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まちづくり条例と住民参加

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(1)

まちづくり条例と住民参加

その他のタイトル The Ordinances concerning City Planning and Citzen Participation in Local Government

著者 池田 敏雄

雑誌名 關西大學法學論集

巻 44

号 4‑5

ページ 557‑597

発行年 1995‑01‑20

URL http://hdl.handle.net/10112/00024627

(2)

まちづくり条例と住民参加

(3)

ま ち

づ く

り 条

例 と

住 民

参 加

住民の意見を政策決定に直接反映させるために︑地方自治体の行政過程に住民が何らかの関与をすることを意味す

る﹁住民参加﹂の重要性が︑ひとつのうねりとしてわが国で最初にクローズアップされたのは︑

のことである︒当時︑住民参加の要求が高まった背景としては︑公害の激化による生活環境の悪化や都市化の急進展

(l ) 

に伴う基盤整備の遅滞等に対する住民の抵抗型の運動があったといわれる︒

その後の住民参加の今日までの推移としては︑時代区分され︑第一期として︑六

0

年代の公害問題︑都市問題等を

契機として多発した抵抗運動型の台頭期︑第二期として︑七

0

年代の地方自治体のコミニュティ施策の推進を通して

連動から参加への制度化が図られた高揚期︑第三期として︑八

0

年代の制度化された参加がマンネリ化を招来し︑そ

のダイナミズムの喪失が指摘され︑他方︑国際交流や環境問題にグローバルな視点から多様な価値観をもって取り組

む様様な地域グループの活動が目立った︑制度化が形骸化する反面で新しいタイプの運動が参加に息吹を吹き込んだ

転換期︑第四期として︑九

0

年代の公的領域と私的領域とにまたがる領域のテーマたる地域づくり︑まちづくり等に

( 2)  

ついて行政と住民が対等のパートナーとして取り組むことが求められる協働期︑等に分けて説明される︒

このような住民参加の説明から︑ここでは︑住民参加が有効な機能を果たすためには参加の制度化が必要であるが︑

住民運動とは︑本来︑参加の形式化に対する反発から生み出されるものであり︑参加の空洞化︑形骸化に対する挑戦

を意味する性格をもつものであるから︑運動により参加の制度化が始まり︑制度化ののちに再び運動化の過程が起こ

( 3)  

るという︑運動の制度化と制度化に対する運動という循環を繰り返すことにより進展することが理解できると同時に︑

は じ め に

︵ 五

五 九

︶ 一

九 六

0

年代の後半

(4)

民参加手法が要求されたといえる︒ 第四四巻第四・五合併号

運動←交渉←参画←自治という住民参加の変容・深化を推論することができよう︒

(4 ) 

このような住民参加の手法は︑今日︑公害︑環境︑まちづくり︑消費者保護︑社会福祉等の個個の行政の意思形成

や政策決定の過程およびその執行の段階で活用されており︑その参加の形態は︑多様かつ複雑である︒概して言える

ことは︑計画行政が用いられる行政領域では︑住民参加手続きは︑いわば必須の要件とされていることである︒

現代社会においては︑価値の多元・多様化がみられ︑行政が追求すべき公益・公共性を単純に絞り込むことは難し

く︑むしろ公益・公共性とは︑各種利益を合理的に調整した結果としての個別具体的な計画の合理性そのものである

といえる︒したがって︑具体的な行政計画の合理性を担保するためには住民参加の手続きが不可避なものとなってい

( 5)  

る と

い え

る ︒

本稿では︑この住民参加の手法が早い時期から用いられ︑進展の著しいといわれる﹁まちづくり﹂の行政領域につ

いて︑その住民参加の手続きを取り上げることとした︒﹁まちづくり﹂という言葉は︑きわめて多義的に用いられて

いるが︑究極的には︑地域のより快適な居住生活環境を創出し︑保全することを目指すものであり︑まちづくり行政

が地域的個性を生かした目標設定による計画に基づいて行われる必要があり︑その計画の合理性を追求するために住

ところが︑従来︑わが国では︑後にみるように︑まちづくり行政の中核をなす都市計画法制が︑都市計画に関する

権限の多くを国の手に留保しており︑基礎的地方自治体である市町村が住民本位のまちづくりを十分に実施し得ない

壁があり︑そこに住民参加が叫ばれる要素があったといえよう︒しかしながら︑近時では︑地方分権化の方向とも

マッチして︑市町村を主体としたまちづくり推進の理念が都市計画法制にも取り入れられ︑各地において地域地域の

関 法

四︵五六

0)

(5)

ま ち

づ く

り 条

例 と

住 民

参 加

︵ 五

実状を盛り込んだまちづくり条例が制定され︑新しい形のまちづくりが進展していることを指摘できる︒

そこで︑﹁住民参加﹂および﹁まちづくり﹂について現状認識のうえ︑まちづくり条例を素材として住民参加とま

ちづくりの接点を取り出し︑そこにみられる住民参加の手法について若干の分析を試み︑住民参加の今後の方向につ

住民参加の概念は︑今日︑ いろいろな立場からきわめて多義的に定義されている︒

行政学的アプローチにおいては︑広義には︑行政の施策や事業への協力︑参加も含める場合があるが︑

( 6)  

﹁自治体の政策形成過程において︑市民の意見が直接反映されるプロセス﹂を意味するものとされ︑きわめて限定的

(7 ) 

には﹁決定過程への参加とそれにともなう住民責任の発生との対応﹂としてとらえられる︒特徴的なこととしては︑

﹁住民参加﹂と﹁市民参加﹂を区別する立場があることで︑とくに七

0

年代の市民参加論の台頭期には︑自律的︑能

動的︑普遍的存在としての﹁市民﹂と︑利己的で受け身の統治される存在としての﹁住民﹂を意識的に使い分けるこ

とが主張され︑したがって︑市民参加が地方自治を真の市民自治に高めることを目指すもので︑住民参加は他への配

(8 ) 

慮を持たない地域エゴを意味するような︑利害関係が動機となって行われる参加を指すものとされた︒しかし︑現在

では︑このような住民の語をマイナスのイメージで区別する立場は少なく︑それぞれに積極的な意味を持たせ︑﹁住

民参加﹂と﹁市民参加﹂と﹁コミュニティ参加﹂に区別して︑住民参加とは︑特定事業に関して直接的な利害関係を 1 住民参加の意義

住 民 参 加 の 今 日 的 意 義

いて検討を加えることとした︒

J

一 舟

H i

(6)

第四四巻第四・五合併号

もつ特定地域の住民がその事業の計画実施過程に参加することであり︑市民参加とは︑自治の主権者である市民一般

が市町村の政治行政そのものに能動的に参加することを意味し︑ コミュニティ参加とは︑基礎自治体である市町村の

もとで︑狭域コミュニティが一種の下層自治単位として認められ︑ コミュニティの住民がコミュニティ施設の建設管

( 9)  

理とかコミュニティ整備計画の策定といった地域的自治に参加することをいうとする定義が示唆に富むものとされる︒

他方︑行政法学的アプローチでは︑住民参加を﹁地方公共団体の行政運営の諸過程において︑住民の発言権が確保

される組織と構造﹂と比較的広く定義する説や﹁行政過程を公開して住民などの参加を求める事前行政手続をいう﹂

として行政手続きの法理の延長線上にある問題として位置づける説が主流といえる︒

前者は︑住民意思が今日の地方行政に対していかなる影響力を持っているかを︑できるだけ多方面からとりあげ︑

その問題点を明らかにして︑法的な課題を広く設定するために広く定義するもので︑したがって住民参加概念は︑い

わゆる﹁当事者参加﹂よりも広くなるが︑これは︑住民参加のなかにいわゆる直接請求制度や住民監査請求制度など

をも含める場合には︑参加適格者は伝統的な﹁当事者﹂概念では説明しきれないであろうと考えたからであるとされ

る︒また︑﹁市民参加﹂もしばしば用いられる用語であるが︑﹁住民﹂の概念は︑地方自治法上の概念として﹁市民﹂

( 1 0 )  

よりも広くとらえられているとする︒

後者は︑従来︑不利益処分に前置される聴聞手続きを中心として形成されてきた公正な事前行政手続きは︑処分の

相手方たる特定私人の主観的な権利利益の防禦を目的とする個人主義的自由主義的権利保護制度の色彩をもっており︑

したがって︑処分の相手方の主観的な権利利益の手続法上の防禦権行使の問題を中心課題として展開されてきた︒こ

れに対して︑行政過程への住民参加を問題にするのは︑現代行政が住民の生活分野に広範かつ多様なかかわりをもつ

関法六五六

(7)

ま ち

づ く

り 条

例 と

住 民

参 加

して論じられることになるといえよう︒

︵ 五

一定の行政決定︑とりわけ諸利害の対立︑抗争の合理的合目的的調整機

能をもつ行政計画による影響が特定の範囲をもった地域に生じ︑その地域に居住する多数の者が影響を受け︑あるい

は特別なかかわりをもつという現実が存在するからであるとして︑このような計画決定過程などにおける利害調整︑

計画内容の適正化と民主化を図るための一般法理の一っが︑参加手続きであり︑この意味において︑参加手続きは︑

( 1 1 )  

行政の現代化の要請に対応する事前行政手続きの法理であるということができると説明される︒

行政学的アプローチと行政法学的アプローチの違いは︑多分︑学問的な関心視点の違いに依るところが大きいと思

われるが︑前者では権力との対置において参加がとらえられ︑行政の近代化民主化の視点から︑利害関係を超えた普

遍的な行政政策領域に自律的︑能動的に関与する住民参加が論じられているといえる︒これに対して︑後者では︑な

によりも権利義務にかかわる関心視点から参加適格者が問題となり︑住民参加は個別的権利保護機能の側面から出発

しかしながら︑行政学的アプローチにおいても︑先にみたように︑行政の政策決定によって直接なんらかの影響を

受ける個人や組織の意見を政策決定過程に反映させるために行われる参加を積極的に位置づける考え方が取られるよ

うになってきている︒そこでは︑少数者にも権利主張の機会を保障し︑公共の利益と特殊利益︑多数の利益と少数の

利益との妥当な調整を図らなければならず︑それが

( 1 2 )  

れる︒また︑行政法学的アプローチにおいても︑参加手続きには権利保護のモメントと民主制のモメントが認められ ばかりではなく︑都市問題︑環境問題など︑

︵三区分した場合の︶﹁住民参加﹂の意義であり課題であるとさ

るので︑両者の調和のとれた手続き法理が構成されなければならないと主張されている︒すなわち︑住民参加におい

て︑住民の個別的権利利益の主張が基礎にあることは否定できないとしても住民参加に民主的機能のみを期待するこ

(8)

(M an ip ul at io

n)

﹁ 治

療 ﹂

(I nf or ma ti on )

﹁ 協

議 ﹂

(C on su lt at io n)

︑ ﹁

宥 和

(P la ca ti on

)

︑ ある︒著名な類型化としてよく引用されるのが︑ 第四四巻第四・五合併号

アーンスタイン とが批判されるのと同様に︑権利保護機能のみをいうことも︑また︑妥当性を欠くこととなり︑参加手続きの意義は︑

( 1 3 )  

公正︑妥当な行政決定の保障という行政権行使の客観的側面に向けられることが基本的に重要ではないかとされる︒

本稿では︑住民参加の意義を法学的観点からとらえたいと思うが︑まちづくりとの関連では︑やはり行政手続きの

法理の一環として位置づけるべきものと考える︒ただ︑この場合も︑行政手続きの法理を︑主として行政権によって

規制を受ける者の既得の権利利益の保護を目的とした制度としてのみ理解するのではなく︑住民参加を内容とする行

政手続きには︑住民が行政の政策策定・決定過程に参加し︑住民としての意見を主張し︑資料・情報を提供して︑合

理的で妥当な行政決定を導くための参加手続的権利を保障している旨に理解することも必要だとおもう︒

行政学の分野では︑住民の行政政策決定に対する影響力の強さにより︑住民参加を類型化するパターンが一般的で

of   Ci ti ze n Participation) 

である︒そこでは︑住民が政策決定に参画する程度にしたがって︑住民参加が﹁操作﹂

(T he ra py

)

︑ ﹁ 情 報 提 供 ﹂

﹁ パ

ー ト

ナ ー

シ ッ

プ ﹂

(P ar tn er sh ip )

﹁ 権

限 委

譲 ﹂

(D el eg at ed po we r)

﹁ 市

民 管

理 ﹂

(C it iz en co nt ro l)  

分類され︑まず︑第一階梯の﹁操作﹂と第二階梯の﹁治療﹂とは︑たとえ形式的には審議会等における市民の参加が

認められている場合でもしばしばありうることで︑そこでは市民に政策決定に参画する力が全く与えられていないの

で︑大別すれば︑﹁非参加﹂

(N on pa rt ic ip at io n)

2 住民参加の類型化

関法

(S . 

R .  

Ar ns te in ) 

の﹁市民参加の階梯﹂

(A La dd er  

の八つの段階に

の段階に属し︑第三階梯の﹁情報提供﹂︑第四階梯の﹁相談﹂︑第五

︵ 五

六 四

(9)

ま ち

づ く

り 条

例 と

住 民

参 加

九︵五六五︶ 階梯の﹁宥和﹂においては︑市民は情報を与えられ︑相談を受け︑また委員会に出席して計画し︑勧告することも認 められるが︑市民の影響力はあくまでも形式的なものにすぎず︑大別すれば︑﹁形式参加﹂

(D eg re es of   tokeni

sm ) 

り︑市民に権力が委譲されているという意味で﹁市民権力﹂

(D eg re es of   ci t i ze n   po we r)  

が︑現実の行政過程において法的側面から考察する場合には抽象的でかつモデル的過ぎるといえよう︒

段階にとどまる︒第六階梯の﹁パートナーシップ﹂︑第七階梯の﹁権限委譲﹂︑第八階梯の﹁自主管理﹂の三階梯に至

( 1 4 )  

の段階に達するという︒ま

た︑市民参加の制度的側面を市民の権力に対する踏み込みの度合いにより︑﹁参画﹂と﹁自治﹂に分類し︑さらに前

( 1 5 )  

者を﹁名目参画﹂と﹁実質参画﹂︑後者を﹁部分自治﹂と﹁完全自治﹂に区別して説明する考え方や﹁運動﹂←﹁交

( 1 6 )  

渉﹂←﹁参画﹂←﹁自治﹂の表現で説明する考え方などがある︒これらは︑いずれも住民が行政に対してどの程度の

影響力を持つかによって住民参加の形態を類型化したもので︑参加の制度化をはかる指標としては有意義と思われる

行政法学の立場からは︑住民参加を全体としての利害調整過程の一環として位置づけ︑行政過程に住民の意見を直

接反映させる行政手法とするとき︑やはり︑行政決定に関連する各種意見を主張しうる参加適格者の範囲により分類

することが適切といえる︒しかし︑住民参加の形態が多岐にわたり︑そこには法制度化された方式のみならず事実上

( 17 )  

の方式としての一般公聴︑世論調査︑対話集会︑住民集会︑住民発案等等が含まれることから︑参加適格者による分

一般的な大別としては︑①意見情報提供参加︑②判断形成の合理性担保参加︑③市民︵納税者︶参加︑④権利︑利

( 1 8 )  

益防衛参加︑の分類がみられる︒これは︑住民参加の影響力を意識した分類であるが︑同時に参加適格者の範囲にも

関連した類型化といえよう︒このうち︑①は︑住民の主体性が一番弱く︑行政が主導的な役割を演ずるタイプで︑制 類はいまだ十分に試みられていない︒

(10)

とが確認できる︒

3

住民参加の目標と機能 ︱つの方向として検討に値しよう︒ 第四四巻第四・五合併号

度化されているものとしては意見書の提出︵都市計画法一七条二項︶等が該当する︒②は︑合理的な判断形成を担保

するための住民参加とされ︑公聴会︵都市計画法一六条︶や説明会への参加が該当する︒③は︑広く市民あるいは納

税者として︑特定の事業等に直接的な利害関係を有することなく参加するタイプで︑地方自治法が定める条例制定改

廃請求︵同法︱二条︶ や住民監査請求︵同法二四二条︶が該当することになる︒しかし︑住民参加を行政過程への参

加ととらえ︑かつ行政決定に先立って求められる事前行政手続きの一局面ととらえる場合には︑これらは性格を異に

するものとなる︒④は︑適正手続きを確保するための住民参加で︑特定利害関係者の権利利益の防禦を目的とするも

ので︑事実審型の聴聞︵建築基準法四六条一項︶手続き参加を意味することになる︒

ところで︑近時︑住民自身がイニシアティブをとり︑いわば自治体と住民が協働する型の新たな住民参加のシステ

( 1 9 )  

ムが模索されていることが指摘される︒建築協定︵建築基準法六九条以下︶や緑化協定︵都市緑地保全法一四条以

下︶にみる﹁住民全員合意方式﹂︑あるいはまちづくり条例にみられる﹁協議会方式﹂︑﹁住民投票方式﹂等が該当す

る も

の で

一 九

0

年代以降︑わが国で住民参加の重要性が論じられるようになった背景としては︑高度成長の下に行政機能

の飛躍的拡大が行政の肥大化を生み︑折からの地方議会の指導・統制能力の相対的な低下とあいまって︑自治体行政

が環境問題や都市問題に十分に対処できなかった情況があり︑そのあり方を見直すために住民参加が課題となったこ

関法

1 0

︵  

五 六

(11)

︵ 五

六 七

そこで︑住民参加が目指すべき目標としては︑①住民の自由な発想による新しい合意形成システムの構築︑②たて

割り行政による硬直化の弊害を排除するための行政の総合化や職員意識と行政組織機構の革新︑③間接民主制の補完

( 2 0 )  

と議会の活性化︑④行政サービスのシビルミニマムづくりや総合的まちづくり推進のための市民自治の展開︑などが

( 2 1 )  

掲げられたといえる︒

実際上︑住民参加が︑地方自治体の行政に果たしうる機能はきわめて多様かつ複雑であるが︑法的視点からは︑①

現行の行政決定過程にみられる欠点を補う意味の消極的側面と︑②住民参加自体に認められる新たな機能としての積

( 2 2 )  

極的側面に分けて整序することができる︒

①の消極的側面として取り上げられるのは︑一っには︑④行政による公益性判断の限界の補完であり︑いま︱つは︑

⑥司法救済の限界の補完である︒前者は︑現代行政においてますます増大する行政裁量の公益判断を適切に行使する

ためには︑行政の収集した資料・情報のみによって行うことはその適正を疑わせることになり︑参加手続きによる住

民側の意見を聞くことにより︑資料・情報を豊富にすることができ︑かつ少数の利害に対しても適切な考慮を図るこ

とができる︒そこに住民参加手続きの有用性を見出すことができる︒また︑後者は︑現在の行政事件訴訟のあり方と

関連して︑行政計画などの行政決定が処分性や原告適格という訴訟要件との絡みで必ずしも事後的な行政救済の対象

( 2 3 )  

とはならないことがあり︑住民参加がその代替として機能することがその有用性として上げられる︒

②の積極的側面としては︑なによりも︑住民参加を法的手続きとして制度化することにより︑住民が行政決定過程

において手続的権利を保障され︑権利利益保護の観点からも民主的過程確保の観点からも満足を得ることがきるとい

う④手続き形式保障機能を指摘できる︒そして︑それは︑利害関係者に⑥権利利益保護機能を果たし︑さらに︑関係

ま ち

づ く

り 条

例 と

住 民

参 加

(12)

近年︑﹁まちづくり﹂の掛け声が一段と高まってきたように思われる︒各地でまちづくりが話題となり︑その傾向

は全国的な広がりをみせているといえる︒住民主導のユニークなまちづくり実践例が︑各地から報告されるところで

ところで︑この﹁まちづくり﹂の概念は︑人により様様に使われているようで︑

一般的にいって︑これらの用語は︑都市計画︑都市開発︑都市整備などハード

面における都市の計画的・体系的な整備のための諸活動をイメージする場合が多い︒それに引換え︑﹁まちづくり﹂

という用語法では︑それだけではなく︑地域の活性化や快適な生活環境づくりなど経済的︑社会的︑文化的な要素も

含めた︑いわゆる地域おこしやアメニティの創造といったソフト面における都市整備の諸活動をも含めた幅広い意味

( 2 4 )  

に使われているといえる︒ハードな都市づくりだけでは都市問題が解決できないことが明らかとなり︑そこでソフト

面をも含んだ分かりやすい﹁まちづくり﹂という用語が登場したものと思われる︒

今日︑まちづくりとは︑地域の特性を生かしながら快適な定住基盤の整っただれもが安心して生活のできる︑健康 くり﹂という用語も使われているが︑ あ

る ︒

1 まちづくりの進展と住民参加

ま ち づ く り と 住 民 参 加

⑧住民合意形成機能を期待することができるといえよう︒ 第四四巻第四・五合併号

一 様

で は

な い

︒ ﹁

街 づ

く り

﹂ ﹁

町 づ

住民からの⑥情報収集機能︑関係住民に対する④説得的機能︑司法過程を踏まえたR争点整理機能︑事後の計画実施

段階における①行政の遂行促進機能を果たすことになろう︒その上︑近時では︑新たな住民参加システムを通して︑ 関法

五 六

(13)

ま ち

づ く

り 条

例 と

住 民

参 加

ところで︑従来︑わが国では︑まちづくりといえば︑

市建設﹂を指してきたといえる︒そして︑都市計画は国が策定し︑地方自治体がそれを執行し︑住民はその反射的利

益を受けるに過ぎないとする考え方が根強く残っていた︒すなわち︑わが国では大正八(‑九一九︶年に旧都市計画

法が制定されたが︑それは︑その形式において︑近代的計画法制の体制を整えてはいたけれど︑官庁の机の上で考案

( 27 )  

された法制で一般庶民が何を求めているかということの如きは︑それこそ末の問題であったとされる︒都市計画や建 2 現行都市計画法制と住民参加

︵ 五

六 九

や文化に支えられた豊かな暮らしを享受しうる生活環境を創造することであるといえる︒その原理としては︑自然お

よび歴史環境︑まちなみ︑景観︑祭りなどの良きものを﹁保存﹂し︑公害や乱開発など悪しきものを﹁規制﹂し︑い

わゆる夜間人口が極度に減少する胴枯れ現象地域などにみられる健全さを失いつつあるものを﹁改廃﹂し︑地域

の物的人的資源を最大限に効率よく﹁活用﹂し︑なおかつ安全で健康で快適な住民生活にとって必要不可欠なものを

﹁整備・拡充﹂し︑こうした諸活動を︑それらが相乗効果を生み出し得るように︱つの体系に﹁結合﹂することであ

( 2 5 )  

るといわれる︒そのためには︑まちづくりのあり方として︑基礎的自治体である市町村がイニシアテイプをとり︑そ

の地域の住民が地域の歴史や風土を踏まえ︑自らの生活環境を自らの選択・決定により創造しているべきものとなる︒

いわゆる地方分権化の時代を基礎的自治体である市町村が主体的に実現させる結晶軸が﹁まちづくり﹂であり︑行政

と住民がいわば協働の姿で進めることにより︑より地域の実態を反映したまちづくりが可能となるわけで︑

j

そ こ

に は

( 2 6 )  

計画の策定に当たり住民参加は不可欠の要素となるといえよう︒

ハード面の公共施設の建設に重点をおいた﹁都市計画﹂﹁都

(14)

第四四巻第四・五合併号

︵ 五

0

( 2 8 )

)  

築の規制については︑基本的に国の事務であり︑それは﹁国家高権﹂に基づくものと考えられていた︒

昭和四三(‑九六八︶年に︑現行の都市計画法が制定され︑都市計画事務の地方への委譲︑都市計画の広域性と総

合性の確保︑都市計画への住民の意見の反映等を盛り込んだものとされたが︑実際上は︑市街化区域および市街化調

整区域の線引き︑特定の地域地区︑市町村の区域をこえる地域地区・一定の都市施設・根幹的都市施設に関する都市

計画︑市街地開発事業に関する都市計画等︑都市計画に関する決定権限の多くは︑国の機関委任事務として国の機関

である都道府県知事に与えられおり︵都市計画法一五条一項︶︑市町村は︑広域的でない地域地区や広域的でも根幹

的でもない都市施設に関する都市計画を︑知事の承認を得て決定する権限が与えられているに過ぎない︒その上︑市

町村が定める都市計画は︑知事が定めた都市計画に適合しなければならず︑両者が抵触するときは知事の定めた都市

( 2 9 )  

計画が優先するものとされている︵同法一五条四項︶︒また︑都道府県知事も︑大都市およびその周辺の都市計画や

国の利害に重大な関係がある都市計画等を決定する場合には︑建設大臣の認可を受けなければならず︵同法一八条︶︑

建設大臣は都市計画の指定︑都市計画の決定・変更に関して知事・市町村に対し必要な措置をとるよう指示する権限

を有し︑知事又は市町村は︑正当な理由がない限り︑当該指示に従わなければならない

終的な権限が建設大臣に集約されている︒したがって︑都市計画権限は本源的に市町村ではなく国に属し︑国はこの

権限の一部を知事に機関委任して行使させ︑また一部を知事の承認を条件として市町村に行使させるという形態は︑

( 3 0 )  

権限の﹁地方分権﹂ではなく﹁地方分散﹂に過ぎないといわれる︒

このような国の権限に重きをおく都市計画法制のあり方は︑住民参加の側面にも反映されて︑都市計画法は︑公聴

会の開催︵同法一六条︶および都市計画案の縦覧とこれに対する意見書の提出︵同法一七条︶について定めるのみで 関法

一 四

︵ 同 法 二 四 条 ︶ ︑ と し て ︑ 最

(15)

ま ち

づ く

り 条

例 と

住 民

参 加

聴取にとどまっている︵同法一八条一項︶︒ て公衆の閲覧に供することとされている︒ 事の承認を受けて︑都市計画決定される︒

一 五

まず︑都市計画案を作成しようとするときは︑公聴会の開催等︑住民の意見を反映させるために必要な措置を講じ︑

作成された都市計画案については二週間の縦覧に供することが必要とされる︒関係市町村の住民および利害関係人は︑

この縦覧期間満了の日までに︑都道府県知事または市町村に意見書を提出することができる︒提出された意見書につ

いては︑応答義務を定めた規定はないが︑都市計画地方審議会にその要旨が提出されることになっている︵同法一八

条 二

項 ︶

ついで︑都道府県知事が決定する都市計画については︑関係市町村の意見を聞いた上︑都市計画地方審議会の議を

経て︑最終的な決定をみる︒これに対して︑市町村が決定する都市計画の場合は︑都市計画地方審議会の議を経た知

その上で︑都市計画が決定されたときは︑その旨を告示し︑知事の決定による場合は︑建設大臣および関係市町村

に︑市町村の場合は建設大臣および知事に︑図書の写しを送付し︑この図書を都道府県または市町村の事務所におい

また︑都市計画は︑全国総合開発計画や首都圏整備計画などの上位計画に適合することが求められているが︵同法

一三条︶︑上位計画の策定に対する地方自治体の参加が認められている例は少なく︑多くの場合︑関係自治体の意見

このような住民参加のあり方については︑その不十分さや形骸化が問題とされるところである︒まず︑﹁公告縦覧﹂

に関しては︑自治体広報への掲載︑庁舎内の広報板への公告などが一般的であるが︑これでは住民が気づくはずがな ある︒その手続き内容は次のようになっている︒

︵ 五

七 一

(16)

第四四巻第四・五合併号

く︑周知徹底としては不十分であり︑縦覧に行っても付属書類はみせてもらえず︑

ついても専門用語が多く理解できる者は少ない︒ときに少していねいに説明しているパンフレット類をみるが︑これ

( 3 1 )  

らは事業者側の結論へ導くための一方的宣伝型が多く︑本音で住民と話し合う姿勢はあまり見受けられないという︒

﹁意見書の提出﹂については︑まちづくり法制の上では︑住民の意見を反映させるほとんど唯一の手続きであるのに︑

二週間という短期間のうちに住民が十分な意見書を用意することは難しく︑まして住民が集団として意見を交換した

上で意見書を提出することはほとんど不可能である︒意見内容も反対派の意見ばかりで︑賛成派の声が表明されるこ

とはなく︑相互討議がないため断片的な個個人の意見しかみられず︑したがって︑集団的な住民の合意形成システム

としてはもちろん情報収集システムとしても十分に機能しているとはいえないといわれる︒また︑﹁公聴会の開催﹂

は︑規定はあっても行政サイドの裁量により運営されるのが普通で︑都市計画法上の公聴会は︑建設省の指導により︑

市街化区域と市街化調整区域の線引き︑用途地区の全面的再検討︑道路網の全体的再検討︑その他都市構造に大きな

影響を及ぽす根幹的施設を定める場合の四つの場合に限定して開催されることになっている︒公聴会の中身も単なる

行政の一方的説明に終始するものや形式的な質疑応答に応ずるだけのものなどが多く︑都市計画案の真の問題点を明

らかにするというよりは︑すでに行政決定済みの計画案をオーソライズするセレモニーと化している場合が多いとい

( 3 1 )  

う︒このような指摘からも明らかなように︑現行の都市計画法制上︑行政と住民が﹁共同の企て﹂として都市計画案

を策定するという思想は想定されていないといわざるを得ないようである︒ 関法

︵ 五

七 二

コビーも取らせない︒資料内容に

もっとも︑現行の都市計画法は昭和五五(‑九八

0 )

年と平成四(‑九九二︶年に重要な改正が行われ︑その都度︑

国の都市計画権限が︑都道府県知事の承認を条件とするものの︑市町村に委任され︑市町村の都市計画権限は漸次拡

一六

(17)

ま ち

づ く

り 条

例 と

住 民

参 加

大傾向にあり︑同時に住民参加についても漸進傾向を指摘できる︒

一 七

すなわち︑昭和五五(‑九八

0 )

年改正では︑建築基準法の改正とあいまって地区計画制度が採用され︑建築協定

制度︵建築基準法六九条以下︶および緑化協定制度︵都市緑地保全法一四条以下︶と同じような︑地区計画案は︑そ

の案にかかる区域内の土地所有者等の利害関係者の意見を求めて作成するものとされ︵都市計画法一六条二項︶︑利

害関係者に意見を求める方法︑意見を提出する方法等については条例で定めるところに委ねられた︒また︑平成四

( 3 2 )  

︵一九九二︶年改正では︑住民参加一般に関する改正は行われなかったが︑

画のマスタープランとしての﹁整備︑開発又は保全の方針﹂に加えて︑市町村がよりきめ細かく﹁市町村の都市計画

に関する基本的な方針﹂を定めるものとされ︵都市計画法一八条の二︶︑それは︑必ず地域の実情に応じた住民の意

見を反映して策定されるものと規定された︵同法一八条の二第二項︶︒いま︱つは︑再開発地区計画および住宅地高

度利用地区計画において採用されている整備計画要請制度が地区計画にも導入され︑地区計画の区域において地区整

備計画が定められていない場合には︑土地所有者等が全員の合意により協定を締結したときは︑地区整備計画の策定

を当該都市計画を定めるべき者に対し要請できる︵同法︱二条の五第九項︶こととされた︒しかし︑これらの改正案

も︑都市計画における国家高権論を前提とした枠組みのなかで考えられたものであることに変わりはない︒

先にみたように︑今日︑まちづくりとは︑住民みずからが地域の特性を生かしながら自分たちのまちをビジョンし︑

それぞれの利害を調整しつつ︑快適な生活環境を創造していくことと考えるようになってきた︒これは︑いわば欧米

3

条例によるまちづくり

︵ 五

七 三

︱つには︑都道府県知事が定める都市計

(18)

第四四巻第四・五合併号

型の考え方が定着してきたことを意味し︑その実現のためには︑住民にもっとも身近な行政を総合的に担当する市町

村が主体的にまちづくり計画を策定し︑実施する必要があろう︒

しかしながら︑現行の都市計画法制では︑まちづくりに関する権限の多くが国の手に留保されており︑現状のまま

では︑市町村の都市計画は︑国の機関委任事務を執行する都道府県知事の指示するガイドラインに沿って策定せざる

を得ない︒そこで︑住民の要望に応え地域に密着したまちづくりを推進するために︑現行の都市計画法制の不備・欠

陥を埋める意味からも︑まちづくりのための要網や条例が︑市町村で制定されるようになってきたといえる︒

まちづくりに関する具体的な問題を解決するために︑とりあえず用いられた手法として︑まず要網行政を上げるこ

とができる︒大都市周辺部のスプロール化を防ぐための宅地開発指導要綱や生活環境の悪化を防ぐためのラプホテル

建 築 指 導 要 網 ︑ ワンルームマンション建築指導要綱など︑現行法制の不備を補う手法として︑全国の市町村にその例

が急速に広がり︑非権力的な行政指導の形式で簡易・迅速に規制的目的を達成しようというところに︑その手法の核

心があった︒しかし︑これに対しては︑①議会の関与を排除できるので民主的な基盤を欠くこと︑②行政指導という

手法に頼らざるを得ないため︑それに応じない者は規制できないこと︑③行政指導の内容が不透明で取引の安全等を

害すること︑などの批判があり︑また︑行政指導という本来任意で行われるべき手法が︑用地の提供や開発協力金の

支払いに際して︑事実上の強制にわたる措置︵建築確認の留保︑上水道の供給拒否など︶を伴い︑問題とされるよう

( 3 3 )  

に な

っ た

そこで︑近年では︑まちづくりに関して計画的整備や住環境の確保︑景観の保全などを目的として︑開発指導要網

をより詳細化し強制力を伴った条例に切り換える動きが活発化したといわれる︒ 関法

J¥ 

︵ 五

七 四

(19)

ま ち

づ く

り 条

例 と

住 民

参 加

に拍車をかけたとみることができる︒

一 九

そこで登場したのがまちづくり条例であるが︑条例化が活発化した理由としては︑①地域の特性に応じた個性ある

まちづくりを多くの自治体が固有の任務と考え︑まちづくりのための制度的枠組みを手作りの条例という形式で定め︑

時代の要請に応えようとしていること︑②土地利用︑開発規制︑建築規制その他にかかる国の法令による規制等には

一定の限界があり︑また︑住民参加の手続きも不十分で︑現行法制の下では︑意欲的な独自のまちづくりの実現が困

難であること︑③近時︑判例によって要綱の性格と限界が明確になり︑行政指導による目的の達成がかならずしも首

( 34 )  

尾よくゆかず︑相手方がこれに従わずに裁判で争うケースが増加したこと︑などが指摘される︒

また︑平成元年に制定された土地基本法が︑地方自治体は土地利用計画を策定するものと規定し︵同法︱一条︶︑

﹁土地利用計画に従って行われる良好な環境に配慮した土地の高度利用︑土地利用の適正な転換又は良好な環境の形

成若しくは保全の確保その他適正な土地利用の確保を図るため︑土地利用の規制に関する措置を適切に講ずるととも

( 3 5 )  

に︑土地利用計画に係る事業の実施その他必要な措置を講ずるものとする﹂︵同法︱二条︶と定めたことが︑条例化

とにかく︑まちづくり条例の制定は︑市町村が地域の実情に適した個性あるまちづくりを推進するために︑住民の

意向を反映した手作りの制度を構築しようとするものであり︑そこに住民参加の制度化を図ることにより︑まちづく

りを地域社会の共通の課題として︑住民ぐるみの取り組みを可能としたといえよう︒

もっとも︑まちづくり条例の制定に際しても︑ いわゆる条例制定権の限界が問題とされる︒すなわち︑①まちづく

りは︑地方自治体が条例制定の対象とできる事務か︑②まちづくり条例は︑憲法二九条二項の財産権保障の規定や地

方自治法二条三項一八号・一九号の規定に違反しないか︑③さらに︑まちづくり条例は︑現行の都市計画法など個個

︵ 五

七 五

(20)

え る

い ず

れ も

四 ま ち づ く り 条 例 に み る 住 民 参 加

第四四巻第四・五合併号

の都市計画法制に抵触しないか︑が問われることになろう︒ここでは︑まちづくり条例がそれらをクリアするという

見解が一般的であると述べるにとどめて︑住民参加条項についてのみ触れると︑現行の都市計画法は都市計画決定に

あたっては︑公聴会の開催︵同法一六条︶︑都市計画の案の縦覧︑住民および利害関係者による意見書の提出︵同法

一七条︶という方式をとっており︑これをナショナル・ミニマムを定めたものとみるかどうかが問題となろう︒現行

法上︑公聴会を開催するか否かは都道府県知事または市町村の自由裁量によるとされる︒また︑住民および利害関係

者の意見書の提出については︑その要旨が都市計画地方審議会に提出されるにとどまっているが︑公聴会の開催を義

務づけたり︑提出された意見書に回答を義務づける規定を条例に設けることが直ちに法律に抵触すると考えるべきで

はなかろう︒地区計画の案にかかる土地所有者その他の利害関係者の意見書の提出については︑提出方法等を条例で

定めるもの︵同法一六条二項︶とされた方向で検討されるべきではなかろうかと考える︒なお︑これ以外の場合につ

いて住民参加の方式を条例に盛り込むことは︑なんら抵触しないといえよう︒

まちづくりの概念が︑先述のように︑さまざまな意味に用いられることもあり︑まちづくりに関する条例として挙

げられる例は︑都市の計画的整備から地域振興︑環境・景観の保全︑

関法

コミュニティづくりに関するものまで幅が広い︒

一 九

0

年代の後半以降のバブル経済を招来した地上げによる都市再開発やリゾート開発のなかで︑市町

村が抱えた都市運営上の課題に対処し︑より積極的にまちづくりを展開する必要性を感じとって制定されているとい 二 0

︵ 五

七 六

(21)

ま ち

づ く

り 条

例 と

住 民

参 加

これらの広義のまちづくり条例は︑制定目的からみて︑文字どおりの︑①まちづくり条例のみならず︑②開発規

制・環境保全条例︑③リゾート地域関連条例︑④土地取引適正化条例︑⑤都市景観条例︑⑥ラブホテル規制条例︑⑦

公害防止条例︑⑧環境アセスメント条例︑⑨放置自転車条例︑等等に分類することができる︒また︑論者により︑都

市計画法制との整合性の観点から︑囚基本条例型︵憲章型︶条例︑⑱紛争調整型条例c都市計画法等補完型条例

︵ さ

ら に

︑ 国

'

1 法規制対象区域外開発規制型条例︑国︐

2

法規制目的外開発規制型条例︑団

'

3

要網条例化型条例

( 3 6 )  

に区分する︶⑪環境アセスメント型条例︑⑮基金型条例︑等に分類される︒もっとも︑まちづくり条例は︑その幅

が広く︑厳密な類型化は困難を伴い︑これらの分類も厳密に類型化したものではないが︑

ここでは︑住民参加方式として︑とくに住民のイニシアテイプを生かす工夫のみられる︑①世田谷区街づくり条例︑

②潤いのある町づくり条例︵湯布院町︶③掛川市生涯学習まちづくり土地条例︑④豊中市まちづくり条例︑③真鶴

町まちづくり条例︑を取り上げて︑住民参加のあり方を比較検討することとしたい︒

田 谷

区 は

ワンルームマンション建設の反対運動をきっかけに建築協定が数多く作られ︑住民参加によるまちづ

くりを実践している先進自治体として認知されている︒本条例は︑﹁世田谷区基本構想が示す区の将来像の実現を図

るため︑街づくりについて必要な事項及ぴ都市計画法第一六条第二項の規定に基づく地区計画等の案の作成手続に関

する事項を定めることにより︑安全で住みよい市街地の整備を推進すること﹂︵一条︶を目的として制定されたもの ゜

世田谷区街づくり条例︵昭和五七年六月二五日制定︶

︵ 五

七 七

︱つの目安になるといえよ

(22)

して︑議会を関与させている点である 特別の権利を持つ主体とされることになっている︒ 第四四巻第四・五合併号

︵ 五

七 八

で︑地区計画の手続き条例としての意味をもつが︑同時に世田谷区のまちづくりの基本的精神を規定しているといわ

れる︒すなわち︑まちづくり施策について︑地区計画制度を一っの手段と位置づけて条例を制定することにより︑ま

( 3 7 )  

ちづくりの総合性と住民参加の確立を図ろうとしているといわれる︒

区長は︑重点的に街づくり事業を推進すべき地区を街づくり推進地区として指定するが︑その指定に当たっては︑

﹁地区住民等となるべき者を対象とした意見聴取︑説明会︑その他必要な措置を講じなければならない﹂︵七条二項︶

とされ︑推進地区街づくり事業の実施に当っては︑幅広い住民参加が確保されている︒区長が︑地区住民が街づくり

に関して設置した団体を地区まちづくり協議会として認定する︵八条︶と︑この認定された協議会は︑建築行為等の

事前協議協定を区長と締結すること︑地区街づくり事業についての提案ができること︑街づくり専門家の派遣を要請

できること︑協議会の運営および地区街づくり提案に要する経費について助成が受けられることなど住民参加の中で

本条例のいま︱つの特徴としては︑街づくり推進地区を指定する場合には︑区議会の議決を経なければならないと

︵ 七

条 一

二 項

︶ ︒

これらの住民参加方式に加えて︑世田谷区では︑住民主体のまちづくりを財政面から支援するために︑平成四︵一

九九︱‑︶年に公益信託﹁世田谷まちづくりファンド﹂が設立された︒このファンドは︑行政・企業・住民等からの寄

付により賄われているが︑ いずれからも独立した中立の立場で運営されている︒このファンドの果実による助成金が

﹁まちづくりハウス﹂という非営利の民間の専門的組織の設置や運営費用に支出されている点も住民のまちづくり活

( 3 8 )  

動を支援する制度として注目されている︒ 関法

(23)

昭和六二(‑九八七︶年に施行されたいわゆるリゾート法にあおられたリゾート開発の波が湯布院町にも押し寄せ︑

リゾートマンションや分譲別荘の建設がつぎつぎと計画されて︑湯布院町のこれまで長年の間に築き上げられてきた

﹁健康で文化的な温泉保養地﹂のイメージが害なわれかねない事態となったことより︑本条例がそれまでの自然環境

保護条例に代わって制定された︒本条例は︑﹁湯布院町の潤いのある町づくり施策を推進するうえで開発事業等の調

整を図るため︑基本的な事項を定め︑町民の健康で文化的な生活の維持及び向上を図ること﹂を目的とし︵一条︶︑

町民は︑湯布院町のかけがいのない資産である﹁美しい自然環境︑魅力ある景観︑良好な生活環境﹂を﹁守り︑活か

し︑より優れたものとすることに永年のあいだ力をつくしてきた﹂から︑﹁この歴史をふまえ︑環境に係わるあらゆ

る行為は︑環境の保全および改善に貢献し︑町民の福祉の向上に寄与すべきことを基本理念とする﹂︵二条︶として

いる︒この条例では︑町長が﹁町づくりの方針﹂を定め︑これに沿って各地区の﹁地区の町づくり計画﹂が立てられ︑

これを以後の湯布院町のグランドデザインとすることにしており︑町民の合意に基づく明確な﹁成長管理﹂の考え方

( 39 )  

によるまちづくりとそれを実現するための方向性を示す総合的なまちづくり条例となっている︒

条例では︑この町づくり理念を守るための﹁開発事業の審査﹂手続きが示されている︒すなわち︑建築・開発はこ

の地区の町づくり計画に適合したものでなければならず

(1

0

条︶︑このため︑起業者は︑開発予定地の事前環境調

査を行うとともに︑当該事業計画の内容を三

0

日間公開することが義務づけられており︑その後︑説明会を開催し︑

近隣関係者との協議をするものとされ︑﹁近隣関係者の充分な理解を得る﹂こととされている(‑五条し一八条︶︒

本条例は︑﹁お住みになりたいのなら︑湯布院の町づくりの考え方︑

ま ち

づ く

り 条

例 と

住 民

参 加

②潤いのある町づくり条例︵湯布院町︶︵平成二年九月五日制定︶

ルールに従って︑町づくりに参加・協力して

︵ 五

七 九

(24)

から二週間公衆の縦覧に供しなければならない

関法

第四四巻第四・五合併号

掛川市生涯学習まちづくり土地条例︵平成三年三月二七日制定︶

ニ四

︵五

0

)

下さい﹂という理念の下に︑起業者により持ち込まれる開発計画を事前相談の段階で事前公開し︑説明会を開催して︑

近隣関係者等の十分な理解を得るものとして住民参加の実を上げることとしており︑それを整合させる町づくりの方

( 4 0 )  

針およぴ地区の町づくり計画自体を町民主体で創り上げていこうとする内容となっている︒

3  掛川市は︑昭和五四(‑九七九︶年に生涯学習都市を宣言し︑平成二(‑九九

0 )

年には地球・美感・徳育都市宣

言をして︑美しいまちづくり︑徳のある人づくりを進め︑自然と農住商工とレクリエーション施設が共存した考え深

い市民が育つ理想都市を目指しており︑本条例も︑そのような理念を生かして︑﹁土地が市民のための限られた生態

系にも係る貴重な資源であって︑地域社会を存立させている共通の基盤であることにかんがみ︑土地の公共性に基づ

くその適正利用に関する生涯学習並びに市民主体の土地施策の策定及び実施における積極的な市民参加について定め︑

もって快適で良質なまちづくりに資することを目的とする﹂︵一条︶と定めている︒すなわち︑土地が私有物であっ

ても高い公共性を併せ持つことを生涯学習し︑土地の利用は︑五共益五良質体制︵地権者︑地元集落︑開発事業者︑

進出企業・新入住民および市の五者がともに益し︑ともに良質な体制︶を目標に︑住民参加のもとで︑総合的かつ計

画的に行うことを掲げている︒具体的には︑市長が︑適正な土地利用を図るため︑計画的に開発又は保全すべき区域

を︑あらかじめ掛川市生涯学習土地審議会の議を経て︑﹁特別計画協定促進区域﹂として指定する︵六条一項︶こと

とし︑その際︑あらかじめ当該促進区域の自治会の意見を聴いて︑その旨およびその促進区域案を公告し︑公告の日

︵同条二項︶としている︒そして︑この縦覧期間中︑市民および土地

(25)

ま ち

づ く

り 条

例 と

住 民

参 加

その後︑市長は︑促進地区のまちづくり計画案がまちづくりに関する市の総合的な計画に適合していると認めると

きは︑そのまちづくり計画案を推進するため︑必要な事項について︑当該自治会の代表者およぴ土地等の所有者又は

その代表者との間でまちづくり計画協定を締結する︵八条︶こととされ︑当該まちづくり計画協定が締結された区域

は﹁特別計画協定区域﹂に指定され︑以後︑この協定に基づいてまちづくりが進められることとなる︒

このように︑本条例では︑徹底した住民参加のもとでまちづくりが計画され推進されることになるが︑これは︑従

来から掛川市では︑市︑校区︵一六小学校区︶︑自治区(‑三九自治会︶を結ぶ﹁生涯学習施設ネットワーク﹂や

﹁市民総代会システム﹂などが整備されて︑市民との対話を重視した行政が行われており︑その方式がまちづくり計

画にも生かされることになったものといえよう︒そこでは︑まちづくり計画協定の締結は︑土地等の所有者の一

0

の八以上の同意で運用されることになっており︵八条二項︶︑住民の多数の同意のもとに少数の反対は押し切ること

( 4 1 )  

ができ︑やわらかい中に固い芯のある模範的システムが採用されていると評価されるところである︒

もっとも︑本条例は︑まちづくり計画の実施に対する法的強制手段を定めておらず︑違反者に対する制裁は勧告︑

公表にとどまるので︑地権者の﹁報徳推譲の精神﹂に期待せざるを得ず︑そこに責務条例の限界を指摘できる︒ るに必要な事項からなる︵九条︶︒

二 五

等の所有者は︑この促進区域案について︑市長に意見書を提出することができる︵同条三項︶︒

このような手続きで促進区域が指定されると︑当該促進区域の自治会の代表者および土地等の所有者又はその代表

者が︑快適で良質なまちづくりを推進するため︑当該促進区域に係る﹁まちづくり計画案﹂を策定する︵七条︶︒そ

の内容は︑名称︑まちづくりの目標および方針︑区域︑土地の利用の方法︑その他快適で良質なまちづくりを推進す

︵五

八一

(26)

第四四巻第四・五合併号

豊中市まちづくり条例︵平成四年︱二月二八日制定︶ 4 

豊中市は大阪府の北摂地域に位置し︑行政施策については進取の取組みがみられる先進自治体の一っとして認知さ

れるところであるが︑まちづくりについても︑庄内地域の住環境整備の体験を生かして︑市の独自セクションとして

﹁まちづくり支援室﹂を設け︑住民と行政が一体となったまちづくりを積極的に推進している︒

平成五年一月一日から施行された本条例では︑﹁住みよいまちづくりの推進は︑市民相互及び市民と行政の信頼︑

理解及び協力に基づいて︑市民の自発的な発想と市民及び行政の連携及び分担により行われることを基本とする﹂

︵ 二

条 ︶

と 定

め る

︵五

八二

条例は︑自らの地域の住みよいまちづくりを推進する目的をもった市民組織を﹁まちづくり協議会﹂として認定す

ることができるものとし︑その要件として︑①その組織が︑当該地域に居住する者又は事業を営む者︑土地︑建物等

を所有する者で構成されていること︑②その活動が︑当該地域のまちづくり構想の策定を内容としていること︑③そ

の活動が︑地域住民の多数の支持︵過半数の賛同︶を得ていること︑④その他市規則で定める基準︵その組織への加

入又は脱退が自由で︑その運営が民主的になされていることなど︶に適合するもの︑を挙げている︵五条︶︒このま

ちづくり協議会の認定は︑市長が行うが︑その認定の可否の決定に当たっては︑まちづくりに関する学識経験者で構

成される﹁まちづくり専門家会議﹂の意見を聴かなければならないものとされており︵六条四項︶︑実質的には︑ま

( 4 2 )  

ちづくり専門家会議の判断に委ねられているといえる︒

自発的な市民組織がまちづくり協議会に認定されると︑協議会において︑住みよいまちづくりを推進するために︑

地域住民が協力して﹁まちづくり構想﹂を検討・作成する段階に入り︑そこでまとめられた構想は地域住民に公表さ 関法

二 六

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