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新潟県長岡市のまちづくりと次世代育成計画のあり方

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〈原著論文〉

新潟県長岡市のまちづくりと次世代育成計画のあり方 社会の変化にともなう「まちづくり」研究2一※

大 平 滋※※

はじめに

 わが国の人口は2008年にピークを迎えそれ以後,減少をしはじめている。2013年に国立社会 保障・人口問題研究所は2040年までの人口動態の推計を公表している。そこでは,人口減少と

ともに急激な少子高齢化が示されている。今日でも,人口減少と少子高齢化の影響,世帯構成 の変化,産業構造の変化などが市民生活において影響を与え,実感を持って受け止められるよ うになってきている。戦後一貫して人口の増加とともに経済の拡大をみてきた。それは,地 域社会の生活エリアの拡大を意味し,都市化が進行してきた。1990年以降のバブル経済の崩壊 以後,その経済の拡大路線に変化がみられ,経済構造の変化と同時に,少子化そして高齢化と いう状況も生まれてきた。多くの都市では,まちづくりにあたって変化の対象を考慮しながら 対処的な方法が講じられてきた。しかし,人口減少という状況を中心に人口動態の変化に関わ る課題が急激に大きな影響を与えることがわかってきた。そこで,本研究では,新潟県長岡市 のまちづくりと次世代育成計画を中心に,今後の人口減少を考慮した場合の課題を含めて検討

してみる。

 長岡市は,新潟県における第二の大都市であり中核都市でもある。前回の研究では,人口動 態の変化を新潟県,新潟市,長岡市,十日町市を比較しながら検討していった。そのため,お およその今後の人口の変化は検討しているため,今回は長岡市としての優れた点と思えるまち づくりのプランニングの内容とあり方,市民アンケートの検討などを中心としながら,まちづ

くりの実態や成果と今後の課題を探ってみたい。

 また,長岡市は,まちづくりの計画性や先駆的な取り組みもいくつかなされている。具体的 には,「長岡市総合計画 後期基本計画」(2011年)「長岡市子育て支援プラン(前期計画)」(2005

※窃εcどこ〃伽痂9αη4伽η館一9θηεrα oη醐加1η9μαη(ゾ/>α9αoんα一3鉱1>惚伽一C乃αη98(ゾ50c∫のαη4 c砂 μαη厩η9 rε3θαrc乃2一

※※Shigeru OHIRA 立正大学社会福祉学部子ども教育福祉学科教授 キーワード:まちづくり,次世代育成,学校教育,少子高齢化,長岡市

      一29一

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新潟県長岡市のまちづくりと次世代育成計画のあり方

年)「長岡市子育て応援プラン(後期行動計画)」(20!0年)「長岡市アンケート」(2006年)「長 岡市まちづくりアンケート」(2011年)などを中心に検討を加え,まちづくりの計画のあり方 や推進のあり方,コンセプトの共有現実の社会の変化の中での対応の可能性などを考え,特 にまちづくりの要となる次世代育成や人づくり,地域の文化育成と継承などを視野に入れなが ら,持続可能なまちづくりのあり方を検討してみる。

 本研究は,次の研究と関連づけられたものである。それは「社会の変化と地域再生の視点一 社会の変化にともなう「まちづくり」研究!一」(『人間の福祉 第27号』)(1>。ここでは,人口 減少や少子高齢化の進展,世帯構造の変化,産業構造の変化などの要因による社会の急激な変 化にさらされる地域社会の再生のあり方を先行研究から分析した。また,「地域社会の変化に 伴ったまちづくりと新たな学校教育の展開一新潟県十日町市の事例をとおして一」(『人間の福 祉 第28号』)(2)では,事例としての十日町市のまちづくりと人口動態を中心とする社会の変化

と学校教育のあり方を検討してみた。

1 長岡市総合計画にみるまちづくりのコンセプト

 長岡市の基本計画は,長岡市総合計画基本構1想(2006年度〜2015年度)を基礎にし,2006 年度からの5年間を前期基本計画とし,2010年度からの5年間を後期基本計画としている。本 稿では,主に後期基本計画(3>を中心に検討していきたい。

(1>長岡市の現状と課題

 長岡市総合計画基本計画の策定体制であるが,市民代表の策定委員会に公募市民3名を含む 計18名と行政側の庁内策定会議とで策定にあたっている。策定委員会は,6つの専門部会に分 かれて検討され,各部会10名程度,61名で構成されている。2010年2月から準備を始め4月か

ら第1回の会議が行われ2011年度の3月まで作業がなされ,述べ52日の会合が行われて提言さ れている。

 現状分析としては,まず,人口の変化では,2010年4月!日時点で285,628人であり,2006 年の前期基本計画開始年次に比べて1.6%(4,619人)減少している。人口推計では,2015年に は27万3千人まで減少すると見込まれている(4)。年齢階層別人口の推移も,2005年では,0

〜14歳が13.8%,15〜64歳が63.0%,65歳以上が23。1%となっているものが,2016年の推計 値は,0〜14歳が12,2%,15〜64歳が59.0%,65歳以上が28.8%(5)となっており,少子高齢 化が一層進んでいくことがわかる。

 産業では,ものづくり産業の集積地であり,県内第二の商圏の中心地であり,米産地でもあ る。ものづくりでは,繊維やスポーツ用品製造,醸造や米菓などの食料品が盛んであり,産業 別就業者は,2005年では第一次産業が5.5%,第二次産業が34.8%,第三次産業が593%となっ ている。米の生産額も2006年では,新潟市につぎ,全国2位となっている(6)。お米などのブラ       一30一

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ンド的な農業生産物,特色ある多岐にわたるものづくりを基盤としているため,可能性と発展 性を持っている地域といえる。

 今後の社会の動向と長岡市の課題を7点挙げている。要約すると以下のようになる。

「①少子高齢化の進行 都市としての活力を維持するための定住人口の確保と中山問地   域における集落の活力維持。

 ②安全・安心意識の高まり 2004年度の水害と中越大震災からの復興と再生,安全・安   心のまちづくりを進めてきた。食の安全,新型インフルエンザなどの感染症・健康対策な   ど多方面な安全性の確保。

 ③環境共生への志向 自然環境の保護低炭素社会・循環型社会の構築を図っていく環   境負荷の少ないコンパクトなまちづくり。

 ④経済のグローバル化 急激な経済変動に対応できる地域内の循環経済の仕組み,人づ   くり,産業基盤づくりを進め,地域経済の多様化に継続的に取り組む。

 ⑤高度情報化の進展 多様な情報伝達手段の整備と利用活用を進め市のホームページ   などを通じて日常の市民生活に有用な情報をより充実させる。

 ⑥市民協働型社会への発展 ボランティア活動やNPO活動の交流連携により,更な   る市民力・地域力の向上を期待する。

 ⑦都市経営戦略の重要性 行政改革を継続し,健全な財政基盤を堅持しながら,拠点都   市としてのブランド価値を高める。近接する都市との連携を深め,地域経済・文化圏の形   成を図っていく。」⑦

 現代社会の特徴を理解し,今後のまちづくりの基本を網羅しているといえるが,最初に挙がっ ている日本の大きな課題となっている少子高齢化の進行に対して,どのような認識をもち,ど のように対処していくのかが重要課題となる。

② 少子高齢化の社会をどのように乗り切っていくのか

 少子高齢化の進行の課題では,定住人口の確保と中山間部の維持を挙げている。そこで,長 岡市の人口の推移の概略から検討してみたい。

 長岡市は,市政施行の1906年(明治39年4月1日,統計はいずれも4月1日である)では 33,702人から出発し,1920年(大正9年)は41,627人で,1906年からの増加率は23,5%となっ ている。1930年(昭和5年)は57,866人,1920年からの増加率は39.01%となっている。1940年(昭 和15年)は66,987人,増加率778%と5年毎の増加率は7%を保持している。終戦後は人口が減 少し,1947年(昭和22年)は54,958人で1940年忌らの増加率は一!7.96%となっている。1950年

(昭和25年)には人口増に転じ,66,818人で1947年からの増加率は21.58%である。続く5年間は 大幅な増加がみられ,1955年(昭和30年)は130,238人で1950年からの増加率は94.91%となっ ている。この増加はいわゆる「昭和の大合併」によるものである。この合併策は「新制中学校 の設置管理市町村消防や自治体警察の創設の事務,社会福祉,保健衛生関係の新しい事務が       一3!一

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新潟県長岡市のまちづくりと次世代育成計画のあり方

市町村の事務とされ,行政事務の能率的処理のためには規模の合理化が必要とされ,……昭 和28年の町村合併促進法及びこれに続く昭和31年の市町村建;設促進法」による。「昭和28年か

ら昭和36年までに,市町村数をほぼ3分の1」(8)にすることをねらっている。この法律に従っ て,長岡市も1954(昭和29)年に,宮内町上川西・深才・日越・王寺川・十日町・山本・

黒条・新組・福戸・下川西・六日市村の一部と合併し,!956(昭和31)年には山古志村の一 部と,1957(昭和32)年には関原町と合併したことにより,大幅な人口増となる。その後の 1960年代の高度経済成長期は,大幅な増加はみられず,5年毎の増加率は7〜10%程度であ る。1970年代の増加率は同様に3〜5%程度となり,1980年代の5年毎の増加率は2〜4%

程度となっている。1990年代になると増加率はより鈍化し1〜2%程度となっている。

 2000年は,同様に5年毎の増加率は1.26%であり,2005年(平成17年)は191,24!人で増加 率は0.63%となっている。但し,この2005年という年は,市町村の「平成の大合併」期(1999 年から2006年)の時期であり,2005年に4町1村(南蒲原郡中之条町,三島郡越路町三島町 刈羽郡小国町古志郡山古志村)を編入合併した。さらに,2006年(平成18年)には栃尾市,

三島郡寺泊町与板町,和島村を編入し,2007年(平成19年)には特例市へ移行し,2010年(平 成22年)にはさらに北魚沼郡川口町を編入し,人口283,280人で2005年からの増加率は48,15%

と大幅に増加している。しかし,これは市町村編入による増加であり,この年が人口のピー クといえる。続く2012年(平成25年)には278,538人で増加率一1.67%と減少に転じている(9>。

 人口規模27万人程度とし,特例市になったとはいえ,定住人口の確保と編入した多くの山 間部の人口維持は大きな課題となっている。長岡市は市町村編入により,それぞれの旧市町

,村をそのまま「地域」としており,長岡地域,中之島地域寺泊地域,和島地域与坂地域,

三島地域,越路地域,小国地域,栃尾地域,山古志地域川口地域というように11地域で構 成されている。2000年頃から人口の増加は鈍化し,維持することから減少へと向かっている。

戦後の長岡市の人口の推移を概観すると,人口の増加は,いずれも国策としての市町村合併 によるものが中心であり,市独自の活性化によるものではないといえる。

 編入により,特例市にはなっているが,行政の効率化と財政削減は可能になったといえる。

しかし,維持しなければならない中山間部の地域は増え,高齢化の進行も一層進んだことに なる。日本中で合併という形で人口減少を先延ばしにした形になっているが,現実的には日 本の人口は2008年(平成20年)12月の1億2809万9千人をピークに2010年(平成22年)12月 から減少を続けている。また,世界の主要国と比べても201!年(平成23年)では,年少人口 割合(0〜14歳)は!3.1%で最も低く,老齢人口(65歳以上)は23.3%と最も高くなってい

るqo)。同様の傾向は,ヨーロッパの先進国でもあり,ドイツ,イタリア,オーストリアも深 刻になっている。少子高齢化は深刻な共通課題といえる。さらに,新潟県は特に人口減少の 速度が速い県でもある。

 それでは,特例市となった長岡市はどのように多様な地域をコーディネートし,将来性の

一32一

(5)

あるまちづくりを目指すのであろうか,次に検討してみる。

(3)長岡市のまちづくりの基本構想

 長岡市では,まちづくりの基本構想の視点として,次の4点を挙げているので,要約してみ

る。

 最初に,「市民協働による活気あるまちづくり」を挙げている。市民協働の推進と協働を担 う人材育成である。活動としては「俵百俵の精神」と「熱中1感動1夢づくり教育」の展開で ある。学校と生涯学習で展開する。また,「市民力・地域力の活用と市民活動の促進」という 言葉を使い,シンボルとしての「アオーレ長洲を設置した。

 次に,「地域の個性が輝く環境共生のまちづくり」である。具体的方策としては,「低炭素社 会・循環型社会をめざすコンパクトなまちづくり」であり,「無秩序な市街地拡大の抑制」と「ま ちなか型公共サービス集積による中心市街地の再生」である。全国的な動向として,循環型社 会をめざすコンパクトシティづくりと中心市街地の再生が行われているので,方向性としては 正しいといえる。また,「都市機能の強化と地域資源を活かしたまちづくり」として地域資源 の掘り起こしをおこなっている。さらに,特徴的な点は「福祉政策と都市政策が融合したまち づくり」という点である。子育て支援や高齢者支援にあたって福祉のソフトと空間環境のハー ドを融合している。つまり,子育て支援(ソフト)と公園整備(ハード)を融合した子育て拠 点を中心に活動している。

 第三に,「40万人都市構想の推進」を挙げている。方策としては,「日常生活圏の広域化への 対応」として,買い物,通勤,通学,通院などの市民生活圏の広域化を挙げ,上下水道,廃棄 物リサイクルなどの広域的な視点での対応を指摘している。さらに,「県内の拠点都市として の機能強化」と「40万人都市構想と当面の広域化の取り組み」として中越地域の発展の中心地 として取り組もうとしている。定住自立圏における通勤・通学動向を考慮に入れて,見附市,

小千谷市,出雲崎町との連携,広域化を図り,自立した地域づくりをめざしている。

 第四に,「世界を見据えた地域経済・文化の発信」である。まず「海外を視野に入れた地域 経済・産業の活性化」である。北東アジア・ロシア極東地域を中心とした環日本海弓削の発展

を期待し,新潟港,新潟空港の活用を視野にいれている。地域性を考慮して,独自のグローバ ル化を図ろうとしている。可能性を秘めてはいるが,共産圏国が多いため,政治的な問題が経 済を犠牲にすることがあるため,不安定要素があるといえる。国内での交通網を考慮したもの として「幹線交通軸でつながる都市連携で活力を拡大」として,上越新幹線で結ばれた新潟市,

三条市などとの経済・文化連携。関越自動車道での北関東・東京圏との都市連携。文化の面で は,「シティプロモーションによる長岡文化の世界への発信」として,「人づくりの根本理念で ある米百俵の精神」,平和祈念の長岡花火,直江兼続の愛と義,錦鯉と闘牛などの地域資源を 中心に世界に発信しようとしている(11)。

 このように,4点の基本理念をもとに,まちづくりの方法や方向性を明確に提示している。

      一33一

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新潟県長岡市のまちづくりと次世代育成計画のあり方

経済政策やまちづくりの方向性が明確であることは将来展望が見通せるが,同時に,実際の活 動や施策がどう機能したかを評価していくことが重要である。特に,後期計画の期間は2015年 で終了である。10年間の計画はいわば直近の施策であるといえる。今後の20年30年先の人口減 少と少子高齢化の推計はかなり大きな課題があることを提示している。そのため,この人口推 計と世帯構成の変化を具体的に視野に入れた中期,長期のまちづくりのプランニングを行わな ければ行き詰まって行くことが明らかである。長岡市はこの点も踏まえて,「次期長岡市総合 計画」の策定のため,2014年9月に関連条例を設定し,策定に取りかかっている。

 まちづくりは,生活や文化の継承である。そのため,その地域で生きていく次世代育成はま ちの存続の中心課題ともいえるので,次に検討してみる。

2 次世代育成方策とアンケート調査での検証

(1)長岡市次世代育成計画のあり方

 次世代育成計画は,2003(平成!5)年7月に制定された次世代育成支援対策推進法によるも ので,急速な少子化と子育て環境の変化に対応するため,国,地方公共団体,事業主及び国民 の責務を明らかにし,行動計画策定指針並びに地方公共団体及び事業主の行動計画の策定など を決めたものである。市町村及び都道府県には,5年を一期とし,行動計画策定に当たっての 具体策を提示し,2005(平成17)年から2015(平成27)年までの10年聞の時限立法として成立

した。そして,2014(平成26)年4月にはこの法律のさらに10年延長した時限立法が施行され,

2015(平成27)年から2025(平成37)年までの政策延長がなされることになった。今回の延長 では,次世代育成支援対策の更なる推進・強化とひとり親家庭に対する支援施策の充実(12)が 強調されている。

 長岡市の次世代育成計画もこの法律の実施として行われている。2005(平成17)年3月に子 育て支援のために「長岡市子育て応援プラン」を10年間の計画で策定し,現在はこれまでの前 期5年間の取り組みを見直し,2010年度(平成22年度)から5年間の後期計画としてまとめて いるQ

 長岡市は,次世代育成支援対策行動計画「長岡市子育て応援プラン」(前期計画)を2005年 に策定し,「その問2度にわたる市町村合併により,広大な市域と多様な地域資源を活用した 新しいまちづくり及び次世代育成支援対策の推進を図ってきた」と述べている。また,この年 は「我が国で初めて総人口が減少に転じ,合計特殊出生率が1.26と過去最低を記録し,予想以 上の少子化の進行」を懸念している。

 そこで,長岡市では,「育つよろこび 育てる幸せ 子育てを支援するまち 長岡」を基本 理念に,2012年度(平成19年度)の組織編成において,従来は福祉保健部門が担っていた母子 保健と子育て支援,保育園などの業務を教育委員会に移管し,「子ども家庭課」と「保育課」

を新設している。「これにより国の厚生労働省と文部科学省で縦割りになっている業務を合わ        一34一

(7)

せ,子どもの成長を誕生から学校教育まで一元的に支援する体制が整備され,効率的・効果的 な次世代育成支援施策の展開が可能となりました。」と述べ,子どもの成長に合わせた政策を 実行に移している。

 また,「福祉政策と都市政策が融合したまちづくり」の実現として2009(平成21)年5月には,

「緑あふれる広々とした公園の中に雨や雪の日にも遊べる全天候型の広場と子育て支援施設を 一体的に整備した全国初の『子育ての駅千秋(てくてく)』」をオープンさせている。これらの 施設は,「子育て世帯の親子や子育てサークルをはじめ,子育ての先輩や次代の親となる若者 など多くの人々が集いあい,ふれあうことで,ここから世代を超えた交流や子育ての輪」が広 がることを期待している。

 さらに,前期計画の最終年度にあたる2009年度(平成21年度)には,2008年度に実施したニー ズ調査結果をもとに長岡市子育て応援プラン推進協議会において評価・検討を行い,2010年度

(平成22年度)からの後期行動計画としてまとめている(13)。

 次世代育成計画も総合計画同様10年の期間で計画され,5年毎の見直しにより,より実効性 のある計画に練り直している。その見直しの際には,行動計画策定指針通り市民へのニーズ調 査を行い検:証している。

 また,この計画は,「21世紀における母子保健の国民運動計画である『健やか親子21』の趣 旨を踏まえた『母子保健計画』を包含した計画」として位置付けられ,さらに,『長岡市総合 計画・基本構想』『ながおか男女共同参画基本計画後期行動計画』『ながおかヘルシープラン 21』『第2期長岡市障害者基本計画・障害福祉計画』『第二次長岡市生涯学習推進計画』『長岡 市食育推進計画』等との整合を図りながら,市が今後進める施策の基本的方向や目標を示すも の」q4)と位置付けている。まさに,まちづくりの基本は次世代を担う市民を育てることであ ることを明らかにしているといえる。

 では,次に次世代育成対策の内容をみてみる。

(2)次世代育成支援の内容

 長岡市のまちづくりの基本の4点の最初に出てきたものが,先にも触れたように「市民協働 の推進と協働を担う人材育成」であった。その柱になるのが「出会俵の精神」と「熱中1感動1 夢づくり教育」であった。「三百俵の精神」は小泉純一郎元首相が所信表明で引用したことに より一躍有名になった言葉であるが,長岡藩は,幕末に北越戊辰戦争に敗れ,支藩である三根 山藩(新潟県西蒲原郡巻町峰岡)から見舞いとして送られた米百俵を藩士らに分配せず,国漢 学校設立資金の一部に当てたことから,まちづくりの基本は人づくり,次世代の育成を最優先

したということで,この精神を受け継いでいる。

 また,「熱中1感動1夢づくり教育」とは,主に,学校教育において,「やる気や学ぶ意欲を 引き出す教育」を推進することである。この教育的な取り組みをするための背景としては,「地 域・家庭の教育機能の低下や学ぶ意欲の低下などの全国的な傾向が長岡市でもみられる」ため,

       一35一

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新潟県長岡市のまちづくりと次世代育成計画のあり方

「一人ひとりの子どもが自信と夢を持って成長していくため,それぞれの子どものよさを見つ け,やる気や学ぶ意欲を引き出す」実践として「熱中1感動1夢づくり教育」に取り組んでい る。この取り組みのもとに具体的な事業を前期計画から展開している。これまでの点検では,「熱 中1感動1夢づくり教育」の各事業を,これまでの5年間の成果をA・B・Cの3段階で評価 した結果,9割以上がA評価(目標を達成できた)と評価しているq5)。

 基本施策の方向性としては,学校現場での「どの子にもわかるように授業を展開」すること である。さらに,学習意欲の基本となる「やる気や学ぶ意欲を引き出すきっかけとなる熱中・

感動体験を学校,行政,家庭,地域それぞれの役割に応じて子どもたちに提供するなど,家庭・

地域と学校との連携の強化を図る」とし,子どもだけの成長ではなく,「親も一緒になって成 長していけるような環境づくりを進める」⑯と家庭や親地域も視野にいれている。

 これらの具体的な実践内容としては,4点を挙げている。

 まず,最初に「どの子にもわかる授業の実現」であるが,学校の授業に対する取り組みとし て,「一人ひとりの実態に応じたきめ細かな指導の充実を図る。」ために,「教育補助員の配置 や地域の人材による『ようこそまちの先生』の活用,外国語指導助手(ALT),スポーツアシ スタントの派遣など」により,学校を支援する。教員の資質向上のためには,「教員の資質や 指導力を高め,授業の質の向上を図るため,研修講座や教員サポート錬成塾などの研修事業の 充実」。教育環境の整備のためには,「小・中学校の規模適正化について保護者や地域とともに 取り組む」。また,学ぶ意欲の基盤として,「規則正しい生活習慣をみにつけさせるため,『早寝,

早起き,朝ごはん』の重要性を保護者に働きかけるとともに,学校の教育活動を通じて,食育 の充実」に取り組んでいる。

 次に,「地域の力,市民の力を生かした教育の推進」として,「いきいきとした子どもを育て るため,地域団体,NPOなどが行う,子どもを対象とする活動を助成」し,「地域とともに 歩む学校づくりを推進するため,学校,家庭,地域との連携を一層深め,中学校区単位のフォー ラムや全市民を対象とした懇談会の開催」。また,地域に開かれた学校にするため,「取り組み を,各学校で実施(保護者や地域住民が,授業又は学校行事に参加する年間の平均日数)する 基準値14日(平成22年度)と目標値20日(平成27年度)」を決めて,実効性を上げている。「親 子がともに育ち合う場などを提供し,家庭の教育力の向上を目ざす」ことも行っている。

 さらに,「熱中・感動体験の充実」として,「子どものやる気をかきたてる(夢中になる,感 動する,夢につながる)熱中・感動体験の事業を①個性・能力を伸ばす事業,②感性・情操を 豊かにする事業,③地域・自然を愛する心を育む事業,④社会の一員としての意識を高める事 業に体系化し,学校・行政・地域が積極的に各種教育プログラムを提供」するとしている。

 最後に,「幼稚園教育・高校教育の進行と就学支援」(17>を図っている。

 全体的に,地域の特徴を配慮しながら,多方面にわたってきめ細かい事業を展開している。

一36一

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(3)アンケート調査による検証と再計画

 長岡市は,先に述べたように次世代育成支援対策行動計画「長岡市子育て応援プラン」(前 期計画)を2005年に策定し,2010年に「長岡市子育て応援プラン後期行動計画」を策定して事 業を進めているが,それぞれ市民の意見を取り入れるためにアンケート調査を2003年と2008年 に行っている。後期計画策定過程では,「ニーズ調査の結果及び平成22年度以降の児童人口の 推計結果に基づき,通常保育の新規利用見込み者及び現利用者で通常保育事業や一次預かり保 育等に関する事策放課後児童クラブなどの希望者の潜在ニーズを推計し,過去の利用実績に 基づき補平を行い,推計ニーズ量を算出し,目標設定」(18)を行っている。次世代育成支援対策 推進法に基づく行動計画策定指針でも,市町村行動計画の策定に当たって,現状の分析,ニー ズの調査の実施住民参加と情報公開,計画の期間と見直しの時期が示されており,それに従っ たものであるが,現状分析やニーズ調査などはそれぞれの独自性が出てくるものである。

 具体的な課題や施策は,ライフステージ別に,サービスの対象者と施策実践者(支援者)を 分けて表示し全体像がわかるようにしている。子育て中の家庭の支援としては3つの以下の事 業がなされている。

表1 親と子が共に学び育つことへの応援(重点目標)

妊娠期

?Y期

i親家庭)

乳児期 幼児期 小学生 中学生 高校生

家庭  市民

i地域・企業)

(1)家庭の教育力の向上

②子どもの生き る力の育成に向けた学校等の教育環境の整備

(3)幼児教育の充実

(4)児童の健全育成

○○○○○○

(5)思春期の子どもとその親への支援

(6>「食育」の推進

(7)次代の親の育成

(8>若者に対するキャリア形成支援及び教育の推進

(10)

       新潟県長岡市のまちづくりと次世代育成計画のあり方

表2 子育てをしているすべての家庭への応援

実践者(支援者)

妊娠期

?Y期

i親・家庭)

乳児期 幼児期 小学生 中学生 高校生

家庭  市民

i地域・企業)

(1)子育て家庭への支援体制の整備

(2)子どもや母親の健康づくり

(3)子どもの医療に対する支援

(4)不妊治療対策の推進

(5)ひとり親家庭等の自立支援あ推進

(6)障害児施策の充実

(7)児童虐待防止対策等の充実

表3 子育てと仕事との調和のとれた生活への応援

実践者(支援者)

妊娠期

?Y期

i親・家庭)

乳児期 幼児期 小学生 中学生 高校生

家庭  市民 i地域企業)

(1)保育サービスの充実

(2>多様な働き方の実現及び男性を含めた働き方の見直し等

 子育てとまちづくりの融合として2つの事業がなされている。

表4 子どもが健やかに育つ安心・安全なまちづくりへの応援

実践者(支援者)

妊娠期

?Y期

i親・家庭)

乳児期 幼児期 小学生 中学生 高校生

家庭  市民

i地域・企業)

(1)良質な住宅の確保

(2>良好な居住環境の確保

(3)安全な道路交通環境の整備

(4)安心して外出できる環境の整備

(5)安心・安全なまちづくりの推進等

(6>子どもの交通事故を防ぐための活動の推進

(7)子どもを犯罪等の被害から守るための活動の推進

○○○

(8)子どもを取り巻く有害環境対策の推進

一38一

(11)

表5 市民力・地域力で支えあう子育てへの応援 妊娠期

?Y期

i親・家庭)

乳児期 幼児期 小学生 中学生  高校生

家庭  市民

i地域・企業)

(1)子育て支援のネットワークづくり

(2>市民協働による子育て支援体制の推進

○○

(19)

 このように網羅的ではなく構造的に分けることにより,事業の意味合いやサービスの対象 実践者(支援者)が明確になっている。既存の行政サービスは明確になっているが,ここでは 新たなまちづくりの担い手として家庭や地域企業等の市民が中心となることも示している。

行政が主体となるものには○印をつけず,「市民が主体となる」または「市民の協力」を前提 としているものを明らかにすることにより「市民力・地域力」を生かしたまちづくりに取り組 んでいる。

 アンケート調査の結果を踏まえての事業の展開の関係を見てみたい。

 まず,「親と子が共に学び育つことへの応援」では,表1に挙がっているように,8つの項 目がある。ニーズ調査で,「子育てに非常に不安や負担を感じる」は就学前児童の保護者は 2003年が12。9%であるのに対して2008年目10,2%とやや減少はしているものの,「なんとなく不 安や負担を感じる」が2003年は43.4%で2008年は47.4%と増加し,両方を合わせると増加傾向 にあるため,「:地域ぐるみの教育力を推進する環境づくり」を整備することを目的に,具体的 な1!の事業を挙げているので要約してみる。

①パパママサークル事業

   夫婦で一緒に,妊娠中及び産後の生活や子育てについての知識を深め,父親の妊婦体験   により育児イメージを深めるものである。2006年度からはじめられ,2008年度は306名の   妊婦が参加し19回実施され,受講延べ数は614名となっている。

②父と子のメモリアルカード事業(2008年度からの新規事業)

   生まれてくる子どもへ父からのメッセージが書き込める「メモリアルカード」を母子手   帳と一緒に配布する。

③ブックスタート事業

  絵本の読み聞かせを通した親と子のふれあいや絆づくりのきっかけとして実施する。さ   らに地域ボランティアが一対一で読み聞かせに関わることで,親子で地域との交流を深  める。子ども家庭課と中央図書館の連携によるものである。

   これも2006年度からスタートされ,2008年度は実施回数66回で,参加者2,278名,ボラ   ンティア380名である。

④子ども家庭応援ブック「おやこスマイルガイド」の作成・配布        一39一

(12)

新潟県長岡市のまちづくりと次世代育成計画のあり方

   子育てと子どもたちの成長を応援するアドバイス書として作成され,市内の就学前の子    どもを持つ家庭に配布。2007年度から実施。

 ⑤家庭で子どもに手伝いをさせよう運動

   『家庭でワクワクお手伝い通信』の発行とお手伝いに取り組む講座の開催。実際の行動   となるように全市的な運動として2007年から展開。①〜⑤までは子ども家庭課が担当して   いる。

 ⑥親も育つ子育てセミナー

   親も子育てを通して「ともに育ちあう」ことを目指し,幼児期コース,児童・思春期コー   ス,小学生i親子ふれあいコースの3コースがあり,2009年は5講座述べ1,000人が参加。

  中央公民館が担当。

 ⑦幼児家庭教育講座

   保育風幼稚園 コミュニティセンター単位に幼児期の基本的な生活習慣のしつけを中   心とした家庭教育について学習機会を提供し,家庭の教育力を高める。保育課が担当。

 ⑧就学時等家庭教育講座

   就学時にすべての親が集まる機会を利用して,子育てや家庭教育に関わる共通の内容を   伝え,親の意識啓発を図る。2007年度から実施し,2009年度は51校で,2014年度は市立小   学校全校の59校を目指している。子ども家庭課が担当。

 ⑨図書館における読み聞かせ事業

   中央図書館や地域図書館における,幼児や保護者への読み聞かせの定期的な実施。2009   年度からの新規事業で中央図書館が担当。

 ⑩図書館の子育て支援資料の充実

   子育て支援コーナーを作り,小学校までの子どもを持つ保護者が子育ての参考になるよ   うな資料の充実を図る。2009年からの新規事業で中央図書館が担当。

 ⑪小学校PTA連絡協議会への支援

   地域に根ざしたPTA活動を構築していくために,「長岡市小中学校PTA連絡協議会」に   補助金を交付し,活動を支援する。2009年度からの新規事業で子ども家庭課が担当する(20)。

 このように,子ども家庭課を中心に保育課中央公民館,中央図書館と連携をしながら,き め細かい支援を行っている。

 このような施策は,次世代育成支援対策推進法に従った計画や施策であるが,市町村で実行 することにより,市町村の課題意識が明確になり,行政主体としての自覚及び行政力が養われ てくることになる。総合的なまちづくりの実践が進化してくるといえる。

 国主導の施策ではあるが,全国の都道府県及び市町村でこのような実践が行われることは,

ある一面では画一的になる側面と独自の新しい行政施策や地域の実践活動が活性化するという 側面を持つ。長岡市も全国的な流れの実践と市独自の実践を展開している。今後の少子化と人 口減少の進行は楽観視できない状況である。より現実味のある推計値を認識しながら,新たな        一40一

(13)

施策に取り組む必要がある。

3 学校教育への対応と課題一学校教育の環境整備に向けて

 学校教育の環境整備への施策においても,「長岡市次世代ニーズ調査」を参考にしながら,

具体的な施策を11項目挙げているので,検討してみる。

 ニーズ調査では,中学生の学校生活の満足度を2003年度と比べている。「とても満足」「どち らかといえば満足」を合わせると,2003年度は79.4%で2008年度は84.5%となり,「とても満足」

だけでも24.2%から41.0%へと上がっている。しかし,「いじめにあったことがあるか」につい ては19.2%から23.9%へと増えていることから,生徒や保護者への相談体制やサポート体制の 充実を強調している。以下,具体的な施策を挙げてみる。

 まず,学校教育課が担当するものとして6つの事業があるのでそれから見てみる。

①熱中1感動1夢づくり教育

   先にも触れたように,子どものやる気と学ぶ意欲を引き出す施策で,「どの子にもわか   る授業の実現」「地域の力,市民の力を活かした教育の推進」「熱中・感動体験の充実」の   3つの柱がある。2009年度は60事業がある。

②学校・子どもかがやき塾事業

  各学校で,わかる授業や熱中・感動体験活動,地域との連携・協力によって行う教育活  三等に対して財政支援を行う。2009年度は全小中養護学校86校で実施されている。

③外国語指導助手による英語教育推進事業

  小学校への外国語活動の必修学統を受けて,小中学校での英語教育等や国際理解教育の  一層の充実を図るために,2009年度は13人を配置した。

④ようこそ『まちの先生』事業

  生涯学習人材バンクや各学校の持つ地域の人材を学校に招聰し,教育活動の支援を行う。

 2009年度は1,548人である。

⑤子どもふれあいサポート事業

  いじめ,不登校についての対応と予防を図るために,適応指導教室を運営し,心ふれあ  い相談員等を配置する。2009年度は相談員を34校に配置し,20回の会議を開催している。

⑥開かれた学校づくり推進事業(地域連携フォーラム・いきいき教育推進懇談会)

  地域に開かれた学校づくりを推進し,幼稚園・保育園・小中学校の連携を進めるため  中学校区ごとのフォーラムと全市的な懇談会を開催し,市民への啓発に努める。2009年度  は地域連携フォーラムが26中学校区で実施され,推進懇談会1回が開催された。

次に,教育総務課が担当するものとして2つの事業がある。

①教育環境の整備

  児童生徒数の推移や校舎等の老朽化・耐震化を踏まえ,増改築や大規模改修,グランド       一41一

(14)

新潟県長岡市のまちづくりと次世代育成計画のあり方

  整備等を進め,児童生徒の体位・競技力の向上,地域への学校開放等を資するため,屋内   運営場等の体育施設の整備を進める。2009年度では小学校16校,中学校6校,養護学校1   校で行われた。

 ②学習情報化の推進

   全教室に校内LANの配線を行い,パソコン等情報機器を各普通教室に2台,特別教室   用に小学校6台を整備する。2009年度にLAN配線整備を完了し,小学校59校,中学校26校,

  養護学校1校に情報機器整備を行う。

 国際交流課では,1つの事業がある。

 ①外国出身の児童生徒に対する支援

   2009年度からの新規事業であり,母国語と日本語の二ヶ国語対応が可能な支援者等を学   校に派遣し,学校生活適応などへの支援を行う。

 中央図書館では,2つの事業がある。いずれも2009年度からの事業である。

 ①図書資料などの情報提供による学習支援

   小学校へ学年に応じた本を希望冊数貸出す学校配本を実施(!箱40冊,概ね学級数貸出)。

  小中学校の総合的な学習の時間や調べ物などの際に,図書資料や情報を提供する。

 ②図書館による保育園,幼稚園,小学校の読書推進事業

   保育園幼稚園,小学校へ職員を派遣し,読み聞かせや絵本の紹介などを行い,保護者   に対しても,絵本の選び方や図書を紹介する。

 教育センターでは1つの事業を行っている。

 ①教員サポート連成塾

   市立小・中・養護学校の教員の資質や指導力の向上を目指して,研修生自身の自己研鐙   を支援し,子どもに信頼される教師,子どもに感動を与えられる教師の実現に向けてのサ   ポート事業である(21)。

 以上,具体的な12の事業を展開し,教育環境の整備に努めている。

 特に学校教育課と教育総務課,教育センターの事業は,教育の環境整備と教育の質の向上 に大きく寄与しているといえる。長岡市への市町村編入は,この広域地域の教育向上をはかっ ている。編入前の市町村では,財政的課題や教育人材の点でここまでの教育環境向上は無理ぞ あったろう。大都市への市町村の編入による大都市の拡大により,明確な都市計画の下では,

教育方針などのソフトの面と教育環境の質的向上ができるというハードの面という両面で成果 のあったものといえる。市全体での教育政策が優位で,各学校での独自の取り組みが少ない市 主導型の教育実践が展開されているといえる。

 長岡市は今まで見てきたように,市の総合計画や次世代育成計画,ニーズ調査などを考慮し ての各種計画の練り直しなど,明確なまちづくりのコンセプトを基にまちづくりと各種事業が 展開されている。総合的なまちづくりの将来的なコンセプトは展開されているが,それを具体 的にどのように展開していくのか。また,短期の計画ばかりでなく中期,長期の計画が重要に        一42一

(15)

なってくる。なぜなら,日本のこれからの人口推計によると人口減少の進み具合が大きいから である。次に,この点について見てみよう。

4 今後の人口減少とまちづくり

(D 人口減少の現実味

 現在 日本の人口減少の推移が意外にも大きかったため,その深刻さと共に早急の対策が求 められている。2013年3月に国立社会保障・人口問題研究所から出された2010年から2040年ま での推計(22)から見ると,全国では,2010年(平成22年)は1億2805万7千人で2020年は1億 2410万人,2030年は1億166!万8千人,2040年は1億727万6千入となり,2010年を100とした 場合の指数では2040年では83.8となる。全国と新潟県及び前回も検討を加えた市町村も含めて 長岡市を含む3市町を抽出してみると表6のようになる。

表6 総人口の推移及び指数(2010年=100とした場合)

地 域 総人口(人)      ※全国の単位は(千人) 指 数

2010年 2015年 2020年 2025年 2030年 2035年 2040年 2025 2040 全  国 128,057 126,597 124,100 120,659 l!6,618 112,124 107,276 94.2 83.8

新潟県 2,374,450 2,297,441 2,209,986 2,112,473 2,009,105 1,902,238 1,790,918 89.0 75.4

新潟市 81!,901 800,925 783,049 759,686 732,298 701,875 668,345 93.6 823

長岡市 282,674 274,510 265,066 254,389 242,891 230,832 218,190 90.0 772 十日町市 58,911 55,643 52,345 48,967 45,611 42,392 39,287 83.1 66.7

 また,年齢別(0−14歳15−64歳,65歳以上,75歳以上)人口割合を全国と新潟県,長岡 市を抽出してみると表7のようになる。

表7 年齢別(0−14歳,15−64歳,65歳以上,75歳以上) 人ロ割合

地域 0−14歳人口割合(%) 15−64歳人口割合(%) 65歳以上人口割合(%) 75歳以上人口割合(%)

2010年 2025年 2040年 2010年 2025年 2040年 2010年 2025年 2040年 2010年 2025年 2040年 全 国 !3.1 11.0 10.0 63.8 58.7 53.9 23.0 30.3 36.1 11.! 18.1 20.7

新潟県 12.7 10.5 9.7 61.0 55.2 51.6 26.3 34.3 387 14.1 20.2 23.8

長岡市 13.2 11.1 1α2 61.3 55.7 52.4 25.5 33.2 37.4 !3.7 19.5 22B  長岡市の0−14歳人口の割合では,全国平均よりやや多く,全国平均より低い新潟県の中で は多いといえるが,2040年には10.2%と14歳以下の子どもが1割しかいないという深刻な少子 化になっている。2010年では,ほほ同比率である75歳人口と比べると,2040年の75歳以上は 22.8%と倍以上になり,65歳以上は37.4%とやや全国よりも多くなる。急速な高齢化が進行し ていくことがわかる。生産人口は2010年の61.3%から2040年には52.4%まで減少していくこと になる。

 さらに,2014年5月に政策発信組織「日本創成会議」が公表した「消滅可能性都市」は各方 面に衝撃を与えたといえる。この推計値は,国立社会保障・人口問題研究所の2013年のデータ        一43一

(16)

新潟県長岡市のまちづくりと次世代育成計画のあり方

を基にして,最近の都市間の人口移動を加味して2040年の20〜30代女性の数を試算し,2010 年と比較して若年女性の減少率が一50%以上になる自治体を「消滅可能性都市」としている。

全国で896市町村が該当し全国市町村の49.8%にもなっている(23)。

 この推計値の特徴は,現在の人口移動率が収束しない場合の数値を出していることであり,

国立社会保障・人口問題研究所が出している人口割合だけではないため,当然,人口集中地域 以外の若年女性の人口比率が大きく減少することになる。20〜30代女性の人口比率が減るこ とにより少子化が一層進み,そうした市町村は存続が危ぶまれるということである。

 新潟県の前回も検討を加えた市町村も含めて4市町を抽出して表8として挙げてみる。

表8 新潟県の4市町別「20〜39歳女性」の将来推計人口

(人)

国立社会保障・人口問題研究所推計 市 町 2010年

告l口

 2010年,

Q0〜39歳女性

2040年 告l口

 2040年,

Q0〜39歳女性

若年女性人口変化率

@2010→2040 新 潟 市 811,901 100,404 668,345 60,068 一40.2%

長 岡 市 282,674 31,213 218,190 19,247 一38.3%

十日町市 58,911 4,873 39,287 3,090 一36.6%

津 南 町 10,881 750 6,670 419 一44,1%

人口移動が収束しない場合 市 町 2010年

告l口

 2010年,

Q0〜39歳女性

2040年 告l口

 2040年,

Q0〜39歳女性

若年女性人口変化率

@20!0→2040 新 潟 市 811,901 100,404 663,412 59,567 一40,7%

長 岡 市 282,674 31,213 210,496 17,523 一43,9%

十日町市 58,91! 4,873 36,141 2,271 一53.4%

津 南 町 10,881 750 6,305 298 一60.3%

 新潟県の30市町村(20市,6町 4村)のうち,20市の半数にあたる10市が一50%を超えて

「消滅可能性都市」になっている。10町村では!町1村を除く8町村が該当する。そのうち7 町村は,一60%を超え.ていてより深刻な状態である。新潟県は60%の市町村が「消滅可能性都 市」になっている。

 表8で挙げた4市町は新潟県の二大都市であるため,「消滅可能性都市」にはなっていない が,人口移動を考慮に入れた数値で見ると,人口移動に左右されないのは新潟市だけである。

二番目の大都市である長岡市でも人口移動によって一5%程度の影響を受ける。十日町市と津 南町は一16%台の影響を受けている。今から26年後の都市の激変ぶりがうかがえる。

(2)人口減少を考慮したまちづくりの展開

 今日,人口動態の推計が出され,特に,少子高齢化の進行の速さと人口減少の進行に対応が 遅れているといえる。国としての対応と各市町村の対応には違いがあるはずである。まず,国

レベルでは,出生率の明確な目標値を決めて,その実現に向けての国レベルの施策を実行して いく必要がある。今日のように低い出生率で維持をし続けていけば,人口減少は進んでいく一 方である。この点について人口の長期推移から次のような指摘がある。「仮に2025年に出生率       一44一

(17)

=1.8が実現し,さらに2035年に出生率=2.1となった場合,日本の総人口は約9500万人の水準 で安定する。一方,出生率=1.8の実現が5年遅れ,出生率=2。1の実現にそれから20年かかる 場合には,安定人口は約9000万人となり,500万人ほど減少することとなる。目標達成の時期が,

将来の安定人口の規模に大きな影響を与えることがわかる。なお,近年の傾向がこのまま続く と仮定したケースでは,2090年の人口は5720万人となり,しかもその後も減り続けることにな る・仰といわれている・雌率の回復が速やかになされた場合には「人口の安定化のほかに,

高齢化率の低下をもたらす。従来の中位仮定では,高齢化比率は2090年に41.2%まで上昇する が,出生率=2.1が達成されると,2090年には国全体が若返っていく時期を迎えて,高齢化比 率も26。7%まで低下する。」(25)と指摘されている。出生率の回復が,人口規模の維持と高齢化 率のバランスをとることが可能となる。そのために,出生率向上のための総合的な施策の実行 が急務といえる。

 つまり,日本が存続可能な人口維持をするかどうかは,これからの速やかな出生率の向上に かかっている。この点に関しては,先進国で出生率向上を成功させている国々があり,出生率 向上のための施策などが明らかになっているため,施策モデルとして採用することは可能であ る。先進国で合計特殊出生率がL7以上の国は,オーストラリア,イギリス,デンマーク,スウェー デンがあり,さらにL8以上の国ではフィンランド,フランス,ノルウェー,アイルランドな どがある。2.0以上にはアメリカ,ニュージーランド,アイスランド,メキシコ,トルコ(い ずれも2004年調査,アメリカは2007年調査)などがある(26)が,事情がやや異なるので,やはり,

フランスや北欧の施策が大いに参考になるであろう。

 次に,市町村レベルの対応では,先の「消滅都市可能性」が示すように,人口減少と人口の 流失が指摘されていたが,この点を少しでも防ぐためには,「地方において人口流出を食い止 める『ダム機能』を構築し直さなければならない。同時に,いったん大都市圏に出た若者を地 方に『呼び戻す,呼び込む』機能の強化も図る必要がある。地方の持続可能性は,『若者にとっ て魅力のある地域かどうか』にかかっているといえよう。すなわち,『若者に魅力のある地方 中核都市』を軸とした『新たな集積構造』の構築が目指すべき基本方向となる。」(27)と指摘され,

これを実行するためには「『選択と集中』の考え方を徹底し,人口減少という現実に即して最 も有効な対象に投資と施策を集中することが必要となる。」(28)この「選択と集中」とは,次の ようなことも示している。つまり,「このままでは集落がなくなるからといって,各集落のイ ンフラを充実させて人口減少を押しとどめようとしてきた。しかし,すべての集落に十分なだ けの対策を行う財政的余裕はない。結局,小粒の対策を総花的に行うことになってしまい,防 衛戦を築くには至らなかった。」(29)人口減少でどの市町村も財政が厳しくなっている。体力の あるうちに,現実的な具体的な存続維持できるまちづくりの具体的な施策の構築に踏み出さな ければならない。

(18)

新潟県長岡市のまちづくりと次世代育成計画のあり方

おわりに

 新潟県第二の大都市である長岡市の今までの人口推移と今後の人口動態を考慮にいれなが ら,日本全体の人口減少期に入った現状のまちづくりとその基礎になる次世代育成のあり方を 中心に検討してきた。長岡市は市全体のまちづくりのコンセプトを明確にしながら,現時点で の新しいまちづくりの視点を取り入れながら,網羅的に取り組んでいるといえる。また,次世 代育成のための子育て支援や学校教育なども市主導型のきめ細かい取り組みもなされている。

次世代育成にあたってもまちづくりの総合計画と連動させながら,なおかつ市民力や地域力を 活かしながら市民のニーズを掘り起こしながら有効的な施策を行っている。

 一方で,市主導型の取り組みは,全体的には網羅的に行っているようにみえるが,学校教育 の場合は,各学校への環境整備や教育の質の向上につながり実行性を持っているといえる。し かし,市全体で行う事業では,市民全体へのサービスとしてはそのサービスに預かる割合は少 ないものとなっている。きめ細かい市民サービスの充実が今後も求められる。

 さらに まちづくりの基本計画も,基本コンセプトとしては多方面に配慮した計画を立てて いるが,これを具体的に大胆に実行していく段階になっている。また,次世代育成行動計画も 次世代育成支援対策推進法の時限立法の10年計画が2015年度で終了となり,新たに!0年の延長 がなされた。この延長に連動する形で,新たな10年ばかりか,それ以後の長期の展望を持った プランを提出し,実践していく段階に入っている。本格的な実行力のある計画と行動をしてい かないと,2040年の厳しい状況に対応できない。

 次世代育成や若者の人材育成,子育て環境産業の育成子育てしゃすい職場環境地域文 化の継承地域社会の存続など,多くの課題が山積している。人口動態の変化,特に人口減少 や世帯構造の変化,少子高齢化の急速な変化を考慮した大胆なまちづくり施策と次世代育成環 境の整備が,重要課題といえる。合併によってまちの人口規模を大きくするという小手先の施 策では,抜本的な解決にはならなく,問題の先送りにしかならない。交流エリアの拡大はあっ ても,ある程度の人口の減少を前提に入れながら,まちとしての固有のアイデンティティを明 確にし,文化や生活の質の向上をめざした市民参加のまちづくりが求められている。今後のま ちづくりは,長岡市でも指摘されていたように市民力や地域力が重要なキーポイントとなる。

各地域で,この内実を作り上げながら,市民とまちが共働したまちづくり実践の展開が課題と

なる。

一46一

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