これは小屋部から伸びる排水溝が南東角に 連結することから,南東側にゴミがより多く 堆積しやすいためと推察される.また東側は 小屋部に近いためゴミを投棄する際には石 組の東側以外に立つこととなり,屋敷は南側 に位置することから南側から投棄されやす いためとも考えられる. なお石組部と小屋部とは隣接し,かつ小屋 部の排水溝が連結することから,出土遺物に はブタの食糧残滓などブタの飼育に関わる ものが含まれていると考えられる.ただし石 組部からは,鉄釘やプラスチック容器など, 豚小屋に入れたとは考えにくい遺物も検出 されていることから,屋敷のゴミも含まれて いると考えられる.検出された動物骨が全て ブタの餌であるとすべきではないだろう.む しろ両者は豚小屋と廃棄物溜め場という別 個の機能を持つ個別の施設ととらえるべき であり,強い結びつきを持つことから隣接し また連結されて設置されたと考えられる. 7. おわりに 以上,2012 年度の調査成果をもとに,網取 村に存在したフールについて考察を加えて きた.今回検出されたフールは,年代として は現代に位置づけられ,およそ考古学の対象 とすべきかどうか疑問を持たれる方もある かも知れない.しかしその詳細が不明である という点では先史遺跡の遺構と変わるとこ ろは無く,情報の収集に当たって考古学的分 析法が意味を成すのなら躊躇なく適応すべ きだと考える.また一般的な考古学調査の手 続きを経て収集された今回の調査データは, 今後他の時期,地域の畜産関連遺構を分析す る際に重要な比較対象となり得るだろう.本 調査はまた民族考古学的な意味合いからも 意義のあることと考える. 今後は網取村内,さらに周辺諸地域の類例 を分析し,東アジア,東南アジア地域に広く 及ぶ比較研究を志向すべきと言える.その成 果はアジアに特徴的な畜産史のあり方を解 明する重要な手掛かりを与えるものと期待 されよう.本調査は短期の小規模なものでは あったが,重要な一歩になるものと確信する. 8. 引用・参考文献 安渓遊地・安渓貴子(2011)空中写真にみる 1945 年の西表島南西部の村々.安渓遊 地・当山昌直編『奄美沖縄環境史資料集成』, 99-110pp.,南方新社. 新城明久(2010)沖縄の在来家畜 その伝来 と生活史, ボーダーインク 平川宗隆(1999)沖縄トイレ世替わり フー ル(豚便所)から水洗まで, ボーダ-イン ク 川平永美 安渓遊地・安渓貴子(1990)崎山 節のふるさと -西表島の歌と昔話-.ひ るぎ社. 喜田川守貞 宇佐美英機校訂(1996)近世風 俗志(守貞漫稿)(一), 岩波書店 三木 健(1981)聞き書 消えた離島の村. 八重山文化,8,49-53. 仲程正吉編(1981)図説 郷土のくらしと文 化<上巻>.新星図書出版. 大城學(2003)沖縄の祭祀と民俗芸能の研究, 砂子屋書房 島袋正敏(1989)沖縄の豚と山羊ー生活の中 からー, ひるぎ社 東海大学考古学研究室・海洋学部海洋文明学 科・沖縄地域研究センター 編(2007)網 取遺跡・カトゥラ貝塚の研究 -沖縄県西 表島所在の先史時代貝塚・近世集落遺跡の 発掘調査.東海大学総合研究機構プロジェ クト「宮古・八重山地域の総合的研究」成 果報告. 山田武男 安渓遊地・安渓貴子編(1986)わ が故郷アントゥリ -西表・網取村の民俗 と古謡-.ひるぎ社. 西表島研究2011,東海大学沖縄地域研究センター所報,20-29, (2012)
Study Rev. Iriomote Is. 2011, ORRC, Tokai Univ., 20-29, (2012)
西表島の水田域における湿生植物 8 種の分布とそれらの生育環境
藤吉正明1)・北野 忠1)・崎原 健2)・藤野裕弘1)・河野裕美2) 1)東海大学教養学部人間環境学科自然環境課程, 2)東海大学沖縄地域研究センター 1.はじめに 琉球列島の南部に位置する西表島では, 様々な立地環境を利用して水稲栽培が行わ れてきた.水田では,水稲栽培のための程よ い人為的管理のもと,多くの動植物が生息も しくは生育し,昔から生物多様性の高い場所 の一つになっていた. しかし,近年では,圃場付近を含めた道路 整備や農業の機械化の影響で水田環境が大 きく変化し,また農業従事者の減少により休 耕田が増加している.さらに外来生物の侵入 により,高い生物多様性を維持してきた水田 の生息もしくは生育場所としての機能が低 下している.そのため,水田を中心とした水 辺生態系の保全対策が求められており,その 保全を目的にした研究が進められている. 大滝(1989)では,西表島において約 30 年前に水辺周辺で調査がなされ,水田周辺に おいては普通種も含め 80 種ほどの湿生植物 の生育が確認された.そのうちの一部は,近 年急速に分布域や個体数を減少させており, 国や沖縄県において絶滅危惧種として指定 されている(環境省 2012,沖縄県 2006).近 年の西表島における周辺道路を含む水田の 圃場整備や耕作放棄による植生遷移を考え ると,大滝(1989)の調査後湿生植物の分布 や生育個体数などが変化した可能性は大き い.また,西表島における水田植物相の報告 は,いくつか存在するものの(大滝 1989, Ishimine et al. 1992,角野 1994),島内複 数の水田域における詳細な分布を示した報 告は少ない.詳細な分布の報告は,採取・乱 獲等の危険を招く恐れがあるが,保全対策を 考えると詳細な分布や生育環境の把握は必 要である. 著者らは,水田域の湿生植物の保全を目的 とし,2011 年 9 月から 2012 年 11 月まで西表 島の 17 ヶ所の水田において,早急に保全対 策が必要とされている絶滅危惧種 5 種の分布 とそれらの生育環境を明らかにした.その結 果は,学術雑誌発表に向けて準備を進めてい る(沖縄生物学会投稿中).本報では,その 内容をもとにして,新たに 3 種の湿生植物の 分布と調査地 1 ヶ所を追加し,加筆・図表変 更を行ったので,以下に「研究紹介」として その内容を示す. 2.結果の概要 2-1)対象種 対象種は,水田周辺の湿地環境を生育地と し て い る ミ ズ ワ ラ ビ 科 の ミ ズ ワ ラ ビ Ceratopteris thalictroides (L.) Brongn., デ ン ジ ソ ウ 科 の ナ ン ゴ ク デ ン ジ ソ ウ Marsilea crenata Presl,ミツガシワ科のヒ メ シ ロ ア サ ザ Nymphoides coreana (Lev.) Hara,トチカガミ科のマルミスブタ Blyxa aubertii L.C.Rich.,トチカガミ科のミズ オオバコ Ottelia alismoides (L.) Pers., タヌキモ科のミカワタヌキモ Utricularia exoleta R.Br.,ホシクサ科のオオシラタマ ホシクサ Eriocaulon sexangulare L.及び タヌキアヤメ科のタヌキアヤメ Philydrumlanuginosum Banks et Sol.Ex.J.Gaertn. の 8 種とした(図 1-A~H).ミズオオバコは, 顕著な種内変異を示すため,ミズオオバコと オオミズオオバコに分けられることもある が,本報では角野(1994)に従い,両者を同 一種として取り扱った.これらの種の多くは, 環境省レッドリスト(環境省 2012)もしくは 沖縄県レッドデータブック(沖縄県 2006)に 掲載されている.
E:ミズオオバコ
C:ヒメシロアサザ
D:マルミスブタ
F:ミカワタヌキモ
B:ナンゴクデンジソウ
A:ミズワラビ
G:オオシラタマホシクサ
H:タヌキアヤメ
図 1 調査対象種である湿生植物 8 種. 2-2)調査地 調査地は,西表島南部の大富から西部の白 浜まで県道 215 号線沿いとし,その主要な水 田域 18 ヶ所とした(図 2,付図 1-18 参照). 調査面積は,小さな場所で 0.5 ha(浦内 C と 浦内 D),大きな場所では 13 ha(祖納 D)と 調査地間で異なった.調査地は,水稲が栽培 されている水田をはじめ,湿った畦畔や水の 流れている用水路,斜面の乾燥した草地など 様々な環境で構成されていた.調査地では, 浦内 C と白浜を除くすべての調査地で水稲栽 培が行われていた.浦内 C の調査地は,2010 年頃まで水稲栽培が行われていたが,それ以 降は休耕田となっている.白浜は,休耕田と なってだいぶ時間が経過しているようであ る.西表島では,水稲の生育期間が長いため, 年に 2 回水稲を栽培することが可能であるが, 多くの調査地の水田において,水稲栽培は1 期作が中心であった.調査地の水田では,近 くの山際からの湧水や河川水を利用して水 稲栽培が営まれており,ほとんど素掘りの用 水路で灌漑が行われていた.水田の周囲の環 境は,山手側にはリュウキュウマツやヒカゲ ヘゴ,コミノクロツグ,ソテツ,ゲットウな どが生育する林が存在し,海手側には,海岸 林もしくはオヒルギなどが優占するマング ローブ林が形成されていた(図 3).調査地の 多くは,道路と接しており,道路付近は人為 図 3 水田周辺の植生断面図. ● 1 ● 7 ● 9 ● 11 ● 10 ● 12 ● 14 ● 13 ● 15 ● 16 ● 17 3 ● 4 ● 8● 6 ● ● 2 5 ● ● 18 図 2 西表島における調査地.1 南風見, 2 大富, 3 古見 A,4 古見 B,5 古見 C,6 高那, 7 赤離 A, 8 赤離 B,9 浦内 A,10 浦内 B,11 浦内 C,12 浦内 D,13 干立,14 祖納 A,15 祖納 B,16 祖納 C,17 祖 納 D,18 白浜. 山際 水田(耕作地) 舗装道路 水田(休耕地) マングローブ湿地 ・リュウキュウマツ ・ギランイヌビワ ・ハゼノキ ・ソテツ ・コミノクロツグ ・ゲットウ ・コンロンカ ・ノボタン ・クワズイモ ・ヒカゲヘゴ ・ハブカズラ など ・コナギ ・シマイボクサ ・シマツユクサ ・ミズワラビ ・ナンゴクデンジソウ ・オモダカ ・セリ ・タネツケバナ ・チョウジタデ ・カッコウアザミ ・ツボクサ など ・シマヒゲシバ ・ギンネム ・オオハマボウ ・センダングサ類 ・ツルノゲイトウ ・ススキ など ・イヌビエ類 ・カンガレイ ・ホタルイ ・ハリイ ・タヌキアヤメ ・シマウリクサ ・チョウジタデ ・カッコウアザミ ・ツボクサ など ・アダン ・オオハマボウ ・ススキ ・アカメガシワ ・イボタクサギ ・オヒルギ ・オオバギ ・サガリバナ ・ミフクラギ などlanuginosum Banks et Sol.Ex.J.Gaertn. の 8 種とした(図 1-A~H).ミズオオバコは, 顕著な種内変異を示すため,ミズオオバコと オオミズオオバコに分けられることもある が,本報では角野(1994)に従い,両者を同 一種として取り扱った.これらの種の多くは, 環境省レッドリスト(環境省 2012)もしくは 沖縄県レッドデータブック(沖縄県 2006)に 掲載されている.
E:ミズオオバコ
C:ヒメシロアサザ
D:マルミスブタ
F:ミカワタヌキモ
B:ナンゴクデンジソウ
A:ミズワラビ
G:オオシラタマホシクサ
H:タヌキアヤメ
図 1 調査対象種である湿生植物 8 種. 2-2)調査地 調査地は,西表島南部の大富から西部の白 浜まで県道 215 号線沿いとし,その主要な水 田域 18 ヶ所とした(図 2,付図 1-18 参照). 調査面積は,小さな場所で 0.5 ha(浦内 C と 浦内 D),大きな場所では 13 ha(祖納 D)と 調査地間で異なった.調査地は,水稲が栽培 されている水田をはじめ,湿った畦畔や水の 流れている用水路,斜面の乾燥した草地など 様々な環境で構成されていた.調査地では, 浦内 C と白浜を除くすべての調査地で水稲栽 培が行われていた.浦内 C の調査地は,2010 年頃まで水稲栽培が行われていたが,それ以 降は休耕田となっている.白浜は,休耕田と なってだいぶ時間が経過しているようであ る.西表島では,水稲の生育期間が長いため, 年に 2 回水稲を栽培することが可能であるが, 多くの調査地の水田において,水稲栽培は1 期作が中心であった.調査地の水田では,近 くの山際からの湧水や河川水を利用して水 稲栽培が営まれており,ほとんど素掘りの用 水路で灌漑が行われていた.水田の周囲の環 境は,山手側にはリュウキュウマツやヒカゲ ヘゴ,コミノクロツグ,ソテツ,ゲットウな どが生育する林が存在し,海手側には,海岸 林もしくはオヒルギなどが優占するマング ローブ林が形成されていた(図 3).調査地の 多くは,道路と接しており,道路付近は人為 図 3 水田周辺の植生断面図. ● 1 ● 7 ● 9 ● 11 ●10 ● 12 ● 14 ● 13 ● 15 ● 16 ● 17 3 ● 4 ● 8● 6 ● ● 2 5 ● ● 18 図 2 西表島における調査地.1 南風見, 2 大富, 3 古見 A,4 古見 B,5 古見 C,6 高那, 7 赤離 A, 8 赤離 B,9 浦内 A,10 浦内 B,11 浦内 C,12 浦内 D,13 干立,14 祖納 A,15 祖納 B,16 祖納 C,17 祖 納 D,18 白浜. 山際 水田(耕作地) 舗装道路 水田(休耕地) マングローブ湿地 ・リュウキュウマツ ・ギランイヌビワ ・ハゼノキ ・ソテツ ・コミノクロツグ ・ゲットウ ・コンロンカ ・ノボタン ・クワズイモ ・ヒカゲヘゴ ・ハブカズラ など ・コナギ ・シマイボクサ ・シマツユクサ ・ミズワラビ ・ナンゴクデンジソウ ・オモダカ ・セリ ・タネツケバナ ・チョウジタデ ・カッコウアザミ ・ツボクサ など ・シマヒゲシバ ・ギンネム ・オオハマボウ ・センダングサ類 ・ツルノゲイトウ ・ススキ など ・イヌビエ類 ・カンガレイ ・ホタルイ ・ハリイ ・タヌキアヤメ ・シマウリクサ ・チョウジタデ ・カッコウアザミ ・ツボクサ など ・アダン ・オオハマボウ ・ススキ ・アカメガシワ ・イボタクサギ ・オヒルギ ・オオバギ ・サガリバナ ・ミフクラギ など的もしくは乾燥化による影響か,ギンネムや センダングサ類の外来植物が多く生育して いた.水田内では、水稲栽培が行われている 耕作田と水稲栽培が行われていない休耕田 では,優占して生育する植物が異なっていた. 2-3)調査方法 調査期間は,2011 年 9 月から 2012 年 11 月 までとした.南風見,古見 C,白浜の 3 ヶ所 を除く 15 ヶ所の調査地は,水稲の出穂期を 中心に 2011 年 11 月及び 2012 年 5 月と 11 月 に集中的に調査を実施した.さらに,調査の 精度を高めるために,2011 年 9 月,12 月, 2012 年 3 月,6 月,9 月に 5 回の調査を追加 した.南風見,古見 C,白浜の 3 ヶ所の調査 地は,2012 年 11 月の 1 回のみの調査である. 調査範囲は,水稲が栽培されている水田内 とその周りの畦畔及び用水路とし,その調査 範囲内を複数人で隈なく踏査した.対象種の 同定においては,極力採取はせず,現地での 確認で済ませた.しかしながら,生育状態が 良好ではなく現地での対象種の同定が不明 確な場合は,個体の一部を採取した後,栽培 により胞子のう果及び開花・種子形成を促し, 同定のための形態確認を行った. 2-4)湿生植物の分布の結果 ミズワラビは,赤離 B,浦内 D,白浜以外 の 15 ヶ所の水田で記録され,対象種 8 種の 中で最も多くの分布が確認された(表 1).確 認された水田では、一部水田一面に群生して いたところも見られたが,多くは点在する形 で広範囲に分布していた. ナンゴクデンジソウは,古見 C と浦内 D, 祖納 A,B,C,D の 6 ヶ所の水田で確認され た(表 1).古見 C と祖納 A,B の水田では, それぞれ合計 100 m2以上のデンジソウ群落を 確認することができ,特に耕起だけなされた 休耕田においてまとまりのある生育が見ら れた.その他の浦内 D と祖納 C,D の水田で は,数 m2程度の群落が複数点在していた. ヒメシロアサザは,古見 B と浦内 C,D,干 立,祖納 A,B,C の 7 ヶ所の水田で確認され た(表 1).浦内 C と干立の水田では,比較的 まとまった量のヒメシロアサザ群落が確認 されたが,その他の 5 ヶ所においては数 m2 程度の群落が疎らに点在していた. マルミスブタは,浦内 D と干立,祖納 D の 3 ヶ所の水田で確認された(表 1).干立の水 田では,マルミスブタを 100 個体以上確認す ることができたが,調査地全体に広がっては No. 生育環境※ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 調査地名 タイプ 南風見 大富 古見A 古見B 古見C 高那 赤離A 赤離B 浦内A 浦内B 浦内C 浦内D 干立 祖納A 祖納B 祖納C 祖納D 白浜
ミズワラビ A ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ナンゴクデンジソウ A ● ● ● ● ● ● ヒメシロアサザ B ● ● ● ● ● ● ● マルミスブタ B ● ● ● ミズオオバコ C ● ● ● ● ● ● ミカワタヌキモ B ● ● オオシラタマホシクサ D ● タヌキアヤメ B ● ● ● 地点ごとの確認種数 2 1 2 2 2 1 1 0 1 2 4 3 6 4 3 4 4 1 表 1 西表島の水田における湿生植物の分布. ※:A タイプは水田内,畦畔,水路で生育,B タイプは水田内でのみ生育,C タイプは水路内でのみ生育,D タイプは 畦畔でのみ生育. いなく,山際の畦畔で仕切られた僅か数区画 のみでの生育であった.浦内 D と祖納 D の水 田では,それぞれ僅か数個体しか確認されな かった. ミズオオバコは,南風見と古見 A,浦内 B, 祖納 A,C,D の 6 ヶ所の水田で確認された(表 1).古見 A と祖納 D の水田では,100 個体以 上の多くのミズオオバコを確認することが できた. ミカワタヌキモは,2 ヶ所の水田でしか確 認されなかった(表 1).浦内 C の水田では, 比較的まとまった量が確認されたが,干立の 水田では 2 区画の水田に僅かに生育している だけであった. オオシラタマホシクサは,干立の 1 ヶ所で しか確認されなかった(表 1).干立の水田の 中でも,オオシラタマホシクサの分布は,局 所的にまとまって生育していた. タヌキアヤメは,3 ヶ所の調査地で確認さ れた(表 1).確認された場所は,浦内 C,干 立,白浜であり,調査地内の草丈の高い植物 が茂る休耕田で疎らに生育していた.白浜で は,100 個体以上群生して生育していた. 2-5)湿生植物の生育環境の結果 ミズワラビとナンゴクデンジソウの 2 種は, 水田内,畦畔,水路など水田域の多様な環境 で確認することができた(図 4-A).特に,2 種は,水の流れのあまりない常に湿った環境 が好ましいのか,湿田環境で多く確認された. 両種の生育環境において,休耕田内では水田 区画一面に生育していた場所も見られたが, 水稲が栽培されている耕作田では畦畔との 間の場所に僅かに生育していることがほと んどであった. ヒメシロアサザ,マルミスブタ及びミカワ タヌキモの 3 種は,畦畔や用水路等では全く 見られず,耕作田や休耕田など水田内のみの 確認であった(図 4-B).休耕田や耕作田にお いて,植物が茂る場所でも一部確認すること ができたが,その多くは水田と畦畔の間の日 が差し込む部分に多く生育していた(図 4-B). タヌキアヤメは,草丈が高くなることから, 水稲が栽培されている耕作田では駆除され ることが多いと思われ,水稲の栽培がされて いない休耕田のみで確認された. ミズオオバコは,確認された 6 ヶ所におい て,全て用水路内で確認された(図 4-C).水 田内では,1 個体も確認されなかった.用水 路は,場所によって水の流れが異なったが, より流れの緩やかなところや水の溜まった 場所で多くの個体が確認された. オオシラタマホシクサは,干立 1 ヶ所のみ の確認であったが,その生育は湿った畦畔で のみ見られた(図 4-D).確認された個体は, 畦畔環境でも広域には生育しておらず,局所 的な分布であった. 2-6)考察 湿生植物の分布 本調査では,西表島の水田において,対象 種 8 種すべてを確認することができたが,種 によって分布確認場所数や個体数は大きく 異なった.最も多くの調査地で確認された種 は,ミズワラビであり,18 ヶ所の調査地の内 15 ヶ所で確認された.一方,ミカワタヌキモ, マルミスブタ,オオシラタマホシクサ及びタ ヌキアヤメの 4 種は,一部の水田において個 体数が多く確認されたものの,1-3 ヶ所の調 査地でしか確認されていなく,生育において より危機的な状態に陥っていることが明ら かになった,特に,オオシラタマホシクサと ミカワタヌキモにおいては,1-2 ヶ所の調査 地でしか確認されなかったため,生育場所の 保全が急務といえよう.大滝(1989)では, 西表島の水田において本研究の調査対象種 のおおよその生育個体量が示されているが, ミカワタヌキモ,マルミスブタ及びタヌキア ヤメは普通,その他の 4 種は多産と記されて いる(オオシラタマホシクサのみ記載無).
的もしくは乾燥化による影響か,ギンネムや センダングサ類の外来植物が多く生育して いた.水田内では、水稲栽培が行われている 耕作田と水稲栽培が行われていない休耕田 では,優占して生育する植物が異なっていた. 2-3)調査方法 調査期間は,2011 年 9 月から 2012 年 11 月 までとした.南風見,古見 C,白浜の 3 ヶ所 を除く 15 ヶ所の調査地は,水稲の出穂期を 中心に 2011 年 11 月及び 2012 年 5 月と 11 月 に集中的に調査を実施した.さらに,調査の 精度を高めるために,2011 年 9 月,12 月, 2012 年 3 月,6 月,9 月に 5 回の調査を追加 した.南風見,古見 C,白浜の 3 ヶ所の調査 地は,2012 年 11 月の 1 回のみの調査である. 調査範囲は,水稲が栽培されている水田内 とその周りの畦畔及び用水路とし,その調査 範囲内を複数人で隈なく踏査した.対象種の 同定においては,極力採取はせず,現地での 確認で済ませた.しかしながら,生育状態が 良好ではなく現地での対象種の同定が不明 確な場合は,個体の一部を採取した後,栽培 により胞子のう果及び開花・種子形成を促し, 同定のための形態確認を行った. 2-4)湿生植物の分布の結果 ミズワラビは,赤離 B,浦内 D,白浜以外 の 15 ヶ所の水田で記録され,対象種 8 種の 中で最も多くの分布が確認された(表 1).確 認された水田では、一部水田一面に群生して いたところも見られたが,多くは点在する形 で広範囲に分布していた. ナンゴクデンジソウは,古見 C と浦内 D, 祖納 A,B,C,D の 6 ヶ所の水田で確認され た(表 1).古見 C と祖納 A,B の水田では, それぞれ合計 100 m2以上のデンジソウ群落を 確認することができ,特に耕起だけなされた 休耕田においてまとまりのある生育が見ら れた.その他の浦内 D と祖納 C,D の水田で は,数 m2程度の群落が複数点在していた. ヒメシロアサザは,古見 B と浦内 C,D,干 立,祖納 A,B,C の 7 ヶ所の水田で確認され た(表 1).浦内 C と干立の水田では,比較的 まとまった量のヒメシロアサザ群落が確認 されたが,その他の 5 ヶ所においては数 m2 程度の群落が疎らに点在していた. マルミスブタは,浦内 D と干立,祖納 D の 3 ヶ所の水田で確認された(表 1).干立の水 田では,マルミスブタを 100 個体以上確認す ることができたが,調査地全体に広がっては No. 生育環境※ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 調査地名 タイプ 南風見 大富 古見A 古見B 古見C 高那 赤離A 赤離B 浦内A 浦内B 浦内C 浦内D 干立 祖納A 祖納B 祖納C 祖納D 白浜
ミズワラビ A ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ナンゴクデンジソウ A ● ● ● ● ● ● ヒメシロアサザ B ● ● ● ● ● ● ● マルミスブタ B ● ● ● ミズオオバコ C ● ● ● ● ● ● ミカワタヌキモ B ● ● オオシラタマホシクサ D ● タヌキアヤメ B ● ● ● 地点ごとの確認種数 2 1 2 2 2 1 1 0 1 2 4 3 6 4 3 4 4 1 表 1 西表島の水田における湿生植物の分布. ※:A タイプは水田内,畦畔,水路で生育,B タイプは水田内でのみ生育,C タイプは水路内でのみ生育,D タイプは 畦畔でのみ生育. いなく,山際の畦畔で仕切られた僅か数区画 のみでの生育であった.浦内 D と祖納 D の水 田では,それぞれ僅か数個体しか確認されな かった. ミズオオバコは,南風見と古見 A,浦内 B, 祖納 A,C,D の 6 ヶ所の水田で確認された(表 1).古見 A と祖納 D の水田では,100 個体以 上の多くのミズオオバコを確認することが できた. ミカワタヌキモは,2 ヶ所の水田でしか確 認されなかった(表 1).浦内 C の水田では, 比較的まとまった量が確認されたが,干立の 水田では 2 区画の水田に僅かに生育している だけであった. オオシラタマホシクサは,干立の 1 ヶ所で しか確認されなかった(表 1).干立の水田の 中でも,オオシラタマホシクサの分布は,局 所的にまとまって生育していた. タヌキアヤメは,3 ヶ所の調査地で確認さ れた(表 1).確認された場所は,浦内 C,干 立,白浜であり,調査地内の草丈の高い植物 が茂る休耕田で疎らに生育していた.白浜で は,100 個体以上群生して生育していた. 2-5)湿生植物の生育環境の結果 ミズワラビとナンゴクデンジソウの 2 種は, 水田内,畦畔,水路など水田域の多様な環境 で確認することができた(図 4-A).特に,2 種は,水の流れのあまりない常に湿った環境 が好ましいのか,湿田環境で多く確認された. 両種の生育環境において,休耕田内では水田 区画一面に生育していた場所も見られたが, 水稲が栽培されている耕作田では畦畔との 間の場所に僅かに生育していることがほと んどであった. ヒメシロアサザ,マルミスブタ及びミカワ タヌキモの 3 種は,畦畔や用水路等では全く 見られず,耕作田や休耕田など水田内のみの 確認であった(図 4-B).休耕田や耕作田にお いて,植物が茂る場所でも一部確認すること ができたが,その多くは水田と畦畔の間の日 が差し込む部分に多く生育していた(図 4-B). タヌキアヤメは,草丈が高くなることから, 水稲が栽培されている耕作田では駆除され ることが多いと思われ,水稲の栽培がされて いない休耕田のみで確認された. ミズオオバコは,確認された 6 ヶ所におい て,全て用水路内で確認された(図 4-C).水 田内では,1 個体も確認されなかった.用水 路は,場所によって水の流れが異なったが, より流れの緩やかなところや水の溜まった 場所で多くの個体が確認された. オオシラタマホシクサは,干立 1 ヶ所のみ の確認であったが,その生育は湿った畦畔で のみ見られた(図 4-D).確認された個体は, 畦畔環境でも広域には生育しておらず,局所 的な分布であった. 2-6)考察 湿生植物の分布 本調査では,西表島の水田において,対象 種 8 種すべてを確認することができたが,種 によって分布確認場所数や個体数は大きく 異なった.最も多くの調査地で確認された種 は,ミズワラビであり,18 ヶ所の調査地の内 15 ヶ所で確認された.一方,ミカワタヌキモ, マルミスブタ,オオシラタマホシクサ及びタ ヌキアヤメの 4 種は,一部の水田において個 体数が多く確認されたものの,1-3 ヶ所の調 査地でしか確認されていなく,生育において より危機的な状態に陥っていることが明ら かになった,特に,オオシラタマホシクサと ミカワタヌキモにおいては,1-2 ヶ所の調査 地でしか確認されなかったため,生育場所の 保全が急務といえよう.大滝(1989)では, 西表島の水田において本研究の調査対象種 のおおよその生育個体量が示されているが, ミカワタヌキモ,マルミスブタ及びタヌキア ヤメは普通,その他の 4 種は多産と記されて いる(オオシラタマホシクサのみ記載無).
大滝(1989)とは調査方法が異なるため,直 接的な比較はできないが,約 30 年前に西表 島の水田に普通に生育していたミカワタヌ キモ,マルミスブタ及びタヌキアヤメの 3 種 が,現在では生育地や個体数を減らしている のは確実な状況である. 西表島島内における 8 種の分布を見てみる と,ほとんどの調査地で確認されたミズワラ ビ以外の 7 種については一定の傾向が確認さ れた.マルミスブタ,ミカワタヌキモ,オオ シラタマホシクサ,タヌキアヤメの 4 種は, 西表島西部の調査地でのみ生育が確認され 図 3 水田における湿生植物の生育状況.A 水田内と畦畔において生育するナンゴクデンジソウ, B 水田内のみで生育するマルミスブタ,C 自然水路内で生育するミズオオバコ,D 畦畔において生 育するオオシラタマホシクサ,E 水田内に侵入した外来種ボタンウキクサ,F 水田内に侵入し、一 面を覆い尽くす海浜植物ハマグルマ類. A:水田内と畦畔において生育 B:水田内のみで生育 C:自然水路内で生育 D:畦畔において生育 F:海浜植物の侵入 E:外来種の侵入 た.その他 3 種のナンゴクデンジソウとヒメ シロアサザ,ミズオオバコは,3 種とも 1-2 ヶ所において東部の調査地で確認されたも のの,それ以外はやはり西部を中心に生育が 確認された.西表島西部の地域は,昔から湿 地環境が形成され,その特性を利用した水稲 栽培が行われており,その水稲栽培を目的に 寄り集まったとされている集落跡も西部地 域において数多く発見されている.近年,少 しずつ休耕田が増えているようであるが,現 在でも西部地域の多くの水田では水稲栽培 が行われている.今回対象にした西部地域の 水田では,地形的な影響か,または区画整理 などの人為的な影響が少ないせいか,湿田環 境が多く形成されており,そのような場所で 対象植物が多く確認された.また,西部の水 田は浦内 A から白浜まで 10 ヶ所ほど含まれ るが,調査地あたりの確認種数は多くても 6 種(干立)であり,調査対象種の 8 種が同じ 場所で全て確認された調査地は存在しなか った.これらのことから,ミズワラビを除く 調査対象種 7 種の分布の中心は,水稲栽培が 盛んに行われている西表島西部地域の水田 であり,西部地域の複数の調査地水田でこれ らの種の生育が維持されていることが明ら かになった. 湿生植物の生育環境 ミズワラビとナンゴクデンジソウは,抽水 性から浮葉性の特性を持つ植物であるため, 水稲の栽培がなされている水田内から水の 流れのある用水路まで幅広い環境で定着が 確認された.しかし,出現場所を見てみると, 水田内や湿った畦畔の出現割合がより高い 値であるため,水の流れの少ない湿った水辺 環境に適していることが推測される.このこ とについては,近縁のデンジソウも含めて同 様の結果が報告されている.デンジソウの結 果ではあるが,東浦ほか(2011)では,水田 内や湿った畦畔において良好な定着が確認 されており,本調査の結果と同様に特に耕起 だけ施された休耕田においては水田区画一 面にデンジソウ群落が形成されていたこと が示されている.オオシラタマホシクサは, 1 ヶ所のみの確認であったため,生育環境の 考察については控えておく. 一方,沈水性や浮葉性のヒメシロアサザ、 マルミスブタ,ミカワタヌキモ,ミズオオバ コ,タヌキアヤメの 5 種は,生育環境が限定 された.ヒメシロアサザやマルミスブタ,ミ カワタヌキモ,タヌキアヤメの 4 種は水田内 でのみ確認され,ミズオオバコは水の流れの ある用水路のみで定着が確認された.タヌキ アヤメを除いた 4 種は,沈水性及び浮葉性の 植物であるため,乾燥しやすい畦畔などに定 着することは不可能であるが,種により水田 内と用水路で生育環境が別れたことは注目 すべきことである.しかしながら,なぜ種に よって生育適地や定着微環境が異なるのか, その定着要因や人為的な農作業との因果関 係については不明確である.このように,水 の流れの有無や湿乾の程度の差が生じる水 田域において,種により生育もしくは定着微 環境が異なることが明らかになった. 西表島の水田域において,ミズオオバコは 用水路のみでその定着が確認されているが, 現在一部の調査地においてその生育が脅か されている.北野ほか(2009)では,ミズオ オバコが生育している水田(特に用水路)に おいて,観賞植物として外国から持ち込まれ た サ ト イ モ 科 の 浮 遊 植 物 ボ タ ン ウ キ ク サ Pistia stratiotes L.が旺盛に繁殖して いることが報告されている.ボタンウキクサ は,「特定外来生物による生態系等に係わる 被害の防止に関する法律」に基づく「特定外 来生物」に指定されたことから,現在は学術 研究などの特別な目的以外で栽培,保管,運 搬が禁止されている.著者らも浦内 C と祖納 A の調査地水田において,用水路で繁茂する ボタンウキクサを確認した (図 4-E).西表
大滝(1989)とは調査方法が異なるため,直 接的な比較はできないが,約 30 年前に西表 島の水田に普通に生育していたミカワタヌ キモ,マルミスブタ及びタヌキアヤメの 3 種 が,現在では生育地や個体数を減らしている のは確実な状況である. 西表島島内における 8 種の分布を見てみる と,ほとんどの調査地で確認されたミズワラ ビ以外の 7 種については一定の傾向が確認さ れた.マルミスブタ,ミカワタヌキモ,オオ シラタマホシクサ,タヌキアヤメの 4 種は, 西表島西部の調査地でのみ生育が確認され 図 3 水田における湿生植物の生育状況.A 水田内と畦畔において生育するナンゴクデンジソウ, B 水田内のみで生育するマルミスブタ,C 自然水路内で生育するミズオオバコ,D 畦畔において生 育するオオシラタマホシクサ,E 水田内に侵入した外来種ボタンウキクサ,F 水田内に侵入し、一 面を覆い尽くす海浜植物ハマグルマ類. A:水田内と畦畔において生育 B:水田内のみで生育 C:自然水路内で生育 D:畦畔において生育 F:海浜植物の侵入 E:外来種の侵入 た.その他 3 種のナンゴクデンジソウとヒメ シロアサザ,ミズオオバコは,3 種とも 1-2 ヶ所において東部の調査地で確認されたも のの,それ以外はやはり西部を中心に生育が 確認された.西表島西部の地域は,昔から湿 地環境が形成され,その特性を利用した水稲 栽培が行われており,その水稲栽培を目的に 寄り集まったとされている集落跡も西部地 域において数多く発見されている.近年,少 しずつ休耕田が増えているようであるが,現 在でも西部地域の多くの水田では水稲栽培 が行われている.今回対象にした西部地域の 水田では,地形的な影響か,または区画整理 などの人為的な影響が少ないせいか,湿田環 境が多く形成されており,そのような場所で 対象植物が多く確認された.また,西部の水 田は浦内 A から白浜まで 10 ヶ所ほど含まれ るが,調査地あたりの確認種数は多くても 6 種(干立)であり,調査対象種の 8 種が同じ 場所で全て確認された調査地は存在しなか った.これらのことから,ミズワラビを除く 調査対象種 7 種の分布の中心は,水稲栽培が 盛んに行われている西表島西部地域の水田 であり,西部地域の複数の調査地水田でこれ らの種の生育が維持されていることが明ら かになった. 湿生植物の生育環境 ミズワラビとナンゴクデンジソウは,抽水 性から浮葉性の特性を持つ植物であるため, 水稲の栽培がなされている水田内から水の 流れのある用水路まで幅広い環境で定着が 確認された.しかし,出現場所を見てみると, 水田内や湿った畦畔の出現割合がより高い 値であるため,水の流れの少ない湿った水辺 環境に適していることが推測される.このこ とについては,近縁のデンジソウも含めて同 様の結果が報告されている.デンジソウの結 果ではあるが,東浦ほか(2011)では,水田 内や湿った畦畔において良好な定着が確認 されており,本調査の結果と同様に特に耕起 だけ施された休耕田においては水田区画一 面にデンジソウ群落が形成されていたこと が示されている.オオシラタマホシクサは, 1 ヶ所のみの確認であったため,生育環境の 考察については控えておく. 一方,沈水性や浮葉性のヒメシロアサザ、 マルミスブタ,ミカワタヌキモ,ミズオオバ コ,タヌキアヤメの 5 種は,生育環境が限定 された.ヒメシロアサザやマルミスブタ,ミ カワタヌキモ,タヌキアヤメの 4 種は水田内 でのみ確認され,ミズオオバコは水の流れの ある用水路のみで定着が確認された.タヌキ アヤメを除いた 4 種は,沈水性及び浮葉性の 植物であるため,乾燥しやすい畦畔などに定 着することは不可能であるが,種により水田 内と用水路で生育環境が別れたことは注目 すべきことである.しかしながら,なぜ種に よって生育適地や定着微環境が異なるのか, その定着要因や人為的な農作業との因果関 係については不明確である.このように,水 の流れの有無や湿乾の程度の差が生じる水 田域において,種により生育もしくは定着微 環境が異なることが明らかになった. 西表島の水田域において,ミズオオバコは 用水路のみでその定着が確認されているが, 現在一部の調査地においてその生育が脅か されている.北野ほか(2009)では,ミズオ オバコが生育している水田(特に用水路)に おいて,観賞植物として外国から持ち込まれ た サ ト イ モ 科 の 浮 遊 植 物 ボ タ ン ウ キ ク サ Pistia stratiotes L.が旺盛に繁殖して いることが報告されている.ボタンウキクサ は,「特定外来生物による生態系等に係わる 被害の防止に関する法律」に基づく「特定外 来生物」に指定されたことから,現在は学術 研究などの特別な目的以外で栽培,保管,運 搬が禁止されている.著者らも浦内 C と祖納 A の調査地水田において,用水路で繁茂する ボタンウキクサを確認した (図 4-E).西表
島の水田域において,用水路はミズオオバコ の唯一の定着微環境であるため,保全のため にも水面を覆い隠しミズオオバコなどの沈 水植物への日光を遮断するボタンウキクサ を駆除する必要がある.その他,干立の調査 地において,一部の水田ではあるが,海浜植 物のハマグルマ類の繁茂が確認された(図 4-F).干立の調査地は,多くの絶滅危惧植物 が生育する種多様性の高い重要な場所であ るため,こちらもボタンウキクサ同様に駆除 が必要であると思われる.また,水田域内の 定着微環境が異なるその他の種においても, 多くは近年急速に分布や個体数を減少させ ている種であるため,それぞれの種に対応し た減少要因を突き止め,今後それらの種の保 全を念頭においた活動を進めていくことが 望まれる. 3.謝辞 本調査は,東海大学沖縄地域研究センター 研究教育助成(採択コード: 沖セ 11-4; 12-2) により遂行することができた.調査地水田の 地権者の皆様には,調査のために水田域の立 ち入りを快く許可していただいた.また,現 地における予備調査の実施にあたり,コカ・ コーラ教育・環境財団のご支援も頂いた.さ らに,竹富町役場の農林水産課の皆様にも西 表島の水田に関する情報を提供していただ いた.ここに明記して心から御礼申し上げる. 4.引用文献 東浦郁恵・説田良樹・池田和樹・山田 龍・ 青島佐江子・小松大将・竹内彩香・伊藤紅 葉・内藤 駿・久保木正志・中村将倫・入 川聖司・藤吉正明(2011)平塚市における 水生シダ植物デンジソウの分布.東海大学 教養学部紀要,42,213-216.
Ishimine, Y., Aramoto, M., Shinzato, T., Yamamori, N., and Yonemori, S. (1992) Distribution of cropland weeds and naturalized plants in Iriomote Island and its aspects in emergence . Science Bulletin of College Agriculture University Ryukyus, 39, 157-175. 角野康郎(1994)日本水草図鑑.文一総合出 版,東京. 環境省(2012)第 4 次レッドリストの公表に ついて.環境省報道発表資料,平成 24 年 8 月 28 日 . ( http://www.env.go.jp /press/press.php?serial=15619) 北野 忠・水谷 晃・河野裕美(2010)西表 島西部の水田に定着した特定外来生物ボ タンウキクサ.西表島研究 2009,29-34. 沖縄県(2006)改定・沖縄県の絶滅のおそれ のある野生生物(菌類編・植物編)-レッ ドデータおきなわ-.沖縄県文化環境部自 然保護課,那覇. 大滝末男(1989)沖縄島・石垣島・西表島の 水草について.水草研会報,37,17-24. 2:大富 1:南風見 付図 調査地水田の様子.2011 年もしくは 2012 年 11 月撮影. 5:古見C 3:古見A 4:古見B 6:高那 7:赤離A 8:赤離B 10:浦内B 9:浦内A 付図 続き 1.
島の水田域において,用水路はミズオオバコ の唯一の定着微環境であるため,保全のため にも水面を覆い隠しミズオオバコなどの沈 水植物への日光を遮断するボタンウキクサ を駆除する必要がある.その他,干立の調査 地において,一部の水田ではあるが,海浜植 物のハマグルマ類の繁茂が確認された(図 4-F).干立の調査地は,多くの絶滅危惧植物 が生育する種多様性の高い重要な場所であ るため,こちらもボタンウキクサ同様に駆除 が必要であると思われる.また,水田域内の 定着微環境が異なるその他の種においても, 多くは近年急速に分布や個体数を減少させ ている種であるため,それぞれの種に対応し た減少要因を突き止め,今後それらの種の保 全を念頭においた活動を進めていくことが 望まれる. 3.謝辞 本調査は,東海大学沖縄地域研究センター 研究教育助成(採択コード: 沖セ 11-4; 12-2) により遂行することができた.調査地水田の 地権者の皆様には,調査のために水田域の立 ち入りを快く許可していただいた.また,現 地における予備調査の実施にあたり,コカ・ コーラ教育・環境財団のご支援も頂いた.さ らに,竹富町役場の農林水産課の皆様にも西 表島の水田に関する情報を提供していただ いた.ここに明記して心から御礼申し上げる. 4.引用文献 東浦郁恵・説田良樹・池田和樹・山田 龍・ 青島佐江子・小松大将・竹内彩香・伊藤紅 葉・内藤 駿・久保木正志・中村将倫・入 川聖司・藤吉正明(2011)平塚市における 水生シダ植物デンジソウの分布.東海大学 教養学部紀要,42,213-216.
Ishimine, Y., Aramoto, M., Shinzato, T., Yamamori, N., and Yonemori, S. (1992) Distribution of cropland weeds and naturalized plants in Iriomote Island and its aspects in emergence . Science Bulletin of College Agriculture University Ryukyus, 39, 157-175. 角野康郎(1994)日本水草図鑑.文一総合出 版,東京. 環境省(2012)第 4 次レッドリストの公表に ついて.環境省報道発表資料,平成 24 年 8 月 28 日 . ( http://www.env.go.jp /press/press.php?serial=15619) 北野 忠・水谷 晃・河野裕美(2010)西表 島西部の水田に定着した特定外来生物ボ タンウキクサ.西表島研究 2009,29-34. 沖縄県(2006)改定・沖縄県の絶滅のおそれ のある野生生物(菌類編・植物編)-レッ ドデータおきなわ-.沖縄県文化環境部自 然保護課,那覇. 大滝末男(1989)沖縄島・石垣島・西表島の 水草について.水草研会報,37,17-24. 2:大富 1:南風見 付図 調査地水田の様子.2011 年もしくは 2012 年 11 月撮影. 5:古見C 3:古見A 4:古見B 6:高那 7:赤離A 8:赤離B 10:浦内B 9:浦内A 付図 続き 1.
付図 続き 2. 13:干立 11:浦内C 12:浦内D 14:祖納A 15:祖納B 16:祖納C 18:白浜 17:祖納D 西表島研究2011,東海大学沖縄地域研究センター所報,30-39, (2012)
Study Rev. Iriomote Is. 2011, ORRC, Tokai Univ., 30-39, (2012)