• 検索結果がありません。

1996年度神奈川大学総合理学研究所共同研究成果報告

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "1996年度神奈川大学総合理学研究所共同研究成果報告"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

C‑1.

1996年 度 神 奈 川 大 学 総 合 理 学 研 究 所 共 同研 究 成 果 報 告

1.研 究 テ ー マ

細 菌 と高等植物 にお ける細胞分裂 の制御 機構 の分 子遺伝 学的解析11

2.代 表 者 名

応用生物科学科 助手 安積良隆

3.研 究 プ ロ ジ ェ ク トメ ン バ ー

学 内=神 奈川大学 理 学部 応用生物科 学科 助 手 安積良隆 神 奈川大学 理 学部 応用生物科 学科 教授 鈴木秀穂 学外:横 浜市立大 学 木 原生物 学研究所 遺伝進化 学部 門 助 手 川上直人

4.研 究 期 間

1996年4月 〜1997年3月

5.研 究 の 目 的

細 胞分裂 は生 き物が成長 ある いは増殖(単 細 胞生物の場合)を するの に必須の プロセスで ある。 しか しこの細 胞分裂 は適 した 時期、適 した環境下 で行 われな ければ、 この 目的を達成 する ことはできず、 む しろその個体 は死 に追 いや られ る ことにな る。細 胞分裂の 開始 や休 止 を制御 している しくみ は非 常 に複雑な ものであるが これ を 明 らか にする ことは生命 現象を理 解す る上 で大きな進歩 であ り、か つまた非常 に重要な 意義 を持 つ。昨年度 に引き続 き、細 胞 分裂 の制御 が深 く関与する3つ の現象 につ いて研究 を行 った。(計 画1)細 菌類 も栄養条件 な どの環境 の変化 に対応 するため細胞 分裂の休止や 再開 を行 うが 比較 的、細胞の構 成が単純 で ある にもかかわ らず、 この現象が どのよ うな遺伝子 によ って制 御 され ているのかあま り多 くの ことはわか っていない。 この 現象 に関わる遺伝子 を突然変 異体 を作 出する ことによ って 単離 する。(計 画2)高 等 植物 では細 胞周期 に関する研究者 も少な く、研究 は進 んで いな い。 特 に減数分裂 は材料 の調達が難 しいため減数 分裂 誘導 の しくみ はほとん ど何 もわか って いな い。そ こで変異 体の作 成 、変異遺 伝子の 同定が容 易な植物 シロイヌナズナを用 いる こと によ り卵の形成 時に起 こる減数分裂 の誘導機構 を分子遺伝 学の手法 を用 いて解 明する。(計 画3)植 物 は受粉後 、胚形成 を行 った後、種子 と呼ばれ る状 態で季節が来 るまで休 眠 に入

一81一

(2)

る。 そ して環境が整 うと細 胞分裂 を始 め、発芽 し発生 を開始 す る。 この休 眠 と発芽 を支 配 し て いる遺 伝子 を解析 する。

6.成 果

計 画1に 関 しては、大腸菌W3110株 を用 いて増殖期 か ら休止期 への移行(細 胞分裂の休 止)と 休 止期か ら増殖 期への移行(細 胞分裂の再 開)の 制御機 構 を調 べた。 まず休止期 か ら 抜 け出せな い(増 殖期 への移行 に必要な遺 伝子の)変 異 体を作 出するためW3110を ニ トロ ソグアニ ジンで処理 し、制限温度下 で増殖 で きな い温度 感受性突然変異体 を得た。 これ らは 単 に制 限温 度下 では細 胞分裂で きな い もの と休止期か ら増殖 期へ移行 できな いもの を含ん で いる と考 え られ る。 それで得 られた変異 体を許容温度 で培 養 し増殖期 に入 った後 、温度 を制 限温度 に上 げた。増殖 が停止す るもの は一般的な細胞分裂 の変異体 で、影 響 を受 けな いの も の は増殖 への移行 に変異 がある もの と考 え られる。繰 り返 し確認の 実験 を行 い、TSG11

1が その よ うな変異体 である ことを確認 した。 また休止期 に移 行で きな い変異体 を単離 する ため 、増殖 期 に入れな い変異体TSG111を 利用す る こと に した。TSG111に トラ ン スポ ゾ ンTn10を 導 入 し突然変異 を誘発 した後、休止期 に入る まで増殖 させ制限温度下 に 移 して プ レー ト上 で培養 した。休 止期 には行 ったTSG111は 増殖期 に入れな いので コ ロ ニ ーを形成 で きな い。 コロニー を形成 する ものはTn10の 挿入 によ り休止 期 に移行で きな くな った変異体で あると考 え られる。 この よ うな変異体TlM1、TlM2,TlM3、

TlM4を 得た。 これ らの変異体は長期 間培 養 した とき生存率 が野生型 に比 べ著 しく低下 す る。 これ は休止期 に入れ ず細 胞が休 止期の細 胞が持っ耐性 を獲 得する ことが できなか った め と考え られ る。 これ らの変異 体の変異 を起 こ した遺伝子 を同定するため 、変異 体の染色体

DNAの ライ ブラ リーを作製 し、 これか らTn10の 配列 をプ ロー ブと してスク リ〇ニ ング を行 った。得 られた ク ロー ンpHI1に は ごく小 さな断片 であるが変異体 の染色 体断片が含 まれて いた。今度 は この断片の配列を プローブ と し、野生型のW3110の 染色 体DNAに 対 して サザ ンハ イブ リダイゼー シ ョンを行 った ところ、 この 断片 に相 当す る断片が野生型大 腸 菌 に存在 する ことが 判明 した。 この領域 に存在 し、Tn10に よ って破壊 され た遺 伝子が

休止期へ の移行 に関与 している可能 性が非常 に強 い。

計画2で は シロイヌナズナを用 いて高等真 核生物 にお ける体細 胞分裂か ら減数 分裂 への転 換の機構 を調べる。 この ため に減数 分裂への移行 に関す る突然 変異体 を作成 し、その変異 し た遺伝子 を単離 し解析 する ことによ って 、減 数分裂 への細胞分裂様 式の転換期 には細 胞 内で どの様な ことが起 こ り、それ が どの様 に調節 されて いるか を明 らか にする。 この計画の第一 段階 と して卵で発現す る遺伝子 を単離する ことに した。 この 目的でデ ィフ ァレンシャルデ ィ ス プ レイ法 を行 った。 まず 、シ ロイヌナズ ナの葉 と開花後の花全体 と開花前の若 いつ ぼみか ら摘 出 した雌 しべか らRNAを 抽出 した。3種 類の1次 プライマーを用 いて、それぞれの

RNAか ら逆 転写 を行 いPCRの 鋳 型 を用意 した。 これ らの鋳 型を もとに3種 類 の1次 プラ イマ ーと16種 類の2次 プライマーの48種 類 の組み合わせ でPCR反 応 を行 った。 これ ら のPCR産 物 を シークエ ンスゲル電 気泳動 によ って分離 しそれ ぞれ のPCR産 物 の組織 特異

一82一

(3)

性 を調 べ て み た 。 最 初 の デ ィ フ ァ レンシ ャル デ ィス プ レイ で 全 部 で2582の 産 物 を確 認 す る こ とが で きた が 、そ の 中で 若 い雌 しべ に特 異 的 と考 え られ る もの は242個 で あ った 。 こ れ らの産 物 の 組織 特 異 性 を確 認 す る た め に82個 を 選抜 し、デ ィフ ァ レン シ ャル サザ ンハ イ ブ リダ イ ゼ ー シ ョン を行 った。82個 の うち 有 力 と考 え られ る もの10個 につ い て 、 さ らに 組織 特 異 性 を確 認 す る た め に ノ ーザ ンハ イ ブ リダ イ ゼ ー シ ョ ンの実 験 を行 った 。 この 中のA‑

10‑1、A‑13‑2、C‑1‑6、C‑9‑1、C‑12‑1の5個 の 産 物 に 関 して は 雌 しべ の み に特 異 的 で あ る こ とが 確 認 され た 。 残 りの5個 の もの に 関 して は ノー ザ ンハ イ ブ リダ イ ゼ ー シ ョンの 感度 以 下 で確 認 す る こ とが で きな か った 。先 の5個 に 関 して は そ のPCR断 片 をpCR‑

scriptと 呼 ば れ る プ ラス ミ ドにク ローニ ング す るの に成 功 した 。 ま た これ らのPCR産 物 が 由来 したmRNAの 完全 長 のcDNAを 得 る た め に、 シ ロイ ヌナ ズ ナ の 花 器 官全 て を含 む

cDNAラ イ ブ ラ リー を作 製 した。 この ライ ブ ラ リーの ス ク リー』ニン グ を行 った 結 果 、A‑

7‑4に つ いて は約1300塩 基 対 のcDNAを 含 む ク ロー ンを得 る こ とが で き た 。 この ク ロ0ン は雌 しべ 特 異 的 と考 え られ 、 これ を解 析 す る こ と によ って雌 しべ 形 成 過 程 の 一端 を 知 る こ とが で き る と考 え られ る 。 そ して も しこれ が 卵 で 特 異 的 に発 現 す る もの で あれ ば 当初 の

目的 で あ る卵 の 形 成 過 程 の 減 数 分裂 の機 構 を解 明 す る に非 常 に役 立 っ もの と考 え られ る 。 計 画3で は 、休 眠 を す る正 常 な 系統 の 小 麦 と休 眠 を しな くな った 突然 変 異 株 を用 いて 、 休 眠 をす る しくみ につ い て調 べて いる 。休 眠 し完 熟 した種 子 で 発 現 す る遺 伝 子 に これ らの 小 麦 の 間で 差 異 が 認 め られ る か ど うか を、 無細 胞 翻 訳 系 を 用 い てmRNAか らタ ンパ ク質 を合 成 し2次 元 電 気 泳 動 によ って 分析 した と こ ろ、 変 異 体 で は種 子 の 完熟 時 に蓄積 しな い タ ンパ ク 質 が い く つか 存 在 す る こ とが確 認 され た。 これ らの タ ンパ ク質 が休 眠 を引 き起 こすの に 関係 して い る可 能 性 が 考 え られ る 。 これ らの タ ンパ ク質 の 遺 伝 子 を デ ィフ ァ レン シ ャル ス ク リー ニ ング法 を用 い る こと に よ って ク ロー ニ ング す る こ と に成 功 した 。 その1っ をpE24と 名 付 けた 。 この ク ロー ンの 由来 した 遺伝 子 のmRNAの 蓄積 量 を経 時 的 に調 べ てみ た と ころ 、 こ の 遺 伝 子 のmRNAは 正 常な 小 麦 で は種 が熟 す る につれ て 蓄積 量 が 増加 して い たが 、休 眠 し な い変 異 株 で は や は り蓄積 が 認 め られ な か った 。 この ク ロー ンの 持 つcDNAの 大 き さ は約 1000塩 基 対 で 、 これ に コー ドされ て いる タ ンパ ク 質 の大 き さ は約32kDaで あ る ことが わ か った。 この ク ロ ー ンの 塩 基 配 列 と似 た 配 列 が 既 知 の遺 伝 子 にな い か調 べ て み た が 相 同 生 の 高 い もの は存 在 しな か った 。 この遺 伝 子 の 機 能 を調 べ る た め この遺 伝 子 を シ ロ イヌ ナ ズ ナ に 形質 導 入 してみ た と ころ 、多 くの 形質 転 換 体 で 子 葉 と い った 種 子 中 で見 られ る器 官 にお い て 異 常 が認 め られ た 。 この こと は この遺 伝 子 が 種 子 形 成 に何 らか の 働 き を して い る こ と を示 唆

して いる もの と考 え られ る。

一83一

(4)

7.成 果 発 表

日本植物生理 学会1996年 度年会

1996年3月27日 〜29日 、鹿児島 、鹿 児島大学教養部 コムギ種子発 達過 程 における休 眠関連遺伝子 の発現

川上直人 、野 田和 彦

穂 発 芽 研 究 会 第2回 ワー ク シ ョツプ

1997年1月27日 〜28日 、 北海 道 河 西 郡 芽 室 町 種 子 休 眠 に関 す る 分 子 生 物 学 的 ア プ ロー チ

川 上 直 人

一84一

参照

関連したドキュメント

調査資料として映画『ハリー・ポッター」シリーズの全7作を初期、中期、後期に分け、各時

生活習慣病の予防,早期発見,早期治療など,地域の重要

昭和62年から文部省は国立大学に「共同研 究センター」を設置して産官学連携の舞台と

しかしながら生細胞内ではDNAがたえず慢然と合成

の多くの場合に腺腫を認め組織学的にはエオヂ ン嗜好性細胞よりなることが多い.叉性機能減

「心理学基礎研究の地域貢献を考える」が開かれた。フォー

前年度または前年同期の為替レートを適用した場合の売上高の状況は、当年度または当四半期の現地通貨建て月別売上高に対し前年度または前年同期の月次平均レートを適用して算出してい

〔付記〕