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 第 4 節 債権者間における抵当権の効力及び順位 DE L’EFFET DU RANG DES HYPOTHÈQUES ENTRE LES CREANCIER

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(1)

ボアソナード「帝国民法草案註解」⑸

Boissonade, Projet de Code Civil pour lʼempire du Japon accompagné d ʼun commentaire, tome 1~4(5)

ボアソナード民法研究会

(代表 清 水   元) 訳 

澤 野 和 博

**

第 5 章 抵 当 権 DES HYPOTHÈQUES

 第 4 節 債権者間における抵当権の効力及び順位 DE L’EFFET DU RANG DES HYPOTHÈQUES ENTRE LES CREANCIER

摘要

1253条 N

o

484:抵当権の順位は,常に登記により決定される。

    N

o

485: 同じ日になされた複数の登記;フランス民法典とイタ リア民法典と日本の草案との間の相違。

1254条 N

o

486:登記によって保存される利息および付随的定期金。

1255条 N

o

487:条件付債権・信用[口座]の開設。

1256条 N

o

488:債権者相互間に法定代位が生じる特別な事案。

1257条 N

o

489: 当該代位は,代位を対抗される債権者を害しない。代 位はそれらの債権者から不当な利益を剝奪するだけで ある。

 所員・中央大学法科大学院教授

**

 嘱託研究所員・東北学院大学法学部教授

(2)

    N

o

490:当該代位の公示。

1258条 N

o

491: 抵当権の放棄または代位が複数なされた場合または抵 当権付債権の譲渡が複数なされた場合における優先性 の判断方法。

1259条 N

o

492:代位の理論を補完するために第1191条を準用する。

1260条 N

o

493: 未登記抵当権に関する登記情報以外の情報からの認識。

謄記されていない移転についての認識との相違。

1261条 N

o

494: 抵当債権者は,抵当権から支払を受けられない額につ いてしか一般債権者として取り扱われないという原則。

動産売得金よりも前に不動産の代価が配当される場合 への適用。

    N

o

495: 反対の事案。すなわち,動産売得金の暫定的分配。抵 当手続における順位確定後の返還。返還された金銭の 追加的分配。

Art. 1253. Tout créancier hypothécaire valablement inscrit sur un immeuble est préférable aux créanciers chirographaires, en tant quʼil peut être utilement colloqué sur prix dudit immeuble.

 Entre les créanciers ayant hypothèque, légale, conventionnelle ou testamentaire, le rang de collocation se détermine par lʼantériorité respective des inscriptions, lors même que deux ou plusieurs inscriptions intéressant des créanciers différents sont prises le même jour ; sauf lʼaction en responsabilité contre le conservateur, sʼil nʼa pas observé lʼordre numérique des remises, conformément à lʼarticle 1229.[Secùs 2147 ; com.

C. it., 2008, 2009.]

[試訳]

(一般原則)

 ある不動産に対する有効に登記されているすべての債権者は,当該不動

(3)

産の代価について有益に配当割付されうるという点において,一般債権者 に優先する。

(登記によって定まる順位)

 法定の抵当権,約定の抵当権または遺言による抵当権を有する債権者の 間においては,配当の順位は,たとえ異なる債権者に関する ₂ つ以上の登 記が同じ日になされた場合であったとしても,それぞれの登記の先後によ って定まる。ただし,[抵当権]保存吏が第1229条に従って受理番号の順 序を遵守しなかった場合には,当該保存吏に対して責任追及訴訟を起こす ことができる。(フランス民法典2147条とは相違;イタリア民法典第2008 条及び第2009条参照)

 N

o

484 本条第 ₁ 項は,たとえ法文で定められていなくても,疑いを 挟むことができないような原則を提示するものであるが,当該原則は,本 節全体の中で最も特徴的な規定である第 ₂ 項の規定の内容を明確にしてい る。

 本草案においては,妻の抵当権であろうと,未成年者の抵当権であろう と,禁治産者の抵当権であろうと,すべての抵当権が登記手続に服し,登 記手続をしないと「第三者に対抗することができない」ことを,すでに第 1219条においてみてきた。したがって,登記が本条に定めるようにすべて の者のそれぞれの順位を決定するということは当然のことである。なぜな ら,[そうでなければ,]登記が第三者に対して明らかにしていない優先権 を第三者が甘受しなければならなくなってしまい,順位が最も重大な関心 事である抵当権が隠避的な性格を持つことになってしまうからである。

 それ故,最も古い登記が第 ₁ 順位を確保し,その後のものが同様に順位 を確保していき,最も新しいものにいたることになる。

 N

o

485 本法文に,複数の登記が同日になされる事案についての定め

をおかないわけにはいかない。フランスの[民]法典は,この点につい

て,採用することができるとは思えないような解決方法をとっている。す

なわち,第2147条

(訳者注1)

は,「同日に登記されたすべての債権者は,[抵

当権]保存吏がそれらの者の間の時間差を示しておいたとしても,競合す

(4)

るものとする」としている。

 この解決方法は,そのようなケースにおいて,[抵当権]保存吏が,過 誤により,または,便宜を図るために,他の者を差し置いて特定の者に対 して正当に基礎付けられていない優先権を与えてしまうことを恐れて,有 力に唱えられたものである。しかし,法律が,今回のケースにおいて[抵 当権]保存吏に対して他のケースにおけるのと同様の信頼を持てるとは思 えないとしているのであれば,正当な利益を犠牲にするのではなく,真実 の担保のための何らかの特別な方法を模索すべきなのであり,それこそが まさに本草案が作り出そうとしているものである。

 実際に,フランスの[民]法典の仕組みにおいては,非常に重大な不都 合が生じる。すなわち,その他の登記が何ら存在していない日において登 記を具備した債権者が優先権を確保できないのである。他の ₁ つまたは複 数の登記が同じ日に具備されて,当該債権者と競合するかもしれないので ある。

 [抵当権]保存吏の詐害 fraude または過誤 erreur に対する担保は,す でに第1229条に示されている。すなわち,[抵当権]保存吏の詐害または 過誤に対する担保は,日付別受領番号が記載される控え付受付簿から切り 離された受領証を交付すること,および,登記に当該番号が写されること によってなされるのである。

 イタリアの[民]法典は,もはやフランスの[民]法典に従っておら ず,同一の日に登記された場合であっても,最初になされた登記に優先権 を与えている。そして,「複数の債権者が同時に登記を取得しに訪れる」

といった非常にまれであることが明らかなケースにおいてしか,複数債権 者に同一の順位を与えないようになっている[イタリア民法典第2108条,

第2109条]。

( 訳 者 注 ₁ )1803年 当 初 の 民 法 典 第2147条 は,Tous les céqnciers inscrits le

même jour exercent en concurrence une hypothèque de la même date , sans

distinction entre lʼinscription du matin et celle du soir , quand cette différence

serait marquée par le conservateur.(同日に登記されたすべての債権者は,抵

(5)

当権保存吏によって時間差が示されたとしても,朝になされた登記と夜にな された登記とを区別することなく,同一日付の抵当権を競合して行使する。)

としている。

*旧民法債権担保編 第239条

 凡ソ不動産ニ付キ登記シタル抵当債権者ハ無特権債権者ニ先タチ其不動産ノ代価 ノ配当ニ加入スルコトヲ得

 法律上,合意上又ハ遺言上ノ抵当ヲ有スル数人ノ債権者間ニ於テハ其配当加入ノ 順位ハ数個ノ登記ヲ同日ニ為シタルトキト雖モ其登記ノ前後ニ因リ之ヲ定ム

Art. 1254. Lʼinscription assure aux intérêts de la créance et aux autre accessoires périodiques qui y sont portés, le même rang que pour le principal, mais seulement pour les deux dernières années échues ; sans préjudice du droit pour le créancier de prendre des inscriptions postérieures pour les intérêts plus anciens, mais pour ne valoir quʼà la date desdites inscriptions.[V. 2151.]

[試訳]

(利息に関する順位)

 登記は,すでに経過した最後の2年度分についてのみ,元本に付させら れている債権の利息及び付随的な定期金に,元本と同じ順位を与える。た だし,債権者は,それ以前の利息について事後的に登記する権利を妨げら れず,その登記は当該登記の日からしか効力を有しないものとする(フラ ンス民法典第2151条参照)。

  N

o

486 債権が利息付であり,かつ,登記にそのことが記載されてい る場合においては,当該債権者が,各履行期に別個の登記を行うことな く,それらの利息のある程度の部分を取得できることは,当然であろう。

しかしながら,清算の日において支払うべきもののすべてを債権者が取得

することは,もはや正当とはいえない。なぜなら,債権者が利息が累積す

るのを放置していた場合には,当該債権者には怠慢があり,その怠慢によ

(6)

って他の債権者に対して損害を生じさせるわけにはいかないからである。

 そのため,フランスの[民]法典は, ₂ 年度[分](たいていはすでに 経過した最後の ₂ 年度分となろう)および進行中の年度[分]を認めてい る(第2151条

(訳者注2)

)。本草案は, ₂ 年度[分の利息]についてのみ認め,

進行中の年度[分]については認めない。なぜなら,進行中の年度[分]

を認めることは,債権者間に大きな不公平をもたらしてしまうことがある からである。すなわち,進行中の年度は,ある者にとっては年度のはじめ であり,別の者にとっては年度のほぼ終わりのころであるといったことに なりうるのである。また,この法文は,経過した年度[分]が対象になる ということ,および,元本の部分的な弁済がなされている場合にはより古 い年度分より額が低くなってしまうことがありうるのではあるが,それが 最後の ₂ 年度[分]であるということを表現しようと配慮している。ただ し,時効にかかっていないより多くの年度分の支払を受けることができる 債権者は,それらの利息のために別個の登記を具備することができるので あり,その登記はその登記の日付において効力を有することになる。な お,それらの登記は,当該利息についても,時効を中断しない(第1446 条

(訳者注3)

)。

 この条文は,無期限定期金または終身定期金における年金や金銭に見積 もられる現物給付 prestations de denrées など,債権のその他の付随的定 期金にも適用される。

 結局,本条は,先取特権についての規定と同様の規定である(第1192条 参照)。

(訳者注 ₂ )1803年当初の民法典第2151条は,Le céqncier inscrit pour capital

produisant intérêt ou arrérages, a droit dʼêtre colloqué pour deux années

seulement, et pour lʼannée courant, au même rang dʼhypothèque que son capital ;

sans préjudice des inscriptions particulières à prendre, portant hypothèque à

compter de leur date, pour les arrérages autres que ceux conservés par la

première inscription.(利息または定期金を生じる元本について登記された債

権者は, ₂ 年度分及び経過中の年度分についてのみ,元本についてと同一の

(7)

抵当権順位において配当を割り付けられる。ただし,当初の登記によって保 存されるもの以外の定期金について,その日からの抵当権を対象とする特別 な登記を備えることを妨げない。)としていた。

(訳者注 ₃ )本草案第1446条は,法定中断事由に関して,「①民事上の中断は,

[以下に掲げる事項により,]生じる: ₁  裁判上の請求  ₂  勧解への呼出 しまたは任意の出頭  ₃  支払命令 commandement または催告 sommation 

₄  差押え  ₅  任意の承認。 ②前項に掲げる手続上の行為または承認は すべて,明確に,時効が進行している権利にかかるものとなっていなければ ならず,かつ,時効が開始されたことの利益を受ける者にかかるものとなっ ていなければならない。」としており,登記を含んでいない。

*旧民法債権担保編 第240条

 登記ハ掲載シタル利息及ヒ定期ノ附従物ニ其経過シタル最後ノ二箇年分ニ限リ主 タル債権ト同一ノ順位ヲ得セシム但二箇年以外ノ利息及ヒ附従物ノ為メ債権者ノ日 後登記ヲ為スノ権利ヲ妨ケス然レトモ此登記ハ其日附後ニ非サレハ効力ヲ生セス

Ar t. 1255. Le rang de lʼhypothèque est également déterminé par lʼinscription, quoique la créance soit conditionnelle ou naisse de versements successifs, comme dans lʼouverture de crédit.[C.it., 2007]

[試訳]

(条件付債権)

 抵当権の順位は,債権が条件付きのものであるときや,信用[口座]の 開設の場合のように複数回の払い出しによって生じるものであるときに も,登記によって決定される。(イタリア民法典第2007条参照)

  N

o

487 不完全な状態ではあるが,条件付債権も,存在はしている。

すなわち,そのような債権の登記の効果は,それ自体,条件付きのもので あり,不確定的なものではあるが,[法文に列挙した]いずれの債権も,

同じように,登記の日付によって定められる順位を有し,すでに条件が満

たされていれば効力を主張できるし,将来条件が満たされれば効力を主張

(8)

できるようになるのである。

 本条は,信用[口座]の開設,すなわち,一定の額まで拡大したり,借 主の申出以外に制約なく拡大することさえある貸借によって,繰り返し払 い出される額の返還を担保する抵当権についても,同一の方針をとること を明らかにしている。そのような事案においては,登記のみが上限額を示 すことになる(本草案第1226条第4号)。

 これらの事案において,第三者は,抵当権[の存在]およびその順位を 認識し,それに応じて債務者と取引することになる。すなわち,第三者 は,不意打ちを受ける危険にさらされておらず,かえって,条件付債権が 現実化しないとか,信用が到達することがあり得た額まで達することなく 終わるといった幸運を享受することができるのである。

*旧民法債権担保編 第241条

 抵当ノ順位ハ債権カ条件付ナルトキ又ハ信用ヲ開キテナス貸付ノ如ク漸次ノ支払 ヨリ生スルトキト雖モ亦登記ニ因リテ之ヲ定ム

Art. 1256. Lorsquʼun créancier a hypothèque sur plusieurs immeubles

dont les divers prix sont liquidés en même temps , sa créance doit être

répartie sur tous proportionnellement à leur importance. En cas de

liquidations successives , si ledit créancier est payé en entier sur le prix de

lʼun dʼeux et quʼil en résulte une perte pour un ou plusieurs autres

créanciers nʼayant hypothèque quʼ après lui sur ledit immeuble, ceux─ci

sont subrogés de droit à lʼhypothèque du créancier désintéressé, pour leur

propre créance et à leur rang respectif, sur les autres immeubles, pour la

portion contributoire afférente auxdits immeubles dans la créance qui les a

primés.[C.it., 2011]

(9)

[試訳]

(同時清算)

 一人の債権者が複数の不動産に対して抵当権を有し,それらの不動産の それぞれの代価が同時に清算される場合,当該債権は,代価の額に応じ て,すべての不動産の代価の上に割り付けられなければならない。

(異時清算:代位)

 異時配当の場合において,前項の債権者が一つの不動産の代価の全部の 支払を受け,そのことによって当該[競売]不動産に対して当該債権者に 劣後する抵当権しか有しない ₁ 人又は複数の債権者に損失を生じさせたと きには,それらの諸債権者は,彼らに優先していた債権のうちの他の不動 産に充てられるべきであった割付分の範囲において,それぞれの順位に応 じて,自己の債権のために,支払を受けた債権者が有していた先に掲げた 他の不動産に対する抵当権に当然に代位する。(イタリア民法典第2011条 参照)

 N

o

488 本条の規定[が定めているもの]は,フランスの[民]法典 には存在しない,法定代位の[生じる]新たな一事案である。この規定を 日本に提案することには躊躇を感じるかもしれない。なぜなら,我々の作 業が進むにつれて,我々の[導入しようとする]新しい方式を納得させる ことに苦慮することが多くなってきたからである。しかしながら,我々 は,本規定[と類似の規定]をイタリアの[民]法典の中に見いだすこと ができるのであり(第2011条),このことは,拙速の疑念を我々から払拭 してくれるのである

1)

 当該法定代位の[生じる]事案は,条文を読むことによって容易に理解 することができる。すなわち,[まず,]債務者の複数の不動産に対して抵 当権を有する債権者がおり(法定抵当権の場合もこれに当てはまりうる し,約定抵当権や遺言による抵当権の場合も同様にこれに当てはまりう 1) このような法定代位は,公務員法典において認められていた(担保編第242

条参照)。

(10)

る),そこで,すべての不動産が同時期に競売され,かつ,同時に清算さ れる場合には,衡平は,それぞれの不動産の代金がその大きさに応じて当 該債務の支払に充てられることを要請する。このことは,本条第 ₁ 項に定 められている。他方,一つの不動産のみの代金が,全部または大半にわた って,[債権の]完済のために費やされることがあり,[この場合,]当該 不動産に対して遅れて登記した他の債権者には大きな損失が生じ,強い債 権の負担を免れた他の不動産に対して登記している別の債権者達には利益 が生じることになる。

 このような価額に対応させた直接的な割付は,常に可能なわけではな い。すべての不動産の競売および清算を常に同時に行うことはできないか らである。そこで,法律は,間接的に回復させる手段を示した。それが,

第 ₂ 項の対象となっている法定代位である。すなわち,一つのみの不動産 から完全に弁済を受けた債権者に遅れて登記していた債権者達は,ほぼ有 益なものとは考えられない自分自身の順位に甘んずるのではなく,自己の 債権のために他の不動産に対して当該債権者の地位,すなわち当該債権者 の順位を獲得する。

 本法文は,他の債権者達が,当該代位において,彼らのそれぞれの順位 を保持することを示している。これは,他の債権者達が一つの日付および 一つの順位しか持たない新たな権原により代位するかのように誤解される ことを避けるためである。

 この法律の目的は,異なる複数の不動産を,そのそれぞれの価値に応じ て一つしかない債務に割付けすることにある。したがって,この代位は,

その他の不動産をその最優先の債権の支払に充てるべき範囲においてし か,損失を被った債権者がそれらの者に優先する債権者の地位を獲得する ことを認めない。そうでないと,無限に循環してしまうことになるからで ある。この代位[制度]の起源であるイタリアの[民]法典の規定は,こ の点をはっきりさせないままにしており,若干の問題を生じさせている。

というのも,その規定が,「当該代位の結果,同一の権利が,損失を被っ

た債権者に帰属する」としているからである(第2111条)。

(11)

 さらに,この法定代位は,フランス民法典第1251条第 ₁ 号におけるのと 同様に,本草案第504条第 ₂ 号にすでに定められているのであり,そのよ うな法律上の特権を再度具現化させているものである。すなわち,概念を ゆがめることなく,「これらの債権者は,先取特権または抵当権を理由に その者に優先する他の債権者に対して弁済した」ということができるので あり,それ故,将来において,フランスの判例が,イタリアの法律から着 想を得て,第1251条第 ₁ 号の適用のみによって同一の結論に到達するに至 っても,驚きはしないであろう。

*旧民法債権担保編 第242条

 債権者カ数箇ノ不動産ニ付キ抵当ヲ有シ其各箇ノ代価カ同時ニ清算アリシトキハ 其債権ハ総不動産ノ割合ニ応シテ之ヲ分配ス可シ

 漸次ノ清算ノ場合ニ於テ右ノ債権者カ不動産中ノ一箇ノ代価ニ因リテ全ク弁済ヲ 受ケ此一箇ノ不動産ニ付キ其債権者ノ次ニ抵当ヲ有スル一人又ハ数人ノ債権者カ為 メニ弁済ヲ受クルコトヲ得サルトキハ其一人又ハ数人ノ債権者ハ他ノ各不動産ニ付 テハ其ノ相互ノ順位ヲ以テ右弁済ヲ受ケタル債権者抵当ニ当然代位ス

Art. 1257. Ladite subrogation produit son effet contre les créanciers qui sont inscrits sur lesdits immeubles à la suite de celui dont les droits sont ainsi transmis.

 Si les subrogés font mentionner leur subrogation en marge des inscriptions prises, ils doivent être nominativement compris dans prosédure dʼordre, et aucune radiation ou réduction de lʼinscription ne peut avoir lieu sans leur consentement.

 Si lʼhypothèque du créancier désintéressé nʼa pas été inscrite sur les

autres immeubles qui lui sont affectés, lʼinscription peut être prise et la

susdite mention faite aux même fins par les subrogés.[Ibid]

(12)

[試訳]

(同前)

 前条の代位は,同条に従って移転する権利を有していた債権者に遅れて 同条に定める不動産に対する登記を具備した債権者に対して,その効力を 生じる。

(代位の公示)

 代位者が既存の登記の付記記載欄に en marge

(訳者注4)

その代位を記載さ せた場合には,当該代位者は,その名において,順位確定手続に含められ なければならず,当該代位者の同意がない場合には,その[抵当権]登記 を抹消することも,縮減することもできない。

 弁済を受けた債権者の抵当権が,その抵当権の目的となっている他の不 動産について登記されていなかった場合,代位者は,[弁済を受けた債権 者の抵当権]登記をしたうえで,前項の目的のために同項に定める記載を することができる。(同条(イタリア民法典第2011条)参照)

(訳者注 ₄ )通常,en marge は,「欄外(に)」と訳されるが,フランスの登記 には,そのような付記をする欄が存在しており,「欄外」と訳すのは適切でな いと思われる。

  N

o

489 本条の第 ₁ 項は,代位者を被代位者の地位に置く代位の通常

の効果を,逆向きの形で示している。債権者が何らかの権利を有していた

土地の代金が精算されたが,その権利を行使することができなかった場

合,その当初の不動産について損失を被った債権者は,弁済を受けた債権

者に劣後していた諸債権者に先んじて,他の不動産について配当を割り付

けられることになる。すなわち,それらの諸債権者は,そのような結論に

不満を唱える正当な理由を持っていないといえるのである。なぜなら,そ

れらの諸債権者は,第一番目に登記された債権の額をもとに,各不動産の

それぞれの価格に[案分]比例させた一定の範囲で,自らが劣後すること

を知っていたからである。そこにおいて,その優先権が,ある債権者に行

使されるのか,他の債権者によって行使されるのかは,[劣後する]当該

諸債権者にとって重要なことではないのである。避けなければならないの

(13)

は,それらの[劣後する]諸債権者が不当な利得を受けることである。

 N

o

490 第 ₂ 項は,債務者と救済権者との間でなされる行為で登記の 抹消または縮減の効果を有するものから身を守る手段を,代位者のために 定めている。これはまた,特に,順位確定手続において自己の権利を主張 する手段でもある(付言すれば,追及手続においても同様である。法文は それについて何ら述べていないが,それは,まだ追及手続について検討す るにいたっていないからである。)。登記の付記記載欄に代位の記載がなさ れていない場合,通知は旧債権者に対してしかなされないこととなり,も はや何らの利害関係も有せず,代位者に対して担保の義務を負っているわ けでもない旧債権者は,その通知に対応しないでいることができる。

 第 ₃ 項は,代位者のためのこれらの予防措置をより完全なものとしてい る。

*旧民法債権担保編第243条

 前条ノ代位ハ原債権者ニ次テ右各不動産ニ付キ登記ヲ為シタル債権者ニ対シテ其 効ヲ生ス

 右ノ代位者カ登記ニ其代位ヲ附記シタルトキハ其代位者ヲ順序配当手続中ニ加ハ ラシムルコトヲ要シ且其承諾アルニ非サレハ何等ノ抹消又ハ減少ヲモ為スコトヲ得 ス

Art. 1258. Tout créancier hypothécaire capable de disposer de sa créance, ou dûment représenté ou autorisé à cet effet, peut renoncer à son hypothèque ou seulement à son rang, en faveur dʼun autre créancier, soit hypothécaire, soit chirographaire, du même débiteur, sans préjudice de ce qui est dit, au sujet de la novation, par lʼarticle 525.

 Si une créance hypothècaire a été successivement lʼobjet de cessions,

renonciations ou subrogations, la priorité appartient à celui des ayant─droit

qui a le premier publié son acquisition par la mention de lʼacte constitutif de

son droit en marge de lʼinscription déjà faite, ou par lʼinscription elle─même,

(14)

si elle nʼavait pas encore été prise.[Comp. L. du 23 mars 1855, art. 9.]

[試訳]

(特定の者のための放棄)

 債権を処分することができるすべての抵当債権者または[抵当債権者 の]適式な代理人もしくはそのための権限を与えられた者は,更改に関し て525条が定めるところを害することなく,あるいは他の抵当債権者のた めに,あるいは他の一般債権者のために,あるいは債務者に対しても,抵 当権を放棄することまたは抵当権の順位のみを放棄することができる。

(優先性)

 同一の債権について重複して譲渡,放棄または代位が行われた場合,優 先権は,その者の権利を設定した行為を既存の[抵当権]登記の付記記載

欄 en marge に記載することによって,または,未だ[抵当権]登記がな

されていないときには,[抵当権]登記自体をすることによって,最も早 く権利取得を公示した権利承継人に属する。(1855年 ₃ 月23日の法律第 ₉ 条を参照)

 N

o

491 抵当権債権者は,他の債権者のために,債権を保持しつつ,

自己の抵当権を放棄することができ,また,抵当権を保持しつつ,単に,

その順位のみの放棄をすることができる

。放棄をした[抵当債権]者に 遅れて登記をした他の債権者がいる場合には,それらの債権者は,放棄に よって,害されることも,利益を受けることもない。現実には,新債権が 放棄者の債権よりも高額であって,その新債権が放棄者の債権の範囲で行 使されるか,または,新債権が放棄者の債権よりも少額で,放棄者が余剰 分について権利行使をするということになるからである。

 複数の放棄が重複してなされた場合には,同一の債権の重複した譲渡に ついて以下に述べるところが当てはまることになる。

 抵当債権は,売買,交換,贈与,またはその他の移転を生じさせる行為

によって,譲渡されうる。その場合,抵当権は,債権本体とともに譲渡さ

(15)

れる。ただし,実際には,あるいは,譲渡人の悪意によって,あるいは,

債権者の相続人が被相続人によってすでになされていた譲渡を知らずに,

善意でさらに別の譲渡を行ってしまうことによって,同一の債権が重複す る譲渡の対象となってしまう場合もありうる。

 したがって,本条は,このような譲受人間の紛争を解決しておかなけれ ばならず,抵当権の公示制度から譲受人間の優先性の原則を借用するとい うことも当然のことであろう。すなわち,第一順位は「最初にその取得を 公示した者」に帰属するものとし,公示の方法は,より簡明で,より費用 のかからないもの,すなわち,すでになされている登記の付記記載欄への 記載とするのである。譲渡人によってそれまでに登記がなされていなかっ た場合には,登記が譲受人のイニシャティブによって行われ,譲渡の記載 が付されることになる。

 この法律は,代位を譲渡と同一線上においている。それは,範囲が多少 異なるものの,代位が[譲渡と]同一の効果を有するからである(本草案 第501条および第506条を参照)。

 ここで,悪意に基づくものであろうと,善意によるものであろうと,重 複して生じることがあり,それ故,優先性の問題を生じさせることがある 唯一の代位は合意による代位であるととらえて,合意による代位しか問題 とならないと考えてしまうかもしれない。しかしながら,法律に,そのよ うな制限をおいてはならない。実際には,譲渡または事前もしくは事後の 合意による代位と抵触する法定代位を想定することができ,各利害関係人 が,契約をする前に,自己に対抗可能な優先権について知ることができる ようになっている必要があるのである。

 謄記に関する1855年の法律以前においては,フランスには,既登記また

は未登記の抵当権に関する放棄,譲渡,代位についてなされるべき公示方

法についての規定が存在しなかった。1855年の法律第 ₉ 条は,これら様々

な行為についての公示方法を定めているが,同条は,妻の法定抵当権につ

いてのみ適用されるものとなっている。本草案は,より一般的に適用され

る規律をおくために,同条から着想を得たものである。

(16)

⒜ 抵当権またはその他の権利の放棄が消滅という意味での単純な放棄ではな く,放棄によって利益を受ける一定の者のためのものである場合,そのよう な放棄は,「(他者の)優遇のための放棄 renonciation in favorem(alteius)」と 呼ばれている。

*旧民法債権担保編 第244条

 凡ソ債権ヲ処分スル能力アル抵当債権者ハ同一債務者ノ他ノ債権者ノ利益ニ於テ 自己ノ抵当又ハ其順位ノミヲ放棄スルコトヲ得但財産編第500条及ヒ503条ニ於テ更 改ニ関シ規定シタルモノヲ妨ケス

 若シ抵当債権ヲ数次ニ数人ニ対シ譲渡,放棄又ハ代位ノ目的ト為セシトキハ優先 権ハ承継人中登記ニ自己ノ権利ノ設定権原ヲ附記シ又ハ登記ノ有ラサリシトキハ之 ヲ為シテ其取得ヲ第一ニ公示シタル者ニ属ス

Art. 1259. Lʼarticle 1191, dernier alinéa, est applicable aux cas des deux articles précédents.

[試訳]

(準用)

 第1191条最終項は,前 ₂ 条の場合に適用される。

 N

o

492 第1191条が,すでにある特定の代位の事案について定めをお いている。先取特権について起草したように,公示に関する事柄を同条に ならって再び条文化しようとも考えたが,譲渡または代位の公示前に善意 でなされた支払の有効性に関する最終項について同条を準用することにと どめた。

*旧民法債権担保編 第245条

 右ノ外第185条ノ規定ハ前 ₂ 条ノ場合ニ之ヲ適用ス

(17)

Art. 1260. La connaissance, même avouée, quʼaurait un créancier hypothécaire ou chirographaire dʼune hypothèque non inscrite, ne le prive pas du droit de se prévaloir du défaut dʼinscription.

[試訳]

(未登記抵当権の認識)

 登記されていない抵当権に関する抵当債権者または一般債権者の認識 は,たとえそれが自白されたとしても,その者から,登記の欠缺を主張す る権利を奪うことはない。

 N

o

493 本条は,抵当権の公示と不動産物権の譲渡または設定の公示 との間に異なる基礎があることを示すのに不可欠な条文である。実際,第 370条は,善意の権利承継人,すなわち,謄記されてない行為を知らなか った権利承継人しか,その[公示]懈怠取得者に対して謄記の欠缺を対抗 することができないとしている。さらに,当該行為についての悪意,すな わち,[公示制度とは]外在的な extrinsèque 認識を証明するための手段 には,制約が課されている。すなわち,悪意は,謄記の欠缺を主張する当 事者自身の自白によってしか証明され得ないとされている(第367条参 照)。

(訳者注5)

 ここで,フランスの[民]法典の解釈において一般的に排斥されている このような悪意の影響を強いているかのように見える[同条の]根拠を再 検討する必要はないであろう(第Ⅱ編 No.209以下参照)。

 謄記されていない移転を認識していることが,当該譲渡を認識している

ことを自白した者から,謄記の欠缺を援用する権利を剝奪するからといっ

て,登記されていない抵当権を認識していることが,当該抵当権を認識し

ていることを自白した者から,登記の欠缺を対抗する権利を剝奪すること

にはならない。すなわち,謄記に服する諸物権は一般的に相互に両立し得

ず,それらの物権は共存しない。それゆえ,法律は,自己の[権利]取得

を公示する際に先行する[権利]取得を知らなかった者に対してしか優先

(18)

権を与えず,逆に,謄記されてはいないが[自己の権利取得に]先行して 行われた譲渡[の存在]を自己の[権利]取得の際に知っていたことを自 白する者に対しては優先権を与えないのだと理解されている。それに対し て,諸抵当権は,必ずしも,相互に排斥し合うことがなく,同一不動産上 に異なる者の利益のために共存しうる。すなわち,他の債権者に劣後する 債権者も,あるいは現金によって,あるいは他の担保を用いて,他の債権 者に先立って支払いを受けることが可能である。したがって,ある債権者 が,登記を具備する時点において,登記されていない他の抵当権がすでに 存 在 し て い る こ と を 知 っ て い た か ら と い っ て, そ の 債 権 者 が 悪 意

mauvaise foi

(訳者注6)

を有していたことになるわけではなく,当該債権者が

取引を差し控えるように要請されることもないのである。[抵当権の存在 を知っている]当該債権者は,[登記]懈怠債権者が抵当権の必要性を感 じさせないような他の担保権を有していると考えるかもしれないのである

[第Ⅱ編 No.214を参照]。

*旧民法債権担保編 第246条

 抵当債権者又ハ無特権債権者ハ他ノ抵当ノ登記ナキヲ知リタルコトヲ自認スト雖 モ登記ノ欠缺ヲ申立ツル権利ヲ失ハズ

(訳者注 ₅ )ちなみに,本草案第370条は,「①368条に掲げる行為の効果によ って取得され,変更されまたは回復される諸物権は,謄記をするまでは,外 観上名義人にとどまっている当事者と当該権利自体を目的とした取引をした 権利承継人,または,そのように名義人にとどまっている当事者から,もし くは,そのような当事者の名義から,上記の諸物権と両立しない権利を取得 した権利承継人に対して,対抗することができない。ただし,双方の場合に おいて,[権利承継人が諸物権の対抗を受けないのは,]当該権利承継人が善 意であり,かつ,謄記の申請がなされた時点において,当該権利承継人自身 がすでにその権原を謄記または登記されているときに限る。②悪意または共 謀は,第367条に従ってしか,証明されることができない。」と定めており,

本草案第367条第 ₅ 項は,「権利承継人の悪意は,文書によってなされた自白

(19)

または裁判上でなされた自白によってしか証明されない。ただし,譲渡人と の間の共謀による詐害 fraude があった場合には,通常の証拠方法のいずれに よっても,当該共謀を証明することができる。」としている。

(訳者注 ₆ )ここでの「悪意 mauvaise foi」は,害意や背信的悪意に近い概念 である。

Art. 1261. Les créanciers hypothécaires qui ne sont pas désintéressés en entier par le produit de la vente des immeubles demeurent créanciers chirographaires pour ce qui leur reste dû.

Si la distribution de tout ou partie des valeurs mobilières précède la vente des immeubles, les créancdiers hypothécaires y figurent provisoirement, comme créanciers chirographaires, pour le montant intégral de leur créance.

 Lorsquʼ ensuite a liue la distribution du prix des immeubles hypothéqués, les mêmes créanciers y sont colloqués comme sʼils nʼavaient rien reçu des valuers mobilières ; mais ceux qui doivent ainsi être payés entièrement ne touchent le montant de leur collocation hypothécaire que sous la déduction des sommes quʼils ont reçues comme créanciers chirographaires, lesquelles sommes sont restituées à la masse mobilière.

 A lʼégard de ceux qui ne peuvent être payés hypothécairement quʼen partie, leur droit sur la masse mobilière est réglé définitivement dʼaprès la somme pour laquelle ils ne viennent pas utilement à lʼordre, et ce quʼ ils ont

touché au─delà de cette propor tion est retenu sur leur collocation hypothécaire et restitué à la masse bobilière.

Les sommes ainsi restituées sont lʼobjet dʼune nouvelle répartition entre

les créanciers purement chirographaires et ceux des créanciers

hypothécaires qui nʼont pu être colloqués à lʼordre ou ne lʼont été que pour

une partie de leur créance.[Comp. c. com. fr., art.552 à 556.]

(20)

[試訳]

(抵当権から回収できなかった部分:一般債権者としての権利)

 不動産の競売の売得金 produit によって全額について弁済を受けること ができなかった抵当債権者は,なおその者に支払われるべき額について,

一般債権者としての地位を保持する。

(不動産競売前の動産競売)

 動産の売得金 valeurs mobilières の全部または一部の配当が不動産の競 売に先立って行われる場合,抵当債権者は,暫定的に,その者の債権の全 額について,一般債権者として当該配当に参加する。

(不動産競売:控除)

 当該債権者は,次いで抵当不動産の代金の配当が行われる際に,動産代 金を受け取らなかったかのように,抵当不動産の代金について配当を割付 けられるものとする。ただし,そこで全額の支払いを受けることになるは ずの者は,一般債権者としてその者が受領した額を控除したうえでしか,

その者の抵当権清算手続上の配当額を受け取ることができず,当該控除額 は動産財団 masse mobiliere に返還される。

(同前)

 抵当権実行手続により部分的にしか支払いを受けることができない者に ついては,その者が自己の配当順位において満足を受けることができなか った額に応じて,動産財団 masse mobiliere に対する権利[の範囲]が確 定し,その者がその割合を超えて受け取っていた額は,その者の抵当権清 算手続上の配当[額]から控除され,動産財団 masse mobiliere に返還さ れる。

(新たな分配)

 このようにして返還された額は,純粋な一般債権者および自己の順位に 配当割付が及ばなかった,または,その者の債権の一部についてしか配当 割付がなされなかった抵当債権者の間における新たな分配の対象とされ る。(フランス商法典第552条ないし556条

(訳者注7)

を参照)

  N

o

494 本条の諸規定は,きわめて重大なものである。本条の諸規定

(21)

は,フランス商法典(第552条ないし第556条)から着想を得たものであ る。それらの[フランス商法典の]条文は,破産 faillite の事案について 定めており,したがって,学説や判例は,それらの条文を民事事項,すな わち,支払不能 déconfiture に拡大適用できるとは考えていないようであ る。しかしながら,それらの条文は,道理および衡平にきわめて合致して いるので,本民法草案にそれらの規定を導入することに躊躇はない。

 この法文は,まず,まさに論理的かつ必然的な道筋で出てくる結論を有 する原則を提示することから始めている。すなわち,抵当権者たる債権者 は,抵当財産の競売の収益において手にすることができなかった額につい てしか,一般債権者として取り扱われない。したがって,二つの資格が競 合することはない。すなわち,一方は他方を排除する。どの抵当債権者が 一般債権者としてとどまるか,それらの者がいかなる額においてその地位 を取得するかについては,順位による配当手続が終結した後にしか,知る ことができない。

 常に不動産の競売から始められるのであれば問題はない。例えば, ₃ 人 の抵当債権者がいるとしよう。そして,第一順位の抵当債権者が不動産の 代価から完全に支払を受け,第二順位の抵当債権者が ₃ 分の ₂ について支 払を受け,第 ₃ の抵当債権者が有益な配当にあずかれなかったとする。

[そのとき,]第一順位の抵当債権者は,もはやいかなる資格においても債 権者でなく,第二順位の抵当債権者は,その者の債権の ₃ 分の ₁ について しか一般債権者でなく,第三順位の抵当債権者は,[その者の債権の]全 体について一般債権者であることは明らかである。第二順位の者および第 三順位の者は,それらの者の一般債権の額に応じて,動産財産から支払を 受けることになる。

 N

o

495 ただし,より正確に言うと,不動産の競売を動産財産の清算

よりも前に行うことができることは希である。したがって,すべての抵当

債権者が自己の債権額に応じて[動産財産]分配手続に取り込まれるべき

であると主張してくる可能性があり,いかなる名目で,どのような額の範

囲で,それらの抵当債権者を分配手続から排除したら良いのか分からない

(22)

ということになる。第一順位の債権者が不動産の代価から完全に支払を受 け,第二順位の債権者が一部分について支払を受けることがいくら確から しくても,第二順位の債権者にとって,その[支払を受けるであろう]一 部分は不確実であるし,第一順位の債権者にしても,不動産の滅失によっ て,あるいは,その者の抵当権の何らかの予想外の無効[原因]によっ て,完全な弁済が妨げられるかもしれないからである。

 したがって,法律は,それらすべての抵当債権者に,それぞれの債権の 全額について,売得金分配手続への参加を認めており,それぞれの抵当債 権者は,そこで配当金を手にすることになる。

 ついで,不動産の代価の分配手続にいたった際に,それぞれの抵当債権 者が順位による配当手続に参加する範囲は,それらの抵当債権者に対して なお支払われるべき残額の範囲ではない。残額の範囲で参加できること は,登記の順位により不動産がそれらの債権者[満足]にとって十分でな いという危険にさらされていたはずの債権者にとって,不当に有利な状況 を作り出してしまうからである。第一順位の債権者は,その者の順位にお いて得られる額が減少し,第二順位の債権者は,その者の順位としてはよ り多くのものを手にし,第一の事案においては有益な配当を受けることが できなかった第三順位の債権者は,何らかのものを手にすることができる ようになってしまう可能性があるのである。

 したがって,不動産の代価の清算において,各抵当債権者は,事前の

[動産財産の]分配手続が何ら行われなかったかのように取り扱われなけ ればならない。

 他方,債権者は,債務の二重払いも,債務の一部の二重払いも受けるこ とはできない。そうすると,順位に基づく分配よって完全に支払を受ける ことができる有益な順位にある者は,その者が動産財産体から受け取った 配当金全体を動産財産体に戻さなければならないことになる。なぜなら,

その者が第一の配分手続に参加したことが不当であることが明らかになっ

たからである。第二順位の抵当債権者は,例えば,抵当権の順位による配

当手続において[その者の債権額の] ₃ 分の ₂ を手にするよう求められた

(23)

としたら, ₃ 分の ₁ についてしか動産分配手続に参加すべきでなかったと いうことになる。そして,その第二順位の債権者は,動産財産分配手続に その者の債権全体について参加していたのであるから,その者が受け取っ た額の ₃ 分の ₂ を返還しなければならないことになる。第三順位の抵当債 権者は,抵当権実行手続においては何ら手にすることがないから,動産財 産体に何ら返還する必要がない。反対に,その者は,動産財産体に返還さ れた額の分配手続に参加するよう呼び出されることになる。なぜなら,最 終項に定められているように,その金銭は,新たな案分による分配の対象 となるからである。

*旧民法債権担保編 第247条

 不動産ノ売却代価ヲ以てテ全部ノ弁済ヲ受ケサル抵当債権者ハ其残額ニ付テハ無 特権債権者タリ

 若シ不動産ノ売却ニ先タチテ動産有価物ノ配当ヲ為ストキハ抵当債権者ハ其債権 全額ノ為メ無特権債権者トシテ仮ニ其配当ニ加入ス

 其後ニ至リ抵当不動産ノ代価ノ配当アルトキハ抵当権者ハ動産有価物ニ付キ何等 ノ弁済ヲモ受ケサリシカ如ク其配当ニ加入ス然レトモ此配当ニ於テ全ク弁済ヲ受ク 可キ者ハ動産ノ配当ニテ受取リタル金額ヲ控除スルニ非サレハ其抵当ノ配当額ヲ受 取ルコトヲ得ス其控除シタル金額ハ動産財団中ニ之ヲ返還ス

 不動産ノ代価ノ配当ニ於テ一分ノミノ弁済ヲ受クルコトヲ得ヘキ者ニ付テハ其残 額ニ従ヒ其動産財団ニ対スル権利ヲ定ム但此割合外ニ受取リタルモノハ之ヲ動産財 団ニ返還ス

 右ノ返還金額ハ純粋ノ無特権債権者ト有益ニ配当ニ加入スルヲ得サル抵当債権者 及ヒ債権ノ一分ノミニ付キ之ニ加入シタル抵当債権者トノ間ニ於テ更ニ之ヲ配当ス

(訳者注 ₇ )当時のフランス商法典第552条は本条第 ₁ 項に,第553条は本条第

₂ 項に,第554条 ₁ 項は本条第 ₃ 項但書に,第554条第 ₂ 項は本条 ₅ 項に,第

555条は本条第 ₄ 項に,それぞれ対応している。

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