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狭い空間内における遊星歯車の振動挙動推定

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Academic year: 2021

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狭い空間内における遊星歯車の振動挙動推定

Prediction on vibration behavior of planetary gear in narrow space 

 

精密工学専攻

17

号 城所  将之

Masayuki Kidokoro

1.はじめに 

 

近年、技術の進歩により低価格で使い易い製品が設計、生 産されている.自動車の変速機でも同様に、運転者が手動で ギアを変速させていた一昔に比べて、現在ではスピードや斜 面によって自動で変速してくれる、オートマチックトランス ミッション(AT)が主流になっている.しかし、コンパクト で使い易いものほど、それを構成している機構や部品は、複 雑になる一方である.AT では、入出力軸が同心になる、大 きなトルクが得られるなどの利点を持っている遊星歯車機 構を使用しているが、欠点として、複雑な構造をしており、

予期しない振動や騒音を発生することもある.またATは多 数の部品から構成されており、歯車など直接振動を測定する ことが困難である.よって本研究では、狭い空間内にある対 象物に関して、間接的に振動を推定する手法を発案すると共 に、モーダル実験で放射音と振動源までの伝達経路を同定し た後、二つの手法を適用させ実稼動状態の放射音から振動源 の振動挙動を推定する.さらに問題となる特定周波数におけ る騒音を低減することを目的とする.

2.数値シミュレーションを用いた 

伝達経路同定および振動挙動推定   

本研究では、伝達経路同定手法および変位-ひずみ変換係 数について簡易モデルを用いて検証を行う.Fig.1 に数値モ デルを示す.短い梁をコンポーネント1、長い梁をコンポー ネント2として、結合部はバネ要素で表現した.ここでコン ポーネント2のシステム内部加速度 は狭い空間内にあ るため、直接測定することができないと仮定する.まずコン ポーネント2に1[N]の加振力を実稼動として 部分に 加える.このときの放射音を とし、Fig.2 に示す. 

sys

X&&in

sys

X&&in(2)

sys

Pop

  Fig.1 Radiation sound under operating condition  ここで Fig.2 から着目する周波数を 469Hz と仮定する.次に   

 

伝達経路を同定するためコンポーネント1の sys に1[N] 

X&&out(2)

の加振力を加える.そのときのコンポーネント1の加速度を

、コンポーネント2のシステム内部加速度を 、放 

sys

X&&out X&&insys

射音をPsysとし、次の式を定義する. 

sys out

sys G X

P = (1)⋅ &&          (1) 

sys out sys

in G X

X&& = (2)⋅ &&        (2) 

  469Hz

  Fig.2 Radiation sound under operating condition  この(1)式は放射音と外部加速度の伝達経路関数である.

同様に、(2)は外部加速度とシステム内部加速度の伝達経路 関数である.放射音

P

sysは方向を持たないスカラー量であり、

はz方向が支配的だからz方向のみを見るた めスカラーとして扱う事ができる.よって割り算を行うこと で、伝達経路関数を求めることができる.直接測定できない を求めるために、コンポーネント2を取り出して、単体 でモード解析を行う.Fig.3 にコンポーネント2を示す. 

sys

X &&

in

X &&

outsys

sys

X&&in

  Fig.3 FE model for component 2

ここでひずみを測定するのだが、ひずみを測定するのはひず みゲージが加速度センサよりも薄く、狭い空間でも使用する ことができるからである.コンポーネント2単体の加速度を

、ひずみを とし 

comp

X&&in εcomp

comp in

comp=TX&&

ε                (3) 

という式を定義する.このTを変位-ひずみ変換係数と呼び、

(2)

ひずみと変位の線形関係を利用した式である.この式からい ったんTを求めると、システムに組み込まれてもコンポーネ ント2に加わる外力自体が変わるだけで、変換係数Tは変わ らないと考えられるので、システムに組み込んだ際に測定で きるひずみεsysを用いて(3)式を 

sys sys

in =T

X&& 1⋅ε              (4) 

に従って計算を行う. 今後使用する外部加振におけるシステ ム内部加速度 は(4)式から得られた加速度を使用し、

システム内部加速度を使用したことを表すために、上添え字

sys

X&&in

εを記述する.ここで得られた外部加振におけるシステム 内部加速度 を(2)式に代入することで を求めるこ とができ、次式を定義する.  

sys

X&&in Gε(2)

( )

1

) 2 ( ) 1

(

=G G Psys Xinsys

Gε ε &&       (5) 

この(5)式はにおける外部加振における放射音とシステム 加速度 との関係である. を求めてしまえば、システ ム加振における放射音を測定すれば、次の(6)式のように 計算をすることで実稼動状態におけるシステム内部加速度 を予測することができる. 

sys

X&&in Gε

( )

1

P Gε

X&&insys opsys              (6) 

ではこれ式を多点の場合について考える.多点では次式のよう に、四則演算が行える形で定義する.

⎟ ⎟

⎜ ⎜

⎥ ⎥

⎢ ⎢

⎟ =

⎟ ⎟

⎜ ⎜

sys in

sys in

sys in

sys sys sys

X X X

G G G

P P P

) 3 (

) 2 (

) 1 (

) 3 ( ) 2 ( ) 1 (

) 3 (

) 2 (

) 1 (

0

0

&&

&&

&&

ε ε ε

          (7)

ここで伝達経路関数Gεおよび、変位−ひずみ変換係数Tが最 大になるように、放射音Pおよびコンポーネント実験におけ るひずみ を特定周波数で最大の応答点を使用する.シ ステム加振における放射音 を用いて予測した加速度を 正解値と共に、Fig.4,Fig.5,Fig.6 に示す.この結果を見て もわかるとおり、着目している特定固有値付近の予測精度が よい.さらに、多点では振動の挙動を示す、振動モードを求 めることができる.この振動モードは単位を持つ絶対的なも のではなく、あくまで各点間の相対的な関係のみを表す.本 研究では、 を基準化させ振動モードを求める.

εcomp

sys

P

op

sys op

X&&in (2)

これらを実際の振動モードと予測振動モードを図示したのを

Fig.7 に示す.予測した振動モードが正しい振動モードとほ

ぼ一致していることがわかる.

Fig.4 Predicted acceleration sys

op

X&&in (1)

Fig.5 Predicted acceleration sys   

op

X&&in (2)

Fig.6 Predicted acceleration sys  

op

X&&in (3)

 

Fig.7 Predicted mode shape of vibration at 469Hz

3.

実験による振動挙動推定

 

前述で伝達経路同定手法および、変位−ひずみ変換係数を 用いて振動挙動を推定することを立証した.本節では簡易モデ ルを用いて、実験でこれらの検証を行う.Fig.8にシステム加振に おける実験セットアップを示す.コンポーネント2から放射音が出 ないようにアクリルボックスを用いて遮音を施してある.また検証 のために、本来ならば狭い空間のため、加速度 を直接測る ことができないが、本節では予測した結果の検証のために、大き 目のアクリルボックスを選び、実際の加速度 を測れる空間を 持たせた.

sys

X&&in

sys

X&&in

このシステム加振における放射音 をFig.9に示す.この放 射音から特定周波数を 422Hz と仮定する.伝達経路同定の方 法、および変位−ひずみ変換係数の算出の仕方は2節と同様の 手順で行う.得られた振動モードをFig.10に示す.このFig.10 見てわかるとおり、挙動はほぼ正解値と一致し、精度よく振動モ ードを予測することができている.

sys

P

op

(3)

 

Fig.8 Experimental setup

Fig.9 Radiation sound pressure

Fig.10 Predicted mode shape

4.

構造変更を用いた特定周波数騒音低減    

2および3節で特定周波数において、狭い空間内で振動し ている対象物の振動挙動を推定することができた.本節では 得られた結果を基に対象物に質量付加を行い、特定周波数に おける騒音低減を行う.システム内部加速度付近は狭い空間 で、直接計ることができないと仮定しているため、質量付加 をすることができないと仮定する.ひずみ付近は測定するこ とができるため質量付加をする空間があると仮定し、質量は ひずみ付近に付加する.ここで振幅 の感度解析を行っ た.得られた結果から、ひずみ応答点 付近がもっとも感 度がよかったので、 付近に 50g の鉛を付加させた.この 状態でのシステム加振に置ける放射音を数値シミュレーシ ョン、実験と共に 1/3 オクターブバンド表示させたものを Fig.11 に示す.  

sys

X&&in(2)

sys in(2)

ε

sys in(2)

ε

  Fig.11 Radiation sound under operating condition with

lumped mass 50g

数値シミュレーションおよび、実験共に着目している特定周波数 での放射音低減ができた.

5.

実機

AT

モデルを用いた振動挙動推定 および放射音低減

5.1振動モード推定

本節では実機ATを模擬したモデルを用い、簡易モデルで 検証した手法を適用させ、狭い空間内での遊星歯車の動きを 推定し、さらに着目している周波数での騒音低減を行う.本 来のATは遊星歯車機構3つ、トルクコンバータ、など多数の 部品から構成されており、伝達系がかなり複雑となる.その ため本研究では遊星歯車機構1対のみを搭載し、その他不要 なものはすべて取り除いたモデルを使用する.Fig.12に本研 究で使用するATモデルを示す.遊星歯車機構を覆っているケ ースは実際のATを切削したものである.

      Fig.12 Automatic transmission simple model 本研究では実際に軸を回すのではなく、ねじり加振によって 実稼動を表現している.システム加振を行うために、片方の 軸にフランジを取り付けてあり、そこをz方向に加振するこ とで実稼動を模擬している.またフランジと歯車のかみ合い ガタが発生しないように、フランジにある穴からワイヤーで 引っ張り、負荷をかけている.システム加振における放射音 Fig.13に示す.周波数は0から2048Hzまで測定し、ラン ダム波を入力した.特に700〜800Hzで音圧が高くなってい るので、この周波数に着目して、研究を進めていく.

 

Fig13 Radiation sound pressure under operating condition

(4)

次に伝達経路を同定する外部加振実験を行う.今度はねじり 加振ではなく、軸に対しての加振である.これも同様に周波

数は0から2048Hzまで測定し、ランダム波を入力した.コ

ンポーネント実験では、システムに組み込んだときに予測し たい振動応答点を決めて測定する必要がある.コンポーネン ト実験のセットアップをFig.14に示す.ひずみゲージはリン グギア上につけた.

Fig.14 Component experiment setup

本研究では、特定周波数における放射音で遊星歯車がどのよ うに振動しているのかを推定したいので、それぞれの遊星歯 車に加速度計を取り付けた.簡易モデルとは違い、シミュレ ーションやシステムに組み込んだ状態での実際の加速度を 測るなどの検証ができないため、本研究では歯車一つに、鉛 を付加させて慣性力により挙動に変化をもたらせた. Fig.15 に式(5)によって得られた を示す.簡易モデルの検証で 述べたように、伝達経路関数 および、変位−ひずみ変換係

Gε

Gε

Tが最大になるように、放射音Psysおよびコンポーネント 実験のひずみ を特定周波数で最大の測定結果を使用す る. 

εcomp

Fig.15 Transfer path Gε 

この波形はシステム加振における放射音とシステムに組み 込んだ状態での遊星歯車の加速度との伝達経路関数である.

着目している周波数700から800Hz付近でピーク値が一番 高いわけではないが、700から 800Hzの周波数帯でピーク が2つから3つ存在していることがわかる.このうちのピー クがシステムに組み込んだ時に騒音として発生する要因で あると考えられる.ここで700から800Hzで振動モードを 抽出した.抽出した結果をFig.16に示す.

Fig.16 Mode shape at 749Hz

この振動モードから上部にある歯車が相対的に振動してい ることが見て取れる.

5.2 特定周波数における放射音低減

  前5.1節で749Hzにおける振動モードを抽出した.結果を

見ると、上部にある歯車が相対的に振動してることがわかっ たので、質量付加手法を用いて、特定周波数における放射音 低減を行う.質量付加をする場所であるが、歯車自体に質量 を付加することができないので、今回は上部の歯車がかみ合 っているリングギアの上に100gの質量付加を行った.その 結果を1/3オクターブバンドでFig.17に示す.

Fig.17 Radiation sound pressure under operating condition

この結果を見てもわかるとおり、着目している周波数700

800Hzで放射音を低減させることに成功した.

6.

研究成果

1. 数値シミュレーション上で簡易モデルを作成し、伝達 経路同定手法、変位−ひずみ変換係数手法の検証を行 った.その結果、固有値付近で精度がよいということ がわかった.

2. 推定した振動モードと実際の振動モードはほぼ一致 していると言え、予測した加速度の精度がよいことが わかる.

3. 実験において、伝達経路同定手法、変位−ひずみ変換 係数手法の検証を行った.こちらも数値シミュレーシ ョンと同じく、同様の結果を得ることができた.

4. 推定した振動モードから振幅を下げるために構造変 更を行い、特定周波数における放射音を数値シミュレ ーションおよび、実験において下げることに成功した.

5. 実機ATモデルに伝達経路同定手法および、変位−ひ ずみ変換係数手法を適応させ、振動挙動を推定し、さ らに振動モードを推定することができた.

6. 実機ATモデルに構造変更を行い、特定周波数におけ る放射音低減に成功した.

7.

参考文献  

  1. 大久保信行“機械のモーダル・アナリシス”中央大

学出版部(1982)

  2. Barthod,B.Hayne,,J.L.Tebec and J.C.Pin“Study of      

the influence of acyclism characteristics on gearbox rattle noise”Inter-noise(2004)

参照

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