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遅延故障検出のためのテストパス集合の生成手法に関する研究

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Academic year: 2021

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修士論文要旨(2013 年度)

遅延故障検出のためのテストパス集合の生成手法に関する研究 A Study on an Algorithm to Find a Set of Test Paths

for Delay Fault Testing

電気電子情報通信工学専攻 北詰 倭人

Yamato Kitadume

1. 研究背景

近年の集積回路の微細化や回路規模の増大によっ て,LSIの製造時に発生する様々なばらつきが増大して いる.特に遅延ばらつきにおいては従来の設計手法では 最大から最小までの遅延が一様に発生し,なおかつチッ プ内の全素子が同様な遅延分布をとると考えている為,

分布の最悪コーナーの値を評価するような手法を採用し ている.しかし,実際には各素子のパラメータはチップ 間でばらつくのはもちろんのこと,同じチップの中でも 大きくばらつくようになっている[1].このため,最悪コ ーナーを想定して解析をおこなっていた従来の手法であ る(STA: Static Timing Analysis)では,マージンの重畳 により,タイミング制約を満たす設計は非常に困難,あ るいは不可能という事態が生じている.このような問題 に対応するため,遅延ばらつきを統計量として扱う統計 的静的遅延解析(SSTA: Statistical Static Timing Analysis)が注目され,数々の報告がなされている[2,3].

S-STAのアルゴリズムは,大きくpath-basedな手 法とblock-basedな手法に大別できる.path-based解析 では,信号が伝搬するパスの遅延を1本ずつ独立に解析 する手法であり,パスの遅延を正確に計算出来る反面,

すべてのパスを解析すると処理時間がかかるという欠点 をもつ.近年の高集積化されたLSIにおいてこの欠点は 致命的であるため,本研究では path-based 解析に比べ て高速処理が可能なblock-basedな手法で解析を行う.

block-based 解析はグラフを探索してすべてのパスを一

度に解析し,回路全体の遅延分布を求める方法である.

具体的には,回路の接続情報を表すアサイクリックグラ

G=(N.A) の点を位相幾何学的順序で探索し,各点に

おいて,2つの遅延(統計量)の最大値の分布を求める 統計的最大値演算(Max演算)と和演算(ADD演算)

を繰り返し行うことで遅延を伝搬させる.その際,遅延

分布を正規分布で表現しておくと,遅延ばらつきの相関 を容易に考慮できるが,2 つの統計量が正規分布であっ ても,それらの最大値の分布は正規分布にはならないと いう問題がある[2,3].このとき,非正規分布を正規分布 に近似するためにSSTAでは正確な結果が導出されない.

そこでSSTAがどの程度の精度をもつのか測るための 指標(真値)が必要となる.この指標として,MC-SSTA が採用されている.MC-SSTAでは,正規乱数を用いて ばらつきを考慮した各枝遅延を生成し,生成した遅延に 対しSTAを繰り返し試行し,多数の値を得るSSTAで ある[4].得られた多数の値は統計分布化することで他の SSTAと比較される.

本研究ではこのMC-SSTAを用いて,解析だけではな く遅延故障検出のためのテストパスを生成する際にも有 用な指標となる Gate-CriticalityPath-Criticalityを 求めた.しかし,MC-SSTAにより正確な統計分布を得 るためには,多大な回数のSTAを試行する必要がある.

そのため,MC-SSTAはSSTAと比べ非常に動作時間が 長くなってしまう.これは回路規模が大きくなるほど顕 著となる.

そこで,MC-SSTAにくらべ高速処理が可能なSSTA でテストパスを生成するための手法を提案して,生成さ れたテストパスをMC-SSTAの結果と比較することで評 価をおこなった.

2. Gate-Criticality及びPath-Criticality 2.1 Gate-Criticality

回路遅延を改善させるためには,その回路全体の最大 遅延を改善させる必要がある.最大遅延を改善するため には,回路内のどの部分が大きな遅延を持っているのか を確かめる必要がる.そのため,回路内の各ゲートが最 大遅延を持つパス(Critical Path)に含まれる確率を求め

(2)

ることで,効率的に回路遅延を改善させることが可能と なる.本稿では,それをGate-Criticalityとして定義し,

MC-SSTA を用いて 10 万回の試行の中で各ゲートがど

れだけCritical Pathに含まれるかを調べた.図1

ISCAS85ベンチマーク回路の中のc7552という回路を

入力としてGate-Criticalityを求めた際の結果である.

横軸はゲートの番号を示し,縦軸ではそのゲートが 10 万回の試行の中で何回Critical Pathに含まれたかを示 している.

1 Gate-Criticality (c7552)

1を見ると10万回の試行の中で,ほぼ全てCritical Pathに含まれているゲートがあることが分かる.回路の 最大遅延を改善させるためにはCritical Path遅延を改 善させる必要があるので,そのCritical Pathに多く含ま れるゲートの遅延を改善させれば回路の最大遅延を効率 良く改善させることができる.

2.2 Path-Criticality

2.1節ではゲート毎にCriticalityを求めていたが,こ の説で解説するPath-Criticalityでは,各パスがCritical Pathに含まれる確率を求めている.LSIの高い信頼性を 保証するためには,遅延故障のテストが重要となる.し かし,パス数は回路規模に対して指数関数的に増大して しまうという問題がある.このため,パス遅延故障のテ ストを実現するためにはテストの対象となるパスを限定 する必要がある.本稿では,パスを限定する手段として Path-Criticalityを定義し,MC-SSTAを用いて10万回 の試行の中で各パスがどれだけCritical Pathに含まれ るかを調べた.図22.1節と同様,ISCAS85ベンチマ ー ク 回 路 の 中 の c7552 と い う 回 路 を 入 力 と し て Path-Criticality を求めた際の結果である.横軸はパス

の番号を示し,縦軸ではそのパスが 10 万回の試行の中 で何回Critical Pathに含まれたかを示している.

2 Path-Criticality (c7552)

2を見ると,10万回の試行のうち4万回以上Critical Pathになったパスがあること分かる.この結果を元にテ ストの対象とするパスを限定することで,効率良く信頼 性の高いテストをおこなうことができる.

3. 提案手法

2.2節では,パス遅延故障のテストを実現するために テストの対象となるパスを限定する方法として

MC-SSTAを用いてPath-Criticalityを求めていた.し かし,MC-SSTAでは遅延を定数で与えているため,1 回の試行で得られる結果も定数となる.そのため,

MC-SSTAでは多数回試行を繰り返すことで統計的に分

布を得ている.このため,MC-SSTAでは多数回試行を おこなう際に時間がかかってしまう.

そこで本稿では解析を短時間でおこなうためにSSTA を用いてクリティカルパスを抽出する手法を提案する.

SSTAでは遅延を定数ではなく正規分布として与えてい るので,MC-SSTAの場合とは違いクリティカルパスが 一意に定まらない.そのため,SSTAに基づいたクリテ ィカルパスを抽出する方法を定義する.

3.1 クリティカルパス集合生成手法

この提案手法ではアサイクリックグラフ上の各点がク リティカルパスに含まれる確率を計算する.もしソース からある点までの最大遅延分布Dsauceと,シンクから その点までの最大遅延分布DsinkADD演算した分布

Dv(図3)において,ある閾値よりも大きくなる確率が

P>Tth以上である場合,クリティカルパスはその点を通る と考えられる.閾値より右側の分布の面積はその点がク 0

20000 40000 60000 80000 100000

1 789 1577 2365 3153 3941 4729 5517 6305 7093 7881 8669 9457 10245 11033 11821

c7552

0 10000 20000 30000 40000 50000

1 4 7 10 13 16 19 22 25 28 31 34 37 40

c7552

(3)

リティカルパスに含まれる確率を表しProb[Dv≥Tth]と 表す.この確率をクリティカル確率と呼ぶ.閾値には元 の回路の最大遅延分布の3σの値を設定している.

Prob[Dv≥Tth]>P>Tth (1) 式(6.1)を満たす点の集合はクリティカルパス集合の部 分集合として抽出する[4].

このようにして抽出された点集合を元にクリティカル パス集合を生成する.抽出された点集合中の点のみを通 ってソースからシンクへ辿れるパスがクリティカルパス となる.よって,抽出された点集合と点集合内で接続し ている枝によって構成されているグラフをクリティカル パス集合とする.この定義に基づいてISCAS85ベンチ マーク回路を対象にテストパスの生成をおこなった.ま た,MC-SSTA と今回の提案手法とでの計算時間の比較 もおこなった.

3 点のクリティカル確率計算

4. 実験結果

3 節で解説した提案手法を用いて各回路において生成 されたテストパスの結果を以下に示す.今回の実験では,

元の回路の最大遅延分布と同じ結果が得られる範囲内で,

本数が最小となるようにテストパスを求めている.

1 生成されたテストパスの本数と削減率

1の結果から,元の回路のパスの本数と生成されたテ ストパスの本数を比較すると,生成されたテストパスの 本数は,最低でも元のパスの本数の約半分まで削減でき,

多くの回路が 99%以上の削減に成功していることが分 かる.また,MC-SSTAを用いてPath-Criticalityを求 めるのにかかった時間と,今回の提案手法で計算にかか った時間を表2に示す.

2 計算時間の比較

回路種類

計算時間(s)

MC-SSTA

提案手法

c17 2.967 0.156

c432 19.977 1.864

c499 23.376 2.366

c880 40.401 3.064

c1355 57.984 5.07

c1908 82.38 7.72

c2670 107.918 9.402 c3540 151.316 13.262 c5315 225.413 20.56 c6288 257.535 22.327 c7552 317.541 30.296

回路名 パス数() テストパス(本) 削減率(%

c17 11 6 45.455

c432 83936 2784 96.683

c499 9440 3073 67.447

c880 8642 128 98.519

c1355 4173216 78150 98.127

c1908 729057 36 99.995

c2670 679960 143 99.979

c3540 28676671 822 99.997

c5315 1341305 36 99.997

c7552 726494 41 99.994

(4)

5. 結論

本稿では、回路の最大遅延を効率良く改善させるため に有効な指標となるGate-CriticalityとPath-Criticality を定義し,ISCAS85 ベンチマーク回路を対象にそれら 二つの指標を示した.また,より高速にパス遅延故障の テストを実現するためにテストの対象となるパスを限定 するために,MC-SSTAに代わる新たな手法を提案する ことで高速化を図った.

実験結果より,元の回路の最大遅延分布と同様な結果 を保ちつつ,テストパスの本数を大幅に削減させること に成功した.今回の実験では,式(1)のP>Tthの値を手動 で変えながらパスの本数を減らしていったが,遅延分布 を変えない範囲内で最小の本数のテストパスを出力でき るようにすることが今後の課題としてあげられる.

謝辞

本研究を行うに当たり,様々なご指導,ご教授をいた だいた築山修治先生に深く御礼申し上げます.

また,様々なご助言を頂いた先輩方,後輩たち,そし て公私とも深くお付き合いして頂いた研究室の全ての仲 間たちに心より感謝いたします.

参考文献

[1] 平本俊郎, 竹内潔, 西田彰男, “MOS トランジスタ のスケーリングに伴う特性ばらつき,” 電子情報通 信学会誌, vol.92, no.6, pp.440-445, 2009.

[2] D. Blaauw, K. Chopra, A. Srivastave, L. Scheffer,

“Statistical timing analysis: From basic principles to state of the art,” IEEE Trans. CAD/ICAS, vol.27, no.4, pp.589-607, 2008.

[3] 築山修治, “製造ばらつきを考慮した自動設計手法,”

電子情報通信学会誌, vol.92, no.6, pp.440-445, 2009.

[4] 渡辺恭平,「モンテカルロシミュレーションを用いた 統計的静的遅延解析の高速化に関する研究」, 中央大学 大学院理工学研究科電気電子情報通信工学専攻修士論文 (築山研究室)(2011)

参照

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