放置竹林の整備と拡大・侵入防止対策について
近年、全国各地で竹林の拡大とそれに伴う森林の荒廃が問題となっています。 鳥取市においても、竹についての知識、竹林の整備の方法や侵入防止策、また 竹林や竹の活用策等について、市民の皆様に積極的に情報を提供してまいりま す。● 竹の生態と特徴について
竹はイネ科タケ亜科に属し、温暖で湿潤な環境に生息します。日本、中国、 台湾、南アジアといった地域で多くみられ、日本では特に九州地方に多く繁 殖し、中国、四国地方においても多くみられます。また、日本では主に三大 竹といわれるモウソウチク、マダケ、ハチクが繁殖しています。 通常、竹は地下茎を広げることで繁殖域を拡大していきます。成長力が非 常に強く、わずか2~3ヶ月で高さが10~20mにもなり、成長するのに あまり空間と光を必要としないという特徴がみられます。 日本では戦後、タケノコの栽培や竹材の生産が盛んになり、多くの竹林が 植えられました。しかし、近年、中国等の諸外国から安価なタケノコや竹材 の輸出が増加するとともに、代替資材の普及、また、農家の高齢化や担い手 不足等の要因により、手入れのされていない放置された竹林が増加していま す。 [モウソウチク]…日本のタケ類の中で最大。高さ約25m、地下茎は約1 5mにも成長し、タケノコは食用として供され、茎は 竹細工等にも使用される。 [マダケ]…高さ約20mに成長し、太く長い地下茎を地面に張り巡らす。 稈は弾力性に富み、弓、竹刀、尺八・物差しや建材に利用さ れる。 [ハチク]…直径は3~10cm、高さは10~15m 程で、日本では、 モウソウチク、マダケに次いで多くみられる。写真1 拡大する竹林
●竹林の放置と周囲への拡大・侵入の影響について
竹林の放置、また竹が造林地や農地、里山へ拡大・侵入することにより、 以下のような森林の持つ多面的な公益的機能への影響が考えられます。 ◆他の樹木への影響 樹高の成長に多くの光を必要としないという竹の特性から、森林内に拡 大・侵入していき、光をさえぎってしまうことで、森林内の主要な樹木が 育ちにくくなり、枯れる場合もあります。 ◆森林内と周辺の生物多様性への影響 放置された竹林では、竹が密集することで林内が暗くなります。その過 程で竹よりも樹高の低い樹種は育ちにくくなり、下草も生えず植生が単純 化してしまいます。また、鳥類や昆虫類の種数も減少し、生物多様性の低 下を招くことが考えられます。 ◆水源かん養機能への影響 竹林では地表約30cmに地下茎が集中しているため、雨水が地中深く まで浸透しないことで、森林の持つ水源かん養機能への影響が考えられま す。 ◆土砂災害、土壌崩壊への影響 放置された竹林では地下茎が枯死し、また林床の植生も少ないことから、 土砂災害、土壌崩壊等の防災面での問題を指摘する見方もありますが、竹 林がもたらす影響については明らかにはなっていません。表1 竹林面積の推移 (単位:ha) 年度 鳥取 国府 福部 気高 鹿野 青谷 鳥取管内計 河原 用瀬 佐治 八頭管内計 鳥取市計 鳥取県 昭和60年度 248 77 35 26 36 101 523 128 26 50 204 727 2,313 平成10年度 267 96 34 35 38 124 594 147 26 52 225 819 2,866 比較(H10/S60) 107.7 124.7 97.1 134.6 105.6 122.8 113.6 114.8 100 104 110.3 112.7 123.9 平成15年度 274 95 34 55 47 143 648 147 27 52 226 874 2,948 比較(H15/S60) 110.5 123.4 97.1 211.5 130.6 141.6 123.9 114.8 103.8 104 110.8 120.2 127.5 平成17年度 647 226 873 2,968 比較(H17/S60) 123.7 110.8 120.1 128.3 鳥取市域面積:76,564ha ※鳥取県林業統計 林野面積:54,744 ha 71.50%(林野率) 竹林面積:873ha 1.60%(林野面積に占める竹林の割合) 以上のような、自然環境への影響以外にも、荒廃した竹林や造林地、里山 へ拡大・侵入した竹林は、周囲の景観へ影響を与えてしまうということも問 題となっています。
● 鳥取市の竹林の現状について
現在の鳥取市域の面積でみると、昭和61年度年時点で、市内の民有林の 内、竹林の面積は727ha であったのが、昭和17年度では873ha と、 約19年間で20%増加しています。 一方、市域の民有林の総林野面積における竹林面積の割合をみると、平成 17年度時点で 1.6%となっています。 また、平成10年度から17年度までの7年間の竹林面積の推移をみると、 約55ha の増加となっていますが、平成13年度から17年度までの4年間 では、竹林面積の拡大はみられません(表1参照)。 以上のようなことから、現在、鳥取市では竹林整備や拡大防止についての 緊急な対策が今すぐ必要という状況ではありませんが、今後、放置竹林の対 策に取り組まなければ、森林荒廃等が進行する可能性も考えられます。● 竹林の整備と拡大・侵入防止の方法について
現在、全国各地でタケノコ栽培などによる竹林整備や竹の拡大・侵入防止 策について、様々な取り組みや試験が試みられています。以下では、全国各 地の取り組みの中から、いくつかの事例についてご紹介していきます。 (1)タケノコ栽培のための竹林の整備 鹿児島県森林技術総合センターでは、タケノコの栽培に適した竹林内の 環境を整備するために、以下のような方法が紹介されています。 ◆竹の伐採 10月~12月頃、親竹の更新と地下茎の伸長を促進するため伐採を行 います。親竹の成立本数を10アールあたり150から300本とします。 また、5年輪伐で、毎年立竹本数の20%を伐採します。 ◆親竹の仕立て方 4月上旬頃、発生したタケノコから親竹を選定します。選定基準として、 ①地上10cm程伸びたもので、地際直径が8~10cm前後のもの ②先端が直立せず湾曲し、とがっているもの ③葉先がやや開き、小舌、肩毛等が黄色味がかったもの また、親竹として残そうとするタケノコを成長させるため、同じ地下茎 から出たタケノコは早めに掘り取ることが必要となります。 ◆施肥 肥料は森林組合等で扱っている森林化成肥料が使えます。時期として、 速効性肥料は春期発筍前、地下茎の伸び盛り期と充実期に分けた方が(2 月、6月、10月の3回)効果的とされています。また、一度に大量の肥 料をまかず、数回にわけて施肥するようにします。 ◆除草と中耕 繁茂の都度行い、施肥前には必ず実施します。まず、雑草等の根を掘り 起こす程度にし、段々と深く耕していき、最終的には15cm位まで行い ます。◆敷きわら 7月頃、保水力を高め、土壌の乾燥を防ぐため行います。降雨前、また 11月以降は行わないようにします。 ◆土どめ 伐竹材や不良材等を等しい高さに並べ、固定してから雑草や落葉を集め 土どめとし、大体2~3mおきに設置します。土どめは固定せずに、1~ 2年おきに位置を変えることで、タケノコがまんべんなく発生しやすくな ります。 ◆灌水(かんすい) 時期は、夏期の旱天続きの場合(7月梅雨明け~9月)に行います。地 表面から20~30cmの深さで、夏期にPF2.5~2.7(2.5とはやや 乾~潤,握ってみて手のひらに湿気が残る状態で,2.7とはやや乾,湿気 が少し残るくらいの状態)程の灌水を行います。 ◆うら止め うら止めには、地表への日当たりをよくしてタケノコの発生を早くし、 また、風倒害を防ぎ伐採等の作業を軽減するといった効果が期待できます。 時期としては、タケノコの下方の節の新枝の1~2本がわずかに伸びかけ た伸び盛りの頃に行います。方法としては、竹桿を両手でゆすり上方の柔 らかい部分を振り落とすか、または鎌などで先端を切り落とします。その 際、枝が18~20段残るようにします。 (2)竹の拡大・侵入防止のための竹林の整備 成長力が非常に強い竹の繁殖を抑え、拡大、侵入を防止するために、以 下のようないろいろな方法が試されています。 ◆伐採(皆伐、間伐) 香川県森林センターでは、放置竹林対策として竹林の拡大防止に関する 調査を行っています。この調査では、竹林を成長期と成長休止期とにそれ ぞれ伐採して、その後発生する竹の本数、大きさから、時期別の竹林伐採 効果を比較しています。その結果、成長期(8月)伐採については、翌年 の竹は太さについては細いものが多く、伐採後2年でほぼ除去できました。 また成長休止期(3月)伐採では、前者に比べ太いタケが発生するものの
写真2 薬剤の注入 数は少なく、伐採年も含め除去までに3年要したというものになっていま す。 また、静岡県富士竹類植物園によると、7月下旬から8月上旬に地上部 の竹を全て伐採することで、地下茎の伸長を防ぎ、効果的に竹を枯殺でき ると紹介されています。この方法では、7月から8月に皆伐を行い、その 後9、10月頃、そして翌年の7月を目安に竹を切り、またタケノコにつ いては出なくなるまで切り取ることで、効果的、効率的に竹を枯殺できる とされています。 ◆地下茎の造林地等への侵入防止策 地下茎が貫通しない素材(トタン波板等)を埋設することで、竹の侵 入を防ぐ方法も有効とされています。深さ50cm程の溝を掘り(竹の 地下茎は30cm程の深さで伸びていくため)、埋設資材を設置します。 この侵入防止対策では、定期的な埋設資材の維持管理、つなぎ目をなく し設置する工夫等が必要となります。 また、タケノコの発生は4~5月であり、この間だけ見回り、タケノ コを見付け次第、足で蹴っ飛ばすかカマで切り取るだけで侵入は防げま す。 ◆薬剤の使用による竹の枯殺 竹林の整備には、伐採や地下茎の切断等の手法のほかに、薬剤を用い て竹を枯損させる手法があります。この薬剤を用いた手法では、効率的 に竹を枯らすことができ、竹林の整備において効果的な手法の一つとし て注目されています。香川県森林センターでは、竹の稈に電動ドリルで 穴を開け、霧吹きを改良した注入器具を用いて薬剤を注入する手法の試 験が行われています(写真2参照)。
写真3 薬剤枯殺による根茎調査 ※ (注意) 農 薬 の 使 用 は 土 壌 汚 染 や 水 質 汚 染 等 、 様 々 な 危 険 が 伴 い ま す。使用にあたっては、注意事項を遵守するとともに、適用の範囲、 使用方法、また周辺の関係者への周知が必要です。 鳥取県においても、平成17年度から、林業試験場で「竹林拡大の実 態解析と防止対策」に取り組んでおり、薬剤を用いた手法についても試 験を重ねています(写真3参照)。
● 竹林、竹材の活用について
以上のような竹林の整備方法や竹の拡大・侵入防止策だけでなく、竹材を活 用し商品化していこうという取り組みや地域全体で竹林の整備を行う取り組み、 また、竹を観光資源として有効に活用している取り組み等、全国各地で様々な 取り組みが行われています。写真4 穂先タケノコ 写真5 穂先タケノコ試食会 ◆タケノコや竹材を用いた商品の開発、研究の事例 タケノコ商品の事例として、穂先タケノコ (※50cm以上に大きく成長した)がありま す(写真4参照)。穂先タケノコは、伐採が容 易であり、シャキシャキとした食感が楽しめま す。現在、日本各地で穂先タケノコをPRし、 穂先タケノコの普及とタケノコの消費拡大を 目指した取り組みが行われています。鳥取県林 業試験場においても、研究課題の一つとして取 り組まれるとともに、料理方法等についてもP Rを行っています(写真5参照)。
また、竹炭や竹細工、また建築材等として付加価値を付け商品化する取り 組みもあります。特に竹炭は、消臭、空気の浄化や湿気の吸収等様々な機能 があり、各地で商品化されています。鳥取県内においても、10年以上前か ら、江府町柿原地区で竹炭生産が取り組まれています。柿原地区では、地区 内の竹を持ち寄り、年10回程度窯入れを行って約4トン生産しています。 同時に煙から竹酢を採取し商品化しており、メーカーと共同で竹酢を用いた 洗剤も開発しています。鳥取県公式サイト(文末、参考資料参照)では、以 上のような取り組みのほか、竹炭の生産により地区内の竹林の拡大が抑えら れており、竹炭作りが地域の団結を強めているといったことも紹介されてい ます。 ◆地域全体で竹林の整備に取り組む事例(大阪府 島本町) 大阪府島本町は大阪市内から約26kmに位置し、総面積の約6割を森林 が占めており豊かな自然に恵まれた地域です。従来、島本町ではタケノコ 生産が盛んでしたが、現在は放置竹林が拡大しており、人工林の荒廃や景 観の破壊が問題となっています。こういった状況から、森林(竹林)所有 者やボランティア等関係者が協働した森林(竹林)の保全整備が取り組ま れています。具体的には、竹林所有者、ボランティア、森林組合、行政な ど多様な主体が参加した「森づくり委員会」が組織され竹林整備が進めら れています。 また、森林ボランティアやNPO、竹資源活用に関連する事 業者などが参画した竹林管理の実態調査、整備効果の検証といった取り組 みが行われています。 ◆竹を観光・イベントに活用している事例(大分県 竹田市) 大分県竹田市は、九州の中央、大分市から約50km に位置し、総面積の 約65%を山林が占めています。自然環境に恵まれている一方で、交通ア クセスの不便さといった中山間地特有の問題を抱えています。 竹田市は、地域振興の一環として農山村のグリーンツーリズムに取り組 んでいます。その中で、竹灯籠の光で町を映し出す「竹楽」という行事が 注目されています。
写真6 竹灯籠とライトアップされた町並み この行事は、竹田市に豊富に存在する竹資源を活用した竹灯籠を用いて、 夕方から町並みをライトアップします。約2万本の竹灯籠が、市中心部の 武家屋敷や寺の点在する歴史的情緒のあるエリアに備えられ、幻想的な雰 囲気を作り出すことに活用されています(写真6参照)。 以上のように、現在、全国各地で竹林の整備や拡大・侵入防止策、また竹林 や竹材の有効利用について、様々な取り組みが行われています。 今後、鳥取市においても竹林の拡大・侵入防止対策や竹の活用等について、 市民の皆さんのご意見をいただくとともに、県、林業試験場、森林組合等とも 連携し、竹林に関する知識の普及や情報提供に積極的に取り組んでまいります。 ◆竹に関する身近な情報がありましたら、お寄せ下さい。 情報提供先:鳥取市役所 農林水産部 林務水産課 Tel:0857-20-3235 Fax:0857-20-3047 Email:[email protected]