北陸地質研究所報告
HGIRe p o r t No . 3 0c t .1 9 9 3 p . 3 3 ‑ 5 0
日本列島の新生代地史
鹿野和彦 *
C enoz oi cHi s t r oyoft heJ apan e s el s l ands Kaz uhi koKANO*
( 1 9 9 3 年 5 月 3 1 日受理) ( Re c e i ve d31 s t , May,1 9 9 3 )
Abs t r ac t
Re c e ntr e vi s i o no nt hege ol o gy,c hr o no s t r a t i gr aphya ndpal e o ma gne t i s m r e ve al st hatt he J a pa ne s eI s l a ndswe r eapa r toft heEur a s i a nc o nt i ne ntunt i lEa r l yOl i goc e ne , anddr i f t e dt ot he pr e s e ntpo s i t i o nwi t hLa t eOl i goc e net oe a r l yMi ddl eMi oc e nes pr e adi ngoft heJ apa nSe a. The J a pa nSe as t a r t e ds pr e a di ngwi t ha c t i vevol c a ni s m a ndr i f t i ngo ft hec o nt i ne t alma r gi n,and mar i net r a ns gr e s s i oni nt hes pr e adi nga r e ai ni t i a t e da bo ut2 2Mawi t hi nc r e as i ngr at eo f s u bs i de nc e . I twa sa bo ut 1 5 Mawhe nt heJ a pa nSe ac e a s e ds pr e adi ng.
Dur i ngt heJ apa nSe as pr e adi ng,t hel z u‑ Ogas awar a( Bo ni n)a r cdr i f t e dnor t hwa r da ndt he Chi s hi ma( Kur i l )a r cs t a r t e dc ol l i di ngwi t ht heno r t he as t e r npa r toft heJ a pane s eI s l a ndswi t h s o ut hwar ddr i f t i ng, Thel z u‑ Oga s a wa r aa r cs t a r t e dc ol l i di ngwi t ht hemai npa r toft heJ apa ne s e I s l andss ho r t l ya f t e rt hec e s s at i o noft heJ a pa nSe as pr e adi ng. Thepr e s e ntge ol o gi cf r ame wo r k o ft heJ apa ne s eI s l a ndst husal mo s tf o r me di nMi ddl et oLa t eMi o c e ne.
Themai npa r toft heJ a pane s eI s l andsa r eno w a tamo unt ai n‑ bui l di ngs t a ge .Bac k‑ a r c r i f t i ng,ho we ve r ,hasoc c ur r e di nt heOki na waTr oughwe s toft heNans e iI s l a nds ,S o ut hwe s t J a pa ns i nc el a t eLat eMi o c e neo rPl i oc e ne,andi nt heSumi s ua ndo t he rr i f t swe s to ft he l z u‑ Oga s a wa r aI s l a ndss i nc ePl e i s t oc e ne .
は じめに
地殻 とマ ン トルのダイナ ミクスは地球科学の大 きな課題 のひ とつである.
1 9 7 0
年代初頭 に体系化 を果 た した古典的プ レー トテ ク トニ クスは, この課題 に対 して一応の解釈 を与 えた. しか し, その後 の研究の過程 で明 らかになったように, 日本海のような背弧海盆やベー スン ・アン ド・レンジな どにつ いては,剛体 プ レー トの運動のみでその成 因を解釈す るこ とはで きない (中村,
1 9 9 0) .
このため, 島弧 と緑海の形成 に関す る研究が今,改めて注 目されている. とりわけ, 日本列 島 と その周辺海域 は,地質学や地球物理学 な ど地球科学諸分野の詳 しいデー タが蓄積 されつつ ある場所
として,様々な角度か らのアプ ローチが可能 であ り,今後の研究の展開が最 も期待 され る地域 であ る.
地質学に携 わ るもの として この ような期待 に答 えるためには,地球物理学 な ど関連諸分野の動向 を視野に収めつつ, よ り精度の高い地質調査 と観察, そ してそれ らを総合 した新 たな解釈の提示 を 積極的に行 な う必要がある. なかで も,新生代 に 日本列 島が形成 されたこ とを考 えれば, 日本列 島 や周辺地域 におけ る新生界の研究 は今後 ます ます重要 になると予想 され る.
この ような状況 を踏 まえ,本論 では,最近急速 に集積 しつつ ある 日本列 島の新生界に関す る知見 を整理す る意味で,鹿野ほか
( 1 9 91 )
の年代層序 区分 に従 って, 日本列 島の形成史上 での意義 に留意 しつつ, それぞれの時代 の特徴的な地質現象 につ いて述べ る.新生 代 の 年 代層 序 区分
鹿野ほか
( 1 9 91 )
は, 日本列 島全域の新生界対比に基づ き,広域的に認め られ る不整合,堆積相や 火成活動 の変化 な どの地質現象 を基準 として,古第三系 を4
つ( PG
l,PG
2,PG
3,PG
。),新第三系 を3
つ( N
l,N
2,N 3 )
,第四系 を4
つ( Q
l,Q
2,Q3 , H)
の年代層序単元に分 けた.PG
lか らH
までの境界 の年代 は,それぞれ,5 2 ,4 0 ,3 2 ,2 2 ,1 5 ,7 ,1. 7 ,0. 7 ,0. 1 5 ,0. 01 8 Ma
であ る.この うち,PG
4か ら
N
3までは,さらに,2 6 ,1 8 ,1 2 ,3 Ma
を境 にそれぞれ二つ,a ,b
に区分 され る.この年代層序 区分 に従 って, 同一時間面 (帯)の上 で,広 い範囲にわたって生 じた現象 を抽 出 してみ ると,新生代 の 日本列 島は,3 2 ,2 2 ,1 5
,そ して7 Ma
前後 に重要 な地質学的転換点があった らしい(第1
表).特 に3 2 Ma
は大 きな転換点で, それ以前は 日本列 島が大陸か ら分離す る前の大陸の時代,それ以降は 島弧が形成 され現在 の姿に至 るまでの時代,す なわち島弧の時代 である.第 1表 日本列島の新生代地史
大 陸
4 0 Ma
か ら現在 までの年代層序 区分 の境界の うち,4 0 ,2 6 ,1 5 ,7Ma
は,‑ ワイ海 山列の海 山が 示す太平洋プ レー トの進行方向が北北西か ら西に転 向す る時期 (Jac ks on e ta l .
,1 9 7 5 )
に,3 2
,2 2
,1 2 ,3Ma
は‑ ワイ海 山列の海 山が示す太平洋プ レー トの進行 方 向が西か ら北北西 に転 向す る時期( J ac ks on e ta l . ,1 9 7 5 )
におお まかなが ら一致 してお り,太平洋プ レー トの動 きと日本列 島に残 され てい る地質現象 との間に何等かの因果関係があるように見 える. しか し,プ レー トテ ク トニ クスの 枠組みで単純 に議論 し得 るものか否か, そ して これが,個 々の地質現象 とどの ように結 びつ いているかについては,大槻
( 1 9 8 6 )
の試論に も見 られ るように,今後の検討が必要 である.大陸の時代
ジュラ紀か ら前期 白亜紀 にかけて, そ してそれ以前に も,ユー ラシア大陸の東緑 では遠洋性堆積 物,海洋玄武岩, チャー ト,石灰岩 な どが大陸側 に付加 し, その上 に堆積 した陸源堆積物 とともに 複雑 な地質体 を形成 していた らしい
( Tai r a e ta l . , 1 9 8 9
;磯崎 ・丸 山,1 9 91 ) .
これが 日本列 島の基 盤 である.前期 白亜紀 には,全体 に沿岸か ら内陸の環境へ と変 わ り,西南 日本か ら東北 日本 (北海道 東部 を含む)にかけて安 山岩一流紋岩火 山噴出物がそれ以前の地質体 を覆 うようになる. 同 じ頃,東 北 日本 では,その東側,礼文 島,樺戸 山地 な どでソレアイ ト質 玄武岩一安 山岩が噴出 してお り,さら に東側 では海成の硬岩,泥岩, そ して西側か ら供給 された と見 られ る珪長質火砕岩 な ど,空知層群 を構成す る一連の堆積物が堆積 していた.前期 白亜紀の この よ うな地質体 の配列 は, そこが火 山陸 弧であったことを示唆す る( Ki mi nami e ta l . ,1 9 8 5) .
白亜紀後期か ら中期始新世 にかけては,内陸 において珪長質火成活動が活発 にな り,濃飛流紋岩類 に代表 され る大規模火砕流堆積物が噴出 し, 領家花属岩,広 島花岡岩 な どが送入 した( Yamada,1 9 7 7 ) .
同 じ頃,海側 では海岸平野か ら海溝にか けて四万十層群,久慈層群,蝦夷層群 な どが堆積 し続けている.ジュラ紀の堆積岩 な どを原岩 とす る三波川変成岩 は前期 白亜紀 の後期 か ら上昇 し始め, 中期始新 世 には地表に露出 した らしい
( I s oz akiandl t aya
,1 9 9 0) .
中央構造線は,暁新世 か ら中期始新世 に かけて活動 していた らしく(柴 田ほか,1 9 8 8
,1 9 8 9
:高木ほか,1 9 8 9 )
, その活動時期 は三波川変成 岩の上昇時期 に一致す る.塩基性岩 を主 とす る神盾古滞帯の高圧変成岩 も前期 白亜紀か ら前期始釈 世 までの変成年代 を示 してお り(榊 原 ・太 田,1 9 9 3 )
,始新世一漸新世 には地表 または地表近 くまで上 昇 した と考 えられ る.三波川変成岩は最大で
1. 2GPa
の圧力 を受 けてお り,地下約4 0 k m
まで沈み込んでいたこ とが示唆 され る( BannoandSakai , 1 9 8 9 ) .
磯崎 ・丸 山( 1 9 91 )
は, 中央海嶺が沈み込む時,大陸縁辺の リソス フェアに比べ て中央海嶺付近 の リソスフェアの密度が小 さいために,浮力が生 じ,高圧変成岩が上 昇す ると考 えた. さらに,高圧変成岩の上昇 とほぼ時 を同 じくして, 中央海嶺 の沈み込 みによる温 度上昇 によって リソスフェア内に大量の珪長質マ グマが生 じて,活発 な珪長質火成活動が起 こる と 主張 した. しか し,大槻( 1 9 9 2 a
,b)
は,中央海嶺 の沈み込みに よる浮力は高圧変成岩 を上昇 させ る ほ ど大 き くはな く,高圧変成岩の上昇 は,む しろプ レー トの斜め沈み込みに よる海溝向 きの努断力 によって起 こるとしている.いずれに して も,中期始新世 に三波川変成岩が,そ して中期始新世一漸新世 に神屠古津変成岩が地
表 または地表地殻 まで上昇 した後,珪長質火成活動 は急速 に衰 え,活動地域 は 日本列 島において も 大陸において も日本海側へ縮小 した (藤 田・雁沢
,1 9 8 2 ) .
後期始新世一前期漸新世 には, 田万川 な ど 西南 日本 の 日本海側 の ご く一部 の地域 に火成活動 が認め られ るにす ぎない.これに呼応す るかの よ うに,海域が太平洋側 か ら内陸へ と進入 したため,束北 日本や西南 日本の 太平洋沿岸 では神 戸層群 な どの非海成堆積物,幌 内層群,白水層群 な どの汽水一浅海成堆積物が堆積 し,それ らの前面 には四万十層群 な どの大陸棚 ‑海溝堆積物が引続 き堆積 した.ほぼ 同 じ頃に北九州 に堆積 した大辻層群,相知 層群 な どの汽水一浅海成堆積物 は,古流向か ら見 て太平洋側及 び東 シナ海 側 にその供給源 を持 ってお り, どこか で太平洋 につ なが る内海があったこ とを示唆す る(鹿野 ほか,
1 9 9 1 )
.この内海が,おそ ら く,東 シナ海大 陸棚 の主部 を占め る台湾堆積盆( Wa ge man e t al . ,1 97 0)
なのであろ う.台湾堆積盆 は始新世一中新世 の堆積物 に埋積 されてお り,始新世 には存在 していた らしい (木村,
1 9 9 0 ) .
島弧の時代
白亜紀か ら続 いた大規模 な珪長質火成活動が衰 えた後,前期始新世後期,
3 2Ma
頃になる と,火 成活動 の領域 は太平洋側へ と拡大 し, いわゆ るグ リー ンタフ と呼ばれ る時代 の新 たな火成活動が始 まる. 日本列 島の主部が大 陸か ら分離 し, 島弧 となったのは これ以降の こ とであ る.3 2Ma
以降, 日本列 島の主部が大陸か ら分離 し, 島弧 としての現在 の姿 にな るまでには, リフ ト形成初期( 3 2 ‑ 2 2 Ma)
,リフ ト拡大期( 2 2 ‑ 1 5Ma)
,遷移期 または列 島形成期( 1 5 ‑ 7Ma)
,短縮期( 7Ma
以降)の4
段階を経 てい る と考 え られ る.
日本列 島の主部が大陸か ら分離 し,現在 の位 置 に移動 して きた とす る説は,日本海 の
1 0 0 0 ‑ 2 0 0 0 m
等深線が大 陸側 と日本側 とでおお まか なが ら相似 であ るこ とや, 日本海に海洋性地殻が存在す るこ とな どか ら,大陸移動説 あ るいは海洋底拡大説 な どを援用 して早 くか ら唱 え られて きた. これにつ いては,様 々 な反論 もあったが,最近 の古地磁気学的研 究 に よれば,西南 日本や東北 日本 の古緯度 が現在 よ りも高緯度 にあったこ とは確 か で,古緯度の変遷 に基づ いて,2 0Ma
前後か ら1 5Ma
にか けて西南 日本及 び東北 日本が それ ぞれ時計廻 り,反時計廻 りに回転 し,現在 の位 置に到達 したこ と が指摘 されてい る( Ot of u j i e t al .
,1 9 8 5;Tos haa ndHama no
,1 9 8 8;
中島ほか,1 9 9 0 ) .
Kane oka e t al . ( 1 9 9 0, 1 9 9 2 )
に よれば, 日本海か ら ドレッジされた岩石 の うち,深成岩や変成岩の 多 くは大和堆や 隠岐堆, 日本海縁辺 の大陸斜面,す なわち地震学的に花尚岩質岩地殻 が存在 す ると されてい る地域 に集 中 し, しか も6 0Ma
よ りも古 い.火 山岩 は,6 0Ma
よ りも若 い ものが 多い.特 に測定値 が 多い大和堆,大和海盆, 日本海盆 に地域 を限 って見 る と,大和堆 か ら採取 された火 山岩 の多 くは,3 2 ‑ 2 0Ma
の年代 を示す.また,海洋性地殻が存在す る と考 え られてい る大和海盆及び 日 本海盆 の火 山岩 は2 4 ‑ 1 8Ma
よ りも若 い. この こ とは,1 8 ‑ 2 4Ma
には 日本海盆や大和海盆が形成 さ れ始め たか,既 に形成 されていた こ とを示唆す る( Kane oka e t al . ,1 9 9 0 ,1 9 9 2 ) .3 2 ‑ 2 0Ma
の火 山 岩 は, 日本列 島で火成活動が活発 にな り始め た時期 に噴出 してお り, 日本海 の拡大 に先駆 けて火成 活動が活発 になったこ とを意味す るものであろ う.日本列 島や大 陸東縁 の 日本海沿岸 では,
2 2Ma
頃に (鹿野 ・柳 沢,1 9 8 9 )
大陸性 の冷 涼 な気候 を反映 した阿仁合型植物群 にかわって,海洋性 の温暖な気候 を反映 した台島型植物群が出現す る. この 植物群 の交代 は, 日本海地域 に海が進入 したこ とに よる(藤 岡,
1 9 7 2 ) .
阿仁合型植物群 を産す る地層は淡水湖成層で,砂磯か らなる扇状地堆積物や陸上火 山噴出物 と指 交 してお り,阿仁合型植物群が出現す る
2 6Ma
頃 (鹿野 ・柳 沢,1 9 8 9 )
には, そこに湖盆が形成 され 始め たことがわか る.これ らに重 な り,台島型植物群 を産す る汽水一淡水成堆積物 は,陸上 ない し浅 い水底 に噴出 した火 山噴出物 と指交す るとともに,側方及び上方に向か って海成堆積物 に漸移す る(藤 岡ほか,
1 9 81 ) .
下位 の堆積物 に比べ てその分布 は格段 に広 く, しか も島弧方向に延 び る.Ya ma j i ( 1 9 9 0 )
は,これ を 島弧方向に平行す る リフ トの形成,拡大 と考 えた.阿仁合型植物群 の時代 に始 まる堆積盆の沈降速 度 は,指数 関数 的 に増大 し,1 6 ‑ 1 5Ma
に極 大 に達 し,1 5 ‑ 1 4Ma
には急激 に低下 す る( Yama j i
,1 9 9 0
).この傾 向は東北 日本 日本海側 のみな らず,西南 日本や朝鮮半 島南部 の 日本海沿岸か ら沖合 い にかけての地域( Cho ug h a ndBa r g,1 9 8 7 )
,そ して大和海盆や 日本海盆( Tamaki e ta
l. ,1 9 9 0;I ngl e e ta
l.
,1990)で も同 じである.3 2Ma
頃におけ る 日本列 島での火山活動 は,渡 島半島か ら秋 田,能登半 島, 山陰地方 に限定 され ていたが,2 6Ma
か ら2 2Ma
にかけて太平洋側 に拡大す る(鹿野ほか,1 9 91 ) .
阿仁合型植物群 が堆 積 した湖盆群が生 じたの もこの頃のこ とである.2 2Ma
か ら1 5Ma
にかけては, さらに太平洋側へ と火 山活動が広が る(鹿野ほか,1 9 9 1 ) .3 2Ma
か ら2 2Ma
にかけては資料が少 な く言及 で きないが,2 2 ‑ 1 5Ma
について見 る と,当時の岩脈 は島弧 に沿 った平行岩脈群 をな し,島弧 に直交す る方向に展 張 しつつ リフ トが形成 されたこ とをうかがわせ る(綱 川 ・竹 内,1 9 8 3;
山元,1 9 9 2 ) .
東北地方の火 山岩は,2 2Ma
以前には島弧横断方向での化学組成の系統的変化 を示 さず,殆 どがNa2
0に富みK2 0
に乏 しい高アル ミナ玄武岩 あるいは高アルカ リソレアイ ト系列 に属す る(富樫,1 9 8 3
).これに対 し,2 2Ma
か ら1 5Ma
にかけては,低 アルカ リソレアイ ト系列 の岩石が太平洋側 に,高アル ミナ玄武岩 あるいは高アルが )ソレアイ ト系列の岩石 が 日本海側 に分布す る傾 向がある(富樫,1 9 8 3
).ただ し,日本海側 で大量に玄武岩が噴出 した地域 では両系列 の岩石 が共存す る
( Ts uc hi ya
,1 9 9 0 ).
島根半 島
( Ka n
o,1 9 91 )
や東北地方 中部 (山路,1 9 8 9
;幡谷 ・大槻,1 9 9 1;Sat oandAma n
o,1 9 9 1 )
の例 に示 され るように,2 2Ma
か ら1 5Ma
にかけて,日本列 島の 日本海側 では玄武岩‑安 山岩 ととも にデ イサ イ ト 流紋岩が大量に噴出 し,それ らの砕屑物が急激に沈降 し始めた リフ トを埋積 した.リ フ トの中心 と見 られ る大和海盆や 日本海盆 では,ソレアイ ト玄武岩一安 山岩が噴出 または シル として 送入 している( Ta maki e ta
l. , 1 9 9 0;I ngl e e ta
l. ,1 9 9 0 ) .1 6 ‑ 1 5Ma
頃になると, リフ トの縁辺部 にあたる 日本列 島で も,一段 と沈降が進み,東北地方では現在 の脊梁 と日本海沿岸 に沿 って二つの 沈降域が生 じ(北里,1 9 8 5 )
,その うち,脊梁沿いの沈降域 には黒鉱鉱床 を伴 ってデイサ イ ト 流紋岩 が,日本海沿いの沈降域 では ソレアイ ト玄武岩一安 山岩が( Ts uc hi ya,1 9 9 0 )
大量に噴出 してい る.ま た,山陰地方で も,島根半 島に沿 った沈降域が太平洋側 に拡大 し,沈降の中心 に近 い島根半 島では, 引 き続いて流紋岩が大量 に噴出す るとともに, ドレライ トー玄武岩 シルが送入 した らしい (山内 ・富 谷,1 9 81
な ど).朝鮮半 島東南部 で も2 2Ma
頃にデイサ イ ト火砕流が大量に噴出 し,引続 きデイサ イ トの溶岩や火砕流,ソレアイ ト玄武岩一安 山岩水底溶岩の噴出 を伴 いなが ら沈降 し,1 8Ma
あるいはそれ以降に海進が及ぶ
( Shi maz u e t al .
,1 9 90; Yo on
,199 2) .
日本列 島が大 陸か ら分離 され始め たのが3
2 Ma
とす る と,現在 の位 置に向か って移動 し始め たの は, リフテ ィングが明確 にな る22 Ma
頃の こ とであろ う. 台島植物群 の出現 に示 され るよ うに,22Ma
頃か ら海水 が流入 し始め た 日本 海 は暖流が支配的 で暖かか った らしい.堆積盆 の沈降が進 む16 Ma
頃は特 に暖 く,西南 日本 では 日本海側 で も太平洋側 で も暖流が流入す る汽水域 にマ ングローブ が繁茂 し,熱帯一亜熱帯の貝類が生息 した (I t oi gawaandYa ma noi
,1990) .西南 日本 の太平洋側 で
は,22 Ma
頃に巨大 な海底斜面崩壊 が起 こ り(酒井,1 9 88)
, 熊毛層群,室戸層群,牟婁層群,瀬戸 川層群 な どで代表 され る中期始新世‑前期 中新世 前期 の付加 コンプ レックス"四万十層群 "が,前期 中新世 の後期一中期 中新世 前期 の三崎層,熊野層群,倉真層群 な ど前弧盆堆積物 に不整合 に覆 われて い るこ とか ら示唆 され るよ うに, この頃か ら15 Ma
にかけて これ らの地 層群 が付加 した らしい (杉 山,199 2) .また,時 を同 じ くして,軸が鉛 直の大規模 な摺 曲が水平方 向のずれ を伴 いつつ形成 され
た らしい( Ka no, K. ‑ I .e t al.
,1 990
). この ような付加 と地殻変形 は, 日本海の拡大 とともに移動す る 日本列 島 とその前面 にあ る太平洋 プ レー ト( Hi bba r dandKa r i g ,1 9 90)
,またはフィ リピンプ レー ト及 び太平洋プ レー ト( Se noa ndMa r uya ma ,1 98 4)
との押 し合 いに よって起 こった らしい (杉 山,1 9 92
な ど).1 5 Ma
を過 ぎる頃,15‑1 4 Ma
にな る と,西南 日本 は急速 に隆起 し,太平洋岸 に酸性岩が送入 し噴 出 した.瀬戸 内海 に沿 っては, 高マ グネ シア安 山岩や酸性岩が( Ta t s umiandl s hi z uka , 1 9 82)
,南 西諸 島の西表 島で も高マ グネ シア安 山岩が (新城 ほか,19 91 )
噴出 した. そ して 日本海側 では,宍道 摺 曲帯( Ot uka
,1 937 )
な どの島弧 に平行 な軸 をもつ摺曲 とソレアイ ト カル クアル が ノ玄武岩一安 山 岩の噴出が始 ま り, これに呼応 して, 日本海沿岸 の堆積盆 は沖合 いへ と移動す る.摺 曲で生 じた沖 合 いの深 い凹地 には,隆起 す る沿岸 か ら運 ばれ た火 山源砕屑物 が混濁 流 となって流入 し堆積 した( Kanoa ndTake uc hi ,1 9 89) .岩脈 の卓越方位 と摺 曲の延 びな どか ら, この頃の西南 日本 では,最
大水平圧縮 主応力が 島弧 に直交す る圧縮応力場 にあった こ とが うかが え る(綱 川 ・竹 内,19 83
;山元,1 9 92) .
東北地方 で もナ ンノ化石帯NN5(
1 6‑1 3 Ma)
の間に脊梁 は急速 に浅海化 し(佐藤 ほか,19 91 )
,太平 洋岸 で も浅海化 して一部 に不整合 を生 じた (石井,198 9) .
日本海沿岸 の堆積盆 の中心 では依 然 とし て深 い状 態が続 いたが, 男鹿半 島,佐渡,能登半 島に見 られ るよ うに,堆積盆の縁辺 あ るいは海底 の高 ま りでは浅 くな り,堆積速度が極端 に小 さ くなって海緑石 が生 じてい る(I i j i ma e t al .
,19 8 8) .
堆積盆 の中心 では西南 日本 と同様 にカル クアル カ リーソレア イ ト質 玄武岩一安 山岩( Ts uc hi ya
,19 90
な ど)が噴出 してい るが,その フィー ダー岩脈 の方位 は島弧 に斜交 し,弱 い引 っ張 りない し弱 い圧縮 の場 に変 わった らしい( Sat oa ndAmano ,1 9 91 ) .
北部 フォ ッサマ グナ では,1
5 Ma
頃に石 英閃緑岩‑ひん岩の送 入 とともに北東一南西方 向の隆起帯 が 出現 し,別所 層が堆積 した海 を分 断 し始め る. この時 フォ ッサマ グナの西側 も急速 に隆起 したら し く,領家帯 または美濃帯 に由来す る巨大磯が松本盆地周辺 に供給 され (仁科,19 91 )
,また,フォ ッ サマ グナの西側 と中央隆起帯 に挟 まれ た地域か ら長 岡にかけて海底扇状地 の巨大 な複合体 が形成 さ れ た (立石 ほか,1992) .フォ ッサマ グナの西側 にある北陸地域 は,ほぼ同 じ頃,1 5 Ma
か ら1 2 Ma
にかけて反時計廻 りに回転 し(
I t o handI t o,1 9 8 9 )
,東側 の群 馬県高崎地域 では前一 中期 中新続が短 縮変形 し削刺 された (大石 ・高橋,1 9 9 0 )
. また,西南 日本の外帯花尚岩の送入 とほぼ時 を同 じくし て,丹沢 山塊 では トーナル岩質岩体 な どが送 入 した (佐藤ほか,1 9 8 6 )
. これ らの一連の事実 は,北 上す る伊豆小笠原弧 と本州 とが衝突 し始めたこ とを示唆す る.1 5Ma
の少 し前項か ら北海道 中軸帯 は隆起 し,そこか ら供給 された砕屑物が中軸帯西側 に沿 って 混濁流 となって南下 し,堆積 した (保柳,1 9 9 2 ) .
中軸帯の東側 にある 日高帯 は,漸新世 頃か ら西側 に対 して右横ずれ しなが ら南下 し,衝上 してお り(小松 ほか,1 9 8 9 )
, この堆積様式は,北海道の西 部 と東部 とが この頃には完全 に按合 したこ とを示唆す る.日高帯の変成岩 は地殻下部一中部 の深 さで トーナル岩 な どの花尚岩類の送入 を受け,花尚岩類 とともに衝上 して (志村,1 9 91 ) ,1 9 ‑ 1 6Ma
には 地表近 くまで達 した らしい( Ar i t a e tal .
,1 9 9 3 ) .
日本海 と同様,
漸新世か ら中期 中新世 にかけて千 島海盆が開いた( Ki mur aandTa maki
,1 9 8 6 )
とす ると,千島海盆が開 くにつれて北海道の東部が 西部 に衝上 しなが ら南下 したこ とになる.東部が西部 に接合 した後,南下 は間 もな く止 まった. し か し,千島弧 に対 して太平洋プ レー トが西方に斜めに沈み込んでい るために, その後 も現在 に至 るまで西向 きの動 きは続 いている
( Ki mur a
,1 9 8 6 ) .
この ように
,1 5Ma
頃に現在 の位 置にた ど り着いた 日本列 島は,引 っ張 りの場か ら圧縮 の場 に転 じ始めた (綱川 ・竹 内,1 9 8 3;
山元,1 9 9 2
な ど). ちょうど1 4 ‑ 1 5Ma
頃は汎世 界的な海水準の低下期 に当たっていた( Haq e ta
l.
,1 9 8 8 )
ために,地殻の短縮 に ともなって隆起 し始めていた西南 日本 で は海退が著 し く,広 い範囲が陸化 した.東北 日本 で も陸化す るには至 らなか ったが,堆積盆 の縁辺 部 は浅海化 した.東北 日本の延長上 にある北海道西部 に対 して衝上 していた北海道東部 で も,千 島 列 島に続 く火 山フロン トの前面の釧路炭 田付近や背後の北見では浅海堆積物が堆積 した.1 4Ma
を過 ぎる頃,世界的に海水準が上昇 し始め( Haq e t al .
,1 9 8 8 )
,東北 日本 では再 び海域が 広が り,堆積盆が深 くなった (的場,1 9 9 2 ) .
また, 山陰地方で も,稽曲,断層運動が続 く中,再 び 内陸‑海進が及んでいる(鹿野ほか,1 9 9 1 ) .
1 3 ‑ 1 2Ma
を過 ぎると,西南 日本 では地殻 の短縮が進み,島根半 島か ら五 島列 島 を経て台湾に至 る 台湾一宍道摺 曲帯( Eme r y e t al . ,1 9 6 9 )
も明瞭になる.隆起が進み,世界的に海水準が低下 しつつ あっ た( Haq e t al .
,1 9 8 8 )
こ ともあって,殆 ど全域が陸化 した. しか し,東北 日本は依然 として海面下 にあって,堆積盆の水深 に も殆 ど変化がなか った (的場,1 9 9 2 ) .
北海道の堆積盆 も同様 であった らしい (鹿野ほか
,1 9 91 ) .
これは,束北 日本や北海道が極 めて弱い圧縮 の場 にあった (大槻,1 9 8 9 )
た めか, あるいは海盆 の拡大後 に も リソスフェアが冷却 し沈降 したためか もしれない (山路 ・佐藤,1 9 8 9 )
.西南 日本が陸化 したのは,大和海盆や 日本海盆,千 島海盆か ら離れていて リソスフェアの冷 却 に よる沈降の程度が小 さか ったため とも考 えられ る.1 3 ‑ 1 2Ma
以降,火成活動 は衰 え,太平洋側 までせ りだ していた火 山フロン トは,現在 の火山フロ ン ト近 くまで後退す る(鹿野ほか,1 9 9 1 ) .
西南 日本 の 日本海側 では,松江層のアルカ リ玄武岩や大 和海盆の粗面安 山岩( Kane oka e t al .
,1 9 8 8)
な どで示 され るアルカ リ岩の活動が始 まる.気候 は次第に冷涼 とな り,動物群,植物群 とも温暖型 と寒冷 型の中間的種構成 とな る(小笠 原,
1 9 8 8 )
.日本海側 では底生有孔虫群集 に 占め る∴砂質有孔虫の割合が急激に減少 し(多井,1 9 6 3 )
,浮遊性有孔虫 も暖流系か ら寒流系に代 わ る(米谷 ・井上,
1 9 81 ) .
また,珪藻 もほぼ同 じ頃,暖流系種が 姿 を消 し,鮮新世 まで戻 って こな くなる(柳 沢,1 9 8 8) .
海進が内陸 まで及 び始め る1 6Ma
以降,暖 流に乗 って 日本海沿岸 にた どり着 いていたタコブネは, フォ ッサマ グナに近 い火打 山,寺泊 を除い て姿 を消す (柳 沢,1 9 9 0 )
.対馬では中期 中新世か ら前期鮮新世 までの堆積物が欠如 してお り, この ことと考 え併せ ると, これ ら一連の生物群集の変化 は,対馬付近 で 日本海が この頃に閉 じたことを 示唆す る.対 馬海峡が閉 じたのは,1 0‑ 6Ma
頃は海水準が現在 よ りも低 く( Haq e t
al.,1 9 8 8 )
,西 南 日本 も既 に隆起 していたため と考 え られ る. フォ ッサマ グナ付近 の後期 中新世( 8‑ 7Ma)
の タコ ブネ (柳 沢,1 9 9 0 )
は, その後 もフォ ッサマ グナ付近 で太平洋 と日本海がわずか なが らつ なが ってい たこ とを示す ものであろ う. 日本海の西端が再 び開 くのは,世 界的に海水準が再 び上昇 し( Haq e t α
7.,1 9 8 8)
,対 馬に海成層が堆積す る鮮新世 になってか らのこ とである.西端 を閉 ざされた 日本海には寒流系の珪藻が繁茂 し,東北 日本の 日本海側や北海道,大和海盆, 日本海盆 に珪藻堆積物が堆積 して
( Ka n
o, 1 97 9; I i j i maandTa da,1 9 81; Fukus awa,1 9 8 9 )
,これ が 日本の主要 な石油根源岩 となった.7Ma
になる と,東北 日本や北海道東部 は弱 いなが らも圧縮応力場 に変 わ り始め,陸化 し始め る( Sat oandAma n
o,1 9 91 ) .
日本列 島の火 山フロン トの位 置 (鹿野ほか,1 9 91 )
や,東北 日本 におけ る火山岩の島弧横断方向での化学組成の系統的変化 (富樫,1 9 8 3; Ta mur aandShut
o,1 9 8 9; Shut o andYas hi ma
,1 9 9 0)
も現在 とほぼ同 じになる.7Ma
以降,圧縮 されて (鹿野ほか,1 9 91 )
またはマ グマの上昇 によって (佐藤,1 9 9 2)
隆起 し始めた 北海道東部や東北 日本 の火 山フロン ト沿 いでは, カルデ ラを形成 しなが ら,大規模 な珪長質火砕流 が繰 り返 し噴出 し,陸源物質 とともに周辺の堆積盆 に流入 し,それ らを埋積 した (伊藤 ほか,1 9 8 9) .
フォ ッサマ グナ で も現在 に至 るまで珪長質 火成 活動 が活発 で,各地 に花 尚岩類 が送 入 して い る( Ha r ayama, 1 9 9 2
な ど).東北地方に点在す る湖成層は当時のカルデ ラを埋積 した もので,中国地方 の三朝層群や照来層群 も火 山性の湖盆 を埋積 した内陸の地層群 と考 え られ る.しか し, 当時の中国地方は火 山フロン トが不 明瞭で, アルカ リ岩が カル クアルカ リ岩 と共存 しつ つ噴出 した
( Ut
o,1 9 8 9 ) .
これに対 し,九州か ら南西諸島にかけては火 山フロン トが明瞭に現れ,そ の背後 にある豊肥 な どでは リフ トが形成 され る( Ka mat a,1 9 8 9) .
その延長上 にあ る沖縄 トラフ もこ の頃か ら沈降 し始めた らし く(木村,1 99 0 )
,後期 中新世 一鮮新世 の堆積物が中期 中新世及びそれ以 前の火 山岩や堆積岩 を不整合 に覆 って地溝状 に分布す る. これに呼応す るかの ように,沖縄本 島 と 久米 島 との間にあ る奥武 (オウ)島では6Ma
頃に高マ グネ シア安 山岩が噴 出 してい る(新城 ほか,1 9 91 )
.また,その前の1 0Ma
頃に石垣 島では古銅輝石安 山岩が噴出 してい る(新城 ほか,1 9 91 ) .
こ の安 山岩の磁化方位 を測定 したMi ki e t
al.(1990)は,南西諸島が1 0Ma
以降に時計廻 りに回転 して い るこ とを示唆 してい る.南西諸 島火 山弧の海溝側 では,
1 0Ma
頃か ら東海地方の相 良層群一掛川層群や九州 の宮崎層群 と 時 を同 じくして,海成の島尻層群が堆積 してい る. これ らの地層群 は,沈降 または海溝側 に傾動する前弧斜面 に堆積 した と考 えられ る(杉 山
,1 9 9 2 ) .
同 じ頃,丹沢 山塊 と本州 との間は トラフ状 にな り, そこに浅海堆積物 に連続す るター ビダイ ト,深海泥岩 な どか らなる愛川層群,富士川層群が堆積 し(
Ⅰ t oandMas uda,1 9 8 6;So
b,1 9 8 6 ) ,7Ma
を過 ぎる頃には丹沢 山塊が本州 に付加 した( Ni i t ‑ s umaandAki ba
,19 8 5 ) .
7Ma
以降,特 に3Ma
以降の東北 日本 の短縮 は 日本海側 で極 めて大 き く(佐藤,1 9 8 9)
,島弧 に沿 っ て摺曲,逆断層が形成 され,堆積盆が分 断,縮小 された.一方,太平洋側 では殆 ど変形 されなか っ たために,仙台層群 な ど海水準の上昇 に よって生 じた浅海堆積物が堆積 してお り, そこには汎世界 的な海水準変動 に対応 して,7Ma,4Ma
,そ して2 ‑ 3Ma
に広域的 な不整合 が認め られ る(柳 沢ほ か,1 9 8 9 )
.これは,東北 日本が太平洋プ レー トの沈み込み速度の増大 に伴 って島弧 に直交す る方向 にバ ック リング し,圧縮応力が 日本海側 に集 中 したため らしい (大槻,1 9 8 6) .
西南 日本 では
,5 ‑ 4Ma
頃か ら最大圧縮主応力の向 きが次第に北か ら西に回転 し始め,中央構造線 の右横 ずれ運動が始 まる.東海地方の前弧 では適し字型の背斜 とそれ らに囲 まれた堆積盆が, 中央 構造線の背後には逆断層で境 された盆地が初めに生 じ, その後同様 の堆積盆が西側 に も次々 と生ず る(杉 山,1 9 9 2;
吉 田,1 9 9 2 ) .
この ような動 きに同調 して, 日本海沿岸 で も,傾動盆地が形成 され た (山本,1 9 9 2 ) .
北進 していたフィ リピンプ レー トが西側 に向 きを変 えた( Se nムandMar uyama
,1 9 8 4)
のは,おそ ら くこの頃の こ とであろ う(杉 山,1 9 9 2 ) .
3Ma
を過 ぎる頃になると,加速度的に短縮が進み, 日本列 島は殆 ど隆起,陸化 し,逆断層,横ず れ断層に よってブロック化 した地塊の上昇,沈降,水平移動 に よ り各地 に山間盆地が生 まれ る. 冒 本海東縁 では著 しい断層変形によ り,中新世 に沈降 していた‑‑ フグラーベ ンが隆起 に転 じ(岡村 ほ か,1 9 9 2)
,奥尻海嶺 な どが生 じた.太平洋側 に比べ て 日本海東縁 での圧縮変形が著 しいのは,この 奥尻海嶺 を通 り, フォ ッサマ グナ‑続 く断層群 がユー ラシアプ レー トと北米プ レー トとの新 たな境 界になってそこでプ レー トが集束 しているため とい う考 え もある(中村,1 9 8 3 ) .
太平洋や 日本海沿 岸に残 されていた堆積盆 も急速 に浅海化 し,粗粒堆積物 に埋積 されていった.丹沢 山塊 とともに北 上 を続けていた伊豆半 島 も丹沢 山塊に引続 き本州 に衝突 し始め た らし く,丹沢 山塊 との間にあった 堆積盆 は,丹沢 山塊 な どか ら多量の砕屑物が供給 されて浅海化 してい る.2Ma
前後 になると,南関東や伊豆半島では,広域的不整合 が生 じ, その後,上総層群や"モラッ セ型"(Ito, 1 9 8 5 )
の足柄 層群が堆積 し,伊豆半島が本州 に付加 した.中央構造線の横ずれ とその周辺 の堆積盆 の形成 と移動 も明瞭 とな る.南西諸 島の背弧側 では後期 中新世か ら沈降が続 いていた沖縄 トラフの中に雁行す る正断層群 が現れ, リフティングが加速度的に進 んだ (木村,1 9 9 0 )
.現在 も沈 降 を続け る リフ トの中心域 では海底火 山活動や熱水活動が活発 で,熱水の噴出 口付近 には黒鉱 に似 た鉱石が沈澱 している( Hal bac h e t
al.,1 9 8 9 ) .
以上 の議論 では,伊豆小笠原弧 につ いて殆 ど触れなか った.伊豆小笠原弧の大部分 は現在 も海面 下にあって,地史 を議論す る上 で必要 なデー タが十分 に得 られ ないためである. しか し,伊豆半 島 な どで得 られ る陸上 の地質 デー タに
,OD
P掘削デー タ及び海域 の音波探査 デー タな どを加 えて検討してみ ると, 日本列 島主部 に似 た地史 をた どったことが うかが える.
伊豆小笠原弧 は,か って大東海嶺 と一体 の島弧 であったが
,3 0Ma
か ら1 7Ma
にかけて起 こった 四国海盆の拡大( Kl e i nandKobayas hi ,1 9 8 0 )
に ともなって大東海嶺 と分かれた と考 え られてい る( Se noa ndMa r uyama,1 9 8 4 ) .
伊豆諸 島の前弧域 のODP
掘削デー タをみ ると( Ta yl o re tal . ,1 9 9 0 )
,3 0Ma
頃か ら混濁流堆積物が堆積 し始め,2 2Ma
頃になると泥岩が堆積す るようになる.その堆積 速度は極めて小 さ く,1 7Ma
頃には無堆積 に近 くなる.混濁流堆積物の堆積 は,四国海盆が拡大す るにつれて,伊豆小笠原弧が隆起 し,削刺 されて,陸源物質が前弧盆 に もた らされたこ とを示唆す る. その後のゆ るやかな堆積 は, 島弧が削刺 されて海面下 に没 したことを意味す るものか もしれな い. この後 も堆積速度の小 さい状態は続 き,1 5Ma,7 ‑ 5Ma
,そ して2 ‑ 1Ma
頃には不整合が現れ る.伊豆半 島では,2 0Ma
あるいはそれ以前か ら現在 まで火 山噴出物が堆積 し続けてお り,伊豆小 笠原弧が長期 にわたって火 山弧 であったこ とを物語 っている. それ らの噴出環境 をみ ると,1 5Ma
以前は半深海,1 5 ‑ 3Ma
は浅海,そ して2 ‑ 1Ma
以降は殆 ど陸上 である.しか も,1 5 ‑ 1 2Ma
と2 ‑ 1Ma
にや は り不整合が認め られ る(鹿野ほか,1 9 9 1 ) .
共通 して認め られ るこれ らの不整合 は, フィ リピ ンプ レー トが西南 日本 に衝突 し始め る時期, フィ リピンプ レー トが進行方向 を西向 きに変 え始めた 時期,そ して背弧側 にス ミス リフ トな どの リフ トが形成 され始め る時期( Ta yl o re tal . ,1 9 9 0, 1 9 91;
西村 ・湯浅,
1 9 91;Kl a use tal .
,1 9 9 2 )
にそれぞれ対応 してい る.伊豆小笠原弧の背弧 リフ トは沖縄 トラフ と同様,玄武岩一玄武岩質安 山岩 とデ イサ イ ト 流紋岩が 噴出 し,熱水活動 に よって金属 元素が沈澱 してお り,現在 も活発 に沈降 を続けているらしい (西村 ・ 湯浅
,1 9 91 ) .
急速 な沈降,玄武岩一玄武岩質安 山岩 とデイサ イ トー流紋岩の噴出す なわち,バ イモー ダル火 山活動 (今 田,1 9 7 4 )
の存在,熱水活動 に よる金属元素 の沈澱 は,1 6 ‑ 1 5Ma
頃か ら1 4 ‑ 1 3Ma
ころまで続 く東北 日本 の状況 と似 てい る(藤 岡,1 9 8 3
).現在 も活動 している伊豆小笠原弧のス ミスリフ トや沖縄 トラフに関す る研究は, 日本海の よ うな背弧盆の形成 を解 く鍵 になるか どうか,注 目 され るところである.
おわ りに
これ まで, 日本列 島が大陸か ら離れて現在 の位 置 まで移動 して きたこ とを踏 まえ, その変遷 につ いて述べ た.
1 9 7 0
年代 にプ レー トテ ク トニ クスの枠組みの中で語 られ始めた 日本列 島誕生 に関す る 議論( Ma t s udaandUye da
,1 9 7 1;Uye daandMi yas hi r o
,1 9 7 4
な ど)は,様々 な仮説 を生み,関 連す る分 野の研究 を啓発 し押 し進めた.地質学の分野において も古地理や テ ク トニ クスに関す る議 論が展開 されて きたが,最近 では,詳 しい地質学的資料 の積 み重ね もあって (北村,1 9 8 6
;北村ほか,1 9 8 9
;鹿野ほか,1 9 9 1
;小林 ほか,1 9 9 2
な ど),これに関連 した議論( Ta i r ae tal . 1 9 8 9;
平,1 9 9 0;
Chi j ie tal
,,1 9 9 0;
鹿野ほか,1 9 9 1;Sa t oandAma no
,1 9 91;
飯 島,1 9 9 2;
佐藤,1 9 9 2
な ど)は収 赦 しつつ あるかの ように見 える. ここで述べ た内容 も, 日本列 島が現在 の位 置に到達 し, ほぼ現在 の骨格が形成 された1 5Ma
以降の変遷 については,大筋において最近 の議論 と大差 ない. しか し, 日本海の拡大前 につ いては,デー タの質 と量が格段 に落 ちるため, その変遷 を具体 的に描 くこ とは 難 しい.細野( 1 9 9 2 )
が まとめているように議論が絶 えないのはそのためで もある.新妻ほか( 1 9 8 5 )
らが試みているように, 日本海拡大前の 日本列 島の位 置 と形 につ いては,現在の ところ明確 に示す こ とは難 しい.ましてや 日本海拡大の様式や原因については何 ら具体的に解 きあか されてはいない.
最近 では, 日本海拡大 に伴 うリフティングが議論 され,拡大 の原因 として熱 いアセ ノスフェアの上
昇がいわれている(例 えば,
Ta t s umig fα
7. ,1 9 9 0 ) .
この ような説 を否定す るにせ よ肯定す るにせ よ,事実 に即 した具体的な研究が待 たれ る.本論 は,
1 9 9 2
年1 0
月に行 われた,北陸地質研究所主催 の シンポジウム 「日本海 と日本列 島一 形成 史の諸問題」 での講演 をまとめた ものである.本論 ではシンポジウム を機会 に, その後得 られた知 見 を加 えて,これ を修正 し,筆者 な りの解釈 を若干加 えているものの,その骨子は,鹿野ほか( 1 9 9 1 )
が まとめた 「日本の新生界層序 と地史」 によるものである.文 献
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Kane oka
,I.,Haya s hi ,H. ,I wa guc hi ,T
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Ka ne oka
,Ⅰ.,No t s u,K
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,I.,Taki gami
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,N
"Ya ma s hi t a,S.a ndTa maki
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139Ar
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