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〈 論 説 〉
水資源の保 全 と利用 に関す る基礎 理論
健全 な水循環系の構築のために
宮 崎 淳
目 次 1は じ め に 2流 水 の 性 質決 定
(1)河 川 の 流水 の法 的性 質 (2)地 下 水 の法 的性 質
3健 全 な水循 環 の確 保 と地 下 水 の 利用 制 限 に 関 す る法 理 (1)地 下 水 に 関 す る共 同利 用 の 理 論
(2)健 全 な水 循 環 の 確保 の理 念 と土地 所 有 権
(3)健 全 な 水循 環 を確保 しう る地 下水 利 用 制 限 の具 現 化 4水 源 保 護 の た めの 差 止理 論
(1)差 止 請 求 の法 的 根 拠 と して の 人格 権 と水利 用 権 限 (2)水 資 源 の要 保 護 性 に基 づ く差 止請 求
(3)流 域 にお け る水 秩序 5水 資 源 をめ ぐる公 と私
(1)流 水 の公 共 性 と排他 的利 用
(2)水 資 源 の公 共 性 と水利 用 権 限 の私 権 性 6む す び にか え て
1は じめ に
近 時 、 水 資 源 の保 全 と利 用 の あ り方 を 論 じ る際 に は、 健 全 な 水 循 環 系 の 構 築 また は か か る水 循 環 の確 保 が 重 要 な理 念 と して 認 識 され て い る。 「 健 全 な水 循 環 系 」 の概 念 につ い て は、 健 全 な 水 循 環 系 構 築 に 関 す る関 係 省 庁 連 絡 会 議 に よ っ て 、 「 流 域 を 中心 と した一 連 の水 の 流 れ の 過 程 に お い て、 人 間社 会 の 営 み と環 境 の 保 全 に果 た す水 の機 能 が 、 適 切 なバ ラ ンス の 下 に とも に確 保 さ れ て い る状 態 」
り
と定 義 さ れ て い る 。
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中央 環 境 審 議 会 意 見 具 申 を受 けて 閣議 決 定 され た平 成12年 の第 二 次 環 境 基 本 計 画 お よび 平 成18年 の第 三 次 環 境 基 本 計 画 に お い て も、 「 環 境 保 全 上 健 全 な水 循 環 の 確 保 に 向 け た取 組 」 が 今 後 重 点 的 に 取 り組 む べ き戦 略 的 プ ロ グ ラ ム の ひ と つ と して位 置 づ け られ 、 流 域 を 単 位 と した 水 循 環 計 画 の 策 定 の 必 要 性 が 示 唆 さ
z)
れ て い る。
しか しな が ら、 水 循 環 に 関 す る施 策 に つ い て は 、 現 在 の と こ ろ一 般 化 され た 方 策 は存 在 して い な い 。 各 地 域 にお け る流 域 の水 循 環 系 の健 全 化 に 向 けた 具 体
3)
的 な施 策 に つ い て 、 そ の 取 り組 み の方 向性 が示 され た 段 階 にす ぎ な い の で あ る。
一 方 、健 全な水循環 系の構築 と水資源の利用 との関係 については、前者 によっ て 後 者 が制 限 さ れ る と い う大 枠 の 理 解 に と ど ま っ て お り、 両 者 の あ り方 を検 討 した うえ で 、 そ れ らを 接 合 す る法 理 論 に つ い て十 分 な 議 論 が な され て い な い現 状 に あ る。 そ こで 、 河 川 水 お よび 地 下 水 の 法 的性 質 、 水 循 環 の 重 要 な構 成 要 素 で あ る地 下 水 の利 用 制 限 に 関 す る理 論 、 地 表 の水 循 環 の 起 点 で あ る水 源 の 保 護 の た め の 法 的 手 段 、 流 水 採 取 の 可 否 を判 断 す る た め の 水 の性 質 決 定 論 で あ る公 水 私 水 区分 論 等 に つ い て 、 水 循 環 を前 提 と した法 理 論 を考 察 す る必 要 が あ る と 考 え る 。
本 稿 は 、 健 全 な水 循 環 系 構 築 の た め に 求 め られ る水 資 源 の保 全 と利 用 に関 す る基 礎 理 論 につ い て 考 究 す る こ とを 目的 とす る。 具 体 的 に は 、 河 川 水 お よ び地 下 水 の法 的 性 質 な らび に健 全 な 水 循 環 を確 保 し う る地 下 水 の 利用 制 限 に 関 す る 法 理 を検 討 し た あ とで 、 水 源 保 護 の た め の 差 止 請 求 の 法 的構 成 につ い て 論 じ、
最 後 に水 資 源 の公 共 性 とそ の排 他 的 利 用 を接 合 す る理 論 につ い て 究 明 す る こ と と した い 。
2流 水 の 性 質決 定
(1)河 川 の 流 水 の法 的 性 質
現 行 法制 上 、 河 川 の 流 水 の 法 的 性 質 に つ い て直 接 定 め た規 定 は存 在 しな い。
た だ 、 明治23年 に公 布 され た 旧民 法 は 、 流 水 につ い て 、 つ ぎ の よ うな 条 文 を用 意 して い た 。
す な わ ち、 旧民 法 財 産 編25条 は、 「 公 共 物 トハ 何 人 ノ所 有 ニ モ 属 スル コ トヲ得
水 資 源 の保 全 と利用 に 関す る基 礎 理 論
77ス シ テ 総 テ ノ 人 ノ 使 用 ス ル コ ト ヲ得 ル モ ノ ヲ謂 フ例 ヘ ハ 空 気 、 光 線 、 流 水 、 大 洋 ノ 如 シ 」 と規 定 し て い た の で あ る 。 つ ま り、 旧 民 法 で は 、 流 水 は 、 だ れ の 所 有 に も属 せ ず 、 だ れ で も そ れ を 使 用 す る こ と が で き る 「 公 共 物 」 と解 釈 し た の で あ る 。
本 条 の 考 え 方 は 、 フ ラ ン ス 民 法 を 通 じ て 、 ロ ー マ 法 の 影 響 を 強 く受 け て い る 。 す な わ ち 、 ロ ー マ 法 に い う 「 共 通 物(rescommunes)」 概 念 が 日 本 法 に 影 響
を 与 え た と指 摘 で き る の で あ る 。 ロ ー マ 法 に い う 「 共 通 物 」 と は 、 自 然 法 上 、 人 類 の 共 通 の 物 と さ れ 、 か つ 、 す べ て の 市 民 の 利 用 に 供 さ れ た 物 を い い 、 空 気 、
4)
流 水 、 海 、 海 岸 が これ に該 当 す る。
旧 民 法 以 降 の 立 法 に お い て 、 これ と異 な る立 場 を明 確 に 示 した 規 定 はな い。
そ うで あ る以 上 、 日本 の現 行 法 制 に お い て 、 流 水=「 公 共 物 」 とす る旧 民 法 の 見 解 は 、 現 行 民 法 に継 受 さ れ て い る とい って も過 言 で は な い 。 した が って 、 旧
5)
民 法 財 産 編25条 を根 拠 と して流 水=「 公 共 物 」 と解 釈 す る こ とが 妥 当 で あ ろ う。
この よ う に考 え る な らば 、 河 川 の流 水 につ い て 私 権 の 目的 とな る こ とが で き な い と定 め た河 川 法2条2項 は、 河 川水 につ き何 人 の 所 有 に も属 しな い 旧 民 法 の い う 「 公 共 物 」 と解 して 私 権 を排 除 し、 河 川 管 理 者 の管 理 の も とに 置 い た と 理 解 す る こ とが で き る。 そ して 、 私 権 の 目的 とは な ら な い 河 川 の 流 水 は、 原 則
と して 自由 に使 用 で き るが(一 般 使 用)、 そ の流 水 を継 続 的 、 排他 的 に使 用 す る た め に は 、 そ の よ う に使 用 して き た慣 行 に よ っ て 水 利 権 が成 立 す る か(慣 行 水 利 権)、 また は河 川 管 理 者 か ら流 水 占用 の 許 可 を受 け る こ と(許 可 水 利 権)が 必 要 とさ れ る ので あ る。
(2)地 下 水 の法 的 性 質
河 川 の流 水 を 旧 民 法 の い う 「 公 共 物 」 と解 す るな ら ば 、 地 下 の 流 水 た る地 下 水 は どの よ うに 捉 え られ るで あ ろ うか。 河 川 の 流水 と同列 に扱 い 、 「 公 共 物 」 と 解 すべ きで あ ろ うか 。
地 下 水 の 法 的性 質 に関 す る解 釈 を大 別 す る と、 地 下 水 を 土 地 所 有 権 との 関 係 で 位 置 づ け よ う とす る考 え 方 と、 地 下 水 を土 地 所 有 権 とは切 離 して独 立 した水
の
資 源 と して 捉 え よ う とす る 見 解 が あ る。
前 者 は、 民法207条 を根 拠 と して、 土 地 所 有 権 は そ の地 中 に存 在 す る地 下 水 に
78
対 す る 支 配 権 能 を 内 包 す る か ら、 土 地 所 有 者 は地 下水 を利 用 す る こ とが で き る
7)
と解 す る考 え方 で あ る。 地 下 水 の 利 用 に 関 して最 初 に言 及 した判 例 で あ る大 判 明 治29年3月27日 民録2輯3巻lll頁 は 、 「 地 下 二 浸 潤 セ ル水 ノ使 用 権 ハ 元 来 其 土 地 所 有権 二 附 従 シ テ 存 ス ル モ ノ ナ レバ 其 土 地 所 有 者 ハ 自 己 ノ所 有 権 行 使 上 自 由 二 其 水 ヲ使 用 ス ル ヲ得 ルハ 蓋 シ当 然 ノ条 理 ナ リ トス 」 と して 、 土 地 所 有 者 が 自 由 に使 用 で き る と判 示 して い る。
これ に 対 して 、 後 者 は、 地 下 水 を河 川 の 流 水 と同 列 に取 り扱 い 、 そ れ を 公 水
a)
と解 して 、 公 共 的管 理 の も とに置 か れ るべ き で あ る とす る見 解 で あ る。 当説 は 、 地 表 水 と地 下 水 を統 合 的 に把 握 す る考 え 方 に親 和 的 で あ る と と も に、 地 下 水 の 採 取 制 限 を 定 め た条 例 に よ る地 下 水 管 理 の 実 態 に適 合 す る理 論 で あ る と も指 摘
9) され て い る。
土 壌 は 土 地 の構 成 部 分 で あ るが 、 そ の 中 に含 有 され る水 を 除 外 して 土地 は成 り立 た な い 。 農 地 と して は も と よ り、 宅 地 と して も土 地 は土 壌 中 の水 な くして は存 在 しえ な い こ とを 軽 視 す べ きで は な い の で あ る。 地 下 水 と密 接 な 関係 に あ る土 壌 に 関 す る制 定 法 で あ る土 壌 汚 染対 策 法 は、 地 下 水 の法 的性 質 を考 察 す る に際 し有益 な視 座 を 供 与 す る。
土 壌 汚 染 対 策 法7条1項 は 、 土 壌 汚 染 の 原 因 者 が 特 定 で き 、 そ の者 に 責 任 を 追 及 す る こ とが 相 当 で あ る場 合 に は行 為 責 任 を 問 う こ とが で き るが 、 そ れ 以 外 の 場 合 に は 土 地 所 有 者 が 責 任 を 負 わ ね ば な ら な い 旨 を定 め る。本 条 は 、汚 染 原 因 者 が 特 定 で き な い 場 合 に誰 も責 任 を負 わ ず 、 制 度 に穴 が あ くこ とを 防 ぐた め
10)
に設 け られ た 規 定 で あ る とい わ れ て い る。
土 壌 汚 染 の 拡 散 は 、 土 壌 水 を 含 む 地 下 水 を経 由 して な され る こ とが 多 い が 、 汚 染 の 除 去 、 拡 散 防 止 等 の措 置 を土 地 所 有 者 等 に 負 担 させ て お き なが ら、 他 方 で 地 下 水 に は土 地 所 有 権 の効 力 が 及 ぼ な い と して地 下 水 の利 用 権 限 を否 定 した の で は 、 土 地 所 有 者 に地 下 水 の 採 取 利 益 は認 め な い が 、 土 壌 汚 染 の責 任 は 追 及 す る とい う不 公 平 な 結 果 を招 くこ とに な る。 土 壌 汚 染 の 責 任 を 土 地 所 有者 等 に 負 わせ るか ら に は 、 土 壌 汚 染 に 密 接 に 関 連 して い る地 下 水 の 利用 権 限 も同 一 次 元 で 扱 う こ とが 合 理 的 で あ ろ う。 した が って 、 土 壌 汚 染 の責 任 お よ び地 下 水 利 用 の 権 限 は 並 列 的 に 土 地 所 有 者 の も とに あ る と解 す る ほ うが 整 合 的 で あ る と考
n)
え られ る の で あ る 。
水 資 源 の保 全 と利用 に 関す る基礎 理 論
地 下 水 の 特 質 は 、 流 動 性 と地 盤 支 持 機 能 に あ る。 地 下 水 を 土 地 の構 成 部 分 と す る見 解 に異 を 唱 え る学 説 は 、 地 下 水 は 流 動 性 を 有 す る か ら支 配 に適 さな い と い う。 しか し、 地 中 に存 在 す る物 質 が流 動 的 か 固 定 的 か とい う こ とに よ っ て、
土 地 の 本 質 に変 化 が 生 じる わ けで は な い 。 流 出 お よび 流 入 して くる もの が 同質 で あ る限 り、 法 的 に は土 地 の 構 成 部 分 は 同 一 性 を保 持 して い る と解 す べ きで あ
にエ
ろ う。 この 意 味 に お いて 、 地 下 水 は土 地 の 流 動 的構 成 部 分 で あ る と称 す る こ と が で き るの で あ る。
地 下 水 は、 地 盤 を支 持 す る とい う重要 な 機 能 も担 っ て い る。 地 下 水 の 過 剰 揚 水 に よっ て 地 盤 沈 下 が 生 じた 場 合 は 、地 下 水 の地 盤 支 持 機 能 の 喪 失 に よ る地 盤
13)
支 持 権 の 侵 害 と捉 え、 土 地 所 有 者 が 直 接 、 侵 害 者 に対 して物 権 的 請 求 権 を行 使 す る と と もに不 法行 為 と して 法 的救 済 を 求 め う る と解 す る こ とが 妥 当 で あ ろ う。
こ の よ うな 立 論 は 、 地 下 水 が 土 地 の構 成 部 分 で あ る こ とを 前 提 に成 り立 っ て い る。
地 下 水 の 法 的性 質 を土 地 の 構 成 部 分 と解 す れ ば 、 地 下 水 障 害 が 生 起 した 土 地 の 所 有 者 が そ の原 因 者 に 対 して 直 接 的 に 物 権 的請 求 権 を行 使 す る と と も に不 法 行 為 に基 づ く損 害賠 償 を請 求 して い くこ とが で き るが 、 そ の 性 質 を公 水 と解 す る と、 地 下 水 の管 理 責 任 が 前 面 に 出 る こ とに な り、 被 害 者 が 原 因 者 に 対 して直 に救 済 を求 め て い くこ とは 、 二 次 的 な位 置 づ け とな ら ざ るを 得 な い で あ ろ う。
法 的救 済 の あ り方 と して は 、 被 害 者 が原 因 者 に対 して 直 接 に 追 及 で き る とい う
ユ ラ
本 来 的 な構 造 を基 本 に据 え るべ きで あ る と考 え るの で あ る。
地 下 水 を公 水 と解 す る 立場 は、 そ れ を 地 下 資 源 の 一 種 と捉 え、 公 的 管 理 の も とに置 か れ るべ きで あ る と考 え る。 しか し、 当説 に関 して は 、 地 下 水 の 管 理 者 が そ の 管 理 責 任 を 問 われ る こ とにつ い て 看 過 さ れ て は な らな い 。 公 水 とされ る 河 川 水 の 場 合 は 、 河 川 管 理 者(公 共 団体)が そ れ を管 理 し、 また そ の 責 任 も負 う とい う構 図 の も とで 河 川 水=公 水 が成 り立 っ て い る の で あ る。 した が っ て、
地 下 水 を 公 水 と解 す る こ とは 、 地 下 水 が 管 理 の対 象 とさ れ 、 管 理 者 が その 責 任 を問 わ れ る こ とを 意 味 す る の で あ る 。
地 方 公 共 団 体 が 条 例 に よ っ て 地 下 水 を 公 水 と規 定 した と き に は、 河 川 水 と同 様 に、 地 下 水 に つ い て も地 方 公 共 団体 が そ の管 理 責 任 を負 わ な け れ ば な らな い 。
しか しな が ら、 不 可 視 か つ流 動1生を 有 す る地 下 水 を管 理 す る こ とは容 易 で は な
80
い 。 地 下水 を管 理 す るた め に は 、 そ の流 動 シ ス テ ム を解 明 し、 地 下 水 が あ る程
度 管 理 可 能 な状 態 に な って い る こ とが要 請 され る。地 下 水 保 全 の た め に地 下 水 を公 水 と定 めて 、地 方 公 共 団体 の 管 理 の も とに置 くこ とは、 法 理 論 的 に は 地 下 水 の 管 理 可 能 性 を 前 提 と しな けれ ば成 り立 た な い か らで あ る。
3健 全 な 水 循環 の確 保 と地 下 水 の 利 用 制 限 に 関す る法 理
(1)地 下 水 に関 す る 共 同 利 用 の 理 論
地 下 水 を 土 地 の流 動 的 構 成 部 分 と解 す るな らば 、 地 下 水 流 が 存 す る 土地 の 所 有 者 が 地 下 水 の利 用 権 限 を有 す る こ とに な るが 、 どの よ うな視 点 か ら この 地 下 水 の 利 用 権 限 を制 限 す れ ば よい の で あ ろ うか 。 そ れ は、 地 下 水 の 水 脈 が 同 一 で あれ ば 、 そ の 採 取 は 水 脈 の 同一 性 に よっ て 制 限 を 受 け ざ る を え な い点 に 求 め ら れ るべ きで あ る。
判 例 に お いて も、 水 脈 が 同 じで あ る地 下 水 につ い て 、 そ の水 脈 が 存 す る土 地 の 所 有 者 の 共 同資 源 と捉 え 、 そ こか ら地 下 水 利 用 の 合 理 的制 約 が 導 出 され る と 解 す る松 山地 宇 和 島 支判 昭 和41年6月22日 下 民 集17巻5=6号490頁 や 、 地 下 水 は水 脈 を 通 じ て流 動 す る もの で あ り無 限 で は な い との 理 由 か ら地 下 水 利 用 権 限 は合 理 的 制 約 を受 け る とす る名 古 屋 高 判 平 成12年2月29日 判 タ1061号178頁 が あ る 。
土 地 所 有 者 に よ る地 下 水 利 用 の 制 限 の根 拠 を そ の水 脈 の 同 一性 に求 め る な ら ば、 具 体 的 に そ の制 限 はつ ぎ の よ うに説 示 で き る。 す な わ ち 、 同 一 の地 下 水 流
I6)
が 存 す る土 地 の所 有 者 は、 共 同 で そ の地 下 水 を利 用 しな けれ ば な らな い 。 つ ま り、 同一 の 地 下 水 流 が 存 す る土 地 の 所 有 者 は地 下 水 利 用 にっ い て 共 同 で 利 益 を 享 受 しな けれ ば な らな い の で あ る。 前 掲 の 判 例 で 示 され た地 下水 利 用 権 限 の 合 理 的 制 約 と は、 こ こに い う同一 地 下 水 流 が 存 す る土 地 の 所 有 者 間 に お け る地 下 水 の 共 同 利 用 に よ る制 限 と解 す る こ とが で き よ う。 要 す る に 、 地 下 水 は 、 その 利 用 が 同 一 地 下 水 流 の あ る土 地 の 所 有 者 の 共 同 の 利 益 享 受 に よ って 制 限 を 受 け
にの
る、 土 地 の 流 動 的構 成 部 分 で あ る と解 す る こ とが で き る の で あ る。
カ リ フ ォル ニ ア 州 を は じめ とす る い くつ か の ア メ リカ 合 衆 国 の 法 域 は 、 地 下
水 の 利 用 に 関 して相 関 権 の ル ー ル を適 用 して い る。 同 ル ー ル は 、 地 下 水 が 存 す
水 資 源 の保 全 と利用 に 関す る基礎 理 論
81る土 地 の す べ て の所 有 者 が地 下 水 盆(waterbasin)に っ いて 公平 な共 有 を主 張
で き る相 関 権 を 有 す る とい う準 則 で あ る。 地 下 水 が 存 す る 土地 の 所 有 者 相 互 間 に お い て そ の公 平 な 共 有 を要 求 で き る とす る相 関 権 の ル ー ル の 考 え方 は、 地 下 水 脈 の 同 一 性 を論 拠 と して地 下 水 利 用 を 限 界 づ け る本 稿 の ア プ ロ ー チ と同 根 の
1J)
も の で あ る と考 え ら れ よ う 。
(2)健 全 な 水 循 環 の 確 保 の理 念 と土 地 所 有 権
前 述 した よ うに 、 土 地 所 有 者 に よ る地 下 水 利 用 の 制 限 の根 拠 を そ の 地 下 水 脈 の 同一 性 に求 め るな ら ば 、 同 一 の 地 下 水 流 が 存 す る土 地 の所 有 者 は、 共 同 で そ の 地 下 水 を利 用 しな けれ ば な ら な い と解 され る。 この 同一 地 下 水 流 が 存 す る土 地 の所 有 者 間 に お け る地 下 水 の 共 同利 用 の 考 え方 は、 健 全 な 水 循 環 の確 保 の理 念 に立 脚 して は じめ て 持 続 性 を有 す る こ とに な る。 な ぜ な ら ば、 い くら同 一 の 地 下 水 流 が 存 す る土 地 の所 有 者 間 で 地 下 水 を共 同 利 用 す る とい っ て も、 そ の共 同利 用 に よ っ て地 下 水 障 害 が 発 生 し、健 全 な水 循 環 が 破 壊 され て し ま え ば、 そ の 利 用 は 持 続 的 か つ 安 定 的 に 維 持 で きな くな るか らで あ る。
した が っ て、 地 下 水 の利 用 は、 そ の継 続 的 利 用 に よ っ て も地 下 水 障 害 が 生 起 され る こ とな く、健 全 な水 循 環 が 確 保 され る こ と を第 一 義 と して 解 釈 され ね ば な らな い の で あ る。 それ ゆ え 、 健 全 な水 循 環 の確 保 とい う理 念 か ら、 健 全 な水 循 環 を 損 な うよ うな 地 下 水 の 利 用 を して は な らな い とい う規 範 が 導 き出 され る
zo)
の で あ る。
そ れ で は、 か か る規 範 の 理 論 的 根 拠 を どこ に 求 め るべ きで あ ろ うか 。 こ の点 にっ い て は、 土 地 と水 の管 理 手 法 で あ る統 合 的土 地 ・水 資 源 管 理 お よび 土 地 の 特 性 に基 づ く所 有権 の 制 約 の 観 点 か ら考 察 す る こ とが 有 益 で あ る。
第1に 、 水 資 源 管 理 を め ぐって は 、近 時 、 土 地 利 用 が 水 循 環 に い か な る影 響 を及 ぼ す か とい う問 題 が 関 心 を集 め て い る。 水 は 土 壌 に浸 透 し土 壌 の な か を動 くた め 、 土 壌 が 劣 化 す る と、 水 の 量 や質 に影 響 が 出 る こ とに な る。 土 壌 劣 化 に よ っ て流 域 の水 文 学 的 特 性 や 水 循 環 の状 態 も変 化 す る の で あ る。 そ こで 、 統 合
2U
的 水 資 源 管 理(IWRM)に お い て は、 土 地 と い う構 成 要 素 も統 合 す る こ とが 不
zz)
可 欠 で あ る とい う認 識 が 広 が り、 「 水 資 源 、 土 地 お よ び そ の他 の 環 境 資 源 の 公 平
で 、 効 率 的 で 、 か つ 持 続 可 能 な 利 用 の た め に、 調 和 の とれ た 計 画 を立 て て 管 理
82
23)34)25)
す る」 とい う統 合 的 土 地 ・水 資 源 管 理(ILWRM)の 重 要 性 が 指 摘 され て い る。
水 資 源 管 理 に 関 す る議 論 の 際 に は、 統 合 的 水 資 源 管 理 の思 考 を基 盤 に 置 くこ とが 肝 要 で あ る が 、 な か で も水 資 源 と土 地 利 用 の相 互 関 係 を 十 分 に考 慮 し、 水 と土 地 の維 持 管 理 を 統 合 的 に み て い く視 座 が 不 可 欠 で あ る。 水 利 用 は 土 地 を受 け皿 と して 成 り立 っ て い る うえ 、 水 循 環 も土 地 の存 在 な く して は あ りえ な い。
さ らに 、地 下 水 は水 循 環 の過 程 の な か で 、 地 中 の水 脈 と して水 循 環 の健 全 性 を 支 え る主 役 的 な役 割 を 果 た して い る。 この よ うに 土 地 と水 循 環 は密 接 不 可 分 な 関 係 に あ るの で あ る。 それ ゆ え 、 健 全 な 水循 環 の確 保 の 理 念 に つ い て は 、 土 地 利 用 と水 循 環 の相 互 関 係 が 重 要 な要 素 とな る。 流 域 にお け る土 地 利 用 の形 態 が 水 循 環 に影 響 を与 え る こ とを顧 慮 す るな ら ば、 水 循 環 の 健 全 性 の 確 保 を 論 拠 と
zs)
して 当 該 流 域 に お け る土 地 利 用 を規 制 す る こ と も視 野 に入 れ る こ とが で き よ う。
要 す る に 、 土 地 利 用 の 規 制 の あ り方 を考 究 す る こ と に よ り、 健 全 な水 循 環 系 構 築 の 方 途 を 探 る こ とが で き る と い っ て も過 言 で は な い の で あ る。
第2に 、 土 地 の特 性 に基 づ く所 有 権 の 制 約 につ い て 、 土 地 基 本 法2条 の 考 え
z7)
方 を参 考 に 展 開 して い き た い 。
土 地 基 本 法2条 は 、 「 土 地 は 、現 在 及 び 将 来 に お け る国民 の た め の 限 られ た 貴 重 な資 源 で あ る こ と、 国 民 の諸 活 動 に と って 不 可 欠 の 基 盤 で あ る こ と、 そ の 利 用 が 他 の 土 地 の利 用 と密 接 な 関 係 を有 す る も の で あ る こ と、 そ の 価 値 が 主 と し て 人 口及 び 産 業 の動 向 、 土 地 利 用 の 動 向 、 社 会 資 本 の 整 備 状 況 そ の他 の社 会 的 経 済 的条 件 に よ り変 動 す る もの で あ る こ と等 公 共 の 利 害 に 関係 す る特 性 を 有 し て い る こ とにか ん が み 、 土 地 につ い て は、 公 共 の福 祉 を優 先 させ る もの とす る」
zs)
と定 め、 土 地 に つ い て の 公 共 の福 祉 優 先 に 関 して規 定 す る。 当 法 条 で は 、 「 土 地 にっ い て は 、 公 共 の 福 祉 を優 先 させ る」 との 文 言 の 前 に、 他 の 財 産 に は み られ
25)3U)
な い土 地 の 特 性 に っ い て 指 摘 され て い る点 が 重 要 で あ る。 これ を 文 理 解 釈 す れ ば、 土 地 が もっ 他 の 財 産 に は み られ な い 特 性 を論 拠 に して、 公 共 の福 祉 優 先 を 要 請 して い る と解 す る こ とが で き る。 そ して 、 土 地 基 本 法 制 定 以 前 に も、 土 地 収 用 法 、都 市 計 画 法 、 建 築 基 準 法 等 に よ って 、 土 地 に対 す る私権 と公 共 の 福 祉 との 調 整 が 図 られ 、 私 権 が 制 限 され て き た こ とを考 慮 す れ ば 、本 条 も他 の 法 律 の それ と同 様 に解 釈 す る こ と も可 能 で あ る。
と こ ろが 、 この 点 に つ き、 土 地 利 用 に 対 す る規 制 は、 公 共 の福 祉 の見 地 か ら
水 資 源 の保 全 と利用 に 関す る基礎 理 論
83必 要 最 小 限 の規 制 に限 られ るべ きで あ る とす る 「 必 要 最 小 限 規 制 の原 則 」 に対
3U
す る修 正 で あ る と解 す る学 説 が あ る 。 当 説 は、 必 要 最 小 限 の 内 容 お よび 意 味 に つ い て 、 土 地 の 有 す る特 性 に 鑑 み れ ば他 の 私 権 の 場 合 と決 して 同 じで はな い と 説 述 し、 「 『 土 地 』 とい う資 源 を、 将 来 の 世 代 と共 々 に有 効 に 利 用 す る こ とを考
え よ う とす る発 想 に立 っ な らば、(中 略)『 土地 の 節 約 的 利 用 』 『 将 来 に備 え て の リザ ー ヴ』 とい う 目的 もま た 、 土 地 に 対 す る私 権 に優 先 す る 『 公 共 の福 祉 』 で あ る とい う こ とが 、 承 認 さ れ な けれ ば な ら な い」 と言 及 す る。 す な わ ち 、 従 来 の 土 地 関連 立法 の 前 提 と して 存 在 した よ うな 意 味 にお け る 「 必 要 最 小 限 の 規 制 」 で は な く、 それ を 超 え た規 制 の 原 理 を 土 地 基 本 法2条 に 求 め て い る とい え るで
321
あ ろ う。 そ れ は 、 現 在 に お け る土 地 利 用 の み で は な く、 将 来 にお け る(将 来 の 世 代 の た め の)土 地 利 用 も視 野 に入 れ た 土 地 所 有 権 の 制 限 理 論 な の で あ る。
この よ うな 立 場 は、 環 境 法 の領 域 で は親 和性 の あ る考 え方 で あ る。 す な わ ち 、 土 地 所 有権 と自 然 環 境 との 関 連 性 を 重視 し、 土 地 の 公 共 性 に 基 づ き そ の 所 有 権
を制 限 す る こ とに よ っ て環 境 保 全 の理 論 を導 き出 す の で あ る。 た とえ ば 、 土 地 所 有 権 者 の 自 由 の 尊 重 が 、 開 発 を進 め る側 に有 利 に用 い られ 、 所 有 権 の 行 使 で あ る な ら ば環 境 に 悪 影 響 を 与 えて も構 わ な い と理 解 され た た め に、 際 限 の な い 開 発 が な され 、 公 害 の 発 生 と 自然 環 境 の 破 壊 が もた ら さ れ た との 反 省 か ら、 環 境 共 同 利用 権 の承 認 に よ っ て 土 地 所 有権 を制 限 し よ う とす る見 解 が あ る。 この 説 に よれ ば、 土 地 の 所 有 権 を 環 境 共 同利 用 権 の対 象 と捉 え 、 土 地 所 有 権 が 環 境 共 同利 用 権 に よっ て 制 限 を受 け る と し、環 境 共 同 利 用 権 は公 共 性 を 有 す るか ら、
そ の制 限 は公 共 性 を帯 び る の で あ り、 土 地 所 有 権 に内 在 す る制 限 で もあ る と説
t)
述 す る。 また 、 土 地 所 有 者 に は 生 態 系 を 害 す る よ うな 土 地 利用(開 発)の 制 限 が 課 せ られ 、 土 地 の 生 態 学 的 な 公 共 性 ゆ え に 、環 境 保 護 の た め の 公 共 的 規 制 の
34)
基 礎 が 与 え られ る と解 す る学 説 もあ る。
か か る見 地 と同 次 元 で 土 地 所 有 権 を捕 捉 し、水 循 環 を支 え る土 地 の 特 性 お よ び そ の公 共 性 を理 由 に、 健 全 な 水 循 環 の確 保 の理 念 を土 地 所 有 権 の 内 在 的 制 約 と解 す る こ とが で き る。 す な わ ち、 健 全 な 水 循 環 の確 保 とい う観 念 を 地 下 水 利 用 権 限 の 基 盤 で あ る土 地 所 有 権 に対 す る内 在 的制 約 と捉 え る こ とに よ り、 地 下 水 利 用 を水 循 環 の健 全 性 に よ って 制 限 す る規 範 で あ る、 健 全 な 水 循 環 を損 な う
よ うな地 下 水 の 利用 を して は な らな い とい うル ー ル を導 出 す る こ とが 妥 当 で あ
84
る と考 え る の で あ る 。
(3)健 全 な 水 循 環 を 確 保 しう る 地 下 水 利 用 制 限 の 具 現 化
地 下 水 は 健 全 な水 循 環 を損 な わ な い よ う に共 同 で 利 用 され な けれ ば な ら な い が 、 問 題 は 地 下 水 の 共 同利 用 の 具 体 的 内 容 で あ る。 本 来 な ら、 同 一 地 下 水 流 が 存 す る 土地 の 所 有 者 間 の 合 意 に よ っ て、 当 該 流 域 の 水 循 環 の健 全 性 を確 保 し う る地 下 水 の 共 同利 用 の 具 体 的 内 容 が 決 定 され るべ き で あ ろ うが 、 地 下 水 は 不 可 視 で あ るた め、 どの 土 地 所 有 者 との 問 に 共 同 利 用 関 係 が 成 り立 つ のか 、 また 、 それ が 明 らか に な っ た と して も、 各 土 地 所 有 者 が 採 取 し う る適 切 な水 量 を掌 握 す る こ とは 容 易 で は な い。 しか も、 水 利 用 の 用 途 は飲 用 か ら工 業 用 ま で様 々 で あ り、 な か に は水 道 事 業 者 が地 域 住 民 の 水 道 水 源 と して 利 用 す る場 合 もあ る。
か か る 事情 を考 慮 す れ ば、 同一 地 下 水 流 が 存 す る土 地 の 所 有 者 が 地 下 水 の 共 同 利 用 の 内容 を具 体 的 に 決 め るの は至 難 の 業 で あ ろ う。
そ こで 、 地 方 公 共 団 体 が そ の 地 域 の水 環 境 を総 合 的 に勘 案 し、 地 下 水 の 保 全 と合 理 的 利 用 の調 和 を 図 る条 例 を制 定 す る こ とに よ って 、 健 全 な 水 循 環 を 確 保 し うる地 下 水 利 用 の 具 体 的 基 準 を提 示 す る こ とは 、 現 実 的 か っ 有 益 な 手 立 て と して 容 認 され よ う。 この よ うな 条 例 が定 め る地 下 水 の 採 取 制 限 等 は、 水 循 環 の 健 全 性 を確 保 し う る土 地 所 有 者 間 の 地 下 水 の 共 同 利用 の 考 え 方 を具 現 化 して い る と解 され る。 そ して 、 か か る理 解 に よ って 、 健 全 な 水 循 環 の確 保 の概 念 が 、 地 下 水 の保 全 と合 理 的 利 用 の調 和 の 考 え 方 の 基 底 に据 え られ た 理 念 と して 確 立
ゆ
され る こ と に な る の で あ る。
地 下 水 に 関 す る 具 体 的 諸 問題 は、 当該 地 域 特 有 の 問 題 で あ る。 地 下 水 の 酒 養 が 十 分 に な され る地 域 とそ うで な い地 域 、 水 道 水 源 を地 下 水 に頼 っ て い る地 域 とそ うで な い地 域 、 また 、 地 域 の 地 形 、 地 質 構 造 、 天 候 等 に よ って も、 地 下 水 を含 む水 循 環 は大 き く影 響 を受 け る。 この よ うな地 下 水 の地 域 特 性 を認 識 した う えで 、地 下 水 の保 全 と利 用 の 要 請 を調 整 す る こ とが 不 可 欠 で あ る。
地 域 特 性 を論 ず るに あた っ て は、 行 政 単 位 と して の 地 方 公 共 団 体 を念 頭 に置
くの で は な く、 水 循 環 の 観 点 か ら流 域 の概 念 を用 い て 議 論 す る必 要 が あ る。 流
域 とは 、 陸 域 に お け る水 文 循 環 に よ っ て 区 別 さ れ る地 域 の こ と を い うが 、 健 全
な 水 循 環 を 確 保 す るた め に は 、 流 域 を単 位 と した水 の 動 き を み る こ とが 肝 要 で
水 資 源 の保 全 と利用 に 関す る基礎 理 論85
ss)
あ る か らで あ る 。 また 、 流 域 に つ い て は 地 域 の労 働 市 場 を形 成 す る社 会 経 済 的 な取 引範 囲 と も重 な る傾 向 も指 摘 さ れ て お り、 河 川 流 域 の連 携 をベ ー ス と した
の
新 た な政 策 の展 開 に期 待 が寄 せ られ て い る。
当該 流 域 に お い て 、 健 全 な 水 循 環 の確 保 の 見 地 か ら地 下 水 の 採 取 が 許 され る か 否 か 、 ま た許 容 され る とす れ ば どの くら い採 取 可 能 か を 判 断 す る に あ た っ て は、 全 国 一 律 的 な基 準 で 規 制 す る こ とは 、 流 域 の 水 循 環 の健 全 化 に と って 適 切 で あ る とは言 い 難 い 。 ま た 、 地 下 水 へ の 依 存 は、 社 会 経 済 状 況 に よ っ て も左 右 され る こ とが 容 易 に推 測 で き る。 そ れ ゆ え、 社 会 経 済 的 背 景 を包 む流 域 の 特 性
98)
を十 分 に考 慮 して 、 地 下 水 の 保 全 と利 用 の あ り方 を考 え る こ とが 重 要 で あ る。
した が っ て 、 制 定 法 に よ っ て 画 一 的 に地 下 水 採 取 を規 制 し、 国 家 が そ の 採 取 権 限 を付 与 す る の で は な く、流 域 の 健 全 な 水 循 環 の確 保 の理 念 に立 脚 した 地 下 水 の 保 全 と合 理 的 利用 の 調 和 を 図 る条 例 に よ っ て地 下 水 採 取 を 規 制 し、 地 方 公 共 団 体 が そ の 採 取 権 限 を与 え る こ とが 望 ま しい。 そ の た め に は 、 各 流 域 にお け る 地 下 水 の保 全 と利用 に関 す る施 策 に つ い て 定 め う る権 限 を 、 制 定 法 に よ っ て地
39)
方 公 共 団 体 に委 ね る こ とが要 請 され る。
な お 、流 域 に お け る地 下 水 の 保 全 と利 用 に 関 す る施 策 の 主 体 は、 実 際 に地 下 水 流 に接 す る地 方 公 共 団 体 だ けで は な く、 水 循 環 に影 響 を 与 え うる土 地 が 属 す
40)
る地 方 公 共 団 体 で あ る 限 り、 広 くそ の 主 体 性 を認 め るべ きで あ ろ う。 健 全 な水 循 環 系 構 築 の た め に は、 流 域 に お け る土 地 と水 の 統 合 的 な 管 理 が 必 要 とされ る か らで あ る。
4水 源 保 護 の た め の差 止 理 論
(1)差 止 請 求 の 法 的 根 拠 と して の 人 格権 と水 利 用 権 限
地 下 水 に関 す る最 も深 刻 な 問 題 は 、水 道 の 水 源 地 に お け る地 下 水 の 汚 濁 お よ び 枯 渇 の お それ で あ る。 この 問 題 に対 処 す るた め、 昭 和29年 に岩 手 県 宮 古 市 が
「 水 道 水 源 保 護 条 例 」 を制 定 して 以 来 、 昭和60年 か ら平 成10年 頃 を ピー ク と し
て 多 数 の 地 方 公 共 団 体 で 同様 の 条 例 が定 め られ て きた 。 そ の 背 景 に は 、廃 棄 物
処 理 施 設 の 建 設 ・稼働 に よ る地 下水 の水 質 汚 濁 お よび 水 量 減 少 の 危 険性 を め ぐっ
て 紛 争 が 多 発 した こ とが あ げ られ る 。 実 際 、 平 成4年 以 降 、 地 下 水 の 水 質 汚 濁
86
の お そ れ 等 を根 拠 に 廃 棄 物 処 理 施 設 の建 設 ・操 業 の 差 止 請 求 を 認 容 す る裁 判 例 が 相 次 い で 現 わ れ た 。
この よ う な廃 棄 物 処 理 施 設 を め ぐ る裁 判 例 の多 くが 差 止 請 求 を肯 認 した 要 因 は、 裁 判所 が水 源 に 対 す る保 護 の必 要 性 を認 識 した とこ ろに あ る。 これ らの リー デ ィ ン グ ・ケ ー ス と評 され る仙 台 地 決平 成4年2月28日 判 時1429号109頁 は 、 飲 用 水 ・生 活 用 水 の 利 用 者 の 立 場 か ら、 水 源 保 全 の 必 要 性 に つ い て 「 適 切 な質 量 の 水 を確 保 す る権 利 」 、 い わ ゆ る 「 浄 水 享 受 権 」 と権 利 構 成 して 、 水 源 を保 護 す る理 論 を 判 示 した 。 す な わ ち 、 そ の後 の ケ ー ス に よ り定 着 した 「 人 格 権 と し て の 浄 水 享 受 権 」 の概 念 は、 「 身体 権 と して の 浄 水 享 受 権 」 と 「 平 穏 生 活 権 と し て の 浄 水 享 受 権 」 に 区 分 さ れ 、 前 者 は生 命 ・健 康 に 危 険 の な い 質 と量 の飲 用 ・ 生 活 用 水 を 確 保 す る権 利 で あ り、 後 者 は 適切 な質 と量 の 飲 用 ・生 活 用 水 につ き 受 忍 限度 を 超 え て奪 わ れ な い権 利 で あ る と して、 水 利 用 者 の 人 格 権 の 具体 的 内 容 に言 及 し、 そ れ を 用 いて 水 源 保 護 の た め の 法 理 論 を構 築 した と解 す る こ とが で き る の で あ る。
水 質 汚濁 に関 す る差 止 請 求 の 事 案 に お い て 、 判 例 は、 健 康 被 害 が 生 じ る蓋 然 性 が 高 い場 合 、 っ ま り人 格 権 侵 害 の 蓋 然 性 が 高 い と判 断 した場 合 に は 、 差 止 請 求 を認 め る傾 向 に あ る。 この よ うな判 例 の 立 場 に お い て は、 た とえ物 権 的 権 利 で あ る水 利権 が侵 害 され た場 合 で あ った と して も、 そ の侵 害 が 人格 権 侵 害 に至 っ て い な い と判 断 さ れ る な らば 、 差 止 請 求 は否 定 さ れ る こ とに な る。
41)
人 格 権 と水 利 権 の 侵 害 を審 理 した 裁 判 例 で は、 飲 用 ・生 活 用 の た め の地 下 水 の 汚 濁 に つ いて は 人 格 権 に基 づ く差 止 請 求 を容 認 す る一 方 で 、 農 業 用 水 の 汚 濁 につ い て は 水 利 権 に 基 づ く差 止 請 求 を否 定 して い る。 す な わ ち 、 農 業 用 水 の 汚 濁 に関 して は、 有 害 物 質 は水 を 通 じ て農 作 物 に吸 収 され 、 さ ら に そ の農 作 物 を 食 す る こ と に よ っ て は じ め て体 内 に入 る もの で あ っ て 、 飲 用 水 を 日常 的 に直 接 飲 む の と異 な り、摂 取 す る経 路 が 間 接 的 で あ る うえ に、 そ の 量 も ご くわ ず か で あ る こ とを 考 え る と、 事 前 の差 止 め を認 め る こ とは で き な い と して 、 水 利 権 に 基 づ く差 止 請 求 を否 認 す る の で あ る。
こ こで は 、 農 業 用 水 利 権 の侵 害 を 問題 にす る の で はな く、 農 作 物 を食 す る人 の 人 格 権 の 侵 害 を 問 題 に して い るた め、 権 利 侵 害 の 判 断 基 準 に お い て 人格 秩 序
42)
と財 貨 秩 序 が 交 錯 して い る こ と を指 摘 す る こ とが で き る。 この こ とは、 侵 害 行
水 資 源 の保 全 と利用 に 関す る基礎 理 論
87為 が 人格 権 侵 害 に 至 っ て い る とみ る か 、 それ と も財 産 権 侵 害 に と ど ま って い る と捉 え るか が 、 差 止 請 求 の成 否 の 規 定 的 意 味 を もつ こ とを 示 して い る。
裁 判 例 は、 農 業用 水 汚 濁 に よ っ て水 利 権 侵 害 が 生 じ て い る場 合 に も、 ま た、
飲 用 水 汚 濁 に よ る人 格 権 侵 害 の お そ れ が あ る場 合 で も、 差 止 請 求 の成 否 の 判 断 基 準 を 一 律 に人 格 権 侵 害 の 有 無 に依 らせ て い る。 被 侵 害 利 益 の 保 護 の 要 請 は、
財 貨 秩 序 で 捉 え る法 益 侵 害 よ りも人 格 秩 序 で 捕 捉 す る そ れ の 方 が 強 い こ とは確 か で あ る。 人 格 秩 序 に お け る法 益 侵 害 は 、 被 侵 害 者 の 生 命 、 身 体 等 に 直 接 、 影 響 を与 え るか らで あ る。 この よ うに考 え る と、 判 断 基 準 に お け る秩 序 の 交 錯 は、
水 利 用 に関 す る 法 益 の 要 保 護 【 生を判 断 す るた め の 現 象 と して 理 解 す る こ とが で
43)
き る の で あ る。
水 利 用 に関 す る法 益 の要 保 護 性 の判 断 基 準 を財 貨 秩 序 と人 格 秩 序 の 交 点 に求 め る こ とは、 法 的 評 価 の場 面 に お い て 市 民 社 会 の 根 本 的秩 序 が 錯 綜 して い る こ とを表 し、 それ が 事 案 適 合 性 お よ び 法 的 安 定 性 を 欠 い た基 準 で あ る こ とを示 唆 して い る。 そ れ ゆ え 、 水 利 用 に関 す る法 益 の要 保 護 性 を判 断 す るに あ た って は、
44)
水 利 用 の 用 途 との 関 連 性 を意 識 しつ つ被 侵 害 利 益 を捕 捉 し、 そ れ が 属 す る秩 序 の 次 元 で 検 討 す る必 要 が あ ろ う。
水 質 汚 濁 の ケ ー ス に お け る被 侵 害 利 益 が 属 す る秩 序 に つ い て は、 被 侵 害 者 が 水 源 に 対 す る水 利用 権 限 を 有 して い るか 否 か が鍵 を握 る。 す な わ ち、 被 侵 害 者 が 水 源 に対 す る水 利 用 権 限 で あ る水 利 権 や 地 下 水 利 用 権(土 地 所 有 権)等 を有 して い る場 合 に は 、 被 侵 害 利 益 が 財 貨 秩 序 に属 す る こ とは 明 らか で あ る。 この 場 合 に は 、 水 利 用 権 限 に物 権 的 効 力 が認 め られ るか ら、 水 質 汚 濁 が 発 生 す る蓋 然 性 が 高 い と判 断 され る な らば 、 物 権 また は物 権 的 権 利 に 対 す る侵 害 の お それ が あ る と解 し、 物 権 的 請 求権 の 行 使 と して 差 止 請 求 を容 認 す る こ とが 可 能 で あ
る。
一 方 、 被 侵 害 者 が 水 源 に 対 す る水 利 用 権 限 を有 して い な い 場 合 に は 、 い か な る秩 序 の も とで 保 護 が 図 られ るか が 問 題 とな る。 前 掲 仙 台 地 決 平 成4年2月28 日以 降 の 水 質 汚 濁 に関 す る差 止 請 求 の 裁 判 例 で は 、 差 止 請 求 者 が 水 源 に対 す る 水 利 用 権 限 を有 して い な い場 合 に は 、水 道 利 用 者 の 立 場 で差 止 め を請 求 して い
46)
る点 に 共 通 項 を 見 出 す こ とが で き る 。水 道 の エ ン ド ・ユ ー ザ ー で あ る水 道 利 用
者 は、 水 道 水 源 に 対 す る水 利 用 権 限 を 有 しな い の が 通 常 で あ る。 した が っ て、
88
この よ うな場 合 に は水 源 に対 す る水 利 用 権 限 に 基 づ い て 差 止 請 求 で きな い た め 、
46)
水 道 利 用 者 の 人 格 権 を 根 拠 に差 止 め を請 求 せ ざ るを 得 な い の で あ る。
差 止 請 求 の 法 的構 成 を人 格 権 に求 め る判 例 の態 度 を受 容 した と して も、 その 見 解 は被 侵 害 者 が水 源 に対 す る水 利 用 権 限 を も た な い 場 合 に 限 定 して適 用 され るの で は な か ろ うか 。 水 道 利 用 者 の よ う に水 源 に 対 す る水 利 用 権 限 を もた な い 者 が 水 源汚 染 に よ っ て 被 害 を 受 け る お そ れ の あ るケ ー ス に お い て 、 は じめ て 水 利 用 者 自身 の 人 格 権 に 差 止 請 求 の 論 拠 を 求 め る こ とが 許 さ れ る と考 え られ るの で あ る 。別 言 す れ ば 、 水 質 汚 濁 に関 す る差 止 請 求 の 事 案 に お い て 人 格 権 に基 づ く差 止 請 求 が 認 容 され る場 面 は 、 水 源 に 対 す る水 利用 権 限 を 有 し な い者 が 差 止 め を請 求 す る ケ ー ス に 限 られ る とい え よ う。 す な わ ち 、 水 利 権 等 の水 利 用 権 限 を有 す る場 合 に は 、 人 格 権 に依 拠 す るの で は な く物 権 的 請 求 権 の 行 使 と して 差 止 請 求 が 認 容 さ れ 、 か か る権 限 が な い場 合 に水 利 用 者 の 人 格 権 に基 づ く差 止 請
47)
求 が 独 自の 存 在 意 義 を もつ こ と に な る と解 す る の で あ る。
この よ う な考 え 方 は 、 プ ライ ベ ー ト ・ニ ュ ーサ ンス と と もに 沿 岸 権(=水 利 権)の 侵 害 とい う理 論 構 成 に よ って も水 質 汚 濁 に 対 す る差 止 請 求 を認 め る ア メ
さラaei
リカ水 法 の 立 場 と通 底 す る見 解 で あ る とい っ て よい で あ ろ う。
(2)水 資源 の 要 保 護 性 に基 づ く差 止 請 求
判 例 が 差 止請 求 の 成 否 の 判 断 基 準 を人 格 権 侵 害 の 有 無 に依 拠 させ て い るの は 、 被 侵 害 利 益 の 要 保 護 性 を判 断 す るた め の 理 論 装 置 を 人 格 権 侵 害 の 解 釈 に 求 めた
か らで あ る。被 侵 害 利 益 の要 保 護 性 が 人 格 秩 序 にお け る権 利侵 害 とい う形 を とっ て 表 れ て い る と解 され る の で あ る。 そ う考 え る と、 人 格 権 侵 害 に代 え て被 侵 害 利 益 の要 保 護 性 そ の もの を前 面 に出 し、 理 論 構 成 す る こ との 有 意 性 も検 討 され
5U1
て しか るべ きで あ ろ う。
安 全 な水 の 確 保 は 、 人 の生 命 、 身 体 、健 康 に とっ て 絶 対 的 な 要 請 で あ る。 水 道 法1条 は、 「 清 浄 に して 豊 富 低 廉 な水 の供 給 」 を図 る こ とを 直接 の 目的 とす る こ とに よっ て 、 水 道 が 国 民 の健 康 で 文 化 的 な 最 低 限 度 の 生 活 水 準 を維 持 し、 さ
ら に これ を 向上 させ るた め に 不 可 欠 で あ る こ とを 宣 明 して い る。 近 時 で は 、 水
質 汚 濁 防 止 法 に基 づ く一 般 的 な 水 質 保 全 対 策 で は 対 処 で き な い 水 道 固 有 の 問 題
に応 接 す る 「 特 定 水 道 利 水 障 害 の 防 止 の た め の水 道 水 源 水 域 の 水 質 の保 全 に関
水 資 源 の保 全 と利用 に 関す る基礎 理 論
89す る特 別 措 置法 」 、 い わ ゆ る 「 水 道 水 源 法 」 が 制 定 さ れ 、安 全 な水 道 水 の供 給 と
sz)
い う絶 対 的 要 請 に応 え る た め の 法 整 備 もな さ れ て きた と ころ で あ る。
判 例 で は、 水 道 水 源 地 の所 有 者 に 対 して 積 極 的 に水 源 の保 護 義 務 を 認 め た も の が あ る。 す な わ ち 、 前 掲 名 古 屋 高 判 平 成12年2月29日 は 、水 源 地 の 所 有 者 が
そ の敷 地 面 積 に応 じた 地 下 水 を7養 す る こ とに よ って 、 流 域 全 体 の水 収 支 の均
53)
衡 を保 た な けれ ば な ら な い と判 示 す る。 つ ま り、 水 道 水 源 保 護 条 例 等 に よ っ て 指 定 さ れ た 水 源 保 護 地 域 に お け る適 正 な 水 資 源 の 利 用 に あ た って は、 水 源 地 の 所 有 者 に対 して地 下 水 の採 取 制 限 の よ うな 消 極 的 な 不 作 為 に と どま らず 、 地 下 水 の酒 養 とい う積 極 的 な作 為 を求 め る見 解 を示 した の で あ る。 か か る見 地 は、
水 源 保 護 地 域 に 限 られ て い る とは い え 、 水 利 用 権 限 に は水 源 の 保 護 義 務 が 伴 う
54)
こ とを 示 唆 して い る と解 さ れ る。
水 資 源 は、 人 間 に とっ て の み な らず 、 生 態 系 の 維 持 に とっ て も絶 対 的 に必 要 な循 環 資 源 で あ る。 不 可 欠性 、 循 環 性 を 有 す る水 資 源 は、 人 の 生 命 、 健 康 や 生 態 系 を 支 え る根 源 的 な資 源 な の で あ る。 した が っ て 、 水 資 源 を め ぐ る差 止 請 求 の 法 的根 拠 にっ い て は、 不 可 欠 性 、 循 環 性 とい っ た 水 資 源 の 性 質 が そ の保 護 を 必 然 的 に要 請 す る点 に着 眼 す る必 要 が あ る。 水 利 用 に関 す る法 益 が 保 護 に値 す るか 否 か の 判 断 は 、 利 用 の 客 体 で あ る水 資 源 そ の もの の性 質 か ら そ の保 護 の必 要 性 を 導 き 出 す ほ うが 、 生 態 系 を支 え る循 環 資 源 と して の水 の 保 全 に 適 合 的で
あ る と考 え られ るか らで あ る。
水 資 源 の 性 質 か ら そ の要 保 護 性 が 導 か れ る こ との 実 質 は 、 水 資 源 を め ぐる差 止 請 求 の成 否 の判 断 に際 して 、 水 資 源 の 性 質 が そ の 判 断 の 基礎 に置 か れ る こ と
に よ り、 法 秩 序 の な か に お い て 水 源 お よび 水 利 用 権 限 が 重 要 な 保 護 法 益 と して 位 置 づ け られ る こ とを意 味 す る。
水 利 権 の よ うな水 利 用 権 限 が 侵 害 され る こ とに よ っ て利 水 目的 を達 成 で き な くな るお それ が あ る場 合 は 当 然 の こ とな が ら、水 道 利 用 者 の よ うに水 源 に対 す る利 用 権 限 が な くて も、 そ の 水 源 に 対 す る侵 害 行 為 に よ っ て 深 刻 か つ 不 可 逆 な 損 害 が発 生 す る お それ が あ る場 合 に は 、 不 可 欠性 や 循 環 性 とい っ た水 資 源 の性 質 か ら導 か れ る そ の 要 保 護 性 を論 拠 と して 侵 害 行 為 を差 止 め る こ とが で き る と
JJ/
解 すべ きで あ ろ う。 要 す る に 、 水 源 に 対 して 何 らの 権 限 も有 して い な くて も、
侵 害 行 為 に よ っ て その 水 源 に 深 刻 か つ不 可 逆 な損 害 を発 生 させ る高 度 の 蓋 然 性
90
が あ る場 合 に は 、水 資 源 の要 保 護 性 を論 拠 と して 差 止 請 求 を 認 容 す る こ とが で
ss)
き る の で あ る 。
(3)流 域 に お け る水 秩 序
水 資 源 の 要 保 護 性 を 根 拠 と した 差 止 請 求 の 理 論 に お い て は 、何 に基 づ い て そ
6i)
の 要 保 護 性 を判 断 す べ きで あ ろ うか 。 そ れ は、 流 域 にお け る水 秩 序 に基 づ いて 判 断 さ れ る と考 え られ る。 要 す る に、 水 に関 す る地 域 の ル ー ル に した が っ て 決 め られ るの で あ る 。
差 止 理 論 に お い て 地 域 性 を 重 視 して法 的 根 拠 を考 察 す る主 要 な 学 説 は 、 環 境 共 同利 用 権 説 、 環 境 秩 序 説 、 公 私 複 合 利 益 説 で あ る。 第1に 、 環 境 共 同 利 用 権 説 は、 従 来 か ら主 張 され て い る環 境 権 に つ い て そ の公 共 的性 質 に適 合 す る理 論 を展 開 し、 それ を 「 他 の 多 数 の 人 々 に よ る同 一 の 利用 と共 存 で き る 内容 を も っ て 、 か つ 共 存 で き る方 法 で 、 各 個 人 が 特 定 の環 境 を 利 用 す る こ とが で き る権 利 」
5H)
と して 再 構 成 す る。 そ して 、 同権 利 は、 「 大 気 、 水 な い し地 盤 とい う個 々 の 環 境 要 素 を 共 同 で 利 用 す る権 利 」 お よ び 「 総 体 た る 自然 環 境 を 共 同利 用 す る権 利 」 に類 型 化 で き、 環 境 共 同利 用 権 の 具 体 的 な 内 容 お よび 方 法 に っ い て は 、 地 域 性 を重 要 視 して 、 従 来 か らの慣 行 に よ っ て 地 域 ご とに 特 定 され る と説 く。 また 、 権 利 者 の範 囲 に つ い て も、 環 境 要 素 の利 益 を享 受 す る共 同利 用 権 の主 体 は 「 対 象 で あ る一 ま とま りの 地 域 の住 民 」 等 で あ り、 自然 環 境 に 関 す る共 同利 用 権 の それ は 「 自然 環 境 を あ る程 度 以 上 利 用 して い る者 」 で あ る とす る。 した が っ て 、 当 説 は 、権 利 の客 体 で あ る環 境 を地 域 的 に限 定 し、 その 主 体 も環 境 利 用 者 の 視
5U)
点 か ら制 約 して い る と い え よ う。
第2に 、 環 境 秩 序 説 は、 市 民 社 会 に お け る基 本 的 諸 秩 序 の体 系 を構 想 す る広 中 理 論 に基 づ い て 法 秩 序 違 反 を 根 拠 とす る差 止 理 論 を提 示 す る。 広 中理 論 は、
個 々 の 人 間 が す べ て 人 格 的 利 益 の 帰 属 主 体 と して 扱 わ れ る仕 組 み を人 格 秩 序 と
60)
称 し、 そ の 外 郭 秩 序 と して 生 活 利 益 秩 序 を措 定 す る。 外 郭 秩 序 に お い て は 法 的 保 護 に値 す る法 益 を 権 利 とい う形 で 構 成 で き な い た め 、 公 私 峻 別 論 が 適 合 しな い 領 域 で あ り、 当領 域 で は公 法 と私 法 の協 働(公 私協 働)を 追 求 す る た め 、 秩 序 違 反 を根 拠 とす る差 止 め を認 め る こ と に よ っ て そ の 公 共 的性 格 を発 現 させ る
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こ とが 可 能 に な る とい う。 また 、 本 説 の い う環 境 秩 序 は、 生 活 利 益 秩 序 の 一 部
水 資 源 の保 全 と利用 に 関す る基礎 理 論
91を カバ ー し、 都 市 計 画 法 等 の 実 定 法 規 に よ る もの だ けで は な く、 地 域 住 民 に よ る 自主 的 な 土 地 利用 ル ー ル 等 の 地 域 的 ル ー ル も包 摂 され るべ きで あ り、 こ の よ うに環 境 秩 序 が 形 成 され た場 合 に は 、 当 秩 序 に対 す る違 反 を 論 拠 と して 差 止 め が 容 認 され る とす るの で あ る。 そ して 、 外 郭 秩 序 にお け る地 域 的 ル ー ル は、 一 定 の範 囲 の 市 民 に よ っ て 下 か ら形 成 され る もの で も あ るた め 「 市 民 的公 共 性 」
と称 し、 私 的利 益 の 侵 害 を根 拠 に した請 求 の 背後 に は こ の よ う な公 共 的 利 益 が
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控 え て い る構 造 を 理 解 しな けれ ば な らな い と説 く。
第3に 、 公 私 複 合 利 益 説 は 、 環 境 に 関 わ る権 利 ・利 益 パ ラ ダイ ム を 維 持 す る 観 点 か ら、 環 境 秩 序 説 が い う市 民 的公 共 性 を地 域 の 多 数 の 者 の 利 益 で あ る 「 地 域 的利 益 」 に組 み換 え、 差 止 め の 成 否 の 判 断 の 際 に原 告 側 に 有 利 な要 素 と して 用 い る こ とが で き る とす る 。 そ して 、① 受 動 的 な 環 境 「 享 受 」 利 益 しか な い場 合 に は 差 止 め も認 め られ う るが 、 ② 能 動 的 な環 境 共 同 「 利 用 」 利 益(一 地 域 的 利 益)が あ る場 合 に は、 能 動 的 な関 わ りが あ るた め① よ り も差 止 め が 容 認 され や す い。 また 、③ 環境 共 同 利用 利 益 が慣 習上 の権 利(=環 境 共 同 利用 権)と な っ
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て い る場 合 は原 則 と して差 止 め が 認 め られ る と論 及 す る。
上 述 の各 説 は 、 地 域 性 に関 して つ ぎ の よ う に言 説 す る。 環 境 共 同利 用 権 説 は、
当 該 権 利 の 具 体 的 な 内容 お よび 方 法 に つ い て 従 来 か ら の慣 行 に よ っ て 地 域 ご と に特 定 され る とす る。 環 境 秩 序 説 は 、 実 定 法 規 だ けで は な く、 地 域 住 民 に よ る 自主 的 な ル ー ル で あ る地 域 的 ル ー ル も秩 序 を形 成 す る と解 す る。 さ ら に、 公 私 複 合 利 益 説 は、 地 域 の 多 数 の 者 の 利 益 で あ る地 域 的 利 益 お よび 慣 習上 の権 利 を 前 面 に 出 して論 を展 開 す る。 権 利 ・利 益 パ ラダ イ ム の 枠 内で 地 域 性 を 捉 え るか 、
ま た は そ れ を超 え て 地 域 性 を 捕 捉 す るか とい う差 異 が あ る もの の 、 これ ら の諸 説 は地 域 に焦 点 を あ て 、 当 該 地 域 に お け る権 利 ・利 益 ま た は 秩 序 を観 念 して い
る点 に お い て共 通 した 要 素 を 有 す る とい え よ う。
水 に 関 す る権 利 利 益 体 系 に つ い て は 、 水 資 源 の 利 用(利 水)に お い て 主 に問 題 とさ れ るが 、 そ の 考 察 に あ た っ て は 、 治 水 お よび 水 環 境 の 観 点 と と も に、 降 雨 等 の 天候 の影 響 も考 慮 さ れ ね ば な らな い とい う特 性 を認 識 す る必 要 が あ る。
と くに 、 天 候 や 治 水 の 視 座 か ら水 利 用 や 水 環 境 の保 護 が 制 限 、 調 整 さ れ る場 合
が あ る こ とは、 他 の 資 源 の 利 用 と比 べ て 特 殊 な条 件 が 付 加 され て い る と考 え ら
れ る。 そ れ ゆ え 、 治 水 、 利 水 、 水 環 境 の 全 領 域 に わ た る水 に 関 す る秩 序 に よ っ
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て その 権 利 利 益 体 系 を補 完 す る要 請 が あ る とい っ て も過 言 で は な い。 要 す るに 、 水 利 権 等 の 水 に 関 す る権 利 また は利 益 は 、 当 該 流 域 にお け る水 秩 序 の範 囲 内 に お い て行 使 また は 享 受 す る こ とが で き るの で あ る。 そ う考 え る と、 水 資 源 の 要 保 護 性 は 、 当 該 流 域 に お け る水 秩 序 に基 づ い て判 断 され な け れ ば な らな い と解
され る の で あ る。
5水 資源 をめ ぐる公 と私
(1)流 水 の 公 共 性 と排 他 的 利 用
河 川 の流 水 を 旧 民 法 に い う 「 公 共 物 」 と解 し、 他 方 で 地 中 の 流 水 で あ る地 下 水 に土 地 所 有 権 の効 力 が 及 ぶ と捉 え る な らば、 両者 の 考 え方 を接 合 す るた め の 、 水 の 流 動 性 や 水 循 環 を 前 提 と した 法 理 論 が 必 要 とな る。
また 、 河 川 法2条2項 に よ り私 権 の 目的 とは な ら ない 河 川 の 流水 は 、 「 公 共物 」 と して 自 由 に使 用 で き るが(一 般 使 用)、 そ の 流 水 を継 続 的、 排 他 的 に使 用 して きた 慣 行 が 存 在 す るか 、 ま た は 河 川 管 理 者 か ら流 水 占用 の許 可 を受 け る こ とに よ っ て 、 財 産 権 と して の水 利 権 が 成 立 す る こ とに な る。 この よ う に 「 公 共 物 」 で あ る河 川 水 を私 人 が 排 他 的 に 利 用 で き る とす る解 釈 につ い て も、 水 循 環 を前 提 と した考 察 が な され な け れ ば な らな い 。
この 点 に つ き、 判 例 は、 河 川 水 を排 他 的 に利 用 で き る権 利 の性 質 、 つ ま り水 利 権 の 性 質 を い か に 解 す るか とい う問 題 と して 捕捉 し、 東 京 高 判 昭 和35年10月 14日 民 集16巻4号778頁 に お い て 、 つ ぎ の よ うに判 示 す る。 す な わ ち 、
「 流 水 使 用 権 の 性 質 に つ い て は公 権 説 私 権 説 の 両 説 が あ り、(中 略)公 権説 は権 利 の 形 式 に 着 目 し、私 権 説 は権 利 の 内容 に 着 眼 した もの で あ つ て 、 い ず れ に し ろ そ の 一 面 的 把 握 で あ る こ と を免 れ ず 、 公 水 使 用 権 の 本 質 に つ い て私 権 説 を と るに して も私 権 た る水 利権 が 公 共 的 規 律 を も同 時 に受 け る と い う公 権 私 権 の 重 畳 【 生が指 摘 さ るべ きで あ る 。 」
判 例 の い う公 権 私 権 の 重 畳 性 につ い て 、 河 川 実 務 で は、 水 利権 は流 水 の 使 用 を他 の す べ て の者 に 対 して保 護 す る た め の権 利(物 権 的 財 産 権)で あ る と解 し、
水 利 権 者 と河 川 管 理 者 以 外 の者 との 法 律 関 係 は私 法 関 係 で あ るか ら、 そ こ に成
立 す る水 利 権 の基 本 的 性 質 は 私 権 で あ る と捉 え る と とも に、 河 川 法 上 は 、 水 利
水 資 源 の保 全 と利用 に 関す る基礎 理 論
93権 は河 川 管 理 者 の 許 可 に よ っ て 設 定 され 、 そ の権 利 と して の 反 面 、 流 水 占用 料 の 納 付 等 の 公 法 上 の 義 務 を 負 担 す る 等 の 点 は、 水 利 権 が 河 川 管 理 者 との 関 係 に お い て は 公 権 た る性 質 を 有 す るか ら、結 局 、 水 利 権 は私 権 と公 権 との 二 面i生を
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有 す る権 利 で あ る と解 して い る。
水 利 権 の 性 質 を い か に解 す るか とい う議 論 の基 底 に は 、水 資 源 の性 質 を どの よ うに理 解 す るか とい う問 題 と と もに、 「 公 共 物 」 で あ る流 水 につ き、 いか な る 解 釈 で 私 人 が 排 他 的 に利 用 で き る とす るか 、 とい う問 題 が 存 在 す る と考 え られ
る。 これ ら の課 題 は、 水 資 源 の もつ 公 と私 の 側 面 を どの よ う に捉 え るか とい う 論 点 に 収Pす る こ とが で き る とい え よ う。
水 資 源 を公 と私 の 視 座 か ら捕 捉 す る考 え方 の典 型 は、 公 水 私 水 区分 論 に み る こ とが で き る。 判 例 お よ び 学 説 は、 水 利 権 に つ い て 公 水 を使 用 す る権 利 で あ る
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と解 す る。 この よ う な見 解 に した が え ば 、 公 水 で は な い水 、 い わ ゆ る 私 水 につ い て は水 利 権 が 成 立 す る余 地 は な い 。公 水 の み が 水 利 権 の 対 象 とな る とす る な らば、 水 利 権 の成 立 に関 して は水 の性 質 決 定 が 規 定 的 な意 味 を もっ こ と にな る。
す な わ ち 、 水 の性 質 が 公 水 と判 断 さ れ るな らば 、 土 地 所 有 権 の 効 力 か ら切 離 さ れ た水 利 権 が 成 立 す る可 能 性 が あ る が 、 私 水 と解 され る な ら ば、 そ の水 の 利 用 権 限 は 土 地 所 有 権 の 効 力 に 包 摂 され るの で あ る。
これ を利 水 者 の 立 場 か ら捉 え る と、水 の 性 質 が 公 水 な らば 、 それ を 取 水 す る た め に は 河 川 管 理 者 か ら流 水 占用 の許 可 を得 な け れ ば な らな い が 、 他 方 、 それ が 私 水 な ら ば、 土 地 所 有 者 が それ を採 取 で き る とい う こ とに な る。 す な わ ち、
水 の性 質 が 私 水 で あ る な らば 、 土 地 所 有 者 が 自由 に採 取 で き、 公 水 で あ る な ら ば、 河 川 管 理 者 か ら許 可 水 利 権 を取 得 しな け れ ば な ら な い とい うの で あ る。 要 す る に 、 公 水 か 私水 か とい う水 の 性 質 決 定 に よっ て 、 採 取 の 可 否 が 判 断 され る の で あ る。
この よ う な視 点 か ら流 水 を 観 察 す れ ば 、 水 が河 川 に流 れ て い る とき は公 水 で あ る か ら勝 手 に は 取 水 で き な い が 、 そ れ が 地 下 水 とな れ ば 私 水 で あ るか ら土 地 所 有 者 が 自 由 に使 え る よ うに な り、 そ の 後 、 水 が再 び 河 川 に 流 れ 込 ん だ ら、 ま た 公 水 に戻 り任 意 に は取 水 で き な くな る と解 さ れ る。 か か る考 え方 は 、 水 資 源 の 存 在 形 態 に よ っ て 水 の法 的 性 質 が 変 容 す る こ と を意 味 して い る。 この よ うに
6h)
水 の性 質 を公 水 と私 水 で 区分 す る理 論 は 妥 当 で あ ろ うか 。
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水 循 環 の 過 程 に あ る水 資 源 を あ る地 点 で切 り取 っ て 、 公 水 か 私 水 か を 論 じ、
それ に よっ て 水 を採 取 で き るか 否 か を決 め る見 地 が水 循 環 の概 念 に適 合 す るか
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につ い て は 、 検 討 の 余 地 が あ る と思 わ れ る。 そ こで 、 公 水 私 水 の 区分 に依 ら な い 、 水 循 環 に よ り適 っ た 水 資 源 の 性 質 に つ い て考 察 す る こ とを 試 み た い 。
(2)水 資 源 の 公 共 性 と水 利 用 権 限 の 私 権 性
水 循 環 を 前 提 と した 水 資 源 の 性 質 を捉 え る た め に は、 そ の コ ア(中 核)部 分 に は公 共 性 が 存 す る との 認 識 が 不 可 欠 で あ る。 公 共性 とは、 不 特 定 多 数 の 市 民 に開 放 され 、 不 特 定 多 数 の市 民 の 近 接 が 可 能 で あ る こ とで あ り、 換 言 す れ ば、
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独 占 的 また は排 他 的 な 性 格 を 有 しな い こ とで あ る。河 川 の 流 水 に つ い て は 、 旧 民 法 に い う 「 公 共 物 」 と解 す る こ とに よ りそ の公 共 性 を把 握 す る こ とが で き る が 、 土 地 所 有 者 が採 取 で き る と され る地 下 水 につ い て は、 そ の公 共 性 を どの よ う に捕 捉 す れ ば よ い の で あ ろ うか 。
地 下 水 は 同一 の地 下 水 流 が存 す る土 地 の 所 有 者 に よ っ て共 同 で 利 用 され な け れ ば な らな いが 、 この よ うな地 下 水 の共 同 利 用 の あ り方 は、 健 全 な水 循 環 を損 な わ な い よ うに地 下 水 を 利 用 しな けれ ば な らな い とい う規 範 に含 意 され て い る。
そ して 、健 全 な水 循 環 を損 な わ な い とい う制 限 は 、 前 述 した よ う に地 下 水 利 用 権 限 の基 盤 で あ る 土 地 所 有 権 に 内在 す る制 約 と解 す る こ とが で き る。 した が っ て 、 地 下 水 の 公 共 性 は 、 土 地 所 有 権 の 内 在 的 制 約 と して の健 全 な 水 循 環 の 確 保
とい う要 請 に反 映 され て い る と考 え られ るの で あ る。
それ で は、 中核 部分 に公 共 性 が 存 す る水 資 源 につ い て 、 どの よ うな理 論 に よ っ て 私 人 が そ れ を排 他 的 に利 用(採 取)す る こ とが で き るの で あ ろ うか 。 そ れ は 、 水 の コ ア 部 分 に は公 共 性 が あ るが 、 水 利 用 権 限 に基 づ く私 的 支 配 の領 域 に水 が 到 達 した と き に は 、 そ の 公 共 性 に水 利 用 権 限 の私 権 性 が 覆 い被 さ る こ と に よ り 排 他 的 に 利 用 で き る よ うに な る とい う解 釈 に よ っ て 可 能 とな る。 なぜ な ら、 水 利 用 権 限 に 基 づ く私 的 支 配 の領 域 に水 が 達 す る こ と に よ っ て 、 水 が 排 他 的 に利
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