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理科教育における観察の機能に関する 実験的研究(第12報)

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183

理科教育における観察の機能に関する 実験的研究(第12報)

・一 Uり子の実験における観察機能の分析一

自然科学教育研究室 高  野  恒  雄

§1.研究の意味

§2.調 査 方 法

ω調査対象

② 問 題 実 験

③ 採 点 基 準

§3.調査結果と考察 ω観察記録の実例

②観察得 点

㈲各観察点の観察率

(4)学業成績,知能との相関

§4.結     論

§1.研究の意味

本研究の第ll報までに,筆者は各種の観察,すなわち化学的物理的および生物的現象 の観察について,いろいろな面から分析し,観察機能を少しずつ明らかにしてきた。これ らの現象の観察は巨視的観察微視的観察のいかんにかかわらず,現象をありのままに徹 底的にくわしく把握し,特ちようを明らかにしていく態度を必要とする。しかし観察は,

この現象のありのままの把握,いいかえれは記述的観察を基礎としながら,現象の中にひ そむ法則的なものの発見に到達してこそ,その機能を十分に果すことになるわけである。

それには法則的なものの発見,確立を強く要求しながら,現象を選択的に観察する必要が あるが,また鋭どいありのままの記述的観察がその根底において大きく寄与していること も認めなければならない。

そこで筆者は次第にこのような,いわば法則発見的観察の機能をしらぺていく意図のも とに,その初めとして本報においては,振り子の実験を選び,観察機能をしらべてみたの である・振り子の実験とは・枠にとりつけた横糸に,オモリ(錘り)をつけた糸を2本並 ぺて結びつけ,一方のオモリだけを振ったとき,他の一方のオモリに次第に振動が伝わっ て生ずる運動を観察するよう仕組んだものであり,運動は少し微妙であるが条件統制が確

(2)

184       茨城大学教育学部紀要 第十号

実にでき,醐性の+分嫉験である.この振り子の運動における鰹機能を,分析的に

しらぺてみたわけである。

§2.調 査 方 法

(1)調 査 対 象

茨城期戴郡岩間町立岩聯一小学校,6年生48名・4年生46名,計94名・別種の観 察との相関もみるために,第ll報における被検者と全く同じ児童にしてある。

(2)問 題 実 験

用いた実験装置は力学の実験器具の一音陸利用して仕組んだ第1図のようなものであ

る。

鉄製の枠の上部に横糸をふつう   第 図 実験装置

の強さ(糸が少したるむ醸)に   一畿一・謙←急→

張り,この横糸の中央部に8cmほ

ど離して2本の糸を結びつけ,そ       、       

れそれの糸の先端に重量の等しい 金属のオモリを結びつけてある。

オモリの重量は269で,体積は

3cm3である。また用いた糸の重      鈷        徽 ウはlmで1.4gで少し太めの糸

ある。

そこで前述のように纐が一方

@製

籍欝二額㌘:霧梓  望      ワ合実験を3種類行った。第1の実

験は,オモリをつけた2本の糸の 長さを,いずれも等しく55cmに した場合である。第2の実験は始

めに手で振る方のオモリの糸を55cm,他方の糸を50cmとし,糸の長さを少しちがわせ た場合である。第3の実験は,始めに振る方のオモリの糸を55cm・他方の糸を27・5cm とし,糸の長さを2:1の割合に,ずっとちがわせた場合である・

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高 野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第12報)      185

それぞれの場合に異なった振り子の運動が行われるので,被検者はこれらを比較観察す ることによって,運動に一定のキマリがあることに気ずき,現象の中にひそむ法則的なも のを見出すようになるであろうと考えたわけである。実際には,つぎのような意味の指示 を与えた。

「これから行う三つの実験,すなわち糸の長さが同じ場合,糸の長さが少しちがう場 合,糸の長さがずっとちがう場合の各場合において,振り子をよく観察するといろいろな 動き方をすることがわかる。それぞれの場合について,できるだけよく観察して記録して ほしい。また最後には,三つの実験全体からわかったことを,まとめて書いてほしい。」

三つの実験は,教師の手によってそれぞれ2回ずつ行い被検者に観察させ(約5分間を 要する),一つの実験が終る毎に15分間の記録の時間を与えた。

実験を教師が行うとき・一方のオモリを始めに振る際は,オモリのついた糸が約45・の 角度になるように位置し,オモリを静かに放してやると,なめらかで振巾の大きい振動が

第1表  振り子の実験の観察点

A 糸の長さが同じ場合

A・  一方の振りが他方に次第に伝わつて,両方振れるようになる。

A・隊りの醐(速さ)は両胴じ。

A一振りの進狽合は,他方がおくれる.

A一振巾は嬬・大きくなり遂に}よ両方ほとんど同じになる。

B 糸の長さが少しちがう場合

B一振りの關(速さ)は,短かい方力・短かい(速い).

B一両方の振りの方向が反対になり,短か防がほとんど止まることがある.

B判その後は再び始めのように振れ出す.

B一全体を乱帳肪は,ほとんど変らないで振れる.

B一振巾は短かい方が小さい・

C 糸の長さがずっとちがう場合

c一全体を通して長肪は,ほとんど変らないで振れる、

c・随かい方の振巾は非常に小さ、・.

D 三っの実験からわかったこと

D引振り子の翻が,上の灘樋して,他方に移り伝わること。

  〔c刻振り子の糸の長さが短かいほど,振りの周期(速さ)が短かい(速い).

D一糸の長さがちがう場合の振りは,一様なくりかえしでなく渡化に灘ある.

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186       茨城大学教育学部紀要第十号

行われ,それが次第に他方のオモリに伝わって振動をよび起すようになる。この際糸の長 さがちがう場合は,現象を顕著にするために,長い方を始めに振るようにした。また糸の 長さが同じ場合は,二つの振り子が同じでまぎらわしくなるのを防ぐため,始め静止状態 におくオモリの方に赤いテープをまき,目印とし,区別しやすいように配慮した。

(3)採 点 基 準

振り子の実験の観察を,与えられた条件において徹底して行ったら,いかなる観察点が 見出されるかを,筆者らの観察によってつぎのように決定した。まず見出しうる観察点の 各々の要点を表に示すと,第1表のようになる。

第1表によって各観察点は大体要約されているが,各観察点についてさらに補足すると つぎのようになる。

A.糸の長さが同じ場合

A、:一方のオモリを前述のように約45°の角度から静かに放すと,なめらかに振動し,

それが次第に他方に伝わって両方が振れるようになることである。

A2:各々のオモリが1回往復するのに必要な時間,すなわち周期は等しいことがわか る。ただしこれを,振りの速さが等しいという形で表現をする被検者もいるが,実 質的には事実を把握しているものとみなし,採点した。

Aジ ニつの振り子の振動には,ずれがある。もちろん始めに振oた方が先に,他方がそ れより少し遅れて振れていくわけである。

A4:振動の振巾の大きさについては,一方の振り子を振ると他方は始めは静止している が,次第に振れ始め,その振巾は大きくなり,時間がたつと遂には両方の振巾はほ とんど同じ位になってしまう。なおこうなった場合には,A3に記した振りのずれ も非常に小さくなり,両方のオモリは接近してくるのである。

B.糸の長さが少しちがう場合

B,:糸の長いオモリの方を先に振らすと,糸の短かい方が次第に振れてくるのである が,その場合常に糸の短かい方の周期は糸の長い方よりも短かい(このことを短か い方の振りが速いと表現する者もいる)。

B2:糸の短かい方の振動は一様でなく,少し時間がたつと振巾が小さくなって,ほとん ど止まってしまうことがある。このことはB1にのべたように周期が糸の長い方よ り短かく,茅があるので,両方の振りの方向が次第にくいちがって,遂に逆になる ことに起因すると考えられる。

B,:糸の短かい方は上記のように一旦ほとんど止まってしまうが,その後は再び始めの

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高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究 (第12報)     187

ように振れ出し,振巾は大きくなっていく事実である。そしてその内にまた振巾が 小さくなってきて,ほとんど止まってしまい,このような現象を周期的に反覆する わけである。

B4:このように糸の短かい方の振動は変化するが,糸の長い方は全体を通してほとんど 変らずに,一定の調子で絶えず振れるのである。

B5:糸の短かい方は,振巾も糸の長い方よりずっと小さい。

C. 糸の長さがずっとちがう場合

C1:糸の短かい方は,振りが非常に小さく速く振れることである。このことはもう一方 の振り子より周期がずっと小さく,調子を合わせることがほとんどできなくなるた めと考えられる。

C2:B4の場合と同様,糸の長い方は全体を通してほとんど変らずに,一定の調子で絶

えず振れる。

C3:糸の短かい方の振巾は多少変化はするが,全体的に非常に小さい。

D.三つの実験からわかったこと

D1:どの実験の場合でも,先に振った振り子の運動が次第に他方に伝わっていくのは,

まず振り子の運動が上の横糸に伝わって,それがさらに他方の振り子に伝わって,

次第にオモリが動き出すのである。振動の伝わるこのような経路について理解でき るわけである。

D2:糸の長さがちがう場合は,必らず短かい方の振り子が長い方より周期が短かい。 C の場合のように長さがずっと短かいときは,Bの場合よりさらに周期が短かい。し たがって振り子の糸の長さが短かいほど,周期も短かいことがわかる。

D3:糸の長さが同じ場合は,二つの振り子の振動にずれはあっても両者とも一様な振動 をする。ところが糸の長さがちがう場合は,糸の短かい方の振り子の振動は一様な くりかえしではなく,振巾が変化し,振動そのものに周期的な変化の波がみられ

る。

以上でA,B, C各場合の実験から見出しうる観察点の数はAの場合は4, Bの場合は 5,Cの場合は3,合計12あることになり,またDの「三つの実験からわかったこと」の 数は3になる。

なお上記の観察点はかなり整理した上で示したものであって,例えば観察点A1および A3の事実はB, Cにおいても当然観察できるのであるが,極めて平凡な事実なので, A B,Cの順で実験を進めることを考慮して,最初の実験であるAの場合だけとりあげ,他 の場合には省略したのである。

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188      茨城大学教育学部紀要 第十号

実際に被検者の観察記録を評価する場合には,A, B, C各実験から見出しうる合計12 の観察点のうち,一つの観察点を見出し記録することができた場合,これまでと同様これ

を仮に1点の得点とすると,各被検者のこの観察において見出すことができた観察点の数 を点数で現わすことができるわけである。実際に採点する場合には,各観察点を前記のよ

うな表現で記録しなくても,実質的にその観察点を認めているとはっきり判断できるとき にはこれを得点に入れ,表現力によるファクターをできるだけ除くようにしたのである。

またDの「三つの実験からわかったこと」においても,三つの実験全体から帰納的に判断 できるD1,D2,D8の三つの結論のうち,一つ記録できた場合これを1点の得点として,

評価したわけである。

§3.調査結果と考察

(1) 観察記録の実例

振り子の実験の観察において,被検者はどのような観察をしているかを個別的にみるた めに,実際の観察記録をあげてみる。6年生,4年生各1名のものである。

まず6年生の男子児童のものをあげる。視力は左右ともに1・2であり・学業成績は5段 階法で全数科4,理科3である。

(1)同じ長さのとき

はじめに白いオモリの方をうんとゆらしたら,赤いオモリが少しゆれてきた。赤い方がだんだん大 きくゆれてきた。赤い方がどんどんゆれてきたが,すこし白い方よりおくれている。白い方は少し円 をかくようにゆれた。だんだん両方とも大きくゆれ,同じはやさでゆれている。

② 長さが少しちがうとさ

長い方がどんどんゆれても,短かい方は始め,波に乗つたようになって小さくゆれた。長い方はい つも大きくゆれているが,短かい方は大きくゆれず,小さくゆれ,親のあとからついていくようにゆ れる。短かい方がだんだんとまってしまうようになったが,長い方はとまらない。

(3)長さがずっとちがうとき

いくら長い方が,いつも大きくゆれていても,短かい方は少ししかうこかず,遠くからみると,と まっているようにみえる。

三っの実験からわかったこと

1.同じ長さのとき,白い方をゆらしたが,赤い方は始めとまっていた。すると赤い方も白い方と 同じ糸にくっついているので,白い方がゆれると,すぐ糸にひびいた。そして赤い方もゆれだした。

長さがちがうときでも,糸にひびくのがわかった。

2.長さが少しちがうときと,ずっとちがうときは,ゆれ方が長さが同じときとちがって,小さく て,ときどきゆれ方が変る。」

この観察記録は,表現はあまり十分とはいえないが,振り子の運動をなかなかよくとら えている。ωで「白い方は少し円をかくようにゆれた。」とある観察は,偶然的な現象に

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高 野.理科教育における観察の機能に関する実験的研究 (第12報)     189 ついての観察なので採点には関係ないが,始めに白い(金属色)オモリの方をゆらす場合,

約45°の角度から放す際に少し横にずれた位置において放したので,厳密には直線運動に ならずに幾分ダ円運動のようになってしまったことをとらえているのであり,細かいとこ うまでよく観察しているといえる。また②で「親のあとからついていくようにゆれる」と あるのは,長さがちがうので,長い方の振り子を親,短かい方の振り子を子供とみたてて,

表現しているわけである。この記録を採点基準によって採点すると,観察点AbA2,A騒,

A4, B2, B4, B5, C2, C3を見出していることになり,観察得点は9となる。最高得 点ではないが,かなりまとまりのある観察記録といえよう。また「三つの実験からわかっ

たこと」では,D、, D3を結論しているので,現象から帰納した結論の数は2となる。

つぎは4年生の女子児童のものをあげる。視力は左右ともにL2であり,学業成績は全 教科,理科ともに4である。

〔1)同じ長さのとき

始め赤いほうは,うごいていなかったが,少しうごき始めた。だんだん大きくうこいてくる。赤い ほうが白いほうについていく。赤いほうはだんだん大さく,白いほうとおなじになってくる。

② 長さが少しちがうとき

みじかいほうが,少しうこいてきた。だんだんうこいてきたが,まもなくとまってきた。とまった ら,またうこいてきた。またとまった。

(3)長さがずっとちがうとき

長いほうは大きくうこいていても,みじかいほうは少ししかうこいていない。うこいていないくら いだ。

三っの実験からわかったこと

1. かたほうのオモリがうごくと,糸がひっぱられてうごいて,それから上の糸もうごいてもう一 つのオモリがうごく。オモリのおもさは,ちがわないのだろうか。」

この観察記録も4年生としては,すぐれたものといえよう。「三つの実験からわかった こと」で,「オモリのおもさは,ちがわないのだろうか。」とあるのは,静止状態にあった オモリが一方のオモリの振動によって動き出すのを不思議に感じ,一方に「ひっぱられ」,

強引に動かされると感じ,このような現象は重さにちがいがあって,軽い方のオモリが重 い方のオモリに動かされるのではないかという疑問をもって受けとったものと考えられ る。現象に対する態度は主観的て誤っているといえるが,軽視できない推理力を感じさせ られるわけである。この記録を採点基準によって採点すると,観察点A1, A諦, A4, B2,

B,,B5, C3を見出していることになり,観察得点は7となる。また「三つの実験から わかったこと」では,Dlを結論しているので,現象から帰納した結論の数は1となる。

(2)観 察 得 点

振り子の実験における観察得点と人数との関係を図示すると,第2図のようになる。

(8)

190       茨城大学教育学部紀要第十号

第2図  観察得点分布      第2図から,4年生の

場合の人数の山は得点5 30

一        !  \ 一一一。4耳生    山は得点6にあることが

ZO

!    \      わかる。4年生の最高得       、

      、C      エ      点は8,最低得点は3で

(箔  !^       、         あり,6年生の最高は10,ノ       、

〆      、

ノ0

 ノ      、

@        、 f      、

^      又、       、、

にはもちろん6年生の方 ェ山が右にずれており,

00 ,   2,   3   4    3    6   7    r    9   10   

観察得点の高い者が多 親察得粟      い。ここにみられる一つ

の特ちようは,4年生の得点は5点,6点を中心に集中しているが,6年生の得点はかなり 分散していることである。低学年の方が高学年より集中化,平均化の傾向が強いことを意 味するが,これは高学年においては,いろいろな面で個性が強く分化してくるであろうこ

とを考えれば,自然なことといえよう。このことは別種の観察でもみられた傾向である。

つぎに被検者の平均観察得点を求めてみると,第2表のようになる。

この表から男女全体としては,4年生 第2表 平均観察得点

の平均観察得点は5.26,6年生は6.13で \1蜂生16年生i6年生牌生1

あって,比率は割に低く1.17倍であるこ 5.20 5.88 1・13

とがわかる。ここでまず注目させられる 5.33 6.39 1.20 1   1

ことは,4年生,6年生ともに平均観察 全 体 5.26 6.13 1・17 1 得点がかなり高いということである。す 女/男ll・・311・・9 1

なわち見出しうる12の観察点のうち,平

均約半分を見出していることになり,これまであつかってきた観察の中で最も高得点,し たがってやさしい観察の一つといえる。これはつぎの理由によるものと考えられる。

振り子の実験の観察において,実験そのものはその構成がかなり程度の高いものであ る。そして振動についての基本的原理を一応知っている者が実際に観察すると,なかなか 微妙な現象に興味を感ずるのが常である。しかしこの問題実験を何らの先入観なしに,専

ら観察の対象として懸命に把握する場合は,みかけの複雑さにもかかわらず,観察点は案 外見出しやすいのである。いいかえれば観察対象としての現象は,割に単純であるといえ

る。このことは振り子の実験のような純物理的現象に共通の性格であるのかもしれないと

(9)

高 野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究 (第12報)     191

考えられる。

第2表において,平均観察得点の女子と男子の比率をみると,4年生,6年生とも女子 の得点の方がやや高い・この傾向はこれまであっかってきた観察の多くの場合と一致する が,この場合は大きい得点差が存在するとはいえない。

つぎに第2表の平均観察得点をA,B, C各実験における平均観察得点に分けてみる と,第3表のようになる。

第3表  各実験の平均観察得点の比較 この場合,各実験にお 4 年  生 6 年  生 1

いて見出しうる観察点の

平均馴百鯖点 平均得剰百点瀧 6年生/4年生 数は異なり,Aの実験で

A 1.98 49.5 2.29 57.3 1.16 は4,Bの実験では5,

B 1.98 39.6 2.40 48.0 1.21

Cの実験では3であるの C 1.30 43.3 1.441・a・11.11

で,各実験における平均 観察得点を100点満点に換算した値をも,第3表の中に示した. この換算した得点でA,

B・C各実験を比較してみると,4年生,6年生ともにA実験における観察得点が最も高 く,C実験における得点がこれにつぎ, B実験における得点は最も低い(6年生の場合は B,C両実験が同点である)。

このことは各実験の構成の複      第3図  D 得 点 分 布

雑さの程度に関係している。す

なわちA実験は糸の長さが等し 70

「場合であり,現象も最も単純       60 6与生

で把握しやすいといえよう。B

タ験とc実験とはいずれも糸の舟。 、 、 、

@ 、

一一一一一一 S年生

長さがちがう場合で・A実験よ数4。 、、@、@ 、

り複雑な現象をあらわすが,こ ハ 、、

の中でも糸の長さが少しちがう多3。 、、 、

B実験の場合が最も微妙な現象 、、

を呈しているので,最も得点が  20 、、

低く,観察がむずかしいことに

@      10

、、 、

なるものと考えられる。さらに 、、、

0 、、@ 、 馬●、

B実験の観察のむずかしさは,

      0    1    2,   36年生と4年生の得点比がL21   D得裳

で最も高い事実とも符号するの

(10)

192      茨城大学教育学部紀要 第十号

である。むずかしい観察においては,年令差も大きいことは自然に理解されることである。

つぎにDの「三つの実験からわかったこと」における,現象から帰納した結論の数(こ れを仮にD得点とよぶことにする)と人数との関係を図示すると,第3図のようになる・

また被検者の平均D得点を求めてみると,第4表のようになる。

これらの図表から,D得点は男女全体         ▼

第4表  D得点の平均値

として4年生は052,6年生は0.80,比 \い年酬6年生16年生牌生

率は1.54であり,また得点分布からいっ

0.44 1α73 「 1.66 ても,6年生が全体的に4年生より高い 0.62 0.86    1.39

ことがわかる。しかしD得点の満点は3 全 体 0.52 α8・il.54

であることを考えると,決して高い得点 女/男 1.41}1・18

とはいえない。観察したことからさらに

帰納的に結論を導くということは,なかなかむずかしいことが理解されるのである。実験 の観察記録をみてもわかるのであるが,被検者はA,B, Cの各実験の観察に没頭してな かなか注意深く現象をみつめているのであるが,その割にA,B, C全実験を全体的にな がめているところが少ないようである。帰納的に結論を導くためには,まず実験の現象全

第5表  各観察点の観察率(%) 体を展望して考える視野の広さが必要な

観馴・年生 6年生6年生聯生 のであろう。

A1 100.0 100.0 1.0

(3) 各観察点の観察率 A2 4.3 25.0 5.8

A3 86.9 95.8    1.1P 振り子の実験の観察において見出しう A4 6.5 83     1.3 る12の各観察点と「三つの実験からわか B1 2.2 1q4 P生7 ったこと」の各結論について,それを見 B2 56.5 60.4 1.1 出した被検者は全体の被検者の何%にあ B3 435 39.6 0.9 たるか(観察率)を,4年生と6年生の B4 15.2 35.4 2.3 場合について比較的に示すと,第5表の B5    80.4P lga81 1・2 ようになる。

C一  λ2i Zl        [ [  1.0

第5表から大体においては,もちろん C2 32.6 458・ 1.4 各観察点および各結論について6年生の C3 95.7 95.8 1.0 方が4年生よりも観察率は高いことがわ Dl 34.8 37.7 1.1 1かるが,その程度にも相当の差があり,

D2 6.5 8.4 1.3 [  また中には逆に低いものもある。また6

 D3 10.9 33.4 3.1 ; 年生と4年生の年令差の大きさは,観察

(11)

高 野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究 (第12報)     193

率の比として示してある。

各観察点の観察率を比較してみると,観察点A1(振動の伝わり方)の観察率が特に高 く4年生,6年生ともに被検者全員観察しており,それについで観察点C3(短かい方の 振巾),観察点A,,(振りの進み具合),観察点B5(短かい方の振巾),観察点B2(短か

い方が止まる)などの観察率が高い。それに対して観察点C1(短かい方の周期),観察点 B1(短かい方の周期,観察点A2(周期),観察点A4(振巾)などの観察率は非常に低い ことがわかる。

観察点A、が特に観察率の高いことは,いろいろの観察点の中で一番先に目につき,ま た最も単純な事実でもあるので,全被検者が観察したことは決して不自然なことではな

ヤ、。

ところで他の観察点の観察率において最も興味あることは,A, B, C各実験における 周期についての観察点,すなわちA2, B1, C、の観察率はいずれも最低位をしめ,した がって最も観察のむずかしい観察点となっていることである。また観察点A2およびB、

においては観察率の年令差も大きい。

それに対して振巾についての観察点,すなわちB5,C霧はそれぞれBおよびC実験の 観察において最も高い観察率を示しており,同じ振巾についての観察点A4だけが低い観 察率を示しているのである。

まず周期についての観察点について考えると,採点基準のところでのぺたように,表現 は「振りの速さ」といったものになることが割に多いのであるが,ともかくどのような表 現でも実質的に振り子の運動に周期的なものをつかんで比較していれば,採用したわけで ある。それでも最もむずかしい観察点となっていることは,周期はやはり相当抽象的な概 念であり,全体的把握が必要なのであるといえよう。振り子の運動を瞬間的にとらえるに 止まらず,運動の全体的な流れを時間的にとらえることは,より高度の観察であると考え

られる。

これに対して振巾についての観察点においては,運動を一応全体的にとらえることは必 要であっても,巨視的につかみとれば観察できることなので,時間的な流れよりははるか に容易に観察しうるものと考えられる。この場合同じ振巾についての観察点であるA4だ けが低い観察率を示しているのは,糸の長さが同じ場合は両方の振り子の振巾は大差ない ので気ずかないか,両方を比較しようとしないかによるのであろう。

それから観察点B4およびC2は,いずれも糸の長さがちがう場合は長い方の振り子は 全体を通して振巾がほとんど変らないで,同じ調子で振れることの観察であるが,平凡な 観察点である割には観察率が低い。これは短かい方の振り子の変化に注意が集中されてし

(12)

194      茨城大学教育学部紀要 第十号

まって,長い方の振り子の全体的な状態には案外気ずかないのであろうと考えられる。い いかえるならば,変化の中で不変なものを把握することは,案外むずかしいことを意味し

ている。

つぎにDの各結論についてみると,まず周期についての結論D2(糸の長さと周期の関 係)の観察率が低いのは,上述の事情から自然である・結論D・(糸の長さがちがう場合 の振動の特殊性)においては年令差が特に大きいが,これは三つの振動全体にわたって比 較考察してはじめて得られる結論なので,思考の要素も多く,年令の高いものに有利なの であると考えられる。

(4)学業成績,知能との相関

観察得点とこれらの間の相関係数を求めてみると・第6表のようになる・

4年生,6年生を通じていえることは,

第6表 観察得点との相関係数

F   l蜂釧6年生

数が高いことであり,これまであつかって

全教科成績 +0.49   +0.40

きた観察の場合と同傾向である。また調査 理 科 成 績 十〇.52 十〇。25

対象のところでのぺたように,振り子の観

知 能 指 数 十〇.38 十〇.22

察の被検者は第ll報におけるヨウ素の観察 ヨウ素の観察得点 十〇.20 十〇.47 1

も行っているので,両者の得点の間の相関 を求めてみると,表に示されているように同じ観察の間でも相関がかなり低い。このこと は同じ観察とはいっても,振り子の観察はこれまでの観察と質的に異なった面をもってい

ることを示しているといえよう。

以上は振り子の実験の観察について実験的調査を行い,その結果を分析したものである が,大約つぎのようなことが認められた。

(1)純物理的な振り子の実験における観察は,現象の中に法則的なものの発見をめざす はたらきを要し,これまでの観察とは質的に異なった面が見出された。

(2)また一面,振り子の実験の観察はみかけの複雑さにもかかわらず,至って単純な現 象も含み,小学生でも容易に観察できる面も合んでいることがわかった。

(3》振り子の振動の周期についての観察は特にむずかしく,変化の中で不変なものを把 握することもされがたい。現象から結論を帰納することもむずかしい。反対に振巾につい ての観察は概して観察しやすいなど,振り子の運動の観察の特ちょうを明らかにすること

(13)

高 野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究 (第12報)     195

ができた。

終りにのぞみ,本研究の調査に便宜をはかられた茨城県西茨城郡岩間町立岩間第一一小学 校の職員の方々に心から感謝の意を表する。

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