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意味論の基本的枠組みについて ーその歴史的基盤と展望- 松倉 茂

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Academic year: 2021

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研究紀要 富山大学杉谷キャンパス一般教育 第37号(2009)

1 . はじめに

意味論の基本的枠組みについて ーその歴史的基盤と展望-

松倉 茂

JLAS (vo1.37, 2009)

本稿では、意味論の基本的枠組みについて、その歴史的な成立過程なども視野に入れながら概 略的に傭轍し、 言語学における意味論の役割や意義を探ってみたいと思う。

2. 意味論の基本的枠組み

2. 1意味論の歴史的成立過程

意味論(semantics)とは、 言語の意味(meaning)を研究する領域であ り、 音韻論 (phonology)や文法(grammar)と対立する分野である。 科学的な意味研究の確立は1

9世紀末期まで待たねばならなかったcそして、その初期においては、史的意味論(historical semantics) 1)に代表されるように、 主として意味の歴史的変化を 取り扱っていた。 20世 紀になってから、 ソシュール(F.de Sa ussure)の影響を 受け、 共時的意味論(synchronic semantics)も研究されるようになり、 1 930年代にヨーロッパにおいである一定の研究 成果が出てきた。

一方、 米国においては極端な物理主義(physicalism)を掲げるブルームフィールド(L.

Bloomfield)を中心とするアメリカ構造言語学(structuralism)が興り、 意味研究は一時 中断されるが、 チョムスキー(N.Chomsky)等の変形文法(transformational伊・ammar)2) によって、 1 950年代の後半から復活するようになり、 現在では、 言語学の中で意味論 はますます大きな割合を 占めるようになってきている。

2.2意味論の分析レベルと基本的枠組み

2.2.1語の意味論

-79-

(2)

松倉 茂/JLAS Cvo1.37, 2009) 79-81

意味論を大きく分けると、 語のレベルの意味論と文のレベルの意味論が想定される。 語 のレベルの意味論は、 語(正確には語葉素くlexeme>)とそれに対応する意味(正確には 意義素くsememe>)関係の研究であるが、 この意味を構成する意味特徴は、 通常、 成分分 析(componential analysis)によって示される。 それは、 意味が無限に細かく分析されて しまわないように、 そのような規準を設定するわけである。 他方において、 このような語 の集まりとしての語葉(vocabulary )の意味的研究も熱心に行われているが、 語葉全体を 一度にまとめて研究することは困難なので、 どうしても意味の場(semantic field)という 概念に依存してしまうことになる。そのため、その概念から生ずる問題点も多く出てくる。

2.2.2文の意味論

文の意味論においては、 ある文に対してどのような解釈を付与することができるかとい う解釈意味論(interpretive semantics)と、 意味構造を最初から設定しておき、 それを文 にまで変換していこうとする生成意味論(generative semantics)がある。 しかし、 解釈的 な考え方に関しては、 文のどのレベルの構造が解釈を付与するかについて様々な議論があ り、 定説は確立していない。 文の意味論における一番大きな問題は、 文と脈絡との関係で ある。意味的に逸脱しているような文も、脈絡しだいで十分意味を持つことができるので、

その重要性が理解できるはずである。

3.おわりに

上記のように、 言語学の三大部門のーっと言われる意味論が、 これからより大きく重要 な役割を果たしていくことを見てきた。 認知心理学などのような認知科学の発展とともに、

今後も意味論の研究がさらに大きく前に進むことを期待したい。

キエ==ロ

1)

記述意味論(descriptive semantics)に対するもので、 意味研究の古い歴史の中で、 思弁の域を出た本当 の意味での研究は、 1 9世紀に始まった史的意味論である。

2)チョムスキー(N.

Chomsky)らによって発展した20世紀後半の最も影響力のある言語理論。

-80-

(3)

Chomsky, N. 1957. Syntactic Structures, The Hague.

Chomsky, N. 1965. Aspects of the Theory of Syntax, Cambridge, Massachusetts.

Chomsky, N. 1972. Studies on Semantics in Generative Grammar, The Hague.

Halliday, M.A. K. & R. Hasan. 1976. Cohesion in English. London, Longman.

Jackendoff, R. S. 1972. Semantic Interpretation in Generative Grammar, Cambridge, Massachusetts.

Katz, J. J. 1970. 'Interpretive Semantics vs Generative Semantics,' Foundation of Language 6.

Katz, J. J. 1971. 'Generative Semantics is Interpretive Semantics,' Linguistic Inquiry 2.

Lyons, J. 1968. Introduction to Theoretical Linguistics, Cambridge, Cambridge Univ. Press.

-81-

参照

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