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難治性骨折の治療

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ラット難治性骨折モデルにおける脱分化脂肪細胞 移植と副甲状腺ホルモン投与による治療効果

日本大学大学院医学研究科博士課程 外科系整形外科学専攻

氏 名 木下 豪紀 修了年 2014 年 指導教員 長岡 正宏

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ラット難治性骨折モデルにおける脱分化脂肪細胞 移植と副甲状腺ホルモン投与による治療効果

日本大学大学院医学研究科博士課程 外科系整形外科学専攻

氏 名 木下 豪紀 修了年 2014 年 指導教員 長岡 正宏

(3)

目次

概要 ・・・・・・・・・1

緒言 1. はじめに ・・・・・・・・・3

2. 難治性骨折の定義 ・・・・・・・・・3

3. 難治性骨折の原因 ・・・・・・・・・4

4. 難治性骨折の疫学と診断 ・・・・・・・・・4

5. 偽関節の分類と治療方針の決定 ・・・・・・・・・5

6. 難治性骨折の治療 ・・・・・・・・・5

7. 多能性幹細胞による骨再生について ・・・・・・・・・8

目的 ・・・・・・・・11

対象と方法 ・・・・・・・・12

結果 1. 脛骨偽関節モデルの検討 ・・・・・・・・・16

2. GFPトランスジェニックラットDFATの in vitro 分化誘導 ・・・・・16 3. DFAT播種法の検討 ・・・・・・・・・16

4. CTによる骨構造解析 ・・・・・・・・・17

5. 組織学的検討 ・・・・・・・・・18

考察 ・・・・・・・・・19

まとめ ・・・・・・・・・23

謝辞 ・・・・・・・・・24

図表 ・・・・・・・・・24

引用文献 ・・・・・・・・・42

研究業績 ・・・・・・・・・47

(4)

1

【概要】

骨折治療後の偽関節や遷延癒合といったいわゆる難治性骨折に対して、患者 自身の腸骨から移植骨を採取し患部に移植するという自家骨移植術が広く施行 されてきた。しかし自家骨移植法には、採取できる骨量に限りがある。また、

採取には侵襲を伴い少なからず合併症がみられる。

骨髄間葉系細胞 (mesenchymal stem cell: MSC) は生体組織に微量に存在す る幹細胞を付着培養後、増殖させ得られる細胞群であり、高い骨分化能を示す ため、上記のような難治性骨折に対する再生医療への適応が期待される。一方、

高齢者など移植骨の採取困難な症例があること、雑多な細胞集団を付着培養す るために他の細胞の混入が避けられないこと、といった問題がある。

これに対して脱分化脂肪細胞 (dedifferentiated fat cells: DFAT)は成熟脂肪 細胞から高効率・高純度で産生されるため、ごく少量の組織量から必要細胞数 を調製できるメリットがあり MSC と同等の能力をもつことが明らかとなって いる細胞である。

また、副甲状腺ホルモン (parathyroid hormone: PTH)は骨粗鬆症治療におけ る骨同化作用のあるホルモンであるが、骨密度を上昇させるだけでなく、近年 骨形成に強力な促進作用を有することも明らかとなってきた。

このように均質な MSC 様細胞を容易に調製できる DFAT と骨形成促進効果 を有するPTHを併用した治療法の確立は、骨粗鬆症に伴う難治性骨折といった 今まで MSC 細胞治療の適応とならなかった疾患に対する新しい治療法につな がる可能性がある。本研究の目的はラット脛骨偽関節モデルを作成し、β- tricalcium phosphate (β-TCP)/collagen複合体に播種したDFATをラットの骨 折部に移植し、さらにPTH間歇投与を併用することにより、骨形成能が促進さ れるかについて検討することである。

ラット脛骨偽関節モデルの作製は、イソフルレンによる吸入麻酔下に、左下 腿脛骨をマイクロソーで4 mm骨切りし、欠損部にβ-TCP/collagen複合体を挿 入し、22G針を4 mmの間隙を保つように挿入した。術後8週においてペント バルビタールを100 mg/kg腹腔内投与し、安楽死させ脛骨を摘出した後、針を 抜去し computed tomographyCT)を撮影した。その結果、骨折部の両骨折 端は離れて間隙を形成し、偽関節となっていることが確認された。

5週齢のオスSprague-Dawley (SD)ラット(n=44)に上記の方法で脛骨に骨欠 損を作製し、以下の4群に分けた。①β-TCP/Collagen 複合体のみ移植する群 (Control群, n=11)、②Green fluorescence protein (GFP)-DFAT (1 x 106)を含有 したβ-TCP/Collagen複合体を移植する群(DFAT群, n=11)、③β-TCP/Collagen 複合体を移植後、PTH 30 mg/kgを週3回、8週間皮下注射する群(PTH群、

n=11)、④ GFP-DFAT (1 x 106)を含有したβ-TCP/Collagen複合体を移植後、

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2

PTH 30 mg/kgを週3回、8週間皮下注射する群(DFAT+PTH群、n=11)。モ

デル作成8週間後、4%イソフルラン吸入麻酔下にペントバルビタール 100

mg/kg を腹腔内投与することにより安楽死させ、脛骨を摘出し、骨欠損部の性

状をX線学的および組織学的に解析した。

その結果、CTにおいてControl群では骨折部に吸収されずに骨間隙を形成し たβ-TCP/Collagen複合体が残存していた。またsagittal像においては骨折両端が 肥厚して先端が幼弱な仮骨を形成し、肥厚性偽関節を形成していた。DFAT群で は、薄い皮質骨の新生とともに骨癒合が認められる傾向にあった。PTH群では、

明らかな皮質骨新生がおこり、高頻度に骨癒合をきたす傾向にあった。PTH群、

PTH+DFAT群において骨折部は癒合し、ピン挿入部周囲には新生皮質骨形成 (new cortical shell formation)を認めた。骨折治癒評価 (Radiographic score)で は、Control群とPTH群、Control群とDFAT+PTH群との間に有意差を認めた(p

< 0.05)。また新生骨面積比(% bone area) では、Control群とDFAT+PTH群間 に有意差を認めた(p < 0.05)。骨密度(Bone mass/Total volume: BM/TV)では各 群間に有意差を認めなかった。

組織学的所見でcontrol群では骨折部はHE染色で赤く染まった結合組織で骨 折部が満たされ、骨折端でToluidine blue染色にて青く染まった仮骨を認めた。

DFAT群はvon Kossa染色で石灰化していない支持組織が赤色に染まった部分と 石灰化した骨成分の黒色に染まった部分とが混在し、Toluidine blue染色では石 灰化していない部分は青色に染まっていた。PTH群ではvon Kossa染色で骨折部 は骨成分でほぼ黒く染まり、針周囲にも一様に新生骨を認めた。DFAT+PTH群 で はPTH群 と 同 様 に骨 癒 合 を 認 め 、 針 周囲 に も 新 生 骨 を 認 めた 。GFP diamidino-2-phenylindole(DAPI)による免疫染色像では、骨折部のGFP-DFAT 移植部位にGFP陽性細胞が検出され、移植8週後の時点でも移植したDFATが広 く分布し生着していることが確認された。以上の結果より、DFAT移植とPTH 投与を併用することにより、偽関節治癒効果があることが明らかになった。

本研究では、ラット脛骨の骨欠損型偽関節モデルを作製し、このモデルに対 し骨欠損部にDFAT を播種したβ-TCP/Collagen複合体を移植したり、PTH間歇 投与を併用することにより、偽関節治癒効果があるか検討した。CTを用いた 骨構造解析や、組織学的検討の結果、DFAT移植、PTH間歇投与はいずれも骨癒 合や皮質骨の新生を促進する傾向があり、特にDFAT移植とPTH間歇投与を併用 した場合に、高い偽関節治療効果が認められた。少量の脂肪組織から均質なMSC 様細胞を大量に調製できるDFATと、骨形成促進効果を有するPTHを併用した治 療法は、難治性骨折に対する新たな治療戦略になりうる可能性がある。

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【緒言】

1. はじめに

整形外科領域の再生医療において、間葉系細胞(mesenchymal stem cell:

MSC) は早期臨床応用が可能な再生医療用細胞ソースとして注目され、偽関節

治療においても多くの臨床試験が進行中である。しかし、高齢者では骨髄採取 が困難であること、幹細胞が極端に少ないために必要量の細胞数が得られない といった問題がある。

Matsumoto らはこれらの問題を解決する新規再生医療用細胞ソースとして、

成熟脂肪細胞に注目し、ヒトを含む哺乳類の脂肪細胞から単離した成熟脂肪細 胞を天井培養という方法(図1)を用いて体外で脱分化培養すると線維芽細胞様 の形態をした細胞群が生じ、この細胞が高い増殖能と MSC と同等の多分化能 を持っていることを明らかにし、脱分化脂肪細胞(dedifferentiated fat cell:

DFAT)と命名した1 DFATは年齢に関係なく、安全かつ簡便に細胞が採取でき、

純度の高い細胞を大量に調製できる細胞源であり、偽関節治療の新たな細胞ソ ースとなりうる可能性がある。今回ラット脛骨の骨欠損型偽関節モデルを作成 し、β-tricalcium phosphate(β-TCP)/Collagen複合体を移植し、副甲状腺ホルモ ン(parathyroid hormone: PTH)を併用することによって、骨形成能が促進され るかについて検討した。

均質な MSC 様細胞を容易に調製できる DFAT と骨形成促進効果を有する PTH を併用した治療法の確立は、骨粗鬆症に伴う難治性骨折といった今まで MSC細胞治療の適応とならなかった疾患に対する新しい治療法につながる可能 性がある。

2. 難治性骨折の定義

運動器疾患を扱う整形外科において、筋骨格系の外傷は日常診療において最 も頻繁に遭遇する疾患である。日本においては、厚生労働省発表の「平成22 国民生活基礎調査の概況」の中で要介護者の介護が必要になった原因として、

骨折・転倒(10.2%)が、脳血管疾患(21.5%)、認知症(15.3%)、高齢による衰弱

(13.7%)、関節疾患(10.9%)に次ぐ第 5 位にあがっており、寝たきりの原因とし

ても骨折は大きなウェイトを占める。

骨は軟骨と異なり、自然修復能の優れた組織であり、内因性の骨再生能によ って、通常の骨折や小範囲の骨欠損は、特に投薬や手術などの外的な要因によ る治療を行わずに自分自身の力で治癒にいたることができる組織である。しか し、骨折の治癒に影響する因子によって骨の癒合過程が正常に進まずに骨折が 難治化することがある。その状態のことを遷延治癒 (delayed union)または偽関 節 (nonunion)、両者を合わせて難治性骨折と呼んでいる。

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4

遷延治癒は「骨の再生反応が量的に少なくかつ緩慢に進行しているのであっ て、組織の修復反応が全く消失していないので、修復機序を阻害させない適切 な治療法、たとえば強固な固定を施せば骨性癒合をなしうる性質をもつ」とさ れ、適切な治療を行わずに放置すると偽関節に移行する状態であり、偽関節は

「いつまでも骨性癒合は起こらず、骨折部の修復反応が鎮静化し、両骨片は厚 い結合組織で隔絶され、骨折端の骨髄腔は瘢痕組織または硬化した骨組織で閉 鎖され、あるいは両骨折端が全く離れて先端が委縮するもの」と定義されてい る。またMandtら2は偽関節を“a state in which there is the failure of a fracture to heal within the expected time and where the fracture will not heal without intervention”と定義し、何らかの介入なしには治癒しえない状態であるとして いる。

偽関節に関する診断時期についてはさまざまな報告があり、いまだにコンセ ンサスは得られていないが、1986年にFDAが定めた「受傷から最低9ヵ月が経 過し、3ヵ月にわたり治癒進行の可視的な徴候が認められない場合に確定する」

とする基準が用いられること多い。

3. 難治性骨折の原因

骨折の治癒に影響する因子として全身的因子、局所的因子がある。全身的要 因としては、①腎不全、②骨大理石病、③副甲状腺機能低下症、④長期のステ ロイド、非ステロイド性抗炎症薬投与、⑤放射線療法、⑥栄養失調、⑦糖尿病、

⑧敗血症、⑨梅毒のような骨代謝に影響を及ぼす疾患や病態があげられる。

一方で局所的要因は生物学的活性および骨折部の安定性という2つの因子で 規定される。生物学的活性は、骨折の部位、感染や神経・血管損傷による血行障 害の有無、骨欠損の有無など受傷時の状態によって決定され、また骨折部の安 定性は不適当な骨折の整復、固定性の良否など人為的な因子によって決まるこ とが多い。骨欠損長に関して中原らは3cm以下が骨癒合の条件であると述べてい 7)

4. 難治性骨折の疫学と診断

骨折治療の基本は整復と固定であり、手術方法や固定材料の開発など近年の 整形外科学および材料工学の進歩によって多くは満足のいく結果を得ることが 可能になった。しかしながらアメリカにおいては年間790万件の骨折のうち5%

が偽関節を、そしてさらに多くが遷延癒合をきたすとHeppenstall3は推定し ている。実際遷延癒合や偽関節が生じると患者にとって長期の苦痛や機能障害 を起こし、結果として医療費の増大につながるといわれているため4、偽関節に 対する治療法の確立は必要不可欠である。

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一般に骨癒合の診断にはエックス線撮影が用いられ、エックス線写真正面、

側面の2方向のうち3ヶ所の架橋仮骨を認めた時期と定義されており、ある程 度の時間が経ってもこの条件を満たさないものを偽関節と診断している。しか し生物学的に遷延治癒と偽関節に前述のような違いがあっても、臨床の場にお いて両者を区別することは容易ではない。加えて、単純X線写真による骨癒合 の評価は観察者間での相違が大きいことが欠点といわれており注意を要する。

一方、magnetic resonance imaging (MRI)や骨シンチグラフィーは骨折端の 生物学的活性状態や血行状態、骨癒合能を知る上で有用で、computed

tomography (CT)は骨折線の方向や仮骨の連続性など骨折部の状態を知る上で 有用な検査である。

5. 偽関節の分類と治療方針の決定

偽関節は大きくは非感染性偽関節と感染性偽関節に分けられるがここでは前 者について述べる。

非感染性偽関節は以下の3つに分類される。

肥厚性偽関節(hypertrophic nonunion)…骨折端の血行が豊富で仮骨(修 復された新しい骨)は形成されているが骨癒合が得られていないもの

骨萎縮型偽関節(atrophic nonunion)…骨折端の血行に乏しく線維組織が あり仮骨はほとんど認められないもの

骨欠損型偽関節(defect nonunion)…一部の骨片が摘出され,骨折部に隙 が存在するもの

この分類は治療方針の決定に重要で、肥厚性偽関節は生物学的活性のある偽 関節(reactive nonunion)であり整復位不良、固定性不良などの力学的因子が原 因となっていることが多く、内固定不良の場合は金属類を除去し強固な固定を することで骨癒合が得られることが多い。また骨萎縮性型偽関節や骨欠損型偽 関節は、生物学的活性のない偽関節(non-reactive nonunion)であり強固な固定 にするだけではなく、骨癒合能を活性化する目的で骨移植を併用した外科的治 療法が併用される。治療法として自家骨移植術、血管柄付き骨移植(vascularized bone graft)、骨延長・骨移動術(bone lengthening and transport)、同種骨移植 (bone allograft)などが挙げられる。

6. 難治性骨折の治療

(1)低出力超音波(low intensity pulsed ultrasound: LIPUS)

「骨の成長・修復は骨に伝わる機械的刺激に応答する」という「Wolff(ウォ ルフ)の法則」に基づき、1983Duarte5によって臨床応用された方法で、骨 折治癒促進に有効性が示されている。作用機序として細胞膜上にある接着分子

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であるインテグリンの関与が指摘されている。機械的刺激受容体であるインテ グリンの集積により種々の細胞内蛋白がリン酸化し、活性化した転写因子が格 内に移行して特定の遺伝子のメッセンジャーRNAが発現し、その結果アルカリ ホスファターゼ (ALP)、Runt-related transcription factor 2 (RUNX2) Osterix(Osx)、osteopontin (OPN)などの骨形成マーカー、コラーゲン、フィ ブロネクチン、プロテオグリカンなどの細胞外器質、プロスタグランジン E2 (PGE2)、matrix metalloproteinase-9 (MMP-9), matrix metalloproteinase-2 (MMP-2)などの酵素、vascular endothelial growth factor (VEGF)などの成長因 子の産生を促進するといわれている。日本においても1998年より難治性骨折を 対象として医療保険が使用可能となっている。長管骨の偽関節72例に対して使

用し75%で骨癒合が得られたという報告があり6、偽関節治療に対して低出力超

音波の有効性が示されている。

(2)電気・電磁場刺激療法

静電結合により骨癒合を促す方法であり微小電流による仮骨形成の研究およ びその骨折治療への応用は保田が1955年に直接電気刺激によって陰極の周りに 仮骨ができることを発見したことに始まり、Brightonら7の研究によって国際的 に評価されるようになった。

現在では偽関節部を直接刺激する方法より、骨折部周辺に変動磁場を発生さ せるパルス電磁場刺激法が開発され臨床応用されている。

(3)手術療法

自家骨移植は広く行われている方法で、アメリカにおいては年間450000件以 上行われており、偽関節手術においても標準的治療となっている。特に腸骨か らの自家海綿骨移植が優れ、移植骨に含まれる骨形成タンパク(bone

morphogenetic protein: BMP)などの成長因子の骨誘導によって偽関節部の癒 合が起こる。偽関節部のデブリードマンと骨移植を併用した外科的処置は、諸 家の報告によると8, 9成功率(骨癒合率)は70-90%と比較的高い。患者自身の腸骨 や腓骨より採取するため骨の再生が最も期待でき感染症や拒絶反応がないとい う利点があるが、健常部を侵襲しなければならず、供給者部位の神経・血管損傷 や感染といった合併症が8-10%に生じ採取量にも限りがあるという問題点があ る。

他家骨移植は貯蔵した骨を用いるため、患者自身に侵襲なく大量に使用でき る利点があるが、骨バンクの維持にコストがかかることや移植免疫反応の可能 性、生着率が低いといった問題点がある。

人工骨は安定した供給があり、生体適合性が高く、患者への負担や感染が少 ないといったメリットがあり組織工学の発展とともに近年盛んに行われるよう になった方法である。加齢変化により膝がO脚に変形する変形性膝関節症に対

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して施行される高位脛骨骨切り術や骨粗鬆症に随伴する難治性骨折、腰椎圧迫 骨折に対して広く利用されている。また疾患部の形状に合わせてオーダーメイ ドで作製することができるため有用である。材料はハイドロキシアパタイトや β-TCPなど多岐にわたっている。幹細胞を移植する際に足場(scaffold)は重要で、

人工骨が用いられることがある。人工骨は細胞の足場になり、細胞が接着し、

骨再生のための場所を提供するといわれ、MSC細胞源とした移植術おいては、

Kawate10はステロイド性骨粗鬆症患者の大腿骨頭壊死に対して、MSCを播

種した人工骨を移植し有効性を報告している。

(4)細胞治療

近年の分子細胞生物学の発展に伴って、幹細胞を用いて失われた組織や臓器 を再生し治療しようとする再生医療の研究が進んでいる。整形外科領域におい ても、骨、軟骨、腱・靱帯、神経、脊髄など、運動器における広い分野で再生 医療に関する基礎研究が行われ、今後の進展が期待される医学分野となってい る。骨組織は自己再生能力に優れた組織であるが、大きな骨欠損や生物学的活 性が乏しい偽関節や遷延癒合では自然に修復されない。従来の自家骨移植や同 種骨では対応しきれない場合などでは、再生医学を応用した骨再生が期待され ている。

骨髄細胞

偽関節治療においても多くの臨床報告がされている11, 12。患者の両腸骨から骨 髄を採取し、細胞分離器で前駆細胞(progenitor cells)を抽出した後、直接経皮的 に偽関節部に注射する方法がとられており13現在も多くの臨床試験が進行中で ある。MSC は組織から採取する際にドナーへの侵襲が高くなることや増殖能・

継代数が限られており、移植細胞としては十分な細胞数が得られないことがあ るという問題点がある。

自家末梢血CD34陽性細胞移植

顆粒球コロニー刺激因子 (granulocyte colony-stimulating factor: G-CSF)

5 日間皮下注した後に単核球をアフェレーシスで採取し、磁気細胞分離装 置を用いて選別したCD34陽性細胞を偽関節の手術時に注入するものである。

現在神戸大学整形外科にて臨床治験中であるが、1例の有効例が報告されてい 14

多血小板血漿療法 (platelet-rich plasma: PRP)

末梢血からplatelet-derived growth factor (PDGF)、transforming growth factor-beta (TGF-β)、insulin-like growth factor-I (IGF-I)、epidermal growth

factor: EGF等の成長因子を含む血小板を濃縮して、損傷した組織に直接注射を

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する方法で、主に創傷治癒の促進、止血効果、組織再生能、術後の疼痛軽減を 目的に各分野で施行されている。これにより組織修復がより迅速に展開すると いわれ、整形外科においても、偽関節の治療において報告されている15

④ PTH

PTHは、一般に血中Ca2+濃度の低下時に副甲状腺から放出され、破骨細胞を 介した骨吸収、腎臓での再吸収および1,25(OH)2 D産生亢進を介した腸管Ca2+

吸収の促進により血中 Ca2+濃度を調節するホルモンとして知られている。その ため PTH に持続的にさらされると高 Ca2+血症となり骨量が減少する異化作用 が出現するが、体外から間欠的に投与すると骨の同化作用が表れることが明ら

かになり 16, 17、現在骨粗鬆症患者に対して唯一同化作用をもった骨形成促進剤

として広く臨床で使用されている薬剤である。遺伝子組み換えで合成されたヒ PTH のN端側の 1-34 ペプチド断片に相当するテリパラチド酢酸塩の効果は

PTH(1-84)と同等であると考えられて、米国では2002年にヒト組み換え型副甲

状腺ホルモン[rhPTH (1-34); 一般名: teriparatide, 商品名:Forteo:フォ ルテオ]が重症骨粗鬆患者への投与が承認され,日本においても2010年に承認 された。また合成ヒトPTH(1-34) (商品名: Teriboneテリボン)も2011年に使用 可能となった。

PTHは骨密度を上昇させるだけでなく、骨形成に強力な促進作用を有するこ とから骨折治癒促進効果があることも動物モデルを用いた報告18より明らかに されてきた。骨折中に皮下より間歇的に投与すると、最大荷重量や仮骨量を増 加させるというものである。この効果は、骨折治療を終了した後も持続するこ とが確認されている。そのため、現在高齢者における骨粗鬆症に伴う難治性骨 折治療には欠かせない薬剤となっている。また、最近になり、長管骨の偽関節 治療においてPTHが有効であったとの報告も散見されるようになった19, 20

成長因子

成長因子とは特定の細胞の増殖や分化を促進する内因性のタンパク質の総称 である。遺伝子工学の発達によって大量のタンパク精製が可能になると、BMP を中心に細胞成長因子を用いた骨折治癒促進の研究が盛んになった。骨基質に 存在するBMPは骨再生反応を誘発させる活性タンパク分子であり、現在BMPフ ァミリーの1部(BMP-2、BMP-7)が工業的に生産され欧米では臨床応用されてい る。その一方、日本においてはいまだ認可されていない。欧米においては腰椎 前方固定や新鮮開放骨折、脛骨骨折偽関節治療などに適応範囲があり、高い有 効性が検証されている21。しかし生産コストが高いことや薬物送達システム (drug delivery system: DDS)の問題点があり、普及していないのが現状である。

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BMPは生物種によって細胞成長因子に対する感受性が大きく異なり、特にヒト や霊長類のBMPに対する感受性は,げっ歯類に比べて極端に低いため,骨形成 誘発には高用量のペプチドが必要であり、コスト面から骨再生医療材料として の汎用性が妨げられている。

7.多能性幹細胞による骨再生について

再生医療での重要なfactorとして移植細胞が挙げられる。幹細胞は体性幹細胞 と胚性幹細胞(embryonic stem cell : ES cell)の二つに大きく分けられる。ES細 胞は、初期胚(胚盤胞)から取り出した細胞で無限に増殖できる自己複製能を もち、個体を構成するありとあらゆる種類の細胞に分化する能力(多能性)を有し ている。遺伝子にさまざまな操作を加え作成された遺伝子改変マウスのES細胞 からの骨芽細胞分化方法の検討は、骨生物学の発展に貢献した。しかし、ES細 胞を再生医療へ応用する際の最大の障壁は、初期胚を用いることによる生命倫 理的問題と、他家移植に伴う免疫拒絶である。

生命倫理と免疫拒絶の問題を解決するものとして注目されているのが、人工 多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell : iPS cell)である。iPS細胞は2006 年 Takahashi と Yamanaka22がマウスの線維芽細胞から作り出したES細胞 に類似した多分化能を有する細胞である。その後、マウスiPS細胞の樹立に用い た4遺伝子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc)のヒト相同遺伝子をヒト由来線維芽細 胞に導入し、ヒトiPS細胞の樹立にも成功した。これによりES細胞のもつ生命 倫理的問題を回避することができ、免疫拒絶の無い再生医療の実現に向けて大 きな一歩になった。発癌関連遺伝子であるc-Myc癌遺伝子を導入することやレト ロウイルスを使用による癌化や安全性、誘導効率の低さなどの問題もあったが、

c-Mycやレトロウイルスを用いないiPS細胞の樹立も報告され、iPS細胞から組織

への分化誘導法も開発され23、徐々に臨床への応用が期待されている。

多能性や全能性をもたない細胞が、多能性や全能性を獲得することをリプロ グラムと呼び、iPS細胞の作製に必要な遺伝子や因子はリプログラミングファク ターと呼ばれ、現在まで複数のファクターが報告されている。iPS細胞から組織 への分化誘導法も開発され、徐々に臨床への応用が期待されている。

MSC は未熟な状態を保ちながら、自己と同じ細胞を複製し、さらに特定の細 胞に段階的に変化する「前駆細胞」を作る体性幹細胞で、骨、軟骨、脂肪、筋 肉などの間葉系組織の細胞に分化する能力をもつ細胞である。体性幹細胞はそ の増殖能・多分化能では ES 細胞やiPS細胞に劣るものの、自家移植(autograft) が可能であり、免疫拒絶がなく倫理面のハードルも ES 細胞より低い。

MSC は組織から採取する際にドナーへの侵襲が高くなることや試験管内で の継代によって、分化能が損なわれる懸念、移植細胞としては十分な細胞数が

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10 得られないことがあるという問題点がある。

Matsumoto 1らはこれらの問題を解決する新規再生医療用細胞ソースとして、

成熟脂肪細胞に注目した。一般的に成熟脂肪細胞のような終末分化した細胞は、

増殖能や分化能を示さないと考えられているが、成熟脂肪細胞を天井培養とい う方法を用いて体外で脱分化培養すると線維芽細胞様の形態をした細胞群が生 じ、この脱分化した脂肪細胞(DFAT)が高い増殖能と MSC と同等の多分化能を 持っていることを明らかにした。DFATMSCなどに比べて少量の皮下脂肪組 織から大量に純度の良い細胞精製が可能で、今まで細胞治療の対象となり得な かった高齢者や全身状態不良患者においても適応が広まる可能性がある。

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11 [目的]

骨折治療後の偽関節や遷延癒合に対して、患者自身の腸骨から移植骨を採取 し患部に移植するという自家骨移植術が広く施行されてきた。しかし自家骨移 植法には、採取できる骨量に限りがあり、採取には侵襲を伴い少なからず合併 症がみられる。骨髄 MSC は生体組織に微量に存在する幹細胞を付着培養後、

増殖させ得られる細胞群であり、高い骨分化能を示すため、上記のような難治 性骨折に対する再生医療への適応が期待される。一方、高齢者など採取が困難 な症例があること、雑多な細胞集団を付着培養するために他の細胞の混入が避 けられないことといった問題がある。これに対してDFATは成熟脂肪細胞から 高効率・高純度で産生されるため、ごく少量の組織量から必要細胞数を調製で きるメリットがあり、またMSCと同等の能力をもつことが明らかとなっている 細胞である1, 24。また、PTH は骨粗鬆症治療における骨同化作用のあるホルモ ンであるが、骨密度を増加させるだけでなく、近年骨形成に強力な促進作用を 有することも明らかとなってきたホルモンである。

均質な MSC 様細胞を容易に調製される DFAT は骨粗鬆症に伴う難治性骨折 といった今まで MSC 細胞治療の適応とならなかった疾患に対する新しい治療 法となる可能性がある。また骨形成促進効果を有するPTHを併用することによ り細胞移植による骨再生作用をさらに増強する可能性がある。これまでに難治 性骨折に対してDFAT移植や、PTH 併用投与による治療効果は検討されていな い。そこで今回ラット骨欠損型偽関節モデルを作成し、-TCP/collagen 複合体 に播種したDFATをラットの骨欠損部に移植し、さらにPTH全身投与を併用す ることにより、骨形成能が促進されるかについて検討する。

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【対象と方法】

1.動物および材料

動物実験は日本大学動物実験委員会の承認(承認番号:第AP12M024)を得 て行った。5週齢の雄性SDラットは日本クレア株式会社より購入して実験に使 用した。動物の飼育、実験は日本大学医学部動物実験指針にしたがって施行し た。多孔性-TCP/collagen複合体(collagen 5%, -TCP径100-300 m,-TCP/コ ラーゲン = 10/1(wt), 5×5×2mm)は、オリンパス・テルモ株式会社より供与 を受けた(図1)。PTH (合成ヒトPTH(1-34), teriparatide acetate)は、Asahi Kasei Pharmaceuticalsより提供を受け使用した。

2.GFPトランスジェニックラットDFAT の調整

GFPトランスジェニックラット由来のDFATは既報にて作製し25、保存した 細胞を解凍、培養して実験に用いた。5% ウシ胎児血清 (fatal bovine serum:

FBS, JRH bioscience, Lot 6G2149)含有Dulbecco’s modified Eagle’s medium

(DMEM)を用い 37℃、5%CO2の条件下で培養した。培養液の交換は 3 日ごと

に行った。DFAT調製法の概略図を図2に示す。

3.ラット脛骨偽関節モデルの作製

ラット脛骨偽関節モデルの作製法の概略を図3に示す。Chen26はラット長 管骨に対し4 mm の骨切り量において再現性よく偽関節が誘導できることを報 告しており今回この方法に従いラット脛骨偽関節モデルの作製を行った。ラッ ト用吸入麻酔器を用いてイソフルレン吸入麻酔(2.5%)で維持麻酔を行い、皮 膚切開部を剃毛後、イソジン消毒液にて皮膚消毒を行い、皮膚切開部に1%キシ ロカイン5 mlを局所注射した。麻酔後、左下腿前面の皮膚を切開し、前脛骨筋 をよけて脛骨を露出させた後、マイクロソーを用いて脛骨中央部に4 mm の骨 欠損を作成した。脛骨の遠位端より22G針(Terumo)を挿入し、脛骨近位関節面 より22G針を脱出させてentry部を決定した後、欠損部にβ-TCP/collagen複合 体を挿入した。そして前述のentry部より22G針を挿入し、脛骨中央に4 mm の間隙を保持しつつβ-TCP/collagen複合体を固定した。脛骨近位部の余った針 をペンチで切断し、周囲筋組織を修復後、皮膚を 4-0 ナイロンにて縫合し、ラ ットを麻酔より覚醒させ終了とした。術後 3 日間は抗生剤エンロフロキサシン

(バイエルメディカル株式会社)5 ㎎/㎏を胃ゾンデ or 飲水により経口投与し、

3日おきに2週までポピドンヨード溶液で創部を消毒した。

4. GFPトランスジェニックラットDFAT の in vitro 分化誘導

DFATから脂肪、骨、平滑筋の分化誘導実験は既報の方法を用いた1, 27, 28

(16)

13

脂肪分化誘導実験は 既報1に従い、35 mmディッシュ(BD Falcon)に DFAT

5 × 104 個播種し、コンフルエントになるまで 10%FBS含有DMEM で培養した

後、脂肪分化誘導培地(10% FBS、1 μM デキサメサゾン、0.5 mM

isobutylmethlxanthine(Sigma-Aldrich)、1 x インスリン-トランスフェリン- セレニウム-X(Sigma-Aldrich)含有DMEM)にて3週間培養した。培養液の交 換は3日毎に行った。細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定後、Oil red-O

(Sigma-Aldrich)を室温にて15分間作用させ、中性脂肪の細胞内蓄積を評価し た。

骨分化誘導実験は 既報1に従い、35 mmディッシュに DFAT をコンフルエン トになるまで 10%FBS含有DMEM で培養した後、骨分化誘導培地(10% FBS, 100 nMデキサメゾン(Sigma-Aldrich)、10 mM β-グリセロリン酸

(Sigma-Aldrich)、0.05 mM L-アスコルビン(Sigma-Aldrich)含有DMEM)

にて3週間培養した。培養液の交換は3日毎に行った。細胞をキットの固定液で 固定後、ALP染色液(武藤化学)を室温にて2時間作用させ顕微鏡(BX51, Olympus)で観察した。

平滑筋分化誘導は Sakuma 28の方法に従い、35 mmディッシュに DFAT を 5 × 104 個播種し、5% FBSおよび5 ng/ml TGF-β含有DMEMにて培養を行 った。1 週間後にα平滑筋アクチン(α-smooth muscle actin, ASMA)に対する 蛍光免疫染色を行い、平滑筋への分化度を検討した。蛍光免疫染色は、4%

paraformaldehydeを用いて室温で15分間固定した後、PBSにて一回洗浄し、細 胞への浸透性を高めるために0.1% Triton X-100含有PBSを室温で30分間作用さ せた。10%ヤギ血清、1%ウシ血清アルブミン (bovine serum albumin: BSA) 有PBSを一時間作用させブロッキング処理した後、マウスモノクローナル抗 ASMA 抗体 (1:500, DakoCytomation) を室温にて90分間作用させた。つづい て二次抗体としてAlexa-594標識ヤギ抗マウス IgG 抗体 (1:1000, Invitrogen) を室温下に1時間作用させた。PBSにて洗浄後、5 g/ml Hoechst33342を室温で 30 分間作用させ核染色を行った後、作成した標本を蛍光顕微鏡(ECLIPSE TE2000-U:Nikon)で観察した。

5.DFAT播種法の検討

DFATを効率的に骨折部に移植するためにβ-TCP/collagen複合体に均一に細 胞を播種する方法を検討した。

ピペッティング法

-TCP/collagen複合体を35mm dishに置き、5%FBS含有DMEMに1日浸し た後、DFAT (1×10個)を5%DMEM 200 lに懸濁し、マイクロピペットを用 いてβ-TCP/collagen複合体に圧をかけながら注入した。

(17)

14

Press (under low pressure)法

Press法はYoshiiら29の方法に準じて行った(図4)。まず、-TCP/collagen複合 体を5%FBS含有DMEMに1日浸した後、-TCP/collagen複合体を10 mlシリン ジ内にセットし、三方活栓を閉じた状態で10 mlまで内筒を引いて陰圧をかけた。

次に三法活栓を開けてあらかじめ反対側に取り付けた5%FBS含有DMEM 200

lに懸濁したDFAT (1×10個)を入れた1 mlツベルクリンシリンジから陰圧の かかったシリンジ内へDFATを播種した。最後に三方活栓を閉め、注意深くタッ ピングした後、内筒を元に戻し3時間室温で静置した。

③ Rotate

-TCP/collagen複合体を5%FBS含有DMEMに1日浸した後、DFAT(1×10 個)を5%FBS含有DMEM 200 lに懸濁し、マイクロチューブに注入した後、

-TCP/collagen複合体を入れ、3,000 rpm・2分間遠心分離した後、3時間室温で 静置した。

①~③をそれぞれ4%パラホルムアルデヒドにて固定後、パラフィン包埋し、

8 mスライスの切片標本を作成した。脱パラフィン処理後、電子レンジにて抗 原賦活化処理を行い、5 g/ml Hoechst33342を30分間作用させ核染色を行い、

Fluoromount-G (Southern Biotech)で封入後、標本を蛍光顕微鏡 (ECLIPSE TE2000-U:Nikon)で観察した。

6.DFAT移植実験

5週齢のオスSDラット(n=44)に上記の方法で脛骨に骨欠損を作製し、以下の 4群に分けた。①β-TCP/collagen複合体のみ移植する群(Control群, n=11)、② GFP-DFAT (1 x 106)を含有したβ-TCP/collagen複合体を移植する群(DFAT群, n=11)、③β-TCP/collagen複合体を移植後、PTH 30 g/kgを週3回、8週間皮 下 注 射 す る 群 (PTH 群 、n=11)、 ④ GFP-DFAT (1 x 106)を 含 有 し た β-TCP/collagen複合体を移植後、PTH 30 g/kgを週3回、8週間皮下注射する 群(DFAT+PTH群、n=11)である。PTHはモデル作製1週間後より投与を開 始した。β-TCP/collagen複合体へのDFATの播種は、上記Rotate法を用いた。

モデル作成8週間後、4%イソフルラン吸入麻酔下にペントバルビタール 100

mg/kg を腹腔内投与することにより安楽死させ、脛骨を摘出し、骨欠損部の性

状を X 線学的および組織学的に解析した。実験プロトコールの概略を図5に示 す。実験中、疼痛のため体重が1週間で20%以上減少の場合は人道的エンドポ イントのタイミングとし、上記と同様の方法で安楽死させた。

7.CT

骨欠損部のCTによる評価は、CT (R_mCT, Rigaku corporation)を用いて、骨

(18)

15

欠損部中心に4 mmの領域を撮影した26。撮影条件は、90 KV、100 mA、画素30

m、倍率6.7倍、撮影時間2分とした。欠損部のCTでの骨折治癒評価は臨床

的骨欠損のX線評価基準(Radiographic score) 30を用いて定量評価を行った(表

1) CTによる骨構造解析は骨欠損部中央横断面でのスライスを用いて、欠損

部新生骨面積比(% bone area)を欠損部脛骨面積に対する骨形成した面積を百分 率で計算した。また骨欠損部を中心に4 mm3の骨密度(bone mass/total volume:

BM/TV)を計測した。計測はImage J software (National Institution of Health) を用いて行った。

8.組織学的検討

検体をピン抜去後に10、20、30% sucrose水溶液に4℃で各2時間浸漬し、

4% carboxymethyl cellulose で包埋し、凍結ブロックを作成した。フィルム法 を用いて8 mに薄切後、hematoxylin-eosin (HE)染色、Toluidine blue染色、

von Kossa染色を施し、標本を顕微鏡(BX51, Olympus)下に観察した。

また免疫組織化学的検討としてGFPに対する免疫染色を施行した。まず非特 異的結合をブロックした後、切片をラット抗GFPポリクローナル抗体(1:500,

MBL)で4℃下一晩作用させた。次に二次抗体としてAlexa Fluor 555標識抗ウ

サギIgG抗体 (1:1000, Invitorgen)を室温下に60分作用させた。TBS 5

×3回作用させ、最後にDAPI5分間作用させ核染色を行った後、切片を水 洗いし封入した。作成した標本を蛍光顕微鏡(ECLIPSE TE2000-U, Nikon)で観 察した。

9.統計解析

定量結果は、mean ± SDで表した。4群間の比較は、One-way analysis of variance (ANOVA) およびTurkey-Kramer multiple comparison test により 有意差検定を行った。p < 0.05を有意水準とした。統計解析はGraphPad Prism ソフトウエア(Ver5.0a)を用いて行った。

(19)

16

【結果】

1. 脛骨偽関節モデルの検討

今回、ラット脛骨骨幹部に4 mm の骨切りによる骨欠損を作成後、欠損部に

-TCP/collagen複合体を移植し、22G針で内固定することにより、脛骨偽関節 モデルの作成を試みた。その結果、モデル作成後に施行した単純 X 線像では脛 骨骨欠損部に明瞭な間隙が認められた(図6A)。この所見は、モデル作成8週後 まで持続して認められた。モデル作成8週間後に脛骨を摘出し、CT 撮影を行 った結果、骨欠損部のCT axial像では、骨梁および皮質骨形成は認められず、

-TCP/collagen複合体が残存していた(図6B, Axial)。sagittal像では、両骨折 端が離れて間隙を形成し、欠損部が肥厚して先端が幼弱な線維性骨(woven bone)を形成する肥厚性偽関節の所見を呈していた(図 6B, Sagittal)。Coronal 像でも同様に、骨欠損部に連続性のない肥厚性偽関節像を呈していた(図 6B, Coronal)。計6頭のラットを用い、同じ方法でモデルを作成した結果、再現性 良く肥厚性偽関節の所見が誘導できた。以上の結果より、脛骨4 mm 骨切りと

-TCP/collagen 複合体移植の組み合わせにより、再現性の高いラット偽関節モ デルの作出できることが明らかになった。

2. GFPトランスジェニックラットDFAT の in vitro 分化誘導

GFPトランスジェニックラットDFATin vitroにおける特性解析を行った。

培養したDFATは、線維芽細胞様の形態を示し(図7A)、紫外線照射によりほぼ

100%の細胞が GFP の緑色蛍光を発していた(図 7B)。DFAT を脂肪分化誘導

培地、骨分化誘導培地、および平滑筋分化誘導培地で培養し、それぞれの細胞 系列への分化能を検討した。DFATを脂肪分化誘導培地で培養を行ったところ、

3 週間後にはオイルレッド O で染色される脂肪滴を有する脂肪細胞が誘導され た(図7C)。骨分化誘導培地を用いて培養を行った結果、3週間後にはALP 性の細胞が高頻度に認められた(図7 D)。さらに平滑筋分化誘導培地を用いて培 養を行った結果、3 週間後にはASMA陽性を示す平滑筋様細胞が高頻度に認め られた(図 7E)。以上の所見から、DFAT が中胚葉系列への多分化能を示すこ とが確認できた。

3. DFAT播種法の検討

-TCP/collagen複合体内にDFATが効率よく均一に生着する播種法について 3種類の異なった方法で検討を行った。ピペッティング法では、播種側の scaffold表面に細胞が集簇し、中心部や非播種側には細胞が到達していなかった (図8, Pipetting)。Press法では、播種側表面に多数の細胞が認められ、中心部に も細胞が到達していたが、非播種側には細胞が少なく不均一な分布を示した(図

(20)

17

8, Press)。Rotate法では、中心部に細胞が到達し、さらにscaffold全体に均一な 細胞の生着が認められた(図8, Rotate)。この結果より、本研究における移植実験 ではRotate法を採用することした。

4.CTによる骨構造解析

脛骨偽関節モデル作製後、4群(Control群、DFAT群、PTH群、DFAT+PTH 群)に分け、8週間後に脛骨骨折部CTを撮影した。各群の代表的なaxial像、

sagittal像、coronal像をそれぞれ図9、図10、図11に示す。

Axial像においてControl群では、骨欠損部に骨梁および皮質骨形成は認められ ず、-TCP/collagen複合体が残存していた。DFAT群では、薄い皮質骨の新生が 認められ、複合体中に海綿骨の形成も認められた。PTH群では、皮質骨および ピン挿入部周囲に明瞭な新生骨形成を認めた。DFAT+PTH群では、皮質骨およ びピン挿入部周囲により高度な新生骨形成を認め、さらに密度の高い海綿骨の 形成も認められた(図9)。

Coronal像においてControl群では、肥厚した骨欠損部の先端が骨間隙を形成 し、肥厚性偽関節の所見を呈していた。DFAT群では、薄い皮質骨の新生ととも に骨癒合が認められる傾向にあった。PTH群では、明らかな皮質骨新生がおこ り、高頻度に骨癒合をきたす傾向にあった。DFAT+PTH群では、より高度な皮 質骨形成を呈し、骨密度の増加も認められる傾向にあった(図10)。

Sagittal像 に お い てControl群 で は 、coronal像 と 同 様 に ほ と ん ど の 例 で

-TCP/collagen複合体が残存し、肥厚性偽関節の所見を呈していた。DFAT群で は、骨癒合を示すとともに海綿骨の新生所見が認められる傾向にあった。PTH 群では、皮質骨およびピン挿入部周囲の骨新生が著明であるが、海綿骨の新生 はDFAT群ほど明瞭でない傾向を示した。DFAT+PTH群では、より高度な皮質 と海綿骨の新生が認められる傾向にあった(図11)。

CT による骨構造解析の定量評価の結果を図12、図13 に示す。骨欠損部の 新生骨面積比(% bone area) は、個体差は認めるものの、その平均値はControl (40.2±13.2%) DFAT (53.1 ± 14.2%) PTH (56.2± 13.9%)

DFAT+PTH(59.9±14.8%)群の順に高い傾向にあった(図 12)。統計学的解析を

行った結果、骨欠損部の新生骨面積比は、Control群に比べDFAT+PTH群で有 意 に 高 値 を 示 し た (p<0.05) 。 骨 欠 損 部 の 骨 密 度(BM/TV)は 、Control (172±32.6 mg/cm3) DFAT群(208±29.5 mg/cm3)、PTH群(181±30.1 mg/cm3)、

DFAT+PTH群(215±44.8 mg/cm3)であった(図13)。各群間に統計学的有意差は 認められなかった。

CT所見に基づく難治性骨折治癒のX線学的スコア(Radiographic score)を図 14に示す。Control群(2.4±1.1)、DFAT群(4.3±2.0)、PTH群(5.1±2.1)、DFAT+PTH

(21)

18

群(5.7±2.0)の順に高い傾向にあった。統計学的解析を行った結果、Control群に 比べ、PTH群およびDFAT+PTH群では、Radiographic scoreが有意に高値を示 した (p<0.05)

5. 組織学的検討

各群での代表的な骨欠損部の組織像を図15に示す。Control群ではHE染色

von Kossa染色において皮質骨の連続性が絶たれている像が認められ、偽関

節部は結合組織で隔絶されていた。Toluidine blue染色では、骨折端において一 部紫色に異染性を示す軟性仮骨の所見を認めた。DFAT 群では HE 染色と von

Kossa 染色において欠損部における皮質骨の連続性が認められた。しかし形成

された皮質骨は比較的薄く、欠損内部は石灰化に至らない結合組織成分で占め られていた。PTH群ではDFAT群と同様に欠損部における皮質骨の連続性を認 め、新生した皮質骨はより厚い傾向にあった。また、欠損内部にも von Kossa 染色陽性の石灰化を認めた。DFAT+PTH群ではDFAT群、PTH群と同様に骨 癒合を示す皮質骨の連続性を認め、新生された皮質骨は高度に肥厚している傾 向が認められた。以上の結果より、組織学的にもDFAT移植やPTH投与により 偽関節治癒効果があることが明らかになった。

またモデル作成8週間後のサンプルを用いて、移植されたDFATの生着の有無 GFPに対する免疫組織染色を行い検討した。DFATを移植した群では、骨欠 損部において新生された皮質骨の内側にGFP陽性細胞が集簇している所見がし ばしば認められた(図16)。一方、Control 群および PTH 群ではGFP 陽性細胞 は検出されなかった。以上の結果より、-TCP/collagen複合体に播種したDFAT は移植後8週間にわたりその一部は移植部位に生着していることが明らかにな った。

図 4. ULP (Under Low Pressure)法  Yoshii et al. 29 引用  (A)  TCP/Collagen複合体を10 mlシリンジにセットする。  (B)  三方活栓を閉じた状態で10 mlまで内筒を引いて陰圧をかける。  (C)  用意しておいたツベルクリン針に入れたDFATを三方活栓を開けて、陰圧を かけたシリンジ内へ播種する。  (D)三方活栓を閉め、注意深くタッピングした後に内筒を元に戻す。
図 15.  各群の代表的な骨折部の組織像

参照

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