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PROG テストを利用した学生の能力伸長分析について
笹 川 篤 史
Abstract
Since fiscal year 2012,Nagasaki University requires all first graders to take the PROG (Progress Report On Generic Skills) test. To analyze the development of students' abilities and educational effect, the performances of third and first graders were compared.
Keywords: PROG, educational effect, development of abilities
1.はじめに
ジェネリックスキル育成に関して,2012年 度から2014年度において,10万人を超える学 生が学校法人河合塾と株式会社リアセックが 開発した PROG ( Progress Report On Gener- ic Skills ) テスト(以下, 「 PROG テスト」と いう。)を受験している。 PROG テストは 2012年度から本格提供されているが,2012年 度における利用が限られていたこともあり,
1年次と3年次の比較分析した報告
1は限ら れており,特に1年次のリテラシースコアの 平均値が比較的高い場合についての報告は見 当たらない。長崎大学(以下,「本学」とい う。)では2012年度から全学部を対象として PROG テストが実施されており,本稿では,
その中で受験者数が最も多い経済学部 (以下,
「本学部」という。 )を対象として,(1)1年
1 宮内・杉田(2014)及び山本(2014 b )参照。
次と3年次の学生の比較,(2)修得単位の不 足により指導対象となった学生(以下,「指 導対象者」という。)と一般学生との比較,
(3)特定のゼミ所属学生と他の学生との比較 を行い,これらに関する検討を加えることと したい
2。なお,本稿では,(1)大学教育にお いてジェネリックスキルの伸長が図られるこ とが望ましい
3,(2) PROG テストがジェネリ ックスキルを測定する上で概ね妥当であると いう前提で検討を進める。
2 なお,本稿の見解や意見は,筆者個人の見解を示 すものであり,学部や筆者の属した委員会等の意見 を代表するものでもなければ,今後の方針を確定す るものでもない。
3 ジェネリックスキル伸長の必要性については,山
地(2013)参照。また,2年次までにジェネリックス
キルが伸長していれば,3年次のゼミ活動の一層の
活発化が期待できると思われる。なお, PROG と
内定取得に関する分析については,酒井(2014),西
村(2014)及び PROG 白書プロジェクト(2015)参照。
2
2.1年次の結果の推移
(1) 分析対象の概要
本学部の1年生の2012年度から2014年度の PROG テスト結果は表1のとおりである。
リテラシー総合を見ると,年々低下傾向に ある
4。2014年度から受験時期が4月となっ たため,1年次前期の教養ゼミナール等の効 果も考えられるが,2013年度は9月受験のた
め,1年次前期の学習効果では,2012年度と 2013年度の差を説明することができない。リ テラシーの内訳を見ると,情報収集力及び情 報分析力は一貫して低下傾向にあるが,構想 力は上昇傾向
5にある。
一方,コンピテンシー総合は,比較的安定 傾向にある。リテラシー総合の低下傾向が一 過性のものであるかについては,引き続き推 移を見る必要があると思わる。
表1 1年次受験結果の推移
2014年度 2013年度 2012年度
受験者数 272 345 360
受験日 2014年4月4日 2013年9月27日 2012年10月23日
2012年11月15日
リテラシー総合 4.29 4.49 4.94
情報収集力 3.06 3.32 3.86
情報分析力 2.89 3.52 3.55
課題発見力 3.42 4.15 3.76
構想力 3.35 3.28 2.96
言語処理能力 2.99 3.53 3.34
非言語処理能力 2.79 2.95 2.95
コンピテンシー総合 3.28 3.18 3.22
対人基礎力 3.41 3.42 3.46
対自己基礎力 3.40 3.35 3.42
対課題基礎力 3.91 3.77 3.73
親和力 3.60 3.55 3.71
協働力 3.68 3.71 3.73
統率力 3.14 3.08 2.98
感情制御力 3.53 3.35 3.40
自信創出力 3.24 3.43 3.41
行動持続力 3.27 3.30 3.27
課題発見力 3.75 3.69 3.69
計画立案力 3.78 3.54 3.61
実践力 3.95 3.96 3.81
4 片峰・川越(2014)によれば,リテラシーの低下傾 向は本学部に限らず,全学的な傾向となっている。
5 構想力の上昇については片峰・川越(2014)が指摘
しているように高校におけるアクティブラーニング
の導入の効果が考えられる。
3
表2は,リテラシー総合の平均レベルの低 下がどのような形で起こっているかについて
見るために,各レベルの構成割合を示したも のである。
表2 各リテラシーレベルの構成割合の推移
2014年度 2013年度 2012年度
レベル 人 数 構成割合 人 数 構成割合 人 数 構成割合
7 31 11.4% 23 6.7% 76 21.1%
6 34 12.5% 48 13.9% 64 17.8%
5 47 17.3% 92 26.7% 85 23.6%
4 72 26.5% 111 32.2% 62 17.2%
3 53 19.5% 57 16.5% 46 12.8%
2 30 11.0% 10 2.9% 23 6.4%
1 5 1.8% 4 1.2% 4 1.1%
272 100.0% 345 100.0% 360 100.0%
3年間の推移の傾向
6としては,以下の特 徴がみられる。
① 構成割合の最も高いボリュームゾーンが レベル5からレベル4へ低下。
② レベル3の割合が年々増加。
③ 2013年度から2014年度の変化を見ると,
レベル6以上の割合が増加したが,レベ ル3以下の割合も増加したため,引き下 げられている。その中でも,特にレベル 2の割合が上昇している。
また,3年間を比較すると,2012年のレベ ル7の割合が突出して高いように見受けられ る。
3.1年次と3年次の比較分析
(1) 全体概要
72014年に3年生として受験した学生は247
6 低下傾向の分析については,センター試験との相 関等の分析が考えられる。
7 全体概要については,2015年2月16日にリアセッ クが長崎大学に対して行った「 PROG 全体傾向報 告書(2014)」を参考とした。
名であるが,編入学生及び1年次に受験して いなかった学生が含まれるため,1年次と3 年次の比較が可能な学生は240名となる。同 じ1年次の平均値について,360名の平均値 と3年次との比較可能な240名の平均値を比 較すると,リテラシーについては,240名の 方の平均値が高くなっている。これは,後述 するように1年次におけるリテラシーレベル が2以下の学生の3年次における受験率が低 いことに起因している。
本稿において,比較の対象となる2012年度 入学生のうち1年次と3年次の両方において PROG テストを受験した240名の1年次のレ ベル(以下, 「1年次レベル」という。 )は,
以下の特徴があり,今後2013年度以降入学者 の3年次と1年次の比較によっては,異なる 結果又は結論が導き出されることに留意が必 要である。
① リテラシーの1年次レベルの平均値が1 年次に受験した全体に比べ高く,比較的1 年次のリテラシーレベルの高い学生を基準 としている。
② 比較の基準となるリテラシーの1年次レ
4
表3 1年次と3年次の平均レベルの比較
3年次 1年次 変化幅
集計数 240 240 −
リテラシー総合 5.09 5.15 ‑0.06
情報収集力 4.00 3.96 0.03
情報分析力 3.48 3.58 ‑0.10
課題発見力 4.12 3.93 0.19
構想力 3.57 3.10 0.47
言語処理能力 3.68 3.43 0.26
非言語処理能力 3.35 2.96 0.38
コンピテンシー総合 3.30 3.08 0.23
対人基礎力 3.51 3.33 0.18
対自己基礎力 3.48 3.30 0.18
対課題基礎力 3.74 3.69 0.05
親和力 3.72 3.63 0.08
協働力 3.78 3.61 0.17
統率力 3.08 2.82 0.27
感情制御力 3.48 3.32 0.16
自信創出力 3.50 3.30 0.19
行動持続力 3.32 3.17 0.15
課題発見力 3.82 3.60 0.22
計画立案力 3.54 3.55 ‑0.01
実践力 3.95 3.84 0.10
ベルの平均値5.15は,国立大学の平均値4.
67( n =12,867),入試偏差値別55以上の平 均値4.41( n =30,443)
8と比べて高いものと なっている。
③ 1年次の受験時期が10及び11月であり,
入学当初のものではない。
④ 2012年度から2014年度の入学者のリテラ シーを見ると,2012年度が最も高くなって いる。
リテラシー総合は,1年次の平均を僅かで あるが下回っている。なお,1年次のスコア が高い(レベル5以上)グループについては,
8 2014年4月までの平均値。 PROG 白書プロジェ クト(2015)付表参照。
年次によっては水準が低下する場合があると のデータ
9がある。
リテラシーの各項目について見ると,情報 分析力は低下しているものの,情報収集力,
課題発見力,構想力,言語処理能力及び非言 語処理能力
10は上昇している。情報分析力は PROG のリテラシーマップ
11によれば,デー タの読み取り,文献・資料の読み取り,批判
9 「 PROG 全体傾向報告書(2014)」より。
10 言語処理能力及び非言語処理能力が向上している にもかかわらず,リテラシー総合が低下している原 因分析については,リテラシー総合と処理能力のレ ベル判定過程の分析が必要であり,詳細データが必 要となる。
11 PROG 白書プロジェクト(2015)参照。
5
的分析から構成されるため,対応する問題の 正答率の変化により,具体的にどのような能 力が伸長していない(低下)しているかの分 析が考えられる。
リテラシー総合のレベル5は,「学士課程 到達レベル」の最初の段階に相当
12するため,
そこから授業によりレベルを上昇させるため には,相応の工夫が必要と思われる
13。
コンピテンシーについて見ると,要素によ り,平均レベルの伸長に差がみられる。1年 次の平均レベルの違いが影響している部分も あると思われるが,協働力は,1年次では親 和力より低かったが3年次には逆転してい る。また,課題発見力と計画立案力は1年次 では同程度であったが,課題発見力は伸長が みられるのに対し,計画立案力は伸長がみら れない。
こうしたことから平均的な大学生活におい て伸長しやすい要素とそうでない要素が存在 することが考えられ,各要素で伸長に差がみ
12 河合塾「リテラシーの育成レベル」
http :// www . kawai ‑ juku . ac . jp / prog / tst / con- tents.html
13 「教員が特に工夫をせずとも,学生が専門分野を 通してジェネリックスキルを身につけられるのは,
いわゆる上位大学のみ」(山本2014 b )との考え方も あるが,初年次のリテラシーレベルが高ければ,別 の工夫が必要と思われる。
られることが一般的な傾向であるのか,本学 部の特徴であるかについては,更なる分析が 必要と思われる。この点については,全国平 均との比較,学部間との比較,他大学の同じ 社会科学系(可能ならば経済学・経営学系)
の学部との比較により,カリキュラムが各要 素の伸長に影響しているかについての分析が 考えられる。
(2) 他大学との比較
1年次と3年次の項目別の比較分析とし て,宮内・杉田(2014)が産業能率大学におけ る結果について分析したものがある。1年次 のスコアが開示されていないため,厳密な比 較は難しいが,本稿の結果と比較することに より,以下の点が読み取れると思われる。
・3年次における受験者数の減少が共通して みられる。
・長崎大学の方が伸長している項目が多い
・コンピテンシーの特性を考えると,産業能 率大学の実践力の0.64の伸びというのは,
高い伸びの部類に入るのではないかと思わ れる。
(3) レベル分布の1年次と3年次との比較
各レベルの分布を見るために,リテラシー
とコンピテンシーの構成を見ると,以下のと
おりとなる。
6
表4 各レベルの構成人数
合 計 2 13 25 44 54 42 60 240
1 8 28 45 56 42 60 240
7 0 0 1 0 0 1 1 3
0 0 0 0 0 0 1 1
6 0 1 3 4 5 3 6 22
0 2 2 3 7 4 3 21
5 0 4 3 8 9 8 9 41
1 1 3 5 12 4 4 30
コ ン ピ テ ン シ ー
4 0 3 7 10 8 6 7 41
0 0 6 8 8 7 6 35
3 0 2 6 7 15 6 15 51
0 1 6 12 15 11 12 57
2 1 2 1 6 6 9 14 39
0 3 7 7 7 8 19 51
1 1 1 4 9 11 9 8 43
0 1 4 10 7 8 15 45
1 2 3 4 5 6 7 合計
リテラシー
表5 各レベルの構成割合
合 計 0.8% 5.4% 10.4% 18.3% 22.5% 17.5% 25.0% 100.0%
0.4% 3.3% 11.7% 18.8% 23.3% 17.5% 25.0% 100.0%
7 0.0% 0.0% 0.4% 0.0% 0.0% 0.4% 0.4% 1.3%
0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.4% 0.4%
6 0.0% 0.4% 1.3% 1.7% 2.1% 1.3% 2.5% 9.2%
0.0% 0.8% 0.8% 1.3% 2.9% 1.7% 1.3% 8.8%
5 0.0% 1.7% 1.3% 3.3% 3.8% 3.3% 3.8% 17.1%
0.4% 0.4% 1.3% 2.1% 5.0% 1.7% 1.7% 12.5%
コ ン ピ テ ン シ ー
4 0.0% 1.3% 2.9% 4.2% 3.3% 2.5% 2.9% 17.1%
0.0% 0.0% 2.5% 3.3% 3.3% 2.9% 2.5% 14.6%
3 0.0% 0.8% 2.5% 2.9% 6.3% 2.5% 6.3% 21.3%
0.0% 0.4% 2.5% 5.0% 6.3% 4.6% 5.0% 23.8%
2 0.4% 0.8% 0.4% 2.5% 2.5% 3.8% 5.8% 16.3%
0.0% 1.3% 2.9% 2.9% 2.9% 3.3% 7.9% 21.3%
1 0.4% 0.4% 1.7% 3.8% 4.6% 3.8% 3.3% 17.9%
0.0% 0.4% 1.7% 4.2% 2.9% 3.3% 6.3% 18.8%
1 2 3 4 5 6 7 合計
リテラシー
7
リテラシー総合が低いがコンピテンシー総 合が高いグループ(表の左上)が極僅かであ るのに対し,リテラシー総合が高いがコンピ テンシー総合が低いグループ
14(表の右下)
が一定割合存在することが確認できる。リテ ラシー総合が高いが総合もののコンピテン
シー総合が低いグループが,リテラシー総合 平均とコンピテンシー総合平均の差の原因と なっていると思われる。
割合は多くないものの,3年次においても リテラシーレベル3以下の学生が一定割合み られる
15。
表6 1年次から3年次への増減
合 計 1 5 ‑3 ‑1 ‑2 0 0 0
7 0 0 1 0 0 1 0 2
6 0 ‑1 1 1 ‑2 ‑1 3 1
5 ‑1 3 0 3 ‑3 4 5 11
コ ン ピ テ ン シ ー
4 0 3 1 2 0 ‑1 1 6
3 0 1 0 ‑5 0 ‑5 3 ‑6
2 1 ‑1 ‑6 ‑1 ‑1 1 ‑5 ‑12
1 1 0 0 ‑1 4 1 ‑7 ‑2
1 2 3 4 5 6 7 合計
リテラシー
1年次から3年次への変化を見ると,リテ ラシーレベル2が増加し,内訳としてはコン ピテンシーレベル4・5の層が増加してい る。
コンピテンシーレベル1〜3が減少してお り,概ね右下から上方に移動している傾向が
みられる。
(5) 1年次レベル別の3年次の状態
本節では,1年次のレベルにより3年次の レベルがどのように変化したかについて分析 する。
表7 1年次レベル別の3年次の状態(リテラシー総合)
1年次 レベル
1年次 受験者数
3年次
受験者数 受験率 3年次の 平均値
標準
偏差 最大値 最頻値 最小値 変化の 平均値
最 大 伸長幅 7 76 60 78.9% 6.12 0.88 7 7 5 ‑0.88 − 6 64 43 67.2% 5.49 1.26 7 7 4 ‑0.50 − 5 85 56 65.9% 4.71 1.44 7 3 3 ‑0.29 2
4 62 44 71.0% 4.70 1.58 7 4 2 0.70 3
3 46 28 60.9% 4.25 1.66 6 6 1 1.25 3
2 23 8 34.8% 3.00 1.41 5 2 1 1.00 3
1 4 1 25.0% 4.00 0.00 4 4 4 3.00 3
14 こうした学生が,成績に対して,就職活動において苦労する可能性が考えられる。
15 こうした学生の能力が卒業時までに向上していればよいが,能力が向上しないまま卒業しているとすれば,
卒業生の質保証の観点から検討の余地があるとも考えられる。
8
表8 1年次レベル別の3年次の状態(コンピテンシー総合)
1年次 レベル
1年次 受験者数
3年次
受験者数 受験率 3年次の 平均値
標準
偏差 最大値 最頻値 最小値 変化の 平均値
最 大 伸長幅
7 4 1 25.0% 4.00 0.00 4 4 4 ‑3.00 ‑
6 36 21 58.3% 5.24 0.97 7 6 3 ‑0.76 ‑
5 45 30 66.7% 4.70 1.37 7 6 1 ‑0.30 2
4 60 34 56.7% 4.18 0.95 6 5 2 0.18 2
3 86 57 66.3% 3.39 1.21 6 3 1 0.39 3
2 64 51 79.7% 2.29 1.27 7 1 1 0.29 5
1 65 46 70.8% 1.87 1.08 5 1 1 0.87 4
リテラシー総合については,1年次のレベ ルの低いグループについては,3年次受験率 が低い傾向がみられる。
一方,コンピテンシーについては,リテラ シーのように1年次のレベルの低いグループ の3年次受験率が低い傾向がみられない。
リテラシー及びコンピテンシーとも3年次 の平均レベルを1年次のレベルと比較する と,レベル4以下までは上昇,レベル5以上 が低下しており,中央に向かっている傾向が みられる。
(6) 1年次と3年次とのテスト結果の相関
1年次と3年次の相関については,各項目 とも一定の関係
16が見られる(表9)が,コ ンピテンシー方がリテラシーに比べ高くなっ ている。コンピテンシー方が高校までに形成 される部分が大きい(大学生活で伸長しづら い
17)ことが考えられる。
なお,リテラシーの各項目の相関がリテラ シー総合に比べて高いのはこれらの項目が5
16 2時点間のテストの関係をみたものとして,山本 (2014 a )がある。
17 コンピテンシーについては,モデル社会人との差 がみられるため,入社後どのような段階を経て,コ ンピテンシーが上昇するかについての分析が必要と 思われる。
段階評価となっていることも影響していると 思われる。
課題発見力は,相関係数が比較的低く,平 均レベルが上昇(表3)していることからレ ベルの上昇した学生とそうでない学生がいる ものと思われる。
構想力は,相関係数が比較的高く,平均レ ベルが上昇(表3)していることから,全体 的にレベルが上昇しているものと思われる。
表9 1年次と3年次とのテスト結果の相関18
項 目 相関係数
リテラシー総合 0.47
情報収集力 0.69
情報分析力 0.68
課題発見力 0.54
構想力 0.71
言語処理能力 0.64
非言語処理能力 0.58
コンピテンシー総合 0.69
対人基礎力 0.66
対自己基礎力 0.67
対課題基礎力 0.67
親和力 0.65
18 丸山(2012)によれば,本学部の1年次の前後期の
G‑TELP(レベル3)の総点の相関は r=.67とな
っている。
9
協働力 0.61
統率力 0.64
感情制御力 0.54
自信創出力 0.61
行動持続力 0.52
課題発見力 0.61
計画立案力 0.61
実践力 0.52
(7) 小 括
リテラシーについてはレベル5以上のボリ ュームゾーン
19(1年次の約6割超)におい ては平均的なレベルの上昇が見られない(表 7)。大学生活において,特に意識しなくと も一定水準までの能力向上は図られるが,一 定水準以上から引き上げるためには工夫が必 要
20と思われる。この層
21に対して,リテラ シー向上の観点からは効果的な授業を提供で きていない可能性
22が考えられるが,レベル
19 多様化する学生の中において焦点を絞ることや,
平均値を高めるということを考慮する場合,ボリ ュームゾーンに焦点をあてることも考えられる。
20 比較的高いレベルからの更なる能力向上のために は, アクティブラーニングが効果的であると思われ,
教養教育においてアクティブラーニングを積極的に 取り入れる長崎大学の教養教育改革の方向性は正し いと思われる。今回の分析対象者は教養教育改革の 初年時であり,その効果を今回の分析において見い だすことはできなかったため,能力伸長についての 時系列分析により, 引き続き検討が必要と思われる。
21 別の見方として,レベル7であってもレベル6に 近いレベル7であった可能性や,1年次の段階でレ ベル6や7というのは一種のハズレ値とも考えられ る。1年次においてレベル7の学生については,ど のような高校生活を送ってきたかについての分析も 重要であると思われ,サンプル的に入試経路,入試 点数及び IR 調査についての分析を行うことが考え られる。
22 本学部の1年前後期の英語のテスト結果比較にお いても, 「得点上位者が得点を大きく落とし,伸び の効果をほぼ相殺」(丸山2012)といった傾向がみら れる。
5が「学士課程到達レベル」の段階であるこ とを考慮すると,リテラシーについては,平 均的な水準としては既に十分なので,全体と しての水準引き上げよりも,上位層の低下防 止と割合は少ないが下位層の引き上げに重点 を置くことも考えられる。
質保証の観点からレベル2以下の学生に対 する効果的なプログラム又はメンター制によ るフォローアップの利用が考えられる。
1年次のレベル1及び2の学生の3年次の 受験率が他のレベルに比べ低くなっており,
能力向上への意欲との関連が推察される。
リテラシーレベル7を獲得した学生につい ては,追加情報として,リテラシー問題につ いての正答率,スコアの表示が考えられる。
(点数に拘ることに意義はないと思われるが,
初回にレベル7であった学生のモチベーショ ンについての方策が必要と思われる)
4.指導対象者に関する分析
(1)
PROG
テスト結果と大学成績との関連に 関する先行研究等PROG テストの結果と大学成績及び入試 経路との関係に関する先行研究として,山 本・松本(2013)及び山本(2014 a ・2014 b )が ある。
山本(2014 a )では, 「学内で成績が良い学生 でもリテラシースコア低い学生がたくさんい る」理由として,「本学の成績が,学生のリ テラシーを反映したものになっていないこと が考えられます」 ,「 AO 入学者はリテラシー スコアの平均が2に満たないのですが,セン ター入学者は平均が3.6以上あります」とさ れており,大学授業の試験問題よりもセン ター試験の方が PROG との相関が高いとい うことを示していると思われる。
この原因としては,以下の2点が可能性と
10
して考えられる。
(1) センター試験の一部科目では図表が関連 した出題があるため,リテラシーレベルと 相関が生じる一方,大学の成績評価では図 表等のデータから情報を読み取る試験問題 が少ない。
(2)センター試験の方が大学授業の試験問題 と比べて出題範囲が広いため,ジェネリッ クスキルとの相関が生じやすい。(大学の 試験では範囲が限定されるため,リテラ シーレベルが低くても試験に特化した努力 により好成績を得ることが可能。) このように, PROG テスト結果と大学成 績との相関は全体としてみれば高くないが,
成績下位層について考えれば,リテラシーが 低ければ授業に付いてこられず,対課題基礎 力・対自己基礎力が低ければ試験準備がまま ならず,対人基礎力が低ければ学内の居場所 を確保できない,というように PROG の結 果と単位取得について一定の関係が考えられ る。
また,ハイリスク群学生を早期把握できれ ば,指導やリメディアル教育につなげていく ことが考えられる。このため,(1)指導対象 者の平均レベルと指導対象者を除いた平均レ ベルの差があるか,(2)平均レベルの違いが
みられる項目についてレベルにより指導対象 者が含まれる割合にどの程度の違いがあるか について,分析を行う。
(2) 分 析
修得単位不足者に対する指導は各学期にお いて行われているが,今回の分析では2014年 度前期までの単位取得が不足していた学生に ついて分析する。3年生については1年次
(2012年度)に受験した PROG テスト結果,
2年 生 は 1 年 次 ( 2 0 1 3 年 度 ) に 受 験 し た PROG テスト結果,1年生は2014年度に受 験した PROG テスト結果との対比を行なう。
表10 指導対象者数と
PROG
テスト受験者数指導対象者数
内 1年次PROG テスト受験者数
3年生 20 16
2年生 26 17
1年生 22 22
3年生については,指導対象者のうち4名 は編入学生のため1年次において PROG テ ストを受験していない。なお,2年生の指導 対象者のうち1年次の PROG テスト受験者 が少ない理由については,不明である。
表11 3年生の状況(2012年度テスト結果)
指導対象者 指導対象者以外 指導対象者−
指導対象者以外
リテラシー総合 5.38 4.92 0.46
情報収集力 3.69 3.86 ‑0.18
情報分析力 3.63 3.55 0.08
課題発見力 4.19 3.74 0.45
構想力 3.25 2.95 0.30
言語処理能力 3.56 3.33 0.23
非言語処理能力 3.19 2.94 0.25
コンピテンシー総合 3.88 3.19 0.68
11
対人基礎力 4.25 3.42 0.83
対自己基礎力 4.13 3.38 0.74
対課題基礎力 3.56 3.74 ‑0.18
親和力 3.88 3.70 0.17
協働力 4.63 3.69 0.94
統率力 3.81 2.94 0.88
感情制御力 4.13 3.37 0.76
自信創出力 4.19 3.38 0.81
行動持続力 3.31 3.27 0.05
課題発見力 4.13 3.67 0.45
計画立案力 3.56 3.62 ‑0.05
実践力 3.25 3.84 ‑0.59
表12 2年生の状況(2013年度テスト結果)
指導対象者 指導対象者以外 指導対象者−
指導対象者以外
リテラシー総合 4.53 4.48 0.04
情報収集力 3.71 3.30 0.41
情報分析力 3.53 3.52 0.01
課題発見力 4.12 4.16 ‑0.04
構想力 3.24 3.29 ‑0.05
言語処理能力 3.18 3.55 ‑0.37
非言語処理能力 2.59 2.97 ‑0.38
コンピテンシー総合 3.24 3.17 0.06
対人基礎力 3.24 3.43 ‑0.19
対自己基礎力 3.53 3.34 0.18
対課題基礎力 3.53 3.78 ‑0.25
親和力 3.29 3.57 ‑0.27
協働力 3.24 3.73 ‑0.50
統率力 3.59 3.06 0.53
感情制御力 3.35 3.35 0.00
自信創出力 3.59 3.43 0.16
行動持続力 3.24 3.30 ‑0.06
課題発見力 4.00 3.67 0.33
計画立案力 3.12 3.56 ‑0.44
実践力 3.82 3.97 ‑0.14
12
表13 1年生の状況(2014年度テスト結果)
指導対象者 指導対象者以外 指導対象者−
指導対象者以外
リテラシー総合 3.77 4.34 ‑0.57
情報収集力 2.68 3.10 ‑0.41
情報分析力 2.41 2.94 ‑0.53
課題発見力 3.91 3.37 0.54
構想力 3.09 3.37 ‑0.28
言語処理能力 2.32 3.05 ‑0.73
非言語処理能力 2.18 2.84 ‑0.66
コンピテンシー総合 3.09 3.30 ‑0.21
対人基礎力 3.09 3.44 ‑0.35
対自己基礎力 3.55 3.39 0.16
対課題基礎力 3.00 3.99 ‑0.99
親和力 3.32 3.62 ‑0.31
協働力 3.32 3.71 ‑0.39
統率力 3.23 3.13 0.10
感情制御力 3.68 3.52 0.17
自信創出力 3.00 3.26 ‑0.26
行動持続力 3.27 3.27 0.00
課題発見力 2.95 3.82 ‑0.87
計画立案力 2.95 3.85 ‑0.89
実践力 2.82 4.05 ‑1.23
リテラシー総合は,1年生については,指 導対象者の方が低いが,2年生及び3年生に ついては,概ね指導対象者の方が高くなって いる。学年が進むにつれて,1年次のリテラ シー能力との関係が薄れていっていることが 考えられる。言語処理能力及び非言語処理能 力についても同様の結果となっている。
コンピテンシーについては,3学年とも指 導対象者の方が対課題基礎力が低く,中でも 計画立案力及び実践力が低く,これらの能力 の低さが単位取得に影響を与えていると思わ
れる。
対課題基礎力等について,指導対象者と指 導対象者以外について,統計的に有意な差が 認められるか検定を行ったところ,1年生の 対課題基礎力( t =‑2.93, p <.05)及び実践力 ( t =‑4.69, p <.05)については,5%水準で 有意な差が認められた
23。
23 2年生及び3年生については分析可能な指導対象
者数が少なく,分散が大きかったことが有意な結果
を得られなかった原因と思われる。
13
表14 1年生の対課題基礎力のレベル別の対象者割合
対課題基礎力
のレベル 学 生 数 指導対象者数 指導対象者が
含まれる割合
7 13 0 ‑
6 45 2 4.4%
5 47 2 4.3%
4 56 3 5.4%
3 39 5 12.8%
2 55 7 12.7%
1 17 3 17.6%
合 計 272 22 8.1%
分析対象者数の多い1年生について,対課 題基礎力のレベル別に指導対象となっている 割合を見る(表14)と,レベル4以上とレベ ル3以下とでは,2倍以上の開きが生じてい る。対課題基礎力がレベル3以下の学生に対 して,効果的な注意喚起を行うことにより,
単位取得不足となる学生を減少させることが 可能と思われる。
5.特定のゼミの学生についての分析
(1) 比較結果
社会科学系の学部の場合,3年次のゼミ活 動が学生生活の上で重要な機会と考えられる ため,ゼミナール活動の効果が PROG テス トの結果から読み取れるか,筆者が担当した ゼミ生(以下「担当ゼミ生」という。)につ いて検討を行う。
筆者が2014年度の3年生を対象に担当した ゼミ生12名のうち,1年次と3年次の PROG テスト結果が比較対象可能な10名を対象とし て,筆者が担当したゼミ生以外との平均値の 比較を行った(表15) 。
表15 担当ゼミ生と担当ゼミ生以外との比較
担当ゼミ生 担当ゼミ生以外
3年次 1年次 変化幅 3年次 1年次 変化幅
比較対象数 10 230
リテラシー総合 5.50 5.80 ‑0.30 5.07 5.12 ‑0.04
情報収集力 4.20 4.60 ‑0.40 3.99 3.93 0.05
情報分析力 3.40 3.70 ‑0.30 3.48 3.57 ‑0.09
課題発見力 4.50 4.00 0.50 4.10 3.92 0.17
構想力 3.70 3.20 0.50 3.56 3.09 0.47
コンピテンシー総合 3.40 2.90 0.50 3.30 3.08 0.22
対人基礎力 4.10 2.90 1.20 3.49 3.35 0.14
対自己基礎力 3.10 2.80 0.30 3.49 3.32 0.17
14
対課題基礎力 4.20 4.30 ‑0.10 3.72 3.67 0.05
親和力 4.10 3.20 0.90 3.70 3.65 0.05
協働力 4.60 3.30 1.30 3.75 3.63 0.12
統率力 3.30 2.50 0.80 3.07 2.83 0.24
感情制御力 3.40 3.10 0.30 3.48 3.33 0.16
自信創出力 3.10 2.70 0.40 3.51 3.33 0.18
行動持続力 2.50 2.80 ‑0.30 3.36 3.18 0.17
課題発見力 4.50 4.10 0.40 3.79 3.58 0.21
計画立案力 4.20 4.20 0.00 3.51 3.52 ‑0.01
実践力 4.00 4.90 ‑0.90 3.94 3.80 0.15
担当ゼミ生のリテラシー総合は1年次の平 均値が高かったこともあり,担当ゼミ生以外 よりも低下幅が大きい。コンピテンシー総合 は担当ゼミ生以外より低かったが3年次には 逆転している。
担当ゼミ生のコンピテンシーについて見る と,対人基礎力(特に協働力)が大きく伸長 しており,対人基礎力の伸長幅(3年次のレ ベル‑1年次のレベル)について担当ゼミ生 以外と有意な差が認められた( t =‑3.99, p <.
05) 。
(2) 考 察
3年次のレベルと1年次のレベルというよ うに2年間の比較において,前期の半年間の ゼミナール活動がどの程度の影響を与えてい るかについては,履修科目の状況や課外活動 の状況等を詳細に分析する必要があるが,担 当ゼミ生については,半年間の間に複数の課 題
24についてメンバーを入れ替え
25,グルー
24 主な活動内容として前期においては,(1)財政・
税制の概要についての発表,(2)ふるさと納税に関 する長崎市役所への発表・意見交換,前期合同ゼミ 発表会,(3)株式学習ゲーム・日経 STOCK リーグ の準備,(4)後期合同ゼミ発表会の準備を行った。
25 対人基礎力向上のためには,グループワークが有 効であると思われるが,積極的に取り組むか否かで 学習効果に違いが生じやすいと思われます。特に,
プ活動したことが,例えば協働力の要素であ る情報共有や相互支援につながり,対人基礎 力の伸長に影響を与えたと思われる。
一方,一つのテーマについて十分な期間を 取れていなかったため,対課題基礎力が低下 する結果につながったと思われる。
(3) 本稿の分析の課題
PROG テストを用いて,特定のグループ の学習効果について分析する場合,①グルー プによっては十分な標本数が得られない,② 1年次と3年次の比較では教養教育と専門教 育の両方の効果が含まれてしまい,原因の分 析が困難,③コンピテンシーについては,授 業以外の部活動・サークル活動・アルバイト 等の影響も考えられる,といった問題点があ ると思われる。
①の標本数の問題については, PBL を行 っているゼミや共同論文を作成するゼミとい うように活動内容によりグルーピングを行 い,対象数を増やすことが考えられる。
②の比較期間の問題については, PROG テストの頻度を高めることが考えられるが,
費用及び時間確保の観点から,全員を対象と
コンピテンシーの低い学生ほど,消極的になり,能 力向上につながらない可能性が考えらる。 このため,
グループの人数を小さくして,役割が固定化しない
ように,課題によりメンバー構成を変化させた。
15
した PROG テストを半期毎に行うことは難 しいと思われる。このため,代替として,測 定したい能力に対応する PROG テストの一 部を抜粋し,ミニテストのような形で受験さ せ,正答率の変化を比較する方法が考えられ る。また,今回は3年次の10月という後期の インゼミ等の前に受験しているため,3年次 のゼミ活動のうち後期の活動が反映されてい ない。3年次のゼミ活動も含めた学習成果と して分析するには,受験時期の検討を要する と思われる。仮に,4年次まで遅らせた場合,
受験率の低下や就職活動への活用が難しくな るといったことが考えられ,後期のゼミ大会 の最中も受験率低下の要因となるため,3年 次の12月下旬又は1月上旬といった時期が考 えられる。逆に,教養教育の成果を測定する という観点に立てば,2年次の2月や3年次 の4月とすることも考えられる。
③の授業以外の影響については, IR 調査 を組み合わせることで,授業以外の影響につ いて分析していくことが考えられる。
6.おわりに
本章では,今回の分析を踏まえた, PROG テストを利用した今後期待される分析及び PROG の活用に関する今後の課題について 述べることとする。
(1)
PROG
結果の分析の深化3年次と1年次のレベルを比較することに より,レベルが伸長している学生の存在が確 認できたことから,こうした学生について IR 調査及び履修情報と照合することにより,
学生の行動と PROG レベルの伸長との相関 に関する分析
26が考えられる。 PROG テスト
26 レベル伸長と行動に一定の関係がみられれば,
結果と IR 調査結果を分析した片峰・川越 (2014)により,授業・課題,部活動時間
27と PROG のレベルとについて,一定の相関関 係が明らかとなっている。 今回の分析により,
レベルの伸長がみられる学生の抽出が行える ことが確認できており,レベルの伸長がみら れる学生の IR 調査結果を分析することによ り,レベルの伸長要因の分析が考えられる。
リテラシー総合及びコンピテンシー総合で は十分な伸長がみられない可能性があるが,
1年次のレベル別の分析や各要素の伸長幅に ついては,学部間の差異が生じる可能性があ るため,これらについての学部間の比較が考 えられる。
他大学等との比較を行い SWOT 分析につ なげていくことが考えられる。そのためには 後述するように,例えば社会科学系の学部の 平均データ等が比較対象として必要と思われ る。
GPA のような成績全体とリテラシー総合 とでは相関関係が見られなくても,親和性の 高いと思われる意思決定等に関する特定の科 目
28とリテラシーの一部の力との相関関係の 分析が考えられる。
(2) 分析の深化のために必要なデータ又はテ スト結果分析
他大学との比較により特徴がみえてくる場 合があるため,今後の分析の深化のためにの 比較対象として,全国平均等についての以下
「『こういった教育をしたら,こういった人材がそ だった』とういロールモデルを実証的に示す」(片 峰・川越2014)ことにつながると思われる。
27 授業・課題,部活動時間の双方が高いということ は,アルバイトが比較的不要な環境にあるとも考え られ, 経済環境が影響している可能性も考えられる。
28 SWOT 分析やロジックツリーを扱う科目等が考
えられる。
16
のデータ整備又はテスト結果分析が必要とお もわれる。
① 各年次の平均レベルを示すテスト結果分 析。(1年次の平均レベルが伸長幅に影響 を与える可能性が考えられるため,可能な らば,1年次のレベルが同程度の比較対象 が得られることが望ましいと思われる。 )
② パネル分析による各要素の平均的なレベ ルの伸長幅の分析。(1年次のレベルが伸 長幅に影響を与える可能性が考えられるた め,可能ならば,1年次のレベルでグルー プ分けしたレベルの伸長の比較対象が得ら れることが望ましい。 )
③ 他大学の同じ社会科学系(可能ならば同 じ経済学・経営学系)の学部との比較を行 うためのデータ分析。(類似のカリキュラ ムの大学間で連携し,相互に比較分析を行 うことも考えられる。 )
④ 40代等の社会人と学生とのレベルの乖離 に関する資料はあるものの,学生が目標と するには離れすぎているため,入社数年目 等の若手社会人との比較が必要と思われ る。また,将来的には, PROG テストを 利用したパネル調査により,能力の伸長が みられる若手社会人に対して,どのような 場面,経験が成長に貢献したかの調査を行 い, PBL により学生に疑似体験させると いったことも考えられる。
⑤ リテラシーは正解がある設問であるのに 対し,コンピテンシーは「個人の判断や行 動の様式(スタイル)を測定し,それが,
どの程度仕事ができる社会人に近いか」を 判定
29している。「社会で活躍する若手ビ ジネスパーソンはどちらの行動様式を多く とっているのかが判定基準となっている」
とされているが、1)業界や職種を仔細に
29 PROG 白書プロジェクト(2015) 。
見れば、 求められるスタイルは様々であり、
その平均値をもって、活躍人材の代表値と することに果たして合理性はあるのか。あ るいは、2)活躍人材の行動様式に照らす とはいえ、測定自体は質問に答えるという 個人の認知情報によるため、コミュニケー ション能力などの環境適応能力を真に正し く捉えることができるのか。さらには、3)
質問紙法では、個人の読解力によっても差 が出てしまうなど、テスト自体の妥当性に 疑問が生じる可能性が考えられる。社会人 のテスト結果が学生に比べて高いことか ら,一定の信頼性は確保されていると思わ れるが,より詳細な分析のためには,企業 等において,優秀と評価されている又は営 業成績等が優秀であるグループとそうでな いグループに対し, PROG テストを実施 し,結果を比較
30するという方法が考えら れる。ただし,グループ分けについての情 報が得られるかという問題があるため,代 替として年収との関係を分析
31することが 考えられる。
また, PROG 白書プロジェクト(2015)
では,クラスター分析によるジェネリックス キルの7タイプが示されており,判定基準を あてはめることにより本学部の学生を7タイ プに分類した場合,どのような構成比率とな るかの分析が考えられる。
(3) 学生が
PROG
テスト結果を活用にする ための取組み等PROG の活用に関する今後の課題として,
学生が PROG テスト結果をより活用するた
30 小学校教諭における高満足者と非満足者の比較に ついては PROG 白書プロジェクト(2015)参照。
31 転職サービスの利用とあわせて分析することが考
えられる。
17
めには, PROG テスト結果を意識させる機 会を設けることが必要
32と思われる。そのた めの方策として, PROG テストと授業等と の連携を高めていくための橋渡しを構築して いくことが考えられる。具体的には以下のこ とが考えられる。
①『 PROG の強化書』において, 「リテラシー
/コンピテンシー強化ワークシート」及び
「キャンパス未来図」が用意されているが,
一般的な資料のため,必ずしも,カリキュ ラムと対応したものとなっていない。この ため,カリキュラムと対応したものに置き 換え(参考資料1・2),ポートフォリオ の面談等において活用していくことが考え られる。これにより, PROG の結果をメ ンターとしての面談やゼミでの指導に活用 できるようにするためのノウハウの蓄積が 可能となると思われる。
② 現在,学生向けには PROG テストの結 果通知とあわせて解説会が行われている が,この解説会に FD として教員も参加し ていくことが考えられる。
③ 本学の13の目標キーワードと PROG の 対応については,橋本(2012)によりその関 係が示されているが,学生が目標キーワー ドと PROG テスト結果と対比するにはコ ンピテンシーの詳細要素では複雑となるた め,例えば別添資料のように一定の整理が 必要と思われる。
(4) 授業による学生の能力伸長の測定
本学では PROG テストは1年次と3年次
32 筆者は2012年度おいて担当した基礎ゼミ(2年次 前期)において,参考資料3を用いて, PROG テス ト結果の利用を図ったが,授業計画に組み入れてい なかったこともあり,十分な活用が図れなかった。
ポートフォリオの面談の導入により,改めて,利用 を検討することとしたい。
の2回受験しているが,1年次と3年次の比 較では教養教育と専門教育の両方の効果が含 まれるため,授業の成果分析を行うには一定 の限界があると思われる。
対応策として PROG 受験の頻度を高める ことが考えられるが,試験時間の確保及び費 用の増加という問題があり,また,受験率の 低下も懸念される。このため,受験者を限定 してサンプル的に受験させることや,イン ターネットを利用して,一定期間の任意の時 間に受ける等の対応が考えられる。
他の方法としては,授業において関連の深 い 能 力 や 対 象 者 の 平 均 レ ベ ル に 応 じ て PROG テストの一部を抜粋したミニテスト
33を実施し,正答率により,能力向上を測定す る
34ことや、 PROG の各尺度に対応した独自 のルーブリックを作成し、内省と共に、その レベルを自ら評価するなどの方法が考えられ る。
(5) 授業プログラム及び試験問題等の開発
① 山本(2011)が指摘するように成績評価の 試験問題にリテラシーを問う問題又はレ ポート課題を出題する
35ことにより専門知 識面とリテラシー面の両側から学生の達成
33 比較的短時間で行えるテストを「授業や取り組み の成果の評価」に用いている事例として,長谷部 (2014)参照。
34 本学の13の目標キーワードと PROG の対応につ いては, 橋本(2012)によりその関係が示されており,
全学モジュール科目については「全学モジュール テーマガイドブック」により「全学モジュールの目 標キーワード,および授業編成の視点との対応」が 示されていることから,重視している項目について の受講生の能力伸長を測定することが考えられる。
35 これにより,大学の成績評価と社会での評価を一
致させることにつながると思われる。また,学生に
リテラシー向上を目指すモチベーションにつながる
と思われる。
18
度を測定することが考えられる。そのため には,学問別にどのような問題がリテラ シーを問う問題として考えられるかについ て整理や具体的な問題の開発し,授業内容 とジェネリックスキル育成の連携を高める ことが必要と思われる。
PROG テストで用いられている分類
36に より,専門知識面とリテラシー面の両側か ら学生の達成度を測定する試験問題又はレ ポート課題を考えた場合,情報分析力
37に ついては,データの読み取り,文献・資料 の読み取りが含まれているため,比較的試 験問題等に馴染みやすく,情報検索
38が含 まれている情報収集力はレポート課題が馴 染みやすい
39と思われる。一方,課題発見 力及び構想力については,ブレーンストー ミングや SWOT 分析等が含まれるため,
講義科目については,一部の授業科目
40を 除いて,馴染みにくいことが考えられる
41。
リテラシーについては,『問題解決のた めのリテラシー強化書 講義編』のように PROG の分類と対応したテキストが提供
36 リテラシー及びコンピテンシーの定義及び分類に ついては, PROG テストで用いられている方法以 外の方法も考えられるが PROG テストに対応して いることにより学生自身が能力伸長を実感しやすい と思われる。
37 PROG 白書プロジェクトに掲載されている「リ テラシーマップ」を参考に検討。
38 文献収集・インターネット検索・判例検索等の情 報収集が対応しやすいと思われる。
39 ただし,情報収集力の調査については,アンケー トやインタビューを想定しているため,科目によっ ては馴染みにくいと思われる。
40 課題発見力及び構想力に対応する授業方法とし て,ケーススタディを利用しての課題解決や対応方 法の検討が考えられる。
41 ケーススタディが課題発見力及び構想力に直結す るかの検討には,「リテラシーマップ」及びサンプ ル問題との照合が必要と思われる。
されているが,コンピテンシーについては そのようなものが見当たらない。 このため,
各能力についてどのような授業
42ならば伸 長できるかを整理し,教員と学生が共通認 識することが必要と思われる。
(6) 今後の
PROG
テスト結果活用の可能性等各要素は相互に関連しているため特定の要 素を選択することは困難も予想されるが,カ リキュラム・ポリシー及びディプロマ・ポリ シーの観点から重点的に能力向上を図るジェ ネリックスキルの要素を選択し,能力の伸長 分析が考えられる。
知識の習得を重視する科目もあると思われ ることから,ジェネリックスキル伸長を目指 す科目とそうでない科目の整理が考えられ る。
将来的には,アドミッション・ポリシーの 観点から重視すべきジェネリックスキルの要 素が選択可能であれば,その要素についての 評価の高い学生が多く属する入試経路の拡 大,相関の高い入試科目のウェイトの向上と いったことが考えられる。
謝 辞
データ分析等に際してご協力いただいた株式会社リ アセック キャリア総合研究所の石川純一主任研究員 に深く感謝したい。なおあり得べき誤謬は全て筆者の 責に帰するものである。
42 アクティブラーニングにも種類があり,例えばク
リッカーを用いて知識の理解の確認をするだけで
は,伸長しづらい能力もあると思われる。どのよう
なアクティブラーニングのどのような場面で各能力
が伸長するのか,整理が必要と思われます。特に
PBL ( Project Based Learning ) のようなグループ
ワークでは,授業効果が各学生の積極性に左右され
るため,学生の意識付けが重要と思われる。
19
参 考 文 献