平成28年度防衛関係予算のポイント
平成27年12月
堀 内 主 計 官
1.
「中期防衛力整備計画」に沿って、南西地域の島嶼部における防衛態勢の強
化等を図るとともに、装備品の調達の効率化等を推進。
2.沖縄等の基地負担軽減等のために行う米軍再編事業等を着実に推進するた
め、所要の予算を措置。
3.在日米軍駐留経費負担については、新たな特別協定の締結に際し、福利厚生
施設等で働く労働者の負担人数削減や格差給・語学手当等の段階的廃止等の
見直しを行う一方、米軍司令部等で働く労働者の負担人数の増加等により、
ほぼ現状維持。
4.この結果、防衛関係費全体では対前年比+1.5%となる 5 兆 541 億円を計上す
るとともに、このうち SACO・米軍再編等以外の中期防対象経費については対
前年比+0.8%(+386 億円)となる 4 兆 8,607 億円を計上。
5.また、新規後年度負担については、将来における予算の硬直化を招きかねな
いことから、総額を抑制しつつ、メリハリを徹底、2 兆 2,875 億円を計上(▲
10.7%)
。うち中期防対象経費は、2 兆 800 億円(▲9.6%)
。
〔歳出予算(一般会計)
〕
27 年度
28 年度
27’→ 28’増減
総 額
49,801 億円
50,541 億円
+740 億円
(+ 1.5%)
SACO・米軍
再編等を除く
48,221 億円
48,607 億円
+386 億円
(+ 0.8%)
〔新規後年度負担(一般会計)
〕
27 年度
28 年度
27’→ 28’増減
総 額
25,623 億円
22,875 億円 ▲2,749 億円 (▲10.7%)
SACO・米軍
再編等を除く
22,998 億円
20,800 億円 ▲2,198 億円 (▲ 9.6%)
防 衛関 係予算 のポ イン ト
28 年度予算編成の基本的な考え方
(特段の注記がない場合、予算額は全て契約額ベース)
1 周辺海空域における安全確保
―我が国周辺の海空域において、切れ目のない監視態勢を構築するため、情報収集や警戒監視 態勢の強化に必要となる装備品の調達等を実施する。 ○ イージス・システム搭載護衛艦(DDG)の建造(1 隻:1,734 億円) 弾道ミサイル対処能力の総合的な向上を図り、我が国を多層的かつ持続的に防護する体 制を強化するため、イージス・システム搭載護衛艦(8,200 トン)を建造。 ○ 哨戒ヘリコプター(SH-60K)の取得(17 機:1,026 億円) 現有の海自哨戒ヘリコプター(SH-60J)の後継機として、対潜探知能力や攻撃能力が向 上した SH-60K を取得。 ○ 潜水艦の建造(1 隻:636 億円) 東シナ海をはじめとする周辺海域の警戒監視能力等の強化のため、「そうりゅう」型 12 番艦(2,900 トン)を建造。 ○ 新早期警戒機(E-2D)の取得(1 機:260 億円) 南西地域をはじめとする周辺空域の警戒監視能力の強化のため、新早期警戒機を取得。 ○ 滞空型無人機(グローバルホーク)の取得(3 機分の機体構成品等:146 億円) 広域における常続監視能力の強化のため、滞空型無人機(グローバルホーク)を取得。 ○ 新哨戒ヘリコプターの開発(244 億円) 我が国周辺の海域において対潜戦の優位性を確保するため、複数のヘリコプターとの連 携により、敵潜水艦を探知する能力等を付与した哨戒ヘリコプターを開発。2 島嶼部に対する攻撃への対応
―島嶼部に対する攻撃に対応するため、常続監視体制の整備、航空・海上優勢の獲得・維持、 迅速な展開・対処能力の向上、指揮統制・情報通信体制の整備を実施する。 ○ ティルト・ローター機(V-22)の取得(4 機:447 億円) 輸送ヘリコプターの輸送能力を速度や航続距離の観点から補完・強化するため、ティル ト・ローター機を取得し、水陸両用作戦における部隊の展開能力を強化。 ○ 機動戦闘車の取得(36 両:252 億円) 機動運用を基本とする作戦基本部隊等に航空機等での輸送に適した機動戦闘車を取得し、 これらの機動展開能力を強化。 ○ 12 式地対艦誘導弾の取得(1 式:120 億円) 海上からの侵入者を洋上において撃破し、侵攻部隊の弱体化を図るため、88 式地対艦誘 導弾の後継となる誘導弾を取得。 ○ 水陸両用車(AAV7)の取得(11 両:78 億円) 海上から島嶼部に部隊を上陸させるため、海上機動性及び防護性に優れた水陸両用車を 取得。 ○ 戦闘機(F-35A)の取得(6 機:1,084 億円) 現有する F-4 戦闘機の減勢に対応し、戦闘機部隊を維持するとともに、抑止力及び対処 能力を向上させるため、後継機として F-35A を取得。 ○ 救難ヘリコプター(UH-60J)の取得(8 機:350 億円) 救難体制を維持・強化するとともに、多様な事態に実効的に対処しうる態勢を整備する ため、救難ヘリコプターを取得。 ○ 新空中給油・輸送機(KC-46A)の取得(1機分の機体構成品等:231 億円) 戦闘機部隊等が我が国周辺空域で各種作戦を持続的に遂行できるよう、新空中給油・輸 送機を取得。○ 輸送機(C-2)の取得(1機分の機体構成品等:87 億円) 現有する空自輸送機(C-1)の後継機として、航続距離や搭載重量等を向上させた輸送機 を取得し、有事における機動展開等に対応できる態勢を整備。 ○ イージス・システム搭載護衛艦(DDG)の建造(1 隻:1,734 億円)〔再掲〕 ○ 哨戒ヘリコプター(SH-60K)の取得(17 機:1,026 億円)〔再掲〕 ○ 潜水艦の建造(1 隻:636 億円)〔再掲〕 ○ 新早期警戒機(E-2D)の取得(1 機:260 億円)〔再掲〕 ○ 滞空型無人機(グローバルホーク)の取得(3 機分の機体構成品等:146 億円)〔再掲〕 ○ 南西警備部隊の配置(195 億円) 島嶼防衛における初動対処態勢を整備するため、警備隊等の配置に関連する奄美大島の 造成工事等及び宮古島の用地取得等を推進。 ○ 水陸両用作戦関連部隊等の整備(106 億円) 水陸両用車の導入に伴い、水陸機動団の新編を着実に推進するため、長崎県佐世保市に 隊庁舎や訓練場等を整備。 ○ 陸上総隊(仮称)の新編に向けた準備(92 億円) 陸上自衛隊における全国的運用体制の強化に資する統一司令部を新編するため、埼玉県 朝霞市に司令部庁舎等を整備。 ○ 与那国島の沿岸監視部隊に関連する施設の整備(55 億円) 南西海域における各種兆候の早期察知機能の強化に向け、付近を通行する艦船や航空機 の監視を行うための沿岸監視部隊を与那国島に新編するため、これに必要となる駐屯地等 を整備。 ○ 海上作戦センターの整備(189 億円) 関係省庁や米軍等と緊密に連携し、各種の事態により効果的かつ円滑に対応できる態勢 を確立するため、横須賀の船越地区に海上作戦センターを整備。 ○ 可変深度ソーナーシステムの開発(85 億円) 潜水艦に対する探知類別能力を向上させるため、えい航式ソーナーにアクティブソーナ ーの機能を付加し、複数の護衛艦間の相互連携による捜索を可能とする、可変深度ソーナ ーシステムを開発。
3 弾道ミサイル攻撃等への対応
―弾道ミサイル攻撃に対し、我が国全体を多層的・持続的に防護する体制を強化するとともに、 弾道ミサイル攻撃と同時並行的に行われる可能性の存するゲリラ・特殊部隊による攻撃に対 応する態勢を整備する。 ○ イージス・システム搭載護衛艦の能力向上(2 隻:77 億円) 平成 24 年度に着手した「あたご」型護衛艦 2 隻の弾道ミサイル対応に向けた改修を引き 続き実施。 ○ PAC-3 ミサイルの再保証(65 億円) PAC-3 ミサイルについて、耐用期限の到来した部品を交換するとともに、全体の点検を 実施し、所要数を確保。 ○ イージス・システム搭載護衛艦(DDG)の建造(1 隻:1,734 億円)〔再掲〕 ○ 新多用途ヘリコプターの共同開発(129 億円) 現有する陸自多用途ヘリコプター(UH-1J)の後継として、各種事態における空中機動、 大規模災害における人命救助等に使用する新多用途ヘリコプターを開発。4 大規模災害等への対応
―各種の災害に際して、十分な規模の部隊を迅速に輸送・展開するとともに、統合運用を基本としつつ、要員のローテーション態勢を整備することで、長期間にわたり、持続可能な対処 態勢を構築する。 ○ ティルト・ローター機(V-22)の取得(4 機:447 億円)〔再掲〕 ○ 水陸両用車(AAV7)の取得(11 両:78 億円)〔再掲〕 ○ 哨戒ヘリコプター(SH-60K)の取得(17 機:1,026 億円)〔再掲〕 ○ 救難ヘリコプター(UH-60J)の取得(8 機:350 億円)〔再掲〕 ○ 輸送機(C-2)の取得(1機分の機体構成品等:87 億円)〔再掲〕 ○ 災害時における機能維持・強化のための耐震改修等の促進(130 億円) 災害救助活動の拠点となり得る庁舎、隊舎等について、機能維持や強化を図るための耐 震改修等を実施。
5 米軍再編、基地対策等の推進
※記載額は歳出ベース (1)米軍再編等関連経費(1,794 億円) ―米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄県をはじめとする地元の負担軽減を図るため、在日 米軍の兵力態勢の見直し等についての具体的措置を着実に実施する。 ○ 地元の負担軽減に資する措置(1,766 億円) 在沖米海兵隊のグアム移転、普天間飛行場の移設、厚木飛行場から岩国飛行場への 空母艦載機の移駐等を推進。 ○ SACO 関係経費(28 億円) 日米安全保障協議委員会(いわゆる「2+2」)共同文書による変更がないものに ついては、引き続き沖縄に関する特別行動委員会(SACO)最終報告に盛り込まれた措 置を着実に実施。 (2)基地対策等関連経費(4,509 億円) ―防衛施設と周辺地域との調和を図るため、基地周辺対策を着実に実施するとともに、 在日米軍の駐留を円滑かつ効果的にするための施策を推進する。 ○ 基地周辺対策経費(1,192 億円) 自衛隊や防衛施設の運用等により発生する障害の防止等を図るため、住宅防音事業 や周辺環境整備を実施。 ○ 在日米軍駐留経費負担(1,920 億円) 在日米軍の駐留を円滑かつ効率的にするため、新たな特別協定に係る日米間の合意 内容に基づき、在日米軍従業員の給与の負担や隊舎の整備等を実施。 ○ 施設借料、補償経費等(1,397 億円) 防衛施設用地等の借上や水面を使用して訓練を行うことによる漁業補償等を実施。6 調達効率化の推進
―装備品取得の全般にわたり、一層の合理化・効率化を図るため、各種の取り組みを推進し、 平成 28 年度以降で 1,500 億円のコスト縮減を図る。 (1)長期契約を活用した装備品等及び役務の調達[縮減見込額:148 億円] ○ 哨戒ヘリコプター(SH-60K)17 機の一括調達[縮減見込額:114 億円(10.0%)] 一括調達による材料費、労務費等の減少により、調達コストを縮減。 ○ PBL への長期契約の導入[縮減見込額:34 億円] 陸自輸送ヘリコプター(EC-225LP(3 機))及び海自練習ヘリコプター(TH-135(15 機))につき、機体部品の取得・修理及び機体の整備等に関する包括的な契約(PBL:Performance Based Logistics)を導入し、これらに要するコストを縮減。 (2)維持・整備方法の見直し[縮減見込額:432 億円] ○ PBL の新規導入[縮減見込額:64 億円] 陸自戦闘ヘリコプター(AH-64D)の搭載機器について、あらたに PBL を導入し、維 持・整備コストを縮減。 (3)装備品のまとめ買い[縮減見込額:465 億円] ○ 艦対空ミサイル(SM-2)のまとめ買い[縮減見込額:312 億円(35.8%)] イージス艦に装備予定の対空ミサイル(SM-2)について、28 年度から 30 年度にか けて調達が必要となる数量を一括調達し、材料費、労務費等の減少により、調達コス トを縮減。 ○ 救難ヘリコプター(UH-60J)のまとめ買い[縮減見込額:37 億円(9.7%)] 28 年度から 30 年度に掛けて調達が必要となる 8 機を一括調達することで、材料費、 労務費等の減少により、調達コストを縮減。 (4)民生品の使用・仕様の見直し[縮減見込額:455 億円] ○ 作戦用通信回線統制システム(TNCS)整備時の仕様の見直し[縮減見込額:124 億円] 作戦用通信回線統制システムについて、これまで別個に整備していた交換機と無 線制御装置を一体化することを通じ、調達コストを縮減。 ○ ネットワーク運用支援器材への民生品の活用[縮減見込額:29 億円] 戦闘機用データリンクの運用支援器材を取得するに際し、その一部を民生品とする ことを通じ、コストを縮減。