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Academic year: 2021

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パラレルメカニズムを用いたステージ可動式プリン タに関する研究 : 皿のような立体形状への彩色

著者 細田 夏未

出版者 法政大学大学院デザイン工学研究科

雑誌名 法政大学大学院紀要. デザイン工学研究科編

巻 8

ページ 1‑5

発行年 2019‑03‑24

URL http://doi.org/10.15002/00022143

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法政大学大学院デザイン工学研究科紀要 Vol.8(2019年3月) 法政大学

パラレルメカニズムを用いた ステージ可動式プリンタに関する研究

- 皿のような立体形状への彩色 -

Development of a Stage Movable Type of Printer Using a Parallel Mechanism

―Painting on 3D-circular Shape like a dish―

細田夏未 Natsumi HOSODA 主査 田中豊 副査 岩月正見

法政大学大学院デザイン工学研究科建築学専攻修士課程

In this study a stage movable type of printer using a parallel mechanism for painting on three-dimensional (3D) circular shape like a dish is proposed and developed. One of the solutions for the motion stage of such printers is a tripod parallel mechanism. The tripod parallel mechanism consists of three legs translating on the ground. Furthermore, the rotational set-up of this mechanism has a large motion space and great tilt angles. A prototype printer based on the tripod parallel mechanism with rotary and linear actuators is designed and fabricated. Printing objects are placed on the motion stage of the tripod and the printing head is fixed over the stage. The motion paths of the rotary and linear actuators are calculated by the MATLAB/Simulink and SimMechanics block model of the tripod parallel mechanism using inverse kinematics. Performance and feasibility of the proposed system to accurately print lines on the edge of a circular shape like a dish is experimentally verified.

Key Words : Parallel mechanism, Printer, Fixed printer head, Linear actuator, Rotary actuator, Inverse kinematics.

1. 緒論

陶磁器の皿に彩色する作業は職人による手作業に委ね られている場合が多い.しかし最近は熟練技能者の不足 が課題となっており,様々な皿形状の立体物の彩色を自 動化する技術の確立が望まれている.

一方,現在普及しているプリンタや塗装装置は,平面 への彩色目的のものが大半で,彩色用ヘッドは可動式が 一般的である.また,立体造形物に彩色を行う場合は,

彩色用ヘッドを動かすため,ロボットアーム等の企業向 けの大掛かりな装置や設備が必要になる.その上,高品 質で多色の彩色を実現するプリンタの場合,複数のイン クタンクやインクヘッドが必要になり,彩色用ヘッドを 可動式にすると可動負荷が大きく,運動機構や構造が複 雑になり,運動性能や彩色効率の低下が懸念される.

これらの問題を解決するため,彩色用ヘッドを可動式 にするのではなく,彩色対象物が設置されたステージを 可動式とするプリンタを提案する.本研究では,インク ヘッドが固定されたステージ可動式プリンタ装置を実現 するために,回転運動形三脚パラレルメカニズム[1]を用

いることで,ステージ上の立体造形物表面への彩色を実 現する.この機構を用いることで,可動角度が大きく精 確で高速な多自由度ステージが実現できる.

本報では,パラレルメカニズムを用いたステージ可動 式プリンタ装置の構成と制御方式,試作実機の改良,及 び彩色実験について報告する.

2. 回転運動形三脚パラレルメカニズム

パラレルメカニズムとは,多自由度閉ループ機構にお いて、二つ以上のジョイントを持ち,かつアクチュエー タが配置された連結連鎖が,静止節(ベース)と出力節

(エンドエフェクタ)の間に並列に複数配置された多自由 度運動機構である[2].提案するプリンタ装置には回転運 動形三脚パラレルメカニズム[1]を用いる.図 1 にこの運 動機構の構成を示す.この運動機構はモーションステー ジからピンジョイントで接続された 3 本の固定長の脚が あり,各脚の先端はボールジョイントを介して並進運動 を行う 3 つのリニアアクチュエータと回転運動を行う 3 つのロータリーアクチュエータに接続されることにより,

(3)

6 自由度のモーションステージを実現している.各アク チュエータは,正確な角度制御が可能なステッピングモ ータによって駆動される.ロータリーアクチュエータは ピニオンギアとかみ合うことで,各リニアアクチュエー タ自体を回転運動させる.リニアアクチュエータには電 動スライダを使用し,ステッピングモータの回転運動が ボールねじにより並進運動に変換される.

Fig.1 Structure of rotational type of tripod parallel mechanism

図 2 に先行研究にて試作したプリンタ装置を示す.提 案するプリンタ装置は,この回転運動形三脚パラレルメ カニズムによる 6 自由度の可動ステージと固定されたイ ンクヘッドにより構成される.ステージ上の彩色対象物 に対して,必要な移動変位・角度を求め,逆運動学[1]に より各アクチュエータの駆動量を算出し,ステージを可 動させる.

Fig.2 Prototype of the printer using tripod parallel mechanism

3. システム構成

図 3 に開発した回転運動形三脚パラレルメカニズムの システム構成図を示す.ロータリーアクチュエータ 3 台,

リニアアクチュエータ 3 台はそれぞれのモータドライバ を介して 1 つのマイコンによって制御される.各アクチ

ュエータのモータドライバはマイコンと接続され,パル ス信号を伝達することで各アクチュエータをオープンル ープで位置決め駆動させる.

制御に用いるマイコン・MC8581P(株式会社ノヴァ電子製) は,補間機能付き 4 軸モータコントロール IC”MCX514”を 2 個搭載した PCI バス対応の回路基板である.1 台で最大 8 個 のステッピングモータを各軸独立に位置決めまたは速度制御 できる.回転運動形三脚パラレルメカニズムにおいては,

MC8581P をホスト PC に増設し,各アクチュエータのモータド ライバと繋ぎ,パソコンから Visual Basic によりプログラミングを 行った MC8581P により動作制御を行う.

Fig.3 System configuration

4. アクチュエータ動作

(1)皿の様な円形形状について

MATLAB+SimulinkⓇの SimMechanics[3]を用いて,ス テージの移動角度などから逆運動学[4]により各アクチ ュエータの駆動量を算出する.印字を行う立体について,

これまでは傾斜した平面や半球面など簡易な立体物表面 への印字を行っていたのに対し,ステージ可動式プリン タ装置の特性を活かすために,皿のような円形形状の淵 への彩色を行った.今回,彩色対象物に皿のような円形 形状を選定した理由は,陶磁器へのダイレクト印刷を可 能にすることで,現在手作業で行われている陶磁器の彩 色を自動化しようと試みたためである.

図 4 に示すような底面の直径が 180 mm,淵の角度が 30°の皿のような円形形状の彩色対象物に対して,外周 の淵の部分に一周にわたり線を描く.今回は対象物とヘ ッド固定部の衝突を防ぐ目的でインクヘッドの長さを 150 mm とした.

(2)アクチュエータ動作結果

インクヘッドと対象物の距離を指定し,モーションス テージを対象物に沿って動かし,逆運動学により,アク チュエータの移動量・移動角度を算出した.皿の淵の部 分に線を描くためのモーションステージの動きを図 5 に 示す.図 5 の上は Z 軸方向,下は XY 軸周りの移動距離・

移動角度である.このステージの姿勢から算出された各 アクチュエータの移動変位・移動角度を図 6 に示す.図 6 の上は 3 個のリニアアクチュエータ(LA)の動作結果,

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下は 3 個のロータリーアクチュエータ(RA)の動作結果 である.

Fig.4 Printing on plate target

0.17 0.19 0.21 0.23 0.25 0.27

0 2 4 6 8 10

Displacement [m]

Time [s]

pz

-0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6

0 2 4 6 8 10

Angle [rad]

Time [s]

qx qy

Fig.5 Attitude of motion stage foe printing target

-1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 0.4 0.8 1.2 1.6 2 2.4 2.8 3.2 3.6 4 4.4 4.8 5.2 5.6 6 6.4 6.8 7.2 7.6 8 8.4 8.8 9.2 9.6 10

Angle [rad]

Time [s]

RA1 RA2 RA3

Fig.6 Motion of actuators by inverse kinematics

5. 試作実機の改良

(1)ロータリーアクチュエータの干渉

動作シミュレーションでは干渉が定義されていないた め,前項の動作シミュレーションから算出したロータリ ーアクチュエータの移動角度から,隣接するロータリー アクチュエータ間の角度を算出した.図 7 に隣接するロ ータリーアクチュエータ間の角度を示す.この結果によ り,ロータリーアクチュエータの干渉が確認された.ロ ータリーアクチュエータのモータ取り付け位置を変更す ることにより,干渉の改善を試みた.図 8 にモータの取 り付け位置の変更について示す.この変更により,隣接 するロータリ―アクチュエータが干渉する角度は改良前

が58°であったのに対し,改良後は 45°へと改善された.

0 50 100 150 200

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

Angle[°]

Time[s]

RA2-RA1 RA3-RA2 RA3-RA1

Fig.7 Angle between adjacent rotary actuators

Fig.8 Changing the mounting position of the motor

(2)ステッピングモータの変更

先行研究にて製作されたステージ可動式プリンタの試 作実機について,ロータリーアクチュエータに使用して いたステッピングモータが2相励磁式であったことから,

振動が非常に大きく,精確な実験を行うことができない と判断した.そこでロータリーアクチュエータのステッ ピングモータを5相励磁式へ変更した.2相励磁式と比 較し,5相励磁式は低振動であり,ステップ角が小さく なることから精確な制御が可能になると考えられる.

(3)改良後の試作実機

前項で述べた変更に伴い,試作実機の各部品の変更を 行った.表 1 に変更を行った部品表を示す.図9に試作 実機の分解図と各部品の名称を示す.モータをリニアプ レートの直下に配置するために,改良前は板状であった

(5)

スペーサブロックを円筒状に変更した.これにより,リ ングギアとローラピニオンの位置関係を変えることなく,

モータの取り付け位置を変更できた.

図 10 に制御を行う改良後の試作実機を示す.この改良 により,ロータリーアクチュエータの干渉が改善され,

モータの振動がなくなり,円滑な駆動が可能となった.

Table1 Improved elements for prototype model

Fig.9 Exploded view of Prototype

Fig.10 Prototype after improvement

6. 彩色実験

(1)実験内容

改良後の試作実機を用いて彩色実験を行い,ステージ 可動式プリンタの皿への彩色の妥当性を検討した.図 11 に実験装置の構成を示す.

Fig.11 Structure of experimental apparatus

図 12 に実験に用いたインクジェットヘッドの外観を 示す.このインクジェットヘッドは,マイクロジェット 記録計(PHA:富士電機)の消耗品記録ヘッド(PHZH1002)と して販売されているものを用いた.インクジェットヘッ ドは,圧電型インクジェットヘッドとインクパックが一 体となっており,駆動信号を印加するとインク液滴を噴 射する.ノズルは,四つある.黒,赤,青,黄色の 4 色 のインクを搭載している.今回は 1 色のみを用いて彩色 を行う.インクジェットヘッドに搭載されているインク は,記録紙への印刷特性,乾燥性等から水性染料系と推 測した.したがって彩色対象物は,水性染料インクに適 した紙皿が最適であると判断した.図 13 に彩色対象物と して用いた紙皿の寸法を示す.

Fig.12 Ink jet head

Fig.13 Printing object

部品名 数量

中心シャフト 1 レールシャフト 6 シャフトホルダ 1 スペーサブロック 6

ワッシャ 1

リニアプレート1-1 2 リニアプレート1-2 1 リニアプレート2-1 1 リニアプレート2-2 1 リニアプレート3-1 2 リニアプレート3-2 1 モータプレート1 1 モータプレート3 1

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(2)実験結果

図 14 に実験結果を示す.インクジェットヘッドと彩色 対象物の干渉を防ぐためにインクジェットヘッドを垂直 に取り付けることが出来ず,円の歪みが見られた.また,

インクジェットヘッドから吐出されたインクが多く付着 してしまい,線が太くなる傾向があった.

彩色結果の紙皿をスキャンし,想定していた円とどれ 程の誤差が生じているか画像解析を行った.図 15 に実験 の誤差を示す.中心から想定していた円とどれ程ずれた か計測したところ,平均誤差について 1 回目が 1.9mm,2 回目が 0.7mm,3 回目が 1.5mm,最大誤差は 6.5mm であっ た.精度について課題が残る結果となったが,回転運動 形三脚パラレルメカニズムを用いたインクヘッド固定・

ステージ可動式プリンタの皿への彩色について,妥当性 を確認することができた.

(3)考察

円の誤差については,インクジェットヘッドが彩色対 象物に対して垂直に取り付けることが出来なかったこと が理由として挙げられるため,インクジェットヘッドの 再選定を行う必要がある.また,彩色の線の太さが均一 にならなかったことについては,インクの吐出量の調整 等を行い,インクジェットヘッドとモーションステージ の同期を行う必要がある.

Fig.14 Experimental result

Fig.15 Error of experimental result

7. 結論

本研究では,回転運動形三脚パラレルメカニズムを用 いたインクヘッドが固定されたステージ可動式プリンタ について,皿への彩色の動作シミュレーション,試作実 機の改良,及び彩色実験を行った.

試作実機は彩色実験を行うためにモータの変更などの 改良を行った.彩色実験を行った結果,回転運動形三脚 パラレルメカニズムを用いたステージ可動式プリンタの 皿への彩色について,妥当性を確認することができた.

しかし彩色に大きな誤差が生じてしまい,精度を高くす るにはさらなる試作実機の改良を行う必要がある.

今後は,皿への彩色の実現に向けて,様々な模様の彩 色を可能にすることを目指す.同時に,試作実機の彩色 の精度,モーションステージの可動領域を明確にする必 要がある.

謝辞: 本研究を行うにあたり,国内外での学会発表とい う多くの貴重な機会を与えていただき,終始熱心なご指 導をいただいた,指導教授である法政大学デザイン工学 部システムデザイン学科教授田中豊先生に心より感謝申 し上げます.また,試作実機の改良及び実験にあたり,

細部にわたるご指導をいただいた,法政大学マイクロ・

ナノテクロジーセンター田沼千秋先生に心より感謝申し 上げます.

同研究室の先輩である池田昌弘先輩,丹羽渉先輩,前 阪尚輝先輩には,研究の引き継ぎや様々な助言をしてく ださり,心より感謝申し上げます.

最後に修士課程での2年間,共に精進し協力してくれ た同期の金城拓君の存在がとても心の支えとなりました.

心より感謝いたします.また同じパラレルメカニズムの 研究を行っている中村友優君,友井翼君,井上優君を始 め本研究室の後輩の皆さんの存在も,心の支えとなり研 究への活力となりました.心より感謝いたします.

参考文献

1)Y. Shiga, Y. Tanaka, H. Goto, H. Takeda : Design of a Six Degree-of-Freedom Tripod Parallel Mechanism for Flight Simulators ,Int. J.Automation Technology, Vol.5, No.5, pp. 715-721, 2011

2)前田潔,パラレルメカニズムの機構解析と制御に関す る研究,東北大学,博士学位論文,2012

3)Kevin Russell, Qiong Shen, Raj S. Sodhi, Kinematics and Dynamics of Mechanical Systems: Implementation in MATLAB® and SimMechanics, CRC Press,2015

4)田中豊,アクチュエータの組み合わせによる三脚パラ レルメカニズムの開発とその応用,アクチュエータの 新材料,駆動制御,最新応用技術,2017

図 12 に実験に用いたインクジェットヘッドの外観を 示す.このインクジェットヘッドは,マイクロジェット 記録計(PHA:富士電機)の消耗品記録ヘッド(PHZH1002)と して販売されているものを用いた.インクジェットヘッ ドは,圧電型インクジェットヘッドとインクパックが一 体となっており,駆動信号を印加するとインク液滴を噴 射する.ノズルは,四つある.黒,赤,青,黄色の 4 色 のインクを搭載している.今回は 1 色のみを用いて彩色 を行う.インクジェットヘッドに搭載されているインク は,記録紙への印刷

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