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「陸と海,干潟と干潟,人と生物のネットワークで環境生

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平成 26 年 10 月 22 日 第 115 回海洋フォーラム要旨

SIDS サモア会議と『島と海のネット』の立上げ

~第 3 回国連小島嶼途上国会議からの報告~

海洋政策研究財団 常務理事 寺島 紘士 主任研究員 古川 恵太

【講演要旨】

1. 第 3 回国連小島嶼途上国会議の背景(寺島)

9 月に太平洋の国サモアで第 3 回の小島嶼開発途上国国際会議という国連の会議があり、国連 の NGO 資格を有している海洋政策研究財団はメジャーグループの一員として参加してきた。そ の会議の内容と、その会議で我々がやってきたことを紹介し、併せて、太平洋に広がっている小 島嶼からなる開発途上国の話もさせていただきたい。私と古川の 2 人で話をさせていただく。 太平洋島嶼国について 会議の話の前に、まず太平洋地域の変化について話をしたい。この 50 年間で太平洋の島々の 地位が変化しているし、日本と太平洋との関係も変わっている。 スライド(p.2)から分かる通り、様々な太平洋島嶼国がある。ちなみに今回日本からサモアに 行くのに、いったんニュージーランドのオークランドまで西に飛び南に下がってから再び北に 上がっていった。 20 世紀後半に太平洋地域に起こった変化は 2 つあり、1 つは島々が独立して島嶼国になった ということである。第 2 次世界大戦前は日本も国際連盟の委任を受けてミクロネシアを統治し ていたし、欧米豪等が海外領土等として島々を統治していた。1962 年にサモアが独立し、その 後ナウル、トンガ、フィジーなどと続き、1994 年のパラオまで順次独立していった。他にもニュ ージーランドとの自由連合という形のクック諸島などがある。このような状況が我が国では必 ずしも十分に認識されていないが、きちんと把握しておく必要があると思う。 もう 1 つの変化は、国連海洋法条約である。この条約は長い時間をかけて議論されて 1982 年 に採択され、1994 年に発効した。海洋の自由から海洋の管理に舵を切った包括的条約であるが、 中でも島嶼国との関係で重要な変化は、排他的経済水域(EEZ)制度ができたことである。200 海里までを沿岸国の EEZ と定め、沿岸国の主権的権利・管轄権と義務を定めている。即ち、「海 底の上部水域並びに海底及びその下の天然資源(生物資源であるか非生物資源であるかを問わ ない。)の探査、開発、保存及び管理のための主権的権利並びに排他的経済水域における経済的 な目的で行われる探査及び開発のためのその他の活動(海水、海流及び風からのエネルギーの生

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産等)に関する主権的権利」、「人工島、施設及び構築部の設置及び利用、海洋の科学的調査、海 洋環境の保護及び保全」についての管轄権、及び「この条約に定めるその他の権利及び義務」で ある。環境に関する保護・保全の責任、資源に対する権利など、その海域の管理に関して相当に 包括的な権利と義務を定める制度であるが、このような EEZ の内容についてはまだ必ずしも十 分に理解されていないのではないかというのが個人的な感想である。 こうした EEZ の制度を太平洋島嶼国について見ていくと、スライド(p.5)の通り、太平洋の 特に西側と南側の大半はどこかの国の EEZ で覆われている。これが何を意味するかが、今回の ポイントのひとつである。太平洋に 10 以上の主権国家が生まれてそれぞれが国として行動する とともに、国連などの国際社会では太平洋島嶼国としてまとまって活動しているのが現実であ る。また海洋のガバナンスから見ると、海洋全体の約 4 割が EEZ という制度によっていずれか の国家の管轄下に入ったわけであるが、太平洋については大半、特に西側はほとんどの海域が入 っている。そういう状況であるので、小島嶼国の果たす役割は、この 50 年で大きく変わってき ており、それに伴い日本との関係も大きく変化してきている。安倍総理も地球儀俯瞰外交と言っ ているが、日本の南に展開し、我々に比較的なじみが深く、また島嶼国の人々も日本に対して親 しみを感じている、そうした地域をもっと重視することが必要ではないか。 小島嶼途上国(SIDS)の抱える課題

小島嶼途上国は、国連等では SIDS(Small Island Developing States)と呼ばれている。SIDS が 抱える課題について先に説明しておく。 先進国による信託統治や海外領土、その後の小島嶼国としての独立、そしてグローバル化の進 展の中で、国際協力などの援助により、缶詰などこれまで小島嶼国の生活にはなかったものが入 ってくると大量のゴミが出る。それを処理するノウハウもスペースもなく、ゴミ問題で苦労して いる。あるいは森林伐採なども問題になっている。小さな国でそこの木を切ることの影響は、大 きな国と比較してより深刻である。 周りの海も大きな問題で、海洋は無限ではないのでその生態系を踏まえて持続可能な形での 漁業をやらなければならない。EEZ が出来たことで沿岸国が管理することになったが、島の周り の海域の利用はしても管理をすることは簡単ではなく、取締りが不十分な中で違法漁業など様々 な問題が起こる。漁業の問題は島の人々にとって大事であることはもちろんだが、地球上の漁業 資源の管理の問題として我々にとっても大事な問題である。 その他、海域資源の開発が可能になってくると環境への影響も出てくるが、小島嶼国がいきな りそうした問題に直面する状況が出てきている。 それから良く言われるのは気候変動の問題で、海面上昇によって島が水没するということが 言われており、最近でもソロモン諸島でそういう事態が報道されていた。直接的な海面上昇以外 にも、気候変動・変化によって台風やハリケーンや高潮などの激化・極端化が起こり頻度も多く なるなどの影響も出てきており、SIDS が抱える大きな課題の 1 つである。 このように、SIDS が直面している問題には、島自体の管理の問題、島の周辺の管理の問題、 気候変動などの問題がある。SIDS が抱える課題というのは SIDS だけの問題ではなく、国際社 会は、環境と開発の問題、持続可能な開発の問題に様々な行動計画を策定してずっと取組んでき

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ているが、その中で上手く対応できた国とそうでない国がある。対応が進んでいない LDC(Least Developed Country、後発開発途上国)のうち 9 カ国が SIDS であり、行動計画の達成率が低い国 の類型のひとつとして SIDS がある状況である。 国連環境開発会議 そういう状況なので、国際社会では、1972 年のストックホルム環境会議から始まり、1992 年 に有名なリオの地球サミットが開催されて「持続可能な開発」原則とそのための行動計画「アジ ェンダ 21」が採択された。その第 17 章では海洋・沿岸域の保護及び生物資源の保護・合理的利 用及び開発について定めており、その中で SIDS についても取り上げている。SIDS については 特別に国際会議を開くということになり、その 2 年後の 1994 年のバルバドス会議で行動計画が 定められた。2002 年の WSSD におけるヨハネスブルグ宣言でも、SIDS について数項目に渡って 定めており、それを受けて 2005 年にモーリシャスで国際会議が開かれ、モーリシャス実施戦略 が採択されている。それらを引き継いで 2012 年のリオ+20 の成果文書「The Future We Want」で は、海洋について 20 項目の行動計画が定められたほか、SIDS についても別出しで、3 回目の国 際会議の開催などが定められた。それを受けて開催されたのが今回のサモアにおける第 3 回小 島嶼開発途上国国際会議である。

2. 第 3 回国連小島嶼開発途上国国際会議の内容(古川)

以上のような背景から、第 3 回小島嶼開発途上国国際会議がサモアで開催された。9 月 1 日~ 4 日の 4 日間、115 カ国、548 団体の NGO・国際機関の参加を得、総参加人数は 3500 人と発表 されている。またこの国際会議では、パートナーシップによる SIDS への支援・能力開発などが 取り上げられており、この機会に既存のまたは新規のパートナーシップを登録しようとの呼び かけがあり、299 のパートナーシップが確認された。現在も HP 上で確認可能である。ちなみに、 海洋関係のパートナーシップが 93、そのうち新規のものが 28 あり、そのうちの 1 つを今回私共 が設立した。 サモアについて サモアについてまずご紹介する。人口約 20 万人、陸地面積約 3000 平方キロメートル、EEZ 面 積が約 10 万平方キロメートル、農業・沿岸漁業が主な産業でほとんどが自給用である。サモア 政府が作成したプロモーション動画があるので、解説を交えながらご覧いただきたい(動画再 生)。ご覧いただいているスポーツコンプレックス(競技場の集合体)を会場として利用した。 また、サモアの中には JICA など様々な国際機関が拠点を置いており、各国が支援している状況 が見て取れる。マリエレガオイ首相は SIDS 会議の議長としても活躍し、存在感を示すとともに、 サモア政府を挙げて SIDS 会議を支えていただいた。会議には 3500 人が集まり、その受け入れ 準備のためにゴミ拾いなど様々な活動が行われた。NGO が主体となったと聞いているが、そう した努力のおかげで訪れた際には沿道にゴミ一つ落ちておらず、個人の庭に至るまできれいに

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手入れされていた。こうした作業には、教会など地域のまとまりを作っている団体が大きな役割 を果たしたとのことである。また、会場では、サモアの文化を伝える非常に質の高いダンスパフ ォーマンスなどが披露された。 第 3 回小島嶼開発途上国国際会議の内容 続いて、会議の紹介をする。会議は先程のスポーツコンプレックス全体を活用して行われた。 全体会議と、マルチ・ステークホルダー・パートナーシップ対話(以下、パートナーシップ会合 と省略する)が 2 つのメイン会場で、サイドイベントは外の 5 つのテントで、会場の外でパラレ ルイベントがそれぞれ開催された。 メインの全体会合(プレナリ)では全ての参加国が集い、各国政府がステートメントを読み上 げ、会議に対する意見が表明された。そこでの記録については毎日、公式のジャーナルに掲載さ れ、会場で配布されていた。この全体会合で最終的に採択された行動計画が「SIDS Accelerated Modalities of Action [S.A.M.O.A] Pathway」である。非常に大部のもので、2 年近くをかけて準備 された。29 ページ、124 パラグラフで構成されている。行動計画は、SIDS の重視する課題を列 挙しただけでなく、国際社会の前向きなサポートの姿勢を表したものとして、参加者の間でも広 く支持されていた。 平行して、パートナーシップ会合も開催された。パートナーシップ会合では、政府関係者だけ でなく我々メジャーグループにも発言の機会を与えられ、意見を交換するものである。本会合は テーマ別に開催されており、持続可能な経済開発、海洋と海、生物多様性などについて意見が述 べられた。パートナーシップ会合についても、日々発行されるジャーナルにおいて発言者や発言 内容が公式に記録・報告された。 以上の公式会議と並んで、それぞれのグループがサイドイベントを開催した。我々海洋政策研 究財団とオーストラリアのウーロンゴン大学の ANCORS が共催で、「島と周辺海域のより良い 保全と管理に向けて」と題したサイドイベントを開催し、約 80 名の熱心な参加者を得た。 サイドイベント「島と周辺海域のより良い保全と管理に向けて」 このサイドイベントの背景となる当財団の事業について説明する。2009 年から 2011 年までの 3 ヵ年、日本財団からの助成を受けて「島と海の国際セミナー」を ANCORS との共催で実施し、 国際共同政策提言「島と周辺海域のより良い保全と管理に向けて」を発表した。第 2 期として、 2013 年から 2015 年までの 3 ヵ年、同じく日本財団からの助成を受けて、国際セミナーを実施し ている。そこで国際共同政策提言をブラッシュアップし、島の管理と保全、周辺海域の管理、気 候変化・変動への対応という 3 つの課題について、島嶼国側と国際社会側がどのように取組むべ きかを提言にとりまとめ、SIDS の寄与文書として提出した。この内容は SAMOA Pathway 行動 計画にかなりとりいれられている。サイドイベントでは政策提言の内容を紹介すると共に、その 実現のための枠組を構築すべきという提案を行った。

次に、サイドイベントの中身について紹介する。冒頭に、当財団の寺島常務が今回のサイドイ ベントの開催趣旨説明を兼ねて開会挨拶をし、寺島常務と ANCORS のケンチントン教授が共同

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議長となって会議が始まった。最初に日本政府かいようを代表して外務省国際協力局の宮森上 席専門官からご挨拶いただいた。宮森氏からは、海洋鉱物資源問題の重要性や、日本は津波・台 風などの自然災害からの復興の経験に根ざした協力をしていきたい旨をお話いただいた。また、 パラオのレメンゲサウ大統領からは、パラオに対する日本からの援助に謝意が表されると共に、 海洋保護区の設定・運用、違法漁業抑止への注力などの問題意識が披露され、我々の政策提言に 盛り込まれた取組みに期待するご挨拶をいただいた。 サイドイベントの第 1 部では、国際セミナーに参加した専門家が政策提言の内容について紹 介した。オークランド大学のケンチ教授は、島の海岸線の変化の現状について報告し、包括的な 島の管理を進めながら対処していく必要性について指摘した。共同議長のケンチントン教授は、 島およびその周辺海域の管理における視点から、島ごとに問題が異なるので地域ごとに適切に 対応していくことの重要性を指摘すると共に、科学的・地域的知見の融合と、ガバナンスの整備 の重要性について述べた。島嶼国サイドから参加した太平洋共同体応用地球科学部(SOPAC/SPC) のスワドリングさんは、深海底の鉱物資源開発のプロジェクトについて発表した。これは EU と 共同して実施しているもので、産業として開発していくことの重要性と難しさ、制度枠組・計画 の必要性を指摘した。当財団の小林研究員は、地域社会に立脚した利害関係者による島の資源の 持続可能な管理についてパプアニューギニアやタイなどの事例を紹介し、外部専門家としての ファシリテーターを派遣することなどの支援が効果的であること、地域的社会の知見による支 援の重要性などを指摘した。当財団の古川主任研究員は、日本における沿岸域総合管理の事例を 参照しながら、客観的評価に基づく管理の推進、ボトムアップの手法を用いた管理の推進、市が 策定している総合計画等に基づくトップダウン型の推進などの様々な事例を紹介しつつ、島の 発展に寄与するツールとして沿岸域総合管理の取組みを推奨した。

3. 「島と海のネット」設立宣言の採択(寺島)

先程述べた通り、海洋政策研究財団は、ANCORS、そして太平洋島嶼国の関係機関である SOPAC/SPC、太平洋島嶼国フォーラム事務局(PIFS)と議論して 4 者で、島と周辺海域の持続可 能な開発について、島の管理の問題、島の周辺海域の問題、そしてグローバルな気候変化・変動 への対応の問題の 3 つについて政策提言を作成した。そこでこれらの政策提言の実現に向けて 様々な関係者が連携協力して取り組む国際的な協働ネットワークを立ち上げる機会にしようと いうことで第 3 回の小島嶼開発途上国国際会議においてこのサイドイベントを開催した。幸い パラオ大統領など小島嶼国の関係者、そして太平洋島嶼国の関係機関の人々が多数参加したの で、海洋政策として必要な事項を提示した第 1 部に続く第 2 部の冒頭で国際協働ネットワーク 「島と海のネット(Islands and Oceans Net)」の設立を提案した。これに対して当日イベントに出 席した南太平洋大学、太平洋地域環境計画、太平洋ユース協議会などの各機関から、それぞれ積 極的に参加する用意があるとの支持が表明されるとともに、フロアからも The Nature Conservancy、 UNEP、あるいはサモアの NGO の SANGO などから賛成の発言があり、最終的に、参加者全員 の賛成により「島と海のネット」の設立宣言が採択された。本件については、早速、その日の午 後パートナーシップ会合において発言を求めて報告した。

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のように具体的に動かしていくかである。この「島と海のネット」に、支援する側すなわち国際 社会から賛同者を募って政府・企業・NGO などに参加してもらうとともに、島嶼国側も単に政 府だけでなく NGO や地域の人々が参加して一緒になって取り組む仕組みが出れば政策提言の実 施が上手く進むので、そういうところから活動を具体的に立ち上げようとしている。一緒にやっ てもらえそうなところには個別に参加呼びかけをし、具体的にどういった事をやりたいかにつ いてアンケート調査を始めているところである。回答がある程度集まったら、まず、一緒に政策 提言を作った ANCORS、SOPAC、PIFS とコアグループ会合を行って活動計画を立てようと考え ている。海洋政策研究財団が事務局を引き受けているので、会場の皆さまにも是非参加を検討し ていただきたい。ポイントは、政府間のみならず様々なレベルの方々に参加してもらいたいとい うことである。 冒頭に述べた通り、太平洋にはこれだけの島嶼国があり、それらの国々が 200 海里を管理する という時代になっているので、我が国としても太平洋地域をもっと重視していくべきではない かということを提案させていただき、政府のみならず民間レベルでも交流を深めていくことに 少しでも貢献できれば幸いである。ご清聴ありがとうございました。

【質疑応答】

Q:こういった島嶼国の問題に我が国がリーダーシップを取っていくことは重要だと思うが、一 方で日本の中にも小さな島がたくさんあり、ゴミ問題やサンゴ礁の破壊などの問題もある。遠 隔離島や EEZ の問題もある。我々にも沖縄の振興策の問題など解決できていない問題がある 中で、我が国の小島嶼と太平洋の小島嶼国とをどのようにネットワークにつなげていくのか をお伺いしたい。 A(寺島):我々が小島嶼の問題に関心を持ったのは、我が国の島の問題、1 つは沖ノ鳥島の問題 がきっかけである。日本も島嶼国なので、太平洋の小島嶼国と協力して島の問題にとりくんで いったら良いのではないかということで島と周辺海域の管理の問題に取り組み始めたという 経緯がある。ご質問については、1 つは日本の島々で島の問題に取り組んでいるノウハウを太 平洋島嶼国の人々と共有できるのではないかと思っている。もう 1 つは、太平洋島嶼国の問題 に取り組んで来て、そこで得たことを日本の島に当てはめてみたときに改めてやれることが あるのではないかということも出てきている。では、具体的にどうするのかという両方の取り 組みの統合は未だできていないが、沖縄の島々を中心に、新たな島嶼学といった取組みも始ま っているので、太平洋島嶼国の皆さんに日本の島嶼に来てもらってそこで議論するというよ うなことも有効ではないかと思っている。 Q:EEZ の管理は非常に重要で、フィジーでは小さなパトロール船を 4 隻しか持っておらず、他 の国々も似たようなものではないかと思う。仕事柄、常々戦争が起こらないかという視点で物 を見ているが、南太平洋での大きな戦争(内乱)としてはイースター島の例があり、何故 2 つ の民族が殺しあったのかというと、最近の研究では環境破壊と食糧不足が原因だったのでは ないかと言われている。いま南太平洋を見ると、紛争要因は海洋生物資源ではないかと思う。

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ANCORS の安全保障担当の人間が、紛争を招かないためにも海洋生物資源が重要であると言 っていたので、EEZ の管理の分野についても何か提言を出していただければと思っている。 A(寺島):海洋では、今最も問題が起こりやすいのが漁業資源の問題であると思っている。この 問題は小島嶼国にだけに限らない。リオ+20 の海洋に関する行動計画は 20 ほどあるが、その 多くは漁業に関するものである。管理能力があまりに低いと色んな人たちが外から入ってき て新たな問題を引き起こし易い。具体的にどうやるのかは大変な問題だが、我々も非政府の立 場からできることから手をつけていきたい。水産の専門家だけでなく安全保障の専門家など とも協力しながらやっていく必要があると思っている。 Q:海面上昇によってツバルやキリバスが沈むといった話が前から言われているが、会議の中で そうした話がなされていたならば教えていただきたい。 A(寺島):具体的な議論の中では、気候変動も重要な問題で、島が沈むという問題だけでなく島 の形が変わるという問題などが取り上げられていた。気候変動イコール海面上昇ということ だけなく、もっと様々な問題があるのだなといった印象であった。なお、今度の会議ではない が、政策提言作成の議論をした「島と海の国際セミナー」の段階では、気候変動によって島が 水没する問題に対しては、一旦国連に登録された EEZ は島が水没してもその国の権利として 残ると考えてはどうか、その水没する国が、ただ助けてくれというのではなく、その EEZ の 権利を持って他の国と一緒になることができれば水没する小島嶼国の救済策になるのではな いか、という国際法的な議論も行った。とりあえず何を議論したかということでは、そんなと ころである。 Q:これから具体的にプロジェクトベースで考えていくということだが、国々の日本に対する期 待というのはどのようなものか、具体的なことがあれば聞かせていただきたい。先方のニー ズ・期待というものを把握した方が良いのではないかということでご質問させていただきた い。 A(古川):具体的な例としては、科学的データ、客観的証拠というものを提示しながら議論でき れば、という話があった。技術的・科学的データの共有・啓発―が期待されている。 A(寺島):付け加えると、データ・科学的知見を裏付けるもの、技術・ノウハウといったキャパ シティーの問題、最近ではもう少し広く institutional arrangement、制度や政策の問題がある。 先程、島の問題、島の周辺海域の問題、気候変動・変化と 3 つの問題を挙げたが、政策提言に は 4 つ目に能力開発・制度的取組みの強化を入れている。 先程ごみ・廃棄物の問題を挙げたが、そうした問題は島嶼国からの意見を入れて取り上げたも ので、島嶼国の人たちの関心を見てもらうと参考になると思う。島嶼国のニーズと日本でやっ ていることと上手くつなげることなども含めて考えており、そのベースとなるのが、私共が共 同で作った政策提言である。 Q:島嶼国の周辺の EEZ が非常に広く、漁業資源が重要な課題なので、海洋保護区の問題が重要 なのかと思われる。日本の EEZ ともつながっているので、EEZ に関する議論や新しい動きが あれば教えていただきたい。

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A(寺島):今回の会議では、EEZ に焦点を当てた議論は必ずしもはっきりとは出なかった。し かし、海洋保護区については、アメリカなどが外洋においてやっているようなものだけでなく、 日本のような保全しながら利用していく里海的な発想も役立つのではないかと思っていて、 海洋保護区の問題というのは島嶼の人々と話をしていく中では重要なテーマである。ただ、 EEZ については目立った形では出てこなかった。 以上

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