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4)単 日本語母語話者の否定形の使用

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(1)

静 岡大学留学生セ ンター紀要 4号

日本語母語話者 の否定形の使用

 

 

 

 

旨】

製造業のライ ン作業現場 において使用 され る動詞 の否定形 「ない」または否定の形態素

NEG」

の使用 を明 らかにす ることを目的 として調査 を行 つた。実際の作業現場で作業指 導を行 つている

12人

のライン リーダーの発話 を分析 した結果、4点が明 らかになつた。

1)「

ない」または「

NEG」

は、主節、従属節 の述部で、特 に動詞の否定 として使用 され ることが多い。

2)否定の意味 を持つ場合 にはナイ形

(「

ない」または 「ない」の活用形がある

)、

持た ない場合 にはナイ異形

(「

ない」が撥音便化、母音連続 による音変化 を起 こしている

)

の使用 が多い。

3)形態素の面では、否定の意味 を持つ 「ない」または 「

NEG」

において、動詞 または 名詞 に否定の形態素 「

NEG」

を付加 しただけの形が最 も多 く用 い られた。

4)単

語では、「ある」の否定 「ない」が最 も多 く出現 した。

今回の発話資料では、正常、 または通常 とは異なる状態や事態 を表現す る時 に 「ない」

または 「

NEG」

が用い られた。つ ま り、否定は強調や卓立 を表 してお り、発話全体か ら見 ると使用 は少 ないが、重要な活用形である と言 える。

1日 は じめに

日本 国内で就労す る外 国人は年々増加 し労働力 として定着 しつつある。 これ ら外 国人労 働者 に対す る 日本語教育は、多様化す る 日本語教育の一つ として、今後ますます重要性 を 増す と考 えられ る。 しか し、従来の進学希望者対象の場合 とは異なる要素が多 く、また、

具体的 に どの技能・項 目を、 どの ぐらいの レベルまで学習す る必要があるのか とい う点が 明瞭でないため、学ぶ側 も教 える側 も試行錯誤 しつつ学習 を進めているのが現状ではない だろ うか。

この よ うな事柄 を明 らかにす るためには、外 国人労働者が 日常的 に接す る 日本語母語話 者の 日本語使用状況 を調査す る必要がある。限 られた分野、または空間 における、 日本語 母語話者の実際の 日本語使用状況調査 は、技術研修 (馬

(1998)な

)、

ビジネス (池

(1996)な

)、

大学での専門教育 (村岡・他

(1997)な

)などを目的 として行なわれて きてい る。その多 くは語彙調査で、抽 出 された語 をシラバスに組み込む ことによつて指導 効率 を上 げることが期待 されている。 しか し、語彙は多種多量であることか ら、応用性が 乏 しい恐れがある。

専門や使用環境が異なつて も、ある程度の応用が可能で学習者 に有益なのは、文型や活 用形、文章構造の使用実態ではないか と思われ る。 これまで に、大学 にお ける専門 日本語 教育の基礎的研究 として、学術論文で用い られ る文型や文体、文末表現の分析が行われて

(2)

きている (佐藤・他 (1997)、 杉 田 (1997)、 村岡 (2001)、 畝 田谷 (2003)、 村 田

(2003、

2004))。

しか しなが ら、録音資料 を用 いての発話分析 は少な く、また外国人労働者の周囲で使用 され る日本語 を対象 とした調査 はほ とん ど行われてない。そ こで、ケーススタデ ィとして、

外国人労働者の多い工場 (製造業)において、特 に日本語教育入門期か ら必ず導入 され る 否定形 を、実際 に日本語母語話者が どの よ うに使用 しているかを調査 した

(1)。

2.調査の概要

2.1.調

査方法

池 田

(1996)同

様、実際の会話 を録音 し文字化す ることによつて、製造業の現場 におけ る実際の 日本語使用状況 を調査す る。外 国人作業者のいる製造組立 ラインの 日本語母語話 者 ライ ン リーダー (以下 リーダー)12人に普段の就業状態のまま、携帯録音機 を持ち歩い て もら うことを依頼 し、各 リーダー

1時

間程度の作業 中の発話 を録音 した (60分 テープ使

)。

リーダーが作業者 に話 しかけるのは、作業指導、不良品発生時が多いため、機種変更 な どによって、作業指導が集 中す る月初めに録音 を依頼 した。

本調査 は、(1)録音資料 を

JCHAT形

(2)で文字化 し、「

WAKACH198‑分

かち書 き ガイ ドライ ン(大嶋・他(1998))」に従 つて語 に分割す る。(2)「

CHILDES MANUAL FOR JAPANESE(大

嶋・他 (1998))」 に従い、文字化資料 に品詞 と形態素のコー ドを付 ける。

(3)リ ー ダーが作業者 と話 している部分だけを抽出 し、 さらに雑談な ど業務 に直接関係 のない発話 を除 く。(4)言語分析 ソフ トCLAN(3)の

freq機

(4)で「ない」と形態素 コー ド「

NEG」

をキー ヮー ドに使用頻度 を算出す る。

(5)「

ない」と「

NEG」

を否定の意味 を 持つ、持たないに分 ける、の手順 で分析資料 を作成 した。

分析資料 には 「ない」または 「

NEG」

を合む語形がい くつかあるが、本調査では、以下 の よ うに分類することとする。

「ナイ形」グループ

=語

形に「ない」または「ない」の活用形があるもの。

例 :分 からない。 (「 分かる」の否定

(NEG)の

非過去 )

なかった時、〜。 (「 ある」の否定

(NEG)の

過去 )

「ナイ異形」グループ

=「

ない」が撥音便化、母音連続による音変化を起 こしてい るもの。

例 :ね えよ。 (「 ある」の否定

(NEG)の

異形の非過去 )

分からんかった ら、〜。 (「 分かる」の否定

(NEG)の

異形の仮定 )

「その他の形」グループ

=①

、②ではないが「ない」または「NEG」 を含んでいる もの。

例 :分 か りません。 (「 分かる」の丁寧の否定

(NEG)の

非過去 )

流すな。 (「 流す」の否定

(NEG)の

命令 )

(3)

静 岡大学留学生セ ンター紀要 4号

2.2.被

験者について

被験者は、静岡県内の輸送機器製造企業 に勤務す る リーダー

12人

である (表1〉。全員 男性で、勤務歴 は2年か ら

13年

である。英語、その他の外 国語の能力は極 めて低い。 リー ダーの業務 は、作業者へ の作業指導、作業補助 (準備 を合む

)、

安全確保、品質チ ェック、

不良品修正な ど多岐 に渡 る。 この工場 は流れ作業 による組み立てが 中心であ り、 日本人作 業者 に交 じつて外国人研修生や 日系ブラジル人・ペルー人が 日常的 に組み立て ラインで作 業 に従事 している。

1〉 被験者について

被験者 勤務年数 ライ ン

A エ ンジン組立

B 車体組 立

C 4 車体組 立

D エ ンジン組立

E エ ンジン組立

F 車体組 立

〈 表 3〉 は、リーダーの発話における である。語形としては①

(ナ

イ形

)と

被験者 勤務年数 ライ ン

G エ ンジン組 立

H 車体組 立

10 車体組立

K 8 車体組立

L 車体組 立

M 6 エ ンジン組立

3.結

3口

1.「

ない」または「

NEG」

の使用 と頻度

2)は、 リーダー

12人

の発話 において「ない」または「

NEG」

が出現 した箇所 とそ の使用頻度 を示 した ものである。「ない」または 「

NEG」

は、主節・従属節(5)内、名詞修 飾部内な どで述語 として使われている。主節での使用 の うち

29回

は疑問文での使用であつ た。「その他」は、引用 された句 内で と「〜 よ うに」の前での使用がそれぞれ4回、「〜で

(も )」

の前での使用が

2回

であつた。以上 よ り、「ない」または 「

NEG」

が出現 した箇所 はさまざまであるが、使用数か ら主 に主節・従属節 の述部で使用 されていることが分かる。

「ない」または 「

NEG」

の使用頻度 を示 した もの (ナイ異形)がほ とん どであつた。

2)「

ない」または「NEG」 が出現 した箇所 とその使用頻度

出現 した箇所   従 属 節 名 詞 句 そ の 他

否 定 の 意 味 を 持 つ 67 31 9 10 117

否定の意味を持たない 9 4 0 0 13

76 35 9 10 130

(表3)リー ダー の発話 にお ける使用頻度

(ナ

イ形 ) ②

(ナ

イ異形 ) ③ (そ の他の形 )

否 定 の 意 味 を 持 つ 33 117

否定の意味 を持たない 9 0

︿ 86 41 3 130

(4)

3口

2.否 定の意味を持つ『ない」または「NEG」

〈 表 4〉 は、否定の対象 となった品詞 とその出現頻度を示 したものである。 「ナイ形

(①

)」

「ナイ異形

(②

)」 「その他の形

(③

)」 に関係な く、動詞の否定が圧倒的に多いことが分か る。名詞には、形式名詞、指示詞を合む。今回の資料では、形容詞の否定は全 く観察 され なかった。

5〉

は、形態素

NEGに

組み合わ され る形態素 とその使用頻度である。動詞、または 名詞 に否定の形態素

NEGを

付加 しただけの形「ナイ(NEG+φ

)」

が最 も多 く使用 されて お り

98回

(84%)であった。次に多かったのは

NEGに

過去 を表す形態素 を付加 した「夕: ナカ ッタ

(NEG tt PAST)」

7回、「夕以外

(NEG+PAST以

)」

12回 (「

ナ ク」

6回、「ナカ ッタラ」 と「ナイデ」力`3回)であつた。

動詞の異な り語数は

42語

で、その中では、特 に「ある」の否定「ない」が頻用 された(31.3%)。

次 に使用が多いのは 「分かる (9.8%)」 「入 る (6.3%)」 だが、「ある」 との頻度差 は歴然 としている。

4)否定の対象 となつた品詞

76 33 3 112

0 0 5

0 0 0 0

︿ 81 33 3 117

5)形態素NEGと 組み合わ され る動詞・名詞 と形態素 総 数

(NEG+φナ イ

)

(NEG+PAST) (NEG+PAST以夕以外 )

98 7 12

総 数

70 25 3 2 0 6 6 0

35 31 2

      3 6

入 る

7 4

4

      4 2

4 2 2

2 2

気     す  

2

2

2

ぶ る

2

(5)

静岡大学留学生セ ンター紀要 4号

3日 3口 否定の意味 を持たない「ない」または「

NEG」

今回の資料では、「ない」の語形、または形態素「

NEG」

を含 んでいて も、否定の意味を 持たない ものも観察 された 〈

6〉

間 に 合

   

     

付 い て い る や つ て い る 取 つ て い る

 

 

 

締 め て い る

 

 

 

動 い て い る や つ て い く 数 え て あ る

対 処 し き れ る

(形式 名詞

)

6)否定 の意 味 を持 たない 「ない」 または 「NEG」 の種類 と頻度

推測 (かもしれない

)

4 0

反 疑 問 0 3

義務 (なければな らない、ない とい けない

)

0 0 3

形容詞 (いけない

)

0 0

提 案・ 申 し出 0 0

4 9 0 13

(6)

3.4.発

話全体における否定

全体 の使用語数 〈1)を見る と、 リーダーの発話全体 (延べ語数)において、名詞が 占める割合は指示詞 を合めて約5割、動詞は2割とかな り差がある。 しか し、 〈

4)〈

5)で示 した よ うに、名詞のほ とん どは否定の対象 となつていない。名詞が述部以外で も 使用 され ることを考慮 して も少ない と言わ ぎるを得ない。つ ま り、今回の調査環境では、

否定は動詞 に偏 つた現象だ と言 える。一方、動詞全体か らみ ると、否定 (NEG)は 11.5%

と出現が少な く(図 2〉、品詞 を特定 しな くて も、否定 (NEG)の使用 は少ない ことが分か る。

延 べ語数

異 な り語数

0%  10%  20%  30%  40%  50%  60%  70%  80%  90% 100%

□名 詞 □動 詞 □形容詞 に副 詞 ■数 字 囃指示詞 隕接続詞 日その他

(図 2)リー ダー の発話 (動

)に

お ける形態素 出現 回数

PRES

TE

lllIPAST

NEG

POL 圏 その他

4.考  

4.1.出

現 した 「ない」または「

NEG」

の頻度 と種類

出現だけを見る と、「ない」または「

NEG」

は、主節、従属節 の述部で、特 に動詞の否定 として使用 され ることが多い。村岡 (2001)、 畝 田谷

(2003)は

主節 を対象 として分析 し、

述部で動詞の使用が多い と報告 している。述部以外で も使用 され る名詞・形容詞 よ り、動詞 が否定の対象 となる割合が高いのは、動詞が述部で使用 され る割合が高いためだ と言 える。

(図 1)リ ー ダーの発話 にお ける自立語 の害1合

(7)

静 岡大学留学生セ ンター紀要 4号

否定の意味を持つ、持たないにかかわ らず、普段の就業状態での録音であるため、 国語 で よ く使用 され るナイ異形の使用 が多いだろ うと予想 されたが、今回の資料では、否定の 意味 を持つ場合 には特 に多 く出現 していなかつた。

これは、作業指導や不良 についての説明は重要であるため、全 くの国語 を使わないで改 まったニ ュアンスを出 しているのだ と考 え られ る。また、 この よ うな事柄 は相手が理解 し なければ意味をな さない。そのため、発話 に否定が使用 されていることを聞き手が十分 に 理解で きるよ う、丁寧 に話 してい るためだ とも考 えられ る。

一方で、否定の意味を持たない場合 にはナイ異形のほ うが多かったのは、いわゆる文型 となつて一つの意味を表 し、否定が意識 されないためだ と思われ る。 これ らの特徴 は、第 一 に、「ない」を伴わない形がない、あつて も意味が変わ つて しま うとい うことである。例 えば、 〈1)に対 して 「か もしれ る」 とい う表現はな く、 〈

2〉

に対 して 「電源、入れて し ま う

?」

では提案 とい う意味はな くなる。第二 に、「いかん (=だ)〈

3〉

」以外、常 にま とま り (文

)と

して用 い られてい る。例 えば、〈

4〉

の よ うに義務 の意味 を表現 しよ うと す るな らば、常 に 「〜なければな らない/ない といけない」で用い られ る。 この よ うなま とま りになつている項 目は、異形のほ うが使用 しやす く、音変化の度合い も大 きい よ うで ある。また、

5/13回

は疑問文形式での使用であつたが、その意味す る ところは疑間では ない ことが多かった (反疑問3回、提案

1回 )。

今回の発話資料では、否定の意味 を持たない 「ない」または 「

NEG」

は使用数 自体が少 な く、 この よ うな使用が工場での使用 にお ける特殊性 によるものかは判断 しがたい。 しか しなが ら、日本語学習者が「ない」「ませ ん」が否定 を表す とい う知識 を持つ場合、その語 形か ら混乱す る可能性がある と思われ、注意が必要であろ う。

(新機種 の説明)いい、○○君。一応、あの一、仕様 はない もんで、

あ、仕様 はあつたかな。サイ ドスタン ドが もしかす る と

650と 400で

違 うか もしんない けど。一応 これは同 じだか らね。

(ライン停止 中)一回、電源入れちゃわない

?

そ うだな。

これか。

これ を後 ろに、一番最後 に。

(修正 を頼 まれて)ごめん、いかん (=だ

)。

あ、これ。これ、一個 インパク ト向 こ うにず らして、それで、 うん、それ、 ここ。

(イ

ンパ ク トを移動 しよ うとして)あ、届かね え。

(作業の確認)そいで、 ク リップん下だ よね。

(以前 と)違

?

あ、違 う。 これ、 これ―、久々に流れ るヤ ツだ もんで さ、新機種、サ ブ組みや らにゃかん (=やらない といけない)もんで。いい

?

形態素の面では、否定の意味 を持つ 「ない」または「

NEG」

において、動詞または名詞 に否定の形態素「

NEG」

を付加 しただけの形が最 も多 く用い られた。単語では、「ある」の

1〉

2〉

3〉

4〉

(8)

否定 「ない」が最 も多 く出現 した。

工場内では、現状の説明・確認以外 に、今後の避 けるべ き事態 について も説 明 され る。

リーダーはそれ らを回避す るために、作業指導で、正常ではない状態や通常 とは異なる事 (以下、正/通常 とは異なる状/事

)と

その対処法 について説明す る。「ナイ

(NEG+

φ

)」

の使用が多かつたのは、今後の避 けるべ き事態 を想定 して、正常、または通常の状態 を否定 し、強調す るためだ と考 え られ る。工場では、業務上、それ らの事態の発生 を極力 抑 える努力をしているため、発生 した ことを意味す る「夕 (NEG+PAST)」 の使用 が少 な く、それ らの事態が発生 してか らの確認は現状確認 となる。よって、「夕(NEG+PAST)」

ではな く「ある」の否定、またはな されているはずの状態の否定 として、補助動詞 「テイ ル」 を否定す る形が観察 されたのだ と推測 され る。

また、組み立て ラインでの作業 は基本的 に部品の組み付 けである。作業が円滑 に行われ るために、 リーダーは各部品を準備す る。先 に、不良品を出 さない ことが業務 において重 要な課題である と述べたが、その基本は部品が組付 け られ るべ き位置 にあるかないか、そ の部品が必要な個数 あるかないか とい うことである。事柄 としては単純だが重要であるた め、「ある」の否定 「ない」が多用 されたのだ と推測 され る。

4口 2口 工場内の発話における「ない」または「

NEG」

発話全体か ら見 る と、「ない」または「

NEG」

は少ない。 この よ うな現象が生 じたのは、

否定が通常、または正常 とは異なる状態や事態 を表現す るために用い られ ることが多いた めではないだろ うか。今回の資料 を見る と、否定 (NEG)は、注意喚起 〈

5〉

、正/通常 と は異なる状/事態の確認 〈6)、 /通常 とは異なる状/事態の対応 (7〉、正/通常 とは 異なる状/事態の連絡 〈8)、 /通常 とは異なる状/事態発生 による強い禁止 〈

9〉

の意 味を持つ発話で使用 されている。特 に正/通常 とは異なる状/事態 と関係がない発話例 〈10〉

は少ない。(以下、使用例 において 「L」 は リーダー、「U」 は リーダー以外 の作業者、「○

○」「××」 は人名を示す。

)

〈 5〉 こつち側、今 さ、当たるつつ ぅの、昨 日出てたもんで。

(作

業を見せな が ら )

こうやつてやると。だもんで、こっちの隙間んないだよ、 こっちに比 べて。ここの隙間がないもんで、こうなつてるだよ。分かるら。だも んで、あそこんとこ、注意 して。

(不

良を見つけて

)ど

うしたの、 ここ

?ど

うした

?や

ってなかつた ? ち ょつと外れてたもんで。

時 FH5か か りそ う?

(作

業者の作業を見なが ら

)そ

うそ うそ うそ う、今、今の要領で。あ んま り入 らなかつたらさ、あの一、いっぺん締め付けてツメ合わせるっ て方法もあるけど。

は レヽ。

(放

)え

―、クリーナーのビニールの噛み込みが、え―、多発 して

〈 6) L

U L

〈 7〉  L

〈8) L

(9)

9〉  U

静 岡大学留学生セ ンター紀要 4号

います。こちらでは対処 しきれませんので、至急確認をお願いします。

こっち。○○のほ ういい

?(エ

ンジンの両側に付ける部品の確認

)あ

、 だめ。

流すな、馬鹿野郎。

(作

業者○○は

)段

取 りが分かんない。見 りゃあ分かると思 う。三 GD

は全然分かんないけど。

QLは

?

QLは

もう分かつてると思います。

これ (ク リップ )、 プシーン、 ピーン、飛ぶ。ね。

あ―。

だから、離 してやってね。

あれ、またピンダウェル見 といてや―、ピンダウェル。まとめて出て くるもんで。

あ―。

あの―、次の機種、あの一、クラッチが

3ACで 4FA使

いますんで、

また、そこらへん間違えんように。この置いてある順番で使えば、使つ て くれればいいもんで。

10〉

11〉

L L

U L

工場でのライン作業では、不良品を出さないこと、所定の時間を超えないこと、安全が 確保 されることが最重要課題である。否定

(NEG)を

合む発話に限らず、リーダーが作業 者に話 しかけるのは主に作業指導時で、指示・命令の発話が多 く観察 されている。指示・

命令の多 くは、〈

11)下

線部のように注意すべき状態や、〈

12〉

下線部のように通常 とは異 なる状態を示す ことによつて、作業 ミスや事故を回避する目的がある。リーダーの業務は、

不良品なし、時間内作業、安全確保 とい う課題が遂行できない事態を回避することだ と言つ てもよいだろ う。 リーダーは、 〈

11〉

12〉

のように、平叙文で正

/通

常 とは異なる状

/事

態を示す とい う方法だけでな く、

(5)〜

9〉 のように正

/通

常の状

/事

態を否定するこ とで、正

/通

常 とは異なる状

/事

態に注意を促 した り、その場合の対応を説明した りして いるのだと思われる。そして、いつたんそのような事態が発生 したら、その状態を正確に 把握 し、他の作業者へ知 らせなければならない。 これによつても注意を促す ことができ、

/通

常 とは異なる状

/事

態の回避につながるか らである。また、

(13〉

のように正

/通

常 とは異なる状

/事

態を否定することで正常な状態を暗示 し、結果 として注意喚起の機能 と なつている例もあつた。

12〉

13〉

農学系論文の主節においても、否定形が動詞述語類の活用形に占める割合は

8.8%に

過ぎ

(村

(2001))、

否定

(NEG)は

、使用する環境や 目的が異なつても使用頻度が低い可

能性がある。しかしながら、以上のように、否定

(NEG)は

強調や卓立を表 してお り、発

話全体か らみると使用 される頻度は低いが、重要な活用形であると言える。

(10)

5.日本語教育 との関わ りと今後の課題

今回の調査 は、非常 に限定 された環境 におけるケーススタデ ィであるため、一般化す る ことはできないが、実際 に工場で指導 をす る立場 にある日本語母語話者の使用 を観察でき た ことの意義 は大 きい と思われ る。 日本語教育の現場では、学習者が 日本語学習 について どの よ うに考 えてい るのか、 どの よ うにな りたいのか とい う学習者側 の意識 に注意 を払 う 必要がある。また、習得 の難易 も重要であるが、同時 に学習者 を取 り巻 く日本語使用状況 にも注 目しなければな らないのではないだろ うか。外国人労働者が 日本語学校へ通 うこと は少な く、彼 らにとつて 日本語学習は

instrumental motivationに

よる場合がほ とん どで あろ う。 この よ うな学習者 には、 シラバス作成 にあた り、実際 に使われているとい う観点 か らの検討 を欠いてはな らない と思われ る。

竹内

(2001)は

、公民館 における 日本語講座 の問題点 として、学習が長続 きしない とい う点 を挙 げている。浜松市

(1999)も

同様 の問題 を抱 えている。 この よ うな問題 に対す る 即効薬があるわ けではないが、学習者が置かれている 日本語使用状況 を考慮 に入れた学習 の機会 を提供す ることによつて、ある程度改善 され る と思われ る。

今回は、話者である リーダーの発話 のみ に注 目したが、発話の相手である作業者の発話 にも注 目して、異同を調査 したい。また、工場以外 の環境 において も資料 を収集 し、環境 や話者 による違いを明 らかにしていきたい。

注】

(J テイル については袴 田

(2002)を

、テ形 については袴 田

(2004)を

参照 されたい。

12)会話相互作用 の トランスク リプ トをコンピューター・ ファイル として作成す るフォー マ ッ トシステム。

8)Leonid Spector(Camegie Mellon University)に

よつて作成 された言語分析 プ ログ ラム。頻度計算、文字列検索、共起分析、

MLU計

算な どが 自動分析できる。

14)出現頻度計算 を行 うプログラム。

151 本稿では、接続助詞のあるものだけを従属節 とす る。

【 参考文献】

池田伸子

(1996)「

日本人 ビジネスマンの話 し言葉における語彙調査一ビジネスマン用 日本 語教育システム開発の基礎 として一」 『 日本語教育』88号 、日本語教育学会、

pp.117‑

127

畝 田谷桂子 (2003)「日・英応用磁気学実験系論文 にみる能動文 と直接受動文の使用比較 ―

「実験方法」セクシ ョンを中心に一」『 日本語教育』

118号

、日本語教育学会、pp.77‑85

大嶋百合子・Bo MacWhinney(1998)『

CHILDES Manualfor Japanese』

改訂版、自井

英俊・宮田 Susanne・ 中則夫編集、

TheJCHAT PЮject

佐藤勢紀子・仁科浩美

(1997)「

工学系学術論文にみる「と考えられる」の機能」 『 日本語 教育』93号 、 日本語教育学会、

pp.61‑72

杉田くに子

(1997)「

上級 日本語教育のための文章構造の分析―社会人文学系研究論文の序

論―」 『 日本語教育』95号 、 日本語教育学会、

pp.49‑60

(11)

静岡大学留学生セ ンター紀要 4号

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pp.210¨‑227

袴 田麻里 (2002)「職場で使われ る 日本語 一テ形、特 に「〜てい る」 に注 目して一」『静 岡 大学留学生セ ンター紀要』第2号、静 岡大学留学生セ ンター、pp.45‑56

(2004)「工場内における 日本語使用状況調査 ―「〜て」の使用状況 ―」

2004年

本語教育国際研究大会予稿集発表2』 日本語教育学会・他、pp.273‑278

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Japanese in the Workplace一  Focusing on Negation 

HAKAMATA,Ma五

This paper airrls to clarify the usage of‐ παグ

and negative FnOrphemes A濯

]Gin a

workplace,manufaCtu五

ng section。 12 Japanese Line‐Leader lJLL)s'speeches in the asserrlbly plants were recorded and analyzed.lttany forelgn workers are in the plants.

The results are summarized as fonows:

(1) JLLs use‐ παグor XEG are rnost frequently used as negation in the predicate of the rnain clause or sub clause.

(2) 

Fhe nomal‐

παグare used as negation mostly,and the different pattems of‐ πα

J

are used as a part of the expression.

(3) Most Of NEC)are attached verbs or noun without other rnorphemes.

(4) JLLs frequently used

NAI"that is the negation of

ARU''.

In this data,JLLs used‐

παグorノVEG when they explain the different situation or condition frolrl norrnal.The usage of‐ παグor」 EG are important,because these rneans emphasis or pronlinence in the speech, although the use of frequency is low,

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