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π電子拡張型ルブレンの合成と物性に関する研究

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Academic year: 2022

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π電子拡張型ルブレンの合成と物性に関する研究

著者 長井 由作

URL http://hdl.handle.net/10236/00026476

(2)

2016 年度 修士論文要旨

π電子拡張型ルブレンの合成と物性に関する研究

関西学院大学大学院理工学研究科 化学専攻 羽村研究室 長井由作

ルブレンは,テトラセン骨格の隣接位に

4

つのフェニル基を 持つ特徴的なπ電子構造を有し,その単結晶は有機化合物の中 で最も高いキャリア移動度を示すことから高い関心を集めて いる。しかし,置換基が密集した構造を持つポリアセンの合成 は優れた官能基導入法が欠如しているため容易ではなく,置換 ルブレン誘導体の合成例は意外にも乏しい。一方,最近当研究

室では,多官能性イソベンゾフランの効率的合成法を開発しており, これを合成ブロックとする環付加反応に より,多環式芳香族骨格を迅速に合成できることを明らかにしている。このような背景の下,本修士研究では,

ルブレンに複数のアルキニル基を導入した π 拡張型ルブレンを標的分子とし, これをジアルキニルイソベン フランを合成ブロックとする環付加反応によって合成することを目指した。また, 得られる生成物の近接した π 電子空間に由来する特異な反応性や π 共役系の拡張による新しい物性・機能の開拓を目的として, 研究を 行った。

1.

ナフタラインの[4+2]環付加反応を鍵とした π 拡張型ルブレンの合成

まず,ナフタラインとイソベンゾフランの環付加反応を活用した合成法を検討した。すなわち, イソベン ゾフラン

1

とジブロモナフタレン

2

の共存下で

n-BuLiを作用させると,ナフタライン 3

の発生とともに環付 加反応が進行し,エポキシテトラセン

4

が得られた。さらに, これを酸性で芳香族化すると,π 拡張型ルブ レン

5

が中程度の収率で得られた。この際,生成物

5

から分子内

Diels–Alder

反応が進行したベンゾインデノテ トラセン

6

が副生した。そこで, この副反応を抑制する目的で立体的に嵩高い

2,6-キシリル基を導入したジア

ルキニルイソベンゾフランを用いて環付加反応を行い, 環付加体の芳香族化を試みたところ,分子内

Diels–

Alder

反応を完全に抑制することができた。しかし, ルブレン

7

は低収率で得られるのみで, この場合にはフ

ラン

8

が主生成物として得られた。

次に,この合成法によって得られる π 拡張型ルブレン

5

の紫外可視吸収スペクトルを測定したところ, 母 体ルブレンに対してその極大吸収波長は

100 nm

以上長波長シフトし,青色発光を呈した。また, X線結晶構 造解析の結果,テトラセン骨格は平面構造を保ち,側鎖のアルキニル基は互いの立体反発を避けるようにねじ れ構造を有していることが分った。さらに, CV測定の結果,テトラセン骨格への複数のアルキニル基の導入 によって,低い還元電位を示し, LUMOのエネルギー準位が低下することが明らかになった。

π拡張型ルブレン ルブレン

Ph Ph

Ph Ph

(3)

2.ナフトキノンを親ジエン体として用いた π 拡張型ルブレンの改良合成

上述のようにナフタラインとイソベンゾフランの環付加反応を鍵として π 拡張型ルブレンの合成に成功し たが,この方法では最終段階である芳香族化において収率や再現性の面で課題が残った。そこで,ナフトキノ ンを親ジエン種とする新たな合成法を検討した。まず,イソベンゾフラン

1

とナフトキノン

9

との[4+2]環付 加反応を行ったところ,この反応は吸熱的であることが分ったが,反応溶媒の適切な選択によって生成物が反 応溶液から析出することを利用し, 環付加体

10

をろ取によって得ることができた。次に,酸素架橋部位を塩 基性条件で芳香族化してテトラセンキノン

11

へと誘導した後, 2つのカルボニル基に対する芳香族アセチリ ドの求核付加と生じるジオール

12

の還元的な芳香族化を経て,π 拡張型ルブレン

5

を高収率で得ることがで きた。この場合には,上述の合成法で問題となった分子内反応は全く起こらなかった。このように, 新たに開 発した合成法は基質一般性に優れ,様々な置換基を導入した π 拡張型ルブレンを効率良く合成できるように なった。

Br Br

Ph

Ph O

Ph

Ph

+ toluene

–30 ºC → r.t.

O Ph Ph

Ph Ph 92%

conc. H2SO4

toluene 0 °C → r.t.

Ph Ph

Ph Ph

Ph

Ph Ph

5 n-BuLi

1 2 4

6

43%

7 8

Ph

Ph 3

Ar Ar

Ar

Ar Ar Ar

Ar Ar O

Ar =

O Ph

Ph O

O +

90 ºC

O

O Ph

Ph O

99%

Ph

Ph O

O

Ph

Ph HO

HO Ph

Ph Ph

n-BuLi –78 ºC→r.t.

THF

73%

Ph

Ph Ph

Ph SnCl2

1 M HCl CHCl3, EtOH

0 ºC → r.t.

98%

CH2Cl2, 0 ºC DBU, LiI

95%

1

5

9 10 11

12 toluene

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