1.はじめに
日本の家族研究において結婚の安定性や結婚の 質に関する研究は、諸外国と比較してさほど進ん でいるとはいえない。心理学の領域ではやや多い とはいえるものの、家族社会学、家族関係学、家 族心理学のように家族を対象とした研究領域全体 をとおして、役割構造や役割関係への関心の方が、
夫婦関係よりも親子関係への関心、家族と仕事の 関連性などをテーマとした学会報告や論文が多い ように見受けられる2)。結婚の質、離婚への関心 が低いために、これらの研究は深化しないのだろ うか。また、離婚率がさほど高くないために離婚
が問題視されていないからか、別の理由で離婚が さほど問題となっていないからなのだろうか。
離婚率は、戦後、ほぼ一貫してゆるやかに上昇 し、2009 年の普通離婚率は 2.01 と欧米諸国とほぼ 同じ水準となってきた。とはいえ、結婚の前段階 として、あるいはオルタナティブな形態としての 同棲の経験率は 10 %に満たず3)、つまりは同棲の 解消が多くはないことを考えあわせると、同棲が 根付いている欧米諸国と比較して、同棲ならびに 法律婚を含めたカップル関係の解消は依然として 低いとも言える。
近年の日本の家族にかかわる大きな変動と言う 点では、未婚化の進展の方が著しいといえるだろ
結 婚 生 活 の 経 過 に よ る 妻 の 夫 婦 関 係 満 足 度 の 変 化
1)永 井 暁 子 Change in Japanese Wives’ Marital Satisfaction over the Course of Married Life
Akiko Nagai
結婚生活の経過に伴い妻の夫婦関係満足度はどのように変化するのか、また結婚年数によって夫婦関 係満足度の規定要因は異なるのか。この 2 つの疑問について、公益法人家計経済研究所の「消費生活に 関するパネル調査」データを用いて検証した。
その結果、以下の知見が得られた。第一に、結婚生活の経過に伴い、従来支持されていた結婚初期の 満足度の低下と後期の回復を示す「U字カーブ」を描くことなく、ほぼ一貫して満足度は低下すること が分かった。第二に、とくに結婚初期の満足度の低下が著しい。第三に、「子は鎹」ではなく 6 歳以下の 子どもの存在は満足度を低下させる。第四に、結婚初期には夫の平日の家事育児時間、休日の家事育児時 間が満足度を上昇させ、結婚生活後半では夫の年収と休日の家事・育児時間が妻の満足度を上昇させる。
結婚年数による夫婦関係満足度の規定要因の違いを夫への役割期待の変化と考えた場合、ライフス テージによる役割構造の変化であるとともに、配偶者への役割期待と配偶者の役割遂行の不一致から役 割期待を変更させた可能性も示唆された。
キーワード:夫婦関係満足度、結婚年数、役割期待の変化
う。その結果、結婚を継続させるという視点、結 婚の安定性や結婚の質よりも、家族形成の方に強 い関心がよせられているのかもしれない。あるい は家族の変動とは関係なく、そもそも結婚の質へ の関心が低い可能性もある。
本論では、結婚の質の一つの測度である夫婦関 係満足度に焦点をあてる。ミクロレベルでの結婚 の質の変化を検証するには、同一個人を長期にわ たって追跡したパネルデータを使用することが望 ましい。日本でもっとも長く行われている公益財 団家計経済研究所の「消費生活に関するパネル調 査」は、その対象が女性のみであるため、本論で は妻の夫婦関係満足度について分析を行う。具体 的には、妻の夫婦関係満足度が結婚生活の経過に 伴いどのように変化していくのか、まだ満足度の 規定要因は結婚生活を通じて一貫しているのか否 かについて検証していく。
2.これまでの研究動向
結婚満足度、結婚幸福度あるいは夫婦関係満足 度(以下、満足度)の経年変化についての大きな 関心は、U字カーブの検証にあった。これまで多 くの研究が、結婚生活の経過により満足度は
U
字 カーブを描くと結論していた。その解釈としては、結婚直後に満足度が高いのは「ハネムーン効果」
であり、その後、子どもの出産、子育てを期に夫婦 間の対立が増し満足度は低下する。しかし子ども の離家により夫婦間の対立は減り、夫婦だけの時 間が増え満足度は増加するといったものである。
これに対する反証は、古いものではブラッドと ウルフによるデトロイト調査によるもので、子育 て期に満足度は低下し子の離家後にわずかに上昇 するが、退職後に再び低下するというものである
(Blood 1967)。また、今日有力である反証は、不 満足なカップルは夫婦関係を解消(離婚)するた め、一定の時期を過ぎると満足度の低いケースが
サンプルから脱落していくために、満足度の平均 値が上昇しているように見えるにすぎない、ある いは結婚年数の長い年齢の高い夫婦は結婚の価値 観が若者と異なるために満足度が高いとする説で ある(VanLaningham et al. 2001 など)。
日本の研究では、稲葉(2004)、岩井(2002)
の研究があげられる。一時点のデータを用いたこ れらの分析では、いずれも
U
字カーブを支持して いる。日本でのパネルデータを用いた結婚の質に 関する研究は、パネル調査自体が少ないこともあ り検証は進んでいるとはいえず、本論のようにパ ネルデータを用いた検証は重要な意義がある。結婚年数以外の結婚満足度の規定要因につい て、VanLaninghamによれば、①家族役割・構造 の変化(親役割への以降、妻の就業変化、世帯収 入の変化、退職など)、②社会心理的、個別的効 果(ハネムーン効果、新婚時の結婚への期待の高 さ、性別役割分業観、価値観など)、③時代効果、
コーホート効果(男性の賃金の低下、幼い子を持 つ母親の就労の増加、ジェンダー関係の変化、結 婚の不一致を解決する努力の低下)の 3 点に整理 されている。
日本においても多く見られる研究は、第 1 子出 産前後の夫婦関係の変化と親役割への移行に関す るものである(堀口 2002 ほか)。また、中年期に 焦点をあてた研究では、夫婦間の役割意識や関係 のズレが、とくに妻の満足度を低下させていると している(柏木・平山 2003、平山・柏木 2004、
長津 2007)。これらはそれぞれのライフステージ に焦点をあてた満足度の検証であり、調査対象の 選出方法や分析方法も異なるこれらの研究を並べ て単純に比較することはできないが、ライフス テージにより満足度の規定要因が異なることを示 唆している。
この他に関心の高いテーマは、家事遂行、とく に夫の家事遂行と妻の満足度との関連である。た
とえば末盛(1999)は性別役割分業に関して平等 的な妻の満足度は夫の家事遂行量が増えることに より上昇することを示し、李(2008)は妻が夫の 家事遂行への期待が高い場合に夫の家事遂行が妻 の満足度を高めるとしている。一方、夫の家事遂 行が妻の満足度に関して一貫した効果を持たない ことはアメリカでも指摘されており(Shelton &
John 1996)
、日本においても大和(2001)は、夫の家事遂行は妻の満足度を高めないが育児は妻の 満足度を高めると述べている。
また、この他には情緒的サポートが満足度を高 める(末盛 1999)、夫の威圧的なコミュニケー ションが妻の満足度を低める(平山・柏木 2004)
との結果もある。
本論では満足度の規定要因として、結婚年数と ライフステージのほかに、夫の家事・育児遂行と 稼得役割としての夫の収入を取り上げる。夫から の情緒的サポートや夫婦の伴侶行動を示す変数 は、利用するデータにおいて十分ではないため本 論ではそれらの検証を断念した4)。
3.データと使用した変数
本論では、公益財団家計経済研究所が実施して いる「消費生活に関するパネル調査」のデータを もちいた。この調査は対象者が女性のみであるの で、妻の満足度に関する分析しか行えないが、日 本で最も長期にわたるパネル調査であり、結婚生 活の後半までの満足度の変化を見るためには最も 適したデータである。
同調査は 1993 年から開始され今日まで毎年 9-10 月に実施されている。調査対象は層化多段無作為 抽出された日本全国の女性であり、1993 年に始め てサンプリングを行った後、1997 年、2003 年、
2008 年にもサンプルを追加している。データの構 造は非常に複雑であるので図 1 に示した。1993 年 に調査を開始したコーホート
A
とコーホートB5
は 1,
500(有配偶 1,002、無配偶 498)ケース、1997 年に開始したコーホート
C
は 500(有配偶 201、無配偶 299)ケース、2003 年追加のコー ホートD
は 836(有配偶 351、無配偶 485)ケース、2008 年追加のコーホート
E
は 636(有配偶 118、panel1 1993 24-34 1959-1964 1965-1969 panel2 1994 25-35 1959-1964 1965-1969 panel3 1995 26-36 1959-1964 1965-1969 panel4 1996 27-37 1959-1964 1965-1969
panel5 1997 24-38 1959-1964 1965-1969 1970-1973 panel6 1998 25-39 1959-1964 1965-1969 1970-1973 panel7 1999 26-40 1959-1964 1965-1969 1970-1973 panel8 2000 27-41 1959-1964 1965-1969 1970-1973 panel9 2001 28-42 1959-1964 1965-1969 1970-1973 panel10 2002 29-43 1959-1964 1965-1969 1970-1973
panel11 2003 24-44 1959-1964 1965-1969 1970-1973 1974-1979 panel12 2004 25-45 1959-1964 1965-1969 1970-1973 1974-1979 panel13 2005 26-46 1959-1964 1965-1969 1970-1973 1974-1979 panel14 2006 27-47 1959-1964 1965-1969 1970-1973 1974-1979 panel15 2007 28-48 1959-1964 1965-1969 1970-1973 1974-1979
panel16 2008 24-49 1959-1964 1965-1969 1970-1973 1974-1979 1980-1984 panel17 2009 25-50 1959-1964 1965-1969 1970-1973 1974-1979 1980-1984
1) 出生コーホートの名称は調査主体である公益法人家計経済研究所が使用している名称とは異な る。公益法人家計経済研究所のコーホートAを本論ではコーホートAとBに分割している。太枠内:
本論の使用データ
wave
調査年調査年 年齢年齢 コーホートコーホートA コーホートコーホートB コーホートコーホートC出生コーホート 出生コーホート
1)1)コーホート
コーホートD コーホートコーホートE
図 1 JPSC データの構造と本論の使用データ
無配偶 418)ケースである。
本論では 2003 年までに追加されたサンプルの 中で、夫婦関係満足度について調査している年度 のデータを利用している。利用したデータは、
2008 年時点で 29-49 歳、調査各年の有配偶者を分 析対象とした。分析対象には、その後、脱落した
(無回答となった)ケース、離婚したケースも含 まれている。ケース数は表 1 に示した。
従属変数である夫婦関係満足度については、
「あなたは現在の夫婦関係に満足していますか」
の問に対して「非常に満足している(=5)」「まあ まあ満足している(=4)」「ふつう(=3)」「あまり満 足していない(=2)」「まったく満足していない(=1)」 の 5 件法でたずねている。第一の目的に関して主 要な独立変数は結婚年数である。その他にライフ
ステージを示す変数として、年齢別の子どもの有 無を用いた。第二の目的のために用いた独立変数 は、夫の年収、夫の平日家事・育児時間、休日家 事・育児時間、社会階層を示す変数として夫の教 育年数、を用いた。それぞれの基本統計量につい ては表 2 に示している。
4.分析
(1)パネルデータによる満足度の変化
まず各年度のデータをプールして、結婚年数別 の夫婦関係満足度を図示してみると図 2 のように なる。結婚年数 24 〜 30 年に該当するのは 310 ケースに過ぎないが、U字カーブ仮説のように満 足度が再び上昇に転じる結婚 24 年で上昇に転じ ている。
度数 最小値 最大値 平均値 標準偏差
14042 1 5 14082 0 1 14082 0 1 14082 0 1
16歳以上の子の有無
14082 0 1結婚年数
14082 0 30結婚年数
2 14082 0 900結婚年数
3 14082 0 27000夫教育年 数 14077 9 18
夫平日家事育児時間
13728 0 900夫休日家事育児時間
13644 0 1080夫年収
13198 0 82003.51 .3090 .2976 .3033 .2985 10.3347 146.1208 2413.1042 13.2262 36.5399 156.5018 540.56
1.006 .46209 .45723 .45970 .45760 6.27040 150.56856 3454.20179 2.31401 62.28128 181.99396 302.763 夫婦関係満足度
0-6歳の子の有無 7-9歳の子の有無 10-15歳の子の有無
表 2 使用変数の基本統計
調査年 ケース数 %
1994 999 7.10
1995 998 7.09
1997 1177 8.36
1999 1142 8.11
2001 1087 7.72
2002 1061 7.54
2003 1368 9.72
2004 1311 9.31
2005 1277 9.07
2006 1242 8.82
2007 1219 8.66
2008 1197 8.50
全体 14078 100.00
表 1 使用ケース数 4.50
3.30 3.50 3.70 3.90 4.10 4.30 4.50
2.50 2.70 2.90 3.10 3.30 3.50
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30
図 2 結婚年数別夫婦関係満足度平均
しかし、妻の満足度を被説明変数としてランダ ムエフェクトモデルで推計してみると、結婚年数 の二乗項のみならず三乗項も有意となり、結婚年 数の経過による満足度の変化は
U
字カーブを描く わけではないことが明らかとなった(表 3)。満足 度の変化をあらためて図示したのが図 3 である。図 3 をみるかぎり,満足度が上昇することはない。
さらに、出生コーホート別に満足度の変化を図示 したところ、いずれのコーホートも
U
字カーブを2.533.544.52.533.544.5
0 10 20 30 0 10 20 30
1 2
3 4
95% CI p1
d ̲̲
Graphs by cohort
2.533.544.52.533.544.5
0 10 20 30 0 10 20 30
1 2
3 4
95% CI p1
̲̲
Graphs by cohort
2.533.544.52.533.544.5
0 10 20 30 0 10 20 30
1 2
3 4
95% CI p1
̲̲
Graphs by cohort
1) 1:コーホートA、2:コーホートB、3:コーホートC、4:コーホートD
2.533.544.52.533.544.5
0 10 20 30 0 10 20 30
1 2
3 4
95% CI predicted p1 Graphs by cohort
̲̲
duration
図 4 出生コーホート1)別結婚年数の経過による夫婦関係満足度の変化
Coef. Std. Err. z
結婚年数
-13.33 ***
結婚年数2
5.55 ***
結婚年数3
-3.43 **
0-6歳の子の有無
-3.14 **
7-9歳の子の有無
0.54
10-15歳の子の有無
-0.49
16歳以上の子の有無
-0.05
Number of obs Number of groups
14042 2004 0.0569 15067.93 0.0000 R-sq: overall
χ2
Prob > χ2
1) ランダムエフェクトモデルはハウスマン検定によって採択された。
*** p <.001, ** p < .01 -0.1124109
0.0045008 -0.0000751 -0.1480465 0.0311357 -0.0232448 -0.0026548
0.0084327 0.0008112 0.0000219 0.0471504 0.0579839 0.0477915 0.0574876
表 3 夫婦関係満足度に関するランダムエフェクトモデル1)
2.533.544.5
0 10 20 30
duration̲̲
2.533.544.5
0 10 20 30
duration̲̲
2.533.544.5
0 10 20 30
duration̲̲
2.533.544.5
0 10 20 30
95% CI p1
95% CI p1
95% CI p1
95% CI predicted p1
̲̲
duration
図 3 結婚年数の経過による夫婦関係満足度の変化
支持するにはいたらなかった。(図 4)
ライフステージを示す変数として投入した年齢 別子どもの有無については、0-6 歳の子どもの有 無が有意な影響を持ち、0-6 歳の子どもの存在が 満足度を低下させることが明らかとなった。
(2)結婚経過年数別の結婚満足度の要因 次に、結婚年数を 0-5 年、6-10 年、11-16 年、17- 30 年に 4 分割し、満足度の規定要因について比較 した。ここで注目したいのは、夫の家事・育児時 間、夫の年収、夫の教育年数が、妻の満足度に対 してどの期間でも同じような効果を持つのか否か という点である。
表 4 に示したように、0-5 年の妻の満足度にプラ スの影響を与えているのは夫の平日、休日の家 事・育児時間と夫の教育年数である。6-10 年では 夫の平日家事・育児時間の影響が弱くなり夫の年 収による影響があらわれる。11-16 年では夫の平 日家事・育児時間の影響が消え、17-30 年でも弱 いままである。
結婚初期においてはハネムーン効果の減退によ る妻の満足度の低下がもっとも大きい要因であろ うが、加えて、結婚初期には平日の夫の家事・育 児の遂行が妻の満足度に対して重要であるのに対 して、後半では稼得役割の遂行の方が重要になる
という変化が確認された。夫の教育年数がどう いった意味を持つのかはこの分析では明らかには できないが、一貫して妻の満足度に正の影響を与 えていた。
5.議論
以上の分析結果から、結婚年数による夫婦関係 満足度の変化の検証については、U字カーブのよ うに結婚生活後半で満足度が上昇する傾向は見ら れず、概して低下していくことが確認された。ま た、結婚年数による満足度の規定要因の差異につ いては、結婚生活の初期に家事・育児遂行が重要 であり、経過するに従い休日の家事・育児の遂行 と稼得役割の遂行が重要となる。
U
字カーブについての批判は、前述のようにア メリカ社会でも論述されているが、子どもの離家 が遅れている、あるいは日本では家に子どもがと どまり続けるために、近年になって生じた現象で あると考える者もいるかもしれない。ただし、日 本において未婚者に限れば、18 〜 34 歳男女が親 と同居している割合は、1987 年からほとんど変化 が見られない6)。したがって今日的な現象である とはいえないだろう。本論の検証ではコーホート 間の満足度の変化の違いはみられなかった。デー タの限界ではあるが、出生年に 20 年の違いしかβ β β β
5 1 0 .
*
* 2 5 0 . -
*
*
* 6 9 0 . -
*
*
* 4 1 1 . - 数
年 婚 結
9 0 0 .
* 3 4 0 . -
* 7 4 0 . -
*
*
* 7 4 1 . - 無
有 の 子 の 歳 6 - 0
5 ***
9 0 .
*
* 1 6 0 .
*
* 9 5 0 . 1
1 0 . 収
年 の 夫
4 + 4 0 . 6
0 0 .
* 7 3 0 .
*
*
* 4 7 0 . ) 分 ( 間 時 児 育
・ 事 家 の 日 平 の 夫
1 ***
8 0 .
*
*
* 2 9 0 .
*
*
* 5 1 1 .
*
*
* 8 9 0 . ) 分 ( 間 時 児 育
・ 事 家 の 日 休 の 夫
9 ***
2 1 .
*
*
* 3 2 1 .
*
*
* 1 9 0 .
*
*
* 3 9 0 . 数
年 育 教 の 夫
R
2(adj-R
2) .056(.054) .038(.037) .036(.035) .044(.041) 8
8 . 1 2 6
9 4 . 4 2 5
8 4 . 2 3 値
F 17.711
p < .000 p < .000 p < .000 p < .000 結婚年数
0-5 年 6-10 年 11-16 年 17-30 年
表 4 結婚年数別夫婦関係満足度に関する重回帰分析
ないためにコーホート間の違いが出なかった可能 性は大きい。より年齢の高い女性においては結婚 生活や夫への期待は異なっていた可能性はある。
結婚年数による規定要因の違いを夫の役割期待 の変化と考えた場合、ライフステージによる役割 構造の変化であるとともに、配偶者への役割期待 と役割遂行の不一致から役割期待を変更させた可 能性も示唆される。つまり、二つの解釈ができる だろう。一つは、結婚初期には、子どもも小さく 平日にも家事・育児に必要な時間は多いが、ライ フステージの上昇により子どもの日常的な世話よ りも休日の子どもの遊び相手や勉強をみることな どが必要となり、平日の家事・育児時間の効果が 消えるということである。
いま一つは、妻は結婚当初、夫にも平日に早く 帰宅し家事や育児をすることを夫の役割として期 待するがそれが遂行されないために、平日の夫に は期待しないよう妻は夫への役割期待を修正して いくという解釈である。
6.おわりに
後者の解説から、冒頭に述べた結婚の質に関す る研究の少なさは、結婚の質への関心の低さとも 考えられるのではないだろうか。日本ではとくに 未婚化が進展し、家族形成に関心が集まっている こととも関連する。Oppenheimer(1988)によれ ば、結婚を継続するためには 2 つの努力が必要で ある。一つはいい相手を見つけることであり、い ま一つは結婚後の夫婦間の関係の調整に勤めるこ とである。さらに近年の変化として、配偶者選択 の機会が増加したために、一つめの努力、つまり よい結婚相手を探すことに努力が向けられるよう になり、後者には努力が向けられなくなったとし ている。これはアメリカ社会での離婚、再婚の増 加をさしているだろう。日本では、この現象は配 偶者選択の長期化とあきらめによる未婚化につな
がっているともいえるだろう。
加えて、日本ではこれまでも結婚の質への関心 が低かったのではないだろうか。日本で配偶者選 択の機会が少なかった時代にも後者の努力を行っ ていたかどうかは明らかではない。近代家族の出 現によって生じた結婚生活に期待することなく、
女性があるいは互いに、忍従あるいは無関心の 日々を送ってきた可能性もある。つまり、結婚後 に結婚の質を高めることに、これまでさほど関心 がなかったのかもしれないのである。
しかし、今後さらに離婚が増加する可能性が大 きいこと、一方で離婚を許容するものの割合が低 下に転じたこと7)から、結婚の継続性・安定性、
結婚の質に関する研究がより重要となってくると 思われる。本論では女性のみの分析だったが、今 後、男性も含めたデータの解析により、結婚生活 における男女の違いを視野に入れた分析が行われ るべきであろう。
謝辞
本論文では、公益法人家計経済研究所の「消費 生活に関するパネル調査」データを利用させてい ただきました。また、分析にあたっては坂本和靖
(慶應義塾大学)氏に貴重なアドバイスをいただき
ました。ここに感謝の意を表します。註
1) 本論は 2010 年 7 月スウェーデン・イエテボ リで行われた世界社会学会での口頭発表を もとに作成した。
2) とくに心理学以外の家族領域での結婚の質 の研究が進んでいないことは長津(2007)
によって指摘されている。長津は中年期の 夫婦に焦点をあて、とくに個人化の視点か ら結婚の質、とくに妻の満足の低下につい て検討している。
3) 同棲経験は増加傾向にあったものの近年低 下傾向に転じている(国立社会保障・人口 問題研究所 2011)。1987 年では男性の同棲 経験率は 3.2 %、女性 2.8 %であり、うち調 査 時 点 で 同 棲 し て い る 者 の 割 合 は 男 性 0.9 %、女性 0.7 %である。2010 年の同居経 験率は男性 5.5 %、女性 5./%、同居率は男 女ともに 1.6 %である。
4) 夫婦関係満足度について調査している年度 において夫婦の会話や伴侶行動、情緒的サ ポートなどの変数がそろわないため、これ らの変数を利用できなかった。
5) コーホートの名称について、1993 年にサン プリングしたコーホートを公益財団家計経 済研究所ではコーホート
A、本論ではコー
ホートA
とコーホートB
に分割している点 で異なる。6) 国立社会保障・人口問題研究所(2011)に よると、18 〜 34 歳の独身男女の親と同居し ている割合はこの 30 年間ほぼ横ばいであ る。1982 年の親との同居率は男性 69.6 %、
女性 82.0 %、2010 年では男性 69.7 %、女性 77.2 %である。
7) 第 14 回出生動向調査では「離婚は避けるべ き」に賛成する割合が低下傾向であったが、
1997 年から上昇傾向に転じている。
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(R. O. ブラッド著,田村健二監訳(1978)『現代の結婚
: 日米の比較』培風館)
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:
夫婦の経済 生活及び結婚観との関連」『発達心理学研究』15(1),89-100.
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