クト理論の問題,アンカリング効果の問題などであ る。今後追加変更の可能性はあるが,確認や検証のポ イントはいまのところ以下の通りである。 ◦行動経済学におけるシステム1が,AI により実現で きることを確認する ◦システム1のアルゴリズム困難性を確認する ◦はたして人間と同じように行動経済学的な意思決定 がなされるのか ◦直感を働かせながら理性的・合理的に意思決定でき るのか ◦ AI にナッジが効くのか 以上のような行動経済学に関係する意思決定会計の 仮説や課題を実験により検証する予定である。 おわりに 管理会計の意思決定会計と AI との関係を研究する ことで,以下の仮説が立てられた。 ◦問題の認識では AI の「特徴抽出機能」が有効では ないか ◦定量評価分析ではアルゴリズムの問題が主で,AI の適用効果は低いのではないか ◦定性評価分析は AI の「分類と将来予測機能」が有 効に機能する さらに,定性評価分析では行動経済学との関係を考 慮しておくことで,AI によって定性評価分析がより 機動的になるであろう。たとえば,直感,感覚,経 験,熱意などによる迅速で体力をほとんど消耗しない 行動経済学のシステム1がコンピュータで実現できる のではないか。 ただし,AI の機械学習によって行動経済学のシス テム1が学習されると,反対に弊害も起こりかねない ことを指摘した。それは,人間の勘違いや思い込みが そのまま AI に学習されてしまい,その AI は人間と同 じように偏った判断をしてしまいかねない。 そうならないためにも,システム1(定性評価)と システム2(定量評価)の順番や並行稼働,フィード バックなどの実行に関する組合せを検討しておく必要 がある。 最後に,以上の仮説や課題は開発中の実験機「AI 意思決定会計プロトタイプシステム」を使って,実際 にやってみることで検証する。次回は,実験結果の一 部を報告する予定である。今後は,AI 関連の学会に おいても「AI のマネジメントへの適用研究」の観点 から研究発表を行う予定である。 (付記) 本研究は JSPS 科研費 JP18K01921の助成を受けた 成果の一部である。 注 1)Breiman(2001, p.199)は,機械学習のようなアルゴリズ ム・アプローチの処理を Unknown(不明)と表現している。 2)認知心理学の「ハロー効果」に相当する。 3)プライミング効果とは,システム1が受け取る先行的な刺激 によって,その後の行動や意思決定が無意識に影響を受けた 行動になること。 4)ハロー効果とは,最初の印象でその後の評価が影響を受け やすいこと。 5)コーポレート・ガバナンス・コードは,こういった意思決 定者の思い込みや偏った価値観から判断されるリスクを和ら げるため,社外取締役などを入れて多様性を高めるよう規定 しているといえる。 6)答えがどうしても分からない学生も1人いた。彼はそもそも 数学アレルギーで計算することを無意識に拒絶しているよう であった。つまり,彼の場合は意識して数学を活用して頭を 使うシステム2が極めて起動しにくい状態にあるといえる。 7)谷守(2018b)に基づく。 8)この場合のアカウンタビリティは,会計責任の意味だけで なく,安藤ら(2018)のいう受託責任の意味もある。 9)なぜならば,AI が企業を経営している訳ではなく,人間が 経営しているからである。本稿では,SF 映画や小説の世界 ではなく,現実の実務への適用を検討している。 参考文献
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