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* 生分解性高分子による遅効性肥料の調製

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Academic year: 2022

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岡山大学環境 理工学部研究報告 7巻,第 1号,pp.127‑131.2002年3月

生分解性高分子 による遅効性肥料の調製

二木栄*・吉滞秀和*・松尾充記 **

楠本昌彦**・北村吉朗*

Fer t i l i ze rMi cr oenca ps ul at edwi t hBi odegr adabl ePol ymer Sa kaeFUT AKI * ,Hi deka zuYOSHI ZAWA * ,Mi t s unor iMATSUO

Mas a hi koKUSUMOTO' 'a ndYos hi r oKI TAM UR A・

( Rc c c i v e dNov e mb e r3 0,200 1 )

Ma nyf e r t i l i z e r sa r es o l u bl ei nwa t e r ,t h e r e f o r et h e i re f fe c td oe sn o tl a s tf o rl o n gt i mea f t e r f e r t i l i z i n gl ns o i l s .Then i t r og e n ou sf e r t i l i z e r ss u c ha su r e at r a n s po r t e dt og r o u n d wa t e rc a u s es e r io u s a g r l C u l t u r a lc o n t a mi n a t i ona n dh e a l t hpr o bl e ms ・Tos ol v et h e s ep r o bl e ms ,s u s t a i n e dr e l e a s eo ff e r t i l i z e r h a sa t t r a c t e dmu c ha t t e n t i o n. I nt h i ss t u d y ,Wea t t e mp t e dt op r e pa r ep ol y l a c t i demi c r o c a ps u l e sw it h f e r t i l i z e rbyp h a s es e pa r a t i o nt e c h ni q u e ,whi c hwa same t h o do fmi c r o e n c a ps u l a t i on・Po l y l a c t i d e( Pu ) wa su s e da sabi o d e g r a da b l ep o l y me rbe c a u s et h ebi o d e g r a d a bl ep ol y me rha sn oi n f he n c eo nt h es o i l a n dt h ee c os y s t e m. Th ee f fe c to fpr e pa r a t i o nc o n d i t i o n ss u c ha ss t i r r in gt i mea n df e r t i l i z e rc o n c e n t r a t i o n o nmo r ph o l o g yo fmi c r o c a ps u l ea n do nc u mul a t i v ep er c e n t a g er e l e a s e do fe n c l os e du r e awa sa l s o i n ve s t i g a t e d.

Keywords:fertilizer,polylactide,microcapsule,controlledrelease,phaseseparation

1

緒 言

現在、使用 されている肥料の多 くは水溶性のため、速 効性 には富むが、持続性がない。 さらに施肥量の大部分 が溶脱 によって地下水系に移行す るため無駄 になってい る。また、必ず しも作物が必要 となる時期 に必要な量を 施肥 されていない。 このような低利用効率 といった問題 を解決する方法 として分施があるが、労力がかかるうえ, 施肥適期の判定が難 しいことや、施肥の必要な時期 に農 場に入れないことがあるなど制約がある (近藤保,1991)0 一方、溶脱 した窒素系肥料は地下水の汚染 を引き起 こし, 硝酸性窒素あるいは亜硝酸性窒素な ど環境汚染の原因と なっている

( S c o

tt

A.Gl a z i e r

,1998)。 そ こで、本研究で はマイクロカプセル化法の一種である相分離法 によ り肥 料の放出速度を遅 らせることができる新規な遅効性肥料 の調製を試みた。肥料のマイクロカプセル化 には次のよ うな設計と開発に伴 う制約がある。

*

岡山大学環境理 工学部環境物質工学科 +I 三井化学株式会社

127

(1)自然環境下で使用 されるので、変化が大きい。

( 2

)経済性が厳 しく、高価な材料や技術が選択できない。

(3)安全性 (人畜毒性,作物残留、土壌残留、非標的生 物への影響な ど)の規制が厳 しい。その為、使用で きる材料 に制限がある。

肥料のすべての成分 についてマイ クロカプセル化 は考 え られるが、実際的 にその効果があるのは窒素で、本研 究では、窒素系肥料である尿素を芯物質 として使用する。

尿素は水 に溶けて もイオ ンに解離 しないので、土壌粒子 に吸着 されない。 したがって、施肥 した後で、す ぐに大 雨が降るまたは水 を注 ぐことによ り流 されて しまう。尿 素をマイクロカプセル化す る利点 として次のよ うな こと があげられる。

(1) 肥料の溶脱、脱窒による施肥成分の消失が減少 し 利用効率を高めることができる。

(2) 地下水の汚染 を防 ぐことができる。

(3) 物に見合った量を,必要な時期 に供給 してぜ いた く吸収や濃度障害をな くし、栄養状態を改善する ことができる。

(4) 環境中での分解が減少する。

(2)

(5) 施用量が通常 よ り少量ですむ,j

(6) 施用間隔が延 ばせ 、施用回数が減 るので省 力化で きる。

(7) 肥料の吸湿性 な ど物理特性 が改善 され る。

(8)肥料の臭気がマスキングできる。

現状 において この よ うな利点だけでな く、マイ クロカ プセル化す ることによって製造 コス トのみ を考 える と製 造法 に もよるが通常、高 くなる欠点がある。 しか し経済 性 がない と言 うのは妥 当ではな く、マイ クロカプセ ル化 す ることによって得 られ る様 々な利点 を考慮 して総合的 に判断す る必要がある。

また コーテ ィング材 が分解せず 土壌 に悪影響 を及ぼ し た り水上に浮遊 した りす る欠点がある.,このため本研究 では コーテ ィン グ材 と して生分解性 高分子の ポ リ乳酸 (以下 PLA と呼ぶ) を用いた。 これ までのマイ クロカプ セル化 において、 コーテ ィング材 として生分解性 高分子 のなかで も生分解 され 易い よ うな低 分子 量の ポ リ乳酸 (以下PLAと呼ぶ)、また結晶性の高いL体に結晶性 の低 い D体 を混合 させ た もの、乳酸 とグ リコール酸の共重合 体 を使用 され て きた (B.JFloyeta1,1993;∫.M.Ruizet al.1990)o Lか し本研究 では、芯物質 であ る肥料 の放 出

を遅 らせ完全に放 出 しきった後 、分解 させ るため、結晶 性の高い L体の乳酸を直接重合す ることによ り調製 した 高分子量のPLAを使用 した√、

本研 究では、窒素系肥料のポ リ乳酸 に よるマイ クロカ プセ ル化 を行い、放出速度の制御 を可能 とした徐放性肥 料の調製 を試みた。 また調製条件 を変化 させ ることによ る トラ ップ率 ・徐放挙動‑の影響 を検討 した結果 を報告 す る。

2 実 験

2̲1 試 薬

調製 され た ものである,,尿素、 クロロホルム、 シ リコー ンオイル (開放 型油浴用)、‑ ブタンは市販 の特級試薬 (和光純薬)をそのまま使用 した「〕Fig.1に本研究におい て使用 した芯物質 と膜物質の化学構造 を示 したゥ

0

H2N‑ L NH2

0 ‑C H L i +

0 C 1 H 3

尿素 PLA

Fig.1本研究において使 用 した芯物質 と膜物質の 化学構造

2.2 実 鹸 方 法

2̲2.1相分離法

相分離法は、マイ クロカプセル を利用 した初 めての商 品である感圧複写桁 を開発す る過程で、NCR社の技術者 たちによって考案 され た。 この方法の もとになっている のは高分子溶液 中にお ける高濃度 と低濃度の二つの溶液

‑の相分離現象である。

高分子溶液はその環境 を変化 させ ることに よ り極 めて 濃厚 な分散相 と希薄な連続 相に分離す ることは古 くか ら 知 られている,,分離 してで きた高分子の濃厚溶液は多数 の小満のため系全体が 白濁 して見 える。 高分子 に良溶媒 を加 えた り、温度 を上げた り、あ るいは相分離誘物質 を 添加す る と、それ まで単一の分子 として安定に存在 して いた ものが不安定な状態 とな り,会合によって系の 自由エ ネルギー を低 下 させ ることに基づ いて相分離が起 こる(, そ して高分子の濃厚溶液があ らか じめ分散 させ ておいた 芯物質の周 りに集合 して皮膜 となる。

このマイ クロカプセル調製法 は相分離法 と呼ばれ るっ 本研 究では高分子溶液 に相分離誘発物質 (シ リコー ンオ イル) を加 えることに より極 めて高分子が濃厚 な分散相 と希薄な連続相 に分離 し、芯物質 (尿素)の周 りに濃厚 な高分子 (ポ リ乳酸)の集合体 である膜 を形成 させ るこ とによ りマイ クロカプセルを調製 したっ

2.2.2 マ イ ク ロ カ プ セ ル 調 製 法

分散相 と して尿素 を溶 か した水溶液、連続相 にポ リ乳 酸 を溶 か した クロロホルム溶液 を用いた。 500m lビ ー カー を使用 し、連続相に濃度 を変化 させ た尿素水溶液 を携拝 しなが ら加 え,油中水滴型 (W /0)エマル シ ョン を調製 した。 この際、水滴径 を変化 させ るため、一部の 実験 ではホモ ジナイザー を用いた。調製 したェマル シ ョ ンに相分離誘発物質であるシ リコーンオイル を ピペ ッ ト に よ り滴 下 し、水滴界面にポ リ乳酸膜 を形成 させた。 こ の段階において分散滴 は軟 らか く凝集 を起 こ しやすい。

そのため‑ブ タン100m lを添加す ることに よ り膜 を 固化 した,,その後、吸引ろ過 を行い、すみやかに24時間 凍結 乾燥 してマイ クロカプセル を得た。得 られ たマイ ク ロカプセルは冷暗所 に保存 した.。 この実験 において恒温 槽 を用い、温度一定に して行 った,,調製条件 を Table 1

に示す,,マイ クロカプセルの調製方法 をFig.2に示す

2.2.3 トラ ップ幸の測定

調製 したマイ クロカプセル 1gを精秤、 クロロホル ム lOmlに投入 した,,この溶液に水 10mlを加 えることで 尿素 を水相に抽 出 し、水相 中の屈折率 を手持 ち屈折計に よって測定 した一、この屈折率 を用いて検 量線 よ り尿素濃

(3)

二木 栄 ら / 生分解性高分子 による遅効性肥料の調製

度 を求めた。得 られた尿素濃度 を用いて、次式で定義 し た トラ ップ率 を算出 したO

測定 した含有量 (g) トラップ率‑

調製条件で設定 した含有量 (g) 2.2.4 徐放特性の評傭

調製 したマイクロカプセル 1gを秤量 し、水 10mlに 分散 させた。 これ を30℃ に保 った恒温槽 に静置 した。所 定時間 ごとに上澄み液 O.olmlを採取 し、水 中の屈折率 を手持 ち屈折計 (アタゴ製、〜‑ 20E)に よって測定 し たQ この屈折率 を用いて検量線 よ り尿素濃度 を求めた。

得 られた尿素濃度 を用い、徐放率 を決 定 した。徐放 率は 次式で定義 した。各時間での徐放率 を測定 し図にプ ロッ

トす ることにより徐放 曲線 を作成 したQ 徐放 した尿素量 (g) 含有 されていた尿素量 (g)

3

結果および考察

3.1 光学象徴義写真

相分離誘発物質 であるシ リコー ンオイル を添加す るこ とによ り相分離 を引き起 こ した。 シ リコー ンオイル添加 過程の相分離現象の様子 を光学顕微鏡 写真 によ り観察 し た結果を

Fi g .3

に示すO シ リコー ンオイルを添加 してい くにつれ 、連続相である

P L A

・クロロホルム溶液の転相が 起 こると同時 に、溶媒抽 出に よ りクロロホルムがシ リコ ー ンオイル溶液‑移動 した。写真 よ り明 らかな よ うに、

球状のマイ クロカプセルが調製 できている ことが確認 さ れ た。 またマイ クロカプセルの 中に芯物質の溶 けた水溶 液が含有 されていることが確認できた。

3.2 電子賢徽義観察

調製 したマイ クロカプセルを

S E M

によ り観察 した

。S E M

写真 を

Fi g . 4

に示す

。s E M

写真か ら調製 したマイ クロカプ セルは球状であ り、表面がスムー ズであることが確認 で きたっ また一部のマイ クロカプセルでは表面に溝がみ ら れた,,これはマイ クロカプセル内の水滴が表面近傍 に存 在す るため と考 えられ るっ断面写真 よ り明 らかな よ うに、

内部に多数の大きな中空が見 られ た。 これ は微粒子 内に 尿素水溶液が含有 された ことによると考 えられ るっ

3.3 トラ ップ辛への影響

摸拝時間 を変化 させた場合の トラ ップ率‑の影響 を調べ た結果を

Fi g .5

に示す‑,傑拝時間 とはシ リコー ンオイル 添加 した後か ら‑ブ タンにより固化す るまでの時間を表

Tablel 調製条件

尿素 水

P L A

如ロホルム シリコ‑ンオイル 温度 痩拝時間 (g) (g) (g) (ml) (ml)

( ℃)

(h)

1 6 3 50 80 20 0

6 9

3 15 0 1,5

3 6 12 24

1 00J Lm

Fi g . 2

マイ クロカプセル調製法

129

(4)

30ml添加 50ml添加

Fig.3 シ リコー ンオイル添加過 程 の相 分離現象

す。 その結 果 、操拝 時 間が長 くな るにつれ 、 トラ ップ率 は減 少す る傾 向がみ られ たQ ク ロロホ ルムの移 動 に よ り

W / o

ェマ ル シ ョン滴 の収縮 が起 こる。 この時 、微粒 子 の 内水相 が 界面近傍 ‑移動 す る こ とに よ り破壊 が起 こる。

したが って、微粒 子 内の尿 素 が シ リコー ンオイ ル相 に放 出す る。 その結果 と して トラ ップ率の減 少 が起 こる と考 え られ る。

3.4 徐放 挙 動へ の影 苧

Fig.6に水相尿素濃度 を14wt%、50wT%、6Owt%と変化 さ せ た場合 の徐放 曲線 を示 した。 図 か ら明 らかな よ うに 、 低 い水相 尿素濃度 ほ ど徐 放 化 の傾 向がみ られ た . この結 果 よ り、徐放性 を有す るマイ ク ロカ プセ ル を調製 す る こ とが で きたっ50%徐放 率 は約2日と短 く、ほぼ 2週 間で 完 全 に徐 放 した。 これ は 、芯物 質 (尿 素) に対す る膜物 質 (ポ リ乳酸) の割 合 が低 いた め とポ リ乳 酸 の 高い水透 過係数 に起 因す る もの と考 え られ るり

4 結 言

相 分離法 を用 い 、尿 素肥 料 を含 有 した ポ リ乳酸 マイ ク ロカプセ ル を調製 す るこ とがで きた「,

調製 条件 を広範 囲に変化 させ 、影響 を検 討 した結果 、 傑拝 時 間 が長 くな るにつれ 、 トラ ップ率 は減少す る傾 向 がみ られ た,, また徐放 実験 にお い て、低 い水相尿素 濃度 ほ ど徐 放化 の傾 向がみ られ た

80m1添加

Fig.4 SEM写真

(5)

二木 栄 ら / 生分解性高分子 による遅効性肥料の調製

0 0 0 0 0 0 0 0 0

0

0 9 0日U 7 6 5 4 3 2

1

1

[%].),廿.L

F・

0

5 1 0 1 5 2 0 2 5

捜拝 時 間 [ h]

0 0 0 0 0 0 0 0 0 9 (VO 7 6 5 4 3 2 1

[%]

掛 蚕

0 1

2 3 4 5 6 7 8 91 0

時 間

[日 ]

Fig.5 溝拝時間の変化による トラップ率への影響 Fig.6尿素濃度の変化 による徐法挙動への影響 雷考文献

近藤 保 (1991):マイ クロカプセル その機能 と応用 , 日本規格協会,p189‑195

ScottA,Glazier,Ellen 氏.Cambel】and WilburH.CambeJl (1998) :ConstnlCtion and Characterization of Nitrate Reductase‑BasedAmperometricElectrodeandNitrateAssay ofFertilizersandDrinkingWater,J.An alyticalChemistry, Vol.70,No8,April15,p1511‑1515

B.J.Ploy,G.C.Visor,andL.M.SandersinPolymeric Delivery

Syslems,ACS Symposium Series 520 (MA El‑ Nokaly,DIM・piatt,andB.A.Charpentier,eds):Design of BiodegradablePolymerSystemsforControlledReleaseof Bjoaclive AgeTlls, American Chemica一 Society,Washington,DC,1993,pp.1541167

J.M.Ruiz,J・P・Busuneland J・P・Benoit,Influeceofaverage molecular weights of poly (D,Lllactic acid‑co‑glycolic acid)copolymers50ノ500mphaseseparationandinvitrodrag release血.ommicrospheres,Pharm・Res・7(9):928934(1990)

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参照

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