論文の内容の要旨
氏名:小 林 洋 輝
専攻分野の名称:博士(医学)
論文題名:原発性アルドステロン症における病変局在鑑別法の探索
原発性アルドステロン症(Primary aldosteronism: PA)は、高血圧患者の5-13%を占めるとも報告され現 在では二次性高血圧の代表的な原因疾患と考えられている。PAの病型は外科手術の適応となる片側性アル ドステロン産生腺腫と、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬による内服治療が第一選択となる特発性アル ドステロン症(両側性副腎皮質過形成)に大別され、片側性PAか両側性PAかを鑑別することが治療方針を 決定する上で極めて重要となる。PAにおける最も標準的なアルドステロン過剰分泌側の決定法は副腎静脈 サンプリング(Adrenal venous sampling: AVS)であるが、PAの有病率の高さやAVSの侵襲性、AVSを施 行可能な施設が限られる点、成功率が十分でない点からはより簡便で非観血的な病側の決定法が望まれる。
本研究では、片側性PA、両側性PAにおける臨床像や血漿アルドステロン濃度(Plasma aldosterone
concentration: PAC)の日内変動、各種検査所見の違いを明らかにし、外来で安全に施行することが可能な
両側性PAの診断法を確立することを目的とする。
PAの確定診断を受けて、当院でAVSを施行された82症例のうち片側性PAと診断された37症例、両 側性PAと診断された36症例について観察研究を行った。0時、6時、12時、18時の各時間におけるPAC、
24時間蓄尿アルドステロン排泄量を計測し、片側性PA、両側性PAにおけるそれぞれ違いと診断的意義に ついてROC解析を用いて比較検討した。又、単変量解析で病型診断に有用であった変数の中から外来で簡 便に得ることができる変数として、血清カリウム値、カプトプリル負荷試験後のPAC/PRA(Plasma renin activity)、CT (Computed tomography)検査における副腎結節の有無の3つを選択し、二項ロジスティック 回帰分析を行った上で、病型予測モデルを作成した。
片側性PA群と比較して、両側性PA群が0時、6時、12時、18時におけるPACで統計学的に有意に低 値であった(それぞれP < 0.0001、P < 0.0001、P < 0.0001、P < 0.0001)。又、6時のPACが最も診断能が 高く両側性PAの診断に対して341 pg/mLをカットオフとしたところ感度82.9%、特異度93.5% (area under the ROC curve 0.918; 95% CI.0.850–0.987)であった。予測モデルは血清カリウム値≧3.5mmol/L:
2点、カプトプリル負荷試験後のPAC/PRA<490:2点、CT検査で8mm以上の副腎結節像を認めない:
3点で計算され、ROC解析の結果、両側性PAの診断に対して7点満点で感度50%、特異度100%、5点 以上で感度67%、特異度94%、4点以上で感度81%、特異度85%(AUC: 0.922; 95% CI: 0.863–0.980)で あった。
本研究において示した新しい予測モデルは、外来で安全に高い特異性を持って両側性PAを診断するこ とが可能であり、効率的に両側性PAを除外し不必要なAVSの施行を減らすことが出来る。