• 検索結果がありません。

雑誌名 奄美ニューズレター

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "雑誌名 奄美ニューズレター"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

自然遺産登録に寄せる思いを中心に−

著者 財部 めぐみ

雑誌名 奄美ニューズレター

巻 28

ページ 24‑29

別言語のタイトル Comments on the Amami Satellite Campus

URL http://hdl.handle.net/10232/17818

(2)

■しまゆむた

1 はじめに

このレポートは、受講生の目からみた「奄 美サテライト教室」を、まだ受講していない 奄美の方々に伝えることが主たる目的で書か れている。それと同時に、開講して下さる先 生方に、一受講生の感想という偏りはあるけ れども、熱心な講義から受講生が受けるイン パクトを知っていただきたい思いも少しこ もっている。

奄美サテライト教室の概要ならびに受講の 様子を説明するだけでは表面的な紹介に終わ りかねないので、ここでは平成 18 年度前期 に開かれた経済政策論特論の中で扱われた テーマ「奄美群島に現代的な循環型社会を創 出する可能性」を中心に取りあげたい。とい うのは、そこに鹿児島大学が目下企図しつつ ある奄美プロジェクトと地元の奄美の人々が もっと取り組むべき課題の交差を見いだせる からである。両者が交差するテーマとは「奄 美群島の世界自然遺産登録」である。私自身 はこの取り組みについてもっと理解を深める 必要を感じていると同時に、受講を通して、

登録活動に参画してみたいと思うに至った。

このレポートでは、なんとか、その気持ちの 動きを伝えてみたい。

2−1 変貌する奄美とサテライト教室の設

自分の鼻の先にいる先生方の講義や対話に よる緊張感や面白さを伝えることがレポート の主眼である。その機会を与えてくれる奄美 サテライト教室の意義を分かるために、まず 現在の奄美の実情と、そこに大学院教育が突 然現れた驚きを記すことから始めよう。

奄美紹介では、いつも次のように紹介され る。奄美群島は、鹿児島市の南西約 370 ㎞〜

560 ㎞に位置し、北緯 29 度から 27 度の間に 連なる島々である。8 つの有人島から成り、

奄美大島、加計呂麻島、与路島、請島、喜界 島、徳之島、沖永良部島、与論島などである。

総面積は 1,239!であり、そのうち奄美大島 の面積は 720!で、沖縄本島、佐渡島に次い で 3 番目に大きい島である。奄美大島の気候 は、1 年を通して温 暖 で、年 間 の 降 水 量 も 2,800 ㎜と多く、日本では小笠原諸島と奄美 群島だけが亜熱帯気候を有している。今年 3 月 20 日には、北の笠利と名瀬市、南の住用 が飛び超え合併をした結果、奄美大島は一市 四町村となった。誕生した奄美市は、人口約 49,751 人(平成 18 年 7 月 31 日奄美市役所調 べ)で、大島の人口全体の約 4 割を占める。

島の南北を山々が連なり険しい山で囲まれ ているため、以前は各集落が小さな共同体で ある「ムラ社会」を形成し、集落ごとに独自 の伝統文化、言語を育んできた。そのために、

各集落によって島唄や方言に細かな違いがあ る。しかしながら、現在にあっては、集落ご とに異なる言語や文化を築いたかつての「ム ラ社会」はすでに姿を消し去り、奄美全体を 1 つの大きな枠組みで捉える「奄美ブラン ド」が内外問わず叫ばれるようになってい る。

近年、都市的な生活スタイルが普及してき た奄美群島を「世界自然遺産」に登録しよう とする動きが目立ってきた。鹿児島大学も包 括的なプロジェクトを企画して、世界自然遺 産登録に向けた活動を側面支援しようとして いる。研究プロジェクトとは別に、鹿児島大

奄美サテライト教室での受講感想

−奄美群島の世界自然遺産登録に寄せる思いを中心に−i

財部 めぐみ(鹿児島大学大学院人文社会科学研究科博士前期課程・奄美サテライト教室受講生)

(3)

学は、奄美の人々が長い間抱き続けた夢であ る高等教育の場を提供した。それは、学部教 育レベルを飛び越えて大学院教育のサテライ ト教室を設置したという点で、予想外の出来 事として地元に受けとめられた。人文社会科 学研究科の「奄美サテライト教室」は、平成 16 年 4 月に名瀬市公民館の金久分館の一室 を借りてスタートした。初年度と 2 年目は、

筆者を含めた 5 名の科目等履修生と 1 名の大 学院生が講義を受けた。今年度は、科目等履 修生の 2 名増加 1 名減、また科目等履修生か ら 2 名の大学院生が誕生したので、現在は計 4 名の科目等履修生と 3 名の大学院生が在籍 している。

そもそも筆者がサテライト教室に参加した きっかけは、旧名瀬市の広報誌で鹿児島大学 が市民(大卒者)を対象に受講生を募集する という記事であった。これまで地元に戻り、

職業柄さまざまな分野の方々と出会うことが 多い生活である。その中で、奄美で生まれ育っ てきた私だけれど奄美の自然、文化、言語、

宗教などどれ 1 つを取っても客観的に正しい 目で理解できていないことに気づかされた。

奄美サテライト教室の開設講義は、鹿児島市 のキャンパスと同じ専門講義の他に、奄美を 素材として分析、調査するオリジナルな講義 も幾つか用意されていたことに大変興味を 持った。加えて、仕事を持つ社会人として、

奄美にいながら高度で専門的な大学院の講義 を受講できるシステムそのものも魅力的で あった。

本土に比べて、社会人が能力を向上させる 機会の乏しい離島にあって、高度な学習がで きる場を提供してくれるのは、市民にとって も願ってもないチャンスである。筆者が受け た講義は、日本史、中国史、言語学、奄美プ ロジェクト研究、島嶼論(奄美のマングロー ブやサンゴ礁の環境論)などと、多分野にわ たる。このサテライト教室を通して学問的な 意欲が芽生え、次第に成長してきたので、筆

者は今年 3 月に大学院入試を受け、正規の大 学院生となった。目下は、鹿児島市の大学キャ ンパスと奄美サテライト教室を行き来する 日々が続いている。

2 ー 2 奄美サテライト教室の特徴と課題 この奄美サテライト教室の特色について触 れよう。サテライト教室は大学キャンパスと 違い、たいてい少人数で受講する。講義は土 曜や日曜に集中的に行なうか、5 日間連続で の夜間講義になる。開設講義が多い月は週替 わりでさまざまな科目の授業が行われてい る。受講生は全て社会人であり、年齢、職業 共にバラバラであるため、受講生同士の活発 な意見を聞くことができる。講師陣は、大学 キャンパス内と変わらない高度な講義を提供 してくれるが、受講生の実情を考慮して、毎 回のように現実と関わりの深いテーマを取り 入れるなど工夫してくれる。

教室内部も、3 年目を迎えて備品や OA 機 器が充実してきた。もうすぐ遠隔操作システ ムを使用して大学キャンパス内の講義とライ ブ中継できる体制も整うそうである。今年度 は新たに 2 名の大学院生を輩出させ、また来 年度には徳之島教室が誕生する。さらに、こ れからは大学全体の力でサテライト教室を拡 張させ、地域社会づくりを支援するなど、広 く継続的な地元密着型の専門機関として機能 を充実させるらしい。

3 階の教室から窓の外に目をやると奄美の 青い海が広がり、講義の合間には事務員の方 が島の特産品を差し入れてくれたり、講義が 終わると講師を交えて島料理をつつきながら 質問や相談をしたりする。時には今回の講義 のようにレポートが厳しく求められることも あるが、全体的に南国特有の和気あいあいと したアットホームな環境で学べることも大き な特色の 1 つであろう。

その一方、3 年目を迎えた奄美サテライ教 室には、課された問題もいくつかある。とり

(4)

わけ、受講生の数が伸び悩みは深刻である。

教室運営に関していえば、受講手続き、受講 資格、受講料等の問題、また受講生の数や講 師の日程によって開講される講義が決定され るため、必ずしも希望通りの講義が開講され るとは限らない。現時点では多くが、経済、

法学、人類学などの文科系の講義中心に開講 されている。通常、大学キャンパスの講義は 週 1 コマ 90 分で行われる。サテライト教室 では、講師が来島する回数に応じて全 14〜15 コマの講義数を集中して行う形をとってい る。したがって、一日の開講日に 3〜5 コマ 集中が当たり前で、講師と受講生共に講義の 終わりには疲れ切っていることも多い。

今年度は 2 名のサテライト教室出身の大学 院生が誕生した。それはそれで、問題を抱え ている。サテライト教室で取得した単位数が 専攻学科により一部しか認められなかった り、サテライト教室で開講されないが必修の 科目は、どうしても大学キャンパスで受講し なければならず、時間、体力、金銭面での負 担も大きい。だが、本年度の後期からサテラ イト教室で行われる科目数を増やしたり、正 規院生の旅費一部助成など、サテライト教室 出身の大学院生を取り巻く環境は確実に改善 しつつある。

さまざまな課題を抱えながらも、奄美サテ ライト教室は、全国的に見ても珍しい、離島 における遠隔システムを兼ね備えた国立大学 の画期的な取り組みである。鹿児島大学が離 島の人々の向学心にできるかぎり応えようと する姿勢をとるから実現できたのである。そ れを抑制させる受講生の頭打ち現象では、も ともと地元に大学機関がない奄美の住民に とって、大学院と聞いただけで堅苦しく足が 遠のいているという事態がある。その敷居を 低くするためには、大学側や地元の自治体だ けでなく、サテライト受講生自らが教室の面 白さを広くアピールし、教室を変えていく時 期ではないだろうか。筆者を含めた受講生全

員の今後の課題でもある。

3 ー 1 サテライト教室の講義例

今年は 4 月 29 日の「経済政策論特論」が 講義の皮切りであった。今回の「経済政策論 特論」は筆者の登録していない講義であった が、世界自然遺産登録の必要性を痛切に感じ させてくれ、新たな奄美像を発見する機会と なった。

講義では、2 つのテーマを検討素材とし、

1、循環型社会の形成、2、市町村の行政改革 が取りあげられた。前者については、鹿児島 大学(法文学部中心に)が取り組んできた研 究、これからの研究プロジェクトの構想など を素材にしていた。後者については、行政改 革の実務者(薩摩川内市の古川英利氏)をゲ ストスピーカーに迎えて、実際のケースが多 面的に検討された。

「経済政策論特論」の幅広い講義内容のう ちで、筆者は、循環型社会の形成、とくに世 界自然遺産登録を支援する鹿児島大学のプロ ジェクトに心が動かされた。そのプロジェク トは、奄美群島全体を巻き込んだ大掛かりな もので、コンセプトは奄美に「『島』コスモ ス社会」を創出しようというものである。こ の新プロジェクトは、最終的には、自然と経 済が共存する新しい形の島循環型社会を形成 することに狙いがあり、奄美群島民の関心を 高める活動目標が「世界自然遺産登録」とい う位置づけである。島の循環型社会とは奄美 における生態系、経済社会システム、文化シ ステムを包括した新システム社会のことであ り、これが実現すれば自然と現代人の便利な 生活とを共存させた他所には例のない地域モ デルになるそうである。

3 ー 2 奄振法による開発と便利な生活 奄美は、戦後の日本復帰から、奄美群島復 興事業、奄美振興特別措置法(奄振法)によ り、道路、港湾、空港、学校、各種公共施設、

(5)

通信、電力など、「本土との生活水準の格差 是正」を縮めるため、大規模なインフラ事業 が投入されてきた。1954 年以来実施されて きた奄振法は、50 年以上に渡って国の手厚 い保護によって支えられてきたが、1990 年 代後半をピークに総予算は減少し続けてい る。その奄振法に依拠した開発は生活の便利 さをもたらした半面で、赤土の流出などによ り生態系を攪乱させているといわれる。

人間が経済を発展させていく過程で問題と なるのは、背後にある生態系の存在である。

人間は経済的な営みを追求していく場合、そ の利潤と便利さばかりに気を奪われ、とかく 外界にある自然環境への正しい認識と配慮に 欠けることがある。経済と自然の隔絶であ る。自然環境に一度大きなダメージを与える と、同時にそれまで自然環境が行なってきた さまざまな機能、水の涵養、浄化、洪水の管 理、土壌の肥沃化、大気の循環、バクテリア の生育などが弱まる。自然の営みに対する負 の負荷を無視して、近代化を推し進めた結 果、一見すると「本土並みの生活水準」に近 づきはしても、その代償として大規模な森林 破壊、環境汚染が進行している。

また、かつての険しい山々に取り囲まれ集 落ごとに独自の伝統、文化を育んできたかつ ての「ムラ社会」は開発の進展とともに崩れ ていき、人口減少、高齢化、少子化の問題を 招いた。自然と社会が微妙なバランスの上に 成り立つ伝統的な島社会システムは、既に市 内や周辺部から消え去り、近代化された生活 はかつての島の宝を放棄した上に築かれた。

奄美は常に外部からの支援を必要とする不安 定な島社会に変わった。

鹿児島大学の新プロジェクトは、現在の開 発スタイルから自然と経済の共存するシステ ムに切り替えさせようとする。それは、奄振 法に象徴される一方通行型の経済システムを 循環型の経済システムへと転換させようとい う一大事業である。奄美の豊かな資源は「有

限」である。希少な資源を有効活用して、循 環型の自然=経済システムを再構築し、現代 の先端技術を推し進めて生態系をあまり乱さ ない生活スタイルを確立させようとしてい る。

3 ー 3 住民意識の向上の必要性

循環型社会づくりは、周囲がどれほど熱心 であろうとも、奄美の人々が本気で取り組ま ないかぎり実現しない。次第に周囲が奄美を 応援する力を強めているにもかかわらず地元 は動き始めていないことが、その社会づくり の一番のネックになっている事実を直視する 必要があると、筆者は強く思っている。

上で見たごとく、鹿児島大学は人材育成に も循環型社会づくりにも大きな力を投入して いる。これと並行して、鹿児島県も世界自然 遺産登録に不可欠な作業を着々と進めてい る。少し具体例を挙げれば、鹿児島県は、平 成 15 年度から 3 ヶ年計画で「奄美群島重要 生態系地域調査」を実施している。調査の目 的は、1、奄美群島の固有の動植物や生態系 などの生物多様性を適切に保全すること、2、

減少、衰退しつつある自然生態系等の再生を 検討すること、3、持続可能な方法により地 域の自然資源を活用する為の計画等を策定す ること、である(鹿児島県のホームページ)。 県はすでに調査を終え、これからは成果の普 及に取り組もうとしている。

鹿児島大学や鹿児島県などの活動に比べ て、地元での取り組みは盛り上がりに欠けて いる。奄美市や保護団体などの強烈なアピー ルもなく、経済界はかえって推進勢力に圧力 をかけるのではないかとの懸念の声すらも出 ている。一般市民の環境への配慮、意識等も あまり高いとはいえない。ゴミの分別収集、

資源の再利用、エコマネー、エコバッグ、ア イドリングストップ、クールビズなど、目覚 ましい成果を上げられずにいる。道路にはゴ ミや空き缶、たばこの吸い殻が投げ捨てら

(6)

れ、公共施設や公衆トイレなどの備品は無惨 に破壊され、壁には落書きが一杯である。海 がめの産卵する砂浜には、夏場は花火の残 骸、年間通してさまざまな生活用品が放り投 げられている。空港に向かう道路の車窓から は、あちらこちらで切り崩され剥き出しに なった斜面が見える。お金を払ってわざわざ 奄美の豊かな自然を体験しにきた観光客は、

きっとがっかりしているだろう。

別の例を挙げよう。筆者は先日、東京大学 院生の「オットンガエル」調査に同行し、旧 住用村の青久から嘉徳に抜ける細い林道を夜 車で走った。カエルが好む沢を見つけては車 から降り、沢にある巣や個体の識別作業を行 う研究の様子を間近で観察した。オットンガ エルの他にも、絶滅危惧種のアマミハナサキ ガエル、アマミヤマシギ、アマミサソリモド キ、アマミノクロウサギなども道中見かける ことができた。この調査の道中では、林道の あちらこちらに放置された廃車、《不法投棄 禁止!》の立て看板がやけに目に付いた。そ の院生の話によると、この林道は以前のがけ 崩れで道が封鎖されたため、不法投棄は少な いほうだと言う。そして、奄美の人は「オッ トンガエル」にしろ、こうした動植物の希少 性について関心が薄く、シンポジウムを開い ても反応がないことを嘆いていた。

筆者はこれまで、奄美群島の世界自然遺産 登録の話は、地元の環境に対する意識の弱さ から判断して、実現しないだろうと思ってい た。しかしながら、今回講義を受けて、その 考え方も随分変わってきた。奄美の宝は、こ の豊かな自然と、それとうまく共存してきた かつてのムラ社会であり、島人たちの古き良 き知恵こそが「島の誇り」なのである。この 間、多くの人はその誇りを見失い、西洋近代 的な農業、工業、水産業などの大規模化、均 一化した短期効率性ばかりを追求した。現代 の奄美社会が、かつての精神を取り戻し、こ れ以上の環境、生態系の破壊を食い止め停滞

した奄美社会を打開させる可能性は少なくな い。この新プロジェクトはそう訴えている。

現代人になってしまった奄美の人々は、手に した生活の便利さを放棄することが無理かも しれない。ならばせめて自然と社会が共存で きる新しい社会システムを島一丸となって構 築すべきであろう。

そこでまず重要となるのが、住民の自然像 に対する《根本的なパラダイムの転換》であ る。なぜなら、登録活動の主要な推進力は最 終的には群島の住民だからである。基礎には 住民レベルでの自然を大切にする取り組みが あり、それを行政や企業、研究者グループな どが地域全体として引っ張っていく。また、

今回講義を受講した筆者をはじめ奄美サテラ イト生も新しい社会システムづくりに参画 し、住民の環境意識アップの手助けを担う。

これが地域密着型の教育を提供してくれる奄 美サテライト教室で学ぶ私たち受講生の理想 のあり方ではないだろうか。

4 おわりに

戦後の奄美では、奄振法の力で大規模なイ ンフラ整備が進んだ。住民の生活は目まぐる しく進歩し、より都会的で快適な生活を営む ことができるようになった。しかしながら、

自然界に目を向けると、森林は開発によって 破壊され、サンゴ礁に囲まれた美しい海も汚 染が進んでいる。便利な生活を手に入れたの と引き換えに、多くの島の宝も失ってきた。

一度経済的な豊かさを手に入れた島の住民 は、もうかつてのムラ社会には戻ることは出 来ない。そうだとしても、これ以上の自然環 境の破壊を食い止め、同時に、ある程度の生 活の豊かさも保証する、こうした社会システ ムを未来に構築することはできないのだろう か。

鹿児島大学が推進しようとしている 21 世 紀の「『島』コスモス創出事業」という包括 的なプロジェクトは、これをテーマにしてい

(7)

る。奄美に島コスモス社会を形成するという ことは、奄美の自然、経済、文化が相互に連 携し合い、絶妙なバランスのもとに安定した 奄美社会を現代に再生することである。その ためには、行政、企業、環境保護団体、地元 の研究者グループが大学側をサイドからサ ポートし、地域全体をリードしていく。それ が実現したとしても、最終的に実現に向けて の主要な原動力は、やはり地元の住民であ る。地元全体の意識を高め、実現への盛り上 がりに一役買ってくれるのが「奄美群島の世 界自然遺産登録」である。まず登録実現によっ て、内外に広く奄美群島の存在性をアピール し、奄美の観光産業を発展させることが大切 である。

今回、講義を通して、奄美を客観的に捉え、

今まで見えなかった奄美像を発見できたよう に思う。奄美サテライト教室で学んだ受講生 が、登録実現の重要性を積極的に住民の目線 で語る。受講を通して理解できた、その思い を少しでも他の人に伝えようと心が弾む。そ こに本講義を学んだ意義はあるのではないだ ろうか。

参考文献

山田誠(2003)「島嶼圏政治行政システムと 環境ガバナンス」『奄美ニューズレター』

No.1 12 月号 pp.3−4

廣瀬晋也(2003)「文化意識の変容と開発」

『奄美ニューズレター』NO.1 12 月号 pp.13−14

皆 村 武 一(2003)「産 業・経 済 の 変 容 と 開 発」『奄 美 ニ ュ ー ズ レ タ ー』NO.1 12 月 p.15

萩野誠(2003)「鹿児島大学人文社会科学研 究 科 名 瀬 サ テ ラ イ ト 教 室 開 設」『奄 美 ニューズレター』NO.1 12 月号 pp.19−

22

桑原季雄(2004)「軍政下奄美における人類

学調査」『奄美ニ ュ ー ズ レ タ ー』No.3 2 月号 pp.10−16

山田誠(2004)「地元と連携した新機軸の研 究に挑戦を」『奄美ニューズレター』No.12 11 月号 pp.1−3

山田誠(2006)「奄美の研究イノベーション と包括連携協定」『奄美ニューズレター』

No.27 6 月号 pp.1−8

山田誠編(2005)『奄美の多層圏域と離島政 策――島嶼圏市町村分析のフレームワー ク』(財)九州大学出版会、福岡市

Sueo Kuwahara(2001) 「Amami Oshima : The Galapagos of the Orient」

『Beyond Satsuma-Small Islands in South- ern Japan』Chapter 6 pp.66−77

参照

関連したドキュメント

この条約において領有権が不明確 になってしまったのは、北海道の北

今回の調壺では、香川、岡山、広島において、東京ではあまり許容されない名詞に接続する低接

三宅島では 1995 年から 2000 年まで、東京都三宅村の施設で当会が業務を受託している

15 校地面積、校舎面積の「専用」の欄には、当該大学が専用で使用する面積を記入してください。「共用」の欄には、当該大学が

またこの扇状地上にある昔からの集落の名前には、「森島」、「中島」、「舟場

最初の 2/2.5G ネットワークサービス停止は 2010 年 3 月で、次は 2012 年 3 月であり、3 番 目は 2012 年 7 月です。. 3G ネットワークは 2001 年と

当法人は、40 年以上の任意団体での活動を経て 2019 年に NPO 法人となりました。島根県大田市大 森町に所在しており、この町は

清水港の面積(水面の部分)は約1,300 万平方メートルという大きさです。