王子 聡 審査結果の要旨
論文審査の結果の要旨
論文タイトル:Quotient of cerebrospinal fluid/serum immunoglobulin G as a predictive factor for non-responders to intravenous methylprednisolone therapy in patients with relapsing neuromyelitis optica spectrum disorder: Implication for early initiation of plasmapheresis 増悪期neuromyelitis optica spectrum disorder 症例において,メチルプレドニソロン静注療法の 無効症例を予測する因子としての脳脊髄液/血清免疫グロブリン G 比:血漿浄化療法の早期導入に 対する影響
著者: Satoru Oji, Satoru Tanaka, Miki Kojima, Hikoaki Fukaura, Masahiro Mori, Toshiuyuki Takahashi, Kazuo Fujihara, Kyoichi Nomura
掲載誌:Clinical and Experimental Neuroimmunology 7 巻 3 号 272-280 項 2016 年 7 月 31 日 掲載
総合医療センター神経内科の王子 聡氏を筆頭著者とした上記論文「Quotient of cerebrospinal fluid/serum immunoglobulin G as a predictive factor for non-responders to intravenous methylprednisolone therapy in patients with relapsing neuromyelitis optica spectrum disorder: Implication for early initiation of plasmapheresis」を審査し、その内容は博士の学位 認定に価する研究業績であると評価しました。 日時:平成28 年 12 月 8 日(木)19:00~20:00 場所:大学院講義室 審査委員会構成員 主査:荒木 信夫 (神経内科) 副査:林 健 (国際医療センター 神経内科・脳卒中内科) 副査:丸山 敬 (薬理学) 副査:佐藤 浩二郎(リウマチ膠原病科) 出席者:指導教員 野村 恭一 (総合医療センター 神経内科 教授) 伊﨑 祥子(総合医療センター 神経内科 助教) 田中 覚 (総合医療センター 神経内科 助教) 審査内容 はじめに、王子 聡氏の学位申請論文、参考論文、論文目録、履歴書、研究歴証明書などの確 認をおこなった。続いて、王子 聡氏から今回の論文についての目的、研究の対象・方法、結果、 考察についてのプレゼンテーションが 25 分間にわたって行われた。
Neuromyelitis optica spectrum disorder(NMOSD)の増悪期における治療の目的は、増悪 に伴う不可逆的な神経障害を最小限とすることである。本研究の目的は、増悪期治療の第一選 択であるステロイドパルス療法(IVMP)の無効症例を予測する因子を明らかとすることであ る。
王子 聡 審査結果の要旨 視的検討を行った。IVMP 有効例は、IVMP 開始から 7 日以内に Kurtzke 総合障害度スケール (EDSS)が 0.5 ポイント以上減少した症例、無効例は EDSS に変化がない症例と定義した。IVMP 無効を予測する因子として EDSS(増悪前のベースライン値、増悪時の値、およびベースライン と増悪時EDSS 値の差: ΔEDSS)、脳脊髄液細胞数(CSF-cell)、脳脊髄液 lactate dehydrogenase (CSF-LDH)、脳脊髄液/血清 albumin 比(Q-ALB)、脳脊髄液/血清 immunoglobulin G 比(Q-IgG) を含む臨床所見 10 因子、および脳脊髄液所見 4 因子を検討した。これらの 14 因子について、2 群間での比較検討、単変量および多変量ロジスティック回帰分析を用いてIVMP 無効と関連する 予測因子を決定した。さらに予測因子についてReceiver Operating Characteristic(ROC)曲線 を用いてIVMP 有効例と無効例を分けるカットオフ値を決定した。各検査値は、IVMP 開始前の 検体を用いて測定した。
IVMP 有効群 22 例、無効群 18 例であった。IVMP 有効群と比較して、IVMP 無効群において ΔEDSS、増悪時 EDSS、CSF-cell、CSF-LDH、Q-ALB、および Q-IgG の 6 因子が有意に高値 を示した(各P <0.01)。これらの 6 因子の各々を説明変数、IVMP 無効を目的変数としたロジス ティック回帰分析による単変量解析では、IVMP 無効と有意に関連する因子は、オッズ比が高い 順にQ-IgG 3.17、Q-ALB 2.56、増悪時 EDSS 2.01、ΔEDSS 1.57 であった(各 P <0.05)。これ ら4 因子について、多変量ロジスティック回帰分析を用いて交絡因子の調整を行った。解析に際 して、増悪時EDSS とΔEDSS、および Q-ALB と Q-IgG は、それぞれ有意な相関関係にあるこ とから(r = 0.53; P <0.01、r = 0.96; P <0.01、Spearman 順位相関係数)、ΔEDSS と Q-IgG の 2 つを説明変数、IVMP 無効を目的変数として多変量ロジスティック解析を行った。結果、Q-IgG がIVMP 無効に関連する独立した予測因子であることが明らかとなった(調整オッズ比 3.60、P <0.01)。IVMP 有効群と無効群を分ける Q-IgG のカットオフ値は 4.7 であった(感度 83%, 特異 度91%)。
増悪期NMOSD 症例において IVMP 治療前 Q-IgG >4.7 は、IVMP 無効を示す独立した予測因 子である。IVMP 開始前に Q-IgG 高値を示す症例では IVMP は無効であり、増悪に伴う神経障害 を最小限とするために、血漿浄化療法の早期導入を考慮すべきであることが示唆された。
王子 聡 審査結果の要旨
今回の検討では、本人は疾患を良く理解し、研究に熱心に取り組んできており、質疑応答の際 も真摯な姿勢がみられ、本研究は高く評価された。