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全開脚とびに関する運動形態学的考察 「良い実施」をめぐって

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(1)

全開脚とびに関する運動形態学的考察

「良い実施」をめぐって

体育科運動学研究室加藤明子

1 は じ め に

 器械運動の中には空中局面を伴う技が数多くある。そういった空中局面を伴う技の「良い実施」に は必ず「高さ」が要求される。しかも,その場含には単に物理的に「高い」ことが重要なのではなく,

「高くみえる」ことが重要なのである。朝岡嫉,両者の違いを指摘して,「高くみえる」ことを「浮 き」の現象として捉え,平行棒における「後方棒上宙返り」や女子の「山下跳び」について研究し,

詳細な報告を提出している。(1)(2)本研究では,朝岡の研究を手轡かりに,最も基本的 な跳躍である「全開脚とび」を取り上げ,全開脚とびとはどのように実施すれば「高くみえる」のか,

すなわち「浮き」の現象が現われるのかを明らかにすることを意図した。

 全開脚とびに関しでは,既に,その場での「前後全開脚とび」と「左右全開脚とび」について実施 し,報告してい巻殊,その概要は,以下に述べる通りである。

 被験者(5名)の実施した全開脚とび(26試技)について観察者(4名)の比較観察の結果と,

フィルム分析から得られた各々の試技の足揃,腰点の最高点の高さ及び腰点の移動の高さを比較検討 した結果,観察者の「浮き」に関する判定は,これらのどの高さによっても一義的には決定し得ない ことを確認した。さらに,観察結果と足点,腰点の高さ及び零点の高さ,フイルム分析から得られた

戻〉

n

e 6 ia 8

33 コマ

図1  左右全開脚とび

(2)

資料を比較考察した結果,最大開脚時の姿勢と着地前の姿勢が「浮き」の度合の判定に関与している こと,その際に最大開脚の度合が大きく,上半身は垂直に保たれていて,着地前の姿勢が乱れない方 が,「浮き」の度合はより大きく判断されていることがわかった。また,全開脚とびで,最大開脚の 時期を遅らせて実施することは「高くとびあがる」「最大開脚の度合を大きくする」「最大開脚を長

く保つ」ことに有効であることが判明した。

 今回の実験では「浮き」の度合の判定に関与する要因を減らすために,左右開脚の全開脚とびのみ を対象とした。また,滞空時間を長くして,開脚の時期を調節しやすくするとともに着地前の姿勢の 乱れをなくすた:めにトランポリン上で実施した。

H 実  験  (1)実験構成

 実験は,1976年11年29日(月)午前11時より京都教育大学運動場において実施した。被 験者は,京都教育大学体操部女子部員1名,観察者は,同大学体操部女子部員7名及び加藤の計8名で ある。被験者には,「とびあがる高さ」と「最大開脚時の開脚の度合」をできるだけ一定にして実施 することを条件に2つの課題を与えた。課題は,「できるだけ早い時期に最大開脚を行う(課題1)」

と「最大開脚の時期を遅らせる(課題2)」である。なお,この課題は,跳躍の最高点の直後に最大 開脚がくるようにさばくことは『浮き』の現象に有効である」という仮設④に基づいて決定された。

 実験では2回の全開脚とびをもって1 セットとし,15セット実施した。15 セットのうち,第1セットから第10セ ットまでの実施については,各セットの 1回目の全開脚とびでは課題1を,2回

表1 第11〜15セットで実施された課題

 セット

i回目) 11 12 13 14 15

1回目 課題1 課題2 課題1 課題2 課題1 2回目

〃 1 〃 1

〃 2 〃 2 〃 2

目には課題2を実施するように指示した。第11セットから第15セットまでは被験者自身が任意に 課題を選び,各セットを実施した。被験者が実施したとする課題は表1に示す通りである。

 観察者には実験に先立って質問紙(下記)を配布しておき,各セット(2回の全開脚とび)が終わ るたびに,2回の跳躍を比較して,どちらがより「浮いていた」かを判定し,記入してもらった。

 体操競技の日頃の練習や試合で,「浮き」という言葉を使って,「技」の良し悪しを評価する ことがあります。例えば,段違い平行棒の「後方臥回転からとび出しおり」を評価する場合に,

「高い」「低い」とは言わないで,「浮いていた」か「浮いていなかった」かで評価するような ときです。この場合には,とび出した時の身体の高さが,評価の対象の一番大きな要素となって いるわけですが, 「高さ」という言葉だけでは言い表わせない何か別のものをも含めて,「浮き」

という言葉で表わしていると考えられます。

 上のことを一応頭に入れて,2回の開脚とびのうち,どちらの方が「浮いていた」かを評価し

てください。

       観察者氏名       体操競技経験年数  年

一42一

(3)

浮いていたと思われる方に○印を,差が認められなかった場合は斜線を引いてください。

セヅト 1

2

3

4  5

6 7

8

9

10

11 12 13

14

層15

1回目 2回目

 実験で実施した30回の全開脚とび(15セット)は,観察者の観察と同時に16㎜フィルムに撮 影きれた。カメラのシャッタースピードは1/300,絞り13,距離31.3m,フィルムスピードは毎 秒50コマであった。実験場の設営は図2の通りである。なお,被験者には,実験の開始前に図3に 示されるように身体の部分を明示する印を付した。

 カメラ

      3

〔}一一一一一卿一一一鱒

カメラの高さ

 2m

図 3

観察者

 3名\\ 8m

     NN ...

        s    ボール

.3m

  繭囎鵬 _  脚一  順一● 繍繍聯 聯一幽 騨  一胴顧 ■胴脚  縢  ■N−i

      ポールのll適さ       2. 4m

試技開始点

    萄

ヒ   一    蝋

 〆

@! P トランポリン

      ノ事,1

観察者 ノ11 6m  5名

図2 実験場の設営

 さらに,全部の試技の終了後,観察者全員に観察の視点に ついて質問し,全開脚とびの運動経過全体の中で特に注意し ていた「局面」と「身体の部位」について答えてもらった。

(2)観察結果及び観察の視点

  観察の際に運動経過全体の中でどの「局面」に注目して  いた:かについて,「運動経過全体」「とびあがってから最  高点まで」 「最高点付近」「最高点からおりるまで」「特  に意識していない」「その他」の6項目から選んでもらっ  た。この問いに対し,8名申6名は「最高点付近」と答え  たが,観察者Dは,「とびあがってから最高点まで」,観  察者Gは「運動経過全体」と答えている。一方,注目して  いた「身体の部位」については,表2に示す解答が得られ  たが,表現の違いはあるにせよ,全員が「脚(下半身)」

 に注目していたとみることができる。

  観察結果については,全観察者の判定が一一致したのは

 15セット中3セットであるが,特に他の観察者と異な

(4)

つた判定を行なっていた者は無いと判断した(表3)。

表2 観察の視点

   視点

マ察者 注目していた身体の部位

   視点観察者

注目していた身体の部位

A 下半身,脚 E 腰,足間の位置

B (下半身),脚 F 脚,腰

C 腰の高さと足先を結ぶ線 G 足の開き D 股関節をPQi煎に全体をみた H

田実験結果の考察

  実験の際に撮影した16・ncmフィルムから基礎資料として形態図を作成した。作成にあたり,典型  的なパターンを示したものとして,第1,第3,第4,第7,第9セット(lo回の全開脚とび)

 を選んだ。本研究では,足が完全にトランポリンベッドから離れたと認められる局面の1コマ前を  便宜上土足局面とし,書足局面を。コマとして表わした。形態図は2コマごとに作成し,作成した  形態図各々の「主点の高さ」(トランポリン上23・cmの基準線からの高さ)と「開脚の度合を表わ  す角度」を測定した。(注:実験で行なった全開脚とびの場合,開脚の度合は,腰点と2つの足点  を結ぶ直線のなす角の角度にほぼ比例するので,これを「開脚の度合を表わす角度」として測定し  た。)測定された「同点の高さ」と「開脚の度合を表わす角度」から,図4に示すグラフを作成し,

 (注:第1セット1回目の跳躍では,圏点がバーの陰に隠れている時期があるため,グラフは作成       していない。),

        表3  観察結果(浮いていたと判定された方)

      グラフ上に,最       大開脚を示した       コマと腰点が最       高点に達したコ       マのそれぞれに       縦線を引いた。

      このグラフから,

      第3,第4,第       7,第9セット       の8回の全開脚       とびは,すべて       腰点が最高点に       達する以前に最       大開脚に達して       いることがわか       る。しかし,各       セットの1回目

A B C D E F G H

露回目

2回目 2回目 2回目 2回目 2回目 2回目

2 2 〃 2 〃 2 〃 2 〃 2回目

2  2 〃 2 〃

3

2 〃 2 〃 2 〃

2 〃 2 〃 2 〃 2 〃

4 2 〃 2 〃

2 〃 2 〃

5

2 〃 2 〃 2 〃 2 〃

2 〃 2 〃

6

2 〃 2 〃 2 〃 2 〃

2 〃 2 〃 2 〃 2 〃

7

2 〃 2 〃 2 〃

2 〃 2 〃 2 〃

8 2 〃 2  2 〃 2 〃

2 〃 2 〃 2 〃 2 〃

9 2 〃 1 〃 2 〃 1 〃

2  2 〃

1 〃

10 2 〃 2 〃 2 〃

2 〃 2  2 〃 2 〃

11 2 〃 1 〃 1 〃

2 〃

12 2 〃 2  1  1  1 〃 1. 1 〃 1 〃 13 2  2 〃

2 〃 2 〃 2 〃 2 〃

14 2 

15 2  2  2 〃 2 〃

2 〃 2 〃 2 〃

1 

一44一

(5)

(伽,。)

 エ66

 140  120 IOO 80 6e

40

20

第3セット

 oa 伽,。)04  160

\\〜〜\

N臨爪一 /赤身  /./一

(Cm, o)

 16e  149 12e

100

0086

40

20

8 12三6202428コマ   

0  4

   第アセット

 x

8 三2 36 20 24 28 32コマ

第4セット

/君

/、慧)

 o   G 4 8 1216202428コマ

(crn t o)

160

 ノ

! 、回目 f

  (課題2)

14e 120 1ee

8

60

40 20

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! (課題1)

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ノ 、課題2)

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ノ 、画目 ノ 〈課題1)

 \  ︑ h  凹\・\

   0 4 8

第9セット

12 16 …20 2428 32コマ

4匹/ /   ︐ーノノ  //!    ︐/

   x

! 2f.a」g

! c諜鋤.

f

 む       む

   048121S202428コマ 04bf21620 242832コマ   0481飯6202428コマ 049f2f馳0242832=マ        図4 腰点の高さと開脚の度合       (1コマ鑑α02sec)

と2回目を比較すると,腰点が最高点に達する時期に対する最大開脚の時期は,2回目の方が遅い。

第3,第4,第7,第9セットはどれも1回目に課題1を,2回目に課題2を実施するよう指示して あるので,これらの各セットは課題が達成されているとみなされる。

 α) 「腰点の最高点」と「最大開脚」

 東京教育大学で行なった実験の結果(5)からs 今回行なった実験での「浮き」の評価につい て次の仮説がたてられる。「まず,腰点の最高点の高いものが浮いていると評価され,高さの差が少 ない場合には最大開脚の開脚の度合の大きいものが浮いていると評価される。」ここでは,この仮説

に従って考察を進めていく。

 表4は「評価(浮いていると判定した観察者の人数)」 「腰点の最高点の高さ」 「最大開脚の開脚 の度合」「最大開脚時の腰点の高さ」について表にしたものである。さらに,それぞれの項目につい て,各セットの1回目と2回目の差を求め,数値の大きい方に記入して,表5を作成した。

 第3,第7セヅトは「一点の最高点」と「最大開脚」がともに2回目の方が大きく,仮説通り「浮 き」の評価も2回目の方が高い。しかし,第3セットで2回の跳躍に差が認められないと判定した観 察者が1名であったのに対し,第アセットでは2名なのは,第アセットの2回の跳躍の「最大開脚」

の差が少ないことと関連していると思われるが,「腰点の最高点」 「最大開脚時の腰点の高さ」につ

(6)

いては,第3セットより第アセットの方が差が大きく,他の要因が関与していることも十分考えられ

る。

 第1,第4t第9セットでは「腰点の最高点」は1回目の方が高く,「最大開脚の開脚の度合」は 2回目の方が大きい。しかし,第1セットでは「高点の最高点」の高さの差は。.6翻とわずかであり,

これに対して「最大開脚」の差は29.5。と大きく,さらに「最大開脚時の腰点の高さ」はその差わず かα9・cmであるが,2回目の方が高い。従って,これも仮説通り2回目を浮いていると判定した観察 者が多い。第4セットは第1セットと類似の傾向を示しているが,評価については,2回目の方を浮 いているとした観察者が4名いるものの,差を認めなかった観察者も4名いる。第4セットでは「腰 点の最高点」の高さの差はL7・cmと第1セットより0.9・cm大きく,「最大開脚」の差は22. o。と第1 セットより7.50小さい。このことが,第4セットの2回の跳躍に対して差を認めない観察者が4名 いることの一応の説明にはなるが,これだけでは不十分と思われる。第9セットは観察結果に混乱が みられ,2回目の方が浮いているとする観察者が4名なのに対して,1回目の方が浮いているとする 観察者3名,差を認めない観察者1名という結果になっている。これは「腰点の最高点」の高さの差 が&5・cmとかなり大きいためと思われる。しかし,「最大開脚」の差は20.5。でかなり差はあるが 第1,第4セヅトより小さく,仮説に従えば,2回目よりむしろ1回目の方が高く評価されるべきで 一これでは全体としては2回目の方が高く評価されていることの説明ができない。

 以上のことから,仮説は一応確められたものの,「腰点の最高点」と「最大開脚」の開脚の度合だ けぞは「浮き」の判定結果を説明することはできないことが明らかになった。

表4 腰点の最高点と最大開脚

第1セット 第3セット 第4セット 第アセット 第9セット

1回目 2回目 1回目 2回目 1回目 2回目 1回目 2回目 1回目 2回目

評     価(人数) 0

7

0

7 0

4 0

6

3 4

降監の最高点(on) 140.0 13{L4 13(L7 135.7 136.9 135.2 13α3 136.4 140.4 131.9 最 大 開 脚(度) 139.0 168.5 1260 1620 130.0 152.0 14ao 157.0 141.0 161.5 最大開脚時の腰点(cm) 134.5 135.4 127.0 133.3 131.0 131.9 125.0 13a1 133.3 130.3

表5  各セットの1回目と2回目の差

第1セット 第3セット 第4セット 第アセット 第9セット

1回目 2回目 1回目 2回目 1回目 2回目

1回目 2回目 1回目 2回目

評     価(人数) 7

7

4

6

1

二丁の最高点(cm)

α6 5.◎

1.7 6.1 8.5 最 大 開 脚(度)

29.5 36.0

22.0

15.0 20.5

最大開脚時の腰点(C771)

0.9 6.3

0.9

8.1

3.◎

(2)腰点の停滞

形態図から求めた各コマの「腰点の高さ」から,「腰点の高さの変化(=スピー・一ド)」を求め,図

一46一

(7)

図5を作成した(単位  cm/コマ)。 図5からわかるように,どのグラフもスピードが。付近

(腰点の最高点付近)で停滞している。しかも,この傾向は1回目(課題1)より,2回目(課題2)

の方が強い。スヒ。一ドの停滞をみるために,スピードが一2〜2の区間を囲み,各セットの1回目

(課題1)と2回目(課題2)を比較したところ,第アセットで1回目と2回目がほぼ同じであるほ かは,1回目より2回目の方が区間が長く,停滞の傾向が強いことがわかる。(グラフ申の斜線部分はt 1回目より2回目の方が区間が長い部分,横線部分は1回目の方が長い部分である。)第アセットで,

1回目(課題1)と2回目(課題2)に差のなかったことは,課題の達成の度合が他のセットより低 かったことによると考えられる(図4参照)。

16 14

i2

10

8

6

4

2

o

一2

一4

︒\一.

第・3セツト

一1回目(課題1)

16

14

\ゾ 12

       10

一一一一一

Q回目(課題2)

8

6

4

o

10 V

;f × x. 

 2

30コマ

2

の 

(顔/コマ)

    ・×・××・一・

.\

9

o o

一2

一一S

4

     了     \\コ

    ︾

    ・\/   ・\へい一\  .叉v\

16

14

12

10

8

6

4

2

 一6  (crn/コマ)

x

  16

14

12

10

8

o

 o

一一Q

一4

6

4

10

20

2

 あ 

(伽/コマ)

10

2

9    ●\

      \へ\.

  \

 養.

\\

 \ぺ

30:コマ

×・

図5

3(mマ e r6

一2

一4

一一U (CU/=]マ)

10

K7

 20

30コマ

腰点の高さの変化

(1コマ=O.02sec)

(8)

 「腰点の高さ」のスピードが。付近(腰点の最高点付近)で停滞するということは,すなわち腰帯 が最高点で停滞するということである。従って,課題2(最大開脚の時期を遅らせる〉は,腰点を最 高点付近で停滞させるといえる。

 さらに,この「腰点の停滞」が明瞭であるか否かは「浮き」の評価にも係わっていると考えられる。

「腰点の停滞」が最も明瞭に現われているのは,第3と第9セットである。このうち,第9セットで は既に述べたように「腰点の高さ」と「最大開脚」についてみる限り差は認めにくいが1回目の方が 高く評価されるのが妥当と思われるのに,全体としては2回目の方が高く評価されている。これは,

「腰点の停滞」が明瞭であることが,「浮き」の度合を高く評価させるのに有効であると考えること によって説明し得る。第9セットで「腰点の停滞」が明瞭に現われた2回目の跳躍の方を高く評価し たのは,観察者A,C, F, Gだが,この観察者4名は,第3セットについても「濁点の停滞」が明 瞭に現われた2回目の跳躍の方を高く評価している。(第9セットで1回目の跳躍の方を高く評価し た観察者は3名だが,そのうち1名は第3セットの2回の跳躍について差を認めていない。)逆に,

「腰点の停滞」が明瞭でなかった第4,第アセットについてこの4名の観察結果をみると,第4ある いは第アセットどちらか一方に差を認めていない観察者が3名,両方のセットに差を認めていない観 察者が1名であり,両方のセットに差を認める観察者は無い。一方,他の観察者は,第4セットの2

回目の跳躍に差を認めない者が1名だけで,他の者は第4,第アセットの両方に差を認めている。従 って観察者A,C, F, Gは「腰点の停滞」に重点を置いて「浮き」の度合を判定しているとみなす ことができる。この観点に立って「評価」をみると,「腰点の高さ」と「最大開脚」だけでは説明で きなかった問題が解決できる。

W ま  と  め

 実験で実施した30回(15セット)の全開脚とびについて,8名の観察者に「浮き」を評価して もらい,同時に全試技を16㎜フィルムに撮影した。さらに,実験直後に観察者に観察の視点につい て質問したところ,本実験での観察の視点は,,身体の部位では「脚(下半身)」にあり,運動の局面 では「最高点付近」にあることがわかった。

 フィルム分析から得られた資料と,観察結果を比較考察した結果,東京教育大学での実験で得てい 難戦全繭とびの「浮き」の度合の醤蝦には偶点の鵬点j。高さと「最大繭」の繭の度 合が関与し,「最高点」が高く,「最大開脚」の開脚の度合が大きい方が高く評価される。)を確認

した。さらに,実験で与えた課題(最大開脚の時期を遅らせる)により,零点が最高点付近で停滞し,

この腰点の停滞が明瞭であることにより,「浮き」の度合が高く評価されることがわかった。

 上記のことから,東京教育大学での実験結果とあわせて考察すると,次のように結論することがで きる。すなわち,全開脚とびを「浮き」の現象が現われるように実施するには,姿勢が乱れない範囲 で最大開脚の時期をできるだけ遅らせれば良い。最大開脚の時期を遅らせた実施は「高くとびあがる」

「最:大開脚の度合を大きくする」 「最大開脚を長く保つ」 「腰点が最高点付近で停滞する」ことに有 効であり,「浮き」の度合が高く評価される。

一48一

(9)

 また,全開脚とびで「最大開脚の度合が大きいこと」「最大開脚が長く保たれていること」はとも にこれだけで「良い実施」の条件であることを付記しておく。

V おわ り に

 全開脚とびについてどのようにすれば「浮いた」実施ができるのかという問題に対し上記の結果が 得られたが,「浮き」だけをみてもひとつひとつの技によって異なっている。今後さらに研究が続け られ様々な技について「浮き」はどのように実施したときに明瞭に現われるのかを解明していきたい。

 また,跳躍が「高くとびあがっているようにみえる」ことが「高くとびあがっている」ことである と考え,そのためには蜂く踏み切れば良いという短絡的な考えを指導者がもっことは厳に慎みたい。

 本研究を進めるにあだり,京都教育大学の上村先生には貴重なご助言,ご援助をいただき,同大学 体操部部員,体操研究室の方々からも並々ならぬご協力を得ることができた。ここに記して,ぐ厚情

に厚く感謝の意を表したい。

参考引用文献

(1)朝岡正雄:「浮き」の現象に関する運動形態学的考察一後方棒上宙返りについて一,1974年        東京教育大学大学院修士論文

(2)朝岡正雄=「浮き」の現象に関する運動形態学的考察一女子体操競技における山下跳びについて一,

       1975年日本女子体育大学紀要

(3)加藤明子:全開脚とびに関する運動形態学的考察,1975,年東京教育大学体育学部卒業論文

(4) 金子明友:体操競技のコーチング,大修館書店,1974年 P.423

(5)加藤明子:前掲書

(6)加藤明子:前掲書

(7)アルンハイム/波多野完治・関計夫訳:美術と視覚、美術出版社,1975年

(8) 日本体操協会:体操競技採点規則・女子(1975年版)

(9) Ukran, M:Technik der Turn u bungen

参照

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