• 検索結果がありません。

雑誌名 異文化

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "雑誌名 異文化"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

[最優秀賞受賞研究/論文部門(大学院生)] ア ルゼンチンの沖縄系下位世代による文化活動 ― Ryukyu Sapukai を例にして―

著者 月野 楓子

出版者 法政大学国際文化学部

雑誌名 異文化

巻 15

ページ 161‑163

発行年 2014‑04

URL http://hdl.handle.net/10114/9365

(2)

161

【報告要旨】

本報告では、南米・アルゼンチンで「島うた」をうたう Ryukyu Sapukai というグループを取り上げ、沖縄からの移民の子孫である沖 縄系下位世代による文化活動について考察を行った。下位世代による 文化活動は、一般的に親・祖父母等が沖縄出身であることから、沖縄 文化の継承という文脈で説明されてきた。しかし、初期の移民から数 えると 100 年以上が経過する中で、一世と、下位世代の沖縄文化の捉 え方やこれをめぐる活動を同じに考えることができるのだろうか。

RyukyuSapukai は、留学や研修で沖縄に暮らした経験をもつアル ゼンチンの沖縄系下位世代によって 2000 年に結成された。沖縄の楽 器である三線を手に民謡などの「島うた」をうたうグループである。

所謂「一世」は参加していないという特徴があり、年齢層は主に 20 代から 40 代で、週に一度、首都ブエノスアイレスにある沖縄県人連 合会の会館で練習をしている。RyukyuSapukai のメンバーのような 沖縄系の人々は現在、世界に約 36 万人いると言われ、移民先の日系 人の中でもとりわけ沖縄独自の文化が保持されアイデンティティが強 いと評価され、関心が寄せられてきた。こうした関心のもとで行われ る海外沖縄系の文化にまつわる研究には大きく分けてふたつの特徴を 見出すことができる。ひとつは、文化・芸能の活動そのものに関する 研究で、「継承」や「変容」の様相に重点が置かれている。もうひと

論文部門(大学院生)

国際文化研究科 今泉裕美子ゼミ

月野 楓子

アルゼンチンの沖縄系下位世代による文化活動

─ Ryukyu Sapukai を例にして─

Hosei University Repository

(3)

162

最優秀賞受賞研究

つは、活動の担い手に関する研究で、彼らが活動に参加するのは沖縄 系というアイデンティティを保有していることによるものとして主に 説明されている。

アルゼンチンについては日系人のうち沖縄系が7割を占めるといわ れているが、沖縄系を対象とした研究は他の中南米地域に比して著し く少ない。アルゼンチンでは沖縄系も日系も現地との「同化」がかな りの程度進んでいると認識されているため研究の対象となりにくかっ たと考えられるが、アルゼンチンのような状況に目を向けることこそ

「同化」と「変容」の様相を検証し、実態を捉えていくことを可能に するだろう。

アルゼンチンへの日本人移民はその初期から他の中南米地域にみ られたような開拓地への集団移住が無く、従って日系社会の形成は 都市部で個別に生活を営む人々から出発した。現在では、一世には 一般的であった職業も二世以下の世代では現地社会の一員としての 教育と社会進出の機会を得て職業選択の幅が広がり、下位世代によ る県人会活動への継続的な参加者は限定的である。一方で、幼少期 はほとんど県人会と関わりが無くても成長してから参加する者もあ らわれ、こうした下位世代による昨今の文化活動参加については、

マイノリティやエスニシティに対する理解への広がりによるところ が大きいことが指摘されてきた。しかし、これらの概念が注目され る中においても、アルゼンチン社会における生活の実態や海外沖縄 系が「母県」に会する「世界のウチナーンチュ大会」に象徴される 沖縄県からの働きかけ、加えて後に沖縄のイメージとして定着する 様々なシンボルが沖縄ブームによって創出されていくことこそ、現 在の移民社会や下位世代に影響を与えていったことを本報告では明 らかにした。

RyukyuSapukai を通し、①そもそも彼らが活動に至るにはどう Hosei University Repository

(4)

163 いう背景が歴史的・現在的に見られるのか、②活動に参加している 本人たちの意識はどういったものであるのかを分析しながら、③沖 縄という「ルーツ」の自明性を問い直した。そこから下位世代によ る文化活動の捉え方について再検討を行い、彼らの活動が必ずしも

「ルーツ」を基盤として直線的に行われているのではなく、活動こそ が彼らの「ウチナーンチュ・アイデンティティ」を構築または再構 成する過程ではないかと結論づけた。

Hosei University Repository

参照

関連したドキュメント

「地域」と「伝統」の枠で捉えられてきた。エイサーも同様である(琉球新報社編

 ②あのプラスチックなんかは,袋に入れていただいて M.A  ③できるだけいい条件で働けるように交渉していただきたい。 K.N

東半島周辺で稲作とともに蕎麦・麦の農作や玉石文化︑養蚕業や北部の遊牧など多彩な民族に伝わる漁法や捕獲や農法と家畜の伝統が朝鮮半島に移動して︑日本列島の主たる文化基盤の一つをなし︑そしてさらに

だが ︑日本研究が国際的な場でメインストリームをあゆみだせば ︑どうなるか ︒こたえは

本稿で扱う3冊の本は、Matthew Frye Jacobson, Barbarian Virtues: The United States Encounters Foreign Peoples at Home and Abroad, 1876-1917 (New York: Hill

前節では法助動詞の意味の理論を概観したが、この節ではJennifer 

10大西亮..

一九五四年十月一五日、 新たに米軍使用に必要となる伊江村真謝区の土地に協議が開かれました。この協議は、シーハン氏( USCAR )、