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地方都市における 地方都市における 地方都市における

地方都市における社会階層と 社会階層と 社会階層と 社会階層と地域活動 地域活動 地域活動 地域活動

―2008

―2008

―2008

―2008 年 年 年 年・ ・ ・ ・201 201 201 2013 3 3 3 年 年の 年 年 の の大分市 の 大分市 大分市 大分市データの比較 データの比較 データの比較 データの比較分析 分析 分析― 分析 ― ― ― Social Stratification and

Social Stratification and Social Stratification and

Social Stratification and Community Activity Community Activity Community Activity Community Activity at at at at the Local the Local the Local level the Local level level: level : : :

A A A

A comparative analysis comparative analysis comparative analysis of comparative analysis of of of The

The The

The 2008 2008 2008 2008 and 201 and 201 and 201 and 2013 3 3 survey data 3 survey data survey data from survey data from from from Oita City" Oita City" Oita City" Oita City"

豊島 豊島 豊島

豊島 慎一郎 慎一郎 慎一郎 慎一郎 TOYOSHIMA Shin’ichiro TOYOSHIMA Shin’ichiro TOYOSHIMA Shin’ichiro TOYOSHIMA Shin’ichiro

1. 1.

1. 1. 問題の所在 問題の所在 問題の所在 問題の所在

現在,日本社会において,阪神・淡路大震災(1995 年)に続き,東日本大震災(2011 年)での災 害ボランティアの活躍を契機に,ボランティアや NPO 活動(市民活動)に代表される社会的活動 への人びとの関心がより一層強まっている。社会学では,ボランティアや NPO は,政治や経済 とは異なる生活者の論理により公共性を具体的に展開する新たな担い手,すなわち新しい市民社 会の主体として理解されている(髙坂 2000; 佐藤 2002; 関 2008; 三上 2010)。また,ボランテ ィアや NPO は,災害救援・支援のみならず,日常の地域生活に基づくコミュニティ形成の観点 からも論じられており, 「共同性の確立・再編による公共性の再構築」の主体 ( 山下 2008) ,地域 社会のなかの共同性( 「地域的共同性」)から「地域的公共性」を創出する主体(田中 2010)として も位置づけられている。鳥越(2014)は,現在のまちづくり活動において,新しい主体である NPO とかつての「ムラの組織」を継承する自治会の連携が不可欠であることを具体的に例証している。

三隅(2014) は,「そもそも市民社会は,伝統的な地域共同体(中世的な身分制)から脱却し自由で 自律した個人がつくる新たな社会の構想」だが,「人びとが住み合うところには共同性が生まれ るのが自然」であり, 「よりよいコミュニティには不可欠」であることを根拠に, 「市民社会と共 同性の両立」の重要性を指摘した(三隅 2014: 36-7)。以上の観点から,市民的公共性と地域的共 同性を伴った形で社会的活動が日常的に展開され,あらゆる立場の人びとが参加できる状況が拡 大すること,すなわち「社会参加の日常化・普遍化」 ( 豊島 2012) は,新しい市民社会の形成過 程に必要不可欠であると考えられる。

では,阪神・淡路大震災や東日本大震災を契機として,日本社会において社会参加の日常化・

普遍化は進展したのだろうか。そのことを考える手掛かりとして,三谷(2013)を取り上げよう。

三谷(2013)は,先行研究(豊島 1998; 仁平 2003)を踏まえて,全国社会福祉協議会のデータと総

務省「社会生活基本調査」のデータについて過去約 30 年間のボランティア活動参加者の推移を

(2)

確認した。その結果から,確かに災害ボランティアの顕著な活躍は局所的に存在したが,そのこ とが日本社会全体のボランティア活動参加人口の拡大には必ずしもつながっていないと論じて いる。現在,少子高齢化・過疎化の急速な進行による人口減少や地域経済の衰退などの問題に直 面している地方圏では,コミュニティの存続そのものが困難になる可能性がある,という見解が 流布するなか,「地方創生」や「地域再生」が重要な政策課題として位置づけられようになった

1) 。しかしながら,社会的活動への人びとの関心が高まってはいるものの,活動参加自体は量的 に拡大しておらず,社会参加の日常化・普遍化に至っていない現状において,個々の地方の実情 に即した形で市民(地域住民)主体の地域活性化は実現可能なのだろうか。

こうした問題意識を基に,本稿では,社会階層研究の観点から,2008 年と 2013 年の地方都 市調査データ(大分市データ)を用いて,社会的活動の一つである地域活動(ボランティアや NPO 活動を含む)に関する記述的な分析および活動参加の要因分析を行い,地方都市における社会参 加の日常化・普遍化について実証的に検討することを試みる。

2. 2.

2. 2. 社会階層と 社会階層と 社会階層と 社会階層と社会参加 社会参加 社会参加 社会参加に に に に関する 関する 関する 関する理論的視座 理論的視座 理論的視座 理論的視座

社会参加研究における実証分析では,主として人口学的要因(性別や年齢など),社会階層的要 因(教育達成,職業,収入,財産保有など),社会心理的要因(動機や態度,価値観など),地域的 要因(近隣関係や居住年数など)が,ボランティアや NPO 活動,地域活動などの社会的活動への 参加を規定する要因として検証されてきた(Smith 1994; 豊島 1998, 2012; Wilson 2000;

Taniguchi 2010; 片桐 2012; 三谷 2014)。近年の研究では,社会参加とソーシャル・キャピタ ルの関連も分析課題として加わっている (Wilson and Musick 1997, 1999; Putnam 2000=2006;

Wilson 2000; Taniguchi 2010; 豊島 2010, 2011; 片桐 2012; 吉川 2014) 。

欧米の先行研究には,社会階層と活動参加の関連を検討する計量的研究について豊富な蓄積が ある(Smith 1994; 豊島 1998; Wilson and Musick 1997, 1999; Wilson 2000; Taniguchi 2010;

片桐 2012; 三谷 2014)。片桐(2012)は,欧米の先行研究における主な理論について, 「支配的地 位モデル」, 「一般的活動理論」, 「ボランティア・プロセス・モデル」, 「機能主義アプローチ」の 4 つに整理している。これらのうち, 「支配的地位モデル(The dominant status model)」 (Lemon, Palisi and Jacobson 1972)は社会階層と密接に関係しており,「ある社会において支配的地位に あるもの(例: 高い収入にある者,教育程度の高い人たち,プロテスタント等)がその社会におい てボランティアに従事する」 ( 片桐 2012: 41) という経験的現象に基づいている (Lemon, Palisi and Jacobson 1972; Smith 1994; Wilson and Musick 1997; 片桐 2012) 。三谷 (2014) は,欧米 の先行研究の主な理論的視座として,収入や教育達成レベルの高さ,専門職・管理職であるとい った社会経済的な資源の豊富さが活動参加を促す効果をもつという「資源仮説」(Wilson and Musick 1997, 1999)を挙げている。

このように,高階層に属する人ほど社会的活動に参加する傾向に基づく仮説は,日本の社会階

層研究において「高階層(性)仮説」と呼ばれており, 「社会階層と社会移動全国調査」 (以下, SSM

(3)

調査)に代表される全国調査データや地方都市調査データにより検証されてきた(豊島 1998, 2000, 2008a, 2010, 2011, 2012; 仁平 2003, 2008, 2011; 岩間 2011; 三谷 2012, 2014) 。この仮 説のほかに,「階層的にみて上位階層と下位階層の上下両端に,ボランティア的活動者が多く認 められ,中間的階層には活動者は平均以下の低率でしかみられないこと,いいかえれば「中細り」

型の分布を示す」 (鈴木 1989: 70)という階層化現象に基づく「階層的二相性 (K パターン)仮説」

がある ( 鈴木 1987, 1989) 。この仮説は, 「ボランティア」という外来語に象徴される欧米社会の

近代的価値観に基づく慈善・奉仕活動と,「結」や「模合」といった日本社会の地域的共同性に 基づく伝統的相互扶助慣行の間にある文化的・社会的差異を理論的前提としており,現代日本に おける社会階層と社会参加の関連を検討するための一仮説として,稲月(1994),豊島(1998, 2000, 2008a, 2010, 2012),仁平(2003),三谷(2012)によって追証されている。このように,階層的二 相性仮説は,現代日本の市民社会形成過程における市民的公共性と地域的共同性の両立を理論的 視座にしているという意味で,日本の社会参加研究の独自性を示すものといえよう。

話を高階層(性)仮説に戻そう。日本の社会階層研究において, 1995 年 SSM 調査データでは豊 島(1998, 2000)が,2005 年 SSM 調査データでは岩間(2011)と仁平(2008, 2011)が社会参加の高 階層性を確認しており,後に豊島 (2012) は 1995 年 SSM 調査データの再分析結果と岩間 (2011) と仁平(2008, 2011)の知見を比較検討し, 1995 年以降,社会参加は財産保有や生活充足的ライフ スタイルといった「生活の豊かさやゆとり」に規定されており,社会参加の日常化・普遍化には 至っていない状況を明らかにした。こうした社会参加の高階層性という現象から導出される論点 として,豊島(2000)は,生活の豊かさやゆとりを享受する一部の人びとという活動参加者の傾向 は,資源が不平等に配分されている社会状態(階層社会)に社会参加が規定されている証左であり,

活動参加者(資源が豊富な「エリート」層),活動を活用する要支援者(資源が欠乏している,な いしは収奪されているマイノリティ) ,活動不参加者(資源が相対的に中程度,ないしは少ない マジョリティ)間の階層的分断を招く可能性を示唆している。仁平(2003, 2008, 2011)は,まちづ くりや学校づくりといった形で公的領域への社会参加の可能範囲が拡大しているなか,社会参加 が高階層(資源がある者)に偏っている場合,市民社会は政治や経済から自律した存在ではなく,

市場の擬似的相関物となり,ネオリベラリズムの帰結と接続するという「参加が階層化と保守化 を順接してしまう回路」(仁平 2011: 319)を見出し,それに対し資源やゆとりがない人の声を媒 介する回路を確保する手段の一つとして NPO を位置づけている。

他方,仁平(2011)は,1995 年と 2005 年の SSM 調査データの時点間比較分析により,2005

年では財産保有以外の階層変数の効果が全体的に認められなかった点から, 10 年の間に社会階

層と社会参加の関連が相対的に弱まっている可能性を指摘している。 Taniguchi (2010) は, 2002

年「日本版総合的社会調査(JGSS)」データの分析により,教育達成レベルが高い層と無職はボ

ランティアへの参加時間が相対的に長い傾向にあることと,参加時間に対して世帯収入の効果が

なかったことを確認しており,社会の周縁におかれている人びと(教育達成レベルの低い層や非

正規雇用者など)の活動不参加傾向を指摘した。三谷(2014)は,これらの近年の先行研究にみら

れた傾向を「社会階層と市民活動参加の関連の弱まり」として捉え,資源の多寡と関係なく,人

(4)

びとが等しく活動に参加する状況,すなわち「市民活動参加者の脱階層化」が日本社会において 実現しているのかを, 1995 年 SSM 調査データと「2010 年格差と社会意識についての全国調査」

(以下,2010 年 SSP-Ⅰ調査) データの時点間比較分析により検討した。その結果,「高学歴層に

よる一貫した市民活動への参加によって教育的階層における「階層化」が持続していたこと,同 時に,中流以上の層や管理職層,無職層といった従来の市民活動の中心的な担い手の参加の低下 によって,経済的・職業的階層における消極的な意味での「脱階層化」が生じていた」 ( 三谷 2014:

42) ことを明らかにした 2) 。このことから,三谷 (2014) は, 「一見,市民社会論では望ましいとさ れる「脱階層化」が現実のものとなった状態には,生活にゆとりのある層の市民領域からの後退 という,また別の論点が含まれている」(三谷 2014: 43)と指摘している。

以上の先行研究に基づき,次節では,東日本大震災以前の全国調査データによって三谷(2014) が析出した社会参加の「脱階層化」の観点から,東日本大震災以前と以後の地方都市調査データ を用いてまず記述的な分析を行い,続いて社会階層的要因を検討する。

3. 3.

3. 3. 分析 分析 分析 分析 3.1 3.1

3.1 3.1 データ データ データ データ

本稿では,「2008 年地域の暮らしと福祉に関する大分市民意識調査」(以下,2008 年調査)と

「2013 年地域の暮らしと福祉に関する大分市民意識調査」(以下,2013 年調査)のデータを使用 する。「地域の暮らしと福祉に関する大分市民意識調査」は,大分市地域福祉計画の策定のため に,地域住民の生活実態および地域福祉に関する意識や行動を把握することを目的として 5 年ご とに実施されている 3) 。調査主体は大分市役所福祉保健部福祉保健課であり,大分市社会福祉協 議会と筆者は調査連携・協力者 ( 組織 ) として参加し,筆者は調査の基本設計,調査票の作成,コ ーディング,データ・クリーニング,データ集計・分析,地域福祉計画策定委員会向けの報告資 料の作成を担当した。なお, 2013 年調査は,2008 年調査との比較分析が可能なように設計され ている。両調査の対象者は,大分市に居住する 20 歳以上の男女 3,600 人であり,住民基本台帳 および外国人登録簿から市内 9 地区(全管区)別に無作為抽出法によって選出した。両調査とも 郵送調査法を採用しており,2008 年調査は 2008 年 2~4 月に実施され,有効回収者数は 1,587 人(有効回収率 44.1%),2013 年調査は 2013 年 1~2 月に実施され,有効回収者数は 1,914 人(有 効回収率 53.1%)であった。

3.2 3.2 3.2

3.2 分析に用いる変数 分析に用いる変数 分析に用いる変数 分析に用いる変数

本稿では,三谷(2014)の知見と照らし合わせることができるように,分析に用いる変数を設定

した(表 1)。なお,先行研究において「最も一貫した規定要因」 (Wilson 2000: 219; 三谷 2014: 41)

とされている教育達成については,行政調査の性格上,調査対象者への配慮から質問項目に採り

入れることができなかった。このことにより,教育的階層における「階層化」が確認できないと

いうデータの制約や限界に十分留意して,経済的・職業的階層における「脱階層化」に関する分

(5)

析を行うことにする。以下,3 点に分けて,分析に用いる変数を説明しよう。

表 1 分析に用いる変数

変数 内容

地域活動参加経験

「最近

1, 2

年の地域の活動(ボランティア・NPO活動を含む)」への参加頻度。

0:

活動参加経験なし,1: 年

1

回以下参加,2: 年数回参加,3: 月

1

回以上参加

2

値変数→0: 不参加層(活動参加経験なし+年

1

回以下参加),1: 参加層(年数回 参加

+

1

回以上参加

)

性別

0:

男性,

1:

女性

年齢 調査年における満年齢

(20

70

歳以上)。年齢層

(10

歳刻み

)

を連続変数化。

世帯年収

過去

1

年間の世帯年収(100~2000万円以上)。年収層を連続変数化して対数 変換。

カテゴリー変数→1: 収入低位層(400万円未満),

2:

収入中位層(400万円以上

700

万円未満),3: 収入高位層(700万円以上)

職業

1:

経営者・役員,2: 常時雇用(会社員など),3: 非正規雇用(パート・アルバイト など),4: 自営業,5: 無職(学生・家事専業を含む)

持ち家の有無

0:

持ち家あり(一戸建て住宅・分譲マンション),1: 持ち家なし(借家,賃貸マン ション・アパート

(

公営・民間

)

,社宅・寮など

)

第 1 に,地域住民の社会参加を示す地域活動参加経験には, 「最近 1, 2 年間の地域の活動(ボ ランティアや NPO 活動を含む)」についての参加頻度を使用する。三谷(2014)では,「社会的活 動(ボランティア活動,消費者運動など)」(1995 年 SSM 調査)と「ボランティア・NPO・NGO

活動」 (2010 年 SSP- Ⅰ調査 ) が市民活動参加の指標として用いられている。これらの調査項目の

ワーディングはそれぞれ異なっているが,先行研究 ( 仁平 2008, 2011; 豊島 2012; 三谷 2012, 2014)により社会参加の指標としてある程度比較対照が可能であると考えられる。地域活動への 参加の規定要因を検討する際には,先行研究(仁平 2011; 三谷 2012, 2014)を踏襲し,地域活動 参加経験者を「不参加層」(「活動参加経験なし」の回答者と「年 1 回以下参加」の回答者を合 計した層)と「参加層」 ( 「年数回参加」の回答者と「月 1 回以上参加」の回答者を合計した層) と いう形で 2 値変数にする。その理由として,2008 年, 2013 年ともに地域活動に参加したことが ない人がほぼ半数を占めており,分布が偏っていることが挙げられる(図 1) 4)

ここで,両調査の「参加層」の割合(以下,活動参加率)を確認しておくと,2008 年は 35%,

2013 年は 36.4% とほとんど変化がみられず,停滞状態と受け止められる結果となっている。参

考までに,近年の社会参加に関する官公庁統計データをみてみると,総務省「社会生活基本調査」

(2011 年実施)におけるボランティア活動の行動者率は 26.3%,内閣府「国民生活選好度調査」

(2012 年実施)におけるボランティアや NPO 活動などの参加経験者率は 24.6%,内閣府「市民の

社会貢献に関する実態調査」(2013 年実施)におけるボランティア活動の参加経験者率は 35%で

あった 5) 。これらの調査は,ワーディングや算出方法などの違いはあるが,結果として 2 割強か

ら 3 割強の水準を示しており,本稿で使用するデータが地方圏の中核市のデータであることに鑑

みると顕著な差がないと考えられる。

(6)

第 2 に,経済的・職業的階層における「脱階層化」を検討するため,社会階層的変数として世 帯収入と従業上の地位を使用する。従業上の地位については,調査設計上,三谷 (2014) とは多少 異なるが,管理職層(経営者・役員)と無職層の参加傾向を検討できるように設定した。統制変数 としては,性別と年齢を使用する。性別と年齢については,前節で示したように,人口学的要因 として多くの先行研究に用いられている。

第 3 に,三谷(2014)では,先行研究を踏まえ,地域変数である「居住する市郡規模と都道府県」

を統制変数として投入しているが,本稿では地方都市調査データを使用するため,先行研究(稲 月 1994; 豊島 2008a , 2010 , 2011; Rotolo, Wilson and Hughes 2010) に基づいて地域変数と社 会階層的変数 ( 財産保有 ) の両方の要素を有する「持ち家の有無」を使用する 6) 。なお,持ち家の 有無を地域変数とした場合,分析上,三谷(2014)との比較ができないため,本稿では社会階層的 変数として補完的に用いる。

3.3 3.3

3.3 3.3 地域活動参加 地域活動参加 地域活動参加 地域活動参加と と と と地域関係に関する記述的分析 地域関係に関する記述的分析 地域関係に関する記述的分析 地域関係に関する記述的分析

はじめに, 1, 2 年の間に少なくとも一度は地域活動に参加したことがある人びと(参加経験者) がどのような活動に参加しているのかをみてみよう。図 2 によると,2 時点間において, 「(地域 の)環境・美化(ごみ拾いなど)」と「(高齢者や障がいのある人に対する)福祉(見守り,交流 支援など)」がやや減少傾向にある点以外には全体的に大きな変化がなかった。また,この図か ら, 「環境・美化」と「まちづくり(祭りなどの地域の行事) 」が相対的に大きな割合を占めてお り,参加経験者の多数がこれらの活動にかかわっていたことがうかがえる。「まちづくり」が上 位にある点は,先述の官公庁統計データの結果と一致するが,一過的なイベント性の高い取組み である可能性について留意すべきだろう。一方,「子育て支援」と「福祉」といった重要な政策 課題の対象になっている活動に参加したことがある人は 2 割にも達しておらず, 「福祉」に関し ては微減傾向にある。この点については,将来的に,子育て支援や高齢者・障がい者福祉を支え

0 10 20 30 40 50 60

毎日-月1回 年数回 年1回以下 参加経験なし

(%)

図1 地域活動への参加経験

2008年調査

2013年調査

(7)

る地域活動の担い手のさらなる不足が懸念される結果であると考えられる。

次に,近隣関係と地域活動参加の関連について確認する。図 3 は,2 時点間の近隣関係(近所 付き合いの程度)の推移を示したものであり,特に大きな変化はみられない。図内の「助け合う 人あり」の回答割合が 2008 年, 2013 年とも約 3 割である点に着目すると,東日本大震災を契 機に相互扶助的な関係が地域内で強まっていないことが見て取れる。また,ごくわずかな水準と はいえ, 「助け合う人あり」と「訪問し合う人あり」の回答割合が減少している一方で, 「あいさ つする人あり」と「付き合いなし」の回答割合が増加している傾向にある。内閣府「社会意識に 関する世論調査」における「現在の地域での付き合いの程度」について,2004 年から 2014 年 までの 10 年間で「よく付き合っている」の回答割合が年々微減傾向(22.3%→17.6%)にあること を踏まえると,今後,地方都市において地域関係の希薄化が緩やかに進行すると推察される 7)

図 4 をみてみると,2 時点とも関連の程度がほぼ同水準であり,地域住民どうしの関係が親密 である層ほど地域活動への参加割合が大きくなるという関係が確認できる。この結果については,

記述レベルではあるが,コミュニティや社会的ネットワークへの積極的な関与がボランティア活 動への参加を促進するというソーシャル・キャピタル論の知見(Putnam 2000=2006)との整合 性が見出せる。

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

2008

年調査

2013

年調査

(%)

図2 参加経験のある地域活動 (多重回答)

まちづくり 環境・美化 防犯・防災

PTA

スポーツ・趣味 子育て支援 福祉

(8)

0 5 10 15 20 25 30 35

2008年調査 2013年調査

(%)

図3 近隣関係の推移

助け合う人あり

訪問し合う人あり

立ち話する人あり

あいさつする人あり

付き合いなし

10.2 7.0

17.7 20.8

33.2

37.8

48.7 51.6 51.1 54.3

0 10 20 30 40 50 60

2008

年調査

2013

年調査

付き合いなし あいさつする人あり 立ち話する人あり 訪問し合う人あり 助け合う人あり

(%)

図4 近隣関係別にみた地域活動への参加割合

(注) **: p<0.01 *: p<0.05

χ2

=196.33**

Cramer'sV=0.34**

γ=0.50**

χ2

=142.30**

Cramer'sV=0.31**

γ=0.46**

(9)

3.4 3.4

3.4 3.4 社会階層と地域活動参加の関連に関する記述的分析 社会階層と地域活動参加の関連に関する記述的分析 社会階層と地域活動参加の関連に関する記述的分析 社会階層と地域活動参加の関連に関する記述的分析

続いて,三谷(2014)に基づき,経済的・職業的階層と地域活動参加の関連をクロス集計により 明らかにする。図 5 は世帯年収層別,図 6 は職業的階層別にみた地域活動の参加割合を図示した ものである。図 5 では,2 時点とも共通して,収入が高い層ほど活動に参加するという関係が確 認できる。図 6 をみると,2008 年の参加割合について経営者・役員が最も大きく,自営業,無 職,非正規雇用,常時雇用の順に小さくなっていることが見て取れる。この傾向は, 2010 年 SSP-

Ⅰ調査データの結果 ( 三谷 2014) と合致する。他方, 2013 年は,経営者・役員に関して最上位の 参加割合を維持しつつも約 10%減少していることと,常時雇用と非正規雇用の参加割合がわず かに逆転しているが,双方ともに活動参加率(36.4%)を下回っており,相対的に低水準であるこ とがわかる。また,2010 年 SSP-Ⅰ調査データでは無職の参加割合が最も小さかった点(三谷

2014)に対し, 2008 年と 2013 年の大分市データでは約 4 割と相対的に高かった点が異なってい

る。Cramer の V 係数によって,職業的階層と活動参加の関連の程度を確かめると,2008 年は

0.13(1%水準で有意),2013 年は 0.08(5%水準で有意)であり,関連の程度が弱まっている傾向が

示された。

これらの結果により, 2008 年と 2013 年の 2 時点間において,高収入の人ほど活動に参加す る傾向(高階層性)と職業的階層および地域活動参加間の関連の弱まりが確認された。

31.8 32.5

38.8 37.6

41.1 42.8

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45

2008年調査 2013年調査

収入低位層 収入中位層 収入高位層

(%)

図5 世帯年収層別にみた地域活動への参加割合

(注) **: p<0.01 *: p<0.05

χ2

=11.41**

Cramer'sV=0.08**

γ=0.14 **

χ2

=10.65**

Cramer'sV=0.09**

γ=0.16**

(10)

3.5 3.5

3.5 3.5 地域活動参加 地域活動参加 地域活動参加 地域活動参加経験 経験 経験 経験の の の社会 の 社会 社会階層的 社会 階層的 階層的 階層的要因 要因 要因の検討 要因 の検討 の検討 の検討

最後に,経済的・職業的階層について,他の要因の影響を統制して,地域活動参加経験の規定 要因を検討する。表 2 は,地域活動参加経験を目的変数とした 2 項ロジスティック回帰分析の結 果を示したものである。

2008 年では世帯年収,経営者・役員,非正規雇用,無職,持ち家の有無に有意な正の効果が 認められることから,高収入,経営者・役員,非正規雇用,無職,持ち家の人が活動に参加する 傾向にあることが見て取れる。この点において,「市民活動参加における高階層性や無職の参加 傾向」(三谷 2014: 40)と概ね整合的であるといえる。一方,2013 年では,世帯年収と持ち家の 有無に有意な正の効果が認められたが,職業については全体的に有意な結果が示されず,2008 年には確認できた経営者・役員,非正規雇用,無職の効果が見出せなかった。この結果は, 1995 年と 2010 年の 2 時点間で無職の効果が正から負へと逆転し,世帯収入の効果が有意でなくなっ たという三谷(2014)の結果とは異なるが,経営者・役員の効果の低下傾向に関しては一致してい る。なお,統制変数の年齢については 2 時点とも有意な正の効果,性別については 2008 年では 負の効果が示されたが, 2013 年では有意な結果が出なかった。

61.1

50.0

26.1 36.0 33.4

29.7

44.1 37.9 40.5 38.9

0 10 20 30 40 50 60 70

2008年調査 2013年調査

経営者・役員 常時雇用 非正規雇用 自営業 無職

(%)

図6 職業的階層別にみた地域活動への参加割合

(注) **: p<0.01 *: p<0.05

χ2

=11.62*

Cramer'sV=0.08*

χ2

=24.91**

Cramer'sV=0.13**

(11)

表 2 地域活動参加経験の規定要因

2008

年調査

2013

年調査

B Exp(B) B Exp(B)

性別(基準: 男性)

-0.25

0.78 -0.07 0.94

年齢

0.02 ** 1.02 0.02 ** 1.02

世帯年収(対数)

0.77 ** 2.18 0.67 ** 1.94

経営者・役員

1.27 * 3.57 0.19 1.21

非正規雇用

0.57 ** 1.76 -0.06 0.94

自営業

0.39 1.48 -0.01 0.99

無職

0.31

1.36 0.06 1.06

常時雇用(基準)

持ち家の有無

0.91 ** 2.48 1.07 ** 2.91

χ2

116.35 ** 138.78 **

-2Loglikelihood 1695.03 2012.50

Nagelkerke R

2

0.11 0.11

N 1,390 1,637

(注) **: p<0.01 *: p<0.05 †: p<0.10

4. 4.

4. 4. 考察 考察 考察 考察

本節では,データの制約や限界を考慮しつつ,三谷(2014)の知見と照らし合わせながら,本稿 の知見を整理し,「脱階層化」の観点から地方都市における社会参加の日常化・普遍化について 考察する。その前に注意すべき点は,前節で言及したように教育達成が社会参加に与える安定し た影響力であり 8) ,近年の先行研究(仁平 2008, 2011; Taniguchi 2010; 三谷 2014)の分析結果に 鑑みて,本稿の分析モデルにこの変数を投入したと仮定した場合に収入の効果が示されないこと が推測される。したがって,本稿では,世帯年収と地域活動参加の関連について高階層性が確認 されたという記述レベルの知見 ( 図 5) に留めておくことにして,持ち家の有無を経済的階層とし て補完的に用いることで議論を進めることにする。

本稿の知見は,次の 2 点に要約できる。一つは 2008 年と 2013 年の間に財産保有による経済 的階層における社会参加の高階層性が示された点,もう一つは管理職層と非正規雇用者の参加低 下による職業的階層における社会参加の「脱階層化」が示された点である。1 点目については,

先行研究(仁平 2011; 豊島 2012)を踏まえると,阪神・淡路大震災が発生した 1995 年から現在 に至るまで,経済的な豊かさや生活の安定性を示す財産は社会参加の発現回路として作用してお り,社会参加が階層社会によって規定されていることを示唆している。但し,本稿の結果は,社 会参加の高階層(性)仮説を支持する傍証の一つにすぎず,さらなる精査を今後の課題としたい。

2 点目については,本稿の分析では,三谷(2014)で示された無職の活動不参加傾向が確認でき なかったが,管理職と同様,無職の活動参加への影響が弱まっている傾向が明らかになった。ま た,三谷(2014)では示されなかった非正規雇用の影響の弱まりも見出された。これらの結果は,

2008 年と 2013 年の間に,常時雇用者と比べて,管理職層,無職層,非正規雇用者が地域活動

に参加しやすいとは必ずしもいえない状況になったことを示唆している。ここで,2008 年と

(12)

2013 年における無職層と非正規雇用者の内訳をみてみよう。無職層の平均年齢は 2 時点とも約 65 歳で,既婚女性の割合は 2008 年では 39.5%,2013 年では 45.6%,男性の割合は 2008 年で

は 38.1%,2013 年では 31.7%であった。非正規雇用者の平均年齢は 2 時点とも約 50 歳で,既

婚女性の割合は 7 割弱(2008 年 68.0%,2013 年 67.3%)であった。以上の特徴により,無職層と 非正規雇用者の傾向については,中高年・高齢層の主婦の参加傾向が弱まっている可能性が考え られる。この点については,三谷 (2014) が無職層に関して同様の解釈を既に提示しており, 「「高 齢者と主婦が中心で生活にゆとりのある人の活動」という, 1970 年代後半以降に形成された「社 会参加」のイメージ」(仁平 2011: 315)に陰りが見え始めたといえるかもしれない。厚生労働省

「国民生活基礎調査」 (2013 年実施)によると,生活意識について「大変苦しい」から「大変ゆと りがある」までの 5 段階で尋ねたところ,「大変ゆとりがある」と「ややゆとりがある」を合わ せた回答割合は全体の 5%弱である一方, 「大変苦しい」と「やや苦しい」を合わせた回答割合は

約 60%を占めており,近年増加傾向にあるとのことである 9) 。これらの知見から,日本社会の長

期的な不況に伴う地域経済の衰退により,地域住民の「生活のゆとり」が失われていくという地 方の実情が,これまで地域活動の担い手であった人びとの参加を難しくしている状況,三谷の言 葉を借りれば, 「消極的な意味での「脱階層化」」 ( 三谷 2014: 42) を招いている,と推察される。

本稿では,東日本大震災以前の全国調査データ(三谷 2014)と同様に,地方都市データにおい ても社会参加の「脱階層化」が確認できるのかを,2008 年と 2013 年の大分市データの時点間 比較分析によって検討を試みた。その結果,東日本大震災以降の地方都市においても社会的活動 への参加について量的拡大傾向がみられなかった一方で,社会参加の「消極的な意味での「脱階 層化」 」(三谷 2014: 42)を示す知見が導出され,社会参加の日常化・普遍化が一向に進展してい ない現状が浮き彫りになった。このことは,本稿の分析結果や官公庁統計データの結果から明ら かなように,地域関係の希薄化傾向,地域福祉活動の担い手不足,そして地域活動参加の停滞な どに直面している「ゆとりのない」地方の様相を如実に表している。同時に,「階層社会の政治 や経済の論理に束縛されない社会参加」という「脱階層化」の積極的な意味への転換,ひいては 市民的公共性と地域的共同性が両立した新しい市民社会の実現には程遠い日本社会の現実を直 視させる。「地方創生」や「地域再生」が声高に叫ばれている現在,地方圏の地域社会が直面す る諸問題の解決に向けて,生活者として誰もが等しく社会的活動に日常的に参加できるために,

地域保健・医療・福祉分野の制度整備・重点化という,市民の生活の質(生命・生活・生き方)を 保障するための土台固めこそが国や自治体の最重要課題であると,筆者は考える。

【謝辞】

本稿は,大分大学『経済論集』(第

66

巻第

6

号)(2015年)に掲載された論文を査読により修正し,本論集に 採択されたものである。その際,査読者から有益なコメントを頂いた。データの使用については,大分市役所福 祉保健部福祉保健課および大分市社会福祉協議会の協力を得た。記して,厚くお礼申し上げます。

(13)

【注】

1)

以下の

Web

サイトを参照。首相官邸, 2015, 「まち・ひと・しごと創生本部」, まち・ひと・しごと創生本 部ホームページ, (2015年

2

8

日取得, http://www.kantei.go.jp/jp/headline/chihou_sousei/).

2)

吉川(2014)は,2010年

SSP-Ⅰ調査データの分析により,市民活動への参加経験について年齢および教育達

成の正の効果と職業的地位の影響力が微弱であることを確認している。この結果から,「積極的に活動する 壮年大卒層と,活動性の低い若年非大卒層の対比構造」は「1980 年代にはみられなかった新たな構図であ る」(吉川 2014: 186)と,三谷(2014)とは別の観点から社会階層と社会参加の関連の変容について指摘して いる。

3) 2008

年調査データについては豊島(2008b, 2010)を,

2013

年調査の結果報告については大分市役所福祉保健 部福祉保健課(2013)と大分市・大分市社会福祉協議会(2014)を参照。なお,豊島(2008a)では,2002年の大 分市データを用いているが,調査設計の関係上,本稿の分析では取り上げなかった。

4)

社会的参加への活動経験(頻度)は分布の偏りがよくみられるため,2 値変数に加工し,ロジスティック回帰 分析などを行う(仁平 2008, 2011; 岩間 2011; 三谷 2012, 2014)。これに対し,吉川は,社会的態度や社会 意識には「絶対的な基準や客観的に妥当な意味の境界,定まった尺度がないこと」を根拠に,OLS 重回帰 分析のような「シンプルな重回帰分析」の有用性を指摘している(吉川 2014: 61-9)。本稿では,三谷(2014) との比較対照を優先し,

OLS

重回帰分析を用いた分析結果(省略)を検討した上で

2

項ロジスティック回帰分 析を採用した。

5)

以下の

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サイトを参照。

総務省, 2015,「平成

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NPO

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2

8

日取得, https://www.npo-homepage.go.jp/data/report36.html).

6)

先行研究では,持ち家であることは,持ち家でないこと(ないしは借家であること)よりも社会参加を促す傾 向にあることが確認されている (稲月 1994; 豊島 2008a, 2010, 2011; Rotolo Wilson and Hughes 2010)。

また,先行研究で多用される地域変数である居住年数について,持ち家の有無との関連を確かめたところ,

2008

年では

0.48(1%水準で有意),2013

年では

0.49(1%水準で有意)と相関係数の値が高かったことから,

本稿では先行研究を踏まえて持ち家の有無を変数として選択した。

7)

以下の

Web

サイトを参照。内閣府, 2015,「社会意識に関する世論調査」, 世論調査ホームページ, (2015年

2

8

日取得, http://survey.gov-online.go.jp/h25/h25-shakai/index.html).

8)

吉川(2014)は,「社会的オリエンテーションに対して安定した影響力を確認できるのは,まず学歴であり,

続いて年齢と経済力」であり,「見通しの悪くなった現代日本社会において,ある人の考え方や行動につい て知るために,あえて何か一つ尋ねるとすれば,最も有効なのはその人の学歴(教育達成)について聞くこと だ」と指摘している(吉川 2014: 193)。

9)

以下の

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サイトを参照。厚生労働省, 2015,「平成

25

年 国民生活基礎調査の概況」, 厚生労働省ホーム ページ, (2015年

2

8

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表 2  地域活動参加経験の規定要因      2008 年調査  2013 年調査      B  Exp(B)  B  Exp(B)  性別(基準: 男性)  -0.25  †  0.78  -0.07  0.94  年齢  0.02  **  1.02  0.02  **  1.02  世帯年収(対数)  0.77  **  2.18  0.67  **  1.94  経営者・役員  1.27  *  3.57  0.19  1.21  非正規雇用  0.57  **  1.76  -0.06  0.

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