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― ― ― ― 教育行政の姿勢の検討 知的障害児に対する性教育に関する

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【要旨】

 本論では知的障害児への性教育に焦点を絞り,①文科省の性教育に対する姿勢を改訂され た特別支援学校学習指導要領から探る,②東京都教育委員会の「性教育の手引」で,障害児 への性教育がどう構想されているのかを探る,③東京都教育委員会が構想する知的障害児へ の性教育の内容を検討する,という検証作業を行った。結果,①文科省の性教育に対する姿 勢には2005年以降大きな変化はなく,文科省の姿勢はいわば足踏み状態だと指摘した。②2019 年手引は,文言自体は積極的な姿勢を示しているが実際の場面では前進ではなく停滞させる ものになっているのではないかと指摘した。最後に,③知的障害特別支援学校において性教 育の時間を多く取ることは難しく,特別活動を重点に性教育を展開していくことには困難が 伴うが,一方で特別活動の内容を積極的に使えば,知的障害児への性教育を深めていく可能 性があることを指摘した。

はじめに

 文部科学省(以下,文科省)は,2017年 3 月に小学校及び中学校学習指導要領を,2018年 3 月に高等学校学習指導要領を告示した。また,特別支援学校については,2017年 4 月に小 学部・中学部,2019年 4 月には高等部の学習指導要領を告示した。

 今回の学習指導要領の改訂は,前回の改訂(小学校・中学校は2008年 3 月告示,高等学校 は2009年 3 月告示,特別支援学校小学部・中学部・高等部は2009年 3 月告示)から約10年振 りのことである。

 2006年12月に教育基本法が改定されたが,学習指導要領の改訂作業のスケジュールからす

*立正大学社会福祉学部社会福祉学科

キーワード:性教育,学習指導要領,東京都教育委員会,性教育の手引

知的障害児に対する性教育に関する 教育行政の姿勢の検討

―東京都教育委員会「性教育の手引」の検討を中心に―

Examination of Attitude of Educational Administration on Sexuality Education for Children with Intellectual Disabilities

―Tokyo Metropolitan Board of Education Focusing on Examining

Guide to Sexuality Education

”―

児嶋 芳郎

Yoshio Kojima

〈原著論文〉

(2)

ると,前回の改訂は改定教育基本法の意図を十分に盛り込んだものとは考えにくく,今回改 訂された学習指導要領が,改訂教育基本法の方向性を本格的に具現化することになる初めて のものであると考えても差し支えない。

 また,2007年の学校教育法の改定によって,従来の特殊教育は特別支援教育へと変更され た。前回の特別支援学校学習指導要領が2009年に告示されたことを想起すれば,今回の特別 支援学校学習指導要領は,特別支援教育制度の方向性を本格的に具現化する初めてのもので あると考えられる。

 現在は新学習指導要領への移行期間中であり,小学校は2020年度,中学校は2021年度,高 等学校は2022年度,特別支援学校は小・中・高等学校の学習指導要領に合わせて完全実施さ れる。今回の各学習指導要領は,上述のような大きな改訂の背景をもっているものであり,

その内容を精査する必要がある。

 そういった中で,一つ注目しなければならないのが性教育についてである。

 文科省は2013年 4 月から12月にかけて全国の国公私立の小学校,中学校,高等学校,中等 教育学校及び特別支援学校の小・中・高等部を対象に,「学校における性同一性障害に係る対 応に関する現状把握を行い,全体的な状況及び配慮の具体的内容など,学校における性同一 性障害に係る対応を充実させるための情報を得ることを目的とする」状況調査を行い,2014 年 6 月に調査結果を報告している(文部科学省,2014)。この結果を受け,2015年 4 月30日に は,「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について(教職員向け)」

(文部科学省,2015)を通知している。

 このように,学校教育において性同一性障害の児童生徒に対する対応の充実を志向してい

たにも関わらず,文科省は今回の学習指導要領の改訂においては,いわゆる LGBT と称され

る性的マイノリティの人々について取り上げないことを決定している。西村智奈美衆議院議

員は,「学習指導要領改訂に際して「思春期になると異性への関心が芽生える」と記載して

LGBT について記載されなかったことに関する質問主意書」(2017年 4 月 4 日提出)におい

て,「性的指向・性自認に係るいじめ等の問題が深刻な現在であるにもかかわらず,小中学校

の学習指導要領の改定案では,小学校三,四年生の体育教科で「思春期になると異性への関

心が芽生える」,中学の保健体育では「身体の機能の成熟とともに異性への関心が高まったり

する」との記述にとどまり,パブコメに寄せられた「LGBT などの子どもたちが教室にいる

という実情を反映した内容にしてほしい」という意見が取り入れられず LGBT について記述

されなかった理由は何か」と問い,これに対して安倍晋三内閣総理大臣は「「性的マイノリ

ティについて規定……すべき」等の意見に対して,「体育科,保健体育科で……いわゆる「性

的マイノリティ」について指導内容として扱うことは,個々の児童生徒の発達の段階に応じ

た指導,保護者や国民の理解,教員の適切な指導の確保などを考慮すると難しいと考えてい

ます」と回答しているとおりである」との答弁書を提出している。一方で,文科省の検定に

合格し,2017年度から使用されている高校の家庭総合・家庭基礎の教科書には LGBT につい

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て記載されるようになっており,他にも2019年度から中学校で使用されている「特別の教科 道徳」の教科書や,2020年度より小学校で使用される体育の教科書にも LGBT に関する記載 があるなど,文科省の姿勢には揺らぎがある。またこれは,上述の文科省の性的マイノリティ の子どもたちへの対応を充実させていくという姿勢とも矛盾するものであり,このような中 で行われる学校現場における性教育に対して危惧を覚える。

 東京都教育委員会は,今回の学習指導要領の改訂を受けて,「性教育の手引」(東京都教育 委員会,2019)を改訂し,その契機として「平成29年小・中学校,平成30年高等学校学習指 導要領改訂の機会を捉え,その趣旨を踏まえるとともに,現代的な課題にも対応できるよう,

平成16・17年に発行した「性教育の手引」を改訂することとしました」と述べている。また,

東京都教育委員会が以前に発行した「性教育の手引」について児嶋(2012)は,「東京都教育 委員会は1972年よりこれまで「性教育の手引」を発行し続け,それぞれで障害児の性教育に ついても施策を示してきている。これは,他の道府県には見られないことである。東京都教 育委員会の動向は一自治体のもので,限定的であることは否めないが,これまで40年弱にわ たって定期的に示され,しかも障害児に関しても言及してきていることから,障害児の性教 育に関する教育行政の動向をとらえる際の一つの有益な資料であると考えることができる」

と述べている。

 以上より,改訂された東京都教育委員会の「性教育の手引」は,文科省の性教育に対する 姿勢の具体化の一つの姿であり,またそれは障害児への性教育にも言及することができる。

それゆえ,東京都教育委員会の「性教育の手引」を分析することで,障害児の性教育に関す る教育行政の動向をとらえることにもつながるといえるであろう。

 上述のような状況を踏まえ,本論では特に知的障害児への性教育に焦点を絞り,①文科省 の性教育に対する姿勢を,改訂された特別支援学校学習指導要領などを通して探る,②東京 都教育委員会の「性教育の手引」で,障害児への性教育がどう構想されているのかを探る,

③東京都教育委員会が構想する知的障害児への性教育の内容を検討する,という検証作業を 行っていく。

 渡辺(2019)は「2003年に起こった七生養護学校(当時)での「こころとからだの学習」

に対する都議会議員からの批判,それを踏まえての都教委による教職員の処分等をうけて,

「こころとからだの学習」を「不適切な性教育」と位置づけた(中略)東京都のことが発端に

なり,全国の性教育実践が下火になってしまった」と指摘している。本論の目的は,改訂さ

れた教育基本法や学校基本法,それらの具現化の一つである学習指導要領における性教育に

関する政策の動向を探ることである。上述の検証作業は,この本論の目的を達成するために

必要なものであり,教育行政の政策の背景を的確に把握し,今後の知的障害児への性教育を

教育行政の政策に対応しつつ,創造的な実践を展開していく方向性を探ることにつながると

考える。そして,そのことは全国の性教育実践を活発にする一助となるであろう。

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1 .学習指導要領等から見る文科省の性教育への姿勢

⑴ 文部省・文科省の姿勢

 まず,教育行政の政策の動向や背景を探っていく。

 これまで文部省・文科省が性教育に対する姿勢を示した文書はいくつかあるが,体系的に まとめた最新のものは,1999年 3 月に発行した『学校における性教育の考え方,進め方』(以 下,『考え方,進め方』)である。

 『考え方,進め方』の「まえがき」では,「児童,生徒及び幼児(以下,「児童生徒等」とい う)は,成長の過程で,性に関する多くの課題に直面し,それに対する意志決定や行動選択 を求められます。また,児童生徒等の体格が向上するとともに性的な成熟が早まっている一 方,性に関する情報や産業が氾濫するなど児童生徒等を取り巻く社会環境は,大きく変化し ています。このような状況の中,性の逸脱行動などが問題となっており,学校における性教 育の重要性が強調されています」と,当時の子どもたちを取り巻く状況についてまとめ,「学 校における性教育は,児童生徒等の発達段階に応じ,学習指導要領に基づいて,体育科,保 健体育科,道徳,特別活動などを中心に学校の教育活動全体を通じて行われています。しか し,現在,性に関する科学的知識を与えるとともに,人権尊重の精神に基づいて児童生徒等 が健全な異性観を持ち,これに基づいた望ましい行動を身に付けさせるようにすることなど を重点に,学校,家庭,地域が実態に応じて,性教育を組織的かつ系統的に展開することが 求められています」と述べている。

 『考え方,進め方』は,1998年に改訂された小学校・中学校学習指導要領に「総合的な学習 の時間」が新設され,その課題選択例として「福祉・健康」が挙げられ,ここで性教育を位 置づけていくという機運が学校現場で高まった中で,文部省(当時)の性教育に対する姿勢 を明確にしておくために発行されたものと言えるであろう。しかし,1998年告示の学習指導 要領が完全実施された直後,2003年には上述の東京都立七生養護学校(当時)で実践されて いた性教育(「こころとからだの学習」)への東京都教育委員会などによる「不当な介入」に 端を発する性教育バッシングが起こる。2003年 7 月14日の衆議院決算行政監視委員会及び同 年 7 月18日の衆議院予算委員会で,山谷えり子衆議院議員(当時)は「過激な性教育」が全 国で行われていると質問し,小泉純一郎総理大臣(当時)は,「私,小学校時代も中学校時代 も性教育なんて受けたおぼえがありませんねえ。しかし,こういうのは自然とおぼえていく もので,ここまでやっていいものなのかな」と答弁している。

 これらを受け,文科省は2005年 4 月から 7 月にかけて「義務教育諸学校における性教育の

実態調査」を実施した。文科省は「最近,児童生徒の発達段階や受容能力等を踏まえていな

い性教育が実施されている学校があると指摘されて」いるために,「公立義務教育諸学校にお

ける性教育の取り組みの実態を把握する」目的で,「義務教育諸学校における性教育の実態調

査」を行ったと述べている。そして,中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会は「健

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やかな体を育む教育の在り方に関する専門部会」(以下,専門部会)を設置し,専門部会は

「義務教育諸学校における性教育の実態調査」の結果などを基に検討を行っていった。

 専門部会は2005年 7 月に「健やかな体を育む教育の在り方に関する専門部会これまでの審 議の状況―すべての子どもたちが身に付けているべきミニマムとは?―」を報告した。その

「 4 .その他―健やかな体を育む教育という観点から,今後,学校教育活動全体で取り組むべ き課題について―」では「⑴ 性教育について」が報告されている。

 まず専門部会は,「学校における性教育は,これまで,体育,保健体育をはじめとする関係 教科で指導されてきたが,現在,性教育について様々な考え方が論じられている状況がある。

このような状況を踏まえ,本専門部会では,性教育の在り方,教科における性教育に関する 指導内容の体系化等について」審議を行い,「 1 .性教育として求められる内容について」,

「我が国では,性に関しては様々な価値観の相違があり,性教育についても様々な考え方があ るが,学校における性教育として求められる内容は何かということについては共通理解を図っ て議論すべきである」という意見が出され,「学校における性教育については,子どもたちは 社会的責任を十分にはとれない存在であり,また,性感染症等を防ぐという観点からも,子 どもたちの性行為については適切ではないという基本的スタンスに立って,指導内容を検討 していくべきである」として,「性教育を行う場合に,人間関係についての理解やコミュニ ケーション能力を前提とすべきであり,その理解の上に性教育が行われるべきものであって,

安易な具体的な避妊方法の指導等に走るべきではない」ということについて概ねの意見の一 致をみたとしている。合わせて,「心身の機能の発達に関する理解や性感染症等の予防の知識 などの科学的知識を理解させること,理性により行動を制御する力を養うこと,自分や他者 の価値を尊重し相手を思いやる心を醸成することなどが重要である」,「性教育においては,

集団で一律に指導(集団指導)する内容と,個々の児童生徒の抱える問題に応じ個別に指導

(個別指導)する内容の区別を明確にして実施すべきであり,学習指導要領に関する検討に当 たっては,特に集団指導の内容について議論すべきである」という点で意見の一致をみたと している。

 「 2 .それぞれの教科等における性教育に関する指導内容について」では,「性教育は,体

育,保健体育のみならず,道徳や特別活動など,学校教育活動全体を通じて取り組むことが

重要であり,それぞれの教科等の役割分担をより明確にした上で,連携して取り組む必要が

ある」という意見が出されたとしている。また,「発達段階などを考慮しないまま特別活動な

どで教えられて問題となっていることから,保健,道徳,特別活動等の役割分担とそれぞれ

の指導内容を明確化すべき」であり,具体的には「身体の成長や性感染症等の科学的知識に

ついては保健で扱い,性に関する倫理的な面や人間関係の重要性などについては,道徳や特

別活動できちんと教えるべきではないか」という意見が出されたとしている。そして,「学校

における性教育においては,児童生徒の発達段階を踏まえて指導を行うことが極めて重要で

あり,それぞれの教科等における性教育に関する指導内容について,児童生徒の発達段階を

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踏まえたものとなっているかといった観点から体系化を図る必要があるのではないか」とい う意見が出されたとしている。

 「 3 .指導計画の作成等に当たっての留意点等について」では,「具体例」として,「教職員 の共通理解を図るとともに,児童生徒の発達段階(受容能力)を十分考慮することが重要で あること」「家庭,地域との連携を推進し,保護者や地域の理解を十分に得ることが重要であ ること」「集団指導の内容と,個別指導の内容の区別を明確にすること」の 3 点が挙げられて いる。

 この報告以後,文科省が性教育に対する見解を表明した文書は,文科省のホームページ等 を検索しても見つけることができず,これがこれまで続く文科省の性教育に対する姿勢であ るとみることができる。それは,専門部会の報告の主要な論点が今回改訂された学習指導要 領においても継承されていることからも示唆される(詳細は後述)。

 文科省のこの姿勢を見ておくことは,学習指導要領での性教育の位置づけを把握するため には必要な作業である。

⑵ 学習指導要領での位置づけ 1 )知的障害児の性教育の内容の変遷

 まず,2009年告示までの特別支援学校学習指導要領で示されている知的障害児の性教育の 内容の変遷を見てみる。

 児嶋(2012)は,「1962年学習指導要領においては,小学部の体育の保健の内容に「身体の 清潔」に関することが示されていた。また,高学年では「保健に関する初歩的知識をもたせ るようにする」ことが示されていたが,この「保健に関する初歩的な」という部分は,1970 年学習指導要領以後,中学部の理科の内容として示されるようになるとともに,小学部の体 育においては,性教育に関する内容がなくなっている」と指摘し,「1970年学習指導要領以降 は,2009年学習指導要領に至るまで若干の文言の変化やそれぞれの解説における言及の変化 はあるものの,性教育に関する内容が,小学部の生活,中学部の理科,保健体育,職業・家 庭,高等部の理科,保健体育,家庭に位置づけられるという,大枠は変化していない」と述 べている。合わせて,「内容としては,小学部の生活では,女子の月経時の処置を含め身体を 清潔に保つという,身辺処理の能力を獲得させることが示されている。また,中学部および 高等部の理科では,人体のしくみを理解させること,中学部および高等部の保健体育には,

第二次性徴や体の発育に関心をもち,体の各部の働きを知ること,中学部の職業・家庭およ び高等部の家庭には,家庭内における家族の役割などを理解することが示されている。特に 高等部では結婚や妊娠,出産,育児に関する基礎的な理解を獲得することが示されている」

と述べ,それが「1962年学習指導要領が告示されて以来,約半世紀が経っているにも関わら

ず,大枠として変化がない」としている。

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2 )改訂学習指導要領で性教育はどう示されているか

 まず,2017年及び2018年に改訂された小学校及び中学校,高等学習指導要領,2017年及び 2019年に改訂された特別支援学校小学部・中学部学習指導要領及び特別支援学校高等部学習 指導要領には,性教育に関する内容がどのように示されているのかを見ておきたい。それぞ れの学習指導要領の「第 1 章 総則 第 1 の 2 ⑶」(特別支援学校の場合には,小・中学部は

「第 1 章 総則 第 2 の 2 ⑶」,高等部は「第 1 章 総則 第 2 節第 1 款 2 ⑶」)には,「学校 における体育・健康に関する指導を,児童(中学校,高等学校においては生徒―筆者注。以 下,児童との表記は同様)の発達の段階を考慮して,学校の教育活動全体を通じて適切に行 うことにより,健康で安全な生活と豊かなスポーツライフの実現を目指した教育の充実に努 めること。特に,(中略)心身の健康の保持増進に関する指導については,体育科,家庭科及 び特別活動の時間はもとより,各教科,道徳科,外国語活動及び総合的な学習の時間などに おいてもそれぞれの特質に応じて適切に行うよう努めること。また,それらの指導を通して,

家庭や地域社会との連携を図りながら,日常生活において適切な体育・健康に関する活動の 実践を促し,生涯を通じて健康・安全で活力ある生活を送るための基礎が培われるよう配慮 すること」と示されている(特別支援学校の場合には,知的障害特別支援学校での教科名が 入るという若干の変更がある―筆者注)。

 合わせて,2018年小学校学習指導要領解説の「総則編」には,「心身の健康の保持増進に関 する指導においては,情報化社会の進展により,様々な健康情報や性・薬物等に関する情報 の入手が容易になっていることなどから,児童が適切に行動できるようにする指導が一層重 視されなければならない。なお,児童が心身の成長発達に関して適切に理解し,行動するこ とができるようにする指導に当たっては,(中略)主に集団の場面で必要な指導や援助を行う ガイダンスと一人一人が抱える課題に個別に対応した指導を行うカウンセリングの双方の観 点から,学校の教育活動全体で共通理解を図り,家庭の理科を得ることに配慮するとともに,

関連する教科等において,発達の段階を考慮して,指導することが重要である」と示されて いる。なお,これは中学校及び高等学校,特別支援学校小・中・高等部においても,同様に 示されている。

 上述の記述は,2008年小学校学習指導要領及び2008年中学校学習指導要領,2009年高等学 校学習指導要領から変化がない。そして,これらの記述は上述した専門部会の2005年の報告 との変化もない。

 なお,文科省は現在「性教育」を学習指導要領で示す教育課程に,単独で位置づけている のではなく,「学校における体育・健康に関する指導」の下位項目として「心身の健康の保持 増進に関する指導」という名称で位置づけている。「性教育」という用語は,使用していない のである。

3 )特別支援学校小学部学習指導要領等での位置づけ

 それでは,今回改訂された特別支援学校小学部・中学部学習指導要領及び特別支援学校学

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習指導要領解説各教科等編(小学部・中学部),特別支援学校高等部学習指導要領には,知的 障害児の性教育に関して,どのように示されているのかを見てみる。

 今回の特別支援学校学習指導要領の改訂では,「知的障害者である児童生徒に対する教育を 行う特別支援学校」での各教科の目標及び内容の記述が大幅に変更されている。それは大き くは,従前は各教科の内容が項目として列挙されていたにすぎなかったものが,内容につい て詳細に規定されている点,中学部の内容が 2 段階で示されるようになった点,内容の記述 のあとに「指導計画の作成と内容の取扱い」が示されるようになった点である。

 具体的に見ていくと,小学部の「生活」の内容には,「ア 基本的生活習慣」があり,1 段 階では,「食事や用便等の生活習慣に関わる初歩的な学習活動を通して,次の事項を身に付け ることができるよう指導する」とされ,「ア 簡単な身辺処理に気付き,教師と一緒に行おう とすること」「イ 簡単な身辺処理に関する初歩的な知識や技能を身に付けること」が示され ている。 2 段階では,「食事,用便,清潔等の基本的生活習慣に関わる学習活動を通して,次 の事項を身に付けることができるよう指導する」とされ,「ア 必要な身辺処理が分かり,身 近な生活に役立てようとすること」「イ 身近な生活に必要な身辺処理に関する基礎的な知識 や技能を身につけること」が示されている。 3 段階では,「身の回りの整理や身なりなどの基 本的生活習慣や日常生活に役立つことに関わる学習活動を通して,次の事項を身に付けるこ とができるよう指導する」とされ,「ア 必要な身辺処理や集団での基本的生活習慣が分か り,日常生活に役立てようとすること」「イ 日常生活に必要な身辺処理等に関する知識や技 能を身に付けること」が示されている。

 小学部「体育」の内容には,「G 保健」があり, 1 段階では,「健康な生活に必要な事柄 について,次の事項を身に付けることができるよう指導する」とされ,「ア 教師と一緒に,

うがいなどの健康な生活に必要な事柄をすること」「イ 健康な生活に必要な事柄に気付き,

教師に伝えること」が示されている。 2 段階では,「ア 教師の支援を受けながら,健康な生 活に必要な事柄をすること」「イ 健康な生活に必要な事柄に慣れ,感じたことを他者に伝え ること」が,3 段階では,「ア 健康や身体の変化について知り,健康な生活に必要な事柄に 関する基本的な知識や技能を身に付けること」「イ 健康な生活に必要な事柄について工夫す るとともに,考えたことや気付いたことなどを他者に伝えること」が示されている。

 2018年 3 月に出された特別支援学校学習指導要領解説各教科等編の「第 4 章 知的障害者 である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校の各教科」では,小学部の体育の領域とし て示されている「G 保健」について,「保健領域は,従前生活科で取り扱っていた「健康・

安全」のうち「健康管理」について,体育科の保健として扱うこととし,新設された領域で

ある」と述べ,「月経の指導について,個別指導を基本とするが,開始の時期や期間中の様子

などに個人差があるので,各段階とも家庭等の協力を得て,生理用品一式を用意しておくと

ともに,不安感をもたないで初経を迎えられるようにすることが大切である。処置について

は生活科の用便,清潔,身なりの指導と関連させながら,初期の段階で個別に指導する必要

(9)

がある。また,児童が,月経時に自分から女性教師に声をかけるよう指導することも大切で ある」と示している。この記述は,2009年特別支援学校学習指導要領解説とまったく同じで あり,変更はない。

4 )特別支援学校中学部学習指導要領等での位置づけ

 中学部「理科」の内容には「A 生命」があり, 2 段階では,「ア 人の体のつくりと運 動」で,「人や他の動物について,骨や筋肉のつくりと働きに着目して,それらを関係付けて 調べる活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する」として,「ア 次の ことを理解するとともに,観察,実験などに関する初歩的な技能を身に付けること」に,「㋐ 

人の体には骨と筋肉があること」「㋑ 人が体を動かすことができるのは,骨,筋肉の働きに よること」を,「イ 人や他の動物の骨や筋肉のつくりと働きについて調べる中で,見いだし た疑問について,既習の内容や生活経験を基に予想し,表現すること」が示されている。

 「保健体育」の内容には,「H 保健」があり,「健康・安全に関する事項について,次の事 項を身につけることができるよう指導する」として,1 段階では,「ア 体の発育・発達やけ がの防止,病気の予防などの仕方が分かり,基本的な知識及び技能を身に付けること」「イ  自分の健康・安全についての課題を見付け,その解決のための活動を考えたり,工夫したり したことを他者に伝えること」が,2 段階では,「ア 体の発育・発達やけがの防止,病気の 予防などの仕方について理解し,基本的な技能を身に付けること」「イ 自分やグループの健 康・安全についての課題を見付け,その解決のために友達と考えたり,工夫したりしたこと を他者に伝えること」が示されている。

 「職業・家庭」の内容には,「家庭分野」に「A 家族・家庭生活」があり, 1 段階では,

「ア 自分の成長と家族」「イ 家庭生活と役割」「ウ 家庭生活における余暇」「エ 幼児の 生活と家族」が,2 段階では,「ア 自分の成長と家族」「イ 家庭生活と役割」「ウ 家庭生 活における余暇」「エ 家族や地域の人々との関わり」が示されている。

 2018年 3 月に出された特別支援学校学習指導要領解説各教科等編の「第 4 章 知的障害者 である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校の各教科」では,中学部の「保健体育」の

「保健」領域について,「保健領域の学習指導では,家庭等との連携を密にしながら,生涯に

わたって活用できる能力や態度を育てることが大切である。また,小学部の保健領域の内容

とともに生活科における「基本的生活習慣」や「安全」の指導を踏まえ,家庭科の指導内容

と関連付けながら,指導する必要がある。そのためには,一人一人の生徒の知的障害の状態

等を踏まえ,身体的成熟や心理的な発達に合わせて,女子の初経や月経の処置等に関する指

導や男子の精通への対応など,性に関する指導を行う必要も考えられる」と示している。こ

れは,2009年特別支援学校学習指導要領解説には,「中学部の段階では,身体測定の結果や性

徴を通して体の発育に関心をもち,身体各部の働きを知ったり(中略)健康な生活に必要な

習慣や態度を身に付けることが大切である」としていたことに比べて,二次性徴に関する視

点が弱められていると考えられるであろう。

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5 )特別支援学校高等部学習指導要領での位置づけ

 2019年 2 月に告示された特別支援学校高等部学習指導要領の「理科」の内容には,「A 生 命」があり,1 段階の「イ 動物の誕生」では,「動物の発生や成長について,魚を育てたり 人の発生についての資料を活用したりする中で,卵や胎児の様子に着目して,時間の経過と 関係付けて調べる活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する」として,

「ア 次のことを理解するとともに,観察,実験などに関する初歩的な技能を身に付けるこ と」「㋐ 魚には雌雄があり,生まれた卵は日がたつにつれて中の様子が変化してかえるこ と」「㋑ 人は,母体内で成長して生まれること」,「イ 動物の発生や成長について調べる中 で,動物の発生や成長の様子と経過についての予想や仮説を基に,解決の方法を考え,表現 すること」が示されている。 2 段階の「ア 人の体のつくりと働き」では,「人や他の動物に ついて,体のつくりと呼吸,消化,排泄及び循環の働きに着目して,生命を維持する働きを 多面的に調べる活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する」として,

「ア 次のことを理解するとともに,観察,実験などに関する初歩的な技能を身に付けるこ と」が示され,「㋓ 体内には,生命活動を維持するための様々な臓器があること」と述べら れている。しかし,この項目について,「内容の取扱い」においては,「主な臓器として,肺,

胃,小腸,大腸,肝臓,腎臓,心臓を扱うこと」と制限をしており, 1 段階の「イ 動物の 誕生」の「㋑ 人は,母体内で成長して生まれること」とからめて考えれば矛盾が生じるよ うに感じる。

 「保健体育」の内容には,「I 保健」があり,「健康・安全に関する事項について,次の事 項を身に付けることができるよう指導する」として, 1 段階には,「ア 心身の発育・発達,

傷害の防止及び疾病の予防等を理解するとともに,健康で安全な個人生活を営むための技能 を身に付けること」「イ 健康・安全に関わる自他の課題を発見し,その解決のための方策を 工夫したり,仲間と考えたりしたことを他者に伝えること」が示されている。また, 2 段階 には,「ア 心身の発育・発達,傷害の防止及び疾病の予防等の理解を深めるとともに,健康 で安全な個人生活及び社会生活を営むための目的に応じた技能を身に付けること」「イ 健 康・安全に関わる自他の課題を発見し,よりよい解決のために仲間と思考し判断したことを,

目的な状況に応じて他者に伝えること」が示されている。

 「家庭」では,内容として「A 家族・家庭生活」があり, 1 段階, 2 段階ともに「ア 自 分の成長と家族」「イ 家庭生活での役割と地域との関わり」「ウ 家庭生活における健康管 理と余暇」「エ 乳幼児や高齢者などの生活」が示されている。

 なお,2019年特別支援学校高等部学習指導要領に対しては,2020年 3 月現在,解説が出さ れておらず,上述のように示されている内容の詳細について,解説の発行後にあらためて確 認しなければならないが,2009年特別支援学校高等部学習指導要領と内容の項目は大枠変化 がない。

 以上のように,学習指導要領における知的障害児への性教育の位置づけは,文科省の姿勢

(11)

が変化していないことと同様に,この間大きな変化がないことがわかった。

⑶ 文科省は足踏み状態

 上述をまとめると,第 1 に文科省の性教育に関する姿勢は,専門部会が2005年 7 月に出し た「健やかな体を育む教育の在り方に関する専門部会これまでの審議の状況―すべての子ど もたちが身に付けているべきミニマムとは?―」報告の姿勢を現在においても継続しており,

その具体的な内容は,今回改訂された各学習指導要領の解説において述べられている,「心身 の健康の保持増進に関する指導においては,情報化社会の進展により,様々な健康情報や性・

薬物等に関する情報の入手が容易になっていることなどから,児童が適切に行動できるよう にする指導が一層重視されなければならない。なお,児童が心身の成長発達に関して適切に 理解し,行動することができるようにする指導に当たっては,(中略)主に集団の場面で必要 な指導や援助を行うガイダンスと一人一人が抱える課題に個別に対応した指導を行うカウン セリングの双方の観点から,学校の教育活動全体で共通理解を図り,家庭の理解を得ること に配慮するとともに,関連する教科等において,発達の段階を考慮して,指導することが重 要である」といったものであることが明らかになった。

 第 2 に,1999年学習指導要領で使用されていた「性教育」という用語は,2009年学習指導 要領以降,「心身の健康の保持増進に関する指導」若しくは「性に関する指導」という用語に 置き換えられていることも明らかになった。

 第 3 に,現在文科省は,「性教育」を「学校における体育・健康に関する指導」の下位項目 として「学校における食育の推進並びに体力の向上に関する指導」「安全に関する指導」とと もに「心身の健康の保持増進に関する指導」として位置づけていることが明らかになった。

 第 4 に,2017年特別支援学校小学部・中学部学習指導要領,2019年特別支援学校学習指導 要領においても,文科省の性教育に関する姿勢には変化が見られないことが明らかになった。

 児嶋(2012)は,2009年特別支援学校学習指導要領における性教育の位置づけを,国際的 に認識されている「包括的な性教育」といった観点から捉えた場合,1999年学習指導要領か ら後退しているととらえている。文科省は上述のように,性同一性障害に対するいくつかの 取り組みを行い,積極的な姿勢を見せていたにも関わらず,性教育に関しては新たな姿勢を 見せず,学習指導要領の改訂においてもそれを継続している。

 以上より,今回の学習指導要領の改訂は,LGBT など性的マイノリティの人々を取り巻く 課題への認識が進んだことを一つの契機として,学校教育での性教育で新たな展開をするこ とができる可能性をもっていたにも関わらず,文科省はいわば足踏みの道を選択したと見る ことができるであろう。これが,現在の国の教育行政の姿勢である。

2 .東京都教育委員会「性教育の手引」の検討

 上述のように,国の教育行政の性教育に対する姿勢が変化していない中で,東京都教育委

(12)

員会はどういった姿勢をもち,どのような知的障害児への性教育を構想しているのかを,以 下で東京都教育委員会が発行している「性教育の手引」を手がかりに探っていく。

 東京都教育委員会は,2019年 3 月に「性教育の手引」を改訂した。それは「平成29年小・

中学校,平成30年高等学校学習指導要領改訂の機会を捉え,その趣旨を踏まえるとともに,

現代的な課題にも対応できるよう,平成16・17年に発行した「性教育の手引」を改訂するこ ととしました」(東京都教育委員会,2019)とあるように,直接的には今回の学習指導要領の 改訂に契機がある。そこでは,小・中・高のみに言及しているが,東京都教育委員会が今回 改訂した「性教育の手引」には,「第 5 章 実践編【特別支援学校】」が掲載されており,小・

中・高とともに,特別支援学校における性教育についても,新たな方向性が示されていると 考えられる。2007年の学校教育法の改正によりスタートした特別支援教育体制のもとで初め て改訂された「性教育の手引」であり,その内容を精査する必要がある。

⑴ 東京都教育委員会「性教育の手引」の変遷

 まずは,2019年に改訂された「性教育の手引」(以下,2019年手引)をとらえる視座をもつ ために,これまでの東京都教育委員会が発行してきた「性教育の手引」について,特に知的 障害児への性教育に対して言及している部分に注目して,その変遷をたどっている先行研究 を紹介したい。

 児嶋(2012)は,東京都教育委員会の「性教育の手引」の前回の改訂までを,「第 1 期:

1972年~1985年」「第 2 期:1986年~1994年」「第 3 期:1995年~2003年」「第 4 期2004年~」

と時期区分してその変遷をたどっている。

1 )第 1 期:1972年~1985年

 この時期,東京都教育委員会(1974)は,「心身障害教育」における性教育は,障害の種別 や程度などを考慮した場合に,指導上の微妙な問題を抱えているとともに,困難な事情があっ たことから,これまで取り上げてこなかったと述べているが,しかし障害児に対しても「発 達段階を十分に考慮した指導計画」を立てることで充実した指導を行うことが可能であり,

障害児に対する性教育は緊急を要する課題であるとの認識を示している。

 また,実際の指導上の観点として,①障害の種別と程度に即した指導を行うこと,②心身 の発達段階に即した指導を行うこと,③男女による性差を考慮した指導を行うこと,④さま ざまな指導形態や指導法を工夫すること,⑤学級担任教諭以外の教諭及び専門的な知識をも つ人の協力を得ること,⑥家庭との緊密な連けいをはかりながら指導を進めること,を挙げ ている。

2 )第 2 期:1986年~1994年

 この時期には,「性教育の手引(第 3 集)中学校・高等学校・養護学校編」(東京都教育委

員会,1988)が出されており,「養護学校編」の内容は,「精神薄弱養護学校」における性教

育に特化されている。そこでは性教育の目標として,①自分自身や身近な生き物の誕生,体

(13)

の成長について興味関心をもたせ,基本的事項を理解させるとともに,生命誕生に対する周 囲の人々の期待や喜びを知らせることを通して,生命の尊さを感じ取らせ,障害を克服する 意欲と態度を育てる,②男女の体のしくみや心のはたらきの違いについて知らせるとともに,

互いに助け合って生きていくことの大切さに気付かせ,相手の人格を尊重し合う態度を育て る,③家庭や社会での,男女の役割分担や協力の在り方等を知らせるとともに,自分自身の 将来の生活を考えさせ,就業,結婚,妊娠,出産について正しく理解させる,④性情報や性 被害などの性的事象を見つめさせるとともに,性衝動への対処の仕方や生理の手当の方法な ど具体的な知識・技能を身に付けさせ,健康で安全な生活を営む能力や態度を養う,が挙げ られている。

 また,「精神薄弱養護学校」の児童・生徒の性教育における発達課題は,原則的には障害を もたない児童・生徒と変わるものではない。しかし,その障害のために身辺処理の能力や判 断能力が十分に育たない場合や,知的理解が困難であったりするために,体の成長に見合っ た適切な行動や周囲の誤解を招くような行動をとってしまうことがある。これらを考慮し,

さらに児童・生徒の障害の実態に応じた適切な指導・援助を行う必要があるとしている。

 さらに,学習指導要領との関係について,「性教育の手引(第 4 集)総合編」(東京都教育 委員会,1989)では,性教育は学習指導要領に教育課程としては独自に位置づけられておら ず,教科・道徳の内容の中に性に関することが取り上げられているものの,それらは教科や 道徳の本来の目標を達成するためのものであり,性教育という観点で設定されたものではな いとしている。その上で,教科・道徳の授業だけでは不十分で,独自に性教育を系統的に指 導するための時間を設ける必要があると,学習指導要領の不十分さを指摘している。

3 )第 3 期:1995年~2003年

 東京都教育委員会は,1997年に「性教育の手引(盲・ろう・養護学校編)」(東京都教育委 員会,1997)を発行している。そこでは,障害児に対する性教育の目標として,①生命誕生 及び男女の体のしくみや発達の違いを理解し,社会から期待される役割があることや自己の 性に対する認識を深め,自らの性や障害を理解し,自己を大切にする心情や態度を育てるこ と,②男女は違いがあるが,一人ひとりが大切な存在であり互いに尊重し,認めあう心情や 態度を育てるとともに,発達段階に応じて,男女の人間関係や性行動に対する意志決定や行 動選択の能力や態度を育てること,③家庭や社会における男女の役割や責任,自己の将来の 生き方について考え,互いに助け合い,共に生きる社会の一員として必要な意欲や態度を育 てること,が挙げられている。また,具体的な指導項目・内容として「養護学校(知的発達 障害)」では,「性交と妊娠」「避妊の方法」「性感染症とその予防」「人口妊娠中絶と心身にお よぼす影響」などが示されている。

 ここで注目すべきは,東京都教育委員会の性教育に対する姿勢の変化をうかがうことがで

きることである。「第 2 期」までは,学習指導要領では不十分であり,性教育を独自に教育課

程へ位置づけなければならないとしていたが,「第 3 期」では学習指導要領に沿って内容の充

(14)

実を図るとしている。その後,東京都教育委員会は,教育庁指導部長名で東京都立学校長及 び市区町村教育委員会教育長に対して「学校における性教育の指導について(通知)」(東京 都教育委員会,2002)を出す。そこでは「学校における性教育の実施に当たり,児童・生徒 の発達段階を十分に踏まえない授業が行われている状況がある」として,「性教育は,学習指 導要領の各教科等のねらいや内容に基づいて,全体計画や年間指導計画を作成し,発達段階 に即して行われるよう配慮することが重要である」とあらためて学習指導要領を根拠とする ことを強調している。そして,2003年 5 月には「性教育に関する指導資料」(東京都教育委員 会,2003)を発行し,実践されている性教育の一部に,学習指導要領や児童・生徒の発達段 階を踏まえないような内容の授業や保護者との連携・協力が十分に図られていないなど,教 育活動上の課題が存在しており,是正する必要があると述べている。

4 )第 4 期:2004~

 上述のように,東京都教育委員会が性教育に対する姿勢を変化させる中で,2005年に「性 教育の手引(盲・ろう・養護学校編)」が改訂される。そこでは,障害のある児童・生徒への 性教育は,基本的には小・中・高等学校における性教育と同じであること,指導内容・方法 については,児童・生徒の障害の程度や発達段階および学習指導要領の趣旨などに基づき,

校長の権限と責任により,人間教育の一環として実施することが基本であり,社会や時代の 風潮に影響されない性道徳の涵養を骨格として,学習指導要領および児童・生徒の障害の程 度や発達段階に基づいて,適切な内容・方法の改善・工夫を行っていく必要があるとしてい る。

 また,障害児に対する性教育の目標は,基本的には小・中・高等学校と同じであるとしつ つ,それに加えて,児童・生徒の障害の状態や程度に応じて,障害を克服し,共に生きる社 会の一員としての自覚を高め,社会的自立を促すようにすることが大切であり,目標を障害 の種別や状態に応じて設定する必要があることが述べられている。「知的障害養護学校」にお ける課題としては,性教育の適正な実施に当たって,学習指導要領に基づき,児童・生徒の 障害の程度や発達段階などを十分に考慮して指導を行っていく必要があるとしている。そし て,知的障害のある児童・生徒は個人差が大きいため,個に応じた教材を必要とするが,そ れも学習指導要領に即したものであることを強調している。具体的な指導内容としては,東 京都教育委員会が一貫して挙げていた「性行動」が削除されている。

 2005年手引きまでは,このような変遷を辿っている。東京都教育委員会の「性教育の手引」

は,初期には非常に先駆的な内容をもったものであった。しかし,文部省・文科省が性教育 に対する見解を明確に示すようになるにつれ,その内容へと歩み寄るような形に変化してい き,2005年手引においては,障害児への性教育を非常に抑制するようなものになっている。

では,この方向性は2019年手引においても継承されているのか。以下,見ていく。

(15)

⑵ 2019年手引の内容 1 )2019年手引の改訂の概要

 東京都教育委員会の「性教育の手引」は上述のような変遷を見せ,2019年 3 月に改訂され た。ここでは,2019年手引の内容を見ていく。

 東京都教育委員会はこれまで,学校種別毎の「性教育の手引」を発行してきたが(たとえ ば,「小学校編」「盲・ろう・養護学校編」など),2019年手引は 1 冊にまとめられている。

「第 1 章」を全学校種に共通する「基礎編」とし,以降「第 2 章 実践編【小学校】」などと,

学校種別毎の留意点と具体的な指導事例を掲載する形になっている。

 東京都教育委員会は,今回の改訂の経緯について,「近年,社会環境の変化や情報化社会の 進展により,児童・生徒を取り巻く環境が大きく変化しています。インターネット上には性 に関する情報が氾濫し,様々な情報を容易に入手できるとともに,SNS 等を介して性犯罪に 巻き込まれることもあります。また,若年層のエイズ及び性感染症や人工妊娠中絶も課題と なっています。さらに,性自認・性的指向等の児童・生徒への指導については,学校生活を 送る上で正しい理解に基づいて,児童・生徒一人一人の心情等に配慮した個別の支援が必要 です」と,社会情勢の変化に対応する必要があることを述べている。

 性教育の意義については,「学校における性教育は,児童・生徒の人格の完成を目指す人間 教育の一環であり,豊かな人間形成を目的に,生命の尊重,人格の尊重,人権の尊重などの 根底を貫く精神である人間尊重の精神に基づいて行われる教育です」とし,「このため,性教 育は,人間の性を人格の基本的な部分として,生物的側面,心理的側面,社会的側面に加え,

生命尊重から捉えるとともに,総合的に指導することが大切です」と述べている。そして,

「学校は,全ての児童・生徒に対して,人間尊重や男女平等の精神の徹底を図り,性に関する 基礎的・基本的な内容を,児童・生徒の発達の段階に即して正しく理解できるようにすると ともに,同性や異性との人間関係や今後の生活において直面する性に関する諸課題に対して,

適切な意志決定や行動選択ができるよう,組織的・計画的に指導する必要があります」と示 している。

 指導に当たっての留意点としては,「性教育に関して使用する用語は,必ずしもその意味が 共通認識されないままに使用されるという状況」があるとして,「特に新たな表記や外来語な どについては,その意味を確かめる必要が」あるとしている。また,「児童・生徒の身体的・

精神的発達や性的成熟には個人差があり,性に関する情報についてもその質や量の入手に差 異があるため,これらの個人差等に十分配慮する必要」があり,「児童・生徒が自らの課題を 解決しようとする学習にあっては,発達の段階に即した適切な情報を提供」するとしている。

合わせて,「性的指向・性自認や宗教等に配慮し,児童・生徒や保護者の理解を得ながら支援 を進めることが重要」であること,「性教育においては,教職員と児童・生徒及び保護者との 信頼関係は不可欠であり,その確立に努める必要」があることを述べている。

 また,「学習指導要領に示されていない内容を含む指導」を実施する場合には,「在籍する

(16)

児童・生徒の状況から校長が判断し,学習指導要領に示されていない内容を指導する必要が ある場合には,事前に学習指導案を保護者全員に説明し,保護者の理解・了解を得た児童・

生徒を対象に個別指導(グループなど同時指導も可)を実施することなどが考えられ」ると している。

 2005年手引では,学習指導要領への準拠が強調されていたが,そこに示されていない内容 を指導できる可能性を示している点など,東京都教育委員会の性教育に対する姿勢の変化も 一見すると感じられる(この評価については後述する)。一方で,性教育の意義として「同性 や異性との人間関係」について「適切な意志決定や行動選択ができるよう」と述べているに も関わらず,「学校における性教育の内容」の「心理的側面」では「異性に対する関心が高ま り,性衝動が発現すること」,「社会的側面」では「異性との交際に関しては,適切な意思決 定や行動選択の能力が必要であること」といった矛盾した記述が見られるなどの問題点を指 摘することができる。

2 )知的障害児に対する性教育について

 2019年手引は,特別支援学校における性教育の基本的な考え方として,「特別支援学校にお ける障害のある児童・生徒への性教育は,基本的には小学校,中学校,高等学校における性 教育の考え方と同じ」だとし,その実施に当たっては,「障害による学習上又は生活上の困難 を改善・克服し,卒業後の自立と社会参加に向けた視点が重要であり,学習指導要領の趣旨 等に基づき,児童・生徒の人格の完成を目指す人間教育の一環として,障害の状態や特性及 び心身の発達の段階等に応じた適切な内容・方法の改善・工夫を行っていく必要が」あると している。

 そして,性教育の全体計画を作成し,教育課程に明確に位置付けることが必要であり,全 体計画に基づいた年間指導計画を作成し,個別指導計画と関連を図りながら具体化していく ことが大切であるとした上で,年間指導計画の作成上の留意点として,「学習指導要領に準拠 する」「学校教育目標との関連を図り,性教育のねらい,内容,方法を明確にする」「障害の 状態や特性及び心身の発達の段階等に即した効果的な学習指導を行う」「自立活動,総合的な 学習の時間等での取扱いを工夫する」「適正な補助教材を使用する」「保護者や地域社会の理 解・協力を得る」を挙げている。

 「障害に応じた指導上の配慮事項」として,知的障害児に対しては,「知的障害者である児 童・生徒は,習得した知識が生活に結び付きにくいことや,場面や状況を理解した上での適 切な判断や行動が難しい場合が多いため,生活に結び付く具体的,実際的な内容を指導内容 に位置付け,個別指導計画に基づく個に応じた指導を丁寧に行う必要が」あり,「学習指導要 領の各教科等の目標・内容から,児童・生徒の心身の発達段階等に応じて,指導内容を選択・

組織し,指導計画を作成」するとしている。そして実際の指導に際しては,「児童・生徒一人

一人の心身の発育・発達に応じて,日常生活の基礎的・基本的事項を身に付けさせるととも

に,生命の尊さに気付かせ,相手や自分の立場を理解し,互いに協力して役割や責任を果た

(17)

すことへの意欲や態度を育てることが重要」であるとしている。「教材・教具の使用に当たっ ては,児童・生徒の発達の段階に応じて,補助具等を工夫するとともに,目的が達成しやす いように,スモールステップでの段階的な指導を行うなどして,児童・生徒の学習活動への 意欲が育つよう指導することが大切」であると述べている。加えて,「使用する教材が,学習 指導要領の趣旨や内容を適切に踏まえたものとなっているかを十分に確認することも必要」

であるとしている。また,全体的な留意点として挙げられていた学習指導要領に示されてい ない内容を指導する必要がある場合についても,他の障害種別の配慮事項としては触れられ ていないが,知的障害児への配慮事項として,再度強調されている。

3 )知的障害児への性教育に対する2019年手引の変化

 2005年手引では,小学部(低学年,高学年),中学部,高等部ごとの「指導のねらい」が示 され,合わせて「発達の特徴と指導内容」「発達段階に即した指導内容」が細かく示されてい た。しかし,2019年手引では,それらはなくなっている。その代わりとして,「特別支援学校

(知的障害特別支援学校,知的障害を併せ有する教育課程及び自立活動を主とする教育課程) 

性教育に関する主な学習内容」の表が示されている(詳細については後述)。

 その他には,大きな変更点はなく,基本的に2005年手引を大枠として引き継いでいるとと らえることができる。

⑶ 2019年手引は足踏み状態

 2019年手引に対して,

人間と性

教育研究協議会幹事会(2019)は,「東京都の「性教育 の手引」改訂版に対する性教協の見解」を発表している。同見解では,2019年手引の到達点・

成果として 6 項目,問題点・課題として 6 項目を挙げている。ここでは,知的障害児への性 教育に関わると筆者が考えた点を紹介する。

 まず,到達点・成果だが,「子どもたちが性に関する情報を正しく選択して,「適切な意思 決定や行動選択ができる」ことを性教育の意義として再確認した」,「都立七生養護学校(前 回改訂当時)の性教育実践を「不適切な性教育」と位置づけ,積極的な性教育を抑制しよう とした統制的表現が削除された」といった指摘である。

 また,問題点・課題では「性教育の内容として,これまでの「生理的側面」「心理的側面」

「社会的側面」の前に「生命尊重」を位置づけ,道徳教育での性教育「指導事例」を多く示し

ているため,子どもたちの「主体的」な「意思決定や行動選択」に必要な科学的根拠に基づ

いた知識やスキルの習得に至らず,画一的な「道徳的態度」を押しつけているような内容に

なっている」,「学習指導要領に示されていない内容を含む性教育を実践する場合,「事前に学

習指導案を保護者全員に説明し,保護者の理解・了解を得た児童・生徒を対象に個別指導(グ

ループなど同時指導も可)を実施することなどが考えられます」ということを留意点の一例

として示しているが,他教科では想定も実施もされていない方法であり,現実的に困難な方

法のみを示しているために,「例」のはずが「必須」であるかのように捉えられる可能性が高

(18)

く,学校での積極的な性教育実施を阻害するおそれがある」,「性教育を実施するにあたり,

「学校全体で共通理解を図ること」が大切であるとしている。しかし,「学校全体で共通理解 を図る」ために教育委員会が積極的に性教育(学習指導要領に示されていない内容を含む)

の必要性と重要性を強調して説得等の支援をする旨の記述はみられない。そのため,特に学 習指導要領に示されていない内容を含む性教育を実践する場合に,「学校全体」での「共通理 解」が得られないことを理由として,個々の教員の創意や積極性を押しとどめることにつな がり,子どもたちのニーズおよび発達段階にあった性教育を困難にする可能性がある」といっ た指摘である。

 子どもたちの「意思決定や行動選択」については,東京都教育委員会があらためてその意 義を再確認した積極的な面はあるものの,実質的には「道徳的態度」を押しつけるような姿 勢によりそれが形骸化する危険性がある。また,東京都立七生養護学校(当時)の性教育実 践を「不適切な性教育」と位置づけ,積極的な性教育を抑制しようとした統制的表現を削除 したとしても,学習指導要領に準拠することが強調されている。また,学習指導要領に示さ れていない内容を含む性教育を実践できる可能性を示しているにも関わらず,実際に運用す る際には保護者全員への説明と理解・了解や,学校全体での共通理解を得る必要が「必須」

のように記述し,ハードルを高く設定している。

 以上のことより,2019年手引は,2005年手引に比べ,一方では知的障害児への性教育を積 極的に進めようとする姿勢を見せつつ,実際の実践を行う際にはその積極的な面を引き出せ ないような設定を行い,結局のところは学習指導要領に準拠した実践に留めようとしている ものであると指摘できる。浅井(2019)は,1996年に東京都教育委員会が発行した「性教育 の手引(中学校編)」と2019年手引を比較し,2019年手引は「学習指導要領の縛りが運営上実 際上残されており,必要なテーマに関してもさまざまな制約を課している点で,具体的な課 題認識,性教育の理念,テーマ設定,実践方法,保護者との連携,学校における性教育推進 体制のあり方などを検討する」と,1996年手引の「内容とレベルまで

回復

していない」

と述べ,2019年手引には2005年手引から前進している部分を認めているが,筆者は2005年手 引の非常に性教育実践を萎縮させるようなものを結局は継承しており,文言自体は積極的な 姿勢を示しているようにしつつも実際の場面では前進ではなく停滞させるものになっている のではないかと考える。2005年手引によって後退した知的障害特別支援学校での性教育実践 は,2019年手引に対応するだけでは十分に深めていくことはできないのではないか。

3 . 「特別支援学校(知的障害特別支援学校,知的障害を併せ有する教育課程及び 自立活動を主とする教育課程) 性教育に関する主な学習内容」の検討

 2019年手引の特徴の一つとして,「特別支援学校(小学校・中学校・高等学校に準ずる教育

課程) 性教育に関する主な学習内容」及び「特別支援学校(知的障害特別支援学校,知的障

害を併せ有する教育課程及び自立活動を主とする教育課程) 性教育に関する主な学習内容」

(19)

が一覧表にまとめられている点を挙げることができる。

 2005年手引では,「ア 発達の特徴と指導内容」「イ 発達段階に即した指導内容」が示さ れていた。「ア 発達の特徴と指導内容」については,小学部低学年,小学部高学年,中学 部,高等部と生活年齢の 4 段階で「発達の特徴」を示し,指導内容を列挙している。また,

「イ 発達段階に即した指導内容」では,これも小学部低学年,小学部高学年,中学部,高等 部ごとに,「自分自身に関すること(生命に関する側面,身体的側面,精神的側面)」「男女の 人間関係」「家庭や社会の一員として」に分類した指導内容を示している(表 1 )。

 では,「特別支援学校(知的障害特別支援学校,知的障害を併せ有する教育課程及び自立活 動を主とする教育課程) 性教育に関する主な学習内容」(以下,一覧表)では,どのような 学習内容が示されているのか,以下見ていきたい。

⑴ 一覧表の内容

 一覧表(表 2 )は,2005年手引の「イ 発達段階に即した指導内容」とは構成が変更され ている。小学部は,低学年,中学年,高学年で区分されるようになり,学習内容は「生命尊 重」「生物学的側面」「心理的側面」「社会的側面」で分類されている。また,学習内容として 挙げられている項目の学習指導要領上の位置づけが明示されるようになっている。

 特徴的な点は,各教科の内容として挙げられているものに比して,特別の教科道徳と領域 である特別活動,特別支援学校に独自の領域である自立活動の内容として挙げられているも のが多いことである。なかでも,特別活動の割合が高い。

 なお,高等部の「社会的側面」に「健康管理や余暇の過ごし方の理解(職業・家庭 2 段 階)」とあるが,知的障害特別支援学校の各教科には「職業・家庭」はなく,これは知的障害 特別支援学校中学部の教科である「職業・家庭」の内容の 2 段階の「家庭分野」の「A 家 族・家庭生活」の「ウ 家庭生活における余暇」で示されている「ア 健康管理や余暇の過 ごし方について理解し,実践すること」を指すのではないかと推測される。しかし,同様の 記述は,知的障害特別支援学校高等部の教科である「家庭」の内容の 2 段階の「A 家族・

家庭生活」の「ウ 家庭生活における健康管理と余暇」で示されている「ア 健康管理や余 暇の有効な過ごし方について理解を深め,実践すること」にも見られる。詳細は不明である が,どういった意図をもってこのような形になっているのかは疑問が残る点である。

⑵ 特別活動での性教育の位置づけ

 2019年手引では,知的障害児に対する性教育に関する主な学習内容として特別活動に位置 づくと示されている項目が多い。そのため,特別活動の内容として,どのように示されてい るのかを見てみたい。

 特別支援学校小学部・中学部学習指導要領の「第 6 章 特別活動」では,「小学部又は中学

部の特別活動の目標,各活動・学校行事の目標及び内容並びに指導計画の作成と内容の取扱

表 1  2005年手引「イ 発達段階に即した指導内容」一覧表 小学部 中学部 高等部 低学年 高学年 自分自身に関すること 生命に関する側面 ●  私の誕生日●  身近な動物に接する ●  私たちの誕生日●  身近な動植物を育てる ●  友達や家族の誕生日● 生命の大切さ ●  生命の誕生● 生命の尊重●  健康で安全な生活 身体的側面 ●  身体の名称 ●  トイレの場所の区 別,使用の仕方 ●  身体の清潔 ●   大きくなる身体●  トイレ,更衣場所等の区別● 身体の清潔 ●  自分の身体の成長に関
表 2  2019年手引「特別支援学校(知的障害特別支援学校,知的障害を併せ有する教育課程及び  自立活動を主とする教育課程) 性教育に関する主な学習内容」 小学部 中学部 高等部 低学年 中学年 高学年 生命尊重 ●  生命の尊さ(道徳) 生物的側面 ●  健康な生活に必要な事柄の理解(体 育 1 段階) ●  健康な生活に必要な事柄の実践(体育 2 段階) ●  健康や身体の変化の理解(体育 3 段階) ●  体の発育・発達やけがの防止,疾病の予防(保健体育 2 段階) ●  生 活 に 必 要 な 健

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