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SHESのConceptual Modelの理論的検討             (その一)

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(1)

SHESのConceptual Modelの理論的検討

      (その一)

保健体育科学校保健研究室内山 源

      1.緒   言

こ整でアメリカのSch・・I H・alth野ducati・n・tudyの研究成型こついては昭和42聴 昭三氏によって,続いて昭和44年小倉学氏によってさらに詳しく紹介されている。したがって,ここ で改めて紹介する必要はないであろう。むろん,紹介といっても,殆んどそのままに内容を報告するも のもあれば,検討・コメントをつけてするものもあってよい筈であり,その意味で筆者が改めて検討す ることも意義のないことではないようである。

 本稿では,内容の紹介どいうよりtこれまでの筆者の「保健教育内容の選択・構成の原理・基準」の 追求で問題となった理論モデルないし概念枠組の観点から検討をすすめることにしたい。

 すなわち、「保健教育のカリキュラム・内容・教材・領域とか基本概念が,どのような原理によって 編成されたか」についてである。SHESにおいては3っのKey conc eptsの下にxoの基本概念を 構成し,さらにその下位概念を設定し,これに行動目標を対応させている。

      3)

 つまり,Ten Concepts:The Scope of the Health Educat孟on Curriculwn はど のような原理において「導出されてきたか」ということである。一般的カリキュラム構成原理について        4) 5)

       6)

は,筆者がこれまで保健教育内容の構成原理を追求する過程で,ふれており一部発表,報告したが,こ こで問題にしたいのは一般的な構成原理のことではなくて,保健教育独自のカリキュラムに対して,ど のような理論的,論理的原理をSHESにおいて追究しているかである。

 我が国の場合,画一的な基準である学習指導要領があるが,これには小学校から高校まで保健教育の 内容,領域が計画され,これに拘束されて保健授業が実践されている。そして,学習指導要領が約十年 間隔で改訂されるたびに,この内容・領域は削除されたり,ふくれたりするのであるが,修正や改訂す る場合にも当事者には何らかの基本的な原理を有している筈であり,恣意的にムード的に行なっている わけはないであろう。まして,初めに学習指導要領という基本的な内容計画を構成する場合には,各科 教育において基本的な枠組・構成原理があった筈なのである。

 もっと具体的にいうなら,研究者側では近年の小倉教授の6領域試案等があり,一方,現場の授業実 践に用いられている保健の教科書には,さまざまな領域や教材内容が構成されているのであるが,それ はどういうことになるのであろうか,どういう理由からそうなっているか,ということである。そして,

広げてアメリカについてみるなら,種々様々な内容領域がみられているのであるが,それは現実的,適

用の段階で修正や改変が行われて提示されたものであるにしろ,それ以前に,何らかの原理にfO いて理

論的・論理的に構成されている筈であるから,それらには一体どのような原理のもとに,具体的な.「]rhe

(2)

Scope of the Hea箆h Education Curriculumがでてくるのか,原理は共通であって,現 実的適用条件が異なるから,Curriculumが異なるのか,原理から基本的に異っていてそうなのか,

原理などといった基礎的理念枠はなくて,ただ伝統的慣習的に作られているのか等といった諸点か,科 学的教育内容の構成とか,教育科学の理論構成という面から,重要な問題と考えるのである。

 原理が人類の共通の文化財として相互に研究的連関がなされ,理論的認識が保持されることになれば,

国内では無論のこと,国際的にもこれほど保健教育の推進向上のために有効なことはないであろう。

 学習指導要領のそれが曖昧であったり,無自覚的,伝統的であるとすれば,この面の追究によって,

その改訂構成に大いに参考になるであろうし,研究レベルにおいて保健教育のカリキュラムを考究する 場合にも教育的価値:は高いものと考える。

 本硯究はそのような意義と目的のもとに,アメリカのSHESを対象にして,教育内容領域をうみだ す原理等を検討することにした。

      2・ 3鵬yGo職⑯μSと900◎黙鵠購謬

 先ずSHESのTefi C◎ncept:The Scope of the He alth Educatk on C厩rriculu:m についてみるとしょう。

①発育とか発達とかいう発育発達過程における段階は個体の構造や機能に影響を及ぼすが,また個体   の構造や機能がその発育や発運に影響を及ぼしている。

②発育することや発達することは予測的な系列をたどり,しかもそれらは各人に独自な筋道がある。

③健康を保護,維持,増進することは個人の責任であり,また,地域共同体や国際間の責任でもある。

④危険性や事故に対する可能性は,如何なる環境にも存在している。

⑤人間と病気と環境との間には相互作用の関係がある。

⑥家族は人の生命維持を支え,確実な保健ニードを満たすように働く。

⑦個人的な健康に関する諸行動は多くの複雑な要因によって影響され,これらの要因は相互に矛盾す   るものとなっている。

⑧価値観とか認知等といったものが健康情報とか健康に関する物品・用具や公共事業の利用に影響す   る。

⑨気分や行動を変える物質の使用は各種の動機づけから起る。

⑩食物の選択や摂食の型は身体的,社会的,精神的,経済的,文化的要因によって決定される。

 以上が,10概念であるが,この下に下位概念が31設定されている。この下位概念については数が 多くなるので,本稿ではかるくふれることにし,この上の3っの概念について次にみるとしょう。すな わち,Three Key Concepts:Processes Affecting Health Behaviorであり,これ は健康を支える過程を特徴づけるカリキュラムのまとめ糸として働くものである。そしてライフサイク ルにおける過程を表わすものであって,性別とか職業,経済的水準とか社会的地位といったものには関 係なく各人に典型的であるライフサイクル過程を意味しているとされている。

そめ①っは「成長することと発達すること」であり,それは動的な生活過程であり,個人が或る点では

総べての他の者と共通に類似し.また,或る面では何人かの者と類似し,その他の面では誰とも類似し

ないという,動的過程を意味している。

(3)

その②は,「相互に作用すること」であり,動的な生活過程が進行する中で,個人は環境の申の一定の 生物的,社会的,心理的,経済的,文化的,物理的力によって影響されたり,影響を及ぼしたり するということを意味している。

その③は「意思の決定」である。これは人間にとって独自な過程であり,ある行為をするかしないかと か或るものよりもむしろ二者択一的に一方を選択するという意識的に決定することを意味レている。

 そして,次の図の如きモデルを示し,3っのKey conceptsとdime簾s重。難◎f healthの相 互関係を示すものであるとしている。

DEC亙S夏ON MAK亙NG

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  ・ゼ1 醤

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   pa 1. Dynamic tnterrelationships of the Key Concepts−Growing and Devc・lopiRg,

,Xn, teracting, and Decision Making一 to the Dimensions of Map一一一Physical, Menta・1, and Social.

健康のジメンショオンとは身体的,精神的及び社会的といった所謂,WHOのそれである。

 そして,先の10概念の意味するものは学科としての健康教育の領域を反映するカリキュラムの主要 な要素であるということである。

     3. 3Key conceptsから10conceptsへの導出の論理について

 以上でSHESの保健教育の概念的枠組の大要を述べたわけであるが,このC◎nceptual fram().w〈)rk には,この下に「下位概念」と「長期目標」と「行動目標」といったものがあって,さらに詳細に述べ られているのであるが,本稿ではそれ以上,深入りしないで10概念を導出する基本的概念としての3 鍵概念について検討してみることにしよう。

 先ず,3Key conceptsの「Growing and Developing」であるが,先ず説明からわかる

(4)

ようにライフルサイクルにおける過程を表わすものとして「動的な生活過程」をとうえている点に注目 したい。つまり,健康を支える過程にはこの動的な生活過程を抜きにしては記述も説明できないという ことであろう。

 だから,その説明で,受精・妊娠から死までの連続的な生活過程を展開させることを,このGrowi㎎

とDevelopi㎎が意味するのだとしているわけである。つまり,出生から死までの時間的次元における 変化・変動を意味しているわけである。

 健康の維持・成立現象を表わすモデルに疫学の基礎的原理として示されたLeavellとClarkの Di・9・・mがあ ィここでは面こ塒間触元」趣味する内容が欠落しても ることは慨に発表

報告した通りである。

 その意味で,このモデルはLeavel lらのモデルのようた疫学的現象をオリジナルとして,その記述説 明のためのモデルとしての明確なとらえ方はなされていないようにみえるが,つまり,ノーベル賞受賞       8)

生理学者であるエクルスも引用・紹介したりしたイギリスの著名な哲学者であるPopperの世界像の1 を反映するものとしてのモデルではないが,「時間的次元」において成長発達を主要素とおいている点 はクラークらのモデルを超えるものとして評価したい。

       9)

 筆者が別に「成長・発達の成立要因・条件」を提示したり,また,その中に健康や安全を位置づけた りしたのは,この時間的次元の必然性とか不可欠性の故である。

 しかし,これがdynamic interplayを示すものとはしているものの,「変化,変動」という概念が,

時間的嘉例に沿って記述,説明されているかとみれば.これは下位概念等にも全くみられず,時間的次 元ので断面において成長発達現象の説明が概念1及び2において細かくなされているに終っている。

 すなわち,受精から誕生,小児期から思春期などといった時間的系列における段階は,その変化,変 動の型の特徴によって呼んだものであり,成熟にしろ,老化にしろ,成長・発達過程を記述するものと

して必要な概念では添いか,ということである。

 なるほど「fr㎝conception to death」とはしてあるが,それらの期間はすべて「Gro wi ng md D曾veloping 」で1まない特定の時期に対応した「変化・変動の型の特徴」が存在するわけである。

成長発達の他に成熟,萎縮,老化があればこそ死があるわけである。

 この点が欠けると時間的次元における各段階の健康像や疾病像の把握のための基準・根拠は導出する ことが困難と考える。

以上が3Key Conceptsの第1Key Conceptの概要であるが,それではGr(}wi㎎とかDeveloping のDynamic process 或は Life cycleに乗るものは何か,ということが次の問題となる。

即ち「何が」このプロセスに乗って成長,発達するかということである。

 これは次の10概念への仮説的作業となる論理的考究の過程を意味している。この検討は後にまわす ことにして,第2の:晩yConceptに入ることにしよう。即ち「Interaction」である。これは個体が 物理的,生理的,社会的世界への力動的な関係であり,この過程を絶え間ない変動状態にあり,そして 相互作用は,これらの関係に平衡状態をもたらしたり,関係の安定性をこわしたりすることもありうる とし,人間にとって相互作用は成長発達や意思決定の過程に附随的なものであると述べているように,

ここでは環境世界におかれる個体ないし主体(Host)がその環境世界に不断に作用をもち,その作用

を働きかけることによって,逆に作用を受けているという相互のアクション関係を示している。

(5)

 これは先の時間的次元における変化,変動に対し,空間的次元における個体と環境世界との関係を

「相互作用関係」としてとらえたものであり,しかも時間的次元の変化,変動に対応するものであるこ とから,個体・主体の位置と構造の大略を時間と空間的次元におさえたものとしてきわめて優れたもの であるといえる。

 したがって,次位概念にはどのような相互の作用があるのか,それらの相互作用に関わる要素・要因 にはどのようなものがあり,しかも要因関の関係構造はどのようになっているかが 下位概念導出への       s

仮説的な論理となる。

 また,この説明の中にbalanceとかdisrig)t the stability of the relationshipというのが あるが,これはきわめて重要な説明であると考える。相互作用という過程で健康への平衡性が保持され たり,平衡性や若干のアンバランス状態の安定性が破られたりするのもこの「作用」としての動因・要 因を考察の中に入れているからであろう。

 つまり,何が「動因・要因」として働きかけ、「作用」をもっから,逆に作用を受け相互作用となっ て平衡性をもたらしたり、その安定性がくっがえされるかという点である。

 つまり,個体にとっては意識的にあれ,無意識にあれ,どのような働きかけ・作用をするかというこ とであり,環境世界からは自然的に社会文化的に,どのような要素が動因・要因となってどのように作 用してくるか,ということである。

 ここでは,必然的に個体のHGmeostasisやHeter◎stasisとか適応, Adap£ationと Adjustmentから変革といった概念が,下位概念において導出されることが期待されるわけである。

 さて,終りの第3のKey conceptであるが,上に示唆したように,人間にとっては環境への働きか け・作用に「意思を決定すること」を抜きにすることはできない,ということである。むろん,働きか けの主なものとしての人間的行動の申には,明確な意思決定によらないものとか,無意識的行動がなく はないが.人間にとってユニークな高次の科学的問題解決的行動にはこの意思決定・行動要因は不可欠 といえよう。

 では説明をみるとしよう。すなわち「個体は意思決定をすることで生活状況を理論的に考えることや 問題を解決したり,またある程度,どんな行動をとるかを決めることができるのである。」

 そして,「これらのKey conceptは健康の総体的概念を指し示すものであり,解明していること から,健康教育の枠組を形成する」としている。

 ところで,筆者はこれまで保健教育内容の選択・構成の原理基準を追求してきたのであるが(図2参 照)C一①の中にもbを独立させたのは当に∫この人間にとってユニークな問題解決の過程を重視した からである。したがって,SHESでは「意思決定」となっているが,筆者は,図1の①一aの方で静 的な疫学像を構造的にとらえるものから,これを動的な主要因として働く「行動要因」として①一bへ の「橋わたし」的存在としてとらえているのである。

 SHESでいうバランスを維持し,安定性を破るものとしての「行動要因」である。しかし,行動要 因が関連する「問題解決過程jは,SHESのように単純なものであろうか,人間を人間たらしめてい

る科学や技術を支え,それによって影響を受け発展するものとしての問題解決過程は,高度で複雑なも のであって,しかも人間の健康問題に独自のものも存在するということである。たとえば「健康管理」

とか「スクリーニング」とか「疫学の方法」などをいっ牟ものである。

(6)

これらの諸点は下位概念でどのようになっているのであろうか。

Aレベル

図2.保健教育内容の選択・構成の原理

Bレベル

構蒲制 匿撒1⑫瞼i

榊儲膿窒,ゆゆ(離灘構造イ)

争一一

   Cレベル

L保健・安全に関する科学知灘と

         く。)その論理

T

 ・)、1己述・説明剖;・要出構竈子働

        }要囚

 b)保健問題解決過程部 の構造 ぼ学習茜の条件。心身発達段階へ  の対応 i/

 a)保健認識・学力,興味,態度等  b)セ体以外の学習築件

4教育理論  a)教授。学習理論

ii

 b)教膏緬値,目的論

④圏民的,人類的課題からの・=一ド a) Social needs

b) Social relevance

 晴 間 的 縦 軸

(保健教育内容のTime}ag)

Dレベル

 瞬副

      4.下位概念導出展開における主な問題点

 以上で,一通りの3つのKey conceptsと10conceptsの概念についてふれたのであるが,ここ で基本的におさえておくべきことは,①3つの鍵概念の説明から10の下位概念は如何なる論理をもっ て導出されうるか,また,導出する過程で論理的矛盾とか無理は存在しないか,若し,3K6y concepts の上位機念のみを有したら,この概念の枠組で果して10概念に相当する枠組が,どれほど導出させう るか,別の下位概念の可能性は皆無なのか,そうではなくて,全然,別の枠組とか下位概念が創出でき るのか等といった問題と,②一体,上記のような検討過程を踏むことによってこれらの概念枠組間の関 係は上位から下位へ「演繹的」に下向的論理を展開したものなのか,逆に「帰納的」に下位概念から下 位枠組が形成され。更に上向的に論理を「帰納」して上位概念・枠組が創出されたものか,という

SHES研究グループの作業過程における作業手順の問題である。

      1 e)

 筆者はかって,その点についてふれ,3Key conceptsは「学習の結果得られるもの」としてとら えていることに幾つかの疑問をもったものである。

 本稿に関係するものを一一ヒげると其の1は上の②に対応することで,SHESのグループはどのような 研究過程・認識・学習過程のそれこそ「End Result」としての3Key concepts等に到達したか,

ということである。

 なるほど,ごく一般的に「概念」が学習とか教育にとって必要ないことはPhenixやWoodluf f等を

引用して,conceptの重要性を説いている。この点は別段,なんということでもなく当然の手続きとい

えるのであるが,一体そのように「重要な概念」は「どのようにして一jEnd Resuitに「なりましたか」

(7)

というζとと「なりうるか」ということへの疑問である。.

 なるほど:Nation wideに各種のSur▽eyを実施してSu㎜ary Report等にまとめられてはいるが,

(我が国のそれと比較するとき高く評価したい)これらのデータ・情報はどのような研究過程・作業過 程を得てEnd Resul tと関連しているのか,結合しているのか,ということである。そうなると,それ

らの点については殆んど説明がないのである。

 次に其の2であるが,これは先の「なりうるか」の根拠である,実証的論拠である。筆者がクラーク らのモデルについて実証的にも研究検討した過程では,3Key Concepts自体は,きわめてすぐれた概 念であることは認めたが,これが,単純に,筆者が主張する原理(図1)の②、③,④の根拠を抜きに

して,如何なる発達段階の,如何なる学習者の条件の学習者に,ブルーナー流にいうなら,知的性格そ のままにして,学習された結果が「3Key conceptsjに到達するとは全く無理,妄想としか思えない のである。

 いってしまえば,図1の②,③,④の根拠が不明確なカリキュラムなど存在し得るか,ということで ある。若し①のレベルでの研究であるとしたら,そのような保健教育内容構成理論における構造土の説 明があって然るべきものと思う。

 それらが欠けているとしたら,一般の教育原理におけるカリキュラム構成原理に矛盾することでもあ り,無視したものともなるわけである。

 疑りに,図2の①のレベルの研究とするなら,その論理構造はどうであろうか。これが其の3の問題 点である。少し先まわりしてしまったが,わが国の数少ないこの面の研究者の中で「Subconceptiori

とかSu.bstantiveelements の内容は多少,論理的こじつけ・無理があるのではないか」といった 声を耳にすることがあるが,正にこの点を突いたものを指している。

 このSubconceptionの枠組における要素間の構造の検討は深入りしないで,以上のごとく,SHE S モデルの問題点を総観した上で元の①に帰ることにしよう。

       5. 下位概念への下向的導出の論理

(1) Growing and Developingから

 先ほどかち繰り返すようにSHESの3Key Conceptsは,きわめて優れた概念枠といえる。少なく とも,これまでの漠然としたものとか病因論的枠組とか,Clarkらのモデルからすれば論理的にも,理 論的にも整合され,要素が整備されているといえる。その意味で高く評価したい。

 たとえば,このモデルは,我が国においてみられるようなクラークのモデルを,モデルとしての論理 性を半ばネグレクトとして若しまぎれに修正したかのような行動要要因と動因・病因との置換操作・

「スリ換えモデル」よりは一応理論的であるといえよう。

 ここでいう理論モデルは概念枠としての言語的表現にモデルを限定しているのであって,実際の教育 や学習の有効性にとって重要な「図式的視覚的モデル」のことを指しているのではない。そのような意 味でSHESのモデルは優れているといえるのである。

 だが,この3Key conceptsと10ConceptsとさらにSub conceptとの間にはどのような論理

的連関があるというのであろうか。ここではそれについてみることにしよう。ところで連関をみるとい

っても先にも述べたように,上位の概念枠から下向・下降的に連関を求める方向とその逆とがあり,そ

(8)

して,連関を求める際の内容領域・要素・構造等の枠組設定の論理性を検討しておくことが必要となる であろう。

 SHESの説明文の中には,どのように3Key conceptsを展開したかは,明確にふれたものがな いが,丁度,同じ頃,出版されたFodorの「Health王nstruction jでは若干の説明がこの辺の事情 についてなされている。 「These concepts or ideas are next in order of abstractness on

a descending scale・ IEhey are classi fied under the three  Key concepts )) i n the fo 11 ewi ag manner」つまり,SHESでは下向的に展開したということであろう。

 したがって,Fodorの紹介する10conceptsは〔Growing and Developing〕に対応して,1と 2のconceptsがあり,〔D ec ision Maki ng〕に対しては3,4,5,6があり,〔Interaction〕

には7,8,9,10となっている。これらは先の森氏が紹介した通りである。

 もっとも:Fodorのそれは1966年であり,SHESは1967年で,一年ずれており,その間に修 正され,そのような分類は取りはらって3Key conceptsと1◎conceptsとの枠組はなくなっている。

だが,基礎作業においては,:Fodorが示したような枠組でなされたことは確かであろう。むろん,

Fodorもそこで,これらの概念は分離,独立したものではなく,相互に関連したものであると述べてい る点は当然のことといえる。

 そして,:FOdorは「Tbe final or kowiE}st of concepts or ideajのことをSubstantive elements(独立した本質的要素)としており,SHESではそれをSubconcepts という用語で呼ん

でいる。

 そして,F◎dorはこのG)nceptua1:Frameworkをべた褒めし「Theore ticaUy sound and may be the  best・・approachjとさえいっているのである。筆者は基本的には優れたモデルと考える が,サーベイによるデータコレクティングからの作業がすすめられたとはいえ,図2の原理におけるC の②,③,④の観点1こおいてみるとき,やはり部分的であり,これらの観点の曖昧さが残り,欠落した カリキュラムとみなくてはならないと考える。FOd orは歴史の検証が明らかにする筈である,などとい っているが,これらが実曄活動をフィルターとするとき,そのような見方が可能であろうか。まさに best approachでないことを明らかにするものと考えている。

 また,Russe1も上位概念と下位概念との関係についてふれ「Emerging from these Key concepts are ten conceptsjとしており,鍵概念から出てきたものが10概念であると述べており,

彼はさらにKey conc eptsとDimens ionとの関係について簡単にふれているが,その説明には必ずし も納得がいかないと考える。

 では,一体,3Key conceptsから10conceptsがどのように.して出てくるのであろうか,先ず初 めにGrowing and Developi㎎であるが,これは個体の時間,空間における変化,変動の諸現象を本 質的に捉え,記述,説明するものであることが求められる。したがって発育発達現象に関わる諸科学をそ の基本的枠組とすることができる。むろん,諸科学というからには科学の間に統一された,統合された 学問体系があるわけではないので,これらについて教育の学習のための連関的な概念枠組をつくること が必要となることはいうまでもない。それはどのような手続きにおいて可能なのであろうか。

 先ず,発育発達に関する研究の諸成果が対象とされ,ここにおいて現象を記述するものと現象を成立

させる要因条件においてとらえることになるであろう。

(9)

 この観点からすれば10概念の1と2はきわめて論理的に構成されているといえる。だが,その下位概 念となると,どうであろうか,発育発達に「性差」があること,「個人差」があること,また,それに は「変化変動の型」があり,「過程め型」があるのであるが,そのように時間的系列に沿って変化変動 するものについての学習も重要である。

 つまり,先にも述べたように「何が」発育発達するかについての学習である。これは,次の「決定す ること」「相互作用」でも「共通の要素・因子」として重視されるべきであろう。「何が」決定するかで であり,「何が」主体的に相互作用をもっかということである。

 となると,やはり下位概念にはそれこそ系統性を保持した「人体の構造と機能」に関する教材が,時 間的系列に沿って、即ち,上述の系統性とは異った発育発達の系統性において教材化されるべきである。

 ところで,これらを下位概念についてみると,どうも両面とも系統的とはいえない。人体の構造に関 する基本的概念・要素概念間の系統などあったものではないのである。また,機能についても同様であ る。相互に関下するからといって1◎conceptsの中を,3iconceptsの中を右往左往するだけでは,

カリキュラム自体がばらばらカリキュラムといわれても仕方がないのではないであろうか,森氏もその       11)

ことについて「系統的段階的な知識の提供という面では欠けている面が多い」としているのは首肯でき るのである。

 このことはBehaviorai objectを導入したという優れた面と矛盾することではない。それとは 別にして,欠点と,いうことができる。同じように,発育,発達の現象の記述内容にしても説明内容にし ても,「どこに」 「何の」「どのような」sequenceがあるのか不明な点が少なくないし,Progression Leve1の四段階にしてもt妥当性について疑問が残されるのが少なくない。一体,実証的,実践的根拠 と,どのように結びつくかということである。

 しかし,何といっても理解し難いことは,発育発達の学問的成果を基準とすればsこのような概念が 設定し得るかということである。概念の2はまだ分かるとしても,1に至ってはどのように把握してよ いのか理解し難い。2がそれらの「記述」とすれば,1は「説明」であろうから,個体・主体の発育発 達現象を成立させる要因・条件との関係についての説明教材が求められるのである。したがって,「発 育発達」という個体の時ぼ系列における変化・変動の現象は,どうして個体の本質部である構造や機能 に影響すおのであろうか;ということである。むしろ,そのような現象は,どのような要因・条件によ って生起,消滅,変化するかの関係についての概念の方が妥当するのではないであろうか。

 現象が本質を規定するのではなくて,「本質が現象するjのであろう。だからといって本質部という のは単に「個体の構造と機能」をのみ意味しないことは「疫学の論理」からみれば当然である。発育発 達に影響を与えるのは「個体の構造と機能」のみではない,とすれば,この第1概念は実質的におかし

いということになるのではないであろうか。

(2) Interactionから下位概念へ

 次に第2のKey co難cepts群についてみるとしよう。つまり「相互作用」である。

これはきわめて重要な基本概念であり,その点からすれば,幾度もいうように,すぐれた概念枠といえ

る。 (続く)

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