恋と禁忌の古代文芸史
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(2) 誌的歌巻に三分し、記紀と連続するととらえることによって、特に巻一・二の歌を宮廷史 を表現するモチーフに拠っていると見る。その上で百数十年にわたる万葉史全体を、中央 から地方へ、宮廷から貴族へ、史書から歌集へとの流れとしてとらえる。さらに万葉史の ピークをつくる柿本人麻呂は、女の死をうたう歌人だったと位置づける。いずれも万葉集 全体の構想・構成にかかわる創見である。 第五章では、自然と性が、なぜ、どのように重ね合わせてうたわれるようになったかを 考究する。中国文学を理解し漢詩に通じていた官僚たちが、離宮の宴席で自然と恋を融合 させてうたう。宮廷・官僚・離宮・宴席・神仙境・季節・庭園にかかわる万葉集歌の問題 を、「をとめ」「清し」「さやけし」といったキーワードを軸に解明する。風流心を共有 する後期万葉時代の官僚層の美意識の構造を文化的機構の問題として論証する。 論者はこれまでに、『古代和歌と祝祭』『古代文学と時間』『古代和歌の成立』三冊の 著作によって、日本古代文芸研究に着実な成果ををもたらしてきており、学会ですでに高 い評価をえている。本論はこれらの業績を踏まえ、さらなる展開を示した。見てきたよう に、各章において独自の創見を示し、的確な資料の分析によって、日本文芸史上における 〈美〉の形成という大きな問題に新しい研究成果を加えた。自然と性を統一的にとらえう るとする結論は、古代文芸研究史にあらたなるページを開いたもので、高く評価すること ができる。「博士(文学)」の学位を授与するにふさわしい業績と認められる。. 2003年12月2日 主任審査委員 早稲田大学教授 早稲田大学教授 早稲田大学教授 早稲田大学教授. -2-. 佐佐木幸綱 博士(文学)早稲田大学 文学博士(早稲田大学). 内藤明 新川登亀男 福島秋穂.
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