
それ は ,記 入 にあた り保護者 の了解 を もら うこ と や受 け取 った学校 の『 先入観 を持たず
,自分 のや り方で』等の指導観 が使用 を妨 げてい ると考 え ら れ る。使 う側が用いやすい『移行支援シー ト・ ファ イル』 にす るために ,実 際使用す る現場 の教師の 意 見 を汲み あげ掌握 し取 り入れ る場 の設 定等 が必 要 と考 える。 そ して ,そ のニーズに合 った支援 が で きるよ うに支援 の各段階を整 えることも必要で あ る。 た とえば中学校では担任 の配慮 があれば よ いのか ,校 内の連携 でできるのか ,専 門家 のチー
ムによる支援 が必要 なのか ,特 別 の場 に よる指導 が必要なのかな どがわか り ,そ の支援 の レベル に よってそれ に応 じて支援 できるシステ ムの整備 が 必須であると考 える。 また ,子 どもの言動がなん
だか ち ょっ と『気 になる』 とい う段階か ら ,親 子
のサポー トができる仕組みが必要である。その う えで保護者 の気持 ちに寄 り添いつつ ,専 門機 関が
連続 した円滑な移行支援 を行 うことが重要である。
特 に ,学 校在学 中か ら ,卒 業後 の就労や生活 を見 据 えてい くことも縦 の連携 の視 点で大切 で ある。
筆者 が所属す るセ ンター はその役 を担 ってい る と 考 え られ る。
(3)横 の連携
横 の連携 とい う意味では ,チ ー ム支援 とい う概 念 が あ る。 石 隈・ 田村 (2003)は ,複 数 の支援者 が共通の 目標 をもち ,役 割分担 しなが ら子 どもの 援助 にあた るこ ととしてい る。 そのチー ムのケー ス会議 では ,そ れぞれ が専門の立場 でお互い対等 に専門的見解 を述べ ることになる。専門的見解 の 表 明 として最 も重要 な ことの一つ は
,自分 の専門 領域 に関す る知識 か ら事象 と捉 えた『 見立て』 を 伝 える ことで ある (奥 野,2014)。 本事例 では
,Aの 支援 に ,学 校 の先 生方 ,保 護者 に加 え ,セ ン
ターや 県専 門機 関の外部機 関 も含 めチー ムを組 み 連携 した。 Co.は 学校 で は心理 学 的 な立場 か ら
Aについての見立て を教師 に伝 え ,学 校 での具体的
な対応 を示 した。 県専 門機 関は医学的な立場 か ら 見立て ,学 校へ対応 を求 めた。 ただ ,学 校への外 部 の支援機 関がセ ンター と県専門機 関 と複数 あっ た こ とが ,一 時期学校への負担 となっていた こと は否 めない。そのため ,県 専門機 関 と相談 し学校 へ の支援窓 口を一本化 した。
しか し , Aの 不調
を危惧 した県専門機 関の強い指導が学校 に行 われ た。そ うなった理 由 としては ,県 専 門機 関は個 々 人へ の 1対 1対 応 の医療機 関であ るため , Aを み
て ,ま た Aや Mo.が そ こで語 るこ とのみ を問いて 判断 し学校 の対応 が適切 でない と迫 った と考 え ら れ る。 対 して学校 は教育機 関で あるので ,Aと ま
わ りの生徒 をみて ,学 校 。学年全体 をみて教育 を
行 う Gこ の違いが饂齢 を生み学校への指導へ とつ
ながった と思われ る 1,そ の際セ ンターは県専門機
関 と学校 の離配 の解消 にあたった。
1司時 に県専 門
機 関が学校 の対応 の意味 を知 った ことで ,今 後 の
学校への指示や提案 が学校 を尊重 した ものに変化 す るのではないか と考 える。県専 門機 関へは ,塩
川・桃 井 (2003)の い う『 医療 に求 め られ てい るのは ,発 達障害 についての適切 な診 断 と教室 で の対応 に関す る専門的な立場か らの助言』 を期待 したい。 また ,学 校 と関係機 関 との間のずれ に関 して は ,吉 岡 (2013)も 指摘 してい るが ,チ ー
ム支援 にあた りお互いを尊重す ることは常に念頭 に置 きたい。
チー ム支援 で大切 な役割 を担 うのは ,そ のチー
ムを取 りま とめる リーダー である。その リー ダー を ,発 達障害 をもつ児童生徒への支援 では ,特 別
支援 コーデ ィネー ターが担 い ,そ のチームの連絡 や調整 ,役 割分担 を行 うとされ る (曽 山・武 田
,2006)。 外部専 門機 関 とチー ムを組 む場合 は , さ らにその コーデ ィネー トの役 も担 う :本 事例では
,特別支援 コーデ ィネー ターで もある支援 学級担任 が Aの 支援 チー ムの リー ダー であった。
しか し
,学校の多忙 さや生徒対応の困難 さもあ り ,リ ーダー として うまく機能 していなかった場面がみ られた。
これ には特別支援教育 を学校 に どう位置づ けるか ど う理解 をすす めるか とい うはっき りした管理職 の方針 と協力が欠 かせ ない と考 える。それがない と学校 の先生方の協力 を求 めることは難 しくなる と思われ る。 まずは学校 のメンバーの連携 が必要 で あったが ,Co。 や SSWが その連携 の橋渡 しを行 うこともあった。 一方で ,外 部専 門機 関の窓 口で あ る SSWと リー ダー との連絡 は十分 で あった。
しか し ,そ の密接な連携が逆に リーダーの リーダー としての学校 内での役割 を曖味に して しまい
,Aへ の支援 はセ ンターに任 しておけば安心 と思わせ た と も考 え られ る。 同様 に
,AやMo.がCo.や
SSWと 面談 を重 ね ,連 絡 を取 り合 うこ とが学校 と
Mo.の話す機 会 を奪 うこ とになったのではない か とも考 え られ る。
Mo.は子 どもの専門家 として チー ムの大事 な一員である。 しか し ,時 に保護者
の思いが学校へはただのク レーム としか伝 わ らな い こ とも少 な くない。 リーダーは ,保 護者 は遠慮
しつつ学校へ要望 を伝 えてい る (三 田村 ,2011)
ことも念頭 において ,保 護者 と話す機会 を活用す るこ とが大事 である。
(4)セ ンターの利点
セ ンターは ,市 の教育 ,福 祉 ,保 健 の 3課 が連
携 し設置 され てお り ,乳 幼児健診 時か らの継続 し た支援 ができることが利点 としてあげ られ る。 ま た ,市 の組織であるため ,保 育園・幼稚 園 ,学 校
,療育 クラブな どとも連携 が取 りやす い こ とも子 ど もの状況 (実 態や 困 り感 )を 把握 しやす く ,ま た
支援 につ なげやすい。 それ に子 どもだけでな く家 庭 (特 に母親 )へ の支援が行いやすい状況がある。
本事例 において ,セ ンターの
Co。として A,Mo.,
学校へ支援 を して きた。 セ ンターの SSWと Co.だ か らこそ守秘義務 の問題 もク リアでき ,密 に連絡 を取 り合 いつつ の継続支援 が可能 であった。面談 だ けでな く ,教 師への コンサル テー シ ョンがで き た ことは学校 との連携 の要 ともなった。学校 コン サ ル テ ー シ ョ ン の 意 義 に つ い て 高 橋 ・ 徳 永
(2002)は ,学 校 と相談期 間が遊離 しない こと
,保護者 のニー ズに応 えること ,よ り有効 な環境調 整 を行 うことをあげている。まさにそのことを行っ て きた といえる。 また ,セ ンターのメンバーヘの コンサルテー シ ョンも随時行 ってきた。 メンバー がそれぞれの役 目を担いつつ連携でき ,市 のセ ン
ター として『 点』ではな く『 面』で支援 ができた と考 える。 そ して ,組 織 と して『 縦 の連携 』 と
『 横 の連携 』 を考 えつつ継続 して動 くこ とがで き るこ とも良い点であ る。その良 さをいか して今後 も子 ども ,保 護者 を始 め とす る子 どもにかかわ る 方 々に支援 をできれ ば と考 える。
4今 後の課題
考察 の 中で も言及 したが ,本 支援 にお ける問題
点 (図 1中 に も記載 )に ついて ,今 後 の課題 とし
て考 えたい。①い くつかの専門機 関が関係す る場
合 ,学 校への負担 を少 な くす るた めに支援 窓 口を
一本化す るか ど うか ,そ うす るな らその役 をだれ
が担 うのかの問題 がある。本事例では ,一 本化す
るこ とで学校への Co.の 対応 は しやす くなったが
,逆 に SSWが 県 専 門機 関か らの助 言 。指 導 等 を学
校 に どこまで どの よ うに伝 えるかの重荷 を背負 う ことにもなった。今後検討 が必要であると考 える。
②
Mo.はCo.に 最初
Mo.側(絶 対的な味方 )で ある
こ とを望 んでいた。
Mo.にとつて SSWと Co.,県
専門機 関 との面談の違 いが どこにあったのかを検 討す るこ とで連携 の意味 を考 えたい。③最後 に
,学校 と緊密 な連携 を取れ るセ ンターだか らこそ
,学校へ の支援 の線 引きを どこにす るか を考 える必 要がある。学校 が支援 の中心になれ るセ ンターの あ り方 を考 えたい。
謝辞
事例提供を心よく承諾 してくださったご家族に 対して感謝の意をここに記します。
(山下み どり
)事例 2.不 登校 か ら退学 ,再 入学 に至 った
児 童 養護 施設 入所 の高校 1年 生女 児 一発達障害と知的障害の判別困難に伴う連携の課題一
1.本 児の入所経緯 および不登校 に至 るまでの概 略 高校 1年 生女子 で あ る本児 は ,小 学
6年生 の と きに ,児 童養護施設 に措置 された。本児 は ,入 所
前 に も不登校状態 となった こ とがあったが ,X福
祉事業所 の介人 に よ り ,特 別支援学級へ の再登校 に至 った。施設入所後は ,他 の入所児童 と共に
,地域の小学校 の特別支援学級 と ,中 学校 の特別支 援学級へ と通級 した。体調不 良の訴 えや ,登 校渋
りに よる欠席 はあったが ,学 校 に行 きた くないわ けではない様子 だ った。
施設 では ,女 児数名か ら成 るホー ムに居住 し
,担 当職員 との関係 は良好 であった。 ただ ,職 員 か
ら叱 られ る場面 にな る と ,職 員 を避 けて逃 げ回 っ てみた り ,話 が出来た際 も黙 り込んで 一切 言葉 を 発 さな くな る ,上 の空になるとい う様子が度 々み
られ′ た。
また ,前 任 の心理担 当職員 と施設外 の コンサル タ ン ト (心 理 )と の間で定期 的 に行 われ ていた コンサルテー シ ョンで ,本 児 のアセ ス メン トに関 す る相談 が行 われ た ことがあった。 その中で ,本
児 の『集 中が持続 しない』 ことや『 注意が続かな い』 こと ,そ して『 コミュニケーシ ョンの緩慢 さ』
とい う特徴 を ,発 達 に遅れ がある とみ るのか ,そ
れ とも知的 に遅れ があるとみ るのかの判 断が難 し い とい う内容 が話 されていた。本児 の親族 に知的 障害者 がい ることや ,他 児 と比べた際 の本児 の様 子 よ り ,知 的な遅れ があるのではないか とい う予 想 を していた職員 は多か った。 しか し ,一 見 した 特徴 は発達障害 に類似 してい るため ,他 の発達障
害児 と同 じ支援 で よいのか ,そ れ とも知的障害児 特有 の支援 を行 うべ きなのか ,は たまた ,障 害に こだわ らず ,そ の場その場で 目の前の本児 に応 じ たかかわ りを行 うべ きなのか等 ,そ れぞれ の職員
がそれ ぞれ の判断の もとかかわ りを行 っていた。
本児 が 中学
3年生 とな り ,受 験 を意識す るよ う になった際 ,知 的な遅れの疑いをもつ担 当職員 は
,進学先 を考 える上での判断材料 を得 るこ とを 目的
として ,児 童相談所 に知能検査 を依頼 した。 田中 ビネー知能検査 の結果 は IQ=78で ,療 育手 帳 の 取得 には至 らなかった。 しか し ,普 通高校 の授業
についてい くこ とは難 しい と判断 され たため ,本
児 の能力や ,も のづ くりが得意だ とい うことを考 慮 した担 当職員 が ,技 術専門校 への進学 とい う選 択肢 が あることを含 め ,進 路指導 を行 った。施設 内に同校 へ通 う児童 がいた こ ともあ り ,本 児 は技
術 専門校へ の進学 を選択 し ,受 験 に至 った。
そ して ,入 学試 験 に無事合格 した本児 は ,4月
よ り技術専門校へ と通い始 めた。入学 して lヶ 月 半 ほ どは宿題 に も毎 日取 り組 み , 自転車で学校 に 通 っていたが ,5月 の終わ りに退所児 Aに 呼び 出
され ,接 触 した の を境 に ,「 学校 を辞 めたい」 と 言い ,ぱ った りと登校 しな くなった。
2.本 児 に対す る多角的な支援
本事例 にお ける ,支 援 関係 を図 2に 示す。
担 当職 員 ,B指 導 員 による介 入
まず は ,突 然
学校 に行 かな くなった本児 に対 し ,ホ ー ムの担 当
職員や ,以 前 よ り本児 に深 くかかわ ってい る B指 導員 が ,何 が彼女 を学校か ら遠 ざけてい るのかを 理解すべ く支援 を開始 した。 B指 導員 は ,以 前 か
かわ りの あった
X福祉事業所 との窓 日とな ってお
り ,本 児 の入所前の生活状況や母親 の様子等 に詳
しく ,本 児 か らの信 頼 も厚 か った。 本児 になぜ 学 校 を辞 め た い の か を尋 ね る と,「 施 設 に い た くな い 」「家 に帰 りた い」「学校 がお も しろ くな い」
「学校 に話す人 がいない」 こ とを挙 げた。
加 えて ,本 児 が学校 に行 か な くな った きっか け にな って い る と思 われ る退 所児 Aと
,どの よ うな こ とを話 した か につ い て は ,本 児 は か た くな に 口 を閉 ざ してお り ,内 容 を知 る こ とはで きなか った。
た だ ,こ の退 所児
Aの自由気 ま ま な様 子 が ,本 児
の『 学校 に行 か な くて も楽 しく暮 らせ る』モデル
とな り ,影 響 を与 えた可能性 は大 きい と施設職 員 内で は考 え られ て い た。
担 当職 員 らは ,学 校 を辞 めた場合 の本 児 の今 後 につ い て ,母 親 とは一緒 に暮 らす こ とが 出来 ない こ とや ,中 学校 卒 業 での就職 は難 しい こ とを説 明 す るな ど して ,本 児 が学校 に戻 る こ とを 目的 と し た支援 を続 けてい った。 それ に対 し本児 は ,担 当
職 員 と学校 の こ とにつ い て話 す こ とを避 け る よ う にな り ,話 が で きて もそ の間 中沈 黙 して い る こ と が多 くな ってい った。
コンサル タン ト │[聟鋤 X福 祉 事 業 所 児 童 相談 所
技 術 専 門校 担 当 職 員
E
m̲o担 当 職 員 D
B指 導 員
担 当 職 員
F
女 子 棟
心 理 担 当職 員
陣 害 者 職 業能 力開 発 訂練 校
ヽ
♂ 壼
.轟■
︱ 一
図 2 事 例 内で の支援 関係
注
)藤川 (2007)に 基づき
,点線を情報交換
,矢印を支援 として記載
心理 担 当職 員 の 介 入 この 頃 に ,B指 導員 か ら 心理 担 当職 員 で あ る筆者 へ 「学校 に行 きた くない 本 児 の気持 ち を聴 い て欲 しい」 と依 頼 が あった。
まず は本児 と治 療 契約 を交 わすべ く ,筆 者 が本 児 に話 しか けるも ,避 け られ て しまい話 が出来 なかっ た cそ の次 の回 には ,ホ ー ムの担 当職 員 に協力 し て も らい ,面 接 に誘 いやす い環境 を設 定 して も ら うも ,本 児 は筆 者 の顔 を見 るな り部屋 へ逃 げ帰 っ て しまい ,面 接 が で きなか った。 これ が三度 ほ ど 続 き ,本 児 と面接 を行 うた め には まず
,日常 にお
け る関係 づ く りが 必 要 だ とい う考 えに及 んだ。 そ して
,日常 で な るべ く本 児 の い るホー ムヘ足 を運 び ,本 児 の好 きなマ ンガや ゲー ムの話 を持 ちか け てみ た り ,本 児 を交 えて小 学 生 と遊 ん でみ た りと 関係 作 りに手 を尽 く した。
技 術専 門校 の介 入 一方 で ,担 当職 員 らは学校 側 に働 きか け ,担 任 に施 設へ 来 て も らい ,登 校 に 繋 が るよ う本児 を励 ます とい う支援 を行 って もらっ ていた。担任 は本児 の学校 での実習 の成績 を褒 め
,学校 に来 て くれ た ら嬉 しい と今 後 の登校 を促 した
.本 児 は 自身 の手先 の器 用 さを褒 め られ る こ とは喜 ん で い た もの の ,こ の こ とが登校 へ と繋 が る こ と は なか った。 そ の よ うな 中で ,学 校側 よ り ,こ の
ままで は 出席 日数 が足 りな くな る こ と ,足 りな く
な った場合 は学校 の制 度 上 ,留 年す る こ とは出来 ず ,退 学 しな けれ ば な らない こ とが伝 え られ た。
X福 祉 事 業 所 の 介 入 ま た ,B指 導 員 は ,本 児
の入 所 前 の支援 を行 って くれ ていた
X福祉 事 業 所 と連 絡 を取 る中で ,本 児 に登校 を促 す よ うなア プ ロー チ を行 って ほ しい と依 頼 を した。
B指導 員 の 申 し出 を ,X福 祉 事 業 所 の職 員
C氏は快 く引 き受 け ,介 入 して くれ た。本 児 を連 れ て釣 りに行 くな ど して気分 の リフ レ ッシ ュを図 りつ つ ,本 児 の話
を よ く聞 き ,登 校 を促 して い った。
C氏と時 間 を 過 ご した本 児 は ,施 設 に帰 園 した後 ,学 校 に行 く
つ も りで あ る こ とを話 してい た よ うだが ,実 際 に
足 が 向 くこ とは なか った。
外部 の臨床心理 士か らの心理 コンサルテー ション さ らに ,児 童 養護 施設 が 月 に 1回 の頻度 で受 け て い る コンサ ルテー シ ョンにて ,ホ ー ムの担 当職
員 か らコンサル タ ン トに ,本 児 の不 登校 につ い て の相 談 が な され た。 コンサ ル タ ン トか らは ,本 児 は知 的 な能 力 の低 さか ら
,自身 の気 持 ち を言葉 に す る こ とが難 しく ,な ぜ 学校 を辞 めたい の か につ い て は ,本 児 自身 です らよ くわ か って ない ので は ない か とい うこ とが話 さ
│れた。加 えて ,本 児 に は
学校 に戻 る動機 づ けが な く ,再 び登校 す る よ うに な る こ とは難 しい こ とが示 唆 され た。 今 後 は ,本
児 の知 的 な低 さを考慮 した 上で ,進 路 につ いて話 を して い く必 要 が あ る こ とか ら ,ま ず は ,考 え う
る可能性 を選 択肢 と して用意 し ,そ の 中か ら本児 の希 望 を聞 き ,そ れ が実 際 に可能 で あ るの か ない の か の吟 味 を本 児 と職 員 が一 緒 に行 って は ど うか
とい う提 案 が され た
G心 理 面 接 の 開始 とそ の 内容 7月 にな り ,筆 者
が生活 の 中で本 児 と二人 で遊 ぶ機 会 が増 えてい た あ る 日 ,「 遊 ぶ 部屋 (ア レイル ー ム ),行 って もい い よ」 と本児 が言 って きた c筆 者 は本児 を連 れ て プ レイルー ム に移 動 し ,本 児 が急 に学校 に行 か な
くな った こ とを心配 してお り ,週 に 1回 ,進 路 に
つ い て一 緒 に考 えた り ,遊 ん だ りす る時 間 を設 け たい と本児 に伝 えた。本児 は 「わか った」 と言 い
,週 に 1回
45分のセ ッシ ョンが 開始 され た。
面接 は ,冒 頭 で学校 や進 路 の話 を し ,残 りの時
間 は一緒 に遊 ぶ とい う形 で行 われ た。 本 児 は ,筆
者 が尋 ね た こ との多 くに 「わ か ん ない」 と即 答 し てい て ,話 を深 め る こ とが難 しか った。
技 術専 門校 の退 学 とその後 の進 路 一 方 で ,本
児 の欠席 は増 え続 け ,本 児 が学校 に戻 る意 思 もな か った た め ,7月 の末 に退学届 を提 出 した。
担 当職 員 らや
B指導 員 は ,す ぐ さま本 児 の次 の 進 路 の検討 を開始 した。就職 を考 え る声 もあった が ,本 児 の生活 の様 子 か らは まだ 自立 が難 しく
,児童養 護 施 設 で生活 支援 を継 続 す る必要性 が あ る と判 断 され た。 本 児 は通信 制 の高校 に入 る こ とを 希望 していたが ,担 当職員 よ り
,自主学習 で レポー トを提 出 し続 け る こ とや ,単 位 認 定試 験 に合格 す る こ とが学 力 的 に難 しい こ とが話 されぅ 本 児 も納 得 した。
そ の よ うな 中
B指導 員 よ り ,本 児 の知 的 な能 力 の低 さを鑑 み ,障 害者 職 業 能 力 開発校 へ進 学 して は ど うか とい う意 見 が 出 され た。 それ を受 け ,本
児 に ,直 接 仕 事 に繋 が る よ うな技術 を学 ぶ こ とが で き る学校 が あ る こ とを話 た ところ ,「 行 きたい」
とい う返 答 が得 られ た。
児童 相 談 所 の介 入 本 人 に障 害者職 業 能 力 開発 校行 く意 思 が あ る こ とは確 認 で きた もの の ,入 学
のた め には療 育手 帳 が必 要 で あ ったた め ,再 度
,児童 相 談所 に知 能検 査 の依 頼 を行 い ,田 中 ビネ ー
知能検 査 の成 人級 を本 児に実施 して も らった。 そ の結 果 は IQ=72で ,療 育 手 帳BⅡ の取得 に至 っ た。
その後の経過
その後 ,本 児 は障害者職 業能 力 開発校 の入学試験 を無事通過す ることがで きた。
入学す るまでの問 ,本 児 は
B指導 員よ り紹介 され た畜産関係 のアルバイ トに勤 しんだ。 これ は ,本
児が障害者職業能 力開発校 を卒業 した後 の進路 を
考 える とともに, もしも新たな進学先で不登校 に
な り ,急 遠就職 す る必要 が出て きた場合 の ことを 考 えての こ とだ った。本児 は ,数 ヶ月間に渡 るア ルバイ トを体む ことな くや り遂 げ ,無 事 ,障 害者
職 業能力開発校 の入学 に至 った。現在 はたまに身 体 のだ る さを訴 え ,登 校 しぶ りはあるものの ,欠
席 もほ とん どな く登校 してい る。
3.考
察
本事例 では ,本 児 の不登校 に端 を発 して支援 が 開始 され ,B指 導員 を中心 とす る施設 内外 の連携 に よって ,進 路 の再選択 に帰着す る支援過程 をた どった。不登校 とい う問題 が出現 した ことで ,本
児 に適 した学校 へ再入学で きた とい う面 もあった 一方 ,表 面化 した不登校 の根底 では ,本 児 の知的
な遅れ が介在 していた ことは明 白であった。軽度 の知的障害 と発達障害は ,状 況 に対 しそれ な りに 適応 はで きるが困難 を伴 ってお り ,完 治ではな く
適応 の向上が支援の主眼 となる点で共通 している。
しか し ,そ の判別 の難 しさもあ り ,心 理担 当職員 である筆者 の介入 も含 めて ,対 応 が後手 に回った 面 もあった よ うに思 われ る。
それ に加 え ,児 童養護施設 にお ける支援 では
,長期 的かつ包括 的 に児童 の生活 と育 ちを支 え続 け ることか ら ,児 童 の障害や 困難 に対す る生涯発達 的 な理解 が必要 とされ るが ,そ の浸透 には至って いない現状がある。
以下では ,本 事例 の内容 を踏 まえ ,発 達障害支 援 にお ける連携 の課題 について論 じてみたい。
共通理解の困難
本児へ は ,指 導員 ,心 理担 当
職 員
,コンサル タン ト (心 理 ),学 校 の教師 ,福
祉事業所職員等
,さま ざまな専門性 を有す る支援 者 に よ り介入 が行 われ た。 それぞれ の専門家が
,本児 の再登校 とい う共通 の 目的の もと、連携 して 支援 に取 り組 んではいたが ,そ の背景 となる本児 の認知的特徴 については ,各 支援者 で見立てにば らつ きがあった と考 え られ る。例 えば ,本 児 の状
態像 (学 校選択 の際の短絡 的な判 断や堪 え性 のな さ ,回 避 的な態度 )に 関 して ,そ れ を本児個人の 性格 と捉 えるか ,内 省 ,熟 考が難 しい とい う障害 特性 と捉 えるかで支援 の仕方 は異 なる。
今 回の事例では 「 不登校 の解 消 とい う明確 な主 訴 を前 に ,本 児 を再登校 させ るための支援 とい う
ところに 目が行 き ,不 登校 の背景の検討が不十分 であった よ うに思われ る。不登校 について尋ねた 際の本児 の短絡 的で曖味な言動 が ,彼 女 の内面の
理解 を難 しくし ,心 身 の不調 も見 られず一見す る と怠 けてい るよ うに見える態度等が ,支 援者側 の
『 配慮 すべ き』 とい う意識 を薄 めて しま ったので はないか。
また ,本 児 の知的 な遅れ か らくる困難 には ,コ
ミュニケー シ ョンの難 しさや堪 え性 のな さ ,他 者 か らの影響 されやす さ等がある。 当初 の進路選択 時に ,学 習面のみ の問題 ではない こ とが施設 内で 共通理解 されていれ ば ,彼 女 に とって よ りよい支 援 が提供 され る進路先 に繋 が った可能性 も考 え ら れ る。
そ うは言いつつ も ,今 回は ,施 設全体 の問題 と して ,担 当職員 が園の外部 の コンサルテー シ ョン の場で相談を行 ってお り ,共 通理解 のための機 会 が設 け られていた。 これ を機 に施設全体 において 本児 の障害特性 が共通の もの として理解 され ,再
入学先 の選択 に も役立 った。
児童養護施設 には様 々な専 門性 を もつ職員 が働 いてお り ,だ か らこそ共通理解 の難 しさが存在す る。子 どもの抱 える困難 が ど ういった背景の下生 じてい るかの見立ては ,職 員 の個人 の判断 に委ね られ てい る部分が大 きい。特 に心理担 当職員の導 入 は後発 であ り (厚 生労働省 ,1999),未 だ現場 に浸透 していない側面 もあるよ うに思われ る。
その よ うな中で心理担 当職員 は ,従 来 の児童養 護施設 において行 われ て きた生活支援 が よ り効果 的な もの とな るよ う ,役 割分担 を行 ってい く必要 性 がある。
役割 分担 の 困難
一方 で ,先 述 した共 通理解 の 困難 は協働 的役割分担 をも困難 にす る。児童養護 施設 は養護 ,養 育が支援の中核であ り ,一 つのホー
ム ,あ るいは担 当職員 が家庭 の よ うに子 どもを抱
える とい う文化 にあるため ,役 割分担 を行 うこ と
が難 しい。最近では小舎制が進 め られ てい る施設
も多 く ,一 つ のホームあた りの職員数 が限 られた こ とか ら ,役 割分担 の難 しさは深 ま るばか りであ る。
本事例 では ,心 理担 当職員 である筆者 が ,本 児 の学校 に行 きた くない気持 ちを聴 くことを 目的 と
し ,心 理 面接 を実施 した。 しか し ,面 接 内で本児
が 自身の気持 ちを話す ことはほ とん どな く ,心 理
面接 が深 ま るこ とはなか った。 そ して ,不 登校 に
関す る心理的 な介入 が十分 にで きないまま ,本 児
は退学 となって しまった。 この ことは ,筆 者 が前 任 の心理担 当職員や担 当職員 との ,本 児 に対す る
共通理解 が不十分 であったため生 じた と考 えるこ ともで きる。本児 の障害特性 を十分 に理解 した上 で ,本 児への心理 的支援 を考 える必要 があった。
また ,担 当職員や B指 導員 が どの よ うな見立て の下で どのよ うな支援 を行 ってい るかを聞き ,そ
れ を踏 まえ ,筆 者 が どこまでの ことを どの よ うに 支援す るか とい う筆者 の役割 を定めてお く必要 が あった と思われ る。
各 々の専門家 が共通の見立て を基 に役割 を分担 して支援 を行 うことは ,単 独 の支援 では届 かない 部分 をカバーできる ,包 括的な支援の提供 に繋がつ てい くと考 え られ る。そのためにはまず ,そ れ ぞ
れ の専 門性 を理解 した ,支 援 チームをま とめあげ るキーパー ソンの存在 が必要不可欠 だ ろ う。
長期 的な支援 におけるキーパー ソンに関す る困 難
本事例では ,長 年施設 に勤 めてい るベテ ラン の B指 導員 が キーパー ソン とな り ,各 方面 との連
携 を行 った。 また ,入 所以前 に本児 の支援 を行 っ て くれた
X福祉事業所 の職員 も在職 してお り ,連
携 しての支援 が可能 であった。 しか し ,他 のケー
スが今回のよ うに うま く運ぶわけではない。児童 養護施設 にお ける生活支援 では入所 してか ら卒園 す るまで とい う長期 的な支援 が行 われ てい る。 そ の間 ,キ ーパー ソンとなる職員 (多 くは担 当職員
)や連携先の担 当職員が ,入 れ替 わった り ,複 数 に なった りとい うさま ざまな こ とが起 こ りうる。前 者では前任 と後任間での ,後 者では複数のキーパー ソン間での共通理解 が行 われていなけれ ば ,積 み
上げて きた支援 が途絶 して しま うことにもな り得 ない。
今 回の事例 においては ,先 述 の通 り ,筆 者 と前 任 の心理担 当職員 との引き継 ぎが不十分であ り
,本児 に対す る共通理解 ができていなか ったた め
,心理面接の導入 に時 間がかか り ,介 入 が遅れ て し
まった。結局 ,筆 者 が介入 できたのは ,本 児 が学 校 か ら離れ て しまってか らかな りの時間が経 って お り ,学 校 に対す る想 い を聴 くタイ ミングを逃 し て しまった よ うに考 え られ た。
さらに ,こ の事例 にかかわつた担 当職員 ,学 校
の教員 ,福 祉事業所 の職員 らが現場 で経験 を積み 上 げてきた支援者 であったため ,互 いの専門性 を
尊重す るあま り ,共 通理解 を行 っていなかった よ うに思 われ た。
児 童 には児童 の生活 が あ り ,一 人 の支援 者 が 24時 間ず っ とそ の子 の支援 を行 うこ とが で きな い。児童 の見せ るさま ざまな面 を さま ざまな支援 者 が受 け止 め ,そ れ ぞれ の専 門性 か ら見立て を行 い ,そ れ らのす り合 わせ を行 うこ とで ,よ り多角
的で深 みのある支援 の実現 に役 立て るこ とがで き るのではないか。
しか し ,そ こには , さま ざまな支援者 か ら出て くる意見や見解 を ,誰 が どの よ うにま とめあげて い くか とい う難 しさを伴 う。本事例では ,B指 導 員 が周 囲の意見 をま とめ上げ ,イ ニシアチブを と るこ とで本児 が 自身 の能力 に応 じた進学先 を見つ けるこ とができた。一方で ,本 児 の退学 を含 む紆 余 曲折 を考 える と ,高 校入学時の進路選択 におい て ,他 の道 があった可能性 も否定できない。
内海 (2013)は ,児 童養護施設 は他 の福祉施 設 に比べ社会へ の 「出 口」 にな るこ とが多 く ,施
設 を離れ た後 の生活 の ことを考 えた支援 を行 うこ との重要性 を述べてい る。故 に ,児 童養護施設 に おいては ,児 童 の将来的な 自立 に繋 げ るた めに
,どの よ うな支援方針 を ど う繋 げてい くか とい う長 期的な連携 が課題 となって くる。 そのためには
,キーパー ソン間の連携 は必要不可欠 であろ う。
児童養護施設における心理的支援
本事例 では
,筆 者 が心理 的 支援 の キーパ ー ソン と して ,担 当職 員 や
B指導 員 と連 携 し ,本 児 の支援 を行 った。 こ の こ とを踏 ま え ,児 童養 護 施 設 の心理 担 当職 員 と い う立場 か ら ,発 達 障害 児へ の心理 的 支援 の 困難 や 課題 に関 して述 べ て い く。
本 事例 で は ,本 児 の不 登校 に関 して ,心 理 面接 にお け る言語 で のや りと りが 困難 で あった。筆者 が質 問 を投 げ か けて も,「 わ か ん ない」 と即答 さ れ ,本 児 の 内省 ,熟 考 が難 しい とい う障害特性 か ら面接 が深 ま らず に苦慮 した。 筆者 は ,面 接 を通 して本 児 の不 登校 に関す る内面 の表 出 を受 け止 め よ うと努 めて い たが ,時 間 が経 って か らの振 り返 りが難 しい本児 相 手 には適 わ なか った。
本 児 はそ の障害特性 か ら心理 面接 の情 緒 的 な深 ま りは望 めず ,本 児 の周 辺 情 報 か らアセ スメ ン ト を行 い ,心 理 的 な見 立 て を職 員 へ伝 え る こ とこそ が今 回筆者 が心理 担 当職 員 と して必 要 で あった こ との よ うに思 われ る。
児童養護 施設 は生活 支援 の場 で あ り ,今 回 の事 例 の よ うに ,児 童 の決 断や判 断 ,そ してそれ に伴 う結 果 まで も施 設 全体 で抱 えてい か な けれ ば な ら ない cそ のた め ,児 童 の今 後 の予 測 の た めの アセ ス メ ン トは必要不 可欠 で あ り ,障 害特性 は有力 な 判 断材 料 とな る。 しか し ,医 師や 熟 練 した専 門家 が経 験 を積 ん で で きる よ うな こ とを ,生 活 支援 に 追 われ ,時 間的 に も精神 的 に も余裕 の少 ない現場 の施設 職 員 がで きる よ うにな るの は難 しく ,現 実
的 で は ない。 故 に ,発 達 障害 ,知 的 障害 につ い て 心理 的 アセ ス メ ン トを行 うこ との で き る心理 担 当 職 員 が
,自身 の役 割 と して ,そ れ ぞれ の概念 の整 理 を行 い ,鑑 別 につい ての情報 を現場職 員 に伝 え
,連携 を行 ってい く必 要 が あ るので は ないか と考 え られ る c (福 永真 理奈
)2事 例 を通 しての考察
今 回挙 げ られた 中学生男子 に対す る支援事例
1,職業能力 開発校 生女子 に対す る支援事例 2は とも
│こ